(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】点滴スタンド用連結具
(51)【国際特許分類】
A61M 5/14 20060101AFI20220420BHJP
A61G 7/05 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
A61M5/14 530
A61G7/05
(21)【出願番号】P 2018094288
(22)【出願日】2018-05-16
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】511286274
【氏名又は名称】株式会社ニシウラ
(73)【特許権者】
【識別番号】592159999
【氏名又は名称】株式会社ケンコー・トキナー
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】西浦 伸忠
(72)【発明者】
【氏名】山中 徹
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-144162(JP,A)
【文献】米国特許第05374074(US,A)
【文献】特開2015-112310(JP,A)
【文献】米国特許第05421548(US,A)
【文献】中国実用新案第206473488(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/14
A61G 7/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点滴スタンド側に取り付けられる第1クランプと、
移動用器具側に取り付けられる第2クランプと、
前記第1クランプと前記第2クランプが保持される連結棒と、
を備えて、前記点滴スタンドを前記移動用器具に連結する点滴スタンド用連結具であって、
前記第1クランプと前記第2クランプの少なくとも一方の位置が前記連結棒に沿って移動可能であ
り、
前記第1クランプと前記第2クランプは互いに平行な軸で回転して固定することが可能であり、且つ、前記第1クランプと前記第2クランプの少なくとも一方は前記平行な軸以外の軸方向にも回転して固定することが可能であることを特徴とする点滴スタンド用連結具。
【請求項2】
前記第1クランプは自由方向に、前記第2クランプは2軸方向に回転可能に前記連結棒に保持されることを特徴とする請求項1に記載の点滴スタンド用連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は点滴スタンド用連結具に関する。詳しくは、点滴スタンドを車椅子、ストレッチャやリハビリ歩行器などの移動用器具に連結する点滴スタンド用連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設では点滴中の患者がキャスター付き点滴スタンドを携えて車椅子、ストレッチャやリハビリ歩行器などの移動用器具で移動することがある。このとき、点滴スタンドを人が持たなくてもよいように、点滴スタンドを移動用器具に連結する点滴スタンド用連結具が考えられた。
【0003】
たとえば、特許文献1にはフレキシブル棒体の一端が車椅子あるいはストレッチャに固定され、他端に取り付けられたフック状の取付部材が点滴スタンドに取り付けられた点滴スタンド用連結具が記されている。
【0004】
特許文献2には車椅子の平行な両ハンドルを掴むグリップと、車椅子の下方のクロスバーに連結するクロスバー連結手段を備えて点滴スタンドを車椅子に連結する点滴スタンド用連結具が記されている。不使用時には、左右に広がっているグリップをハンドルから外して、下方に回動させて閉じ、前方に突出しているクロスバー連結手段を車椅子のクロスバーから外して、下方に回動させる。このように、不使用時には、点滴スタンド用連結具を点滴スタンドに取り付けたままにする。
【0005】
特許文献3には連結棒の両端にクランプを備えて点滴スタンドを車椅子に連結する点滴スタンド用連結具が記されている。この2つのクランプは互いに平行な軸で回転して任意の角度で連結棒に固定することができるので、点滴スタンドと車椅子の円筒の軸が同一平面上にあれば、異なる高さであっても連結することができる。また、その公報の
図2に示されるように、不使用時には点滴スタンドの円筒に点滴スタンド用連結具の両方のクランプを取り付けたままで収納する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6186034号公報
【文献】特許第6015848号公報
【文献】特開2016-49244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
キャスター付きの点滴スタンドが接続される車椅子やストレッチャにはさまざまな形状があり、どのような形状やどのような位置にも点滴スタンドを連結できる点滴スタンド用連結具が好ましい。また、点滴スタンド用連結具は、特許文献1~特許文献3には記されていないリハビリ歩行器にも連結できることが好ましい。また、点滴スタンド用連結具は、廊下の通行やエレベータの乗降など、状況に応じて車椅子などの移動用器具の前後や横などに点滴スタンドを容易に移動できることが好ましい。また、点滴スタンド用連結具は、非使用時にコンパクトに収容できることが好ましい。また、リクライニング可能な車椅子やストレッチャにも容易に適用できることが好ましい。このように、病院内での使用が主となる点滴スタンド用連結具には、多くのことが望まれている。
【0008】
これに対して、特許文献1の点滴スタンド用連結具は、フレキシブル棒体は剛体ではないので、点滴スタンドと移動用器具との相対的な位置を固定することができない。このために、移動中にフレキシブル棒体が予期せぬ変形をして点滴スタンドと移動用器具との相対的な位置が変化するので、点滴漏れなどの危険性があり好ましくない。
【0009】
特許文献2の点滴スタンド用連結具は、ハンドルが平行でクロスバーがある車椅子にしか適用できない。また、車椅子の後方にしか点滴スタンドを接続できず、適用できる移動用器具が非常に限られている。
【0010】
特許文献3の点滴スタンド用連結具は、移動用器具の傾斜しているパイプ形状部に対してはそれと同一面となる点滴スタンドの支柱の位置でしか接続することはできない。たとえば、車輪の足が前方傾斜している車椅子に対しては、直立する点滴スタンドを車椅子の横に連結することができない。また、2つのクランプ間の距離は常に一定なので、通行や駐輪の占有領域が大きい。また、非使用時、点滴スタンド用連結具を点滴スタンドから外して移動用器具側に収容しようとすると大きくはみ出るので、移動用器具側に収容するのは困難である。
【0011】
本発明は、車椅子、ストレッチャやリハビリ歩行器などの移動用器具のさまざまな形状に多く適用できる汎用的な点滴スタンド用連結具を提供することを目的とする。また点滴スタンドを移動用器具の前後や横などに容易に位置変更でき、非使用時にコンパクトに収容できる点滴スタンド用連結具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の点滴スタンド用連結具は、点滴スタンド側に取り付けられる第1クランプと、移動用器具側に取り付けられる第2クランプと、前記第1クランプと前記第2クランプが保持される連結棒と、を備えて、前記点滴スタンドを前記移動用器具に連結する点滴スタンド用連結具であって、前記第1クランプと前記第2クランプの少なくとも一方の位置が連結棒1に沿って移動可能であることを特徴とする。
【0013】
これにより、移動用器具と点滴スタンドとの距離を容易に調整することができる。また、点滴スタンド用連結具の不使用時に、点滴スタンド用連結具を点滴スタンドか移動用器具のいずれか一方に取り付けたまま、他方のみ外して、第1クランプと第2クランプ間の距離を縮めれば、コンパクトに点滴スタンド用連結具を移動用器具あるいは点滴スタンドに収納することが可能となる。たとえば、ストレッチャS内に点滴スタンド用連結具を押し込んでキャスターからの突出寸法を少なくすることができる。
【0014】
また、本発明の点滴スタンド用連結具においては、前記第1クランプと前記第2クランプは互いに平行な軸で回転して固定することが可能であり、且つ、前記第1クランプと前記第2クランプの少なくとも一方は前記平行な軸以外の軸方向にも回転して固定することが可能であることが好ましい。
【0015】
これにより、前記第1クランプと前記第2クランプの少なくとも一方は他の軸方向にも回転可能であるので、点滴スタンドと移動用器具の円筒の軸が同一平面上でなくても、異なる高さで第1クランプと第2クランプを取り付けることができる。たとえば、車輪の足が前方傾斜している車椅子でも点滴スタンドを車椅子の横に連結することができる。これにより、キャスター付き点滴スタンドを連結することができる車椅子などの移動用器具の種類が増加する。
【0016】
また、本発明の点滴スタンド用連結具においては、前記第1クランプと前記第2クランプは2軸方向あるいは自由方向に回転可能に前記連結棒に保持されることが好ましい。
【0017】
これにより、点滴スタンド用連結具を点滴スタンドと移動用器具に連結したまま、状況に応じて点滴スタンドを移動用器具の前後や横に移動させることができる。たとえば、狭いところを移動させるときには点滴スタンドを移動用器具の後ろに移動させ、奥行きが短いエレベータのときは点滴スタンドを移動用器具の横に移動させる。また、移動用器具がリクライニング機能を有するとき、点滴スタンド用連結具を移動用器具に取り付けたまま、移動用器具の背もたれの角度を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態の点滴スタンド用連結具の撮像である。
【
図2】第1実施形態の外観の要部を示す正面図である。
【
図6】
図6Aは第1使用例の点滴スタンド用連結具が点滴スタンドとストレッチャを連結している状態を示す図であり、
図6Bはその状態から点滴スタンド用連結具を点滴スタンドから外してストレッチャ内に収納した状態を示す図である。
【
図7】第2使用例の点滴スタンド用連結具が点滴スタンドを車椅子の横に連結している状態から、点滴スタンドを車椅子の後ろへ移動させる状態を示す平面図である。
【
図8】
図8Aは第3使用例の点滴スタンド用連結具が点滴スタンドとリクライニング付きの車椅子を連結した状態を示す撮像であり、
図8Bはその連結のまま、リクライニングの回転をさせた状態を示す撮像である。
【
図10】第4使用例の点滴スタンド用連結具が点滴スタンドとリハビリ歩行器を連結した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0020】
[実施形態]
図1~
図5を用いて、実施形態の点滴スタンド用連結具100の要部の構成を説明する。点滴スタンド用連結具100は、キャスター付き点滴スタンドDを車椅子W、ストレッチャSやリハビリ歩行器Rなどの移動用器具に連結するものである。なお、点滴スタンドD、車椅子W、ストレッチャS、リハビリ歩行器Rについては、
図6以降で示す。
【0021】
点滴スタンド用連結具100は、連結棒1と、連結棒1の一端に固定される自由回転部2と、自由回転部2に自由回転可能に取り付けられて任意の角度で固定可能な第1クランプ3と、連結棒1に摺動・回転可能に保持されて任意の位置・角度で固定可能な摺動部4と、摺動部4に固定される2軸回転部5と、2軸回転部5に2軸回転可能に取り付けられて任意の角度で固定可能な第2クランプ6からなる。これらの構成部品の材料は主として表面加工されたアルミニウムやアクリルからなる。
【0022】
連結棒1は、直径が48mm、長さが400mm程度であり、自由回転部2が固定される一端とは逆の他端には摺動部4の抜けを防止すると共に円筒を塞ぐための蓋11が固着されている。
【0023】
自由回転部2は、一般的な自由雲台と同様の構成であり、ボール21と、ボール21と一体になって第1クランプ3が固着される支柱22と、支柱22が突出してボール21の一部が露出する開口部を備え、ボール21を自由回転可能に保持するボール保持部23と、ボール保持部23に取り付けられてボール21の自由回転を固定する自由回転固定ネジ24からなる。
【0024】
第1クランプ3は、自由回転部2の支柱22に固着される「コ」の字形状(U字に近い形状)のフレーム31と、フレーム31の対面を貫通する2本の第1軸32でそれぞれ回動自在に一端が軸支される第1握手33と第2握手34と、第1握手33の他端に第2軸35で回動自在に軸支される掴みネジ36からなる。
【0025】
第1握手33と第2握手34は、回動して点滴スタンドDあるいは移動用器具のパイプ形状部Pを挟んで掴むものであり、それぞれの挟む部分にはアクリルのV字状の当接部37を備えている。なお、当接部37は、合成樹脂のアクリルであるので、点滴スタンドDや移動用器具を傷付け難い。
【0026】
点滴スタンドDあるいは移動用器具を挟んだ状態で、第1握手33に軸支された掴みネジ36が第2握手34の切欠き溝38に嵌入し、第2握手34に設けられたストッパ39に当接された位置で螺入される。これにより、挟んだ状態の第1握手33と第2握手34の距離を掴みネジ36が縮めて第1クランプ3を点滴スタンドDあるいは移動用器具に強固に固着させる。なお、第1握手33と第2握手34が挟む寸法は、掴みネジ36によって変更可能であるので、掴むパイプ形状部Pの直径が異なってもよい。また、2つのV字状の当接部37で挟んで掴むので、掴むパイプ形状部Pの断面が必ずしも円形でなくてもよい。なお、本実施形態において第2クランプ6は、第1クランプ3と同一形状の共通部品となっている。
【0027】
摺動部4は、溝411を有して摺動の断面がC字形となる摺動筒41と、溝411の幅を狭めて摺動・回転を固定する摺動固定ネジ42と、摺動筒41と一体になって2軸回転部5に回動可能に保持される孔(図示せず)を有した連結部43からなる。
【0028】
2軸回転部5は、第2クランプ6が固着されるシャフト51と、2軸固定ネジ52と、2軸固定ネジ52が孔に通されて螺入されることによって摺動部4を回動可能に保持し、かつシャフト51を回動可能に保持する2軸保持部53からなる。
【0029】
図5に示すように2軸保持部53は、シャフト51が嵌入する断面がC字形のC字孔531と、2軸固定ネジ52が螺入される雌ネジ532とが備わっており、C字孔531の軸と雌ネジ532の軸が直交するようになっている。したがって、2軸固定ネジ52が螺着されると、摺動部4が2軸保持部53に締め付けられて、摺動部4と2軸回転部5の相対的な回転角度が固定される。またそれと共に、C字形の切欠き部分の幅が狭くなってシャフト51の回転が止められるので、第2クランプ6と2軸回転部5の相対的な回転角度も固定される。
【0030】
このようなに、本実施形態の点滴スタンド用連結具100は、連結棒1の一端に自由回転部2により自由回転し回転を固定できる第1クランプ3と、摺動部4により連結棒1を摺動・回転可能し摺動・回転を固定でき、かつ2軸回転部5により2軸方向に回転し回転を固定できる第2クランプ6とを備えて構成されている。
【0031】
これにより、第1クランプ3と第2クランプ6は互いに平行な軸で回転可能であるので、掴むパイプ形状部Pの軸の角度が同一平面であれば、第1クランプ3と第2クランプ6の掴む高さが変わっても連結することができる。さらに、第1クランプと前記第2クランプの少なくとも一方は平行な軸以外の軸方向にも回転可能であるので掴むパイプ形状部Pの軸の角度が同一平面でなくても第1クランプ3と第2クランプ6の掴む高さが変わっても連結することができる。さらに、第1クランプ3と第2クランプ6間の距離が連結棒1に沿って変更可能であるので、両方を掴んだまま掴んだ位置が変化してもよい。また、不使用時に第1クランプ3と第2クランプ6の一方を外して他方を取り付けたままコンパクトに点滴スタンド用連結具100を収容することが可能となる。また、第1クランプ3と第2クランプ6は、移動用器具のパイプ形状部Pの異なる直径や形状にも適用することができる。なお、点滴スタンドDは第1クランプ3と第2クランプ6のいずれに取り付けられてもよい。
【0032】
[第1使用例]
次に、
図6を用いて、実施形態の点滴スタンド用連結具100の第1使用例を説明する。
図6Aに示すように、第1クランプ3がストレッチャSに取り付けられ、第2クランプ6が点滴スタンドDに取り付けられている。
【0033】
点滴スタンド用連結具100の不使用時、
図6Bに示すように第2クランプ6は、ストレッチャSに取り付けられたまま第1クランプ3のみ点滴スタンドDから外されて、摺動部4の摺動により連結棒1と第1クランプ3がストレッチャS内に押し込まれてコンパクトに収納される。このときは、使用時に第2クランプ6をストレッチャSに取り付ける作業が不要であるので、点滴スタンド用連結具100の取付時間を短縮することができ、緊急時に効果が大きい。
【0034】
なお、不使用時、逆に第2クランプ6のみ外して自由回転部2の回転により連結棒1と第2クランプ6を回転させて、第2クランプ6を点滴スタンドDに取り付けることにより、点滴スタンド用連結具100を点滴スタンドDの支柱に収納させてもよい。このときも摺動部4の摺動により第1クランプ3と第2クランプ6の離間距離を縮めることができるので、両方のクランプ3、6を外すことなく点滴スタンドDに収容することができる。
【0035】
[第2使用例]
次に、
図7を用いて、実施形態の点滴スタンド用連結具100の第2使用例を説明する。第1クランプ3が点滴スタンドDに取り付けられ、第2クランプ6が車椅子Wに取り付けられている。そして、点滴スタンドDは、車椅子Wの横に配設されている。
【0036】
この状態で、点滴スタンドDを車椅子Wの後ろに移動させるときは、第1クランプ3と第2クランプ6は、点滴スタンドDと車椅子Wに取り付けたままとなる。つまり、第1クランプ3は、自由回転固定ネジ24(
図7には図示せず。
図2参照。)による固定が解除されて自由回転可能の状態である。また、第2クランプ6は、摺動・回転固定ネジ42と2軸固定ネジ52による固定が解除されて摺動・回転と2軸回転可能の状態である。
【0037】
従って、第1クランプ3の自由回転と第2クランプ6の回転によって連結棒1の傾斜の向きが変更可能となる。また、第2クランプ6の摺動によって第1クランプ3と第2クランプ6の離間距離が変更可能となる。このため、第1クランプ3と第2クランプ6は、点滴スタンドDと車椅子Wに取り付けたままでも点滴スタンドDを車椅子Wの後ろに移動させることができる。逆に、点滴スタンドDを車椅子Wの後ろから横に移動させることもできる。
【0038】
たとえば、点滴スタンドDを携えて車椅子Wを移動させるときは点滴スタンドDが車椅子Wの横にあった方が移動し易い。しかしながら、狭い廊下や幅が狭いエレベータでは点滴スタンドDが車椅子Wの後ろにあった方がよい。なお、第1使用例のストレッチャSも同様である。つまり、ストレッチャSは長いので、点滴スタンドDをストレッチャSに接続して奥行きが狭いエレベータに乗るときは点滴スタンドDがストレッチャSの横にあった方がよい。
【0039】
このように、本実施形態の点滴スタンド用連結具100は、第1クランプ3と第2クランプ6を外すことなく、点滴スタンドDの位置を状況に応じて容易に移動させることができる。また、右折や左折も容易である。なお、点滴スタンドDの位置を状況に応じて容易に移動させることができるのは、移動用器具を使用している者だけでなく、その周辺で介護する者などにとっても非常に好ましい。
【0040】
[第3使用例]
次に、
図8、
図9を用いて、実施形態の点滴スタンド用連結具100の第3使用例を説明する。
図8は点滴スタンド用連結具100が点滴スタンドDとリクライニング付きの車椅子Wを連結したまま、リクライニングの傾斜を変更する撮像であり、
図9はリクライニングが寝かせる方向に傾けられる動作を説明する図である。
【0041】
図9において点Oは、車椅子Wのリクライニングの回転の中心である。点Aは、第2クランプ6が回転する中心である。点B1~B3は、第1クランプ3が回転する中心である。
【0042】
リクライニングが寝かせる方向に傾けられることによって、第1クランプ3の回転の中心は、点B1からB3まで移動する。ここで、点B2は、第1クランプ3の回転の中心が点Oと点Aの延長上になったときの位置である。B1、B2、B3の内、最も点Aに近づくのは、点B2の時である。これは、三角形B1・O・Aと三角形B3・O・Aとからも解る。すなわち、第2クランプ6の摺動によって、第1クランプ3の回転の中心がB2の位置のときに第1クランプ3と第2クランプ6の距離が最短となる。このように、リクライニングに伴う第1クランプ3と第2クランプ6の距離は、変化する。
【0043】
また、線B1・Oと線B1・Aとがなす角α1は、線B3・Oと線B3・Aがなす角α3と正負逆であることから、第1クランプ3はα1の絶対値とα3の絶対値の合計だけ回転することとなる。一方、第2クランプ6は角B1・A・B3である角βだけ回転することとなる。このように、リクライニングに伴う第1クランプ3の回転角度と、第2クランプ6の回転角度は、異なる。
【0044】
このようにして本実施形態の点滴スタンド用連結具100は、第1クランプ3と第2クランプ6がいずれもリクライニングの軸と平行に回転可能であり、かつ第2クランプ6が摺動して第1クランプ3と第2クランプ6の距離が変更可能であるから、第1クランプ3と第2クランプ6を外すことなくリクライニングの角度を容易に変更することができる。なお、第1クランプ3は自由回転であり、第2クランプ6は2軸回転と摺動部4の回転であるので、点滴スタンド用連結具100の取付誤差があっても軽くリクライニングの角度を変更することができる。
【0045】
[第4使用例]
次に、
図10を用いて、実施形態の点滴スタンド用連結具100の第4使用例を説明する。
図10は点滴スタンド用連結具100が点滴スタンドDとリハビリ歩行器Rを連結している。リハビリ歩行器Rでの使用中は、使用者自身が歩行しながら周辺環境に合わせて点滴スタンドDを移動させる状況が生じうる。従って、リハビリ歩行器Rと点滴スタンドDとの様々な位置関係に対応できる点滴スタンド用連結具100が非常に好ましい。このように、本実施形態の点滴スタンド用連結具100はストレッチャSや車椅子W以外の移動用器具にも適用することができる。
【0046】
本発明の点滴スタンド用連結具100は、第1クランプ3が2軸回転可能に保持されてもよく、第2クランプ6が自由回転可能に保持されてもよい。また、摺動については、第1クランプ3と第2クランプ6の少なくともいずれか一方が摺動すればよい。この摺動の目的は第1クランプ3と第2クランプ6の少なくとも一方の位置を連結棒に沿って変更可能にするものであるので、摺動に替えて、連結棒1の伸縮機能を用いることにより第1クランプ3と第2クランプ6の距離を連結棒に沿って変更可能にしても、同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0047】
100:点滴スタンド用連結具
1:連結棒
2:自由回転部
23:ボール保持部
24:自由回転固定ネジ
3:第1クランプ
36:掴みネジ
4:摺動部
42:摺動固定ネジ
5:2軸回転部
52:2軸固定ネジ
6:第2クランプ
D:点滴スタンド
S:ストレッチャ
W:車椅子
R:リハビリ歩行器