(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】誘電体アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/06 20060101AFI20220420BHJP
H01Q 1/42 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
H01Q19/06
H01Q1/42
(21)【出願番号】P 2018115339
(22)【出願日】2018-06-18
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】▲高瀬▼ 崇行
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-017145(JP,A)
【文献】特開昭60-236506(JP,A)
【文献】特開昭60-216605(JP,A)
【文献】特開2010-157865(JP,A)
【文献】特公昭46-016185(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00- 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の電波を放射するアンテナ素子と、
前記アンテナ素子の前方に設けられていて前記電波の指向性に寄与する誘電体と、
前記アンテナ素子及び前記誘電体を囲うアンテナカバーと、
前記誘電体の先端に設けられた誘電体板部と前記アンテナカバーの先端部とで形成された二重構造部と、
前記二重構造部に設けられた追加誘電体と、
を備えたことを特徴とする誘電体アンテナ。
【請求項2】
前記追加誘電体の厚さは、前記誘電体の先端の2.4倍以上の厚さで、前記アンテナカバーの先端部の厚さの0.55倍以下に設定されている請求項1に記載された誘電体アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば船舶等に搭載されて電磁波を送信し反射波を受信する誘電体アンテナであって、アンテナの電波放射方向前方に誘電体を配設した誘電体アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に船舶用レーダ装置は、船外のマスト部分に取り付ける空中線装置等のレーダアンテナ装置と船内の操舵室に取り付ける指示機装置とで構成される。レーダアンテナ装置は電波を送受信するアンテナを有し、このアンテナを回転させて動作する。レーダアンテナ装置は船外に設置されるため、アンテナを回転させる際に風の影響を受ける。レーダアンテナ装置は強風下においてもアンテナを一定速度で回転させる必要がある。
強風下においてアンテナを一定速度で回転させるには強力なモータが必要である。しかし、強力なモータは重量が増加する上に高価になる。強力なモータを用いず、強風下においてアンテナを一定速度で回転させるには、アンテナの断面寸法における高さを低くして薄型化する必要がある。
【0003】
例えば特許文献1に記載された船舶用レーダ装置の空中線は、アンテナにホーンが用いられている。ホーンタイプの場合、高さ寸法を低くするとビーム幅が増加し、利得が低下する問題がある。船舶用レーダ装置では利得低下は避けるべきであり、ビーム幅を広げないで維持すると共に高さ寸法を低くする必要がある。
【0004】
このような薄型のレーダアンテナを実現するものとして、例えば特許文献2,3に示すように誘電体を用いた誘電体アンテナが提案されている。誘電体アンテナを採用することで、従来のホーンを用いた空中線装置に対して半分以下の高さ寸法を備えたレーダアンテナ装置を実現可能である。しかも、特許文献3に記載された誘電体アンテナは、アンテナカバー内に所定周波数の電波を放射するアンテナ素子と電波の放射方向に対して垂直な方向に延在する誘電体層とが配設されている。これにより、アンテナ素子から放射される電波に所望の指向性を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-286205号公報
【文献】特許第3634372号公報
【文献】特許第5219794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2、3に記載された誘電体アンテナでは、ビーム幅は維持されているが、サイドローブレベルが上昇してしまうという問題があった。サイドローブレベルが上昇すると偽像が生じる可能性が高くなり、船舶用レーダ装置では、避けるべきである。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、主ビームに対してサイドローブレベルを低減させた誘電体アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による誘電体アンテナは、所定周波数の電波を放射するアンテナ素子と、アンテナ素子の前方に設けられていて電波の指向性に寄与する誘電体と、アンテナ素子及び誘電体を囲うアンテナカバーと、誘電体の先端側に設けられた誘電体板部とアンテナカバーの先端部とで形成された二重構造部と、二重構造部内に設けられた追加誘電体と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、誘電体の先端側の二重構造部内に追加誘電体を設けたため、アンテナ素子から放射される電波に誘電体で指向性を与えると共に追加誘電体によって主ビームの指向性を維持しながらその両側の広角全体においてサイドローブレベルを低減させることができる。
【0009】
追加誘電体の厚さは、誘電体の先端の約2倍以上の厚さで、アンテナカバーの先端部の厚さの約1/2以下に設定されていることが好ましい。
【0010】
厳密には、追加誘電体の厚さは、誘電体の先端の2.4倍以上の厚さで、アンテナカバーの先端部の厚さの0.55倍以下に設定されていることが好ましい。
追加誘電体の厚さが誘電体の先端の厚さの2.4倍以上でアンテナカバーの先端部の厚さの0.55倍以下に設定することで、広角に亘ってサイドローブレベルを低減させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明による誘電体アンテナによれば、誘電体の先端に誘電体の先端より厚みの大きい追加誘電体を備えたため、主ビームの両側の広角全体に亘ってサイドローブレベルを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態による誘電体アンテナの斜視図である。
【
図2】
図1に示す誘電体アンテナの端部の拡大図である。
【
図3】誘電体アンテナのレドームを破断して示すアンテナ素子の斜視図である。
【
図4】実施形態による誘電体アンテナの縦断面図である。
【
図5】比較例1による誘電体アンテナの縦断面図である。
【
図6】比較例2による誘電体アンテナの縦断面図である。
【
図7】第一実施形態による誘電体アンテナと比較例1,2の指向性を示すグラフである。
【
図8】誘電体アンテナの指向性を示すグラフである。
【
図9】誘電体アンテナの指向性を示すグラフである。
【
図10】誘電体アンテナの指向性を示すグラフである。
【
図11】(a)は比較例3による誘電体アンテナを示す断面図、(b)は比較例4による誘電体アンテナを示す断面図である。
【
図12】実施形態による誘電体アンテナと比較例3、4の指向性を示すグラフである。
【
図13】誘電体アンテナの変形例を示すものであり、(a)は第一変形例、(b)は第二変形例の縦断面図である。
【
図14】誘電体アンテナの変形例を示すものであり、(a)は第三変形例、(b)は第四変形例、(c)は第五変形例、(d)は第六変形例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による誘電体アンテナについて説明する。
図1乃至
図4は実施形態による誘電体アンテナ1を説明するものである。
図1乃至
図3において、本実施形態による誘電体アンテナ1は例えば船舶用レーダであり、船舶等の屋外で回転させながら使用する。この誘電体アンテナ1は、所定周波数の電波を放射するアンテナ素子2と、アンテナ素子2の前方に配設された例えば板状の誘電体3と、これらアンテナ素子2及び誘電体3を囲う例えば薄型のアンテナカバーレドーム(以下、単にレドームという)4とを備えている。
【0014】
アンテナ素子2は所定周波数の電波を放射する輻射器として機能する放射素子である。アンテナ素子2は例えば導波管スロットアレイアンテナからなるものであり、例えば金属で構成されている。アンテナ素子2として導波管スロットアレイアンテナ以外にパッチアンテナやダイポールアンテナ等を用いてもよい。
【0015】
図4に示す誘電体アンテナ1の断面視で、レドーム4はアンテナ素子2と誘電体3とを仕切る仕切部6と誘電体3の前方の端面である先端部7とを備えている。先端部7の誘電体3側には誘電体板部8が形成され、レドーム4の先端部7と誘電体板部8との間に空間を形成する二重構造部9を構成している。
レドーム4はアンテナ素子2を収納する第1の空間4aと誘電体3を収納する第2の空間4bと二重構造部9を有する第3の空間4cとを備えている。
【0016】
レドーム4の第2の空間4b内に設置された誘電体3はアンテナ素子2の電波の指向性に寄与するもので、例えば先細となるテーパ状の断面形状を有しており、例えばポリプロピレンなどの樹脂材料を用いる。誘電体3はレドーム4内の厚さL方向中央に配設され、発泡材等の支持部材15で支持されている。支持部材15はアンテナ素子2から射出される電波の指向性形成に影響を与えない。
そして、二重構造部9において、誘電体板部8と先端部7との間に誘電体3の先端より厚みの大きい追加誘電体11が形成されている。追加誘電体11は誘電体板部8と先端部7に連結され、二重構造部9の高さ方向中央部に形成されている。追加誘電体11は、例えば断面四角形状に形成されている。
しかも、レドーム4と二重構造部9と追加誘電体11とは、例えばAES樹脂等の同一素材でそれぞれ形成されている。
【0017】
次に、本実施形態による誘電体アンテナ1の効果について、
図5、
図6に示す比較例1,2との比較により、アンテナ放射特性をシミュレーションで立証する。
本実施形態による誘電体アンテナ1として、
図4に付記した寸法を備えたものを実施例1として用いる。即ち、実施例1の誘電体アンテナ1は、レドーム4の高さ(厚み)をL、追加誘電体11の厚みをT、誘電体3の先端の厚みをaとする。アンテナ素子2から放射する電波の波長λとして、例えばL=1.1λ、T=0.6λ、a=0.05λとした。その他の部分の厚みや長さは、
図4に示すように、誘電体3の基部の厚みを0.2λ、レドーム4の仕切部6から先端部7までの長さ(レドーム長さ)を4.7λ、二重構造部9の空間の幅を0.2λとした。
【0018】
比較例1は、
図5に示すように実施例1の誘電体アンテナ1に対して、その先端に二重構造部9と追加誘電体11を設けない構成の誘電体アンテナ22である。比較例1は上述の特許文献2をベースにしたものである。
比較例2は、
図6に示すように実施例1の誘電体アンテナ1に対して、その先端に二重構造部9を設けても追加誘電体11を設けない構成の誘電体アンテナ23である。比較例2は上述の特許文献3をベースにしたものである。
【0019】
実施例1、比較例1、比較例2のシミュレーション結果は
図7に示すとおりである。
即ち、実施例1による誘電体アンテナ1は、アンテナ放射特性について、誘電体アンテナ1の主ビーム(0deg)付近の電波の指向性に対して広角(±45deg~±180degの範囲)においてサイドローブのレベルを低くすることができる。
これに対し、
図5に示す比較例1では、主ビーム(0deg)付近ではビーム幅20degに亘る指向性を実現できる。しかしながら、広角(±45deg~±180degの範囲)においてサイドローブのレベルが高かった。
また、
図6に示す比較例2では、主ビームに対して、±90deg~±180degの範囲ではサイドローブを下げる効果はあるが、±45deg~±90degの範囲ではサイドローブのレベルが高かった。
【0020】
次に、本実施形態による誘電体アンテナ1において、追加誘電体11によってサイドローブのレベルを主ビームに対して十分低減できる範囲をシミュレーションによって立証する。この効果を確実に実現することのできる追加誘電体11の厚み寸法Tの範囲と電波の指向性との関係を
図8から
図10に示すシミュレーション結果によって求めた。
【0021】
即ち、
図4に示す実施形態による誘電体アンテナ1の構成において、追加誘電体11の厚さTを0.03λ、0.06λ、0.09λ、0.12λ、0.15λまで変化させた場合の指向性の変化を
図8に示すシミュレーション結果によって得た。更に、比較のために、上述した比較例1より良い結果の比較例2、即ち、上述した二重構造部9を有するが、追加誘電体11を設けない場合のサイドローブレベルを提示した。
同様に、追加誘電体11の厚さTを0.15λ、0.30λ、0.45λ、0.60λまで変化させた場合のシミュレーション結果を
図9に示す。更に、追加誘電体11の厚さTを0.60λ、0.63λ、0.66λ、0.69λ、0.72λまで変化させた場合のシミュレーション結果を
図10に示す。
【0022】
図8~
図10に示すシミュレーション結果から、次のことが言える。
即ち、
図8に示すように、追加誘電体11の厚さTが誘電体3の先端の厚さa(=0.05λ)よりも薄い場合や厚さaより大きいが近接した厚さの場合(例えばT=0.03λ、0.06λ、0.09λ)、比較例2と比較して僅かに広角サイドローブを低減させる効果があるにすぎない。
これに対し、
図9に示すように、追加誘電体11の厚さTが誘電体3の先端部分の厚さaに対して約2倍以上かつレドーム高さL(=1.1λ)の約半分程度の場合(例えばT=0.12λ~0.60λの範囲)には、比較例2に比べて大幅に広角でサイドローブの低減効果がある。
一方、
図10に示すように、追加誘電体11の厚さTがレドーム4の高さLの約半分程度を超える場合(本例ではT=0.60λ超以上が相当する)には、広角サイドローブ低減効果が徐々に弱くなる傾向がある。
【0023】
従って、実施形態による誘電体アンテナ1において、追加誘電体11により広角サイドローブ低減効果を十分に発現させるための条件は、追加誘電体11が誘電体3の前方にあることと、追加誘電体11の厚みTはレドーム4の高さL(=1.1λ)の半分程度を上限としてそれ以下の範囲にすることにある、と認定できる。
そのため、追加誘電体11を付加することで、広角(±45deg~±180degの範囲)サイドローブ低減効果を生じることのできる追加誘電体11の厚みTの範囲は、次式で示すように、誘電体3の先端の厚みaに対して約2倍程度からレドーム高さの半分程度までの範囲であるといえる。
約2a≦T≦約L/2(=0.60λ)
【0024】
なお、
図8~
図10に示す結果から、広角サイドローブ低減効果が十分得られるのは0.12λ≦T≦0.60λの範囲である。この関係を
図4に示す誘電体アンテナ1における数値aとLとの関係で正確に表示すると、次の式で示すことができる。
2.4a≦T≦0.55L
即ち、追加誘電体11の厚さTは、誘電体3の先端の厚さaの2.4倍以上の厚さで、レドーム4の先端部7の厚さLの0.55倍以下の範囲に設定されている。これを上述した式では、約2a≦T≦約L/2と扱っていた。
【0025】
次に
図11(a)、(b)は実施形態による誘電体アンテナ1に対して二重構造部9を設けずに、追加誘電体11を先端部7の外側に設けた誘電体アンテナ24を比較例3、内側に設けた誘電体アンテナ25を比較例4とした。実施形態による誘電体アンテナ1と比較例3、比較例4との関係についてのシミュレーション結果を説明する。
図11(a)に示す比較例3による誘電体アンテナ24では、誘電体板部8は形成されておらず、レドーム4の先端部7の外側に例えば四角形断面形状の追加誘電体11が突出して形成されている。
図11(b)に示す比較例4による誘電体アンテナ25では、誘電体板部8は形成されておらず、レドーム4の先端部7の内側で高さ方向中央に四角形断面形状の追加誘電体11が形成されている。
【0026】
図12に実施形態、比較例3、比較例4のシミュレーション結果のグラフを示す。比較例3、比較例4は主ビームの角度領域(-45deg~+45deg)では実施形態と同様なサイドローブ低減効果を発揮できる。しかし、その外側の広角(±45deg~±180degの範囲)の範囲では、比較例3、比較例4は実施形態に対してサイドローブ低減効果は小さく限定的であった。
即ち、追加誘電体11によるサイドローブレベル低減効果は概ね±45deg~±135degの範囲で機能するものといえ、±45deg~±180degの広範囲ではレドーム4の先端部分を二重構造部9にし且つその内部に追加誘電体11を配設したことでサイドローブレベル低減効果を得られると認定できる。
【0027】
上述したように本実施形態による誘電体アンテナ1によれば、誘電体3の先端側に二重構造部9を設けると共にその空間4c内に追加誘電体11を設けたため、主ビームの角度領域(-45deg~+45deg)に対してその外側の広角(±45deg~±180degの範囲)の範囲にわたってサイドローブを低減できるという効果を奏する。
【0028】
なお、本発明による誘電体アンテナ1は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な置換や変形等を適用することができる。以下に本発明の変形例や他の実施形態について説明するが、上述した実施形態と同一または同様な部分や部材には同一の符号を用いて説明する。
【0029】
図13(a)、(b)は実施形態による誘電体アンテナ1の変形例として、誘電体アンテナ1A,1Bを示すものである。
図13(a)に示す第一変形例において、追加誘電体11Aは長方形に代えて誘電体板部8からレドーム4の先端部7に向けて厚みが減少する断面台形状に形成されている。本第一変形例における追加誘電体11Aの厚みは断面台形の底辺がTの大きさに設定されていればよく、上述の第一実施形態と同一の作用効果を奏することができる。
図13(b)に示す第二変形例において、追加誘電体11Bは長方形に代えて誘電体板部8からレドーム4の先端部7に向けて厚みが増大する断面逆台形状に形成されている。本第二変形例における追加誘電体11Bの厚みは断面台形の底辺がTの大きさに設定されていれば、上述の第一実施形態と同一の作用効果を奏することができる。
【0030】
次に
図14(a)、(b)、(c)、(d)は実施形態の第三~第六変形例による誘電体アンテナ1C~1Fを示すものである。
図14(a)に示す第三変形例による誘電体アンテナ1Cでは、二重構造部9の誘電体板部8からレドーム4の先端部7に向けて厚みTの追加誘電体11Cが途中まで延びた断面四角形状に形成されており、先端部7との間に隙間が形成されている。
図14(b)に示す第四変形例による誘電体アンテナ1Dでは、二重構造部9のレドーム4の先端部7から誘電体板部8に向けて厚みTの追加誘電体11Dが途中まで延びており、誘電体板部8との間に隙間が形成されている。これらの場合でも上述した実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0031】
図14(c)に示す第五変形例による誘電体アンテナ1Eでは、追加誘電体11Eは誘電体板部8からレドーム4の先端部7に向けて厚みが減少しながら途中まで延びた断面台形状に形成されている。追加誘電体11Eと先端部7との間に隙間が形成されている。本第五変形例における追加誘電体11Eの厚みは断面台形の底辺が厚さTの大きさに設定されていればよい。
図14(d)に示す第六変形例による誘電体アンテナ1Fでは、追加誘電体11Fは誘電体板部8からレドーム4の先端部7に向けて厚みが増大しながら途中まで延びた断面逆台形状に形成されている。追加誘電体11Fと先端部7との間に隙間が形成されている。本第六変形例における追加誘電体11Fの厚みは断面台形の底辺が厚さTの大きさに設定されていればよい。これらの場合も、上述の第一実施形態と同一の作用効果を奏することができる。
【0032】
なお、これらのほかに、追加誘電体11の断面形状として、円形や三角形等、適宜の断面形状のものを採用できる。
また、上述した第一実施形態による誘電体アンテナ1ではレドーム4内に設置した誘電体3について先細のテーパ状に形成したが、誘電体3はテーパ状に代えて同一厚みで平板状をなす板状でもよい。
【0033】
また、上述した第一実施形態や各変形例による誘電体アンテナ1等において、誘電体3はアンテナ素子2側からレドーム4の先端部7に向けて次第にその厚みが減少するテーパ状や、同一厚みの板状に形成したが、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、誘電体3は電波の指向性に寄与することのできる他の適宜の断面形状を採用できる。
また、レドーム4内に収納された誘電体3は1本だけ設置したが、この構成に代えて、高さ方向に間隔を開けて複数本設置してもよいことは言うまでもない。
なお、本発明において、各実施形態のレドーム4はアンテナカバーに含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F 誘電体アンテナ
2 アンテナ素子
3 誘電体
4 レドーム
4a 第1の空間
4b 第2の空間
4c 第3の空間
6 仕切部
7 先端部
8 誘電体板部
9 二重構造部
11、11A、11B、11C、11D、11E、11F 追加誘電体
15 支持部材