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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】電気装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20220420BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20220420BHJP
   B81B 7/02 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
B81B7/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018130738
(22)【出願日】2018-07-10
(65)【公開番号】P2020008760
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 功之
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-184591(JP,A)
【文献】国際公開第2012/144341(WO,A1)
【文献】特開平04-172414(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145943(WO,A1)
【文献】特開2006-221171(JP,A)
【文献】特開2014-186136(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0034790(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08,26/10
G02B 7/18-7/198
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板部と、該基板部から相互に平行に起立して頂面が起立方向に対する直角面で形成されている1対の柱部と、各柱部の前記頂面から前記起立方向に突出する位置決め用突出部とを有する基板部材と、
ミラー部を有する光偏向器と、
前記基板部材の各位置決め用突出部に嵌合する嵌合孔が形成されていて前記基板部材の各柱部の前記頂面に固定される1対の板状端部と、該1対の板状端部に対して所定の傾斜角度を有して該1対の板状端部の間に介在し、前記基板部材側の面に前記光偏向器が固着される板状中間部とを有するブラケットと、
前記光偏向器を前記基板部材側から覆うように、前記ブラケットの前記板状中間部に固定され、前記光偏向器のミラー部との対向部位が透明部材となっているキャップと、
を備えることを特徴とする電気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気装置において、
前記位置決め用突出部は、前記柱部の前記頂面から突出する直立ピンであることを特徴とする電気装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電気装置において、
前記ブラケットの前記板状端部を前記柱部の前記頂面に固定するねじを備え、
前記位置決め用突出部は、前記柱部の前記頂面に開口するねじ孔の周縁から前記板状端部の厚みより小さい寸法を有して、隆起し、外周が前記板状端部の前記嵌合孔に嵌合する円周隆起を有し、
前記ねじは、頭部を前記板状端部に当てつつ、軸部において前記円周隆起を貫通して、前記柱部の前記ねじ孔に螺合していることを特徴とする電気装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電気装置において、
前記基板部材の前記基板部に固定されて、前記柱部の前記起立方向に前記光偏向器の前記ミラー部に向けて光を出射するレーザ光源を備え、
前記レーザ光源からの光が前記キャップの前記透明部材の外面で反射する反射光の向きは、前記光偏向器の前記ミラー部の反射光が前記透明部材を内面側から外面側に通過して向かう方向範囲の外になるように、前記起立方向に対する前記透明部材の傾斜角度が設定されていることを特徴とする電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の光偏向器を装備する電気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2は、光偏向器を封入するパッケージを開示する。該パッケージは、レーザ光が通過可能なカバーガラスを有し、カバーガラスで反射する反射光が、光偏向器のミラー部からの反射光の反射方向と重ならない方向に反射するように、パッケージのカバーガラスの傾斜角度が設定されている。
【0003】
光偏向器を装備する電気装置では、ミラー部の法線の向きをミラー部への入射光に対して所定の傾斜角度に設定するため、光偏向器は、入射光に対して傾斜させて取り付けられる必要がある。
【0004】
従来の電気装置では、パッケージは、全体が1つの平板部から成る構造になっている。したがって、光偏向器を入射光に対して傾斜させるためには、パッケージ全体が入射光に対して傾斜して取り付けられる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-221171号公報
【文献】特開2017-219852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光偏向器のパッケージ全体が入射光に対して傾斜して取り付けられる一例の取付構造では、基板部材におけるパッケージの載置面が、入射光に対して傾斜して形成され、位置決め用ピンが、載置面から直立して形成されている。そして、パッケージは、その嵌合孔に、位置決め用ピンを嵌挿されて、載置面に固定される。
【0007】
このようなパッケージの取付構造では、位置決め用ピンが入射光に対して傾斜しているため、パッケージの厚みのばらつきや、載置面へパッケージの押込みのばらつきのために、光偏向器のミラー部(例:1mmφ)に入射する入射光の位置が基準位置(例:ミラー部の中心)からずれ易くなっている。
【0008】
ミラー部における入射光の入射位置が基準位置からずれると、反射光が迷光になってしまう。また、迷光を防止するためにも、入射光の強度を大きくできないという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、光偏向器の位置決め精度を改善した電気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電気装置は、
基板部と、該基板部から相互に平行に起立して頂面が起立方向に対する直角面で形成されている1対の柱部と、各柱部の前記頂面から前記起立方向に突出する位置決め用突出部とを有する基板部材と、
ミラー部を有する光偏向器と、
前記基板部材の各位置決め用突出部に嵌合する嵌合孔が形成されていて前記基板部材の各柱部の前記頂面に固定される1対の板状端部と、該1対の板状端部に対して所定の傾斜角度を有して前記1対の板状端部の間に介在し、前記基板部材側の面に前記光偏向器が固着される板状中間部とを有するブラケットと、
前記光偏向器を前記基板部材側から覆うように、前記ブラケットの前記板状中間部に固定され、前記光偏向器のミラー部との対向部位が透明部材となっているキャップと、
を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、基板部材の柱部の頂面は、柱部の起立方向に対して直角面で形成され、位置決め用突出部は、該頂面から柱部の起立方向に突出している。一方、ブラケットは、柱部の頂面に固定される両端部の1対の板状端部と、1対の板状端部の間に介在して光偏向器が固着される板状中間部とを有している。また、各板状端部には、位置決め用突出部に嵌合する嵌合孔が形成されているとともに、板状中間部は、1対の板状端部に対して所定の傾斜角度で傾斜している。この結果、光偏向器は柱部の起立方向に対して所定の傾斜角度の傾斜に保持されつつ、板状端部の嵌合孔は、柱部の起立方向から位置決め用突出部に嵌合する。したがって、板状端部の厚みや頂面への板状端部の押込みのばらつきがあっても、光偏向器のミラー部が柱部の起立方向に対する直角面方向にずれることが防止される。これにより、光偏向器の位置決め精度が改善される。
【0012】
本発明の電気装置において、好ましくは、前記位置決め用突出部は、前記柱部の頂面から突出する直立ピンである。
【0013】
この構成によれば、直立ピンは、十分な長さにして、板状端部を貫通させることができる。これにより、光偏向器の位置決め精度が一層改善される。
【0014】
本発明の電気装置において、好ましくは、
前記ブラケットの前記板状端部を前記柱部の前記頂面に固定するねじを備え、
前記位置決め用突出部は、前記柱部の前記頂面に開口するねじ孔の周縁から前記板状端部の厚みより小さい寸法を有して、隆起し、外周が前記板状端部の前記嵌合孔に嵌合する円周隆起を有し、
前記ねじは、頭部を前記板状端部に当てつつ、軸部において前記円周隆起を貫通して、前記柱部の前記ねじ孔に螺合している。
【0015】
この構成によれば、位置決め用突出部は、板状端部を柱部の頂面に固定するねじのねじ孔を利用して形成される。この結果、直立ピンを省略して、頂部の頂面の構造を簡単化することができる。
【0016】
本発明の電気装置において、好ましくは、
前記基板部材の前記基板部に固定されて、前記柱部の起立方向に前記光偏向器の前記ミラー部に向けて光を出射するレーザ光源を備え、
前記レーザ光源からの光が前記キャップの前記透明部材の外面で反射する反射光の向きは、前記光偏向器の前記ミラー部の反射光が前記透明部材を内面側から外面側に通過して向かう方向範囲の外になるように、前記起立方向に対する前記透明部材の傾斜角度が設定されている。
【0017】
この構成によれば、レーザ光源からの入射光のうち、キャップの透明部材で反射する反射光が、光偏向器のミラー部で反射して、透明部材から外部に出射する反射光と重なることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電気装置を装備する光投射装置の模式図。
図2A】実施形態の電気装置の斜視図。
図2B図2AのIIB矢視図。
図3A】比較例の電気装置の斜視図。
図3B図3AのIIIB矢視図。
図4】MEMSの光偏向器の正面図。
図5】光偏向器のパッケージの分解図。
図6A】ブラケットの正面図。
図6B】ブラケットの側面図。
図7】光偏向器がブラケットの中央面部に固着した状態で中央面部に正対する方向からブラケットを見た図。
図8】パッケージとキャップとの抵抗溶接時の状態図。
図9】電気装置における各要素間の角度関係を示す図。
図10】位置決め用突出部の別の構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[光投射装置]
図1は、本発明の実施形態の電気装置2を装備する光投射装置1の模式図である。光投射装置1は、電気装置2、補正ミラー3、波長変換部材などの拡散板4及び拡大投影レンズ5を備えている。
【0020】
電気装置2は、基板部材10と、基板部材10の基板部11に固定されて出射光としてのレーザ光Lrを出射するレーザ光源12と、レーザ光源12からの入射光をミラー部131で反射して、反射光を補正ミラー3に向けて出射する光偏向器13とを備えている。ミラー部131は、後述するように、2軸の回りに往復回動するので、ミラー部131からの反射光は、2次元走査の走査光Lsとして補正ミラー3に入射する。
【0021】
補正ミラー3は、光偏向器13から入射して来る走査光Lsの出射方向を補正して、拡散板4に出射する。補正ミラー3における走査光Lsの出射方向の補正により、走査光Lsは、拡散板4の入射面上における走査速度が均一化される。
【0022】
レーザ光源12は、図示していない光源制御装置により輝度を制御される。こうして、拡散板4の入射面は、結像面として機能する。走査光Lsは、拡散板4の出射面側から出射し、拡大投影レンズ5を経て図示していない路面などのスクリーンに照射される。走査光Lsが、スクリーン上に生成する配光パターン又は映像は、拡散板4の結像面に生成された結像に一致する。
【0023】
[電気装置]
図2Aは、電気装置2の斜視図、図2Bは、図2AのIIB矢視図である。図3Aは、電気装置2xの斜視図、図3Bは、図3AのIIIBの方向から見た図である。電気装置2xは、本発明の実施形態の電気装置2と比較する比較例である。電気装置2xの構成要素において、電気装置2の構成要素と一致するものについては、電気装置2の構成要素に付けた符号と同一の符号を付けている。
【0024】
図2A図3Bにおいて、Xa軸、Ya軸及びZa軸の3軸の直交座標系を定義する。基板部材10の基板部11は、矩形の板状に形成されており、Xa軸及びYa軸は、それぞれ矩形の基板部11の長辺及び短辺に平行な軸として定義される。Za軸は、レーザ光源12から出射するレーザ光Lrの出射方向に平行な軸として定義される。
【0025】
実施形態の電気装置2について説明する。基板部材10は、基板部11の他に、1対の柱部17を有する。1対の柱部17は、間にレーザ光源12を挟んで、基板部11のレーザ光源12の取付側の面から直立している。したがって、1対の柱部17は、相互に平行に基板部11から突出しているとともに、Za軸方向に突出している。
【0026】
柱部17は、Za軸方向に頂面18側に向かって、径をわずかずつだが減少させており、全体として円錐台に形成されている。柱部17は、レーザ光源12が発生する熱を伝達されて、表面から放散するヒートシンクとしての機能を有する。なお、図2A及び図2B(後述の図3A及び図3Bも同様)では、柱部17の一部は、その後ろ側の構造を分かり易くするために、それぞれ半透視又は除去して描かれている。
【0027】
各柱部17の頂面18は、レーザ光Lrに対して直角面に形成されている。直立ピン19は、頂面18から直立し、Za軸に平行に所定の寸法を有して、突出している。レーザ光源12の2本の端子ピン20は、基板部11を貫通し、基板部11の下面から突出している。
【0028】
ブラケット24は、Xa軸方向に長い寸法を有し、中心側から両端側に順番に中央面部25、1対の連結面部26及び1対の端側面部27を有している。中央面部25は、端側面部27に対して所定の傾斜角度αで傾斜している。
【0029】
光偏向器13は、ブラケット24の中央面部25の下面に固着されている。複数の接続ピン30は、中央面部25の上面から突出している。接続ピン30は、電気装置2の外から光偏向器13の対応の電極パッド137(図4)に配線される(図7)。
【0030】
ブラケット24は、端側面部27の嵌合孔39(図5)に直立ピン19に嵌合させて、柱部17の頂面18に固定される。直立ピン19は、柱部17が起立する方向としての起立方向に突出しているので、頂面18へのブラケット24の固定の際は、起立方向としてのA方向にブラケット24は押込まれる。なお、A方向は、レーザ光源12から出射するレーザ光Lrに平行な方向でもある。
【0031】
レーザ光源12から出射したレーザ光Lrは、Za軸方向に直進し、光偏向器13のミラー部131(図1)の中心に入射する。光偏向器13は、レーザ光Lrの入射方向に対して傾斜している中央面部25に取り付けられているので、端側面部27に対する中央面部25の傾斜角度αに対応する方向に存在する補正ミラー3の方へ光偏向器13から出射する。
【0032】
図3A及び図3Bの比較例の電気装置2xについて、電気装置2との相違点を述べる。電気装置2xでは、柱部17xの頂面18xが、Za軸に対して直角面となることなく、該直角面に対して傾斜角度αで傾斜した傾斜面となっている。この結果、直立ピン19xは、Za軸に対して傾斜角度αで傾斜したB方向に突出する。
【0033】
一方、ブラケット24xは、全体が1つの平面体となっている。すなわち、ブラケット24xでは、ブラケット24の連結面部26が存在せず、中央面部25x及び端側面部27xは、同一の平面上に位置する。
【0034】
ブラケット24xは、端側面部27xの嵌合孔39に直立ピン19を嵌合させつつ、次に、直立ピン19xの直立方向に一致するB方向に押し込まれる。その後、固定ねじ75(図10)で頂面18xに固定される。
【0035】
[光偏向器]
図4は、MEMSの光偏向器13の正面図である。単独の光偏向器13の構造自体は、例えば、本出願人に係る特開2017-134133号公報等で周知である。したがって、光偏向器13について、簡単に説明する。
【0036】
図4において、光偏向器13は、ミラー部131、可動枠132及び固定枠133を備えている。説明の便宜のために、図4において、Xb軸、Yb軸及びZb軸の3軸の直交座標系を定義する。Xb軸及びYb軸は、矩形の固定枠133の長辺及び短辺にそれぞれ平行な軸として定義される。Zb軸は、固定枠133の厚み方向に平行になっている。
【0037】
光偏向器13は、2次元光偏向器である。すなわちミラー部131は、2軸の回りに往復回動する。上下1対のトーションバー134は、ミラー部131からYb軸に沿って延び出して可動枠132の内周に結合している。内側圧電アクチュエータ135は、可動枠132とトーションバー134との間に介在して、トーションバー134を介してミラー部131をトーションバー134の軸線(第1軸)の回りに往復回動させる。
【0038】
外側圧電アクチュエータ136は、ミアンダパターンで直列結合された複数の圧電カンチレバーを備え、可動枠132と固定枠133との間に介在する。外側圧電アクチュエータ136は、可動枠132をXb軸の軸線(第2軸)の回りに往復回動させる。この例では、トーションバー134の軸線の回りのミラー部131の往復回動の周波数は、共振を利用した周波数とされ、Xb軸の軸線の回りのミラー部131の往復回動の周波数より十分に大きい。
【0039】
電極パッド137は、固定枠133の表面に設けられ、内側圧電アクチュエータ135及び外側圧電アクチュエータ136の電極に光偏向器13の内部配線を介して接続されている。
【0040】
[パッケージ]
図5は、光偏向器13のパッケージ34の分解図である。パッケージ34は、ブラケット24及びキャップ35を含む。パッケージ34は、金属製の缶パッケージであり、ブラケット24及びキャップ35は、例えば共に鋼製である。光偏向器13は、ブラケット24とキャップ35との間に密封される。ブラケット24の各端側面部27には、挿通孔38及び嵌合孔39が穿設されている。嵌合孔39は、挿通孔38より連結面部26に寄った位置にある。
【0041】
固形接着剤(例:熱硬化型シリコーン接着剤)43は、光偏向器13の固定枠133に合わせた枠形状を有し、固定枠133の裏面と中央面部25の面との間に挟まれる。固形接着剤43は、加熱されて、溶融して、固定枠133の裏面を中央面部25の下面(内面)に接着させる。接着後の固形接着剤43の硬化は、例えば150℃で2hである。
【0042】
キャップ35は、鋼製の覆い部46と、覆い部46の中心部に位置する窓ガラス47とを有している。覆い部46は、窓ガラス47の周辺において外面側に所定量隆起している。したがって、円形の窓ガラス47の周部は、覆い部46の隆起部に被覆される。この結果、窓ガラス47内を厚み方向に全反射しつつ、面方向に広がる光があっても、覆い部46の隆起部に当たり、窓ガラス47から外への放射が阻止される。
【0043】
光偏向器13が、固形接着剤43により中央面部25に固着された後、キャップ35がフランジ周縁において中央面部25に抵抗溶接される。これにより、光偏向器13は、中央面部25とキャップ35との間の密封される。
【0044】
図6A及び図6Bは、それぞれブラケット24の正面図及び側面図である。ザグリ50は、光偏向器13の固定枠133の内周よりわずかに小さい寸法及び形状で中央面部25の中央に形成される。ザグリ50は、ミラー部131等の可動部が光偏向器13の作動中、中央面部25と接触しないことを保証するために、形成される。
【0045】
複数の露出端部52は、ザグリ50を包囲する矩形の周線に沿って等間隔で中央面部25に露出している。露出端部52は、接続ピン30の封入側の端である。露出端部52は、金属の中央面部25との短絡を防止するために、絶縁体としての筒状ガラスに被覆されている。
【0046】
ザグリ51は、接続ピン30の露出端部52の配列の一部に割り込んで、中央面部25に形成されている。ザグリ51には、乾燥剤(図示せず)が充填され、光偏向器13がキャップ35により密封された後、内部の水分を吸収する。
【0047】
溶接用隆起54は、接続ピン30の露出端部52の配列線を包囲するように、中央面部25に隆起して形成される。溶接用隆起54には、キャップ35のフランジが当てられる。
【0048】
図6Bにおいて、αは、端側面部27に対する中央面部25の傾斜角度を示している。αは、Ya軸-Za軸平面に平行な平面における中央面部25と端側面部27との交角でもある。
【0049】
図7は、光偏向器13が中央面部25に固着した状態で中央面部25に正対する方向からブラケット24を見た図である。光偏向器13は、前述したように、固定枠133の背面側において固形接着剤43により中央面部25に固着される。
【0050】
中央面部25への光偏向器13の固着後、光偏向器13の電極パッド137と中央面部25の露出端部52とは、対応するもの同士がホンディングワイヤ57により相互に接続される。この結果、パッケージ34の外から接続ピン30に駆動電圧を印加して、パッケージ34内の光偏向器13の内側圧電アクチュエータ135及び外側圧電アクチュエータ136を駆動可能になる。
【0051】
図8は、パッケージ34とキャップ35との抵抗溶接時の状態図である。鋼製のキャップ35の周縁フランジが鋼製の溶接用隆起54に載置される。次に、上側電極60は、下端の周縁部をキャップ35の周縁フランジに当てられ、下側電極61は、中央面部25の下面側(外面側)に当てられる。次に、上側電極60及び下側電極61間に高電圧が印加され、キャップ35は、パッケージ34の溶接用隆起54に抵抗溶接される。
【0052】
[キャップの窓ガラスの傾斜角度]
図9は、電気装置2における各要素間の角度関係を示している。頂面18及び端側面部27は、Za軸に対して直角面となっている。中央面部25は、Xa軸-Ya軸平面に対して傾斜角度α(例:22.5°)で傾斜している。窓ガラス47は、中央面部25に対して傾斜角度β(例:5°)で傾斜している。
【0053】
レーザ光源12からパッケージ34内の光偏向器13のミラー部131の中心に入射するレーザ光Lrは、少量ではあるが、窓ガラス47で反射して、反射光Ltとなる。一方、レーザ光Lrの大半は、窓ガラス47を通過し、ミラー部131に反射する。前述したように、ミラー部131は、2軸の回りに往復動しているので、レーザ光Lrがミラー部131で反射した光は、2次元の走査方向に走査する走査光Lsとなって、窓ガラス47の内面の側から外面の側に通過し、補正ミラー3へ向かう。
【0054】
α>βにより、反射光Ltは、走査光Lsの方向範囲としての走査範囲に進入することなく、該走査範囲から離れる方向に向かう。こうして、スクリーン(図示せず)の配光パターン又は映像の品質が保証される。
【0055】
[電気装置の作用・効果]
電気装置2の作用を比較例の電気装置2xと対比しつつ、説明する。比較例の電気装置2xでは、ブラケット24xは、レーザ光Lrの入射方向に対して斜めに突出する直立ピン19xに沿って、すなわち、図3Bの矢印Bの方向にブラケット24xを柱部17xの頂面18xの方へ押し込んでいく。
【0056】
このため、ブラケット24xの厚みのばらつきや頂面18xの押込みのばらつきがあると、ブラケット24xは、矢印Bの方向の基準位置に対してずれが生じる。このずれの量をδとすると、光偏向器13のミラー部131の中心は、レーザ光Lrに対してXa軸-Ya軸平面方向には、δ・sin(α)のずれが生じる。
【0057】
これに対し、電気装置2では、ブラケット24は、レーザ光Lrの入射方向に対して平行に突出する直立ピン19に沿って、すなわち、図2Bの矢印Aの方向にブラケット24を柱部17の頂面18の方へ押し込んでいく。
【0058】
このとき、ブラケット24の厚みのばらつきや頂面18の押込みのばらつきがあると、ブラケット24が、矢印Aの方向の基準位置からずれが生じる。このずれの量をδとすると、α=0°であるので、光偏向器13のミラー部131の中心は、レーザ光Lrに対してXa軸-Yb軸平面方向のずれは、δ・sin0°=0となる。
【0059】
[別の位置決め用突出部]
図10は、直立ピン19の代替とされる位置決め用突出部の構造を示している。図10の挿通孔38は、図6Aの挿通孔38より径を少し増大される。円周隆起部71は、柱部17の頂面18から隆起して形成されている。円周隆起部71の隆起量は、端側面部27の厚みより小さく設定されている。
【0060】
円周隆起部71の外周の径は、挿通孔38の径に一致する。したがって、円周隆起部71及び挿通孔38は、それぞれ直立ピン19及び嵌合孔39の機能を有する。こうして、円周隆起部71が挿通孔38に嵌合することにより、ブラケット24が柱部17上で位置決めされる。
【0061】
固定ねじ75は、頭部76と軸部77とを有する。軸部77は、頂面18に開口するねじ孔72に螺合し、頭部76は、周縁において端側面部27の上面を頂面18側に押圧する。環状間隙78は、円周隆起部71の頂面と頭部76の下面との間に形成される。
【0062】
[変形例]
本実施形態の電気装置2では、キャップ35は、光偏向器13のミラー部131との対向部位が窓ガラス47になっている。本発明では、透明部材として窓ガラス47の代わりに透明樹脂を用いてもよい。
【0063】
本実施形態の電気装置2では、ブラケット24は、圧延鋼のプレス成形品から成り、ブラケット24の中央面部25及び端側面部27がそれぞれ本発明のブラケットの板状中間部及び板状端部に相当する。本発明のブラケットは、圧延鋼のプレス成形品でなくてもよい。
【符号の説明】
【0064】
2・・・電気装置、10・・・基板部材、11・・・基板部、12・・・レーザ光源、13・・・光偏向器、17・・・柱部、18・・・頂面、19・・・直立ピン(位置決め用突出部)、24・・・ブラケット、25・・・中央面部(板状中間部)、27・・・端側面部(板状端部)、34・・・パッケージ、35・・・キャップ、38・・・挿通孔、39・・・嵌合孔、47・・・窓ガラス(透明部材)、71・・・円周隆起部(位置決め用突出部)、72・・・ねじ孔、75・・・固定ねじ(ねじ)、76・・・頭部、77・・・軸部、131・・・ミラー部。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10