(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】接着剤及びそれを用いた積層シート、並びに積層構造体
(51)【国際特許分類】
C09J 133/14 20060101AFI20220420BHJP
C09J 127/12 20060101ALI20220420BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220420BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20220420BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220420BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J127/12
C09J11/06
B32B5/18 101
B32B27/00 M
B32B27/30 A
B32B27/30 D
(21)【出願番号】P 2018177039
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】田中 康典
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-087727(JP,A)
【文献】特開2017-145682(JP,A)
【文献】特開2013-194072(JP,A)
【文献】特開2014-133815(JP,A)
【文献】特開2006-348208(JP,A)
【文献】特開2004-292529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 5/18
B32B 27/00
B32B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度上昇によって炭化断熱層を形成する熱発泡性シートに適用する接着剤であって、
前記接着剤が、合成樹脂及び架橋剤を含み、
前記合成樹脂が、水酸基含有アクリル樹脂、及びフッ素樹脂を含
み、
前記水酸基含有アクリル樹脂と、前記フッ素樹脂の混合比率(固形分重量比)が99.5:0.5~80:20であることを特徴とする接着剤。
【請求項2】
接着剤、及び温度上昇によって炭化断熱層を形成する熱発泡性シートが積層された積層シートであって、
前記接着剤が、合成樹脂及び架橋剤を含み、
前記合成樹脂が、水酸基含有アクリル樹脂、及びフッ素樹脂を含
み、
前記水酸基含有アクリル樹脂と、前記フッ素樹脂の混合比率(固形分重量比)が99.5:0.5~80:20であることを特徴とする積層シート。
【請求項3】
基材面に対し、接着剤、及び温度上昇によって炭化断熱層を形成する熱発泡性シートが積層された積層構造体であって、
前記接着剤が、合成樹脂及び架橋剤を含み、
前記合成樹脂が、水酸基含有アクリル樹脂、及びフッ素樹脂を含
み、
前記水酸基含有アクリル樹脂と、前記フッ素樹脂の混合比率(固形分重量比)が99.5:0.5~80:20であることを特徴とする積層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度上昇によって炭化断熱層を形成する熱発泡性シートに適用する接着剤、及びそれを用いた積層シート、並びに積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築構造物においては、建築物を火災から保護する目的で、柱、梁、床、壁等の主要構造物を耐熱構造にすることが求められている。
耐熱構造を施す方法の一つとして、主要構造物等の基材に、熱によって発泡(膨張)するシート状の部材(熱発泡性シート)を被覆する方法がある(例えば、特許文献1、特許文献2等)。熱発泡性シートは、平常時は薄くて軽量であり、火災等による温度上昇には、発泡・炭化して断熱層を形成し、耐熱保護性を発揮する効果を有するものである。このような熱発泡性シートは、通常粘着剤や接着剤等で貼着するだけで、比較的簡単に施工でき、余分なスペースを必要とせず、厚みを均一にできるといった特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-60763号公報
【文献】特開2017-145682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、熱発泡性シートを、粘着剤や接着剤を介して基材に貼着した場合、熱により発泡して形成された炭化断熱層を保持することが困難な場合があり、所望の耐熱保護性能が維持しにくい場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題を解決するために、鋭意研究を行った結果、接着剤として、特定の合成樹脂を含むことにより、平常時には優れた接着性を有し、温度上昇時には優れた脱落防止性及びズレ落ち防止性を発揮して、十分な耐熱保護性が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.温度上昇によって炭化断熱層を形成する熱発泡性シートに適用する接着剤であって、
前記接着剤が、合成樹脂及び架橋剤を含み、
前記合成樹脂が、水酸基含有アクリル樹脂、及びフッ素樹脂を含み、
前記水酸基含有アクリル樹脂と、前記フッ素樹脂の混合比率(固形分重量比)が99.5:0.5~80:20であることを特徴とする接着剤。
2.接着剤、及び温度上昇によって炭化断熱層を形成する熱発泡性シートが積層された積層シートであって、
前記接着剤が、合成樹脂及び架橋剤を含み、
前記合成樹脂が、水酸基含有アクリル樹脂、及びフッ素樹脂を含み、
前記水酸基含有アクリル樹脂と、前記フッ素樹脂の混合比率(固形分重量比)が99.5:0.5~80:20であることを特徴とする積層シート。
3.基材面に対し、接着剤、及び温度上昇によって炭化断熱層を形成する熱発泡性シートが積層された積層構造体であって、
前記接着剤が、合成樹脂及び架橋剤を含み、
前記合成樹脂が、水酸基含有アクリル樹脂、及びフッ素樹脂を含み、
前記水酸基含有アクリル樹脂と、前記フッ素樹脂の混合比率(固形分重量比)が99.5:0.5~80:20であることを特徴とする積層構造体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の接着剤は、特定の合成樹脂を含有するもので、温度上昇によって炭化断熱層を形成する熱発泡性シートに用いられ、平常時には優れた接着性を有し、温度上昇時には優れた耐熱性を発揮し、脱落防止性及びズレ落ち防止性を発揮して、基材の耐熱保護性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の積層シートの一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の積層構造体の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0009】
1.熱発泡性シート
2.接着剤
3.離型性シート
4.基材
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
本発明の接着剤は、熱発泡性シートの積層に適用されるものであり、例えば、
・接着剤、及び温度上昇によって炭化断熱層を形成する熱発泡性シートが積層された積層シート、
・基材面側から順に、粘着剤、熱発泡性シートが積層された積層構造体、
として使用することができる。
【0011】
本発明の接着剤は、合成樹脂及び架橋剤を含み、該合成樹脂が、水酸基含有アクリル樹脂、及びフッ素樹脂を含むことを特徴とする。このような接着剤を使用することによって、優れた接着性を有するとともに、温度上昇時には優れた耐熱性を発揮し、脱落防止性及びズレ落ち防止性を発揮して、基材の耐熱保護性を高めることができる。その作用機構は以下に限定されるものではないが、水酸基含有アクリル樹脂が形成する樹脂骨格中にフッ素樹脂が組み込まれることにより、樹脂骨格の分解温度が高温領域にシフトするため、優れた耐熱性を発揮し、本発明の効果が得られるものと考えられる。なお、本発明の接着剤には、粘着剤も包含される。
【0012】
水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基含有モノマー、アルキル含有(メタ)アクリル系モノマーを必須成分とし、必要に応じて、その他のモノマーとを共重合することにより得られるものである。
【0013】
重合方法としては公知の方法を採用すればよく、例えば、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等が採用でき、重合時には、開始剤等を使用することもできる。
【0014】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー等の1級水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー、
2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー、
2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー、
また、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0015】
アルキル含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0016】
その他のモノマーとしては、例えば、
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマー、
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー、
(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー、
アクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー、
グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー、
γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の加水分解性シリル基含有ビニル系モノマー、
スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族炭化水素系ビニルモノマー、
スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸含有ビニルモノマー、
塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン等の塩素含有モノマー、
エチレン、プロピレン、イソブチレン等のα-オレフィン、
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル、
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル、
エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル等のアリルエーテル、
等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0017】
本発明の接着剤において、上記水酸基含有アクリル樹脂と、併用する(混合して用いる)フッ素樹脂としては、特に限定されないが、例えば、
(i)含フッ素モノマーの単独又は共重合体、
(ii)含フッ素モノマーと、水酸基含有モノマー、その他の重合性モノマーとの共重合体、
等が挙げられる。また、フッ素樹脂の態様としては、溶剤可溶型樹脂、非水分散型樹脂等の溶剤系樹脂、あるいは粉末樹脂であってもよいが、本発明では、溶剤可溶型樹脂が好適である。
【0018】
上記(i)(ii)の含フッ素モノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等のパーフルオロオレフィン類、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフルオロオレフィンモノマー、
パーフルオロメチルメタクリレート、パーフルオロイソノニルメチルメタクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフルオロエチルアクリレート等のフルオロアルキル基含有アクリル系モノマー、が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0019】
上記(i)の含フッ素モノマーの単独又は共重合体としては、具体的には、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリビニリデンフルオライド、ポリトリフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの単独重合体;
テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体などの共重合体が挙げられる。
【0020】
また、上記(i)は、アクリル樹脂で変性されたものも使用することができる。このようなアクリル樹脂複合フッ素含有樹脂としては、例えば、アクリル樹脂とフッ素樹脂との混合物及び/または反応物が使用でき、特に、粉末状のアクリル樹脂複合ポリテトラフルオロエチレンは、接着剤中での分散性に優れ、本発明の効果をよりいっそう高めることができる。
【0021】
上記(ii)の水酸基含有モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル;エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル等のヒドロキシアリルエーテル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0022】
その他の重合性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル含有(メタ)アクリル系モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド含有モノマー;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマー等が挙げられ、必要に応じこれらの1種または2種以上が使用できる。
【0023】
本発明では、フッ素樹脂が上記(ii)含フッ素モノマーと、水酸基含有モノマーを必須成分とし、その他の重合性モノマーとを共重合することに得られる水酸基含有フッ素樹脂であることが好ましい。これにより、発明の効果をよりいっそう高めることができる。その作用機構は以下に限定されるものではないが、水酸基含有フッ素樹脂は、水酸基含有アクリル樹脂が形成する樹脂骨格中に安定的に組み込まれやすい、樹脂骨格の分解温度を安定して高温領域にシフトさせることができ、優れた耐熱性を発揮し、本発明の効果を高めることができると考えられる。
【0024】
上記水酸基含有アクリル樹脂と、上記フッ素樹脂の混合比率(固形分重量比)は、好ましくは99.5~0.5~80:20、(より好ましくは99:1~90:10、さらに好ましくは98:2~92:8)である。このような範囲の場合、平常時には優れた接着性を有し、温度上昇時には優れた脱落防止性及びズレ落ち防止性を発揮することができる。上記範囲の上限値以下である場合には、優れた接着性を示し、上記範囲の下限値以上である場合には、温度上昇時には優れた脱落防止性及びズレ落ち防止性を十分に発揮することができる。
【0025】
本発明の接着剤に含まれる架橋剤としては、例えば、イソシアネート基含有化合物等が挙げられる。
【0026】
上記イソシアネート基含有化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系化合物;1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系化合物;1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族イソシアネート系化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびこれらのイソシアネート系化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0027】
上記架橋剤の混合比率は、上記合成樹脂の固形分100重量部に対して、好ましくは0.5~20重量部、(より好ましくは1~10重量部、さらに好ましくは2~5重量部)ある。このような範囲の場合、本発明の効果を十分に発揮することができる。上記範囲の上限値以下である場合には、優れた接着性を示し、上記範囲の下限値以上である場合には、温度上昇時には優れた脱落防止性及びズレ落ち防止性を十分に発揮することができる。
【0028】
本発明では、上記水酸基含有アクリル樹脂等と、上記架橋剤の反応を促進する硬化触媒を併用することができる。硬化触媒とは、例えば、イソシアネート基が反応して硬化するのを促進させる作用を有する物質である。硬化触媒としては、例えば、アミン系触媒、有機金属系触媒、及び無機系触媒等各種が挙げられる。
【0029】
本発明の接着剤は、上記合成樹脂及び架橋剤を含むものであれば特に限定されないが、この他に公知の添加剤が含まれていれもよい。添加剤としては、特に限定されないが、充填剤、着色剤、希釈剤、粘接着付与剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0030】
このうち酸化防止剤としては、例えば、リン系、硫黄系又はヒンダード型フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。このような酸化防止剤を含むことにより、平常時だけでなく、火災等による温度上昇に際しても合成樹脂の劣化を抑制することができ、優れた耐熱性を発揮することができる。
【0031】
熱安定剤としては、例えば、カルシウム、バリウム、亜鉛等の金属石鹸系熱安定剤等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。このような熱安定剤を含むことにより、接着剤の架橋性が向上し、優れた耐熱性を発揮することができる。
【0032】
本発明の熱発泡性シートは、温度上昇(好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上)によって発泡し、炭化層を形成するものである。熱発泡性シートの構成成分としてしては、例えば、樹脂成分、難燃剤、発泡剤、炭化剤及び充填剤を含有するものが好適である。このうち、樹脂成分としては、例えば、ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂等、難燃剤としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム等、発泡剤としては、例えば、メラミン、ジシアンジアミド、アゾジカーボンアミド等、炭化剤としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等、充填剤としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン等が挙げられる。
【0033】
各成分の配合比率は、好ましくは、固形分換算で、樹脂成分100重量部に対して、難燃剤50~1000重量部、発泡剤5~500重量部、炭化剤5~600重量部、及び充填剤10~300重量部である。
【0034】
本発明の熱発泡性シートは、さらに、顔料、繊維等を含有することもできる。 顔料としては、一般の着色顔料(有機顔料・無機顔料)が使用できる。さらに、耐熱保護性をより高めるために膨張性黒鉛、未膨張バーミキュライト等を配合しても良い。
【0035】
本発明で用いる熱発泡性シートは、公知の方法で製造することができる。例えば、前述の合成樹脂、難燃剤、発泡剤、炭化剤などを適量配合した組成物に、必要に応じて適当な溶媒を加えて型枠内に流し込み、乾燥後に脱型する方法;前記組成物を加温塗工機によって離型紙に塗付した後に巻き取る方法;ニーダーによって混練した前記組成物を押し出し成型機によってシート状に加工する方法;ニーダーによって混練した前記組成物を対ロールの間に供給してシート状に加工する方法;前記組成物をペレット状にした後に押し出し成型機によってシート状に加工する方法;バンバリーミキサー、ミキシングロール等で混練した前記組成物を複数の熱ロールからなるカレンダによって圧延してシート状に加工する方法等が挙げられる。
【0036】
また、熱発泡性シートには、補強シートを積層することもできる。補強シートとしては、例えば、織布又は不織布、メッシュ等が挙げられる。このような補強シートを積層することによって、接着性・密着性を高めるとともに、脱落防止性、ズレ落ち防止性をより防ぐことができる。
【0037】
本発明の熱発泡性シートの厚さは、適用部位等により適宜設定すれば良いが、好ましくは0.2mm以上10mm以下、より好ましくは0.5mm以上6mm以下である。
【0038】
本発明の積層シートは、熱発泡性シートの一面に上記接着剤による接着剤層を形成したものである。また、積層シート(
図1)は、接着剤層の表面を離型性シートで覆うこともできる。このような積層体とすることにより、熱発泡性シートを容易に貼着することができ、作業効率が向上する。
【0039】
上記離型性シートは、本発明の積層シートの保管もしくは運搬中などにおいて、接着材層を保護し、積層シートを使用する際には接着剤層から容易に剥離できるものである。このような離型性シートとしては、特に限定されず公知のものを使用することができる。例えば、シリコン、ワックス、弗素樹脂などの離型剤を塗布もしくは含浸した紙あるいはフィルム、又は該離型剤を含まずそれ自体離型性を有するポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂フィルム等が挙げられる。
【0040】
積層シートの製造方法としては、特に限定されないが、熱発泡性シートの一面に接着剤を塗付け、その上に離型性シートを積層する方法、あるいは、離型性シートの上に接着剤を塗付け、その上に熱発泡性シートを積層する方法等が挙げられる。上記方法において、接着剤を塗付け、その上に各シートを積層する場合は、そのまま(未乾燥のまま)積層しても、乾燥させた後に積層してもよい。この場合の接着剤の使用量としては、特に限定されないが、塗付け量(固形分量)が25g/m2以上300g/m2以下程度であればよい。また、本発明の積層シートは、積層シートの長尺体を作成し、積層シートを渦巻き状に巻回した巻回体とすることもできる。巻回体とする場合、その外側になる層が、熱発泡性シート、離型性シートのどちらであってもよいが、離型性シートが外側になるように巻回することが好ましい。このような巻回体は、必要な長さに応じてカットして使用でき、施工時に巻回体から積層シートを繰り出し、離型性シートを剥離して接着材層露出させ、該接着材層を基材側に向けて貼着して使用することができる。この際、必要に応じて圧着等を行うこともできる。
【0041】
本発明の積層構造体(
図2、
図3)は、基材に接着剤を介して熱発泡性シートを貼着することで得ることができる。基材としては、耐熱保護性を必要とするものであれば特に限定されないが、主として建築構造物の柱、梁、床、壁等を構成する材料が挙げられ、例えば、金属で形成されているH鋼、鉄骨丸柱、鉄骨角柱、あるいは、モルタル、コンクリート、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、炭酸カルシウム発泡板、不燃火山性ガラス質複層板、繊維強化セメント板、軽量セメント板等が挙げられる。また、基材表面は、サビ止め剤やサビ止め塗料にて処理されたものでもよい。
【0042】
本発明では、このような基材に、上記接着剤を介して、熱発泡性シートを被覆することにより、耐熱保護性を有する積層構造体を得ることができる。
【0043】
被覆方法としては、特に限定されないが、例えば、
・上記積層シートを基材に貼着する方法、
・基材側及び/または熱発泡性シート側に接着剤を塗付けそのまま接着する方法、
・基材側及び/または熱発泡性シート側に接着剤を塗付け接着剤を乾燥させた後、圧着して接着する方法、
等が挙げられる。接着剤の使用量としては、特に限定されないが、塗付け量(固形分量)が25g/m2以上300g/m2以下程度であればよい。また、離型性シート、接着剤、熱発泡性シートが積層された積層シートを用いる場合は、離型性シートを剥離し、基材に接着すればよく、必要に応じて圧着等を行うこともできる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0045】
(接着剤の製造)
表1に示す配合に従って、各原料を常法により混合し、接着剤1~7として用いた。
なお、原料としては以下のものを使用した。
・水酸基含有アクリル樹脂(固形分54重量%、酢酸エチル、芳香族炭化水素溶媒含有)
・フッ素樹脂:水酸基含有フッ素樹脂(クロロトリフルオロエチレンービニルエーテルーヒドロキシアルキルビニルエーテル、水酸基価52mgKOH/g、固形分60重量%、芳香族炭化水素溶媒含有)
・架橋剤:イソシアネート化合物(トリレンジイソシアネート系化合物、固形分45重量%、酢酸エチル溶媒)
・溶剤:酢酸エチル
・添加剤:可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、触媒
【0046】
【0047】
(熱発泡性シートの製造)
エチレン‐酢酸ビニル樹脂100重量部、メラミン75重量部、ジペンタエリスリトール75重量部、ポリリン酸アンモニウム370重量部及び酸化チタン105重量部を含む原料混合物を、ニーダーを用いて充分に混練後、押出し成形機によってシート状に加工し、膜厚1mmの熱発泡性シートを作製した。
【0048】
(実施例1)
1.接着性試験
熱発泡性シート(25mm×50mm)の片面の半面(25mm×25mm)に接着剤1を200g/m2塗付け、23℃で3時間乾燥させた。同様に鋼板(150mm×70mm×1.6mm)の片面に接着剤1を100g/m2塗付け、23℃で3時間乾燥させた。
次に、熱発泡性シートの接着剤塗付け面と、鋼板の接着剤塗付け面を、圧着して貼り合わせ、試験体を得た。(なお、この試験体は、熱発泡性シートの半面が鋼板に接着していない(非接着部分を有する)態様である。)
接着性試験では、上記試験体を熱発泡性シートが下側となるように水平に設置し、該熱発泡性シート1の非接着部分を90°に折り曲げ、熱発泡性シート折り曲げ部分の先端に200gの重りを吊り下げ、鋼板から熱発泡性シートが剥がれ落ちるまでの時間を測定した。評価は次の5段階で行った。結果は表2に示す。
A:2時間以上
B:1時間以上2時間未満
C:30分以上1時間未満
D:15分以上30分未満
E:15分未満
【0049】
2.脱落試験1
熱発泡性シート(70mm×70mm)の片面の全面に接着剤1を100g/m2塗付け、23℃で3時間乾燥させた。同様に鋼板(150mm×70mm×1.6mm)の片面に接着剤1を100g/m2塗付け、23℃で3時間乾燥させた。
次に、熱発泡性シートの接着剤塗付け面と、鋼板の接着材塗付け面を、圧着して貼り合わせ、試験体を得た。
脱落試験1では、熱発泡性シートが下側となるように水平に設置し、該試験体の上側25mmの位置にヒーター(ヒーター温度680℃)を設置し、ヒーターにより試験体を加熱し、鋼板から熱発泡性シートが脱落したときの鋼板と熱発泡性シート境界面温度を測定した。評価は次の4段階で行った。結果は表3に示す。
◎:脱落温度300℃以上
○:脱落温度280℃以上300℃未満
△:脱落温度260以上280℃未満
×:脱落温度260℃未満
【0050】
3.脱落試験2
脱落試験1と同様の方法で試験体を得た。
脱落試験2では、試験体を垂直に設置し、試験体(熱発泡性シート面側)から横方向に50cmの位置にプロパンガスバーナーを設置した。
脱落試験2では、プロパンガスバーナーにより試験体を1分加熱し、熱発泡性シートの状態を評価した。評価は次の3段階で行った。結果は表3に示す。
○:脱落せず
△:一部脱落した
×:脱落した
【0051】
(実施例2~5、比較例1~2)
表2に示す接着剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、試験体を作製し、接着性試験、脱落試験1、脱落試験2を行った。評価は表2に示す。
【0052】