(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】吹出機能を備えた流入部ステータを有する後方フェアリング推進システムを備えた航空機
(51)【国際特許分類】
F02K 1/38 20060101AFI20220420BHJP
B64D 27/10 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
F02K1/38
B64D27/10
(21)【出願番号】P 2018502255
(86)(22)【出願日】2016-07-21
(86)【国際出願番号】 FR2016051883
(87)【国際公開番号】W WO2017013361
(87)【国際公開日】2017-01-26
【審査請求日】2019-07-12
(32)【優先日】2015-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロマノ,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】グリューベル,マチュー・シモン・ポール
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第02997681(FR,A1)
【文献】米国特許第03363419(US,A)
【文献】特開昭54-158511(JP,A)
【文献】特開昭64-016497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02K 1/38
B64D 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体(1)および推進アセンブリを備えた航空機であって、前記推進アセンブリが、出力タービン(3)と、少なくとも2つの別個のガスジェネレータ(2a、2b)であって、各々が一次フローダクト(3a、3b)に配置された、少なくとも2つの別個のガスジェネレータ(2a、2b)と、機体(1)の後方に、機体の延長部分において、長手軸(XX)に沿って配置された少なくとも1つのファンロータ(7、8)であって、ファンロータ(6、7)が、出力タービン(3)によって駆動される、少なくとも1つのファンロータ(7、8)と、空気流(F)が通る、前記少なくとも1つのファンロータ(7、8)のためのフェアリングを形成するナセル(14)と、を備え、各一次フローダクト(3a、3b)が、出力タービンに供給する中心ダクト(4)に向かって集中することと、航空機が、前記少なくとも1つのファンロータ(7、8)の上流側に取り付けられ、機体(1)とナセル(14)との間に延びる複数のラジアルステータアーム(15、17)を備え、前記ラジアルステータアーム(15、17)が、前記ラジアルステータアーム(15、17)の後縁部(15b、17b)の近位において、後縁部(15b、17b)の延長部分において、前記空気流(F)に加わる追加の空気流(Fs)を吹き出すように構成された吹出手段を備えていることと、を特徴とする、航空機であって、
各ラジアルステータアーム(15)は、ラジアルステータアーム(15)の内側に延在し且つ前記吹出手段に供給する空気
供給導管を少なくとも備え、前記吹出手段は、ラジアルステータアーム(15)のスパンに沿って設けられており、
前記ラジアルステータアーム(15)は、実質的に台形の形状を有し、
ラジアルステータアーム(15)は、機体と交差する下方の細長いベースと、ナセルと交差する短い外部のベースと、軸XXに実質的に並行な方向において、機体とナセルとを接続している前縁部と、ナセル(14)に入る流れ(F)を実質的に横断する後縁部とを備え、
航空機は、スパンに沿った吹出手段の位置に応じて、および/または飛行条件
中に、経時的に、追加の空気流を変化させるように構成された流量制御装置を備える、航空機。
【請求項2】
吹出手段が、内側の径方向端部に近い部分よりも、外側の径方向端部に近い部分で、より多くの流れを提供することにより、ラジアルステータアーム(15)のスパンに沿って追加の空気流(Fs)の流れを差動的に分配するように構成されている、請求項1に記載の航空機。
【請求項3】
吹出手段が、推進アセンブリの作動条件にしたがって、経時的に、追加の空気流(Fs)の流れを変化させるように構成されている、請求項1または請求項2に記載の航空機。
【請求項4】
中間プロファイルの両側において径方向に延びる2つの側面を備えた各ラジアルステータアーム(15、17)とともに、吹出手段が、後縁部(15b、17b)の上流側で追加の空気流(Fs)を吹き出すように、前記側面に配置されたオリフィス(29)を備えている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の航空機。
【請求項5】
前記オリフィス(29)の流出部に配置された、一方が他方に対してスライドする2つのグリッド(31、32)が、追加の空気流(Fs)を調整するための調整手段を形成する、請求項4に記載の航空機。
【請求項6】
前記オリフィス(29)の各々が、前記オリフィス(29)が位置する径方向の距離に関して、ラジアルステータアーム(15)の弦の長さの5%から10%の間の、長手軸(XX)に沿う延長部分を有している、請求項4または請求項5に記載の航空機。
【請求項7】
複数のラジアルステータアームが、ナセル(14)を保持するように構成された、少なくとも複数の保持アーム(15)を備えている、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の航空機。
【請求項8】
前記ラジアルステータアーム(15)の後縁部(15b)と、前記空気流れ(F)に沿ってすぐ下流に位置するファンロータ(7)とを分離する距離が、前記ファンロータ(7)のベーンのスパン(E)の70%に実質的に対応する径方向の距離で測定され、前記ファンロータ(7)の外径(D)の20分の3に少なくとも実質的に等しい、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の航空機。
【請求項9】
複数のラジアルステータアームが、前記空気流(F)を軸方向にそらすように構成された可変ピッチの可動部(16)を備えた、少なくとも複数のアーム(15)を備えている、請求項8に記載の航空機。
【請求項10】
吹出オリフィス(29)が、前記可動部(16)の上流に位置している、請求項4と組み合わせられた、請求項9に記載の航空機。
【請求項11】
吹出手段は、内側の径方向端部に近い部分よりも、外側の径方向端部に近い部分において、より多くの流れを提供することによって、ラジアルステータアームのスパンに沿って追加の空気流(Fs)を差動的に分配するように構成される、請求項2に記載の航空機。
【請求項12】
吹出手段は、後縁部に沿って分配され且つ追加の空気を吹き出す複数のノズルを備えている、請求項2に記載の航空機。
【請求項13】
可変ピッチの可動部はそれぞれ、外側の径方向端部と内側の径方向端部との間に延びる高さを有し、可変ピッチの可動部の全高さで可動であることを特徴とする請求項2と組み合わせられた、請求項9に記載の航空機。
【請求項14】
各ノズルには、各ラジアルステータアームの内側に延在する導管によって供給される、請求項1に記載の航空機。
【請求項15】
各ノズルは、吹出が存在しない場合、後退可能である、請求項12に記載の航空機。
【請求項16】
空気供給導管は、吹出手段と連通する内部キャビティ内に現れている、請求項1に記載の航空機。
【請求項17】
可変ピッチの可動部は、後縁部に配置されており、前縁部に平行な径方向軸に沿って延びている、請求項9に記載の航空機。
【請求項18】
前記複数のノズルの各ノズルは、管状の形状を有し、ラジアルステータアームの面から突出し、複数のノズルは、後縁部を形成する、請求項12に記載の航空機。
【請求項19】
各側面の各オリフィスは同じ径方向高さで互いに対しており、
径方向軸に垂直な同一平面内の、オリフィス、空気供給導管、および、内部キャビティは、T字形の流路を形成している、請求項4と組み合わせられた、請求項16に記載の航空機。
【請求項20】
前記可変ピッチの可動部は、ラジアルステータアームの後縁部を形成する後縁部を有する、請求項10に記載の航空機。
【請求項21】
各ラジアルステータアームの後縁部は、ナセルに流入する一次流を実質的に横断しており、機体と直角
である角度を形成する方向に実質的に沿って延在する、請求項1に記載の航空機。
【請求項22】
ナセルは、径方向内面と径方向外面とを備え、各ラジアルステータアームの前縁部は機体の外面およびナセルの径方向外面と表面連続性を有する、請求項1に記載の航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の下流側に配置された1つまたは複数のファンによって推進される、飛行機、特に民間用飛行機などの、航空機に関する。より詳細には、本発明は、ナセルによってファンに空気が送られる場合に関する。本発明は、前記ナセル内に入る空気流を分配するための手段に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンを機体の後部に有するタイプのタービンエンジンが、たとえば、仏国特許出願公開第2997681号明細書の特許出願および仏国特許発明第1339141号明細書の特許出願に提案されている航空機の構造に見られる。この場合では、タービンエンジンは、境界層の吸収を通して空力的抗力を制限しつつ、騒音公害および航空機の燃料消費を低減する観点から、前記機体の下流側の機体の延長部分に一体にされている。
【0003】
そのような構造では、航空機は、互いに逆方向に回転するファンに空気が送られるタービンエンジンによって推進される。このタービンエンジンは、航空機の機体の後部と一体になっている。一般に、タービンエンジンは、出力タービンに供給する、少なくとも2つのガスジェネレータを備えている。この出力タービンは、ガスジェネレータの下流側に配置された2つのファンを駆動するための、互いに逆方向に回転する2つのロータを有する。ガスジェネレータは、各ガスジェネレータに供給するための、別個の側部の空気取入口を有している。
【0004】
ファンは、航空機の機体の延長部分において、ガスジェネレータの下流側に配置され、概して、前記航空機に接続された環状リングを介して供給され、それにより、機体の周りに形成された境界層の一部を吸収するようになっている。ファンの直径は、およそ、機体のもっとも大である部分の直径である。ファンの回転速度は、概して、慣習的なタービンエンジンの回転速度よりも低くなっており、特に、これにより、ベーンヘッドにおける速度が亜音速とすることができるようになっている。
【0005】
2つのファンは、圧縮比が低く、流量が高い推進アセンブリを形成する。この場合、前記推進アセンブリの動作および操作性は、ナセル内への空気流の導入に関する条件、特に、前記空気流の向きと一様性に関して特に繊細である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】仏国特許出願公開第2997681号明細書
【文献】仏国特許発明第1339141号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ナセルに入る流れのパラメータの少なくともいくつかを、推進アセンブリの作動条件に適合させるための解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明は、機体および推進アセンブリを備えた航空機であって、前記推進アセンブリが、出力タービンと、少なくとも2つの別個のガスジェネレータであって、各々が一次フローダクトに配置された、少なくとも2つの別個のガスジェネレータと、機体の後方に、機体の延長部分において、長手軸に沿って配置された少なくとも1つのファンロータであって、このファンロータが、出力タービンによって駆動される、少なくとも1つのファンロータと、空気流が通る、前記少なくとも1つのファンロータのためのフェアリングを形成するナセルと、を備え、各一次フローダクトが、タービンエンジンに供給する中心ダクトに向かって集まり、この航空機が、前記少なくとも1つのファンロータの上流側に取り付けられ、機体とナセルとの間に延びる複数のラジアルステータアームをさらに備え、前記ラジアルアームが、前記ラジアルアームの後縁部の近位において、後縁部の延長部分において、前記空気流に加わる追加の空気流を吹き出すように構成された吹出手段を備えている、航空機に関する。
【0009】
後縁部の延長部分に吹き出す空気は、アームに関連付けられた流れの局所的な減速、すなわち「後流(wake)」を制限する。この減速の制限は、前記流れに再びエネルギを与えることによる。特に、前記後流は、下流のファンロータのベーンに衝突する際の、ノイズの主要な発生源である。このため、前記後流を低減することにより、航空機の推進アセンブリによって生じるノイズが低減される。
【0010】
有利には、吹出手段は、好ましくは、内側の径方向端部に近い部分よりも、外側の径方向端部に近い部分で、より多くの流れを提供することにより、ラジアルアームのスパンに沿って追加の空気流の流れを差動的に分配するように構成されている。
【0011】
これにより、特に、機体から離れた位置で流速が大きくなるという事実を考慮することにより、後流を最小にするために、吹出を局所的な流れの条件に適合させることが可能になる。このため、航空機は、ラジアルアームの少なくとも2つの径方向の位置上の前記追加の流れの流量を差動的に調整するための手段を備えている。
【0012】
有利には、吹出手段は、推進アセンブリの作動条件に応じて、経時的に、追加の空気流の流れを変化させるように構成されている。これにより、たとえば、追加の空気流がガスジェネレータの圧縮段から取り込まれた場合、低速におけるエンジンの損失を最小にすることができる。
【0013】
好ましい実施形態によれば、各ラジアルアームが、中間プロファイルの両側において径方向に延びる2つの側面を備え、吹出手段は、後縁部の上流側で追加の空気流を吹き出すように、前記側面に配置されたオリフィスを備えている。
【0014】
前記オリフィスの流出部に配置された、一方が他方に対してスライドする2つのグリッドは、追加の空気流を調整するための調整手段を形成することができる。
【0015】
好ましくは、前記オリフィスの各々が、前記オリフィスが位置する径方向の距離に関して、ラジアルアームの弦の長さの5%から10%の間の、長手軸に沿う延長部分を有している。
【0016】
これにより、吹出の結果として生じるいずれの乱れをも最小にすることにより、追加の空気流を、後流における速度の損失を相殺するように適合された流量で導入することが可能になる。
【0017】
代替的実施形態では、吹出手段は、後縁部から追加の空気流を吹き出すためのデバイスを備えている。
【0018】
好ましくは、複数のラジアルアームが、ナセルを保持するように構成された、少なくとも複数の保持アームを備えている。
【0019】
上流側の複数の保持アームを使用することにより、ナセルによって支持される力の吸収の一様性と対称性とを向上させることが可能になる。このため、前記ナセルの剛性を低減させることができる。このことは、アセンブリの質量を低減することの助けになる。
【0020】
有利には、前記ラジアルアームの後縁部と、前記流れに沿ってすぐ下流に位置するファンロータとを分離する距離が、前記ファンロータのベーンのスパンの70%に実質的に対応する径方向の距離で測定され、前記ファンロータの外径の20分の3に少なくとも実質的に等しい。
【0021】
特に、ナセルの保持アームの場合、これにより、後流の影響を最小にするために、流れを一様にすること、および、追加の吹き出された空気と、混合されることになるメインの流れとの間の混合が可能になる。
【0022】
有利には、複数のラジアルアームが、前記空気流を軸方向にそらすように構成された可変ピッチの可動部を備えた、少なくとも複数のアームを備えている。
【0023】
ファンロータに入る空気流をそらすことにより、特に、空気流が航空機の機体に沿って流れる際に形成される、前記空気流の周方向の非一様性または歪みを整えることが可能になる。
【0024】
有利には、吹出オリフィスは、前記可動部の上流側に配置されている。
【0025】
有利には、追加の空気流は、継続的に、間欠的に出されるか、吹き出される
【0026】
有利には、そのような航空機は、一次流れを生成するように構成された少なくとも1つのガスジェネレータを備えたタービンエンジンを備えている。一次流れは、中心ダクトを介して、少なくとも1つの出力タービンに送られる。前記出力タービンは、機体の後方において、機体の延長部分に置かれ、前記出力タービンの周囲の前記少なくとも1つのファンロータを駆動する。
【0027】
有利には、中心ダクトは、出力タービンの上流に配置されている。
【0028】
有利には、中心ダクトは、ファンの上流に配置されている。
【0029】
有利には、出力タービンは、機体の後方において、機体の延長部分に設置されている。
【0030】
有利には、推進アセンブリは、機体の後方に配置されている。
【0031】
有利には、吹出手段は、ファンロータの上流に配置されている。
【0032】
添付図面を参照して、以下の非限定的な例の説明を読むことにより、本発明はよりよく理解され、本発明のさらなる詳細、特徴、および利点は、より明確に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明による航空機の後部と、この航空機の推進アセンブリとの長手方向の概略断面図である。
【
図2】本発明による航空機の後部と、この航空機の推進アセンブリとの概略側面図である。
【
図3】本発明による航空機の後部と、可動フラップが取り付けられた保持アームを通過する平面内における長手断面の、この航空機の推進アセンブリとの概略図である。
【
図4】本発明による航空機の後部と、可動ラジアルベーンを通過する平面内における長手断面の、この航空機の推進アセンブリとの概略図である。
【
図5】本発明に適用可能な可動アームフラップまたはラジアルステータベーンのピッチを調整するためのデバイスの概略図である。
【
図6】本発明による航空機の後部と、吹出デバイスが取り付けられた保持アームを通過する平面内における長手断面の、この航空機の推進アセンブリとの概略図である。
【
図7a】吹出手段の第1の変形形態が備えられた、本発明によるナセル保持アームの後縁部の部分の概略斜視図である。
【
図7b】吹出手段の第2の変形形態が備えられた、本発明によるナセル保持アームの後縁部の部分の概略斜視断面図である。
【
図8a】第1の位置に置かれ、吹出手段の第3の変形形態が備えられた、本発明によるナセル保持アームの、後縁部付近の概略断面図である。
【
図8b】第2の位置に置かれ、吹出手段の第3の変形形態が備えられた、本発明によるナセル保持アームの、後縁部付近の概略断面図である。
【
図9a】
図8aまたは
図8bに対応し、入射角がつけられていない可動フラップに関連する、吹出手段の第3の変形形態が備えられた、本発明によるナセル保持アームの、後縁部付近の概略断面図である。
【
図9b】
図8aまたは
図8bに対応し、入射角がつけられている可動フラップに関連する、吹出手段の第3の変形形態が備えられた、本発明によるナセル保持アームの、後縁部付近の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
航空機およびタービンエンジン
本発明は、
図1または
図2に示すタイプのタービンエンジンを備えた、飛行機などの航空機に特に適用可能である。
【0035】
図1に示すように、タービンエンジンは、航空機の機体1の長手軸XX上で中心に置かれている。前記タービンエンジンは、その上流側から下流側の方向に、ガスの流れ方向で、単一の出力タービン3に同時に供給する、2つの別個のガスジェネレータ2a、2bを備えている。タービンエンジンは、航空機の機体1の下流側の端部に設置されている。
【0036】
この文献を通して、軸方向および径方向との用語は、機体およびタービンエンジンの軸XXに言及している。同様に、上流側および下流側との用語は、前記軸に沿う主な流れの方向に言及している。
【0037】
本質的に既知の方式で、各ガスジェネレータ2a、2bは、少なくとも1つのコンプレッサ、1つの燃焼チャンバ、および少なくとも1つの高圧タービン(図示されていない)を備えている。
【0038】
各ガスジェネレータ2a、2bは、一次フローダクト3a、3b内に収容されている。別個の空気取入口4a、4bは、各ガスジェネレータ2a、2bに供給するために、これらダクト3a、3bに対して設けられている。
【0039】
図1に示す構成では、前記空気取入口4a、4bは、航空機の機体1に、ガスジェネレータ2a、2bの上流で接続されており、それにより、航空機の機体1の周りに形成された境界層の少なくとも一部を吸収するようになっている。より詳細には、前記空気取入口の内壁は、航空機の機体1に直接組み込まれている。
【0040】
本明細書に示されていない他の構成では、空気取入口4a、4bは、ガスジェネレータ2a、2bのコンプレッサに、機体1の境界層によって乱されていない流れを供給するために、機体1から離間させることができる。3つ以上のガスジェネレータ、たとえば、3つを、出力タービン3に供給するために使用することも、考えられる。
【0041】
いずれの場合でも、空気取入口4a、4bは、これら空気取入口4a、4bが、機体1の後ろに、以下に説明する推進アセンブリに入る流れFの、下流に形成し得る乱れを制限するように設計されている。さらに、この場合、前記空気取入口は、機体1の、前記推進アセンブリに向かって狭まりつつ進出する部分の始点に位置し、それにより、前記空気取入口をこの進出する部分から分けるようになっている。
【0042】
好ましくは、ガスジェネレータ2a、2bの2つの一次フローダクト3a、3bは、長手軸XX上で集まっており、上流方向でともに開口Vを形成している。この開口Vの開く角度は、好ましくは、80度から120度の間である。
【0043】
ガスジェネレータ2a、2bの2つの一次フローダクト3a、3bは、出力タービン3に供給する、中心の一次ダクト4で集まっている。ミキサ(図示されていない)は、好ましくは、ガスジェネレータ2a、2bを収容する2つのダクト3a、3bが集中する領域に配置されている。このミキサの目的は、中心の一次ダクト4の出口において単一の一様なガス流を形成するために、2つのガスジェネレータ2a、2bからのガス流を混合することである。
【0044】
中心ダクト4の出口における前記一次流れによって供給される出力タービン3は、機体1の延長部分に配置されている。前記出力タービン3は、少なくとも1つのファンロータを駆動する。この場合、出力タービンには、互いに逆方向に回転する2つのファンロータ7、8に関し、互いに逆方向に回転する2つのタービンロータ5、6が設けられている。前記タービンロータ5、6は、同軸であり、長手軸XX上で中心付けられている。これらロータは、航空機の構造に固定された内部ケーシング9周りに回転する。
【0045】
この場合、第1のタービンロータ5は、出力タービン3において、二次フローダクトから一次フローダクトを分離する筒状本体5aに接続されたベーンに対応する。二次フローダクトには、ファンロータ7、8が配置されている。第1のロータ5のベーンおよび筒状本体5aは、内部ケーシング9上で支持アーム10により、ロータ5の支持ベアリングに接続されている。この支持アーム10は、出力タービン3の上流で一次ダクトを通っている。
【0046】
同じ例では、第2のロータ6が、タービン3の一次ダクトの径方向内側の壁に接続され、第1のロータ5のベーン間で長手方向に挿入されたベーンに対応している。
【0047】
出力タービン3の下流には、第2のロータ6の径方向内側の部分が中心本体11によって延びている。さらに、この部分は、下流側のファンロータ8のベーンを支持するために、支持アーム12によってリング13に接続されている。さらに、前記リング13は、第1のロータ5の筒状本体5aを延長し、後方の延長部分を備え、それにより、中心本体11とともに、出力タービン3の流出部において一次排気パイプを形成するようになっている。
【0048】
図示の例では、推進アセンブリは、航空機の構造に固定されたナセル14によって空気が送られる2つのファンロータ7、8によって形成されている。ファンロータは、航空機の機体1の最大の外径に近い外径Dを有している。
【0049】
この場合、第1の上流側のファンロータ7は、出力タービン3の取入口に配置されている。このファンロータ7は、アーム10において、タービン3の第1のロータ5に接続されており、これにより、上流側の外部のシリンダ本体5aを支持している。前記上流側のファンロータ7は、こうして、出力タービン3の第1のロータ5と同じ速度で回転する。
【0050】
同じ例において、第2の下流側ファンロータ8は、出力タービン3の流出部に配置されている。このファンロータ8は、支持リング13およびその支持アーム12において、タービン3の第2のロータ6に接続されている。下流側のファンロータ8は、こうして、出力タービン3の第2のロータ6と同じ速度で回転する。
【0051】
ファン7、8に入る空気が部分的に航空機の機体の境界層で形成されることから、吸気の速度は、慣習的なタービンエンジンのファンに比べて低く、出力速度も、同一の圧縮比において、低くなる。これにより、前記ファンの推進性能および音の性能を向上させる。さらに、ファン7、8の有意な外径Dは、ファン7、8の回転速度が、出力タービン3のロータ5、6の回転速度と同様に、やはり、慣習的なタービンエンジンに比べて低く維持されることになることを意味している。
【0052】
さらに、説明されていない、実施形態の変形形態では、出力タービン3は、単一のロータとステータとにより、既知の方式で形成することができ、推進アセンブリは、前記ロータに関連付けられた1つのファンを有するのみである。
【0053】
ナセルの保持
図2を参照すると、ナセル14は、複数の周方向に配置された保持アーム15により、通常は3つか6つのアーム間で保持することができ、第1のファンロータ7の上流側のナセル14を、航空機1の固定構造に接続している。保持アームは、ナセル14をファンから、機体の分だけ延長する。保持アーム15の数を増大させることにより、ナセル14によって支えられる力の吸収の一様性および対称性を向上させることが可能になる。このため、ナセルの剛性を低減させることができる。このことは、アセンブリの質量を低減することの助けになる。
【0054】
しかしながら、目的は、ナセル14に入る流れFに関する保持アーム15の、乱れと抗力とを低減することである。前記保持アーム15は、このため、プロファイルが定められたフェアリングを備えている。このフェアリングは、航空機の機体1からナセル14に延びるラジアルベーンを形成する。
図2に示す例では、前記ベーンは、その機体1との交差部における下方の細長いベースと、ナセル14との交差部における短い外部のベースとの間に、実質的に台形の形状を有している。ナセル14に入る流れFの方向における上流では、前記ベーンは、前縁部15aを有している。この前縁部15aは、軸XXに実質的に並行な方向において、機体1とナセル14とを接続している。下流では、ナセル14に入る流れFに対して実質的に横断方向の前記ベーンの後縁部15bは、機体1に対して、直角に近い角度を形成する方向に進んでいる。
【0055】
可動フラップを有するアーム
図2および
図3を参照すると、本発明の第1の態様によれば、ナセル14の保持アーム15には、その後縁部15bにフラップ16を設けることができる。前記フラップの各々は、実質的に径方向かつ、後縁部15bに対して並行な軸Y周りに自在に回転することができ、保持アーム15のスパンで実質的に延びている。フラップは、
図3に見ることができるように、ナセルの流入部に配置されている。
【0056】
ファンロータ7、8に供給される流れFは、機体1に沿い、機体の形状の変化によるとともに、たとえば、前記機体に接続されているウィングなどの、図示されていない要素により、上流側で向きがそらされる。後縁部のフラップ16を可動にすることにより、前記流れFをファンロータ7の前方に向けることが可能になり、ファンロータに感知される入射角および関連する歪を最小にすることができる。2つのファンロータ7、8が、低圧縮比かつ高流量の推進アセンブリを形成する場合、ナセル14に入る空気流の歪みを最小にすることにより、前記推進アセンブリの動作および操作性を著しく向上させることができる。
【0057】
図3に示すように、これら可動フラップ16は、保持アーム15のスパンのほとんどにわたって延び、それにより、ナセル14に入る流れをすべて方向づけるようになっている。
図3では、可動フラップ16は、スパンに応じて実質的に一定である弦を有しているが、このことは、決して限定的ものではない。可動フラップの弦は、たとえば、上流側のファンロータ7のベーンの径方向端部に向かって流れFをより有意に変更することが有益である場合、機体1からナセル14に向かって増大させることができる。
【0058】
可動フラップ16のピッチ角は、すべての保持アーム15に関して同じ値を使用することで、まとめて調整することができるか、各保持アーム15の方位角の位置にしたがって、値を適合させることで、個別に調整することができる。この第2のオプションにより、推進アセンブリが、たとえば横風の場合など、非対称な流れFを供給する条件に対処することが可能になる。
【0059】
可動フラップ16のピッチ角の調整は、やはり一時的に変化させることができ、かつ、推進アセンブリに供給するための条件の変化により、制御することができる。たとえば、横風の場合、これにより、この横風の強さまたは向きの変化を考慮することが可能になる。
【0060】
可動ラジアルベーン
図4に示す、一実施形態の1つの変形形態では、機体1をナセル14に接続する可変ピッチのラジアルステータベーン17は、保持アーム15間で、好ましくは、前記アームの可動フラップ16と同じ軸方向のレベルで、方位角によって配置することができる。前記ベーンの各々は、軸XXに対してある傾きで、軸Y’周りに、自在に回転することができる。この傾きは、保持アーム15の可動フラップ16の回転軸Yの傾きに実質的に等しい。ベーンは、ナセル14の流入部に配置されている。
【0061】
この場合、ラジアルステータベーン17は、ナセル14を保持するための構造的機能を有していない。この例では、各ラジアルステータベーン17は、細長い形状を有しており、この形状は、好ましくは、3次元で、径方向に延びている。各ラジアルステータベーン17は、好ましくは、その長さにわたって実質的に一定であり、保持アーム15上の可動フラップ16の弦に実質的に等しい弦を有している。好ましくは、各ラジアルステータベーン17は、ラジアルステータベーン17によって受領されたいずれの流入空気流Fをもそらすために、前縁部17aおよび後縁部17bを有する空力的ボディを形成する。
【0062】
この場合、ラジアルベーン17のピッチは、調整可能であり、かつ、任意選択的には、保持アーム15の可動フラップ16に関して説明した条件と同じ条件にしたがって、個別またはまとめて制御される。ラジアルベーン17と可動フラップ16とのアセンブリは、こうして、ナセル14の流入部に、可変ピッチのラジアルステータアームのリングを形成している。
【0063】
互いに逆方向に回転するファンロータ7、8を有する図示の例では、可変ピッチのプロファイルの数を増大させることにより、ナセル14に入る流れFの非均一性を、より正確に修正することが可能になり、保持アーム15の数が制限される。可動フラップ16とラジアルベーン17のピッチ角の値は、好ましくは、通常は、絶対値で、15度未満である低いレンジの値の中で変化する。
【0064】
単一ファン
図示されていない、推進アセンブリがナセル14内に単一のファンロータを備えている場合では、可動フラップ16によって形成された可変ピッチのラジアルアームと、可変ピッチのラジアルベーン17とのアセンブリは、流入ガイドホイールとして作用することができる。むしろ、ファンロータの上流に取り付けられた、複数の可動フラップ16および複数の可変ピッチのステータベーン17は、流入空気流Fをそらし、それにより、そらされた空気流Fが軸方向および接線方向の成分を含むようにすることができる。次いで、そらされた空気流Fは、ファンロータのベーンによって軸方向に整流され、ナセル14を出る空気流が有利には、1つの支配的な軸方向の成分のみを含むように、圧縮される。
【0065】
好ましくは、そのような整流アセンブリは、少なくとも20の可変ピッチのラジアルベーン17および可動フラップ16のプロファイルを備えている。さらに、整流効果を得るために、ラジアルベーン17および可動フラップ16のピッチは、ファンロータに依存するが、少なくとも15度でなければならない。一方、通常は65度未満のままである。
【0066】
同様に、「スペーシング」として知られている空力の基準が考慮される場合、この基準は、可動フラップ16またはラジアルベーン17の弦の長さの、ヘッドの位置で隣接する、2つの可動フラップ16またはラジアルベーン17間の距離に対する比によって規定される。「スペーシング」の値は、0.8より大であり、それにより、整流効果を得るようになっている。比較により、保持アーム15に関し、流入する流れF上の前記保持アームの乱れを最小にするために、0.5未満の「スペーシング」の値が求められることになる。
【0067】
ピッチ補助システムへの追加
複数のデバイスを、可動フラップ16および/またはラジアルベーン17に関し、それらのそれぞれの回転軸Y、Y’周りで、適合した個別のピッチを生じさせるように設置することができる。可動フラップ16および/またはラジアルベーン17のピッチを個別に調整するための手段の実施形態が、説明的意味で、非限定的例として本明細書に与えられる。
【0068】
この例では、
図3および
図4を参照すると、可変ピッチを個別に調整するための調整手段が、好ましくは、機体1内の、図示されていない固定構造上に配置されている。
【0069】
この例では、
図5を参照すると、各可動フラップ16および/またはラジアルベーン17が、ピッチ軸Y、Y’とも呼ばれる各可動フラップ16および/またはラジアルベーン17の回転軸周りに回転可能であるように取り付けられている。前記ピッチ軸Y、Y’は、航空機の固定構造18にしっかりと接続された旋回手段上に固定されている。さらに、制御リング19は、航空機の固定構造18に対し、長手軸X-X周りに回転可能であるように取り付けられている。
【0070】
第1の接続ロッド20は、この接続ロッド20の端部の1つにおいて、実質的に径方向であり、制御リング19にしっかりと接続されている第1の旋回シャフト21周りに回転可能であるように取り付けられており、接続ロッド20の他方の端部において、実質的に径方向であり、航空機の固定構造18に取り付けられた第2の旋回シャフト22周りに回転可能であるように取り付けられている。
【0071】
第1の旋回シャフト21は、たとえば、接続ロッド20の端部における長手方向のスロット内に挿入されたピンとすることができる。この方法で、制御リング19が回転すると、ピンの移動により、接続ロッド20を第2の旋回シャフト22周りに回転するように設定することができる。
【0072】
第1の接続ロッド20の第2の旋回シャフト22は、可動フラップ16のピッチ軸Yまたはラジアルベーン17のピッチ軸Y’に対し、この場合、前記ピッチ軸Y、Y’の上流に、方位角的にオフセットしている。
【0073】
この場合、第1の接続ロッド20は、長手軸X-Xに実質的に整列されており、このため、制御リングの位置Gaに関して、制御リング19に対して実質的に垂直である。このことは、可動フラップ16またはラジアルベーン17の平均ピッチに対応している。
【0074】
第2の接続ロッド23は、第1の接続ロッド20に、2つの接続ロッド間の関節シャフト24周りで、関節シャフト24の一方の端部近くで旋回するように取り付けられている。前記関節シャフト24を支持する手段は、関節シャフト24が第1の接続ロッド20上で移動できるように構成することができる。
【0075】
第2の接続ロッド23は、その他方の端部の近位で、可動フラップ16またはラジアルベーン17に取り付けられた第3の旋回シャフト25周りに旋回するように関節でつながれている。第3の旋回シャフト25は、可動フラップ16のピッチ軸Yまたはラジアルベーン17のピッチ軸Y’からのゼロではない距離d0に置かれており、それにより、第2の接続ロッド23の変移を、可動フラップ16またはラジアルベーン17の回転移動に変換し、こうして、そのピッチ角の変更へと変換することを可能にするレバーアームが提供されるようになっている。このオフセットは、可動フラップ16またはラジアルベーン17に対して固定された接続ロッド26、または任意の他の手段によって提供することができる。この場合、第3の旋回シャフト25は、可動フラップ16またはラジアルベーン17の弦上に実質的に配置されている。この例は、限定的意味ではない。図示の例では、第3の旋回シャフト25は、可動フラップ16のピッチ軸Yまたはラジアルベーン17のピッチ軸Y’の下流側に位置している。
【0076】
さらに、第2の接続ロッド23は、この場合、可動フラップ16および/またはラジアルベーン17の平均ピッチに対応している制御リング24の位置に関し、第1の接続ロッド25に対して実質的に垂直であるように取り付けられている。
【0077】
そのようなアセンブリでは、コマンド変数Gaが、可動フラップ16またはラジアルベーン17の各々のピッチ角を変化させるために利用可能である。このコマンド変数は、前記制御リングが軸XX周りに回転する場合に、制御リング19の位置に対応する。2つの調整可能なパラメータが、可動フラップ16および/またはラジアルベーン17の変位角の位置に係るコマンド変数Gaの影響を変更するために利用可能である。
【0078】
第1のパラメータは、第2の接続ロッド23上の、第3の旋回シャフト25と、第1の接続ロッド20に接続された関節シャフト24との間の距離d1に対応している。前記距離d1は、
図5に見ることができるように、制御リング19の所与の位置Gaに関し、可動フラップ16および/またはラジアルベーン17のピッチ角に対し、直接的に影響する。前記距離d1は、たとえば、第2の接続ロッド23を変更することにより、変化させることができる。
【0079】
第2のパラメータは、第1の接続ロッド20上の、第2の旋回シャフト22と、第2の接続ロッド23に接続された関節シャフト24との間の距離d2に関連している。前記第2のパラメータd2は、制御リング19の位置の変数Gaに対する、可動フラップ16またはラジアルベーン17のピッチ角の変化に関する大きさの増減倍率に、より具体的に関連している。距離d2を低減すると、制御リング19の同じ変位Gaのピッチ角の大きさが低減される。この逆もなりたつ。
【0080】
そのようなデバイスは、ファンロータ7、8によって吸い込まれた境界層のいずれの非均一性をも整えるために使用することができる。境界層の低速の吸込(着陸または離陸)に起因して、低い歪みのレベルが観測され、対照的に、巡航飛行では高い歪みが観測される。可動フラップ16および/またはラジアルベーン17のピッチは、このため、コマンド位置Gaの第1の値を、ベーンのピッチに方位角的変位が必要とされていない、低速飛行と関連付けることと、コマンド位置Gaの第2の値を、ベーンのピッチに方位角的変位が、歪みを整えるために実施されている、巡航飛行と関連付けることと、によって調整することができる。
【0081】
吹出を含む構造的アーム
本発明の別の態様によれば、
図6を参照すると、保持アーム15には、その後縁部15b付近に追加の空気Fsを吹き出すためのデバイスを設けることができる。有利には、この場合、前記空気は、1つまたは複数のガスジェネレータ2aのコンプレッサから取られ、保持アーム15の内側を通過して、導管27を介して吹出デバイスに向けられている。
【0082】
追加の空気Fsを吹き出すことにより、ナセル14に入る流れFにおいて、アームのフェアリングに沿って形成する境界層に起因する速度の損失を、理想的には完全に相殺することを可能とする。これにより、保持アーム15の後ろに形成される後流が抑制されるか、実質的に減じられる。
【0083】
しかしながら、前記後流の、後方で回転するファンロータ7、8のベーンとの相互作用は、ノイズの主要な発生源である。通常、これら相互作用によって形成されるノイズは、音色の成分と、広帯域の成分とに分けることができる。
【0084】
音色の成分は、平均の後流と、主に、第1のファンロータ7との間の相互作用に対応する。この成分は、上流側のファンロータ7の固有周波数において表れる。ノイズレベルの著しい上昇は、ロータベーン7の基本移動周波数と、その高調波で観測される。
【0085】
広帯域の成分は、主に、保持アーム15の後流に含まれる乱流構造と、ファンロータ7のベーンの前縁部との間の相互作用に対応する。
【0086】
航空規格は特に、ノイズの障害を制限し、環境的な衝撃を測定しつつ、前記ノイズの値に関する規制を発行するために、広い範囲で前記ノイズの値を低減することを試みている。感知されるノイズの評価は、周波数に関する強度の重み付けに対応しており、EPNdB(感覚騒音効果デシベル)として知られる単位に関して測定される。例として、空気が送られていない、一対の互いに逆方向に回転するらせんの前方に置かれた固定アームが、航空機によって出されたノイズの約6EPNdBの罰則となる結果になることが確かめられている。しかしながら、このノイズの衝撃は、アームの後縁部に吹き出す空気で、部分的に3EPNdBに低減することができると見積もられている。
【0087】
吹出デバイスの第1の実施形態では、
図7aを参照すると、保持アーム15の後縁部15bは、端部が切られ、追加の空気Fsを吹き出すためのノズル28のための空間が置かれている。このノズルは、保持アーム15のスパンで分布している。前記ノズルには、前述の導管27によって供給される。ノズル28の空間は、導管27によって運ばれた空気流に関し、それらの直径および形状は、後縁部15bの後ろの速度の損失を相殺し、こうして、アームの後流を最小にするように、流れを駆動するジェットを形成するように構成されている。有利には、前記ノズル28は、吹出が存在しない場合、後退可能である。
【0088】
第2の実施形態では、
図7bを参照すると、追加の空気Fsを吹き出すための排出オリフィス29が、後縁部15bの上流側に、この場合では保持アーム15のプロファイルの各面に配されている。前記排出オリフィス29は、卵形の穴か、後縁部15bに対して実質的に水平に延びるスロットの形状とすることができる。空気供給導管27は、排出オリフィス29と連通している内部キャビティ30に現れている。このデバイスでは、排出オリフィス29を通って出る追加の空気Fsの吹出は、保持アーム15の壁に沿ってすぐに引っ張られ、注入された空気流により、後縁部15bの後方の速度の損失を相殺することを可能とする。内部キャビティ30および排出オリフィス29の形状は、この効果を最適にするように構成されている。
【0089】
この設計では、保持アーム15のプロファイルの弦に沿う吹出オリフィス29の延長部分は、好ましくは、およそ、前記プロファイルの周りの流れFに発現する、境界層の厚さの大きさである。通常は、ナセル14の保持アーム15上の1mの弦の長さおよび乱れの境界層に関し、弦に沿う吹出オリフィス29の延長部分は、約5cmから10cmである。吹出オリフィス29の長手軸XXに沿う、前記軸XXから所与の径方向の距離に位置する延長部分は、したがって、好ましくは、前記径方向の距離に関する、保持アーム15の弦の長さの5%から10%の間である。
【0090】
さらに、保持アーム15の後縁部15bは、好ましくは、吹出ジェットが、保持アーム15をバイパスする主流Fと混ざり、後流の影響を減じるために、上流側のファンロータ7から十分に離れて位置している。この場合、前記空間は、後縁部15bと上流側のファンロータ7との間で測定される距離dによって測定され、流線Lをたどり、上流側のファンロータ7のベーンのスパンの一定のパーセンテージを超える。通常は、この距離dは、前記ファンロータのベーンのスパンEの70%において上流側のファンロータ7の直径Dの約15%である。
【0091】
有利には、アセンブリは、吹き出された流れが、スパンE上の位置に応じて変化し、かつ/または、経時的に制御されることを許容する手段をさらに備えている。
【0092】
第1の変形形態によれば、図示されていない1つまたは複数のバルブを、ノズル28または排出オリフィス29に供給する導管27に配置することができる。各バルブの開口は、この開口が接続されている1つまたは複数の導管27を通る空気流を制御するために、制御することができる。対応するノズル28または排出オリフィス29によって吹き出される空気流Fsは、こうして、個別に、または、前記ノズルまたはオリフィスの、保持アーム15のスパン上の位置に応じたグループとして調整される。
【0093】
図8a、8bを参照すると、第2の変形形態は、好ましくは、排出オリフィス29が、連続しているか連続していないかに関わらず、後縁部15bと並行なスロットを形成する場合に適用可能である。この変形形態では、排出スロット29は、第1の固定されたグリッド31および、保持アーム15のプロファイルの表面に沿って平行移動可能である第2のグリッド32により、カバーされている。2つのグリッド31、32は、有利には、特にこれらグリッドのオリフィスおよびこれらオリフィスを分けるバーの幾何学形状に関し、実質的に同じ幾何学形状を有している。この場合、第1のグリッド31は、外部にあり、第2のグリッド32は、第1のグリッドの下でスライドする。第2のグリッド32の位置は、図示されていないアクチュエータによって制御される。
【0094】
第2のグリッド32の第1の位置では、
図8aを参照すると、2つのグリッド31、32のオリフィスは、重なっている。排出スロット29はこうして、導管27からの供給条件に適合する最大の吹出流れFsを通すことを許容する。
【0095】
第2のグリッド32の第2の位置では、
図8bを参照すると、グリッド31、32の各々のオリフィスは、他方のグリッドのバーと対向して位置している。有利には、この重ね合わせにより、供給導管27から来る空気流の、排出スロット29を通しての通路が完全に閉じられる。
【0096】
このため、第1の位置と第2の位置との間のグリッド32の平行移動を制御することにより、実質的に連続した方式で、排出スロット29を通って吹き出る空気の流れFsを、最小値と最大値との間で変化させることが可能である。
【0097】
特定の実施形態では、グリッド32、31、および、任意選択的には、スロット29は、後縁部15bのスパンに沿って複数の部分に分けることができ、可動グリッド32の平行移動を区別して制御することができる。このため、時間および空間により、後縁部15bに吹き出る流れを変化させることが可能である。
【0098】
スパンに沿って吹き出る空気の流れFsの変化は、主として、流れがもっとも速い後縁部15bの径方向外側に空気が吹き出ることを可能にする。
【0099】
吹き出る空気の流れFsを経時的に変化させることにより、飛行条件に適合させることを可能にし、必要であれば、吹き出る空気の流れFsを低減することにより、エンジンの損失を最小にすることが可能になる。
【0100】
吹出/整流器の結合
有利には、前述の吹出手段は、保持アーム15上に、可動フラップ16と組み合わせて設置することができる。
【0101】
図9a、9bを参照すると、排出開口29は、可動フラップ16の前方に配置されている。この場合、可動フラップ16は、下流方向において、スロットの形状の、排出オリフィス29に供給するキャビティ30を閉じる。可動フラップ16の後縁部は、保持アーム15の後縁部15bである。
【0102】
図示の例では、スロット29によって吹き出される空気の流れFsを変化させるためにオフセットしたスロット31、32のシステムが、
図8a、
図8bを参照して与えられた説明にしたがって設置されている。
【0103】
図9aを参照すると、可動フラップ16が、保持アーム15のプロファイルの全体の軸に整列されると、追加の空気Fsを吹き出すためのデバイスは、保持アーム15の延長部分における保持アーム15の後流を制限するために、
図8aを参照して説明した方式と同じ方式で動作する。
【0104】
図9bを参照すると、可動フラップ16が所与のピッチ角だけ回転すると、全体の流れF、ひいては流れFの後流を、可動フラップ16のピッチ角に実質的に等しい角度だけそらす。可動フラップ16の上流の、保持アーム15の両側のスロット29によって吹き出された空気Fsは、常に、前記スロット29と同じ進出角度で出る。しかしながら、可動フラップ16の圧力面の圧力、および、吸引面上の吸引の影響により、可動フラップ16のピッチの向きにしたがって、吹き出した空気の流れFsをメインの流れFに運ぶ。こうして、スロット29を通して影響される吹出は、依然として、保持アーム15の後流における速度の損失を制限する吹出の機能を果たしている。
【0105】
さらに、可変ピッチのラジアルベーン17が、
図4を参照して示したように、保持アーム15間に周方向に配置されている場合、可変ピッチのラジアルベーン17にも吹出手段を備えることができる。この場合、
図7b、または
図8aおよび
図8bの構成に関し、可動フラップ16のない保持アーム15に関して説明したデバイスなどのデバイスを設置することが有利である場合がある。吹き出された空気を供給する導管27は、ピッチ軸Y’の近位に配置することができる。この場合、可変ピッチのラジアルベーン17の弦を縮小することにより、保持アーム15に関し、このベーンの後流の影響が低減され、こうして、吹出デバイスの設計の制限を低減することができることに留意されたい。