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特許7061067クリグラー・ナジャー症候群の処置のための組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】クリグラー・ナジャー症候群の処置のための組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20220420BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220420BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220420BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20220420BHJP
   C12N 9/10 20060101ALI20220420BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20220420BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
C12N15/864 100
A61K35/76
A61K48/00
A61P3/00
C12N7/01
C12N9/10
C12N15/54 ZNA
C12N15/63 Z
A61K31/7088
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018531103
(86)(22)【出願日】2016-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-28
(86)【国際出願番号】 US2016066657
(87)【国際公開番号】W WO2017106345
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-12-09
(31)【優先権主張番号】62/266,969
(32)【優先日】2015-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/348,029
(32)【優先日】2016-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トレティアコバ,アンナ・ピー
(72)【発明者】
【氏名】シドレーン,ジェニー・アグネス
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン,ジェームス・エム
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/162302(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00-7/08
A61K 35/00-35/768
A61K 48/00
A61P 43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝臓に対する指向性を有するAAVキャプシド及びベクターゲノムを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、前記ベクターゲノムが、
(a)5’末端逆位(ITR)配列;
(b)チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター配列;
(c)UGT1A1コーディング配列が配列番号12であるか又はヒトUGT1A1をコードしそれに最低99%同一の配列である、ヒトUGT1A1の転写及び/又は発現を指図する発現制御配列に操作可能に連結されているUGT1A1コーディング配列;及び、
(d)3’ITR配列、
を含んでなる、
ベクター。
【請求項2】
前記AAVキャプシドがAAV8キャプシド又はAAVhu.37キャプシドである、請求項1に記載のAAVベクター。
【請求項3】
前記UGT1A1コーディング配列が配列番号12又は配列番号3である、請求項1又は2に記載のAAVベクター。
【請求項4】
前記ベクターゲノムが、天然の分泌シグナルの代わりに用いられる異種分泌シグナルを含む、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のAAVベクター。
【請求項5】
前記ベクターゲノムが複数のエンハンサーを含む、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のAAVベクター。
【請求項6】
前記複数のエンハンサーが、2コピーのα-1-ミクログロブリン/ビクニンエンハンサーを含む、請求項5に記載のAAVベクター。
【請求項7】
前記キャプシドがAAV8キャプシドであり、前記UGT1A1コーディング配列が配列番号12の核酸配列を含み、及び前記ベクターゲノムがウシ成長ホルモン(BGH)ポリAシグナルを更に含む、請求項1に記載のAAVベクター。
【請求項8】
前記ベクターゲノムが、配列番号15の核酸配列を含む、請求項1ないし7のいずれか1つに記載のAAVベクター。
【請求項9】
前記AAVキャプシドがAAV8キャプシド又はAAVhu.37キャプシドである、請求項8に記載のAAVベクター。
【請求項10】
前記ベクターが、VP1、VP2及びVP3タンパク質を含むAAV8キャプシドを有するDNAse抵抗性粒子であり、AAV8 VP1が配列番号11のアミノ酸配列を有する、請求項1ないし9のいずれか1つに記載のAAVベクター。
【請求項11】
製剤緩衝液中に請求項1ないし10のいずれか1つに記載のAAVベクターを含む組成物。
【請求項12】
前記製剤緩衝液がリン酸緩衝生理的食塩水及び界面活性剤を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
クリグラー・ナジャー症候群I若しくはII型又はジルベール症候群を有する患者の処置における使用のための、請求項1ないし10のいずれか1つに記載のAAVベクター又は請求項11若しくは12に記載の組成物。
【請求項14】
患者が免疫抑制剤及び/又は光線療法で同時処置される、請求項13に記載の使用のためのAAVベクター。
【請求項15】
列番号12のUGT1A1コーディング配列か、又はヒトUGT1A1をコードしそれに最低99%同一の配列か、又はそれらの機能的フラグメント、を含む核酸。
【請求項16】
配列番号3、12又は15の核酸配列を含む、請求項15に記載の核酸。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の核酸を含む、プラスミド。
【請求項18】
請求項15ないし17のいずれかに記載の核酸と、製薬学的に許容できる担体、希釈剤及び/又は賦形剤とを含む、組成物。
【請求項19】
クリグラー・ナジャー症候群I若しくはII型又はジルベール症候群の処置のための、請求項15又は16に記載の核酸か、または請求項18に記載の組成物を含んでなる、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UGT1A1(例えばヒトUGT1A1を発現する)をコードするポリヌクレオチド配列(例えば遺伝子、例えばDNA又はRNA)を提供する。本発明はさらに、末端逆位配列、及び1種又はそれ以上の発現制御配列(例えば肝特異的プロモーターを含む発現制御配列)に操作可能に連結されているUGT1 A1コーディング配列を含むベクターゲノムを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えばAAV8)のようなベクターを提供する。これらAAVベクターを含む組成物、並びにクリグラー・ナジャー症候群I型、クリグラー・ナジャー症候群II型及びジルベール症候群の処置方法もまた提供される。
【背景技術】
【0002】
電子形式で提出される資料の引用による組み込み
発明者は、これとともに電子形式で申請される配列表資料を引用することによりここに組み込んだ。該ファイルは「UPN_16-7685PCT_ST25.txt」と表示される。
【0003】
クリグラー・ナジャー(CN)症候群は、ウリジン二リン酸グルクロン酸転移酵素1A1(UGT1A1)遺伝子のコーディング配列中の多様な変化により引き起こされる、ビリルビン代謝の常染色体劣性障害である。UGT1A1活性の全喪失並びに生じる重度の黄疸及び神経学的後遺症(核黄疸)の危険性はCN I型と関連している。数種の薬物が黄疸をわずかに低下させ得るとはいえ、大部分の現在の医学的管理は1日あたり最低12時間の光線療法に頼る。しかしながら、光線療法は思春期後に急速に有効性が低下し、核黄疸の危険性を増大させ、及び前記疾患を制御するため肝移植が必要になる。肝移植は、患者に対し危険で、かつ、免疫抑制を必要とするため、最適でない。加えて、これら患者はときに10~13歳までに肝移植を必要とするため、複数の移植片が彼らの人生の経過全体で必要とされうる。
【0004】
天然に存在するGunnラット、及び、Gunnラットに存在する同一の突然変異を有する前記疾患のより最近のノックインマウスモデルを含む、前記疾患の多様な動物モデルが存在する(非特許文献1)。Gunnラットは血清中のビリルビンレベルが高く、小脳形成不全を有し、CNマウスははるかにより重度の表現型を有し、及び光線療法又は遺伝子治療で迅速に未処置場合は出生後間もなく死亡する(非特許文献1)。CNのための遺伝子に基づく治療を開発することを目的とされる以前の研究は、治療的有効性が、肝に送達されるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使用して達成され得ることを示した(非特許文献1;非特許文献2)。上で引用されるBotolussiらはCN症候群の致死性マウスモデルでの研究を説明し、並びに、UGT1A1の正常肝の5ないし8%と同じくらい低い発現及び活性レベルが、ビリルビンレベルを大きく低下させ及び生涯の低血漿ビリルビン濃度を維持するのに十分であったことを報告する。
【0005】
CN II型は、肝ビリルビングルクロン酸転移酵素の誘導可能な活性低下による非抱合型高ビリルビン血症を特徴とする。同様に、ジルベール症候群は、グルクロン酸転移酵素の活性低下により引き起こされる非抱合型高ビリルビン血症を特徴とする。
【0006】
CN症候群I及びII型ならびにジルベール症候群の処置のため、並びに/又は肝移植なしでの若しくは肝移植の失敗に加えての被験者の最も早い年齢を遅延させるための治療が当該分野で必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Bortolussiら、FASEB J.、2012、26:1052-1062
【文献】Seppenら、Molecular Therapy、2006、13(6):1085-1092
【発明の概要】
【0008】
本発明は、UGT1A1(例えば、UGT1A1コーディング配列、例えばヒトUGT1A1を発現するポリヌクレオチド)をコードするポリヌクレオチド(例えばDNA又はRNA分子)を特徴とする。
【0009】
別の局面において、ベクター(例えばアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えばAAV8ベクター))が提供される。一部の態様において、AAVベクターは、AAV末端逆位配列(ITR)を有するベクターゲノム及びUGT1A1コーディング配列(例えばUGT1A1コーディング配列を含む核酸配列)を含む。UGT1Aコーディング配列は、1種又はそれ以上の発現制御配列(例えば肝特異的プロモーターを含む1又はそれ以上の発現制御配列)に操作可能に連結する場合がある。一部の態様において、AAVベクター(例えばAAV8ベクター)は、天然の分泌シグナルの代わりに用いられる異種分泌シグナルを有するベクターゲノムを有する。該ベクターゲノムは複数のエンハンサーを有する場合がある。
【0010】
一局面において、例えばクリグラー・ナジャー(CN)症候群I、CN II及びジルベール症候群を含むUGT1A1機能の喪失と関連する疾患を処置するための組成物及び方法で有用なUGT1A1コーディング配列が提供される。該配列は:(a)配列番号12;(b)配列番号14;(c)配列番号13;(d)配列番号4;(b)配列番号3;(c)配列番号2;若しくは(d)配列番号1;その相補鎖、対応するRNA、又はヒトUGT1A1を発現するそれに99%同一の配列から選択される。
【0011】
別の局面において、本発明は、ヒトUGT1A1の転写及び/又は発現を指図する発現制御配列に操作可能に連結されている、本明細書で同定されるところのUGT1A1コーディング配列を含むベクターゲノムを有するベクターを提供する。ある態様において、該ベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)である。なお他の態様において、ベクターはAAV8キャプシドを有する。ある態様において、発現制御配列は肝特異的プロモーターを含む。
【0012】
なお他の態様において、本明細書に説明されるところのベクターを含む組成物は製剤緩衝液中で提供される。さらなる一局面において、先行する態様のいずれかのAAVベクターを製剤緩衝液(例えばリン酸緩衝生理的食塩水及び界面活性剤を含む製剤緩衝液)中に含む組成物が提供される。一部の場合において、AAVベクターは、ヒトUGT1Aタンパク質をコードする遺伝子及び製薬学的に許容できる賦形剤、担体、緩衝剤又は保存剤を有する。
【0013】
別の局面において、先行するAAVベクター(例えばAAV8ベクター)及び/又は組成物のいずれも、クリグラー・ナジャー(CN)症候群(例えばCN症候群I型若しくはCN症候群II型)又はジルベール症候群を有する(単数又は複数の)患者の処置における使用のための場合がある。一部の場合において、患者は免疫抑制剤及び/又は光線療法で同時処置される。
【0014】
ある態様において、本明細書に説明されるUGT1A1コーディング配列でのクリグラ
ー・ナジャー症候群I若しくはII型又はジルベール症候群の処置におけるUGT1A1コーディング配列の使用。さらなる一局面において、ヒトUGT1Aタンパク質をコードする遺伝子を運搬するAAV及び製薬学的に許容できる賦形剤、担体、緩衝剤又は保存剤を含む組成物が提供される。
【0015】
なお別の局面において、クリグラー・ナジャー症候群I若しくはII型又はジルベール症候群の処置のための本明細書に説明されるところのrAAVベクターを含む組成物が提供される。クリグラー・ナジャー症候群I若しくはII型又はジルベール症候群の処置方法もまた説明される。ある態様において、患者は免疫抑制剤及び/又は光線療法で同時処置される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】AAV投与されたC57BL/6マウスからの肝ホモジェネート中のhUGT1A1発現についてのウエスタンブロットの定量である。オス及びメスC57BL/6マウスに、3×1012ゲノムコピー(GC)/kgの、異なるコドン及び異なるCpGなし(CpG less)ヌクレオチド配列を有する多様なベクターからhUGT1A1を発現するベクターを、尾静脈を介して静脈内(IV)注入した。剖検時に肝を回収し及び肝ホモジェネートを作成した。肝ホモジェネートから単離された1μgのタンパク質を、検出のため使用されるヒトUGT1A1特異的抗体を用いるウエスタンブロットにより解析した。バンドの画像を、陽性対照サンプルからの同一量のタンパク質に対し定量した。値を平均±SEM(n=5マウス/群)としてプロットした。M、オス;F、メス;WPRE、第1世代ベクターAAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGHを示す。
図2】出生後24時間以内のUGT1ノックアウト(KO)マウス中への試験薬剤のIV注入後の未処置UGT1 KOマウス(そのいずれも第7日まで生存しなかった)及びAAV処置されたUGT1ノックアウトマウスを示す生存グラフである。未処置UGT1 KOマウスを出生時から毎日観察した。死亡してみつかったか臨床徴候のため安楽死されたかのいずれかのマウスを遺伝子型分類した。処置されたUGT1 KOマウスに1011GC/マウスのAAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGHをIV注入した。
図3】出生後24時間以内のAAVのIV注入後のUGT1 KO及び光線療法後のUGT1 KOマウスにおける血清総ビリルビンレベルを示す。 血清中の総ビリルビンレベルを出生後第28日に測定した。UGT1 KOマウスを、AAV処置又は光線療法いずれかにより成体までレスキューした。AAV処置されたUGT1 KOマウスに、出生後24時間以内に1011GC/マウスのAAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGHをIV注入した(n=5)。光線療法レスキューされたUGT1 KOマウスは、出生直後に出生後最長21日までの間1日あたり12時間光線療法に曝露した(青色蛍光、λ=450nm;10~30μW/cm2/nm)(n=52)。全部のマウスを離乳時に遺伝子型分類した
図4】1013GC/kgのAAV8.TBG.eGFP.BGHのIV注入後のC57BL/6Jマウス、Wistarラット及びNHPにおけるeGFP発現を提供する。図4A。肝臓内のeGFP発現を領域形質導入のパーセンテージとして定量した。図4B。DNAをGCの定量のため抽出した。値を平均±SEMとしてプロットした。ND、測定されない。
図5】AAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGHのIV注入後のGunnラットにおける血清総ビリルビンレベルの低下を示す線グラフである。4週齢メス及びオスGunnラットに、3×1012GC/kg(三角)又は3×1013GC/kg(正方形)のAAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGH又はベヒクル対照(リン酸緩衝生理的食塩水(PBS))(丸)をIV注入した。総ビリルビンレベルを血清中で測定し、及びベースライン総ビリルビン値のパーセンテージを計算した。値は平均±SEMとして提示する。
図6】試験又は対照薬剤を注入されたアカゲザル由来肝臓中のhUGT1A1 mRNA転写物レベルを示す棒グラフである。アカゲザルに、1.0×1013GC/kg及び2.5×1013GC/kgのAAV8.TBG.U201mod.BGH(図中でAAV8.TBG.hUGT1A1coと称される)又は対照薬剤(ベヒクル対照)をIV注入した。剖検時に肝の左、中及び右葉からのサンプルを回収し急速凍結した。RNAをベクター転写物レベルの定量のため抽出した。図6Aは100ngのRNAあたり提示されるhUGT1A1 RNAコピーを示す。図6BはhUGT1A1 RNAの補正済み相対発現のレベルを示す。値は平均±SEMとしてプロットした(n=3肝サンプル/動物)。
図7】試験又は対照薬剤を注入されたUGT1 KOマウスにおける総ビリルリンレベル。オス及びメスUGT1 KOマウスに、2.5×1010GC/kg、2.5×1011GC/kg、2.5×1012GC/kg及び2.5×1013GC/kgのAAV8.TBG.U201mod.BGH(図中でAAV8.TBG.hUGT1A1coと称される)又は対照薬剤(100μlのベヒクル対照)をIV注入した。総ビリルビンレベルを採取された血清サンプル中で測定した。値は平均±SEMとして表現した。
図8】試験又は対照薬剤を注入されたUGT1 KOマウスからの肝ホモジェネート中のhUGT1A1発現についてのウエスタンブロットの定量を示す棒グラフである。オス及びメスUGT1 KOマウスに、2.5×1010GC/kg、2.5×1011GC/kg、2.5×1012GC/kg及び2.5×1013GC/kgのAAV8.TBG.U201mod.BGH(図中でAAV8.TBG.hUGT1A1coと称される)又は対照薬剤(100μlのベヒクル対照)をIV注入した。剖検時に肝を回収し肝ホモジェネートを作成した。肝ホモジェネートから単離された1μgのタンパク質を、検出のため使用されるヒトUGT1A1特異的抗体を用いるウエスタンブロットにより解析した。バンドの画像を陽性対照サンプルからの同一量のタンパク質に対し定量した。値は平均±SEMとしてプロットした(n=5マウス/群)。2.5×1010GC/kgを注入されたオスマウスについてのバンドは検出限界より下であった。
図9A】試験又は対照薬剤を注入されたUGT1 KOマウスからの肝臓内のhUGT1A1 mRNA転写物レベルを示す棒グラフである。オス及びメスUGT1 KOマウスに、2.5×1010GC/kg、2.5×1011GC/kg、2.5×1012GC/kg及び2.5×1013GC/kgのAAV8.TBG.U201DPmod.BGH(図中でAAV8.TBG.hUGT1A1coと称される)又は対照薬剤(100μlのベヒクル対照)をIV注入した。剖検時に肝を回収し急速凍結した。RNAをベクター転写物レベルの定量のため抽出した。(A)100ngのRNAあたり提示されるhUGT1A1 RNAのコピー。値は平均±SEMとしてプロットした(n=マウス5尾/群)。
図9B】試験又は対照薬剤を注入されたUGT1 KOマウスからの肝臓内のhUGT1A1 mRNA転写物レベルを示す棒グラフである。オス及びメスUGT1 KOマウスに、2.5×1010GC/kg、2.5×1011GC/kg、2.5×1012GC/kg及び2.5×1013GC/kgのAAV8.TBG.U201DPmod.BGH(図中でAAV8.TBG.hUGT1A1coと称される)又は対照薬剤(100μlのベヒクル対照)をIV注入した。剖検時に肝を回収し急速凍結した。RNAをベクター転写物レベルの定量のため抽出した。(B)hUGT1A1 RNAの補正済み相対発現のレベル。値は平均±SEMとしてプロットした(n=マウス5尾/群)。
図10】本明細書に提供される新規UTG1A1コーディング配列:U201DP[配列番号3]、U001[配列番号1]、U011TY[配列番号2]及びUGT1A1co[配列番号4]の、v2.1[配列番号7]及びv3[配列番号8]と称される2種の公表されたUGT1A1配列とのアライメントを提供する。
【0017】
[発明の詳細な説明]
本発明は、クリグラー・ナジャー(CN)症候群I若しくはII又はジルベール症候群と診断された患者(ヒト被験者)の肝細胞にUGT1A1遺伝子を送達するための複製欠損アデノ随伴ウイルス(AAV)の使用に関する。UGT1A1遺伝子を送達するために使用される組換えAAVベクター(rAAV)(「rAAV.UGT1A1」)は、肝に対する指向性を有すべきである(例えばAAV8キャプシドを担持するrAAV)。導入遺伝子は肝特異的発現調節エレメントにより制御されうる。こうしたrAAV.UGT1A1ベクターは、肝における治療レベルのUGT1A1タンパク質発現を達成するため静IV注入により投与する場合がある。rAAV.UGT1A1の治療上有効な用量は2.5×1010ないし2.5×1013ゲノムコピー(GC)/kg患者体重の範囲にわたる。一態様において、rAAV懸濁液は、CNのマウスモデルに投与される最低2.5×1011GC/kgという用量が総ビリルビンレベルのベースラインレベルへの復帰を提供する効力を有する。別の態様において、rAAV懸濁液は、それの必要なヒト被験者に投与される最低2.5×1012GC/kgという用量が総ビリルビンレベルの治療上有効な低下を提供する効力を有する。場合によっては、被験者は治療とともに免疫抑制剤を投与される。
【0018】
「処置する」、「処置する(こと)」及び「処置」という用語は、一部若しくは全部の症状の進行を低下させること、一部若しくは全部の症状の重症度を低下させること、又は一部若しくは全部の症状の発症を予防若しくは遅延させることを指す。
【0019】
処置の目標は、rAAVに基づく肝に向けられる遺伝子治療を介して患者の欠損しているUTG1A1を機能的に置換してこの疾患を処置し及び現在の処置に対する応答を改良することである。本発明は、部分的に、有効用量の安全な送達を見込む治療組成物及び方法;並びにヒト被験者における有効な投薬のための精製製造要件を満たすための改良された製造方法の開発に基づく。
【0020】
前記治療の有効性は、処置後例えば投与後に、患者におけるヒトUGT1A1導入遺伝子発現についての代理バイオマーカーとして総ビリルビンレベル及び/又は血清ビリルビンレベルを使用して評価する場合がある。例えば、遺伝子治療処置後の総ビリルビンレベル又は血清ビリルビンレベルの低下が機能的UGT1A1の成功裏の形質導入を示すとみられる。処置のための候補である患者は、CN症候群I又はIIと診断された新生児、乳幼児、小児及び成体(18歳以上の男性又は女性)を含む。処置前に、患者を、UGT1A遺伝子を送達するために使用されるAAV血清型に対する中和抗体(NAb)について評価する場合がある。加えて、又は、あるいは、患者を上昇された肝酵素について監視し、それらは一過性免疫抑制療法で処置する場合がある(例えば、ベースラインレベルの最低約2倍のアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)又はアラニントランスアミナーゼ(ALT)が観察される場合)。
【0021】
本明細書で使用される野生型「UGT1A1」という用語は、配列番号5に示される野生型ヒトUDP-グリコシルトランスフェラーゼ1ファミリー1、ポリペプチドA、(UGT1A1)cDNA(UGT1A1ヒトについてのmRNAのCDSの参照配列である受託番号NM 000463.2;OMIM参照191740)を指す。コードされる酵
素を配列番号6に示す。
【0022】
ヒト野生型配列すなわち配列番号5に95%未満同一である配列を有するUGT1A1酵素をコードする核酸配列が本明細書に提供される。より具体的には、本明細書に提供される配列は、ヒト野生型配列に90%未満同一、85%未満同一、80%未満同一若しくは約60%と同じくらい低く同一、又は約70%ないし95%同一の場合がある。
【0023】
一態様において、ヒトUGT1A1コーディング配列は、U001[配列番号1]、U001mod[配列番号13]、U011TY[配列番号2]、U011TYmod[配列番号14]、U201DP[配列番号3]、U201DPmod[配列番号12]又は配列番号4の配列から選択される。ある態様において、配列番号1-14、12-14の1つに対する最低99%の同一性を有する配列、これら配列を本明細書に説明されるのベクター中で使用する場合がある。
【0024】
ある態様において、ベクターゲノムのため選択される操作されたhUGT1A1コーディング配列は配列番号4のものである。この配列は野生型ヒトUGT1A1遺伝子[配列番号5に再現される]に対する約80%未満の同一性、及び以前に公表された操作された配列に対しそれぞれ約95%未満の同一性又は90%の同一性を有することが適切である。本明細書に提供される配列は、本明細書の実施例に具体的に説明されるAAV8に媒介される送達及びベクターゲノムからの発現にとりわけ十分に適する。
【0025】
ある態様において、UGT1A1コーディング配列は配列番号12である。この配列は配列番号3に対する約99%の同一性を有する。しかしながら、この配列は野生型ヒトUGT1A1遺伝子[配列番号5に再現される]に対し約85%未満同一、及び以前に公表された操作された配列に対しそれぞれ約95%未満の同一性である。本明細書に提供される配列は、本明細書の実施例に具体的に説明されるAAV8に媒介される送達及びベクターゲノムからの発現にとりわけ十分に適する。
【0026】
ある態様において、本明細書に提供されるところのベクターゲノムは、AAV 5’ITR、2個のエンハンサー、1個のプロモーター、1個のイントロン、1個のリンカー配列、CNコーディング配列、1個のポリA及び1個のAAV 3’ITRを含む。ある態様において、ITRはAAVキャプシド(例えばAAV8)と異なる供給源であるAAV2からである。ある態様において、2個のエンハンサーは2コピーの同一エンハンサー例えばαmic/bikである。ある態様において、プロモーターは肝特異的プロモーター(例えばTBGプロモーターである)。ある態様において、ベクターゲノムはコサック配列をさらに含む。ある態様において、ポリAはウシ成長ホルモンポリAである。具体的に説明されるベクターゲノムは、配列番号9のnt 1ないし3558、配列番号10のnt 1ないし3153、配列番号15[AAV.TBG.U201DPmod.BGH]のnt 1ないし3140、配列番号16[AAV.TBG.U011TYmod.BGH]のnt 1ないし3140、配列番号17[AAV.TBG.U001mod.BGH]のnt 1ないし3140として本明細書に提供される。本明細書に提供されるこれら配列は、AAVに媒介される送達及び具体的にはAAV8に媒介される送達にとりわけ十分に適する。例えば、AAV8に基づくベクターAAV8.TBG.U201DPmod.BGHが第2世代のベクターとして実施例で具体的に説明され(すなわち図6-9の図/図の説明中のAAV8.TBG.hUGT1A1co;)及び配列番号10のnt 1-3153のベクターゲノムを有するAAV8に基づくベクターが図1-5に示される研究で具体的に説明される。
【0027】
本明細書で使用されるところの「NAb力価」という用語は、その標的とされるエピトープ(例えばAAV)の生理学的影響を中和する中和抗体(例えば抗AAV NAb)が
どのくらい多く産生されるかの程度を指す。抗AAV NAb力価は、例えばCalcedo,R.ら、Worldwide Epidemiology of Neutralizing Antibodies to Adeno-Associated Viruses.Journal of Infectious Diseases、2009.199(3):p.381-390(本明細書に引用することにより組み込まれる)に説明されるとおり測定する場合がある。
【0028】
核酸配列の文脈における「同一性パーセント(%)」、「配列同一性」、「配列同一性パーセント」又は「同一のパーセント」という用語は、対応のため整列される場合に同一である2本の配列中の塩基を指す。配列同一性比較の長さは、ゲノムの完全長、遺伝子コーディング配列の完全長、若しくは最低約500ないし5000個のヌクレオチドのフラグメント、又は所望のとおりにわたることができる。しかしながら、例えば最低約9個のヌクレオチド、通常は最低約20ないし24個のヌクレオチド、最低約28ないし32個のヌクレオチド、最低約36個又はそれ以上のヌクレオチドのより小さいフラグメント間の同一性もまた望ましいことができる。複数配列アライメントプログラムもまた核酸配列について利用可能である。こうしたプログラムの例は、インターネット上のウェブサーバーを通じてアクセス可能である「Clustal W」、「CAP Sequence Assembly」、「BLAST」、「MAP」及び「MEME」を含む。こうしたプログラムの他の供給源は当業者に既知である。あるいはVector NTIユーティリティもまた使用される。上で説明されるプログラムに含有されるものを含む、ヌクレオチド配列の同一性を評価するために使用する場合がある当該技術分野で既知の多数のアルゴリズムもまた存在する。別の例として、ポリヌクレオチド配列は、GCGバージョン6.1中のプログラムFastaTMを使用して比較する場合がある。FastaTMはクエリ及び検索配列の間の最良の重なりの領域のアライメント及び配列同一性パーセントを提供する。例えば、核酸配列間の配列同一性パーセントは、引用することにより本明細書に組み込まれる、GCGバージョン6.1中に提供されるところのそのデフォルトのパラメータ(6のワードサイズ(word size)及びスコアリングマトリックス(scoring matrix)についてのNOPAMファクター)を用いてFastaTMを使用して決定する場合がある。
【0029】
同一性パーセントは、タンパク質の完全長、ポリペプチド、約32個のアミノ酸、約330個のアミノ酸若しくはそのペプチドフラグメントにわたるアミノ酸配列、又は対応する核酸配列コーディングシーケンサーについて容易に決定する場合がある。適切なアミノ酸フラグメントは長さが最低約8個のアミノ酸であることができ、及び約700個のアミノ酸までの場合がある。一般に、2個の異なる配列間の「同一性」、「相同性」又は「類似性」を指す場合、「同一性」、「相同性」又は「類似性」は「整列された」配列に関して決定する。「整列された」配列又は「アライメント」は、参照配列に比較して欠けている又は付加的な塩基又はアミノ酸についての補正をしばしば含む、複数の核酸配列又はタンパク質(アミノ酸)配列を指す。アライメントは、多様な公的に又は商業的に利用可能な複数配列アライメントプログラム(Multiple Sequence Alignment Program)のいずれかを使用して実施する。配列アライメントプログラム例えば「Clustal X」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BLOCKMAKER」、「MEME」及び「Match-Box」プログラムはアミノ酸配列について利用可能である。一般に、これらのプログラムのいずれもデフォルトの設定で使用されるとはいえ、当業者はこれらの設定を必要とされるとおり変えることができる。あるいは、当業者は、参照されるアルゴリズム及びプログラムにより提供されるもののような同一性又はアライメントのレベルを少なくとも提供する別のアルゴリズム又はコンピュータープログラムを利用する場合がある。例えば、J.D.Thomsonら、Nucl.Acids.Res.、“A comprehensive comparison of multiple sequence alignments”、27(13):2
682-2690(1999)を参照されたい。
【0030】
本明細書で使用されるところの「機能的フラグメント」は、ヒト又はノックアウトマウスにおけるUGT1A1関連疾患の症状を処置するのに十分である、参照されるポリヌクレオチドの一部分又は参照される配列に対する最低95%(例えば最低99%)の同一性を有する配列を指す。
【0031】
発現カセットは典型的に発現制御配列の一部としてプロモーター配列を含む。一態様において、組織特異的プロモーターを選択する。本明細書で使用されるところの「組織特異的プロモーター」は、単一の種類の組織又は細胞型の選択された1サブセットでのみ活性を有するプロモーターである。これは、事実上全部の組織中で発現を指図し並びに環境及び発達因子に完全にではない場合ほとんど依存しない構成的プロモーターとよい対比をなす。プロモーター活性は、最低1種の参照組織と比較した、該プロモーターに操作可能に連結されている遺伝子の転写レベルを評価することにより(例えばPCR技術を使用してmRNAレベルを検出することにより)及び/又は最低1種の参照組織と比較した標的組織中の前記遺伝子産物の発現レベルを評価することにより評価する場合がある。従って、所定の1プロモーターが、最低1種の参照組織中の活性のその欠如により及び/又は最低1種の参照組織と比較して選択された組織中のその活性によりのいずれかで組織特異的であることを決定することが可能な場合がある。多様なアッセイが転写及び発現レベルを評価するために当該技術分野で既知である。従って、「肝特異的プロモーター」について、アッセイベースラインより上の活性レベルを肝において検出する場合がある一方、別の参照組織で評価される場合に活性が検出されない。特異性はプロモーター間で変動する場合がある。他の組織中で検出可能な転写又は発現を表さない組織特異的プロモーターが存在する場合がある一方、一部は、最低1種の参照組織に比較して標的組織中でより高い転写並びに/又は発現レベル(例えば最低10%ないし100%、最低25%より高い、最低30%より高い、最低50%より高い、最低75%より高い、最低80%より高い、最低90%より高い及びそれらの間の量)を表す場合がある。ある態様において、筋を、疑われる「肝特異的プロモーター」(例えばTBG)との比較のための参照組織として選択する場合がある。本発明のある態様において、肝特異的プロモーターを選択する。例えば、The Liver Specific Gene Promoter Database、Cold Spring Harbor、http://rulai.schl.edu/LSPD又はhttps://cbl.utdallas.edu/-LSPD/indexを参照されたい。肝特異的プロモーターは、チロキシン結合グロブリン(TBG)、α1アンチトリプシン(A1AT);ヒトアルブミン Miyatakeら、J.Virol.、71:5124 32(1997)、humAlb;及びB型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandigら、Gene Ther.、3:1002 9(1996)]’ TTRミニマルエンハンサー/プロモーター、αアンチトリプシンプロモーター、及びLSP(845nt)25(イントロンなしscAAVを必要とする)、アルコール脱水素酵素1、アルコール脱水素酵素2、アルコール脱水素酵素3、アルコール脱水素酵素4、アルドラーゼB、αフィブリノーゲン、α-1-ミクログロブリン/ビクニン(mic/bik)前駆体、α-2-マクログロブリン、α-2-尿グロブリン、αフェトプロテイン、アンジオテンシノーゲン、アンチトロンビン、アンチトロンビンiii、アポリポタンパク質A-I、アポリポタンパク質A-II、アポリポタンパク質B、アポリポタンパク質C-III、アポリポタンパク質E、アルギナーゼ、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素、βフィブリノーゲン、胆汁糖タンパク質。C反応性蛋白質、C4b結合タンパク質α鎖、カルバモイルリン酸合成酵素I、カテコール-O-メチルトランスフェエラーゼ、補体成分C6、チトクロームP450 2E1、エリスロポエチン、第IX因子、第VII因子、第VIII因子、第X因子、γフィブリノーゲン、グルコース-6-ホスファターゼ、ハプトグロビン、肝リパーゼ、インスリン受容体、インスリン様成長因子結合タンパク質I、インスリン様成長因子II、中鎖アシルCoA脱水素酵素、多剤耐性
タンパク質2、プロテインC阻害剤、プロテインC、血清アミロイドA、チロキシン結合グロブリン、トランスフェリン並びにビタミンD結合タンパク質を含む。あるいは、ウイルスプロモーター、構成的プロモーター、調節可能なプロモーター[例えば第WO 2011/126808号明細書及び第WO 2013/04943号明細書を参照されたい]、又は生理学的合図に応答性のプロモーターのような他のプロモーターを、本明細書に説明されるベクター中で利用する場合がある。
【0032】
プロモーターに加え、発現カセット及び/又はベクターは、他の適切な転写開始、終止、エンハンサー配列、スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナルのような効率的RNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を高める配列(すなわちコサックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;並びに所望の場合はコードされる産物の分泌を高める配列を含有する場合がある。適切なポリA配列の例は、例えばSV40、ウシ成長ホルモン(bGH)及びTKポリAを含む。適切なエンハンサーの例は、例えば、とりわけ、αフェトプロテインエンハンサー、TTRミニマルプロモーター/エンハンサー、LSP(TH結合グロブリンプロモーター/α1ミクログロブリン/ビクニンエンハンサー)を含む。一態様において、発現カセットはウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)をさらに含む。他の態様において、ベクターはWPREエレメントを含有しない。なお他の態様において、ベクターはCpG部位を減少させるよう改変されている。
【0033】
一態様において、発現カセットはイントロン、例えばプロモーターとコーディング配列の間に配置されるイントロンを含む。イントロンはmRNAの安定性、5’キャップ形成及びタンパク質の産生を増大させるために導入する場合がある。特定の一態様において、核酸構築物はキメラPromegaイントロンを含む。他のイントロンは、例えばヒトβグロビンb2(すなわちHBB2)イントロン、凝固因子IX(FIX)イントロン、SV40イントロン又はニワトリβグロビンイントロンを含む場合がある。
【0034】
これら制御配列はUGT1A1遺伝子配列に「操作可能に連結」される。本明細書で使用されるところの「操作可能に連結される」という用語は、目的の遺伝子と隣接する発現制御配列と、目的の遺伝子を制御するためにトランスで又は離れた位置で作用する発現制御配列との双方を指す。
【0035】
発現カセットはウイルスベクターの製造に使用されるプラスミド上で操作する場合がある。発現カセットをAAVウイルス粒子中にパッケージングするのに必要とされる最小配列は、キャプシドと同一AAV起源のものの場合があるか、又は(例えばAAVシュードタイプを製造するため)異なるAAV起源のものであるAAVの5’及び3’末端逆位配列(ITR)である。一態様において、AAV2からのITR配列又はその欠失バージョン(ΔITR)を便宜的に及び規制上の承認の時期を早めるために使用する。あるいは、他のAAV供給源からのITRを選択する場合がある。ITRの供給源がAAV2からであり及びAAVキャプシドが別のAAV供給源からである場合、生じるベクターはシュードタイピングされたと呼ぶことができる。典型的に、AAVベクターのための発現カセットは、AAV 5’ITR、UTG1A1コーディング配列及びいずれかの制御配列及びAAV 3’ITRを含む。しかしながらこれら要素の他の構成が適する場合がある。D配列及び末端解離部位(trs)が欠失されているΔITRと称される短縮されたバージョンの5’ITRが説明されている。他の態様において、完全長のAAV 5’及び3’ITRを使用する。
【0036】
「sc」という略語は自己相補性を指す。「自己相補性AAV」は、組換えAAV核酸配列により運搬されるコーディング領域が分子内2本鎖DNA鋳型を形成するよう設計されている発現カセットを有するプラスミド又はベクターを指す。感染に際して、第2鎖の
細胞媒介性の合成を待機するよりむしろ、scAAVの2本の相補性の半分が会合して、即座の複製及び転写の準備ができている1個の2本鎖DNA(dsDNA)単位を形成することができる。例えば、D M McCartyら、“Self-complementary recombinant adeno-associated virus(scAAV) vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis”、Gene Therapy、(August 2001)、Vol 8、Number 16、1248-1254ページを参照されたい。自己相補性AAVは、例えば米国特許第6,596,535号明細書;同第7,125,717号明細書;及び同第7,456,683号明細書(それらのそれぞれはそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)に説明されている。
【0037】
rAAV.hUGT1A1ベクターは肝に対する指向性を有すべきである(例えばAAV8キャプシドを担持するrAAV)。該ベクターはヒト被験者中の注入に適切な緩衝液/担体中で配合する場合がある。該緩衝液/担体は、rAAVが包装又は注入チューブに付着することを予防するがしかしin vivoでのrAAVの結合活性を妨害しない成分を含む場合がある。
【0038】
AAVウイルスベクターは、その中に標的細胞への送達のための核酸配列がパッケージングされているAAVタンパク質キャプシドを有するAAVヌクレアーゼ抵抗性粒子である。AAVキャプシドは、60個のキャプシドタンパク質サブユニット、VP1、VP2およびVP3から構成され、それらは選択されたAAVに依存しておよそ1:1:10ないし1:1:20の比で正十二面体の対称に配置される。例えばAAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、rh10、AAVrh64R1、AAVrh64R2又はrh8を含むAAV血清型を、AAVウイルスベクターのキャプシド(DNアーゼ抵抗性ウイルス粒子)の供給源として選択する場合がある(例えば米国公開第2007/0036760明細書及び第2009-0197338明細書、並びに第EP 1310571号明細書を参照されたい)。国際公開第WO 2003/042397号明細書(AAV7及び他のサルAAV)、米国特許第7,790,449号明細書及び同第7,282,199号明細書(AAV8)、国際公開第WO 2005/033321号明細書、米国特許第7,906,111号明細書(AAV9)、並びに国際公開第WO 2006/110689号明細書及び第WO 2003/042397号明細書(rh10)もまた参照されたい。他の例は、国際公開第WO 2015/013313号明細書に説明されるもののような1種又はそれ以上のバリアントVPキャプシドタンパク質(VP)、例えば、高い肝指向性を提示するとして説明されているRHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4及びRHM15-6キャプシドバリアント、並びにその中に引用される文書を含む場合がある。国際公開第WO 2015/013313号明細書は、「改変されたキャプシド」を、キメラキャプシド、すなわち1種又はそれ以上の野生型AAV VPキャプシドタンパク質に由来する1種又はそれ以上のバリアントVPキャプシドタンパク質を含むキャプシドと称する。特定の一態様において、AAVベクターはキメラベクターであり、すなわち、そのキャプシドは最低2種の異なるAAV血清型に由来するVPキャプシドタンパク質を含むか、又はVPタンパク質領域若しくは最低2種のAAV血清型に由来するドメインを結合する最低1種のキメラVPタンパク質を含む。前述の文書はAAVを生成するために選択する場合がある他のAAVもまた説明し、それらのそれぞれは引用することにより組み込まれる。一部の態様において、ウイルスベクターでの使用のためのAAV capを、前述のAAV Capの1種又はそのコーディング核酸の突然変異誘発により(例えば挿入、欠失又は置換により)生成する場合がある。一部の態様において、AAVキャプシドは前述のAAVキャプシドタンパク質の2又は3又は4種又はそれ以上からのドメインを含むキメラである。一部の態様にお
いて、AAVキャプシドは、2若しくは3種の異なるAAV又は組換えAAVからのVPl、VP2及びVP3単量体のモザイクである。一部の態様において、rAAV組成物は前述のcapの1種以上を含む。
【0039】
本明細書で使用されるところの「AAV8キャプシド」は、本明細書に引用することにより組み込まれ及び配列番号11にて再現されるGenBank受託:YP_077180のコードされるアミノ酸配列を有するAAV8キャプシドを指す。GenBank受託:YP_077180中の参照されるアミノ酸配列に対する約99%の同一性(米国特許第7,282,199号明細書、同第7,790,449号明細書、同第8,319,480号明細書、同第8,962,330号明細書、同第8,962,332号明細書;例えば参照される配列から約1%未満の変動)を有する配列を含む場合がある、このコードされる配列からの若干の変動が本発明により包まれる。別の態様において、AAV8キャプシドは国際公開第WO 2014/124282(本明細書に引用することにより組み込まれる)に説明されるAAV8バリアントのVP1配列を有する場合がある。キャプシド、そのためのコーディング配列の生成方法、及びrAAVウイルスベクターの製造方法は説明されている。(Gaoら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、2003、100(10)、6081-6086;米国特許第2013/0045186号明細書;及び国際公開第WO 2014/124282号明細書)。
【0040】
発現カセットをビリオン中にパッケージングするために、AAV末端逆位配列(ITR)が、遺伝子発現カセットと同一の構築物中にシスで必要とされる唯一のAAV成分である。適しては、複製(rep)及び/又はキャプシド(cap)のためのコーディング配列がAAVゲノムから除去され、及びAAVベクターを生成するためにトランスで又はパッケージング細胞株により供給される。従って、本明細書に提供されるベクターは複製能力がない。AAVキャプシドの供給源と異なる供給源からのITRを含むシュードタイピングされたAAVを提供する場合がある。加えて、又は、あるいは、キメラAAVキャプシドを利用する場合がある。なお他のAAV成分を選択する場合がある。こうしたAAV配列の供給源は本明細書に説明され、及びまた単離されうるか、又は学術的、商業的若しくは公的供給源(例えばAmerican Type Culture Collection(ATCC(登録商標))、バージニア州マナサス)から得ることもできる。あるいは、AAV配列は、文献で、又は例えばGenBank(登録商標)、PubMed(登録商標)などのようなデータベース中で利用可能であるような公表された配列への参照により合成又は他の適切な手段により得ることができる。
【0041】
被験者への送達に適切なAAVウイルスベクターの生成及び単離方法は当該技術分野で既知である。例えば、米国特許第7790449号明細書;米国特許第7282199号明細書;第WO 2003/042397号明細書;第WO 2005/033321号明細書、第WO 2006/110689号明細書;及び第US 7588772 B2号明細書を参照されたい]。一系において、産生体細胞株を、ITRにより隣接されている導入遺伝子をコードする構築物並びにrep及びcapをコードする構築物(1種又は複数)で一過性にトランスフェクトする。第2の系において、rep及びcapを安定して供給するパッケージング細胞株を、ITRにより隣接されている導入遺伝子をコードする構築物で一過性にトランスフェクトする。これらの系のそれぞれにおいて、AAVビリオンがヘルパーアデノウイルス又はヘルペスウイルスへの感染に応答して産生され、汚染するウイルスからのrAAVの分離を必要とする。より最近、AAVを回収するためにヘルパーウイルスへの感染を必要としない系が開発された。必要とされるヘルパー機能(すなわちアデノウイルスE1、E2a、VA及びE4又はヘルペスウイルスUL5、UL8、UL52及びUL29、並びにヘルペスウイルスポリメラーゼ)もまた前記系によりトランスに供給される。これらのより新しい系において、ヘルパー機能は、必要とされるヘルパー機能をコードする構築物での細胞の一過性トランスフェクションにより供給する場
合があるか、又は、細胞を、ヘルパー機能をコードする遺伝子を安定に含むよう操作し得、その発現は転写又は転写後レベルで制御する場合がある。なお別の系において、ITRにより隣接されている導入遺伝子及びrep/cap遺伝子を、バキュロウイルスに基づくベクターへの感染により昆虫細胞中に導入する。これら産生系に関する総説については、全般として、例えば、Zhangら、2009、“Adenovirus-adeno-associated virus hybrid for large-scale
recombinant adeno-associated virus production、”Human Gene Therapy 20:922-929(そのそれぞれの内容はそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい。これら及び他のAAV産生系の作成及び使用方法は以下の米国特許(それらのそれぞれの内容はそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる):第5,139,941号明細書;同第5,741,683号明細書;同第6,057,152号明細書;同第6,204,059号明細書;同第6,268,213号明細書;同第6,491,907号明細書;同第6,660,514号明細書;同第6,951,753号明細書;同第7,094,604号明細書;同第7,172,893号明細書;同第7,201,898号明細書;同第7,229,823号明細書;及び同第7,439,065号明細書にもまた説明されている。全般として、例えばGrieger及びSamulski、2005、“Adeno-associated virus as a gene therapy vector:Vector development,production and clinical applications、”Adv.Biochem.Engin/Biotechnol.99:119-145;Buningら、2008、“Recent developments in adeno-associated virus vector technology、”J.Gene Med.10:717-733;及び以下に引用される参考文献(それらのそれぞれはそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい。本発明のいずれかの態様を構築するのに使用される方法は核酸操作の当業者に既知であり、そして遺伝子工学、組換え工学及び合成技術を含む。例えば、Green及びSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(2012)を参照されたい。同様に、rAAVビリオンの生成方法は公知であり、及び、適切な方法の選択は本発明を限定するものではない。例えばK.Fisherら、(1993)J.Virol.、70:520-532及び米国特許第5,478,745号明細書を参照されたい。
【0042】
rAAV.hUGT1A1ベクターは以下のとおり製造する場合がある。簡潔には、細胞(例えばHEK293細胞)を適切な細胞培養系中で増殖させ、及びベクター生成のためトランスフェクトする。rAAV.hUGT1A1ベクターをその後回収し、濃縮し及び精製してバルクベクターを製造し、これをその後充填し及び下流の工程で仕上げる。
【0043】
本明細書に説明される遺伝子治療ベクターの製造方法は、遺伝子治療ベクターの製造のため使用されるプラスミドDNAの生成、該ベクターの生成、及び該ベクターの精製のような当該技術分野で公知の方法を含む。一部の態様において、遺伝子治療ベクターはAAVベクターであり、並びに、生成されるプラスミドはAAVゲノム及び目的の遺伝子をコードするAAVシスプラスミド、AAV rep及びcap遺伝子を含むAAVトランスプラスミド、並びにアデノウイルスヘルパープラスミドである。ベクター生成方法は、細胞培養の開始、細胞の継代、細胞の播種、プラスミドDNAでの細胞のトランスフェクション、無血清培地へのトランスフェクション後培地交換、並びにベクターを含む細胞及び培地の回収のような方法段階を包み得る。回収されたベクターを含む細胞及び培地を本明細書で粗細胞回収物(cell harvest)と称する。
【0044】
前記粗細胞回収物をその後、ベクター回収物の濃縮、ベクター回収物のダイアフィルトレーション、ベクター回収物の顕微溶液化、ベクター回収物のヌクレアーゼ消化、顕微溶液化された中間体の濾過、クロマトグラフィーによる精製、限外濾過による精製、接線流濾過による緩衝液交換、並びにバルクベクターを製造するための配合及び濾過のような方法段階にかけることができる。
【0045】
ある態様において、本明細書に説明されるのと類似の方法を他のAAV産生細胞とともに使用する場合がある。トランスフェクション、安定細胞株産生、並びにアデノウイルス-AAVハイブリッド、ヘルペスウイルス-AAVハイブリッド及びバキュロウイルス-AAVハイブリッドを含む感染性ハイブリッドウイルス産生系を含む多数の方法が、rAAVベクターの製造のため当該技術分野で既知である。例えば、G Yeら、Hu Gene Ther Clin Dev、25:212-217(Dec 2014);RM
Kotin、Hu Mol Genet、2011、Vol.20、Rev Issue 1、R2-R6;M.Mietzschら、Hum Gene Therapy、25:212-222(Mar 2014);T Viragら、Hu Gene Therapy、20:807-817(August 2009);N.Clementら、Hum Gene Therapy、20:796-806(Aug 2009);DL
Thomasら、Hum Gene Ther、20:861-870(Aug 2009)を参照されたい。rAAVウイルス粒子の製造のためのrAAV産生培養物は全部必要とし;例えば、HeLa、A549若しくは293細胞のようなヒト由来細胞株、又はバキュロウイルス産生系の場合にSF-9のような昆虫由来細胞株を含む適切な宿主細胞;2)野生型若しくは変異体アデノウイルス(温度感受性アデノウイルスのような)、ヘルペスウイルス、バキュロウイルスにより提供される適切なヘルパーウイルス機能、又はトランス若しくはシスでヘルパー機能を提供する核酸構築物;3)機能的AAV rep遺伝子、機能的cap遺伝子及び遺伝子産物;4)AAV ITR配列により隣接されている導入遺伝子(治療的導入遺伝子のような);並びに5)rAAV産生を支援する適切な培地及び培地成分。
【0046】
多様な適切な細胞及び細胞株がAAVの製造における使用について説明されている。該細胞それ自身は、原核生物(例えば細菌)細胞、並びに昆虫細胞、酵母細胞及び哺乳動物細胞を含む真核生物細胞を含むいずれの生物からも選択する場合がある。とりわけ望ましい宿主細胞は、A549、WEHI、3T3、10T1/2、BHK、MDCK、COS
1、COS 7、BSC 1、BSC 40、BMT 10、VERO、WI38、HeLa、HEK 293細胞(機能的アデノウイルスE1を発現する)、Saos、C2C12、L細胞、HT1080、HepG2、並びにヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ及びハムスターを含む哺乳動物由来の初代線維芽細胞、肝細胞および筋芽細胞のような細胞を含むが、これらに限られない、いずれかの哺乳動物種のなかから選択する。ある態様において、細胞は懸濁に適合された細胞である。細胞を提供する哺乳動物種の選択は本発明を限定するものではでなく;哺乳動物細胞の型すなわち線維芽細胞、肝細胞、腫瘍細胞なども本発明を限定するものではない。
【0047】
空のキャプシドを、患者に投与するAAV.hUGT1A1の用量から除去することを確実にするために、空のキャプシドを、例えば塩化セシウム勾配超遠心を使用してベクター精製過程中にベクター粒子から分離する。一態様において、パッケージングされたゲノムを含むベクター粒子を、国際特許出願第PCT/US16/65976号明細書、2016年12月9日出願、並びにその優先権書類米国特許出願第62/322,098号明細書、2016年4月13日出願、並びに2015年12月11日に出願され及び“Scalable Purification Method for AAV8(AAV8のスケーラブル精製方法)”という発明の名称の米国特許出願第62/266,341号明細書(本明細書に引用することにより組み込まれる)に説明される方法を使用して、空
のキャプシドから精製する。国際特許出願第PCT/US16/65974号明細書、2016年12月9日出願、並びにその優先権書類米国特許出願第62/322,083号明細書、2016年4月13日出願及び同第62/266,351号明細書、2015年12月11日出願(AAV1);国際特許出願第PCT/US16/66013号明細書、2016年12月9日出願、並びにその優先権書類米国仮出願第62/322,055号明細書、2016年4月13日出願及び同第62/266,347号明細書、2015年12月11日出願(AAVrh10);並びに国際特許出願第PCT/US16/65970号明細書、2016年12月9日出願、並びにその優先出願米国仮出願第62/266,357号明細書及び同第62/266,357号明細書(AAV9)(本明細書に引用することにより組み込まれる)に説明される精製方法もまた参照されたい。簡潔には、ゲノムを含むrAAVベクター粒子をrAAV産生細胞培養物の澄明にされた濃縮された上清から選択的に捕捉及び単離する2段階精製スキームが説明されている。該方法は、高塩濃度で実施される親和性捕捉法、次いでrAAV中間体を実質的に含まないrAAVベクター粒子を提供するため高pHで実施される陰イオン交換樹脂法を利用する。
【0048】
ある態様において、前記方法は薬理学的に活性のゲノム配列を含むDNAを含む組換えAAV8ウイルス粒子をゲノム欠損(空)AAVキャプシド中間体から分離する。前記方法は、(a)粒子及び中間体を生成したAAV産生体細胞培養物からAAV以外の物質を除去するために精製されている組換えAAV8ウイルス粒子及び空のAAV8キャプシド中間体;並びに20mMビストリスプロパン(BTP)及び約10.2のpHを含む緩衝液Aを含む負荷懸濁液を形成すること;(b)(a)の懸濁液を強陰イオン交換樹脂に負荷すること;(c)負荷された陰イオン交換樹脂を、約10.2のpHを伴う10mM NaCl及び20mM BTPを含む緩衝液1%Bで洗浄すること;(d)負荷され及び洗浄された陰イオン交換樹脂に増大する塩濃度勾配を適用すること;及び(e)rAAV粒子を溶離液から回収すること、を含み、前記樹脂は懸濁液及び/又は溶液の流れのための入口並びに容器からの溶離液の流れを許容する出口を有する容器中にあり、前記塩勾配は10mMから終点を含む約190mM NaClまたは同等物までの範囲にわたり、前記rAAV粒子は中間体から精製されている。
【0049】
一態様において、使用されるpHは10から10.4まで(約10.2)であり、及びrAAV粒子はAAV8中間体から最低約50%ないし約90%精製されるか、又は、10.2のpH及びAAV8中間体から約90%ないし約99%精製されている。一態様において、これはゲノムコピーにより決定される。rAAV8粒子(パッケージングされたゲノム)のストック又は製剤は、ストック中のrAAV8粒子が、ストック中のrAAV8の最低約75%ないし約100%、最低約80%、最低約85%、最低約90%、最低約95%又は最低99%であり、並びに「空のキャプシド」が、ストック又は製剤中のrAAV8の約1%未満、約5%未満、約10%未満、約15%未満である場合に、AAV空キャプシド(及び他の中間体)を「実質的に含ま」ない。
【0050】
一態様において、該製剤は、1又はより少ない、好ましくは0.75未満、より好ましくは0.5、好ましくは0.3未満の「一杯(full)」に対する「空」の比を有するrAAVストックを特徴とするである。
【0051】
さらなる一態様において、rAAV粒子の平均収率は最低約70%である。これは、カラム上に負荷された混合物中の力価(ゲノムコピー)及び最終溶離中の量の存在を測定することにより計算する場合がある。さらに、これらは、本明細書に説明されるもの又は当該技術分野で説明されているもののようなq-PCR分析及び/又はSDS-PAGE技術に基づいて決定する場合がある。
【0052】
例えば、空の粒子及び中身が詰まった粒子の含量を計算するため、選択されたサンプル
についてのVP3のバンド容量(例えばイオジキサノール勾配精製される製剤、ここでGCの数=粒子の数)を、負荷されたGC粒子に対しプロットする。生じる一次方程式(y=mx+c)を使用して、試験薬剤のピークのバンド容量中の粒子の数を計算する。負荷された20μLあたりの粒子(pt)の数に50を掛け算して粒子(pt)/mLを与える。GC/mLにより除算されるpt/mLはゲノムコピーに対する粒子の比(pt/GC)を与える。pt/mL-GC/mLが空のpt/mLを与える。pt/mLにより除算され及び100倍される空のpt/mLが空の粒子のパーセンテージを与える。
【0053】
前記ベクターのAAV/8血清型の確認は、質量分析(MS)によるVP3キャプシドタンパク質のペプチドの分析に基づくアッセイにより達成する場合がある。前記方法は、SDS-PAGEゲルから切り出されるVP3タンパク質バンドの多酵素消化(トリプシン、キモトリプシン及びエンドプロテイナーゼGlu-C)、次いでキャプシドタンパク質を配列決定するためのQ-Exactive Orbitrap質量分析計でのUPLC-MS/MSでの特徴付けを含む。タンデム質量スペクトル(MS)法は、質量スペクトルからのある種の汚染物質タンパク質及び派生するペプチド配列の同定を見込む。
【0054】
一般に、空のキャプシド及びパッケージングされたゲノムを含むAAVベクター粒子のアッセイ方法は当該技術分野で既知である。例えば、Grimmら、Gene Therapy(1999)6:1322-1330;Sommerら、Molec.Ther.(2003)7:122-128を参照されたい。変性されたキャプシドについて試験するため、前記方法は、処理されたAAVストックを、前記3種のキャプシドタンパク質を分離することが可能ないずれかのゲル、例えば緩衝液中に3-8%トリス酢酸を含む勾配ゲルよりなるSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけること、その後サンプル物質が分離されるまでゲルを泳動すること、及びゲルをナイロン又はニトロセルロースメンブレン、好ましくはナイロン上にブロッティングすることを含む。抗AAVキャプシド抗体をその後、変性されたキャプシドタンパク質に結合する一次抗体、好ましくは抗AAVキャプシドモノクローナル抗体、最も好ましくはB1抗AAV-2モノクローナル抗体(Wobusら、J.Virol.(2000)74:9281-9293)として使用する。二次抗体、一次抗体に結合し及び一次抗体との結合を検出するための手段を含むもの、より好ましくはそれに共有結合されている検出分子を含む抗IgG抗体、最も好ましくはワサビペルオキシダーゼに共有結合されているヒツジ抗マウスIgG抗体をその後使用する。結合の検出方法、好ましくは放射活性同位体の放射、電磁放射又は比色的変化を検出することが可能な検出法、最も好ましくは化学発光検出キットを使用して、一次及び二次抗体の間の結合を半定量的に測定する。例えば、SDS-PAGEについて、カラム画分からのサンプルを採取し及び還元剤(例えばDTT)を含むSDS-PAGE負荷緩衝液中で加熱し得、並びにキャプシドタンパク質をプレキャスト勾配ポリアクリルアミドゲル(例えばNovex)上で分離した。銀染色を、製造元の説明書に従ってSilverXpress(Invirogen、カリフォルニア州)を使用して実施する場合がある。一態様において、カラム画分中のAAVベクターゲノム(vg)の濃度を、定量的リアルタイムPCR(Q-PCR)により測定する場合がある。サンプルを希釈し及びDNアーゼI(又は別の適切なヌクレアーゼ)で消化して外因性DNAを除去する。ヌクレアーゼの不活性化後に、サンプルをさらに希釈し、並びにプライマー及びプライマー間のDNA配列に特異的なTaqManTM蛍光性プローブを使用して増幅する。定義されたレベルの蛍光に達するのに必要とされるサイクルの数(閾値サイクル、Ct)を、Applied Biosystems Prism 7700配列検出装置上で各サンプルについて測定する。AAVベクターに含有されるものに同一の配列を含むプラスミドDNAを使用して、Q-PCR反応における標準曲線を生成する。サンプルから得られるサイクル閾値(Ct)値を使用して、それをプラスミドの標準曲線のCt値に対し正規化することによりベクターゲノム力価を決定する。デジタルPCRに基づく終点アッセイもまた使用する場合がある。
【0055】
一局面において、広範な範囲のセリンプロテアーゼ例えばプロテイナーゼK(Qiagenから商業的に入手可能であるような)を利用する最適化されたq-PCR法が本明細書に提供される。より具体的には、最適化されたqPCRゲノム力価アッセイは、DNアーゼI消化後にサンプルをプロテイナーゼK緩衝液で希釈し及びプロテイナーゼKで処理し、次いで熱不活性化することを除き、標準アッセイに類似である。適しては、サンプルをサンプルの大きさに等しい量のプロテイナーゼK緩衝液で希釈する。プロテイナーゼK緩衝液は2倍又はそれ以上に濃縮する場合がある。典型的に、プロテイナーゼK処理は約0.2mg/mLであるが、しかし0.1mg/mLから約1mg/mLまで変動する場合がある。前記処理段階は一般に約55℃で約15分間実施するが、しかしより低い温度(例えば約37℃ないし約50℃)でより長い時間(例えば約20分ないし約30分)にわたり、又はより短い時間(例えば約5ないし10分)より高温(例えば約60℃まで)で実施する場合がある。同様に、熱不活性化は一般に約95℃で約15分間であるが、しかし温度を低下させ(例えば約70ないし約90℃)及び時間を延長(例えば約20分ないし約30分)する場合がある。サンプルをその後希釈し(例えば1000倍)、及び標準アッセイに説明されるところのTaqMan分析にかける。
【0056】
加えて、又は、あるいは、ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)を使用する場合がある。例えば、ddPCRによる一本鎖及び自己相補性AAVベクターゲノム力価の測定方法が説明されている。例えば、M.Lockら、Hu Gene Therapy
Methods,Hum Gene Ther Methods.2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131.Epub 2014 Feb 14を参照されたい。
【0057】
本明細書に説明される製薬学的組成物は、いずれかの適切な経路又は異なる経路の組合せによるそれの必要な被験者への送達のため設計される。肝への直接送達(場合によっては、静脈を介して、肝動脈を介して、又は移植により)、経口、吸入、髄腔内、鼻内、気管内、動脈内、眼内(例えば硝子体内)、静脈内、筋肉内、皮下、皮内及び他の投与経路。
【0058】
本発明は、本発明の核酸、又は本発明のベクター、又は本発明の細胞を含む製薬学的組成物もまた提供する。こうした組成物は治療上有効な量のUGT1A1を含む。ある態様において、野生型の発現レベルの約5%と同じくらい低い発現レベルに達することが治療的利益を提供する場合がある。他の態様において、発現レベルは、野生型の発現レベルの5%より高い、例えば野生型の発現レベルの10%以上、20%以上、30%以上又は約100%までである。
【0059】
前記複製欠損ウイルスは、遺伝子移入及び遺伝子治療の応用における使用のため生理学的に許容できる担体と配合する場合がある。AAVウイルスベクターの場合、ゲノムコピー(「GC」)の定量を製剤中に含有される用量の尺度として使用する場合がある。当該技術分野で既知のいずれの方法も、本発明の複製欠損ウイルス組成物のゲノムコピー(GC)数を決定するのに使用する場合がある。AAV GC数滴定の一実施方法は後に続くとおりである:精製されたAAVベクターサンプルを最初にDNアーゼで処理して、キャプシド形成されないAAVゲノムDNA又は汚染するプラスミドDNAを製造工程から排除する。ヌクレアーゼ抵抗性粒子をその後熱処理にかけてキャプシドからゲノムを放出させる。放出されたゲノムをその後、ウイルスゲノムの特定の領域(通常はポリAシグナル)を標的とするプライマー/プローブ組を使用するリアルタイムPCRにより定量する。ゲノムコピーの別の適切な決定方法は、定量的PCR(qPCR)、具体的には最適化されたqPCR又はデジタルドロップレットPCR[Lock Martinら、Human Gene Therapy Methods.April 2014、25(2):
115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131、2013年12月13日編集の前にオンライン公開される]である。
【0060】
rAAV.UGT1A1ベクター組成物は、ヒト患者について約1.0×109GCないし約1.0×1014GC(体重が70kgの平均的成体被験者を処置するため)、及び好ましくは1.0×1012GCないし1.0×1014GCの範囲にあるrAAVの量を含むように投薬量単位に配合する場合がある。別の態様において、用量は約1×1013GC/kg未満である。例えば、AAVウイルスの用量は、約1×109GC、約5×109GC、約1×1010GC、約5×1010GC又は約2.5×1012GCの場合がある。別の例において、バリアントは約0.001mgないし約10mg/kgの量で送達する場合がある。
【0061】
上述された組換えベクターは公表された方法に従って宿主細胞に送達する場合がある。好ましくは生理学的に許容できる担体に懸濁されているrAAVをヒト又はヒト以外の哺乳動物被験者に投与する場合がある。「製薬学的に許容できる」という用語は、連邦又は州政府の規制当局により承認される、或いは動物及びヒトでの使用について米国若しくは欧州薬局方又は他の一般に認識される薬局方に列挙されるを意味している。「担体」という用語は、それとともに治療薬が投与される希釈剤、補助物質、賦形剤又はベヒクルを指す。こうした製薬学的担体は、水、及び、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油などのような石油、動物、植物又は合成起源のものを含む油のような無菌液体の場合がある。水は、製薬学的組成物を静脈内で投与する場合に好ましい担体である。食塩水溶液並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液もまた、とりわけ注入可能な溶液のための液体担体として使用する場合がある。適切な製薬学的賦形剤は、デンプン、グルコース、乳糖、ショ糖、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどを含む。組成物は、所望の場合、少量の湿潤若しくは乳化剤又はpH緩衝剤もまた含む場合がある。これら組成物は、懸濁剤、乳剤、徐放製剤などの形態を取る場合がある。適切な製薬学的担体の例は、E.W.Martinによる”Remington’s Pharmaceutical Sciences”に説明されている。一態様において、ベクターはリン酸緩衝生理的食塩水を含む組成物中に配合される。別の特定の態様において、ベクターは乳酸リンゲル液及びPluronic(登録商標)F68のような非イオン性界面活性剤を含む組成物中に、0.001総組成物の重量%の濃度でのような0.01~0.0001%の最終濃度で配合される。典型的に、静脈内投与のための組成物は無菌等張水性緩衝液の溶液である。必要な場合、組成物は、可溶化剤、及び注入の部位での疼痛を和らげるためのリドカインのような局所麻酔薬もまた含む場合がある。担体の選択は本発明を限定するものではない。
【0062】
場合によっては、本発明の組成物は、rAAV及び担体(1種又は複数)に加え、保存剤又は化学的安定化剤のような他の慣習的製薬学的成分を含有する場合がある。適切な例示的保存剤は、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化イオウ、没食子酸プロピル、パラベン類、エチルバニリン、グリセリン、フェノール及びパラクロロフェノールを含む。適切な化学的安定化剤はゼラチン及びアルブミンを含む。
【0063】
1クールの処置は、同一ウイルスベクター(例えばAAV8ベクター)又は異なるウイルスベクター(例えばAAV8、AAV3B、AAVhu.37及びAAVrh10)の反復投与を場合によっては含む場合がある。なお他の組合せは本明細書に説明されるウイルスベクターを使用して選択する場合がある。
【0064】
例えば、rAAV.UGT1A1及びそれを含む組成物での処置は免疫抑制レジメンとの同時療法を含む場合がある。免疫抑制剤は、第1のベクターの投与前、それと実質的に
同時に投与する場合があるか、又は第1のベクターの投与後に投与する場合がある。場合によっては、免疫抑制レジメンを、1日~14日間、又は、必要とされる若しくは所望のとおりその間のより短い期間例えば3日、7日、10日若しくはより長い期間、含有する場合がある。適切な免疫抑制剤は当業者により容易に選択されることができ、並びにステロイド、代謝拮抗薬、T細胞阻害剤及びアルキル化剤を含む場合がある、例えば含むがこれらに限られないことができる。ある態様において、患者を上昇された肝酵素について監視し、及び場合によっては一時的な免疫抑制療法で処置する(例えば、ベースラインレベルの最低約2倍のアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)又はアラニントランスアミラーゼ(ALT)が観察される場合)。
【0065】
場合によっては、本明細書に説明される組成物は、例えば光線療法を含む他の療法を含む投与計画で組み合わせる場合がある。
【0066】
現在の光線療法は、治療灯(発光範囲:400~525nm、ピーク発光:450~460nm)への曝露を含む場合がある。本明細書に提供されるところの処置を受けないとき、患者は最低約10時間ないし約12時間/日又はより長い間の光線療法セッションを受ける。患者の生存はこの療法の無期限の継続に依存する。当初は非常に有効とはいえ、光線療法は不便であり、並びにこの処置の有効性は、皮膚の厚さの増大と、体表面/重量比とにより加齢とともに低下し;従って、患者は思春期の時期あたりに再度核黄疸の危険性がある。光線療法の有効性を改良するため、ランプを約1,000~1,500時間の使用(およそ4ないし6か月ごと)後に交換する、光源を身体近く(約15~20センチメートル、6~8インチ)に保つ、光への皮膚曝露を最大にする、白一色のシーツを使用する、及びベッドの周囲に反射表面(鏡及び緊急用毛布)を置くことが推奨される。
【0067】
ある態様において、クリグラー・ナジャー症候群I型を有する患者を遺伝子治療及び光線療法の組合せで処置する。例えば、光線療法処置は遺伝子治療での処置前に開始する場合がある。光線療法は、加えて、又は、あるいは、AAV.UGT1A1組成物の投与後24時間までないし約4週又はその間の時点(例えば約10日、約2週、約3週)の間投与する場合がある。適しては、AAV.UGT1A1組成物の投与後約4週又はそれ未満後に、1日あたり1患者での光線療法に必要とされる時間の長さが、最低約30%ないし約100%、又は最低約50%、最低約75%、最低約80%だけ短縮される。一部の態様において、患者は連続しない日の光線療法のみを必要とする場合がある。別の態様において、光線療法はビリルビンレベルを許容できるレベルに低下させるためにもはや必要とされない。
【0068】
ある他の態様において、患者はその後、クリグラー・ナジャー症候群II型患者のための慣習的標準治療に従って処置する。こうした患者において、フェノバルビタールを、ビリルビンレベル及びいずれかのCNS関連症状を制御するために使用する。
【0069】
ある態様において、クリグラー・ナジャー症候群II型患者を、本明細書に説明されるところのAAV.hUGT1A1組成物で処置する場合がある。フェノバルビタール又は他の療法を、加えて、又は、あるいは、AAV.UGT1A1組成物の投与後24時間ないし約4週又はその間の点(例えば約10日、約2週、約3週)の間投与する場合がある。適しては、AAV.UGT1A1組成物の投与後約4週又はそれ未満後に、1日あたり1患者で必要とされるフェノバルビタールの用量が、最低約30%ないし約100%、又は最低約50%、最低約75%、最低約80%だけ低下する。別の態様において、フェノバルビタールはもはや必要とされない。
【0070】
ある態様において、本明細書に説明されるところのAAAV.hUGT1A1組成物で処置された、欠損しているUGT1A1発現レベルを伴うすなわちクリグラー・ナジャー
症候群I又はII型患者は、ジルベール症候群を有する患者で見出されるような上昇されたビリルビンレベルを有するが、しかしさらなる継続している処置は必要とされない。
【0071】
「ある(a)」又は「ある(an)」という用語は1又はそれ以上を指すことが注目されるべきである。であるから、「ある(a)」(または「ある(an)」)、「1又はそれ以上」及び「最低1」という用語は本明細書で互換性に使用される。
【0072】
「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(こと)(comprising)」という語は、排他的よりはむしろ包括的に解釈されるべきである。「からなる(consist)」、「からなる(こと)(consisting)」という語及びその変形は、包括的よりはむしろ排他的に解釈されるべきである。本明細の多様な態様が「含む(こと)」言語を使用して提示される一方、他の状況下で、関連する一態様は「からなる(こと)(consisting of)」又は「から本質的になる(こと)(consisting essentially of)」言語を使用して解釈及び説明されることもまた意図している。
【0073】
本明細書で使用されるところの「約」という用語は、別の方法で明記されない限り、示される参照からの10%の変動性を意味している。
【0074】
本明細書で使用されるところの「調節」という用語又はその派生物は、生物学的経路の1又はそれ以上の成分を阻害するある組成物の能力を指す。
【0075】
「被験者」は、哺乳動物、例えばヒト、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、乳牛、ブタ、又はサル、チンパンジー、ヒヒ若しくはゴリラのようなヒト以外の霊長類である。
【0076】
本明細書で使用されるところの「疾患」、「障害」及び「状態」は、被験者における異常な状態を示すために互換性に使用する。
【0077】
以下の実施例は具体的説明のみであり、及び本発明の範囲を限定するものではない。本明細書で使用される略語の一覧を下に表1に提供する。
【0078】
【表1-1】
【0079】
【表1-2】
【実施例1】
【0080】
ベクター生成及び比較
5種のhUGT1A1オープンリーディングフレーム(ORF)を有する一連のベクターを構築した。下の表2を参照されたい。簡潔には、前記5種のhUGT1A1 ORF(表1)のそれぞれについてAAV8ベクターのロットの収量に統計学的に有意の差は存在しなかった。
【0081】
HEK293細胞が増殖するときに、細胞を3種のプラスミド:AAV血清型特異的パッケージング(トランス)プラスミド、adヘルパープラスミド、及びAAV末端逆位配列(ITR)に挟まれているUGT1A1導入遺伝子のための発現カセットを含むベクターシスプラスミドのそれぞれでトランスフェクトする。トランスフェクションはリン酸カルシウム法を使用して実施する。TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGHを運搬するシスプラスミドの完全長配列を配列番号9に提供する(ベクターゲノムは5’から3
’ITRまで配列番号9のnt 1-3558にわたる)。TBG.hUGT1A1co.BGHを運搬するシスプラスミドの完全長配列を配列番号10に提供する(ベクターゲノムは5’から3’ITRまで配列番号10のnt 1-3152にわたる)。他のプラスミドを構築するため、配列番号12(UGT1A1 U201DP)、配列番号13(UGT1A1 U001)、配列番号14(UGT1A1 U011TY)又は配列番号18(U3G)のコーディング配列を配列番号10のnt 1092-2690の代わりに用いる。他の態様において、アンピシリン耐性遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子により置換されているプラスミドを使用する。使用されるトランスプラスミドは、配列番号11の配列を有するAAV8キャプシドVP1タンパク質をコードするAAV8遺伝子を運搬する。これらベクターを、尾静脈を介する3×1012GC/kgのベクターのIV注入後にオス及びメス野生型C57BL/6マウスで評価した。血液を、AST、ALT、アルカリホスファターゼ及び総ビリルビンの評価のため剖検時の心穿刺により採取した。肝を回収し、肝葉の1つを固定及びパラフィン包埋のため採取し、残部を急速凍結して-80℃で保存した。発現を、肝ホモジェネートのウエスタンブロットにより測定されるhUGT1A1タンパク質レベルにより評価し、ヒトUGT1A1特異的抗体を検出に使用した。ウエスタンブロット画像を、陽性対照サンプルからの同一量のタンパク質に対し定量化した。
【0082】
【表2】
【0083】
肝サンプルをドライアイス上で凍結させ及び-60℃以下で保存した。組織ホモジェネートを作成し、及びhUGT1A1発現を測定するためのウエスタンブロットを後に続くとおり実施した。マウス肝サンプルを、製造元の説明書に従ってQIAGEN TissueLyser II(QIAGEN、ドイツヒルデン)を使用してRIPA溶解及び抽出緩衝液(ThermoFisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)並びにプロテアーゼ阻害剤中で均質化した。タンパク質レベルを、製造元の説明書に従って、Pierce BCAタンパク質アッセイキット(ThermoFisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)により定量化した。ホモジェネートは1μgのタンパク質がゲル上で泳動されることを可能にするよう希釈した。サンプルを95℃で5分間加熱し、NuPAGE Novex 10%ビストリスプロテインゲル(ThermoFisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)上で分離し、及びTrans-Blot Turbo PDVFメンブレン(BioRad、米国カリフォルニア州ハーキュリーズ)に転写した。メンブレンを5%脱脂粉乳、トリス緩衝生理的食塩水、0.1%Tween 20(TBS-T)中室温で1時間ブロッキングした。メンブレンを0.5%脱脂粉乳及びTBS-T中で洗浄し、その後、0.5%脱脂粉乳及びTBS-T中1:200の抗体希釈した抗-UGT1A抗体(H-300[sc-25847]、Santa Cruz Biotechnology、米国テキサス州ダラス)と、4℃で一夜インキュベートした。メンブレンをTBS-Tでそれぞれ5分間3回洗浄し、その後、0.5%脱脂粉乳及びTBS-T中1:5000の抗体希釈したヤギ抗ウサギHRP結合抗体(sc-2054、Santa Cruz Biotechnology、米国テキサス州ダラス)と室温で1時間インキュ
ベートした。メンブレンをTBS-Tでそれぞれ5分間3回洗浄し、HRPを、製造元の説明書に従ってPierce ECLウエスタンブロッティング基質(ThermoFisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して検出した。バンドの画像を陽性対照サンプルからの同一量のタンパク質に対して定量化した。
【0084】
ベクターの2種(AAV8.TBG.U011TY.BGHおよびAAV8.TBG.U3G.BGH)についてタンパク質発現について評価されるとき、多様なコドン最適化された配列の使用が、AAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGHベクターに比較して発現を有意に低下させた。メスマウスにおけるhUGT1A1の発現はオスマウスで見られるものに比較して低下した。オス又はメスいずれか一方の群全部にわたるAST、ALT、アルカリホスファターゼ及び総ビリルビンレベルの有意の差違は存在しなかった。臨床化学値及びウエスタンブロットによるhUGT1A1発現の比較を、オス又はメスいずれか一方のテューキーの多重事後比較検定(multiple comparisons post-test)を用いる一元配置分散分析を使用して実施した。
【0085】
hUGT1A1の発現は、オスマウスにおいてAAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGHベクター並びに第2世代のベクターの2種(AAV8.TBG.U001.BGH及びAAV8.TBG.U201DP.BGH)間で有意に異ならなかった(図1)。これら第2世代ベクターの双方は、導入遺伝子発現を高めるとして以前に説明されているウッドチャック調節後エレメント(woodchuck post-regulatory element)(WPRE)を欠く。しかしながら、既存の肝疾患を伴う患者にWPREを送達することの安全性に関し規制上の懸念が呈されている。CN1は肝疾患であるため、このエレメントを欠くベクターをさらなる研究を進めるために選択する。
【実施例2】
【0086】
新生仔における全身投与後のAAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.bGHの有効性のin vivo評価
A.概要
この概念実証(POC)研究の目的は、CNの処置のため設計された最初のベクターAAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGHを評価することであった。このベクターを新生UGT1ノックアウト(KO)マウスに投与して、ヒトUGT1A1(hUGT1A1)の発現、及びUGT1 KOマウスモデル(CNの動物モデル)の生存を増大させるための遺伝子治療アプローチの能力を評価した。
【0087】
ヘテロ接合個体×ヘテロ接合個体マウスの交尾後に出生した3腹仔のマウス(UGT1
KO;n=5;ヘテロ接合個体:n=9;野生型[WT]:n=4)に、AAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGH(マウスあたり1011ゲノムコピー[GC])を表在性側頭顔面静脈を介し出生後24時間以内に静脈内(IV)注入した。全部のマウスを出生後第21日の離乳時に遺伝子型分類した。血液サンプルを、血清総ビリルビンレベルの評価のため、出生後第28日から前記研究の生存期間を通して2週ごとに回収した。マウスを試験薬剤投与後第270日に剖検した。肝を剖検時に回収し、10%中性緩衝ホルマリン中で固定し、UGT1A1についての免疫組織化学的染色のため処理した。
【0088】
AAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGHを用いる新生仔遺伝子治療は、出生直後期間の致死性高ビリルビン血症からUGT1 KOマウスを保護し、未処置UGT1 KOマウスにおける5日から試験薬剤投与後270日まで、生存を有意に増大させた(研究終了時、未処置UGT1 KOマウスに比較してp<0.0001)。図2を参照されたい。レスキューされたUGT1 KOマウスは、血清総ビリルビンレベルの
上昇を伴ってではあるが、それらのヘテロ接合個体及びWT同腹仔と表現型上同一にみえた。AAV処置されたUGT1 KOマウスにおける血清総ビリルビンレベルはヘテロ接合個体及びWT動物に比較して5.7倍だけ上昇したが、しかし光線療法により成体期までレスキューされたUGT1 KOマウスと比較した場合に15.2倍低下した(p<0.0001 スチューデントのt検体による比較)。肝細胞の増殖による肝臓内のベクターGCの希釈が、ヘテロ接合個体及びWT同腹仔に比較して上昇された血清総ビリルビンレベルに基づく若干の導入遺伝子発現の低下及び不完全な長期是正をもたらした。
【0089】
B.方法
マウスはヘテロ接合個体×ヘテロ接合個体の交尾後に生成した。3腹仔からの全部の仔に出生24時間以内に試験薬剤を投与した。マウスは、出生後21日の離乳時に耳タグを付けて遺伝子型分類した。
【0090】
表在性側頭顔面静脈を介する静脈内(IV)経路を使用のため選択したが、それは、ヒトにおいて前記疾患の臨床部位である肝を標的とするために使用される最も効率的な経路であるためであった。
【0091】
試験薬剤の有効性を血清中の総ビリルビンレベルにより決定した。加えて、免疫組織化学的(IHC)分析を実施して肝臓内のhUGT1A1タンパク質発現のレベルを測定した。
【0092】
動物の血清総ビリルビンレベルの変化を分析した。マウスを麻酔し、及び、血液を前記研究の生存中期中に後眼窩若しくは顎下技法により又は剖検時の心穿刺により回収した。血液をラベル貼付された血清ゲル状分離剤褐色蓋管に回収し、凝固させ、及びその後血清を単離した。
【0093】
生存曲線の比較を、ログランク(マンテル-コックス)検定を使用して実施した。血清総ビリルビンデータについて、コホート平均および平均の標準誤差(SEM)を計算し報告した。スチューデントのt検定を血清総ビリルビンレベルデータで実施して、光線療法により成体期までレスキューされたマウスと比較して試験薬剤に関連するなんらかの影響があるかどうか決定した。
【0094】
C.結果
マウスは前記研究の経過中に死亡しなかった。1011ゲノムコピー(GC)/マウスのAAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGHを用いる新生仔遺伝子治療は、未処置UGT1 KOマウスでの5日間の生存期間からベクター処置されたマウスでの270日の生存期間までの有意に増加し(図2、p<0.0001 ログランク(マンテル-コックス)検定による生存曲線の比較)、UGT1 KOマウスを出生直後期間の致死性高ビリルビン血症から保護した。
【0095】
マウスは出生後第28日から前記研究の最初の生存中(in-life phase)を通して体重を測定した。全部の動物が前記研究期間中体重を増加し続けた。レスキューされたUGT1 KOマウスは、それらのWT及びヘテロ接合個体同腹仔に表現型上同一で体重も違いがないようである。
【0096】
血清総ビリルビンレベルを出生後第28日から前記研究の生存中期を通して分析した。AAV処置されたUGT1 KOマウスにおける血清総ビリルビンレベルは、ヘテロ接合及びWT動物と比較して5.7倍だけ上昇したが、しかし、光線療法により成体期までレスキューされたUGT1 KOマウスと比較して15.2倍有意に低下した(p<0.0001 スチューデントのt検定による比較)。肝細胞の増殖による肝臓内のベクターG
Cの希釈が総ビリルビンレベルに基づく若干の導入遺伝子発現の低下と不完全な長期是正とをもたらすが、該総ビリルビンレベルはヘテロ接合及びWTの同腹仔に比較して上昇している。従って、新生仔遺伝子治療は、出生直後期間の致死性高ビリルビン血症からUGT1 KOマウスを保護し、生存率を有意に増大させた。レスキューされたUGT1 KOマウスは、総ビリルビンレベルは上昇するがそれらのヘテロ接合及びWTの同腹仔と表現型上同一にみえる。
【0097】
新生仔として試験薬剤を投与されたUGT1 KOマウスをベクター投与後第270日に剖検し、肝を回収し、10%NBF中で固定し、UGT1A1についてのIHC染色のため処理した。染色は、前記マウスの生涯を通して持続的にUGT1A1を発現する肝細胞を示す。
【0098】
D.結論
AAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGHでの新生仔遺伝子治療は、出生直後期における致死性高ビリルビン血症からUGT1 KOマウスを保護し、生存率を、未処置UGT1 KOマウスにおける5日から試験薬剤投与後270日まで有意に増大させた(未処置UGT1 KOマウスと比較してp<0.0001)。レスキューされたUGT1 KOマウスは、総ビリルビンレベルが上昇するがそれらのヘテロ接合及びWTの同腹仔と表現型上同一なようであった。AAV処置されたUGT1 KOマウスにおける血清総ビリルビンレベルはヘテロ接合個体及びWT動物と比較して5.7倍だけ上昇したが、しかし光線療法により成体期までレスキューされたUGT1 KOマウスと比較した場合に15.2倍低下した(p<0.0001 スチューデントのt検定による比較)。肝細胞の増殖による肝臓内のベクターGCの希釈は、ヘテロ接合個体及びWT同腹仔に比較して上昇された血清総ビリルビンレベルに基づき若干の導入遺伝子発現の低下及び不完全な長期是正をもたらした。
【実施例3】
【0099】
光線療法研究
A.概要
この概念実証(POC)研究の目的は、CNについての現在の処置戦略をモデル化するための試みにおいてUGT1ノックアウト(KO)マウスにおける光線療法の有効性を評価することであった。光線療法は、冒されたマウスを出生直後期間の致死性高ビリルビン血症から保護することによりUGT1 KOマウスの成体期までの生存を可能にすることが以前に報告されている。
【0100】
ヘテロ接合個体×ヘテロ接合個体の交尾後に出生したマウスの腹仔を、出生後21日までの間、1日あたり12時間青色蛍光(λ=450nm;10~30μW/cm2/nm)に曝露した。離乳の時点(出生後第21日)で全部の子孫を遺伝子型分類した。
【0101】
本研究はこの執筆の時点で現在継続中であるが、63尾のUGT1 KOマウスが光線療法後に離乳した。これら動物は離乳後に光線療法の維持を必要とせず、前記マウスの大多数は正常な生存期間を示す。光線療法によりレスキューされたUGT1 KOマウスは、AAV遺伝子治療を受けたUGT1 KOマウスと比較して有意に総ビリルビンレベルが上昇した(p<0.0001 スチューデントのt検定による比較)。
【0102】
UGT1 KOマウスモデルでは、出生直後期間の光線療法は動物を核黄疸から保護し;3~4週後に光線療法を中止でき、前記動物は生存するがしかし持続的高ビリルビン血症を伴う。光線療法を用いる前処置は、蓋然性のある臨床シナリオのシミュレーションである、肝臓の増殖停止まで遺伝子治療ベクター投与を遅らせることを可能にする。
【0103】
B.材料及び方法
マウスはヘテロ接合個体×ヘテロ接合個体の交尾後に生成した。出生した全部の仔を出生から試験薬剤に曝露した。離乳(出生後第21日)にマウスに耳タグを付け、遺伝子型分類し、及び試験薬剤への曝露から除去した。
【0104】
【表3】
【0105】
ヘテロ接合個体×ヘテロ接合個体マウスの交尾後出生した全部の仔を、出生後21日までの間、1日あたり12時間青色蛍光(λ=450nm;10~30μW/cm2/nm)に曝露した。
【0106】
試験薬剤の有効性を生存により決定した。未処置のUGT1 KOマウスは、出生直後期間の致死性高ビリルビン血症のため出生の5日以内に死亡する。
【0107】
動物の血清総ビリルビンレベルの変化が契約施設Antech Diagnostics,Incにより分析された。マウスを麻酔し、血液を前記研究の生存中の顎下法により又は剖検時の心穿刺により回収した。血液はラベル貼付された血清ゲル状分離剤褐色蓋管中に回収し、凝固させ、その後血清を単離した。
【0108】
スチューデントのt検定を血清総ビリルビンレベルデータについて実施し光線療法により成体期までレスキューされたマウスに比較してなんらかの試験薬剤関連の影響があるかどうか決定した。
【0109】
C.結果
図3を参照されたい。UGT1 KOマウスモデルにおいて、出生直後期間における光線療法は動物を核黄疸から保護し;3ないし4週後、光線療法を中止でき、前記動物は生存するがしかし持続的高ビリルビン血症を伴う。光線療法を用いる前処置は、蓋然性のある臨床シナリオのシミュレーションである、肝臓の増殖停止まで遺伝子治療ベクター投与を遅らせることを可能にする。
【実施例4】
【0110】
UGT1 KOマウスモデルにおけるベクターの全身投与後のhUGT1A1の有効性
有効性試験のため、新生仔を出生後14日までの間1日あたり12時間青色蛍光に曝露する。離乳の時点で全部の子孫を遺伝子型分類し、UGT1-/-(ノックアウト)動物のみを前記試験に登録する。
【0111】
オス及びメスUGT1 KOマウス(6~12週齢)に、5×1010GC/kgないし5×1013GC/kg(109ないし1012GC/マウスに同等)完全対数単位(full log unit)で増大する4種の用量の1種のIV注入により組換えベクターを投与する。コホートあたり7尾のオス及び7尾のメスマウスを用いて、ベクター投与後第28日及び第90日に剖検する。ベヒクルのみ(リン酸緩衝生理的食塩水[PBS])を投与されるマウスのコホートをベヒクル対照として含む。従って合計140尾のマウスをこの試験に使用する。
【0112】
ベクター投与後に動物を全般的観察のため毎日監視する。定期的静脈切開をベクター投
与後に実施し、回収された血清を総、直接及び間接ビリルビンレベルについて評価する。加えて、血清アルブミン、ALT及びASTレベルもまた評価する。屠殺の時点で、血液を、総、直接及び間接ビリルビンレベルに加えて全血球計算(CBC)及び臨床化学のため回収する。完全剖検を、動物の内臓及び屍体の徹底的及び全身的検査及び解剖を伴い、タイムポイント毎に群あたり7尾(予期されない死亡がない場合)で実施する。組織を、qPCR及びRT-qPCRによるそれぞれベクター生体分布及び転写物発現のため剖検時に回収する。DNA及びRNAを、最高のベクター用量を投与されたマウス及びベヒクル対照を投与されたマウスから抽出する。
【実施例5】
【0113】
非臨床薬理/毒性試験
CN1の天然に存在する疾患モデルGunnラットはWistarがバックグラウンドである。GunnラットでのAAV遺伝子治療を用いる従前の研究は、このモデルにおいてAAV8は肝を形質導入する効率がより低く、AAV1は形質導入レベルがより高いことを示唆した(Seppenら、Mol Ther、13、1085-92(2006))。本ラット疾患モデルにおけるわれわれの遺伝子治療製品の評価の前に、野生型WistarラットでのAAVベクター形質導入比較研究を実施した。この研究は野生型C57BL/6マウスでもまた実施した。野生型C57BL/6マウスがUGT1 KOマウスのバックグラウンド系統であるためである。
【0114】
簡潔には、この薬理/毒性試験のため、オス及びメスC57BL/6Jマウス(6~8週齢、重量20~28g)に、以下のベクター:AAV8.TGB.U201DPmod.BGH(配列番号15のベクターゲノムをその中にパッケージングしているAAV8キャプシド、293細胞中で三重トランスフェクション技術を使用して生成される)を投与する。この臨床候補ベクターを、5×1011GC/kgから5×1013GC/kgまで(1010ないし1012GC/マウスに同等)の完全又は半対数単位で増大する3用量の1種のIV注入により投与する。ベヒクルのみ(リン酸緩衝生理的食塩水[PBS])を受領するマウスのコホートをベヒクル対照として含む。マウスを、コホートあたり7尾のオス及び7尾のメスマウスを用い第3、14、90及び180日に剖検する。従って合計224尾のマウスをこの試験に使用する。
【0115】
ベクター投与後に動物を全般的観察のため毎日監視する。屠殺の時点で血液をCBC及び臨床化学のため回収する。多重ELISAアッセイ(Luminex)による炎症性サイトカインの存在の評価を、第3日に剖検されたマウスからのサンプルで実施し、ベースラインレベルと比較する。脾細胞をベクター投与後第14日に剖検されるマウスから単離して細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を評価する。IFN-γ ELISPOTをAAV8キャプシド及びhUGT1A1特異的T細胞の存在を評価するため実施する。AAV8中和抗体(NAb)力価をベクター投与後第28日に測定する。
【0116】
完全剖検を、動物の内臓及び屍体の徹底的及び全身的検査及び解剖を伴いタイムポイントあたり群あたり7動物(予期されない死亡がない場合)で実施する。組織を、肉眼所見及び組織病理学検査、ベクターの生体分布並びに転写物発現レベルのため剖検時に回収する。DNA及びRNAを最高のベクター用量を投与されたマウス及びベヒクル対照を投与されたマウスから抽出する。
【0117】
A.概要
オス及びメスWistarラット並びにオス及びメスC57BL/6マウス(全部6~8週齢)に、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)を発現するAAV1、AAV5及びAAV8ベクターの2用量を、尾静脈を介するIV注入により投与した(1012GC/kg及び1013GC/kg)。ベクターの形質導入効率を、ベクター投与後第7日の肝臓内
のeGFP発現の評価により比較した。最初の結果に基づき、前記試験をオス及びメスWistarラットの2個のさらなる群を含むよう拡大した。これらの群は、1014GC/kgのより高用量のAAV8.TBG.eGFPベクターを受領し及びベクター投与された後第7日に剖検されたか、又は1013GC/kgの用量を受領し及びベクター投与後第14日に剖検されたかのいずれかであった。
【0118】
Wistarラットにおいて、形質導入効率の差違は、同一用量のベクターのIV投与後にAAVキャプシド全部にわたり見られなかった。オスC57BL/6Jマウス(Jackson Laboratories)において、肝におけるAAV8形質導入効率は、1013GC/kgの用量で極めて高い導入遺伝子発現を伴い肝細胞の97%で見られた。対照的に、同一ベクター用量で、AAV8でのWistarラットにおける形質導入効率は実質的に低下した。また、AAV8によるラット肝臓内への遺伝子移入の効率はマウスにおけるものと比較して実質的により低かった。具体的には、オスマウスは二倍体ゲノムあたり平均30.6GCのベクターを有し、及び、オスWistarラットは、肝で検出される二倍体ゲノムあたり平均1.7GCのベクターを有した。
【0119】
従って、マウスと比較してラットでは形質導入及び遺伝子移入効率が低いため、この種でのさらなる研究はCN遺伝子治療の応用のための最小有効量の甚だしい過小評価につながるとみられる。しかしながら、ラットは若干の小レベルのAAV8遺伝子治療をなお受け入れる力があったため、CNラット疾患モデルすなわちGunnラットは、前記臨床候補が機能的であるという追加のエビデンスを提供するためになお使用する場合がある。さらに、Gunnラットは形質導入と有効性の間の関係を確立するのに有用であるとみられる。
【0120】
B.材料及び方法
試験薬剤:AAV1.TBG.eGFP.BGH
AAV5.TBG.eGFP.BGH
AAV8.TBG.eGFP.BGH
対照薬剤:リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)
試験薬剤の有効性を肝臓内の高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)発現により決定した。eGFP発現は可視化する場合と、画像をeGFPを発現する面積パーセントとして定量する場合との両方がある。組織を、eGFP発現を可視化するため以前に説明されたとおり(Wangら、Mol Ther、18、126-34(2010)、Wangら、Hum Gene Ther、22、1389-401(2011)処理した。画像を撮影し、肝臓内のeGFP発現を、以前に説明された(Wangら、2010、Wangら、2011)とおりeGFPを発現する面積のパーセンテージとして定量化した。組織サンプルを剖検の時点で急速凍結し、DNAをQIAamp DNAミニキット(Qiagen、米国カリフォルニア州バレンシア)を使用して抽出した。抽出されたDNA中のベクターGCの検出及び定量は、以前に説明された(Bellら、Mol Ther、14、34-44(2006)リアルタイムPCRにより実施した。簡潔には、ゲノムDNAを単離し、ベクターGCを、前記ベクターのBGHポリA配列に対し設計されたプライマー/プローブを使用して定量した。
【0121】
C.結果
肝臓内のeGFP発現:Wistarラットにおいて、形質導入効率の差違は、ベクター投与後第7日に剖検された動物において、同一用量のIV注入投与後にAAVキャプシド全部に見られなかった。評価された3種のキャプシド全部についてベクター形質導入レベルは非常に低く、eGFP肝細胞の数個のみが視野あたりに見られた。AAV8ベクターの用量を1014ゲノムコピー(GC)/kgに増大させること又は試験の持続期間をベクター投与後第14日まで増大させることは、形質導入を増大させたが、しかし全体とし
てレベルは低いままであった。C57BL/6Jマウスにおいて、形質導入効率は、評価された3種のベクターのキャプシド全部について、Wistarラットにおいて見られたものと比較して実質的に増大した。
【0122】
eGFP発現及び遺伝子移入の定量:AAV8を投与された動物について肝臓内の形質導入領域パーセンテージ及びベクターゲノムコピーを測定した(図4A-4B)。オスC57BL/6Jマウスにおいて、肝臓内のAAV8形質導入効率は、1013GC/kgの用量で極めて高い導入遺伝子発現を伴い肝細胞の97%で見られた(図4A)。同一ベクター用量で、AAV8でのWistarラットにおける形質導入効率は有意に低下した(図4B)。比較のため、図4Aは、ラット(Wangら、2010、上で引用される)に比較して大きく上昇された形質導入効率を示したベクター投与後7日のアカゲザルでのわれわれの以前に公表された研究からの画像もまた包含し、及び、ラットにおける低い形質導入効率の理由を決定し、DNAを、回収された肝から抽出し及びベクターGCをqPCRにより定量した。興味深いことに、AAV8によるラット肝臓内への遺伝子移入もまたマウスと比較して大きく低下し、ここでオスマウスは二倍体ゲノムあたり平均30.6GCを有し、及びオスWistarラットは肝臓内で検出される二倍体ゲノムあたり平均わずか1.7GCを有する(図4B)。第7日のNHPにおけるわれわれの以前に公表された研究から、肝臓内に存在する二倍体ゲノムあたり平均23.2GCが存在した。
【0123】
4.結論
ラットにおける低下した形質導入及び遺伝子移入効率により、この種でのさらなる研究はCN遺伝子治療の応用のための最小有効量の甚だしい過小評価につながるとみられることがありそうである。しかしながら、ラットは若干の小レベルのAAV8遺伝子治療をなお受け入れたため、CNラット疾患モデルすなわちGunnラットを、前記臨床候補が機能的であるという追加のエビデンスを提供するためになお使用する場合がある。さらに、Gunnラットは形質導入と有効性の間の関係を確立するのに有用であるとみられる。
【0124】
比較のため、ベクター投与後7日のアカゲザルでのわれわれの以前に公表された研究は、肝臓内に存在する二倍体ゲノムあたり23.2GCで、ラットに比較して形質導入効率が大きく上昇した。
【実施例6】
【0125】
Gunnラットにおけるベクター投与の評価
A.概要
この概念実証(POC)研究の目的は、クリグラー・ナジャー症候群(CN)の処置のため設計された最初のベクターAAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGHを評価することであった。このベクターをGunnラットに投与して、ヒトUGT1A1(hUGT1A1)発現、及び総ビリルビンレベルを低下させる遺伝子治療アプローチの能力を評価した。GunnラットはCNの天然に存在する動物モデルである。
【0126】
オス及びメスGunnラットに、4週齢時に3×1012若しくは3×1013ゲノムコピー(GC)/kgのAAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGH又はベヒクル対照(リン酸緩衝生理的食塩水[PBS])を静脈内(IV)注入した。ラットは総ビリルビンレベルの評価のため定期的に血を抜き取った。全部のパラメータがベヒクル対照を注入されたGunnラットと比較された。
【0127】
Gunnラットへの3×1013GC/kgのAAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGHの全身投与は高ビリルビン血症(5.4mg/dl)を正常レベル(0.1~0.3mg/dl)に低下させた。従って、CNのための第1世代遺伝子治療ベクターの全身投与はGunnラットに特徴的な高ビリルビン血症を軽減した。
【0128】
B.材料及び方法
この概念実証(POC)研究の目的は、クリグラー・ナジャー(CN)の処置のため設計された第1世代ベクター、AAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGHを、GunnラットでのhUGT1A1発現及び総ビリルビンレベルに関して評価することであった。リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)を対照として使用した。尾静脈を介する静脈内(IV)経路を使用のために選択したが、それはヒトにおいて前記疾患の臨床部位である肝臓を標的とするために使用される最も効率的な経路であるためであった。試験薬剤の有効性を血清中の総ビリルビンレベルにより決定した。加えて、免疫組織化学的(IHC)分析を実施して、肝臓内のhUGT1A1タンパク質発現のレベルを測定した。動物の血清総ビリルビンレベルの変化を分析した。ラットを麻酔し、血液を、前記研究の生存中に後眼窩法により又は剖検時の心穿刺により回収した。血液はラベル貼付された血清ゲル状分離剤褐色蓋管中に回収し、凝固させ、その後血清を単離した。剖検の時点で組織を導入遺伝子発現のため回収した。肝サンプルを10%中性緩衝ホルマリン(NBF)中で固定し、IHCによる導入遺伝子発現の測定のため処理した。
【0129】
C.結果-血清総ビリルビンレベルに対する試験薬剤の影響
血清総ビリルビンレベルを分析した。血清総ビリルビンレベルを、ベースライン値の範囲のため、ベースライン総ビリルビンのパーセンテージとしてプロットした。ベースライン値は、メスでの3.3~8.1mg/dlから、及びオスでの3.0~7.2mg/dlまでの範囲にわたった。AAVベクターのIV投与後に、メス及びオス双方のGunnラットにおいて総血清ビリルビンが用量依存的に減少した(図5A-5B)。ベクター投与後第7日に、3×1013GC/kgの用量でメスGunnラットにおいて総ビリルビンが平均90%低下した。3×1012GC/kgのより低用量で、メスにおいて総ビリルビンが70%低下した。オスGunnラットにおいて、高用量のベクターの影響が強く、総ビリルビンが93%低下した。しかしながら、10倍より低い用量の試験薬剤では、血清総ビリルビンはわずか39%低下した。従って、3×1013GC/kgのAAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGHのIV投与は、Gunnラットに存在する高ビリルビン血症を正常総ビリルビンレベルに低下させた。
【0130】
免疫組織化学によるhUGT1A1発現:試験及び対照薬剤を投与されたGunnラットをベクター投与後第98~133日に剖検し、並びに肝を回収し、10%NBF中で固定し及びUGT1A1についてのIHC染色のため処理した。染色はUGT1A1を発現する肝細胞を示し、それは前記ラットの生涯を通して持続した)。
【0131】
C.結論
3×1013GC/kgのAAV8.TBG.hUGT1A1co.WPRE.BGHのGunnラットへの全身投与は、高ビリルビン血症(5.4mg/dl)を正常レベル(0.1~0.3mg/dl)に低下させた。従って、CNのための第1世代遺伝子治療ベクターの全身投与はGunnラットに特徴的な高ビリルビン血症を軽減させた。
【実施例7】
【0132】
ヒト以外の霊長類における非臨床試験薬理/毒性試験
A.概要
この試験の目的は、アカゲザルでの静脈内(IV)投与後のAAV8.TBG.U201DPmod.BGH(AAV8.TBG.hUGT1A1coと称される)の潜在的毒性及び忍容性を評価することであった。この非臨床薬理/毒性試験のため、アカゲザルは末梢静脈中へのAAV8.TBG.hUGT1A1coの2種の用量の1種を注入投与された。この試験に使用された2種の用量は1.0×1013及び2.5×1013ゲノムコピー(GC)/kgであった。動物の1つのコホートはベヒクル対照としてのベヒクルのみ
(1×ダルベッコリン酸緩衝生理的食塩水[DPBS]+0.001%Pluronic(登録商標)F-68)を注入投与された。
【0133】
ベクター投与後、動物を全般的観察のため毎日監視した。ヒト以外の霊長類(NHP)は、包括的臨床病理学(白血球百分率(differentials)を含む細胞数、臨床化学及び凝固パネル)について週1回、並びに遺伝子移入ベクターに対する免疫反応(AAV8キャプシドに対する中和抗体[NAb]、並びにIFN-γ ELISPOTアッセイにより評価されるキャプシド及び導入遺伝子双方に対する末梢細胞傷害性Tリンパ球[CTL]応答)について2週に1回監視した。
【0134】
ベクター投与後第28日に小開腹術処置を実施して肝組織を単離した。肝組織は、肝臓内のhUGT1A1タンパク質発現のレベルを測定するための免疫組織化学的(IHC)分析によるを含む多様な方法により、導入遺伝子発現を評価した。
【0135】
動物を試験又は対照薬剤投与後第56日に屠殺した。血液を包括的臨床病理学及び末梢血単核細胞(PBMC)単離のため剖検時に回収した。屠殺された動物を剖検し、組織を包括的組織病理学的検査のため回収した。組織病理学スライドを盲検的なやり方で評価し及び専門家により相互評価した。リンパ球を肝、脾及び骨髄から回収して、剖検の時点のこれらの器官中のCTLの存在を検査した。剖検時に採取された肝のサンプルは、肝臓内のhUGT1A1タンパク質発現のレベルを測定するためのIHC分析、並びにそれぞれqPCR及びRT-PCRによるゲノムコピー及び導入遺伝子発現分析のためのDNA及びRNA抽出によるを含む多様な方法により、導入遺伝子発現についてもまた評価した。
【0136】
動物は、いかなる明らかな長期又は短期臨床的後遺症も伴わず試験薬剤の注入によく耐えた。肝臓内のベクターGCのレベルはアカゲザルにおいて同一キャプシド(AAV8)で以前に見られたものと同様であった。従って、有効性の標的器官、これは肝臓であるが、はまた毒性の最もありそうな起源かもしれないことが予測された。試験薬剤又は対照薬剤投与後第56日の剖検時に回収された組織の詳細な精査が、肝における一部の最低限ないし軽度の所見を明らかにした。肝における所見は、門脈領域の最低限ないし軽度の単核細胞浸潤物、軽度被膜下線維症、最低限ないし軽度の胆管肥厚化、最低限の伊東細胞増生、及び1件の最低限の異物反応を含んだ。他の軽度の組織病理学所見は、心筋における単核細胞浸潤物、結腸の粘膜におけるリンパ形質細胞及び単核細胞浸潤物、直腸におけるリンパ球浸潤物、胃の粘膜におけるリンパ形質細胞浸潤物、並びに気管における単核細胞浸潤物を含んだ。胃腸所見はコホート全部にわたり認められ、及び試験薬剤の用量に無関係であった。低用量コホートからの1頭の動物において心外膜での単核細胞浸潤物の1件の中程度所見が存在した。
【0137】
臨床病理学はトランスアミナーゼの異常に焦点を当てた。高用量の試験薬剤群(2.5×1013GC/kg)の1頭のサルを除き、ALTの上昇はベースラインの6倍未満及びASTについてベースラインの4倍未満であった(ベースラインレベルを上回る倍数変化は各サルについて個別に決定した)。投与コホートの動物間の変動により、唯一の統計学的に有意の差違は、線形混合モデル化を使用して全タイムポイントにわたって分析された場合の対照群に対する高用量の試験薬剤群の間のAST値においてであった。ALT又はASTレベルの上昇は、キャプシド又は導入遺伝子のT細胞応答と相関しなかった。サルRQ9201及びRA1261におけるCTL応答は前記試験の終了まで持続した一方、ALT及びAST上昇は試験薬剤投与後第56日までにベースラインレベルに向かって下方に傾いていたためである。興味深いことに、サルRA1846で見られたhUGT1A1ペプチドプールAに対する高度に特異的なT細胞応答の観察結果は、ベースラインレベルからのALT又はAST値のいかなる逸脱も存在しないのに発生した。これは、発現が臨床病理学の異常又はT細胞の出現により影響されないことを強く示唆する。
【0138】
この試験からの使用された野生型アカゲザルは高ビリルビン血症を示さないため、このモデルにおける試験薬剤の有効性を確認することは不可能である。従って、最小有効量(MED)をCNのマウスモデルで決定した。
【0139】
従って、臨床試験のデザインの情報を与えることができるこの薬理/毒性試験からの重要な知見は:
DLTは、この毒性試験で、アカゲザルで2.5×1013GC/kgであった試験された最高用量で観察されなかった。これは、実際のMTDがこの用量より高いことを示唆する、
ことである。
【0140】
これら試験から与えられるデータは、アカゲザルにおけるクリグラー・ナジャーの処置のためのAAV8.TBG.U201DPmod.BGHの安全性の一例を示す。
【0141】
B.材料及び方法
AAV8.TBG.U201DPmod.BGH(あるいはAAV8.TBG.hUGT1A1coと称される)を無菌1×ダルベッコリン酸緩衝生理的食塩水(DPBS)+0.001%Pluronic F-68で希釈した。対照動物には試験薬剤を含有しないベヒクル緩衝液を注入することができる。これはこの試験のためのベヒクル対照としてはたらくことができる。ベヒクル対照(1×ダルベッコリン酸緩衝生理的食塩水[DPBS];pH7.0~7.3;無カルシウム、無マグネシウム、無フェノールレッド)+0.001%Pluronic(登録商標)F-68)(一級ヒドロキシル基で終端する二官能性ブロックコポリマー非イオン性界面活性剤)。
【0142】
オス及びメスアカゲザルをこの試験で使用した。試験薬剤群に割り当てられたNHPは、10mlの容量中の体重1キログラム(kg)あたり1.0×1013ゲノムコピー(GC)又は2.5×1013GC/kgいずれかのAAV8.TBG.U201DPmod.BGHを投与された。対照薬剤コホートに割り当てられたNHPは10mlのベヒクル対照を投与された。試験及び対照薬剤は末梢静脈中に投与した。末梢静脈を介する静脈内(IV)経路は、それが前記疾患の臨床部位の肝を標的とするのに使用される最も効率的な経路であるため、使用のために選択されたが、それは、前記疾患の臨床部位の肝を標的とするのに使用される最も効率的な経路であるためであった。
【0143】
1.0×1013GC/kg及び2.5×1013GC/kgのAAV8.TBG.U201DPmod.BGHの用量をこの試験のため選んだ。われわれが臨床試験で投与することを提案する最高用量は1.0×1013GC/kgである。従って、この試験のため、臨床試験の最高用量である用量(1.0×1013GC/kgのAAV8.TBG.U201DPmod.BGH)及び臨床試験のため計画されている最高用量より2.5倍より高い用量(2.5×1013GC/kgのAAV8.TBG.U201DPmod.BGH)を反映する用量を選択した。
【0144】
ベースラインレベルと比較したALT及びASTレベルの差違をウィルコクソン順位和検定により、及び全タイムポイントにわたるALT及びAST値の全体的差違を線形混合モデルを使用して、統計学的に解析した。2群間の比較は対応のないスチューデントのt検定を使用して実施し、複数の群間の比較は一元配置分散分析(ANOVA、テューキーの事後多重比較検定)を使用して実施した。全部の値は、別の方法で述べられない限り平均±平均の標準誤差(SEM)として表した。野生型アカゲザルについての正常値の範囲は、試験動物についてベクター投与前に回収された全部の値の平均を取ること、及び標準偏差(SD)を計算することにより生成した。範囲は平均±SDとして提示することがで
きる。平均の2SDの外側の値は極値であるとみなすことができる。<0.05のp値を有意とみなした。
【0145】
C.結果
全部のアカゲザルは、試験又は対照薬剤投与後第56日のそれらの予定された剖検のタイムポイントまで生存した。全部のアカゲザルをそれらが麻酔された各時点に目視検査した。全部の変化又は異常を試験ファイルに書き留めた。前記試験の経過中に書き留められた異常は存在しなかった。前記試験を通して、動物の体重を試験プロトコルに列挙された各タイムポイントで監視した。全動物は前記試験の経過にわたりその体重を維持したか、又は徐々に体重を増やしし続けたかのいずれかであった。
【0146】
アルカリホスファターゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルに重点を置く肝機能検査(LFT)を監視した。総ビリルビンのような肝の病態を反映する他のパラメータはずっと正常限界内にあった。
【0147】
アカゲザルについての正常値の範囲は、ベクター投与前の試験動物について回収された全部の値の平均を取ること、及び標準偏差(SD)を計算することにより生成した。
【0148】
【表4】
【0149】
ベクター投与前に、前記試験の動物全部にわたりALTのベースラインレベルの若干の変動が存在し、RA1260について第-16日に17U/lからRA1261について第-7日に110U/lまでの範囲にわたった。ベクター投与後のALT及びAST値を平均ベースライン値(ベクター投与前第-16、-7及び0日の平均)と比較した有意の変化について評価した。ベースラインレベルと比較してのALT及びASTレベルの差違をウィルコクソン順位和検定により統計学的に解析した。同一用量の試験薬剤を投与された動物間の変動により、試験又は対照薬剤投与後のいずれの試験日の間にも有意の差違は存在しなかった。加えて、全部のタイムポイントにわたるALT及びAST値の全体的な差違を線形混合モデル化を使用して解析した。再度、同一用量の試験薬剤を投与された動物間の変動により、対照群に対し高用量の試験薬剤群(2.5×1013GC/kg)について(p値=0.142)、及び対照群に対し低用量の試験薬剤群(2.5×1013GC/kg)について(p値=0.564)ALT値の、又は対照群に対し低用量の試験薬剤群について(p値=0.255)AST値の有意の差違は存在しなかった。対照群に対し高用量の試験薬剤からのAST値の統計学的に有意の差違が存在した(p値=0.010)。
【0150】
前記試験の開始前に、全部のアカゲザルを、GTPの免疫学コア(Immunology Core)によりAAV8キャプシドに対する中和抗体(NAb)についてスクリーニングした。前記試験のため選択された全8頭の動物は血清陰性であった(NAb力価<1:5)。試験薬剤投与後に全動物がAAV8特異的NAb応答を発生した。ベクター後第8日に、AAV8 NAbの力価は<1:5から1:40~1:1280まで増加した。NAb力価に対する試験薬剤の用量依存性の影響は存在しなかった。1.0×1013GC/kg又は2.5×1013GC/kgいずれの試験薬剤の投与後第8日にもNAb力価の同様の及び重なる広がりが存在したためである。ベクター投与後第8日後に、AAV8
NAbの力価はベクター投与後第14及び21日に徐々に低下した。興味深いことに、NAb応答はベクター投与後第28及び35日に増大し、並びに前記試験の終了まで同様
のレベルに留まった。対照薬剤注入された動物は前記試験を通して血清陰性のままであったか又は1:5の力価を有した。注入されない動物におけるAAV8 NAb力価の自然の変動は前に説明されている(Calcedoら、2016 Hum.Gene Ther.Clin.Dev.)。
【0151】
RNAを肝サンプルから抽出した。高用量の試験薬剤を投与された動物は肝臓内で平均してより高レベルのベクターGCを有した(図6A及び6B)。試験薬剤投与群全部にわたる肝臓内の平均補正済み相対発現の比較後に、試験薬剤投与された群間で有意の差違は存在しなかった(スチューデントのt検定、p=0.408)。
【0152】
D.概要
アカゲザルは、末梢静脈中にAAV8.TBG.U201DPmod.BGH(配列番号15のゲノムすなわちAAV5’及び3’ITR、2コピーのαmic/bikエンハンサー、TBGプロモーター、配列番号12のhUGT1A1、BGHポリAを伴うAAV8キャプシド)の2種の用量の1種の注入を投与された。この試験のため使用された2種の用量は1.0×1013及び2.5×1013GC/kgであった。動物の追加の1つのコホートはベヒクル対照として対照薬剤を投与された。血液を包括的臨床病理学のため示されるタイムポイントで回収した。動物を試験又は対照薬剤投与後第56日に剖検し、組織を包括的組織病理学的検査のため回収した。試験の生存中期中及び剖検時双方の付加的評価は、抗AAV8 NAbの分析、AAV8キャプシド特異的及びhUGT1A1特異的末梢CTL応答、肝、脾及び骨髄でのCTL応答、肝臓内のhUGT1A1発現についてのIHC、並びにベクターGC及び導入遺伝子mRNA発現の測定を含んだ。
【0153】
動物は、試験薬剤の注入をいかなる明白な長期又は短期臨床的後遺症も伴わず耐えた。肝でのベクターGCのレベルは、アカゲザルにおいて同一キャプシド(AAV8)で以前に見られたものと同様であった。従って、有効性のための標的臓器、それは肝臓であるが、はまた毒性の最もありそうな供給源かもしれないことが予測された。試験又は対照薬剤投与後第56日の剖検時に回収された組織の詳細な精査は、肝における若干の最低限ないし軽度の所見を明らかにした。肝における所見は、門脈領域における最低限ないし軽度の単核細胞浸潤物、軽度被膜下線維症、最低限ないし軽度の胆管肥厚化、最低限の伊東細胞増生及び1件の最低限の異物反応を包含した。他の軽度の組織病理学所見は、心筋における単核細胞浸潤物、結腸の粘膜におけるリンパ形質細胞及び単核細胞浸潤物、直腸におけるリンパ球浸潤物、胃の粘膜におけるリンパ形質細胞浸潤物、並びに気管における単核細胞浸潤物を含んだ。胃腸所見はコホート全部にわたり発生し、及び試験薬剤の用量に無関係であった。低用量コホートからの1頭の動物で、心外膜における単核細胞浸潤物の1件の中程度所見が存在した。
【0154】
臨床病理学はトランスアミナーゼの異常に焦点を当てた。高用量の試験薬剤群(2.5×1013GC/kg)の1頭のサルを除き、ALTの上昇はベースラインの6倍未満及びASTについてベースラインの4倍未満であった(ベースラインレベルを上回る倍数変化は各サルについて個別に決定した)。投与コホートの動物間の変動により、唯一の統計学的に有意の差違は、線形混合モデル化を使用して全タイムポイントにわたって分析された場合の対照群に対する高用量の試験薬剤群の間のAST値においてであった。ALT又はASTレベルの上昇はキャプシド又は導入遺伝子のT細胞応答と相関しなかった。サルRQ9201及びRA1261におけるCTL応答は前記試験の終了まで持続した一方、ALT及びASTの上昇は、試験薬剤投与後第56日までにベースラインレベルに向かって下方に傾いていたためである。興味深いことに、サルRA1846で見られたhUGT1A1ペプチドプールAに対する高度に特異的なT細胞応答の観察結果は、ベースラインレベルからのALT又はAST値のいかなる逸脱も非存在下で発生した。これは、発現が臨床病理学の異常又はT細胞の出現により影響されないことを強く示唆する。
【0155】
この試験から使用された野生型アカゲザルは高ビリルビン血症を示さないため、このモデルにおいて試験薬剤の有効性を確認することが不可能である。従って、最小有効量(MED)をCNのマウスモデルで決定した。
【0156】
観察される用量制限毒性は存在せず、最大耐用量が2.5×1013GC/kgに等しい又はより大きいことを意味している。
【実施例8】
【0157】
UGT1ノックアウトマウスにおけるAAV8.TBG.hUGT1A1co.BGHの非臨床有効性試験
A.概要
この試験の目的は、CNマウスモデルUGT 1ノックアウト(KO)マウスにおける最小有効量(MED)を決定することであった。UGT1 KOマウスは、ベクターAAV8.TBG.U201mod.BGH(図及び図の説明中でAAV8.TBG.hUGT1A1coと称される)の4用量の1種の尾静脈を介する静脈内(IV)注入を投与された。この試験のため使用される用量は2.5×1010、2.5×1011、2.5×1012及び2.5×1013ゲノムコピー(GC)/kgであった。動物の1つのコホートはベヒクル対照としてベヒクルのみ(1×ダルベッコリン酸緩衝生理的食塩水[DPBS]+0.001%Pluronic F-68)を投与された。
【0158】
群の投与日はUGT1 KOマウスの利用可能性に基づきずらした。前記試験の開始時に、投与齢範囲内の利用可能なマウスを、最初に高用量ベクター群(2.5×1013GC/kg)及びベヒクル対照群にランダムに割り当てた。その後、マウスを以下の順序:2.5×1012、2.5×1010及び2.5×1011GC/kgでベクター投与群に割り当てた。ベクター投与後、動物を全般的観察のため毎日監視した。血液を、血清総ビリルビンレベルを把握するため示されるタイムポイントで動物から回収した。
【0159】
動物を試験又は対照薬剤投与後第56日に屠殺した。血液を血清化学パネル及び血液学パネルのため剖検時に回収した。屠殺された動物を剖検し、及び組織を包括的組織病理学的検査のため回収した。組織病理学スライドを盲検化された様式で評価し、及び専門家により相互評価した。所見が最高のベクター用量で観察された場合、その後のより低いベクター用量での同一組織を所見が存在しなくなるまで評価するか、又は全用量群を評価した。
【0160】
試験薬剤の有効性を血清中の総ビリルビンレベルにより決定した。加えて、ウエスタンブロット及び免疫組織化学的(IHC)分析を実施して肝臓内のhUGT1A1タンパク質発現のレベルを測定した。
【0161】
いずれの群にも明らかな臨床的後遺症は存在せず、臨床病理学における異常は、ALTについてベースラインの1~9.1倍からの範囲にわたり及び最高用量の試験薬剤のベクター投与後第28日にオスマウスで主に見出された、肝トランスアミナーゼALT及びASTの上昇に限定された。前記異常は用量依存性であり、より低用量の試験薬剤を投与された動物では本質的に所見が存在しなかった。対照薬剤を投与されたオスマウスで組織病理学的所見は存在しなかった一方、所見の大多数は、最高用量の試験薬剤(2.5×1013GC/kg)を投与されたオスマウスにおいてであったが、しかし全部の所見が最低限ないし軽度であった。従って、見られる用量制限毒性は存在しなかったことが結論づけられ、最大耐用量は2.5×1013GC/kgの試験最高用量より大きいかこれに等しかったことを意味している。この用量での肝臓の病態の増加(最低限ないし軽度)の存在は、それが試験薬剤に関連することを示唆し、無作用量が2.5×1012GC/kgという次
のより低い用量であることを示す。
【0162】
CNの動物モデルにおけるこの試験の実施はMEDが推定されることを可能にした。2.5×1010GC/kgより大きい試験薬剤の用量で、総ビリルビンレベルが0.1~0.3mg/dlのベースラインレベルへ完全に復帰した。2.5×1010GC/kgの投与はベクター投与後第14日にオスマウスにおいて血清総ビリルビンレベルの79%低下をもたらし、それは第28日に57%低下に徐々に増大し、及び第42日までにベースラインの高ビリルビン血症に戻り、並びに、単一のメスUGT1 KOマウスにおける同一用量の投与はベースライン値からの逸脱をもたらさなかった。UGT1 KOマウスにおけるhUGT1A1の発現に関する性差が存在した一方、これがヒト以外の霊長類に適用されることは見られていない。従って、MEDは2.5×1011GC/kgに等しい。
【0163】
B.方法
AAV8.TBG.U201DPmod.BGHを無菌1×ダルベッコリン酸緩衝生理的食塩水(DPBS)+0.001%Pluronic F-68で希釈した。ベヒクル対照(1×ダルベッコリン酸緩衝生理的食塩水[DPBS]+0.001%Pluronic F-68)
6ないし20週齢のオス及びメスUGT1 KOマウス(n=50、25尾のオス及び25尾のメス)をこの試験で使用し、ベクター投与後第56日に剖検した。動物は耳タグを付けて5つのコホートのうちの1つに割り当てた。
【0164】
尾静脈を介するIV経路を使用のために選択したが、それは、尾静脈がヒトにおいて前記疾患の臨床部位である肝を標的とするのに使用される最も効率的な経路であるためであった。
【0165】
AAV8.TBG.U201DPmod.BGHの複数の用量レベルを検査した。最高用量は2.5×1013GC/kgであり、これは提案されている臨床試験の最高用量より2.5倍高い。選択された用量は1対数ずつ異なり、2.5×1010GC/kg、2.5×1011GC/kg、2.5×1012GC/kg及び2.5×1013GC/kgであった。各群はオス及びメスそれぞれ5尾の動物を含んだ。群あたり5尾の動物は試験結果の統計学的解析を可能にするための最小数である。
【0166】
試験薬剤の有効性を血清中の総ビリルビンレベルにより決定した。加えて、ウエスタンブロット及び免疫組織化学的(IHC)分析を実施して、肝臓内のhUGT1A1タンパク質発現のレベルを測定した。
【0167】
体重、飼料消費量、ALT、AST、総ビリルビン、ウエスタンブロット定量、ベクターGC及びhUGT1A1 mRNA転写物のデータについて、コホートの平均及び平均の標準誤差(SEM)を計算し報告した。ベースラインレベルと比較したALT、AST及び総ビリルビンレベルの差違をウィルコクソン順位和検定により、全タイムポイントにわたるALT、AST及び総ビリルビン値の全体的差違を線形混合モデルを使用して、統計学的に解析した。2群間の比較は対応のないスチューデントのt検定を使用して実施し、及び、複数群間の比較は一元配置分散分析(ANOVA、テューキーの事後多重比較検定)を使用して実施した。全部の値は別の方法で述べられない限り平均±SEMとして表した。<0.05のp値を有意とみなした。
【0168】
C.結果
前記試験の経過中に、マウスID 5205を臨床徴候(瀕死の状態を表し従って人道的理由上安楽死を必要とする)が認められたためベクター投与後第8日に安楽死させた。完全な剖検を実施し及び組織を回収した。試験薬剤又は対照薬剤投与後に動物を全般的観
察のため毎日監視した。全部の変化又は異常を試験ファイルに書き留めた。剖検タイムポイントの前に安楽死させたマウスID 5205を除き、前記試験に登録した41尾のマウスからの10尾について記録された観察結果が存在し、それは試験結果に影響を及ぼさなかった。これら10尾のマウスの7尾が前記試験の生存中期中に支持療法での処置を必要とした。
【0169】
血液化学の結果を、各タイムポイントで対照薬剤(100μlのベヒクル対照)を投与されたマウスと比較した統計学的変化(p<0.05)について評価した。興味深いのは3種の別個のパラメータ;総ビリルビン、ALT及びASTであった。群間に一貫した実質的差違が存在したからである。
【0170】
肝機能検査(LFT)における異常は試験薬剤の用量の増大とともに増大し、及び、ベースラインの4倍(橙及び赤に色を付けられる)より大きい上昇は、第14日の最低用量群(2.5×1010GC/kg)の1尾のオスマウス及び試験薬剤投与後第28日の2.5×1011GC/kgの用量を投与された1尾のオスマウスを除き、最高用量群(2.5×1013GC/kg)に限定された。ASTの上昇は類似のパターンを示したが、しかし前記上昇は、試験薬剤投与後第56日の2.5×1012GC/kgの用量を投与された1尾のメスマウスを除き、ベースラインの4倍未満(緑及び青に色を付けられる)に限定された。
【0171】
全部のコホートにわたるALT及びASTレベルの比較を線形混合モデル化を使用して実施し、性により層別化した。ALTについて、試験薬剤の最高用量2.5×1013GC/kgを投与されたオス及びメス双方のマウスで観察された、対照群と比較して有意の上昇が存在した(オスにつきp=0.015、メスにつきp=0.049)。ASTの有意の上昇は、最高の試験薬剤用量を投与されたメスマウスでのみ、対照群に比較して観察された(p=0.042)。
【0172】
対照薬剤(ベヒクル対照)を注入されたUGT1 KOマウスにおける総ビリルビンレベルは全タイムポイントにわたり同様であり、オスとメスの間にレベルの変動はなかった(図6)。期待されたとおり、われわれは、試験薬剤の全部の用量(2.5×1010GC/kg、2.5×1011GC/kg、2.5×1012GC/kg及び2.5×1013GC/kgのAAV8.TBG.U201DPmod.BGH)で処置されたオス及びメス双方のマウスにおいて、ベクター投与後第14日までに総ビリルビンの急速かつ有意の低下を観察した。2.5×1010GC/kgより大きい試験薬剤の用量で、総ビリルビンレベルの0.1~0.3mg/dlのベースラインレベルへの完全な復帰が存在した(図7)。2.5×1010GC/kgの投与はベクター投与後第14日のオスマウスにおける血清総ビリルビンレベルの79%低下をもたらし、これは第28日に57%低下まで徐々に増大し、第42日までにベースラインの高ビリルビン血症に戻った(図7)。単一のメスUGT1 KOマウスでの同一用量の投与はベースライン値からの逸脱をもたらさなかった。
【0173】
全部のコホートにわたる総ビリルビンレベルの比較を線形混合モデル化を使用して実施し、性により層別化した。対照群に比較した総ビリルビンの有意の低下は、全用量群についてオスと、2.5×1012GC/kg及び2.5×1013GC/kgを投与されたメスマウスとについて観察された(p<0.05)。
【0174】
剖検の時点で、肝をhUGT1A1導入遺伝子発現の測定のため回収した。肝サンプルを急速凍結し使用前は-80℃で保存した。発現は、肝ホモジェネートでのウエスタンブロットによるhUGT1A1タンパク質レベルの検出により評価した。ヒトUGT1A1特異的抗体を検出のため使用し、及びウエスタンブロット画像を陽性対照サンプルからの
同一量のタンパク質に対し定量した。オスマウスにおけるhUGT1A1の発現は、2.5×1012GC/kgから2.5×1013GC/kgまでの試験薬剤の用量とともに有意に増大した(p<0.05、図8)。2.5×1011GC/kgを注入されたオスマウスについてのバンドは検出限界より下であった。
【0175】
RNAを肝サンプルから抽出した。TaqMan qPCR反応を実施した。オスマウスの肝臓内のhUGT1A1 mRNA転写物の発現は、2.5×1012GC/kgから2.5×1013GC/kgまでの試験薬剤の用量で有意に異ならなかった(図9A-9B)。
【0176】
D.結果の概要
6~20週齢のオス及びメスUGT1 KOマウスにAAV8.TBG.U201DPmod.BGHの4種の用量[2.5×1010、2.5×1011、2.5×1012及び2.5×1013GC/kg]の1種をIV投与した。選ばれた用量は、臨床試験の提案されている投与レジメンの範囲を反映するためであった。動物の1つ追加コホートはベヒクル対照として対照薬剤を投与された。血液を、総ビリルビンレベルを把握するため、示されたタイムポイントで動物から回収した。動物を試験又は対照薬剤投与後第56日に剖検し、組織を包括的組織病理学的検査のため回収した。加えて、血液を血清化学パネル及び血液学パネルのため回収した。
【0177】
多数の因子を本試験のデザインにおいて考慮した。最初に、われわれは2つの理由で、(C57BL/6Jマウスにおいてよりむしろ)UGT1 KOマウスにおいて実験を実施することを選択した。第1に、この系統のマウスを使用することはわれわれが毒性と同時に有効性を評価することを可能にするであろう。第2に、われわれは、UGT1A1の欠損と関連するいずれかの病態並びに関連する高ビリルビン血症及びその後遺症の状況においてベクター関連の毒性を評価することを欲した。われわれは前記モデルに肝の病態が存在することを期待しなかった一方、われわれは、何らかのレベルの慢性重度高ビリルビン血症がベクターに対する宿主肝の応答に影響する場合があるとみられることを懸念した。
【0178】
重要な所見は以下のとおりである:
・臨床的後遺症なし
・有効性
・2.5×1010GC/kgより大きい試験薬剤の用量で、総ビリルビンレベルの0.1~0.3mg/dlのベースラインレベルへの完全な復帰が存在した。
・対照群と比較した総ビリルビンの有意の低下が、全4用量群(2.5×1010~2.5×1013GC/kg)についてオスで、並びに2.5×1012GC/kg及び2.5×1013GC/kgを投与されたメスマウスについて観察された(p<0.05)。
・2.5×1010GC/kgの投与はベクター投与後第14日にオスマウスにおいて血清総ビリルビンレベルの79%低下をもたらし、これは第28日に57%低下まで徐々に増大し、及び第42日までにベースラインの高ビリルビン血症に戻った。
・単一のメスUGT1 KOマウスにおける同一用量の投与はベースライン値からの逸脱をもたらさなかった。
・マウスでの発現で見られる性差はヒト以外の霊長類に適用されることが認められなかった。従って、MEDは2.5×1011GC/kgに等しい。
・臨床病理学
・トランスアミナーゼ:異常は、ALTについてベースラインの1~9.1倍の範囲にわたり、主に最高用量の試験薬剤のベクター投与後第28日にオスマウスで見出された、肝機能検査ALT及びASTの上昇に限られた。前記異常は用量依存性であり、より低用量の試験薬剤を投与された動物で本質的に所見が存在しなかった。従って、われわれは、こ
れらの基準に基づく無作用量が2.5×1012GC/kgであることを結論する。
・病理学:3つの巨視的観察結果が存在し、そのいずれも肝(この遺伝子治療アプローチの標的臓器)を関与させなかった。組織病理学は、後に続くとおり肝における最低限又は軽度の所見に限定された:
・対照薬剤を投与されたオス及びメスマウスは、1尾のオスマウスにおける小葉中心性単一細胞肝細胞壊死/変性及び毛細胆管内胆汁うっ滞の最低限の所見を除き、検出された異常を有しなかった。
・全体として、メスマウスの肝において所見より少なかった。高用量の試験薬剤(2.5×1013GC/kg)を投与された1尾のマウス及び2.5×1012GC/kgを投与された1尾のマウスにおいて、小葉中心性単一細胞肝細胞壊死/変性及び単核細胞浸潤の最低限の所見のみが観察された。加えて、2.5×1012GC/kgを投与されたメスマウスは肝細胞有糸分裂像及び胆汁うっ滞もまた有った。
・最低限の小葉中心性単一細胞肝細胞壊死/変性はオスUGT1 KOマウスの全コホートで見られた。しかしながら、高用量の試験薬剤コホート(2.5×1013GC/kg)において、小葉中心性単一細胞肝細胞壊死/変性の2件の軽度所見もまた存在した。このコホートは、単核細胞浸潤、肝細胞有糸分裂像及び胆汁うっ滞の最低限の所見もまた示した。
・肝以外の組織は、高用量の試験薬剤(2.5×1013GC/kg)及び対照薬剤投与されたマウスについてのみ精査した。唯一の他の観察結果は、肺(対照薬剤を投与されたオス及びメスマウスにおける肺胞マクロファージ中の好酸性物質の最低限及び軽度の蓄積)、子宮(対照薬剤を投与された1尾のメスマウスにおける最低限の限局性亜急性炎症)並びに注入部位の皮膚(高用量の試験薬剤を投与された1尾のメスマウスにおける皮膚線維症)における所見であった。
【0179】
見られた用量制限毒性は存在せず、最大耐用量が、2.5×1013GC/kgであった試験最高用量より大きい又はこれに等しかったことを意味している
最高用量(2.5×1013GC/kg)での肝の病態の軽度所見に基づき、われわれは、無作用量が2.5×1012GC/kgという次のより低い用量であることを提案する。
【0180】
MEDは2.5×1011GC/kgに等しい。
【配列表フリーテキスト】
【0181】
以下の情報は数字見出し<223>の下でフリーテキストを含む配列について提供される。
【0182】
【表5-1】
【0183】
【表5-2】
【0184】
【表5-3】
【0185】
【表5-4】
【0186】
【表5-5】
【0187】
【表5-6】
【0188】
【表5-7】
【0189】
本出願で引用される全部の刊行物、特許、特許出願、及び本明細書で参照される配列表、ならびに米国仮出願第62/348,029号、2016年6月9日出願及び同第62/266,969号、2015年12月14日出願は、各個々の刊行物又は特許出願が引用することにより組み込まれることをとりわけ及び個別に示されたかのようにそっくりそのまま引用することによりここに組み込まれる。前述の発明は理解の明快さの目的上具体的説明及び実施例によって若干詳細に説明されたとはいえ、ある種の変更及び改変を、付属として付けられる請求の範囲の技術思想又は範囲から離れることなくそれに対しする場合があることが、本発明の教示に照らして当業者に容易に明らかであることができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10A-1】
図10A-2】
図10B-1】
図10B-2】
図10C-1】
図10C-2】
図10D-1】
図10D-2】
図10E-1】
図10E-2】
【配列表】
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