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特許7061076アイバカフトール類似体を含有するケイ素原子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】アイバカフトール類似体を含有するケイ素原子
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/10 20060101AFI20220420BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 31/695 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220420BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20220420BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220420BHJP
【FI】
C07F7/10 S CSP
A61P43/00 111
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/695
A61P43/00 105
A61P15/00
A61P1/18
A61P11/00
A61P11/06
A61P37/08
A61P11/02
A61P27/02
A61P7/00
A61P9/00
A61P3/00
A61P3/06
A61P1/10
A61P3/10
A61P5/14
A61P19/08
A61P5/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P21/02
A61P25/14
A61P1/16
C07F7/18 T
C07F7/10 Q
C07B61/00 300
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018552693
(86)(22)【出願日】2017-04-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 US2017026579
(87)【国際公開番号】W WO2017177124
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2020-04-03
(31)【優先権主張番号】62/319,439
(32)【優先日】2016-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513283280
【氏名又は名称】プロテオステイシス セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ムノーズ,ベニート
(72)【発明者】
【氏名】パークス,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】バストス,セシリア,エム.
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-515351(JP,A)
【文献】特表2012-521362(JP,A)
【文献】DAVIES, J. et al.,Efficacy and Safety of Ivacaftor in Patients Aged 6 to 11 Years with Cystic Fibrosis with a G551D Mutation,,American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine,2013年,Vol.187, No.11,pp.1219-1225
【文献】SHOWELL, G. et al.,Chemistry challenges in lead optimization: silicon isosteres in drug discovery,Drug Discovery Today,2003年,Vol.8, No.12,pp.551-556
【文献】FRANZ, A. et al.,Organosilicon Molecules with Medicinal Applications,Journal of Medicinal Chemistry,2013年,Vol.56, No.2,pp.388-405
【文献】HEINONEN, P. et al.,Synthesis and pharmacological properties of 4(5)-(2-ethyl-2,3-dihydro-2 silainden-2-yl)imidazole, a silicon analogue of atipamezole,European Journal of Medicinal Chemistry,1996年,Vol.31, No.9,pp.725-729
【文献】TACKE, R. et al.,Sila-haloperidol: A Silicon Analogue of the Dopamine (D2) Receptor Antagonist Haloperidol,Organometallics,2004年,Vol.23, No.19,pp.4468-4477
【文献】TACKE, R. et al.,Synthesis and Pharmacological Characterization of Disila‐AM80 (Disila‐tamibarotene) and Disila‐AM580, Silicon Analogues of the RARα‐Selective Retinoid Agonists AM80 (Tamibarotene) and AM580,ChemMedChem,2009年,Vol.4, No.11,pp.1797-1802
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-(2,4-ジ-tert-ブチル-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミドから選択され、
a)1個のtert-ブチル部分の4級炭素原子が、ケイ素で置き換えられているか、又は
b)2個のtert-ブチル部分の4級炭素原子が、ケイ素で置き換えられており、
1以上の水素原子は重水素に置き換えられていてもよい化合物及びその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記tert-ブチル部分の1つ以上の水素が、重水素で置換されている請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
式I
(式中、
が、-Si(R、-C(CY、水素、ハロゲン、1つ以上のハロゲンで任意に置換されたC1~3アルキル、C3~6シクロアルキル、及び4~6員飽和単環式ヘテロシクリルからなる群から選択され、ここで、C3~6シクロアルキル及び4~6員飽和単環式ヘテロシクリルが、各々独立して、各発生について、R11から選択される1個、2個、3個、またはそれ以上の置換基で任意に置換されていてもよく、
が、-Si(R及び-C(CYからなる群から選択され、
ここで、XまたはXのうちの少なくとも1つが、-Si(Rであり、
が独立して、各発生について、ヒドロキシル、C1~4アルキル、C1~4アルコキシ、及びフェニルからなる群から選択され、ここで、C1~4アルキル、C1~4アルコキシ、及びフェニルが、1個、2個、3個、もしくはそれ以上の重水素原子で任意に置換されていてもよく、または2個のR基が、それらが結合するケイ素と一緒になって4~6員飽和シクロシランを形成し、
Yが独立して、各発生について、水素及び重水素からなる群から選択され、
11が独立して、各発生について、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、及びC1~6アルキルからなる群から選択され、ここで、C1~6アルキルが、各々独立して、各発生について、ハロゲン、ヒドロキシル、及びC1~6アルコキシからなる群から選択される1個以上の置換基で任意に置換されていてもよい。)
【請求項4】
a)XまたはXの一方が、-C(CHであり、XまたはXのもう一方が、-Si(Rであるか又は
b)XまたはXの双方が-Si(Rである請求項に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が、以下のいずれかの式で表される請求項3または4に記載の化合物。
【請求項6】
が、独立して、各発生について、ヒドロキシル、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ、及びフェニルからなる群から選択され、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ、及びフェニルが、1個、2個、3個、またはそれ以上の重水素原子で任意に置換されていてもよい請求項3~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
以下からなる群から選択される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、重水素として指定されていない任意の原子が、その天然の同位体存在度で存在する、化合物及びその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の化合物及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項9】
前記組成物が、少なくとも1つの追加のCFTR調節因子を更に含む請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
患者の嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス制御因子(CFTR)活性の増強用の医薬組成物であって、
請求項1~のいずれか1項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項11】
前記患者が、CFTR遺伝子に1つ以上の突然変異を有し、前記突然変異が、各々S549N、G551D、G1244E、G1349D、G167R、G551S、S1251N、S1255P、S549R、G178R、G970R、及びR117Hからなる群から選択され、任意にG551D CFTR活性が増強されるか、
CFTR活性の低下に関連する疾患に罹患しており、前記疾患が、任意に、嚢胞性線維症、先天性両側輸精管欠損(CBAVD)、急性、反復性、または慢性膵炎、びまん性気管支拡張症、喘息、アレルギー性肺アスペルギルス症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性副鼻腔炎、ドライアイ疾患、プロテインC欠損症、無β-リポタンパク質血症、リソソーム蓄積症、1型カイロミクロン血症、軽度肺疾患、脂質処理欠損症、1型遺伝性血管浮腫、凝固線維素溶解、遺伝性ヘモクロマトーシス、CFTR関連メタボリックシンドローム、慢性気管支炎、便秘、膵機能不全、遺伝性肺気腫、シェーグレン症候群、家族性高コレステロール血症、I細胞病/偽ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ/テイ・サックス、クリグラー・ナジャーII型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、メラノーマ、グリカノーシスCDG1型、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノゲン血症、ACT欠損症、尿崩症(DI)、神経下垂体性DI、腎性DI、シャルコー・マリー・トゥース症候群、ペリツェウス・メルツバッハー病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病、ハンチントン病、脊髄小脳失調症1型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、筋緊張性ジストロフィー、遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病(プリオンタンパク質処理欠陥に起因する)、ファブリー病、胆汁うっ滞性肝疾患、及びシュトロイスラー・シャインカー症候群からなる群から選択され、
ヒトである請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
少なくとも1つまたは2つの追加のCFTR調節因子をさらに含み
任意に、1つの追加のCFTR調節因子が、VX-152、VX-440、VX-445、VX-659、VX-809(ルマカフトール)、VX-661、FDL169、GLPG2851、GLPG2665、GLPG2737、及びGLPG2222からなる群から選択される請求項10又は11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~のいずれか1項に記載の化合物を含む嚢胞性線維症の治療用の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年4月7日に出願された米国仮出願第62/319,439号の利益及び優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
細胞は通常、センサ及び経路のネットワークを用いて、タンパク質ホメオスタシスと呼ばれるタンパク質の合成、フォールディング、輸送、凝集及び分解の間のバランスを維持している(Sitia et al.,Nature 426:891-894,2003、Ron et al.,Nat Rev Mol Cell Biol 8:519-529,2007)。細胞のタンパク質ホメオスタシス維持、すなわちプロテオスタシスは、プロテオームを構成する個々のタンパク質のコンホメーション、結合相互作用、位置及び濃度を制御することを指す。フォールディングするポリペプチド鎖と、凝集を最小限に抑える多数のクラスのシャペロン及びフォールディング酵素を含めた高分子細胞成分との間の相互作用により、インビボのタンパク質フォールディングが行われる(Wiseman et al.,Cell 131:809-821,2007)。ある特定の細胞型において所与のタンパク質がフォールディングするかどうかは、シャペロン、フォールディング酵素、代謝産物などの分布、濃度及び細胞内局在によって決まる(Wiseman et al.)。嚢胞性線維症及びタンパク質のミスフォールディングの他の疾患は、タンパク質ホメオスタシス(プロテオスタシス)環境が、正常な生理機能にとって非常に危険なものである、ミスフォールドされ、変異したタンパク質の低減したエネルギー安定性を処理する能力における、アンバランスの結果として生じる(Balch et al.,Science319,916-9(2008)、Powers,et al.,Annu Rev Biochem 78,959-91(2009)、Hutt et al.,FEBS Lett 583,2639-46(2009))。
【0003】
嚢胞性線維症(CF)は、複膜貫通上皮塩素チャネルをコードする嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子における変異によって引き起こされる(Riordan et al.,Annu Rev Biochem 77,701-26(2008))。約90%の患者が、少なくとも1つの対立遺伝子上でフェニルアラニン(Phe)508(ΔF508)の欠損を有する。この変異により、タンパク質のフォールディングのエネルギー機能が破壊され、これが小胞体(ER)内のCFTRの分解につながる。したがって、ΔF508変異は、フォールディング及び輸送の欠陥、ならびに変異CFTRタンパク質の分解の増進と関連付けられる(Qu et al.,J Biol Chem 272,15739-44(1997))。原形質膜での機能的CFTRチャネルの喪失は、イオンホメオスタシス(Cl、Na、HCO )、及び肺機能低下をもたらす気道表面水和を破壊する(Riordan et al.)。繊毛周囲液体積の低減及び粘液粘度の増加は、粘液線毛クリアランスを妨害し、これにより、CF疾患の表現型特徴である慢性感染症及び炎症がもたらされる(Boucher,J Intern Med 261,5-16(2007))。呼吸器の機能不全に加えて、ΔF508CFTRはまた、追加的な器官(膵臓、腸、胆嚢)の正常な機能にも影響を与え、このことは、機能の喪失が、修正を必要とする多数の下流経路に影響を与えることを示す。
【0004】
嚢胞性線維症に加えて、CFTR遺伝子の突然変異及び/またはCFTRチャネルの活性は、例えば、先天性両側輸精管欠損(CBAVD)、急性、再発性、または慢性膵炎、びまん性気管支拡張症、喘息、アレルギー性肺アスペルギルス症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの喫煙関連肺疾患、ドライアイ疾患、シェーグレン症候群及び慢性副鼻腔炎、胆汁うっ滞性肝疾患(例えば、前胆汁性肝硬変(PBC)及び原発性硬化性胆管炎(PSC))を含む他の病態においても暗示されている(Sloane et al.(2012),PLoS ONE 7(6):e39809.doi:10.1371/journal.pone.0039809、Bombieri et al.(2011),J Cyst Fibros.2011 Jun;10 Suppl 2:S86-102、(Albert et al.(2008),Clinical Respiratory Medicine,Third Ed.,Mosby Inc.、Levin et al.(2005),Invest Ophthalmol Vis Sci.,46(4):1428-34、Froussard(2007),Pancreas 35(1):94-5),Son et al.(2017)J Med Chem 60(6):2401-10。
【0005】
例えば、薬物の代謝特性、有効性、及び/または安全性プロファイルを改善するための潜在的戦略は、ケイ素修飾である。同時に、一般的な性質は、炭素の性質に類似しているため、ケイ素による炭素の置換は、炭素のみを含有する元の化学物質と比較して、例えば、薬物の生化学的効力及び/または選択性に影響を及ぼすことは期待されない。
【0006】
当該技術分野において、CFTR活性を増加する化合物、組成物、及び方法、ならびにCF、他のCFTR関連疾患、及びタンパク質のミスフォールディングの他の疾患を治療する方法に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0007】
この開示は、N-(2,4-ジ-tert-ブチル-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミドから選択される化合物、及びその薬学的に許容される塩であって、少なくとも1個の炭素原子が、ケイ素で置き換えられている、化合物を部分的に対象とする。いくつかの実施形態では、ケイ素で置換された炭素原子(複数可)は、非芳香族炭素である。他の実施形態では、ケイ素で置換された炭素原子(複数可)は、1つのtert-ブチル部分または2つのtert-ブチル部分の4級炭素原子である。ある特定の実施形態では、1つ以上の水素が、重水素で置き換えられる。
【0008】
例えば、本明細書において、式Iを有する化合物、
式I
またはその薬学的に許容される塩が開示され、X、X、及びYは、本明細書に定義されるとおりである。
【0009】
開示された化合物、例えばN-(2,4-ジ-tert-ブチル-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(少なくとも1個の炭素原子が、ケイ素で置換されている)、及び薬学的に許容される担体または賦形剤を含む薬学的組成物もまた、本明細書において企図される。式Iを有する化合物などの開示された化合物と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、薬学的組成物が、本明細書において更に企図される。ある特定の実施形態では、組成物は、少なくとも1つの追加のCFTR調節因子を含むことができ、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の追加のCFTR調節因子を含み得る。
【0010】
ある特定の実施形態では、開示された化合物を、減少したCFTR活性に関連する疾患に罹患している対象(例えば、ヒト患者)に投与することを含む方法が提供される(例えば、嚢胞性線維症、先天性両側輸精管欠損(CBAVD)、急性、反復性、または慢性膵炎、びまん性気管支拡張症、喘息、アレルギー性肺アスペルギルス症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性副鼻腔炎、ドライアイ疾患、プロテインC欠損症、無β-リポタンパク質血症、リソソーム蓄積症、1型カイロミクロン血症、軽度肺疾患、脂質処理欠損症、1型遺伝性血管浮腫、凝固線維素溶解、遺伝性ヘモクロマトーシス、CFTR関連メタボリックシンドローム、慢性気管支炎、便秘、膵機能不全、遺伝性肺気腫、シェーグレン症候群、家族性高コレステロール血症、I細胞病/偽ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ/テイ・サックス、クリグラー・ナジャーII型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、メラノーマ、グリカノーシスCDG1型、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノゲン血症、ACT欠損症、糖尿病尿崩症(DI)、神経下垂体性DI、腎性DI、シャルコー・マリー・トゥース症候群、ペリツェウス・メルツバッハー病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病、ハンチントン病、脊髄小脳失調症1型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、筋緊張性ジストロフィー、遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病(プリオンタンパク質処理欠陥に起因する)、ファブリー病、胆汁うっ滞性肝疾患(例えば、原発性胆汁性肝硬変症(PBC)及び原発性硬化性胆管炎(PSC))、ならびにシュトロイスラー・シャインカー症候群)。ある特定の実施形態において、疾患は嚢胞性線維症である。例えば、嚢胞性線維症に罹患している患者を治療するための方法であって、該患者に有効量の開示された化合物を投与することを含む、方法も本明細書において企図される。
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の開示された方法は、少なくとも1つの追加のCFTR調節因子、例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、または5つの追加のCFTR調節因子を投与することを更に含むことができる。ある特定の実施形態では、少なくとも1つの追加のCFTR調節因子は、CFTR補正因子(例えば、VX-661(テザカフトール)、VX-152、VX-440、VX-445、VX-659、もしくはVX-983)、または例えば、VX-809(ルマカフトール)、または例えば、GLPG2851、GLPG2665、GLPG2737、もしくはGLPG2222である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用する場合、「a(ある1つの)」及び「an(ある1つの)」という語は、別途特定されない限り、1つ以上を含むことを意図する。例えば、「ある1つの薬剤(an agent)」という用語は、単一の薬剤及び2つ以上の薬剤の組み合わせの両方を包括する。
【0013】
上で考察されたように、本開示は、部分的に、式Iを有する本明細書に記載される化合物、またはその薬学的に許容される塩、薬学的組成物、CFTR活性を増加させる方法、及び嚢胞性線維症を治療する方法を対象とする。部分的に、本開示は、アイバカフトールの新規誘導体、及びその薬学的に許容される塩に関する。VX-770及び化学名N-(2,4-ジ-tert-ブチル-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキシ-アミドとしても知られているアイバカフトールは、CFTR増強剤として作用する。
【0014】
例えば、本明細書において、N-(2,4-ジ-tert-ブチル-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド、及びその薬学的に許容される塩から選択される化合物が提供され、少なくとも1個の炭素原子が、ケイ素で置き換えられてもよい。
【0015】
ある特定の実施形態では、1個の炭素原子は、ケイ素で置き換えられてもよい。他の実施形態では、2個の炭素原子が、ケイ素で置き換えられてもよい。例えば、ケイ素で置換された炭素は、非芳香族炭素であってもよい。別の実施形態では、1つのtert-ブチル部分の4級炭素原子は、ケイ素で置き換えられてもよい。さらなる実施形態では、2つのtert-ブチル部分の4級炭素原子は、ケイ素で置き換えられてもよい。ある特定の実施形態では、1つ以上の水素が、重水素で置き換えられてもよい。例えば、tert-ブチル部分の1つ以上の水素が、重水素で置き換えられてもよい。
【0016】
また、本明細書において、式Iを有する化合物、
式I
またはその薬学的に許容される塩が提供され、式中、
は、-Si(R、-C(CY、水素、ハロゲン、1つ以上のハロゲンで任意に置換されたC1~3アルキル、C3~6シクロアルキル、及び4~6員飽和単環式ヘテロシクリルからなる群から選択され、ここで、C3~6シクロアルキル及び4~6員飽和単環式ヘテロシクリルは、各々独立して、各発生について、R11から選択される1個、2個、3個、またはそれ以上の置換基で任意に置換されていてもよく、
は、-Si(R及び-C(CYからなる群から選択され、
ここで、XまたはXの少なくとも一方は、-Si(Rであり、
は独立して、各発生について、ヒドロキシ、C1~4アルキル、C1~4アルコキシ、及びフェニルからなる群から選択され、ここで、C1~4アルキル、C1~4アルコキシ、及びフェニルは、1個、2個、3個、もしくはそれ以上の重水素原子で任意に置換され得るか、または2つのR基が、それらが結合しているケイ素と一緒になって、4~6員飽和シクロシランを形成し、
Yは、独立して、各発生について、水素及び重水素からなる群から選択され、
11は、独立して、各発生について、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、及びC1~6アルキルからなる群から選択され、ここでC1~6アルキルは、各々独立して、各発生について、ハロゲン、ヒドロキシル、及びC1~6アルコキシからなる群から選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されていてもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、XまたはXの一方は、-C(CHであり、XまたはXのもう一方は、-Si(Rである。
【0018】
例えば、ある特定の実施形態では、化合物は、以下によって表すことができる。
Ia
または
Ib
【0019】
他の実施形態では、X及びXの両方が、-Si(Rである。
【0020】
例えば、ある特定の実施形態では、化合物は、以下によって表すことができる。
Ic
【0021】
いくつかの実施形態では、Rは、独立して、各発生について、ヒドロキシ、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ、及びフェニルからなる群から選択することができ、ここでメチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ、及びフェニルは、1個、2個、3個、またはそれ以上の重水素原子で置換されていてもよい。例えば、Rは、独立して、各発生について、-CH及び-CDから選択することができる。
【0022】
例えば、本明細書において、






からなる群から選択される化合物、及びその薬学的に許容される塩が開示され、ここで、重水素として指定されていない任意の原子は、その天然の同位体存在度で存在する。
【0023】
開示された化合物、例えばN-(2,4-ジ-tert-ブチル-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミドを含む薬学的組成物(ここで、少なくとも1個の炭素原子が、ケイ素で置換されている)、及び薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、薬学的組成物もまた本明細書において企図される。式Iを有する化合物などの開示された化合物と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、薬学的組成物が、本明細書において更に企図される。ある特定の実施形態において、本組成物は、本明細書の任意の場所において記載される、少なくとも1つの追加的なCFTR調節因子を含んでもよく、あるいは本明細書の任意の場所において記載される、少なくとも2つの追加的なCFTR調節因子を各々独立して含んでもよい。
【0024】
これより、本開示の特徴及び他の詳細をより具体的に記載する。本開示を更に記載する前に、本明細書、実施例、及び添付の特許請求の範囲において用いられるある特定の用語をここに収集する。これらの定義は、本開示の残部に照らして、かつ当業者によって理解されるものとして閲読されるべきである。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。
【0025】
本明細書における開示の記載は、化学結合の法則及び原理と一致して解釈されるべきであることが理解されるであろう。
【0026】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、別途指示されない限り、指定された数の炭素原子を有する分枝鎖及び直鎖飽和脂肪族炭化水素基の両方を指し、例えば、「C~C10アルキル」は、1~10個の炭素原子、及びそれぞれC1~6アルキル、C1~4アルキル、及びC1~3アルキルと称される、1~6個、1~4個、または1~3個の炭素原子の直鎖状または分岐状の炭化水素を有するアルキルを示す。アルキルの例としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、2-メチルブチル、2-メチルペンチル、2-エチルブチル、3-メチルペンチル、及び4-メチルペンチルが挙げられる。
【0027】
本明細書で使用する場合、「アルケニル」という用語は、指定された数の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する、直鎖部分及び分岐鎖部分の両方を指す。例示的なアルケニル基としては、限定されるものではないが、本明細書において、それぞれC2~6アルケニル、及びC3~4アルケニルと称される、2~6個または3~4個の炭素原子の直鎖または分枝基が挙げられる。例示的アルケニル基としては、限定されるものではないが、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニルなどが挙げられる。
【0028】
本明細書で使用する場合、「アルキニル」という用語は、指定された数の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する、直鎖部分及び分岐鎖部分の両方を指す。
【0029】
本明細書で使用する場合、「シクロアルキル」という用語は、3個以上の炭素原子、例えば、本明細書において、それぞれC3~10シクロアルキル、C3~6シクロアルキル、またはC4~6シクロアルキルと称される、3~10個、3~6個、または4~6個の炭素原子を有する飽和環状アルキル部分を指す。シクロアルキルの例としては、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びアダマンチルが挙げられる。
【0030】
本明細書で使用する場合、「シクロアルケニル」という用語は、3個以上の炭素原子を有する環状アルケニル部分を指す。
【0031】
本明細書で使用する場合、「シクロアルキニル」という用語は、5個以上の炭素原子を有する環状アルキニル部分を指す。
【0032】
「アルキレン」は、指示される数の炭素を有する、直鎖型または分岐鎖型の飽和脂肪族二価ラジカルを意味する。「シクロアルキレン」は、指示される数の炭素を有する、炭素環式飽和炭化水素基の二価ラジカルを指す。
【0033】
本明細書で使用する場合、「アルコキシ」という用語は、酸素に結合した直鎖または分岐鎖アルキル基(アルキル-O-)を指す。例示的なアルコキシ基としては、限定されるものではないが、本明細書において、それぞれC1~6アルコキシ及びC2~6アルコキシと称される、1~6個または2~6個の炭素原子のアルコキシ基が挙げられる。例示的なアルコキシ基としては、限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシなどが挙げられる。
【0034】
「複素環式」または「複素環」または「ヘテロシクリル」という用語は、別途指示されない限り、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロビシクロアルキル、ヘテロビシクロアルケニル、ヘテロポリシクロアルキル、ヘテロポリシクロアルケニルなどを包含する。ヘテロシクロアルキルは、環内に1個以上のヘテロ原子(O、S、またはN)を含むシクロアルキル基を指す。本明細書で使用する場合、ヘテロシクロアルケニルは、環内に1個以上のヘテロ原子(O、S、またはN)を含むシクロアルケニル基を指す。ヘテロビシクロアルキルは、環内に1個以上のヘテロ原子(O、S、またはN)を含むビシクロアルキル基を指す。本明細書で使用する場合、ヘテロビシクロアルケニルは、環内に1個以上のヘテロ原子(O、S、またはN)を含むビシクロアルケニル基を指し、複素環は、例えば、飽和または部分的に不飽和の4~12員または4~10員環構造(架橋環もしくは縮合環を含む)を指し得、その環構造は、1~3個のヘテロ原子、例えば窒素、酸素、及び硫黄を含む。可能な場合、ヘテロシクリル環は、炭素または窒素を介して隣接するラジカルに結合していてもよい。ヘテロシクリル基の例としては、限定されるものではないが、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、オキセタン、アゼチジン、テトラヒドロフラン、またはジヒドロフランなどが挙げられる。
【0035】
シクロアルキル、シクロアルケニル、及び複素環式基には、これらのそれぞれのカテゴリーの各々について上に記載したものと同様の基も含まれるが、それらは1つ以上のオキソ部分で置換されている。
【0036】
本明細書で使用する場合、「ヘテロアリール」という用語は、環内に1個以上のヘテロ原子(O、S、またはN)を含む芳香族炭素環式基を指す。別途指示されない限り、ヘテロアリール基は、単環式または多環式であり得る。ヘテロアリール基は、付加的に置換されていても置換されていなくてもよい。企図されるヘテロアリール基には、1つ以上のオキソ部分で置換された環系が含まれる。多環式ヘテロアリールは、縮合環、共有結合環、またはそれらの組み合わせを含むことができる。多環式ヘテロアリールは、環内に1個以上のヘテロ原子を含む少なくとも1つの芳香族環を含む、多環式環系である。ヘテロアリール基の例としては、限定されるものではないが、ピリジニル、ピラジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、キノリル、イソキノリル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、トリアジニル、イソインドリル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、ジヒドロキノリル、テトラヒドロキノリル、ジヒドロイソキノリル、テトラヒドロイソキノリル、ベンゾフリル、フロピリジニル、ピロロピリミジニル、チアゾロピリジニル、オキサゾロピリジニル、及びアザインドリルが挙げられる。前述のヘテロアリール基は、C結合またはヘテロ原子結合であり得る(そのような結合が可能である場合)。例えば、ピロールから誘導される基は、ピロール-1-イル(N結合)またはピロール-3-イル(C結合)であってもよい。いくつかの実施形態では、ヘテロアリールは、4~12員ヘテロアリールである。更に他の実施形態では、ヘテロアリールは、単環式または二環式4~10員ヘテロアリールである。
【0037】
本明細書で使用する場合、「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br、またはIを指す。
【0038】
本明細書で使用する場合、「ハロアルキル」という用語は、独立して、F、Cl、Br、またはIから選択される1~(2n+1)個の置換基を有するアルキル基を指し、nは、アルキル基中の炭素原子の最大数である。ハロアルキルは、任意に置換されたアルキルの具体例であることが理解されよう。
【0039】
本明細書で使用される「ヒドロキシ」及び「ヒドロキシル」という用語は、ラジカル-OHを指す。
【0040】
当業者には理解されるように、「H」は水素の記号であり、「D」は重水素の記号であり、「N」は窒素の記号であり、「S」は硫黄の記号であり、「O」は酸素の記号である。「Me」は、メチルの略語である。
【0041】
本開示の化合物は、1つ以上のキラル中心を含み得、したがって、立体異性体として存在し得る。本明細書で使用する場合、「立体異性体」という用語は、全てのエナンチオマーまたはジアステレオマーからなる。これらの化合物は、立体形成炭素原子の周りの置換基の配置に応じて、記号「(+)」、「(-)」、「R」、または「S」で表すことができるが、当業者であれば、構造が暗黙のうちにキラル中心を示し得ることを認識するであろう。本開示は、開示される化合物の様々な立体異性体及びその混合物を包含する。エナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物は、命名法では「(±)」と表すことができるが、当業者であれば、構造が暗黙のうちにキラル中心を示し得ることを理解するであろう。
【0042】
本開示の化合物は、1つ以上の二重結合を含むことができ、したがって、炭素-炭素二重結合の周りの置換基の配置から生じる幾何異性体として存在する。記号
は、本明細書に記載される単結合、二重結合、または三重結合であり得る結合を示す。炭素-炭素二重結合の周りの置換基は、「Z」または「E」という用語がIUPAC標準に従って使用される、「Z」または「E」配置であると指定される。別途指定されない限り、二重結合を示す構造は、「E」及び「Z」異性体の両方を包含する。代替として、炭素-炭素二重結合の周りの置換基は、「cis」または「trans」と称され得、「cis」は、二重結合の同じ側の置換基を表し、「trans」は、二重結合の反対側の置換基を表す。
【0043】
本開示の化合物は、炭素環式環または複素環式環を含有することができ、したがって、環の周りの置換基の配置から生じる幾何異性体として存在する。炭素環式環または複素環式環の周りの置換基の配置は、「Z」または「E」という用語がIUPAC標準に従って使用される、「Z」または「E」配置であると指定される。別途指定されない限り、炭素環または複素環を示す構造は、「Z」及び「E」異性体の両方を包含する。炭素環式環または複素環式環の周囲の置換基は、「cis」または「trans」とも呼ばれる場合があり、「cis」という用語は、環の面の同じ側の置換基を表し、「trans」という用語は、環の面の反対側の置換基を表す。置換基が環の面の同じ側及び反対側の両側に配置されている化合物の混合物は、「cis/trans」と示される。
【0044】
開示された化合物の個々のエナンチオマー及びジアステレオマーは、不斉中心または立体中心を含む市販の出発物質から、またはラセミ混合物の調製、続いて当業者に周知の分割方法によって合成的に調製することができる。これらの分割方法は、(1)エナンチオマー混合物の、キラル補助剤への結合、得られたジアステレオマー混合物の再結晶またはクロマトグラフィーによる分離、及び光学的に純粋な産物の補助剤からの遊離、(2)光学活性分離剤を用いる塩形成、(3)キラル液体クロマトグラフィーカラム上の光学エナンチオマーの混合物の直接分離、または(4)立体選択的化学的もしくは酵素的試薬を使用する速度論的分割によって例証される。ラセミ混合物はまた、キラル相液体クロマトグラフィーなどの周知の方法、またはキラル溶媒中で化合物を結晶化させることによって、それらの成分エナンチオマーに分割することもできる。単一の反応物が、新しい立体中心の生成中、または既存の立体中心の変換中に、立体異性体の不均一な混合物を形成する化学的または酵素的反応である、立体選択的合成は、当該技術分野で周知である。立体選択的合成は、エナンチオ選択的変換及びジアステレオ選択的変換の両方を包含し、キラル助剤の使用を含み得る。例えば、Carreira and Kvaerno,Classics in Stereoselective Synthesis,Wiley-VCH:Weinheim,2009を参照されたい。特定の化合物が記載または図示される場合、その構造の化学構造ならびに互変異性体を包含することが意図される。
【0045】
「エナンチオマー的に純粋な」という用語は、化合物の立体異性的に純粋な組成物を意味する。例えば、立体化学的に純粋な組成物は、その化合物の他の立体異性体を含まないか、または実質的に含まない組成物である。別の例では、1つのキラル中心を有する化合物については、化合物のエナンチオマー的に純粋な組成物は、他のエナンチオマーを含まないか、または実質的に含まない。更に別の例では、2つのキラル中心を有する化合物について、エナンチオマー的に純粋な組成物は、他のジアステレオマーを含まないか、または実質的に含まない。
【0046】
特定の立体化学が記載または描写される場合、それは、特定のエナンチオマーが他のエナンチオマーに対して過剰に存在することを意味することを意図する。化合物は、その位置にS配置を有する化合物と比較して過剰に存在する場合、特定の位置にR配置を有する。化合物は、その位置にR配置を有する化合物と比較して過剰に存在する場合、特定の位置にS配置を有する。
【0047】
本明細書に開示された化合物は、溶媒和形態ならびに非溶媒和形態で、水、エタノールなどのような薬学的に許容される溶媒とともに存在することができ、開示された化合物は、溶媒和形態及び非溶媒和形態の両方を含む。一実施形態では、開示された化合物は非晶質であり、別の実施形態では、単一の多形体である。別の実施形態では、開示された化合物は、多形体の混合物である。別の実施形態では、開示された化合物は、結晶形態である。
【0048】
1個以上の原子が、通常自然界に見られる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置換されていることを除いて、本明細書中に列挙されたものと同一である同位体標識化合物もまた企図される。本開示の化合物に組み込まれ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、及び塩素の同位体、例えばそれぞれH、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、及び36Clが挙げられる。
【0049】
例えば、開示された化合物は、重水素で置換された1個以上のH原子を有することができる。合成に使用される化学物質の起源に依存して、天然の同位体存在度のいくらかの変化が、合成化合物において生じることが認識されるであろう。したがって、少なくとも1個の炭素原子がケイ素で置き換えられたN-(2,4-ジ-tert-ブチル-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミドの調製物、または式Iを有する開示された化合物の調製物は、本質的に、少量の重水素化イソトポログを含有するであろう。天然存在度の安定な水素及び炭素同位体の濃度は、この変化にもかかわらず、本開示の化合物の安定な同位体置換の程度と比較して小さく、重要ではない。
【0050】
本開示の化合物において、特定の同位体として特に指定されていない任意の原子は、その原子の任意の安定同位体を表すことを意味する。別途記載されない限り、位置が特に「H」または「水素」と指定された場合、その位置は、その天然存在度の同位体組成で水素を有すると理解される。また、別途記載されない限り、位置が特に「D」または「重水素」と指定される場合、その位置は、重水素の天然存在度よりも少なくとも3000倍多い存在度で重水素を有すると理解され、0.015%(すなわち、少なくとも45%の重水素結合)である。
【0051】
本明細書で使用される「同位体富化因子」という用語は、同位体存在度と特定の同位体の天然存在度との間の比を意味する。
【0052】
他の実施形態では、開示された化合物は、各指定された重水素原子について、少なくとも3500(各指定された重水素原子において52.5%の重水素結合)、少なくとも4000(60%の重水素結合)、少なくとも4500(67.5%の重水素結合)、少なくとも5000(75%の重水素結合)、少なくとも5500(82.5%の重水素結合)、少なくとも6000(90%の重水素結合)、少なくとも6333.3(95%の重水素結合)、少なくとも6466.7(97%の重水素結合)、少なくとも6600(99%の重水素結合)、または少なくとも6633.3(99.5%の重水素結合)の同位体富化因子を有する。
【0053】
「アイソトポログ」という用語は、化学構造が本開示の特定の化合物とその同位体組成においてのみ異なる種を指す。
【0054】
本開示の化合物に言及する場合、「化合物」という用語は、分子の構成原子の間に同位体変化が存在し得ることを除いて、同一の化学構造を有する分子の集合を指す。したがって、示された重水素原子を含有する特定の化学構造によって表される化合物は、その構造中の指定された重水素位置のうちの1つ以上に水素原子を有する、より少量の同位体も含むであろうことは、当業者には明らかであろう。本開示の化合物におけるそのようなアイソトポログの相対量は、化合物を作製するために使用される重水素化試薬の同位体純度、及び化合物を調製するために使用される種々の合成工程における重水素の結合効率を含む多数の因子に依存する。しかしながら、上記のように、そのようなアイソトポログの相対量は、合計で化合物の49.9%未満である。他の実施形態では、そのようなアイソトポログの相対量は、合計で化合物の47.5%未満、40%未満、32.5%未満、25%未満、17.5%未満、10%未満、5%未満、3%未満、1%未満、または0.5%未満である。
【0055】
ある特定の同位体標識された開示化合物(例えば、H及び14Cで標識されたもの)は、化合物及び/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化(すなわち、H)及び炭素-14(すなわち、14C)同位体は、調製及び検出の容易さのために適切である。更に、重水素(すなわち、H)などのより重い同位体での置換は、より優れた代謝安定性(例えば、インビボ半減期の増加または用量要件の低減)に起因する一定の治療上の利点をもたらすことができ、したがっていくつかの状況において適切であり得る。同位体標識化合物は、同位体標識試薬を非同位体標識試薬の代わりに用いることにより、本明細書の実施例に開示されているものと類似の手順に従って一般に調製することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、開示された化合物の窒素原子のうちの1個以上は、存在する場合、酸化されてN-オキシドになる。
【0057】
本明細書に開示された化合物の調製のための代表的な合成経路は、実施例の節を通して提供される。当業者に理解されるように、ジアステレオマーは、カラムクロマトグラフィーを使用して反応混合物から分離することができる。
【0058】
上述のように、本明細書において、実施形態では、有効量の開示化合物を投与することを含む、対象におけるCFTR活性を増加させる方法が企図される。また、CFTR活性に関連する病態に罹患している患者を治療する方法であって、有効量の本明細書に記載される化合物を、該患者に投与することを含む方法も本明細書において企図される。
【0059】
「治療する」または「治療」は、疾患の症状、合併症、もしくは生化学的兆候の発症を予防もしくは遅延させること、症状を軽減もしくは改善すること、または疾患、状態、もしくは障害の更なる発達を停止もしくは阻害することを含む。「対象」は、治療されるべき動物または治療を必要とする動物である。「患者」は、治療を必要とするヒト対象である。
【0060】
「有効量」は、所望の及び/または列挙された効果を達成するのに十分な薬剤の量を指す。治療方法の文脈において、障害の1つ以上の症状を改善する、及び/または障害の進行を予防するのに十分な治療剤の「有効量」は、障害の退行を引き起こし、かつ/または所望の効果を達成する。
【0061】
「調節する」という用語は、増加、増強、阻害、減少、抑制などを包含する。「増加する」及び「増強する」という用語は、直接または間接的ないずれかの手段によって正味利得を生じることを意味する。本明細書中で使用する場合、「阻害する」及び「減少する」という用語は、直接的手段または間接的手段のいずれかによる正味減少を引き起こすことを包含する。
【0062】
いくつかの例では、CFTR活性は、化合物の投与の非存在下と比較して、CFTR活性の増加がある場合、本明細書に記載される化合物の投与後に増強される。CFTR活性は、例えば、CFTRの塩素チャネル活性、及び/または他のイオン輸送活性(例えば、HCO 輸送)を包含する。これらの実施形態のうちある特定のものにおいては、1つ以上(例えば、1または2つ)の変異CFTR(例えば、ΔF508、S549N、G542X、G551D、R117H、N1303K、W1282X、R553X、621+1G>T、1717-1G>A、3849+10kbC>T、2789+5G>A、3120+1G>A、I507del、R1162X、1898+1G>A、3659delC、G85E、D1152H、R560T、R347P、2184insA、A455E、R334W、Q493X、及び2184delA CFTR)の活性が増進される(例えば、増加する)。企図される患者は、限定されないが、クラスI CFTR突然変異、クラスII CFTR突然変異、クラスIII CFTR突然変異、クラスIV CFTR突然変異、クラスV CFTR突然変異、及びクラスVI突然変異などの1つ以上のクラスからのCFTR突然変異を有する可能性がある。企図される対象(例えば、ヒト対象)CFTR遺伝子型としては、限定されないが、ホモ接合体突然変異(例えば、ΔF508/ΔF508及びR117H/R117H)、ならびに化合物ヘテロ接合体突然変異(例えば、ΔF508/G551D、ΔF508/A455E、ΔF508/G542X、Δ508F/W1204X、R553X/W1316X、W1282X/N1303K、591δ18/E831X、F508del/R117H/N1303K/3849+10kbC>T、Δ303K/384、及びDF508/G178R)が挙げられる。
【0063】
ある特定の実施形態では、突然変異は、クラスI突然変異、例えばG542X、クラスII/I突然変異、例えば、ΔF508/G542X化合物ヘテロ接合体突然変異である。他の実施形態では、突然変異は、クラスIII突然変異、例えばG551D、クラスII/クラスIII突然変異、例えば、ΔF508/G551D化合物ヘテロ接合体突然変異である。更に他の実施形態では、突然変異は、クラスV突然変異、例えばA455E、クラスII/クラスV突然変異、例えば、ΔF508/A455E化合物ヘテロ接合体突然変異である。CFTR遺伝子の1000を超える既知の突然変異のうち、ΔF508は、タンパク質のミスフォールディングをもたらし、小胞体から頂端膜への輸送を損なうCFTRの最も一般的な突然変異である(Dormer et al.(2001).J Cell Sci 114,4073-4081、http://www.genet.sickkids.on.ca/app)。ある特定の実施形態において、ΔF508CFTR活性が増進される(例えば、増加する)。ある特定の実施形態では、ΔF508CFTR活性及び/またはG542X CFTR活性及び/またはG551D CFTR活性及び/またはA455E CFTR活性が増強される(例えば、増加する)。CFTR活性の増強は、例えば、Ussingチャンバアッセイ、パッチクランプアッセイ、及びhBE Ieqアッセイを含む、文献に記載される方法を使用して測定され得る(Devor et al.(2000),Am J Physiol Cell Physiol 279(2):C461-79、Dousmanis et al.(2002),J Gen Physiol 119(6):545-59、Bruscia et al.(2005),PNAS 103(8):2965-2971)。
【0064】
上述のように、本開示はまた、嚢胞性線維症を治療する方法を包含する。有効量の開示化合物を投与することを含む、CFTR活性に関連する他の病態(CFTR活性の欠損に関連する状態を含む)を治療する方法もまた、本明細書に提供される。
【0065】
例えば、本明細書において、CFTR活性を増強する有効量の開示化合物を投与することを含む、CFTR活性の欠損または低下に関連する病態を治療する方法が提供される。CFTR活性の欠損に関連する病態の非限定的な例は、嚢胞性線維症、先天性両側輸精管欠損(CBAVD)、急性、反復性、または慢性膵炎、びまん性気管支拡張症、喘息、アレルギー性肺アスペルギルス症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの喫煙関連肺疾患、慢性副鼻腔炎、ドライアイ疾患、プロテインC欠損症、無β-リポタンパク質血症、リソソーム蓄積症、1型カイロミクロン血症、軽度肺疾患、脂質処理欠損症、1型遺伝性血管浮腫、凝固線維素溶解、遺伝性ヘモクロマトーシス、CFTR関連メタボリックシンドローム、慢性気管支炎、便秘、膵機能不全、遺伝性肺気腫、胆汁うっ滞性肝疾患(例えば、原発性胆汁性肝硬変症(PBC)及び原発性硬化性胆管炎(PSC))、ならびにシュトロイスラー・シャインカー症候群である。
【0066】
いくつかの実施形態では、開示された治療方法は、追加の治療剤を投与することを更に含む。例えば、実施形態では、開示された化合物及び少なくとも1つの追加の治療剤を投与する方法が、本明細書において提供される。ある特定の態様では、開示された治療方法は、開示された化合物、及び少なくとも2種の追加の治療剤を投与することを含む。追加の治療剤としては、例えば、粘液溶解剤、気管支拡張剤、抗生物質、抗感染剤、抗炎症剤、イオンチャネル調節剤、遺伝子治療に使用される治療剤、CFTR補正因子、及びCFTR増幅剤、またはCFTR活性を調節する他の薬剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の治療剤は、CFTR補正因子及びCFTR増幅剤からなる群から選択される。CFTR調節因子、補正因子、及び増幅剤の非限定的な例としては、VX-152、VX-440、VX-809(ルマカフトール)(3-(6-(1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミド)-3-メチルピリジン-2-イル)安息香酸、VX-661(1-(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-N-[1-[(2R)-2,3-ジヒドロキシプロピル]-6-フルオロ-2-(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-1H-インドール-5-イル]-シクロプロパンカルボキサミド)、VX-983、Ataluren(PTC124)(3-[5-(2-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]安息香酸)、FDL169、GLPG2222(例えば、CFTR補正因子)、GLPG2851、GLPG2665、GLPG2737、ならびに例えば、WO2014/144860及び2014/176553(参照により本明細書に組み込まれる)に記載される化合物が挙げられる。調節因子の非限定的な例としては、GLPG2451、GLPG1837、GLPG3067、QBW-251、QR-010、NB-124、リシクワット、ならびに例えば、WO2014/045283、WO2014/081821、WO2014/081820、WO2014/152213、WO2014/160440、WO2014/160478、US2014/027933、WO2014/0228376、WO2013/038390、WO2011/113894、WO2013/038386、及びWO2014/180562に記載される化合物が挙げられ、これらの刊行物中の開示された調節因子は、追加の治療剤として企図され、参照により組み込まれる。抗炎症剤の非限定例としては、N6022(3-(5-(4-(1H-イミダゾール-1-イル)フェニル)-1-(4-カルバモイル-2-メチルフェニル)-H-ピロール-2-イル)プロパン酸)、CTX-4430、N1861、N1785、及びN91115が挙げられる。
【0067】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、追加の治療剤を投与すること、または少なくとも2つの追加のCFTR治療剤を投与することを更に含むことができる。これらの治療剤は、N-(2,4-ジ-tert-ブチル-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド、例えば、N-(2,4-ジ-tert-ブチル-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミドとの同時投与に有用であることが知られている任意の治療剤と同じ作用機序を有する化合物とともに投与されるとき、有利な特性を有することが知られているか、または有利な特性を示す任意の化合物もしくは治療剤から選択され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される方法は、追加のCFTR調節因子を投与すること、または少なくとも2つの追加のCFTR調節因子を投与することを更に含んでもよい。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのCFTR調節因子は、CFTR補正因子(例えば、VX-809、VX-152、VX-440、VX-661、VX-445、VX-659、VX-983、FDL169、GLPG2851、GLPG2665、GLPG2737、及びGLPG2222)または増幅剤である。これらの実施形態のうちある特定のものにおいては、少なくとも2つの追加の治療剤の一方が、CFTR補正因子(例えば、VX-809、VX-661、及びVX-983)であり、もう一方が、CFTR増幅剤である。これらの実施形態のうちある特定のものにおいては、少なくとも2つの追加の治療剤の一方が、CFTR補正因子(例えば、GLPG2222)であり、もう一方が、CFTR増幅剤である。これらの実施形態のうちある特定のものにおいては、少なくとも2つの追加の治療剤の一方が、CFTR補正因子(例えば、VX-809またはVX-661)であり、もう一方が、CFTR増幅剤である。これらの実施形態のうちある特定のものにおいては、少なくとも1つのCFTR調節因子は、終止コドン(例えば、NB124またはアタルレン)のリードスルーを高める薬剤である。他の実施形態では、本明細書に記載される方法は、上皮性ナトリウムチャネル(ENaC)阻害剤(例えば、VX-371)を投与することを更に含むことができる。他の実施形態では、本明細書に記載される方法は、SHP-636を含む遺伝子治療またはRNA療法の投与を更に含むことができる。
【0068】
したがって、別の態様では、本開示は、CFTR活性の欠損または低下に関連する病態(例えば、嚢胞性線維症)を治療する方法を提供し、それを必要とする対象(例えば、それを必要とするヒト患者)に、有効量の開示化合物、及び少なくとも1種または2種の追加のCFTR治療剤(例えば、少なくとも1種または2種の追加のCFTR治療剤を投与することを含み、例えば、少なくとも1種または2種の追加のCFTR治療剤の一方は、任意にCFTR補正因子、調節因子、または増幅剤(例えば、VX-809、VX-661、VX-983、VX-445、VX-659、GLPG2222、NB124、アタルレン)であり、例えば少なくとも2種の追加の治療剤の一方は、GLPG2222であり、もう一方は、GLPG1837もしくはGLPG3067であるか、または少なくとも2種の追加の治療剤の一方は、VX-809もしくはVX-661である。追加の薬剤、例えば増幅剤は、各々が参照により組み込まれる同時係属中のPCT/US14/044100、PCT/US15/020460、PCT/US15/020499、及びPCT/US15/036691に開示されている。例えば、例示的な増幅剤は、N-(3-(5-(ヒドロキシメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)プロピル)-5-フェニルイソオキサゾール-3-カルボキサミド(「化合物A」)である。ある特定の実施形態では、対象のCFTR遺伝子型としては、限定されないが、1つ以上のクラスI CFTR突然変異、1つ以上のクラスII CFTR突然変異、1つ以上のクラスIII CFTR突然変異、1つ以上のクラスIV CFTR突然変異、または1つ以上のクラスV CFTR突然変異、または1つ以上のクラスVI CFTR突然変異が挙げられる。ある特定の実施形態では、対象のCFTR遺伝子型としては、限定されないが、1つ以上のホモ接合体突然変異(例えば、ΔF508/ΔF508もしくはR117H/R117H)及び/または1つ以上の化合物ヘテロ接合体突然変異(例えば、ΔF508/G551D、ΔF508/A455E、ΔF508/G542X、Δ508F/W1204X、R553X/W1316X、W1282X/N1303K、F508del/R117H、N1303K/3849+10kbC>T、ΔF508/R334W、DF508/G178R、及び591Δ18/E831X)が挙げられる。ある特定の実施形態では、対象のCFTR遺伝子型は、クラスI突然変異、例えばG542XクラスI突然変異、例えばΔF508/G542X化合物ヘテロ接合体突然変異を含む。他の実施形態では、対象のCFTR遺伝子型は、クラスIII突然変異、例えばG551DクラスIII突然変異、例えばΔF508/G551D化合物ヘテロ接合体突然変異を含む。更に他の実施形態では、対象のCFTR遺伝子型は、クラスV突然変異、例えばA455EクラスV突然変異、例えばΔF508/A455E化合物ヘテロ接合体突然変異を含む。ある特定の実施形態では、ΔF508CFTR活性及び/またはG542X CFTR活性及び/またはG551D CFTR活性及び/またはA455E活性が増強される(例えば、増加する)。ある特定の実施形態では、開示された化合物と、1種または2種の追加の治療剤との組み合わせによって提供される活性の増強(例えば、活性の増加)は、各治療成分によって個々に提供される活性の増強と比較して、添加剤より優れている。


【0069】
例えば、本明細書において、CFTR遺伝子において以下の突然変異、G1244E、G1349D、G178R、G551S、S1251N、S1255P、S549N、S549R、G970R、もしくはR117H、G551D、及び/またはG167Rのうちの1つ以上を有する患者、及び/あるいは例えば、F508del突然変異の1つもしくは2つのコピー、またはΔF508突然変異の1つのコピー及びCFTRタンパク質におけるゲーティング効果をもたらす第2の突然変異を有する患者(例えば、ΔF508及びG551D突然変異に対してヘテロ接合性である患者)、ΔF508突然変異の1つのコピー及び残存するCFTR活性をもたらす第2の突然変異を有する患者、またはΔF508突然変異の1つのコピー及び残存するCFTR活性をもたらす第2の突然変異を有する患者を治療する方法であって、有効量の開示された化合物を投与することを含む、方法が提供される。本明細書に記載されるように、そのような例示的方法(例えば、上記のような1つまたは複数の突然変異を有する患者の)は、例えば、そのような患者に併用療法を投与すること、例えば、該患者に、有効量のVX-661またはルマカフトール、及び有効量の、増強剤として作用し得る開示化合物または増幅剤として作用し得る開示化合物を(同時にまたは連続して)投与することを含み得る。そのような投与は、例えば、ルマカフトールまたはアイバカフトール単独の投与と比較して、例えば、突然変異(例えば、ΔF508突然変異)の1つまたは2つのコピーを有するヒト気管支上皮細胞における塩素輸送の増加をもたらし得る。開示された化合物を含む別の併用療法はまた、有効量のリードスルー剤(例えば、アタルレン、NB124)及び有効量の、増幅剤としてまたは補正因子として作用し得る開示された化合物を含んでもよい。
【0070】
本明細書で使用する場合、「併用療法」という語句は、患者が、開示された化合物、CFTR増幅剤、及び任意に1種以上のCFTR補正剤(例えば、VX-661及び/またはルマカフトール)を、これらの治療剤の相互作用から有益な効果を提供することを意図した特定の治療レジメンの一部として同時投与される実施形態を指す。例えば、組み合わせの有益な効果には、治療薬の組み合わせから生じる薬物動態的または薬力学的相互作用が含まれ得るが、これに限定されない。例えば、増幅剤単独またはCFTR補正剤(例えば、ルマカフトールもしくはVX-661)を用いた、開示化合物の投与は、補正剤(例えば、ルマカフトールもしくはVX-661)を単独で受ける細胞もしくはG551D突然変異を有する患者における塩素活性レベルと比較して、臨床改善(もしくはそれ以上)を達成する、機能レベルをもたらすことができる(例えば、ΔF508突然変異を有するHBE細胞もしくは患者における塩素活性により測定される)。開示された治療剤の併用投与は、典型的には、所定の期間(通常、選択された組み合わせに応じて、1日、数日、数週、数ヶ月、または数年)にわたって実行される。併用療法は、順次の複数の治療剤の投与(すなわち、各治療剤が異なる時間に投与される)、ならびにこれらの治療剤または少なくとも2つの治療剤の実質的に同時投与を包含することが意図される。実質的に同時の投与は、例えば、固定比の各治療剤を有する単一の錠剤もしくはカプセル、または治療剤の各々について複数の単一カプセルで対象に投与することによって達成することができる。各治療剤の順次投与または実質的同時投与は、経口的経路、吸入経路、静脈内経路、筋肉内経路、及び粘膜組織を介する直接的吸収を含むが、これらに限定されない任意の適切な経路によって行うことができる。治療剤は、同じ経路または異なる経路によって投与することができる。例えば、選択された組み合わせの第1の治療剤は、静脈内注射または吸入または噴霧器によって投与され得るが、その組み合わせの他の治療剤は、経口的に投与され得る。あるいは、例えば、全ての治療剤を経口投与してもよく、または全ての治療剤を静脈内注射、吸入、または噴霧によって投与してもよい。
【0071】
併用療法はまた、他の生物学的活性成分及び非薬物療法との更なる組み合わせにおいて、上記のような治療剤の投与を包含し得る。併用療法が非薬物治療を更に含む場合、非薬物治療は、治療剤の組み合わせと非薬物治療との併用の相互作用による有益な効果が達成される限り、任意の適切な時期に行われてもよい。例えば、適切な場合には、非薬物治療が治療薬の投与から一時的に、おそらく1日、数日、または更に数週間取り除かれても、有益な効果が依然として達成される。
【0072】
開示された組み合わせの成分は、同時にまたは順次に患者に投与されてもよい。成分は、同じ薬学的に許容される担体中に存在してもよく、したがって、同時に投与されることが理解されるであろう。あるいは、活性成分は、同時にまたは順次にいずれかで投与することができる別々の薬学的担体、例えば従来の経口剤形中に存在してもよい。
【0073】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩(複数可)」という用語は、開示組成物に使用される開示化合物中に存在し得る酸性基または塩基性基の塩を指す。本質的に塩基性である本組成物に含まれる化合物は、様々な無機酸及び有機酸と多種多様な塩を形成することができる。そのような塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩を調製するために使用され得る酸は、非毒性酸付加塩、すなわち薬理学的に許容されるアニオンを含有する塩を形成するものであり、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、塩素、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及びパモ酸塩(すなわち、1,1′-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩))塩が挙げられるが、これらに限定されない。本質的に酸性である本組成物に含まれる化合物は、様々な薬理学的に許容されるカチオンと塩基性塩を形成することができる。そのような塩の例としては、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、特にカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム、及び鉄塩が挙げられる。塩基性部分または酸性部分を含む本組成物に含まれる化合物はまた、様々なアミノ酸と薬学的に許容される塩を形成し得る。本開示の化合物は、酸性基及び塩基性基の両方、例えば、1つのアミノ基及び1つのカルボン酸基を含有し得る。そのような場合、化合物は、酸付加塩、双性イオン、または塩基塩として存在することができる。
【0074】
実施形態では、企図される方法は、例えば、本明細書に記載される化合物のプロドラッグ、例えば、式Iの化合物のプロドラッグ、またはその薬学的組成物を投与することを含み得る。
【0075】
「プロドラッグ」という用語は、インビボで変換されて、開示された化合物またはその化合物の薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を生じる化合物を指す。形質転換は、様々な場所(腸管内、または腸、血液、もしくは肝臓の通過時など)における様々な機序(エステラーゼ、アミダーゼ、ホスファターゼ、酸化的、及び/または還元的代謝など)によって起こり得る。プロドラッグは当該技術分野で周知である(例えば、Rautio,Kumpulainen,et al.,Nature Reviews Drug Discovery 2008,7,255を参照されたい)。例えば、本開示の化合物またはその化合物の薬学的に許容される塩、水和物、または溶媒和物が、カルボン酸官能基を含む場合、プロドラッグは、酸基の水素原子を、(C1~8)アルキル、(C2~12)アルキルカルボニルオキシメチル、4~9個の炭素原子を有する1-(アルキルカルボニルオキシ)エチル、5~10個の炭素原子を有する1-メチル-1-(アルキルカルボニルオキシ)-エチルシ)エチル、3~6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルオキシメチル、4~7個の炭素原子を有する1-(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、5~8個の炭素原子を有する1-メチル-1-(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、3~9個の炭素原子を有するN-(アルコキシカルボニル)アミノメチル、4~10個の炭素原子を有する1-(N-(アルコキシカルボニル)アミノ)エチル、3-フタリジル、4-クロトノラクトニル、γ-ブチロラクトン-4-イル、ジ-N,N-(C1~2)アルキルアミノ-(C2~3)アルキル(β-ジメチルアミノエチルなど)、カルバモイル-(C1~2)アルキル、N,N-ジ(C1~2)アルキルカルバモイル-(C1~2)アルキル、及びピペリジノ、ピロリジノ、またはモルホリノ(C2~3)アルキルなどの基と置き換えることによって形成されるエステルを含み得る。
【0076】
同様に、本開示の化合物がアルコール官能基を含有する場合、プロドラッグは、アルコール基の水素原子を、(C1~6)アルキルカルボニルオキシメチル、1-((C1~6)アルキルカルボニルオキシ)エチル、1-メチル-1-((C1~6)アルキルカルボニルオキシ)エチル、(C1~6)アルコキシカルボニルオキシ)メチル、N-(C1~6)アルコキシカルボニルアミノメチル、スクシノイル、(C1~6)アルキルカルボニル、α-アミノ(C1~4)アルキルカルボニル、アリールアルキルカルボニル、及びα-アミノアルキルカルボニル、またはα-アミノアルキルカルボニル-α-アミノアルキルカルボニルなどの基と置き換えることによって形成することができ、ここで、各α-アミノアルキルカルボニル基は、独立して、天然に存在するL-アミノ酸、P(O)(OH)、-P(O)(O(C1~6)アルキル)またはグリコシル(炭水化物のヘミアセタール形態のヒドロキシル基の除去から生じるラジカル)から選択される。
【0077】
本開示の化合物がアミン官能基を組み込む場合、プロドラッグは、例えば、アミドまたはカルバメート、N-アルキルカルボニルオキシアルキル誘導体、(オキソジオキソレニル)メチル誘導体、N-マンニッヒ塩基、イミン、またはエナミンの作成によって形成され得る。更に、第2級アミンは、代謝的に開裂して生物活性のある第1級アミンを生成することができるか、または第3級アミンは、代謝的に開裂して生物活性のある第1級または第2級アミンを生成することができる。例えば、Simplicio et al.,Molecules 2008,13,519及びその中の参考文献を参照されたい。
【0078】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される化合物の包接体、包接体を含む薬学的組成物の使用、及び包接体の使用方法もまた企図される。開示された化合物の包接体またはその薬学的組成物もまた、本明細書において企図される。
【0079】
上述のように、本開示はまた、薬学的に許容される担体または賦形剤及び本明細書に記載される化合物を含む薬学的組成物の投与を企図する。開示された化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体、もしくはプロドラッグは、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む薬学的組成物で投与することができる。賦形剤は、治療用途における組成物の予想される投与経路に基づいて選択することができる。組成物の投与経路は、治療すべき病態に依存する。例えば、静脈内注射は、全身性障害の治療に適しており、経口投与は、胃腸障害を治療するのに適している場合がある。投与経路及び投与される組成物の投与量は、標準用量反応試験と併せて過度の実験をすることなく、当業者により決定され得る。それらの決定を行う際に考慮すべき関連状況には、治療すべき1種または複数種の病態、投与される組成物の選択、個々の患者の年齢、体重、及び応答、ならびに患者の症状の重篤度が含まれる。開示された化合物、または薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体、もしくはプロドラッグを含む薬学的組成物は、非経口、経口、肺、眼、鼻、直腸、膣、耳、局所、頬、経皮、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、眼内、脳内、リンパ内、関節内、髄腔内、及び腹腔内を含むが、これらに限定されない種々の経路によって投与され得る。組成物はまた、所望の製剤に依存して、動物またはヒト投与のための薬学的組成物を製剤化するために一般に使用されるビヒクルとして定義される、薬学的に許容される非毒性の担体または希釈剤を含み得る。希釈剤は、薬理学的作用剤または組成物の生物活性に影響を与えないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、生理学的リン酸緩衝化生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、及びハンクス溶液である。更に、薬学的組成物または製剤は、他の担体、アジュバント、または非毒性、非治療的、非免疫原性安定剤などを含むこともできる。薬学的組成物はまた、大きくてゆっくりと代謝された巨大分子、例えばタンパク質、キトサンなどの多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びコポリマー(ラテックス官能化SEPHAROSE(商標)、アガロース、セルロースなど)、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、及び脂質凝集体(油滴またはリポソームなど)を含むことができる。
【0080】
開示される組成物は、例えば、静脈内、筋肉内、髄腔内、または皮下注射など、非経口的に投与することができる。非経口投与は、組成物を溶液または懸濁液に組み込むことによって達成することができる。そのような溶液または懸濁液はまた、注射用水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの滅菌希釈剤を含み得る。非経口製剤はまた、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤、例えばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、及びEDTAなどのキレート剤を含むことができる。酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩などの緩衝剤、及び塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張性調整剤が添加されてもよい。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器、または複数回投与バイアルに封入することができる。
【0081】
更に、補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質などを組成物中に存在させることができる。薬学的組成物の他の成分は、石油、動物、植物、または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、及び鉱物油である。一般に、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールは、特に注射溶液のための適切な液体担体である。
【0082】
注射用製剤は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして調製することができ、注射前の液体ビヒクル中の溶液または懸濁液に適した固体形態もまた調製することができる。調製物はまた、上記のように、アジュバント効果を高めるために、ポリラクチド、ポリグリコリド、またはコポリマーなどのリポソームまたはミクロ粒子に乳化またはカプセル化することもできる[Langer,Science 249:1527,1990及びHanes,Advanced Drug Delivery Reviews 28:97-119,1997]。本明細書に記載される組成物及び薬理学的作用剤は、活性成分の持続放出または拍動放出を可能にするように配合され得る、デポー注射またはインプラント調製物の形態で投与され得る。
【0083】
他の投与様式に適した追加の製剤には、経口、鼻腔内、及び肺製剤、座薬、経皮適用、及び眼内送達が含まれる。坐剤の場合、結合剤及び担体には、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが含まれ、そのような坐剤は、約0.5%~約10%、または約1%~約2%の範囲の活性成分を含有する混合物から形成することができる。経口製剤には、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、及び炭酸マグネシウムなどの賦形剤が含まれる。局所適用は、経皮または皮内送達をもたらし得る。経皮送達は、皮膚パッチを使用するか、またはトランスフェロソームを使用して達成することができる。[Paul et al.,Eur.J.Immunol.25:3521-24,1995、Cevc et al.,Biochem.Biophys.Acta 1368:201-15,1998]。
【0084】
経口治療投与の目的で、薬学的組成物は、賦形剤とともに組み込まれ、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハー、チューインガムなどの形態で使用され得る。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどはまた、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、甘味剤、及び香味剤を含有してもよい。結合剤のいくつかの例としては、微結晶性セルロース、トラガカントガム、またはゼラチンが挙げられる。賦形剤の例としては、デンプンまたはラクトースが挙げられる。崩壊剤のいくつかの例としては、アルギン酸、コーンスターチなどが挙げられる。潤滑剤の例としては、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カリウムが挙げられる。流動促進剤の例は、コロイド状二酸化ケイ素である。甘味剤のいくつかの例としては、スクロース、サッカリンなどが挙げられる。香味剤の例としては、ペパーミント、メチルサリチレート、オレンジフレーバーなどが挙げられる。これらの種々の組成物を調製する際に使用される材料は、薬学的に純粋であり、使用される量で非毒性でなければならない。別の実施形態では、組成物は、錠剤またはカプセルとして投与される。
【0085】
種々の他の材料が、コーティングとして、または投与単位の物理的形態を改変するために存在し得る。例えば、錠剤は、シェラック、糖、または両方でコーティングされてもよい。シロップまたはエリキシルは、活性成分に加えて、甘味剤としてのスクロース、防腐剤としてのメチル及びプロピルパラベン、色素、ならびにチェリーまたはオレンジフレーバーなどの香味料を含んでもよい。膣内投与の場合、薬学的組成物は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡体、またはスプレーとして提供され得る。
【0086】
薬学的組成物はまた、経鼻投与によって投与することもできる。本明細書で使用されるように、経鼻的投与または経鼻投与は、組成物を患者の鼻通路または鼻腔の粘膜に投与することを含む。本明細書で使用されるように、組成物の経鼻投与のための薬学的組成物は、例えば、鼻スプレー、点鼻薬、懸濁液、ゲル、軟膏、クリーム、または粉末として投与される周知の方法によって調製される治療有効量の化合物を含む。組成物の投与は、鼻用タンポンまたは鼻用スポンジを用いて行うこともできる。
【0087】
局所投与の場合、適切な製剤は、生体適合性の油、蝋、ゲル、粉末、ポリマー、または他の液体もしくは固体の担体を含み得る。そのような製剤は、罹患組織に直接適用することによって投与されてもよく、例えば、結膜組織の感染を治療するための液体製剤を、対象の眼に滴下して投与することができるか、またはクリーム製剤を、皮膚に投与することができる。
【0088】
直腸投与は、薬学的組成物を直腸または大腸に投与することを含む。これは、坐剤または浣腸剤を用いて達成することができる。坐薬製剤は、当該技術分野で知られている方法によって容易に作製することができる。例えば、坐剤製剤は、グリセリンを約120℃に加熱し、薬学的組成物をグリセリンに溶解させ、加熱したグリセリンを混合した後に精製水を添加し、熱混合物を坐剤の型に注入することによって調製することができる。
【0089】
経皮投与は、皮膚を通しての組成物の経皮吸収を含む。経皮製剤には、パッチ、軟膏、クリーム、ゲル、膏薬などが含まれる。
【0090】
本開示の目的のために、主な機能が外部環境とのガス交換である任意の部分、組織、または器官に本明細書に記載される製剤を投与する通常の意味に加えて、「肺の」はまた、気道、特に、副鼻腔に付随している組織または空洞を含むことを意味する。肺投与の場合、活性薬剤を含有するエアロゾル製剤、手動ポンプスプレー、噴霧器、または加圧式定量吸入器、ならびに乾燥粉末製剤が企図される。この種の適切な製剤はまた、開示された化合物を有効なエアロゾルとして維持するために、帯電防止剤などの他の薬剤を含むことができる。
【0091】
エアロゾルを送達するための薬物送達装置は、記載の薬学的エアロゾル製剤を含む計量弁を有する適切なエアロゾルキャニスタと、キャニスタを保持し、薬物送達を可能にするアクチュエータハウジングとを含む。薬物送達装置のキャニスタは、キャニスタの全容積の約15%超を占める頭部空間を有する。しばしば、肺投与が意図される化合物は、溶媒、界面活性剤、及び噴射剤の混合物に溶解、懸濁、または乳化される。混合物は、計量弁で密封されたキャニスタ内で加圧下に維持される。
【0092】
本開示はまた、対象におけるプロテオスタシスの機能不全に関連する病態の治療を包含し、タンパク質のプロテオスタシスを増強、改善、または回復させる有効量の開示化合物を該対象に投与することを含む。プロテオスタシスは、タンパク質ホメオスタシスを指す。タンパク質ホメオスタシスの機能不全は、タンパク質ミスフォールディング、タンパク質凝集、タンパク質輸送またはタンパク質分解の欠陥の結果である。例えば、本開示は、開示された化合物、例えばタンパク質ミスフォールディングを補正し、タンパク質凝集を減少させ、タンパク質輸送を補正もしくは回復し、かつ/またはプロテオスタシスにおける機能不全に関連する病態の治療のためのタンパク質分解に影響を及ぼす、式Iを投与することを企図する。いくつかの態様では、開示された化合物、例えば、タンパク質ミスフォールディングを補正する、及び/またはタンパク質輸送を補正もしくは回復する、式Iが投与される。嚢胞性線維症では、突然変異酵素または欠陥酵素は、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス制御因子(CFTR)である。このタンパク質の最も一般的な突然変異の1つは、タンパク質上の508位(508)におけるアミノ酸フェニルアラニン(F)の欠損をもたらす3つのヌクレオチドの欠失(Δ)である、ΔF508である。上記のように、突然変異嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子は、ミスフォールド状態で存在し、野生型CFTRと比較して変化した輸送を特徴とする。例えば、ミスフォールド状態で存在することができる、プロテオスタシスにおいて機能不全であり得る、追加の例示的なタンパク質としては、グルコセレブロシダーゼ、ヘキソサミンA、アスパルチルグルコサミニダーゼ、α-ガラクトシダーゼA、システイン輸送体、酸性セレジナーゼ、酸α-L-フコシダーゼ、保護タンパク質、カテプシンA、酸β-グルコシダーゼ、酸β-ガラクトシダーゼ、イズロン酸2-スルファターゼ、α-L-イズロニダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、酸α-マンノシダーゼ、酸β-マンノシダーゼ、アリールスルファターゼB、アリールスルファターゼA、N-アセチルガラクトサミン-6-硫酸スルファターゼ、酸β-ガラクトシダーゼ、N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ、酸スフィンゴミエリナーゼ、NPC-1、酸α-グルコシダーゼ、β-ヘキソサミンB、ヘパリンN-スルファターゼ、α-N-アセチルグルコサミニダーゼ、α-グルコシダーゼN-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-硫酸スルファターゼ、α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ、α-ノイラミダーゼ、β-グルクロニダーゼ、β-ヘキソサミンA、及び酸リパーゼ、ポリグルタミン、α-シヌクレイン、TDP-43、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、無βペプチド、タウタンパク質、トランスサイレチン、及びインスリンが挙げられるが、これらに限定されない。式Iの化合物は、上記のタンパク質のプロテオスタシスを回復する(例えば、フォールディングを補正する、及び/または輸送を変更する)ために使用することができる。
【0093】
タンパク質立体配座疾患は、機能獲得型障害及び機能喪失型障害を包含する。一実施形態では、タンパク質立体配座疾患は、機能獲得型障害である。「機能獲得型障害」、「機能獲得型疾患」、「毒性機能獲得型障害」、及び「毒性機能獲得型疾患」という用語は、本明細書中では互換的に使用される。機能獲得型障害は、凝集関連のタンパク質毒性の増大を特徴とする疾患である。これらの疾患では、凝集は、細胞の内部及び/または外部のクリアランスを超える。機能獲得型疾患としては、ポリグルタミンの凝集に関連する神経変性疾患、レビー小体病、筋萎縮性側索硬化症、トランスサイレチン関連凝集疾患、アルツハイマー病、マシャド・ジョセフ病、脳B-アミロイド血管症、網膜神経節細胞変性症、タウオパシー(進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、前頭側頭葉変性症)、アミロイドーシスを伴う脳出血、アレクサンダー病、セルピン病(Serpinopathies)、家族性アミロイド性神経障害、老人性全身性アミロイドーシス、ApoAIアミロイドーシス、ApoAIIアミロイドーシス、ApoAIVアミロイドーシス、フィンランド型の家族性アミロイドーシス、リゾザイムアミロイドーシス、フィブリノーゲンアミロイドーシス、透析アミロイドーシス、封入体筋炎/ミオパチー、白内障、髄様甲状腺癌、心房性アミロイドーシス、下垂体プロラクチノーマ、遺伝性格子角膜ジストロフィー、皮膚苔癬アミロイドーシス、角膜ラクトフェリンアミロイドーシス、肺胞タンパク症、歯腹性腫瘍アミロイド、精嚢アミロイド、鎌状赤血球症、重症疾患ミオパチー、フォンヒッペル・リンダウ病、脊髄小脳失調1、アンジェルマン症候群、巨大軸索ニューロパチー、骨のパジェット病を伴う封入体ミオパチー、前頭側頭型痴呆(IBMPFD)、及びプリオン病が挙げられるが、これらに限定されない。ポリグルタミンの凝集に関連する神経変性疾患としては、ハンチントン病、歯状核及び淡蒼球萎縮症、脊髄小脳運動失調のいくつかの形態、ならびに脊髄及び球筋萎縮が挙げられるが、これらに限定されない。アルツハイマー病は、無βペプチドの細胞外凝集体及び微小管関連タンパク質タウの細胞内凝集体の2種類の凝集体の形成を特徴とする。トランスサイレチン関連凝集疾患としては、例えば、老人性全身性アミロイドーシス及び家族性アミロイド性神経障害が挙げられる。レビー小体疾患は、α-シヌクレインタンパク質の凝集を特徴とし、例えば、パーキンソン病、レビー小体認知症(LBD)、及び多系統萎縮症(SMA)が挙げられる。プリオン病(伝達性海綿状脳症またはTSEとしても知られる)は、プリオンタンパク質の凝集を特徴とする。例示的なヒトプリオン病は、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、変異体クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトラウスラー・シャインカー症候群、致死性家族性不眠症、及びクルである。別の実施形態では、ミスフォールドタンパク質は、α-1抗トリプシンである。
【0094】
さらなる実施形態では、タンパク質立体配座疾患は、機能喪失型障害である。「機能喪失型疾患」及び「機能喪失型障害」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。機能喪失型疾患は、タンパク質の過剰な分解をもたらす、タンパク質の非効率的なフォールディングを特徴とする疾患群である。機能喪失型疾患には、例えば、リソソーム蓄積症が含まれる。リソソーム蓄積症は、様々な組織で起こり得る特定のリソソーム酵素欠損を特徴とする疾患群であり、その結果、欠損酵素によって通常分解される分子の蓄積をもたらす。リソソーム酵素欠損は、リソソーム加水分解酵素またはリソソーム輸送に関与するタンパク質に存在し得る。リソソーム蓄積症としては、アスパルチルグルコサミン尿症、ファブリー病、バッテン病、シスチン症、ファーバー、フコシドーシス、ガラクタシドシアリドーシス、ゴーシェ病(1型、2型、及び3型を含む)、Gm1ガングリオシドーシス、ハンター病、ハーラー・シャイエ病、クラッブ病、α-マンノシドーシス、β-マンノシドーシス、マロト・ラミー病、異染性白質ジストロフィー、モルキオA症候群、モルキオB症候群、ムコリピドーシスII、ムコリピドーシスIII、ネイマン・ピック病(A型、B型、及びC型を含む)、ポンペ病、サンドホフ病、サンフィリポ症候群(A型、B型、C型、及びD型を含む)、シンドラー病、シンドラー・神崎病、シアリドーシス、スライ症候群、タイ・サック病、ならびにウォルマン病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
別の実施形態では、プロテオスタシスにおける機能不全に関連する疾患は、心臓血管疾患である。心臓血管疾患としては、冠動脈疾患、心筋梗塞、卒中、再狭窄、及び動脈硬化が挙げられるが、これらに限定されない。プロテオスタシスの機能不全に関連する病態としては、虚血/再灌流傷害、心筋虚血、安定狭心症、不安定狭心症、卒中、虚血性心疾患、及び脳虚血などの虚血病態も含まれる。
【0096】
更に別の実施形態では、糖尿病及び/または糖尿病の合併症(糖尿病性網膜症、心筋症、神経障害、腎症、及び創傷治癒の障害を含むが、これらに限定されない)である、プロテオスタシスの機能不全に関連する病態の治療が企図される。
【0097】
更なる実施形態では、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、糖尿病性網膜症、緑内障、白内障、網膜色素変性(RP)、及び乾性黄斑変性症を含むが、これらに限定されない眼性疾患である、プロテオスタシスの機能不全に関連する病態の治療が企図される。
【0098】
更に別の実施形態では、開示された方法は、プロテオスタシスの機能不全に関連する疾患を治療することを対象とし、該疾患は、呼吸器系または膵臓に影響を及ぼす。ある特定の追加の実施形態では、企図される方法は、多発性内分泌障害/高インスリン血症、真性糖尿病、シャルコー・マリー・トゥース症候群、ペリザエウス・メルツバッハー病、及びゴーラム症候群からなる群から選択される病態を治療することを包含する。
【0099】
プロテオスタシスの機能不全に関連する更なる病態としては、ヘモグロビン症、炎症性疾患、中間フィラメント病、薬物誘発肺障害、及び難聴が挙げられる。例えば、本明細書において、ヘモグロビン症(鎌状赤血球貧血など)、炎症性疾患(炎症性腸疾患、大腸炎、強直性脊椎炎など)、中間フィラメント病(非アルコール性及びアルコール性脂肪肝疾患など)、及び薬物誘発性肺損傷(メトトレキセート誘発性肺損傷など)の治療のための方法が提供される。別の実施形態では、開示された化合物を投与することを含む、騒音性難聴、アミノグリコシド誘発性難聴、及びシスプラチン誘発性難聴などの難聴を治療するための方法が提供される。
【0100】
追加の病態としては、タンパク質輸送における欠陥に関連するもの、及び開示された方法により治療され得るものが挙げられ、すなわちPGP突然変異、hERG輸送突然変異、アルギニン-バソプレッシン受容体2における腎不全糖尿病尿崩症突然変異、スルホニル尿素受容体1及びα1ATにおける乳児(PHH1)突然変異の持続性高インスリン血症低血糖が挙げられる。
【0101】
本開示は、以下の実施例によって例示され、これらの実施例は決して限定することを意味しない。
【0102】
例示
本明細書に記載される化合物は、本明細書に含まれる教示及び当該技術分野で知られている合成手順に基づいて、多くの方法で調製することができる。以下に記載する合成方法の説明において、溶媒、反応雰囲気、反応温度、実験期間、及び後処理手順の選択を含む提案された反応条件の全ては、別途指示されない限り、その反応に標準の条件となるように選択することができることを理解されたい。有機合成の当業者には、分子の様々な部分に存在する官能基が、提案された試薬及び反応と適合しなければならないことが理解される。反応条件に適合しない置換基は当業者には明らかであり、したがって代替方法が示される。実施例のための出発物質は、市販されているか、または既知の材料から標準的な方法によって容易に調製される。本明細書における「中間体」として同定された化合物の少なくともいくつかは、本開示の化合物として企図される。
【0103】
一般的な手順:
本発明の化合物の調製のための一般的な手順は、スキームI~IVに概説されている。開示された化合物は、例えば適切に置換されたシリル試薬と、適切に官能化されたフェノール誘導体との遷移金属触媒カップリング、その後のニトロ還元及びアミドカップリング(スキームI)を介して、または適切に置換されたシリル試薬と、適切に官能化されたキノロンカルボキサミドとの遷移金属触媒カップリングを介して調製されてもよい(スキームII~IV)。


略語の一覧
【0104】
実施例1:N-[2-tert-ブチル-5-ヒドロキシ-4-(トリメチルシリル)フェニル]-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物1)の調製
A.2-ブロモ-4-tert-ブチルフェニルメチルカーボネート。500mLの丸底フラスコに、DCM(900mL)中の2-ブロモ-4-tert-ブチルフェノール(60g、263.1mmol)、TEA(53.145g、525mmol)、及びDMAP(321mg、26.31mmol)の溶液を入れ、次いでこの溶液を0℃に冷却し、メチルクロロホルメート(29.7g、315mmol)を、撹拌しながら滴下添加した。反応物を0℃で5時間撹拌し、500mLの水/氷の添加によりクエンチし、DCM(3×500mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣を、EtOAc/石油エーテル(1:100~2:100)で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、60.6gの表題化合物を淡黄色油として得た。
【0105】
B.2-ブロモ-4-tert-ブチル-5-ニトロフェニルメチルカーボネート。0℃に冷却した濃縮硫酸(500mL)に、2-ブロモ-4-tert-ブチルフェニルメチルカーボネート(20g、69.9mmol、前の工程で調製したもの)を少量ずつ添加した。添加の完了後、KNO(8.474g、83.9mmol)を、温度を0℃より下に維持する速度で少量ずつ添加した。反応物を室温で2時間撹拌し、次いで100mLの水/氷に注ぎ、DCM(3×100mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣を、EtOAc/石油エーテル(1:9)で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、20gの表題化合物を淡黄色油として得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.80(s,1H)、7.31(s,1H)、5.32(s,1H)、4.00(s,3H)、1.48(s,9H)。
【0106】
C.4-tert-ブチル-5-ニトロ-2-(トリメチルシリル)フェノール。窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した40mLのバイアルに、DMPU(10mL)中の2-ブロモ-4-tert-ブチル-5-ニトロフェニルメチルカーボネート(1g、3.01mmol、前の工程で調製したもの)、ヘキサメチルジシラン(8.8g、60mmol)、Pd(dba)・CHCl(155mg、0.15mmol)、JohnPhos(134mg、0.45mmol)、及びKF/Al(50%、1.205g)の溶液を入れた。反応物を110℃で6時間撹拌し、次いで室温に冷却し、濾過した。濾液を100mLの水で希釈し、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。この反応を更に49回繰り返し、合わせた粗産物を、EtOAc/石油エーテル(1:20)で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、30gの4-tert-ブチル-5-ニトロ-2-(トリメチルシリル)フェノールを黄色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C1322NOSiの計算値:268.1(M+H)、実測値:268.1。
【0107】
D.5-アミノ-4-tert-ブチル-2-(トリメチルシリル)フェノール。500mLの丸底フラスコに、MeOH/THF(80/80mL)中の4-tert-ブチル-5-ニトロ-2-(トリメチルシリル)フェノール(10g、37.5mmol、前の工程で調製したもの)及びNi(OAc)(10g、56.8mmol)の溶液を入れ、次いでこの溶液を0℃に冷却し、NaBH(5g、132mmol)を少量ずつ添加した。反応物を室温で30分間撹拌し、次いで固体を濾過により除去した。濾液を300mLの飽和NHCl水溶液で抽出し、EtOAc(3×300mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、次いで150mLのDMFで希釈した。得られた溶液を減圧下で濃縮して低沸点の溶媒を除去し、表題化合物のDMF溶液を得て、これを次の工程で直接使用した。この反応を更に2回繰り返し、3つのバッチを合わせた。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C1324NOSiの計算値:238.2(M+H)、実測値:238.2。
【0108】
E.N-[2-tert-ブチル-5-ヒドロキシ-4-(トリメチルシリル)フェニル]-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド。1Lの丸底フラスコに、DMF中の5-アミノ-4-tert-ブチル-2-(トリメチルシリル)フェノールの溶液(450mL、前の工程で調製したもの)を入れ、次いで4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸(21g、0.11mol)、HATU(50g、0.13mol)及びTEA(33g、0.33mol)を添加した。反応物を室温で48時間撹拌し、次いで300mLの水で希釈し、EtOAc(3×300mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗産物を、分取HPLC(HPLC-10:カラム、X Bridge C18 OBD分取カラム、19mm×250mm、移動相、水(10mmol/L NHHCO)及びMeCN(70% MeCN、6分で90%まで)、検出器、UV 254/220nm)により精製して、5.13gの表題化合物を白色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C2329Siの計算値:409.2(M+H)、実測値:409.1。H NMR(300MHz,DMSO-d):δ12.90(s,1H)、11.91(s,1H)、9.28(s,1H)、8.88(s,1H)、8.35~8.32(m,1H)、7.82~7.74(m,2H)、7.55~7.49(m,1H)、7.26(s,1H)、7.16(s,1H)、1.39(s,9H)、0.25(s,9H)。HPLC純度(254nm):96.2%。
【0109】
実施例2:N-[2-tert-ブチル-4-(エチルジメチルシリル)-5-ヒドロキシフェニル]-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物2)の調製
A.4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボニルクロリド。500mLの丸底フラスコに、DCM(250mL)、TEA(6.4g、63.25mmol)中の4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸(6g、31.72mmol)の溶液を入れ、次いでこの溶液を0℃に冷却し、塩化チオニル(7.49g)を撹拌しながら滴下添加した。反応物を50℃で2時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮して5.5gの表題化合物を白色固体として得た。
【0110】
B.3-アミノ-4-tert-ブチルフェニルメチルカーボネート。500mLの丸底フラスコに、MeOH(300mL)中の2-ブロモ-4-tert-ブチル-5-ニトロフェニルメチルカーボネート(10g、30.11mmol、実施例1、工程Bで調製したもの)の溶液を入れ、次いで炭素上のPd(1g)を添加した。得られた溶液を脱気し、H(5atm)で逆充填し、室温で16時間撹拌した。Hをパージし、次いで固体を濾過により除去した。濾液を減圧下で濃縮して、6.3gの表題化合物を褐色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C1218NO の計算値:224.1(M+H)、実測値:224.1。
【0111】
C.5-アミノ-4-tert-ブチル-2-ヨードフェニルメチルカーボネート。100mLの丸底フラスコに、DMF(40mL)中の3-アミノ-4-tert-ブチルフェニルメチルカーボネート(6.3g、28.22mmol、前の工程で調製したもの)及びNIS(4.5g、20.00mmol)の溶液を入れた。反応物を室温で1.5時間撹拌し、50mLの水の添加によりクエンチし、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、減圧下で濃縮した。残渣を、EtOAc/石油エーテル(1:2)で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、9.1gの表題化合物を褐色油として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C1217INO の計算値:350.0(M+H)、350.0。
【0112】
D.4-tert-ブチル-2-ヨード-5-(4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-アミド)フェニルメチルカーボネート。250mLの丸底フラスコに、DCM(100mL)中の5-アミノ-4-tert-ブチル-2-ヨードフェニルメチルカーボネート(3.49g、10.00mmol、前の工程で調製したもの)及びDIEA(3.225g、24.95mmol)の溶液を入れ、次いで4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボニルクロライド(4.14g、19.94mmol、工程Aで調製したもの)を添加した。反応物を室温で2日間撹拌し、次いで水(3×50mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣を、DCM/MeOH(20:1)で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、1.2gの表題化合物を褐色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C2222IN の計算値:521.1(M+H)、実測値:521.0。
【0113】
E.N-[2-tert-ブチル-4-(エチルジメチルシリル)-5-ヒドロキシフェニル]-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド。窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した8mLの密封管に、DMPU(2.5mL)中の4-tert-ブチル-2-ヨード-5-(4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-アミド)フェニルメチルカーボネート(200mg、0.38mmol、前の工程で調製したもの)の溶液を入れ、次いでエチルジメチルシラン(136mg、1.54mmol)、[Rh(cod)]BF(8mg、0.02mmol)、及びKPO(123mg、0.58mmol)を添加した。反応物を60℃で16時間撹拌し、次いで室温に冷却し、濾過した。濾液を50mLの水で希釈し、次いでEtOAc(3×50mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗産物を、分取HPLC(HPLC-10:カラム、X Bridge C18 OBD分取カラム、10μm、19mm×250mm、移動相、水(10mmol/L NHHCO)及びMeCN(60.0% MeCN、10分で81.0%まで)、検出器、UV 254/220nm)により精製して、12.7mgの表題化合物を灰色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C2431Siの計算値:423.2(M+H)、実測値:423.2。H NMR(400MHz,DMSO-d):δ12.90(d,J=6.8Hz,1H)、11.90(s,1H)、9.25(s,1H)、8.70(d,J=6.4Hz,1H)、8.33(d,J=8.4Hz,1H)、7.90~7.70(m,2H)、7.52(t,J=7.6Hz,1H)、7.25(s,1H)、7.16(s,1H)、1.39(s,9H)、0.94(t,J=7.6Hz,3H)、0.76(q,J=7.6Hz,2H)、0.22(s,6H)。HPLC純度(254nm):96.9%。
【0114】
実施例3:N-[2-tert-ブチル-4-[ジエチル(メチル)シリル]-5-ヒドロキシフェニル]-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物3)の調製
A.N-[2-tert-ブチル-4-[ジエチル(メチル)シリル]-5-ヒドロキシフェニル]-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド。窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した20mLの密封管に、DMPU(2.5mL)中の4-tert-ブチル-2-ヨード-5-(4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-アミド)フェニルメチルカーボネート(200mg、0.38mmol、実施例2、工程Dで調製したもの)の溶液を入れ、次いでジエチル(メチル)シラン(157mg、1.54mmol)、[Rh(cod)]BF(7.8mg、0.02mmol)及びKPO(123mg、0.58mmol)を添加した。反応物を60℃で16時間撹拌し、次いで室温に冷却し、濾過した。濾液を50mLの水で希釈し、次いでEtOAc(3×50mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗産物を、分取HPLC(HPLC-10:カラム、X Bridge C18 OBD分取カラム、10μm、19mm×250mm、移動相、水(10mmol/L NHHCO)及びMeCN(63.0%MeCN、10分で85.0%まで)、検出器、UV 254/220nm)により精製し、20.2mgの表題化合物を灰色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C2533Siの計算値:437.2(M+H)、実測値:437.2。H NMR(400MHz,DMSO-d):δ12.90(d,J=6.4Hz,1H)、11.90(s,1H)、9.23(s,1H)、8.87(d,J=6.8Hz,1H)、8.33(d,J=8.0Hz,1H)、7.90~7.70(m,2H)、7.52(t,J=7.6Hz,1H)、7.25(s,1H)、7.17(s,1H)、1.39(s,9H)、0.94(t,J=8.0Hz,6H)、0.77(q,J=7.6Hz,4H)、0.20(s,3H)。HPLC純度(254nm):98.7%。
【0115】
実施例4:N-(2-(tert-ブチル)-5-ヒドロキシ-4-(トリエチルシリル)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物4)の調製
A.5-アミノ-2-ブロモ-4-tert-ブチルフェニルメチルカーボネート。100mLの丸底フラスコに、THF/AcOH(60/15mL)中の2-ブロモ-4-tert-ブチル-5-ニトロフェニルメチルカーボネート(3.3g、10mmol、実施例1、工程Bで調製したもの)の溶液を入れ、次いでFe(2.8g、50mmol)を添加した。反応物を室温で5時間撹拌し、次いで固体を濾過により除去した。濾液を減圧下で濃縮した。残渣を、EtOAc/石油エーテル(1:10)で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、2.6gの表題化合物を黄色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C1217BrNO の計算値:302.0(M+H)、実測値:302.1。
【0116】
B.2-ブロモ-4-tert-ブチル-5-(4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド)フェニルメチルカーボネート。100mLの丸底フラスコに、DMF(20mL)中の5-アミノ-2-ブロモ-4-tert-ブチルフェニルメチルカーボネート(1.5g、5mmol、前の工程で調製したもの)の溶液を入れ、次いで4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸(1.5g、7.5mmol)、HATU(2.9g、7.5mmol)、及びDIEA(19g、15mmol)を添加した。反応物を室温で16時間撹拌し、次いで100mLの水で希釈し、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣を、EtOAc/石油エーテル(1:5)で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、1.4gの表題化合物を灰色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C2222BrN の計算値:473.1(M+H)、実測値:473.2。
【0117】
C.N-(2-(tert-ブチル)-5-ヒドロキシ-4-(トリエチルシリル)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド。窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した20mLの密封管に、DMPU(4.5mL)中の2-ブロモ-4-tert-ブチル-5-(4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-アミド)フェニルメチルカーボネート(600mg、1.27mmol、前の工程で調整したもの)の溶液を入れ、次いでPd(dba)・CHCl(39mg、0.04mmol)、JohnPhos(57mg、0.19mmol)、KF/Al(50%、737mg、12.71mmol)、及びトリエチルシラン(589mg、5.07mmol)を添加した。反応物を90℃で16時間撹拌し、室温に冷却し、濾過した。濾液を100mLの水で希釈し、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗産物を、分取HPLC(HPLC-10:カラム、X Select CSH分取C18 OBDカラム、5μm、19×150mm、移動相、水(10mmol/L NHHCO)、及びMeCN(50.0% MeCN、1分で76.0%まで、7分で95.0%まで)、検出器、UV254/220nm)により精製して、8.6mgの表題化合物を白色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C2635Siの計算値:451.2(M+H)、実測値:451.3。H NMR(400MHz,DMSO-d):δ12.94(brs,1H)、12.02(s,1H)、8.91(s,1H)、8.33(d,J=7.2Hz,1H)、7.85~7.70(m,2H)、7.51(t,J=8.0Hz,1H)、7.34(d,J=2.8Hz,1H)、7.25(d,J=8.8Hz,1H)、6.63(dd,J=2.8,8.4Hz,1H)、1.41(s,9H)、0.96(t,J=8.0Hz,9H)、0.73(q,J=8.0Hz,6H)。HPLC純度(254nm):95.7%。
【0118】
実施例5:N-(2-tert-ブチル-4-(tert-ブチルジメチルシリル)-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物5)の調製
A.N-(2-tert-ブチル-4-(tert-ブチルジメチルシリル)-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド。窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した20mLの密封管に、DMPU(4mL)中の2-ブロモ-4-tert-ブチル-5-(4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド)フェニルメチルカーボネート(300mg、0.63mmol、実施例4、工程Bで調製したもの)の溶液を入れ、ジメチル(プロパン-2-イル)シラン(294mg、2.53mmol)、[Rh(cod)]BF(13mg、0.03mmol)、及びKPO(200mg、0.95mmol)を添加した。反応物を90℃で72時間撹拌し、室温に冷却し、濾過した。濾液を50mLの水で希釈し、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗産物を、分取HPLC(HPLC-10:カラム、X Bridge C18 OBD分取カラム、10μm、19mm×250mm、移動相、水(10mmol/L NHHCO)及びMeCN(60.0% MeCN、8分で80.0%まで)、検出器、UV 254/220nm)により精製して、11.4mgの表題化合物を白色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C2635Siの計算値:451.2(M+H)、実測値:451.3。H NMR(400MHz,DMSO-d):δ12.89(s,1H)、11.91(s,1H)、9.20(s,1H)、8.87(s,1H)、8.33(d,J=7.2Hz,1H)、7.90~7.70(m,2H)、7.52(t,J=7.2Hz,1H)、7.27(s,1H)、7.19(s,1H)、1.39(s,9H)、0.90(s,9H)、0.26(s,9H)。HPLC純度(254nm):97.2%。
【0119】
実施例6:N-[2-tert-ブチル-4-[ジメチル(プロパン-2-イル)シリル]-5-ヒドロキシフェニル]-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物6)の調製
A.N-[2-tert-ブチル-4-[ジメチル(プロパン-2-イル)シリル]-5-ヒドロキシフェニル]-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド。窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した20mLの密封管に、DMPU(3mL)中の4-tert-ブチル-2-ヨード-5-(4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-アミド)フェニルメチルカーボネート(250mg、0.48mmol、実施例2、工程Dで調製したもの)の溶液を入れ、ジメチル(プロパン-2-イル)シラン(196mg、1.92mmol)、[Rh(cod)]BF(9.7mg、0.02mmol)、及びKPO(153mg、0.72mmol)を添加した。反応物を90℃で16時間撹拌し、室温に冷却し、濾過した。濾液を50mLの水で希釈し、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗産物を、分取HPLC(HPLC-10:カラム、X Bridge C18 OBD分取カラム、10μm、19mm×250mm、移動相、水(10mmol/L NHHCO)、及びMeCN (65.0% MeCN、8分で82.0%まで)、検出器、UV 254/220nm)により精製し、20.7mgの表題化合物を灰色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C2533Siの計算値:437.2(M+H)、437.1。H NMR(300MHz,DMSO-d):δ11.90(s,1H)、9.21(s,1H)、8.85(s,1H)、8.31(d,J=8.1Hz,1H)、7.85~7.70(m,2H)、7.49(t,J=7.8Hz,1H)、7.24(s,1H)、7.16(s,1H)1.37(s,9H)、1.30~0.93(m,1H)、0.93(d,J=7.2Hz,6H)、0.18(s,6H)。HPLC純度(254nm):98.9%。
【0120】
実施例7:N-(2-(tert-ブチル)-4-(ジメチル(フェニル)シリル)-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物7)
A.N-(2-(tert-ブチル)-4-(ジメチル(フェニル)シリル)-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド。窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した20mLの密封管に、DMPU(3mL)中の4-tert-ブチル-2-ヨード-5-(4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-アミド)フェニルメチルカーボネート(250mg、0.48mmol、実施例2、工程Dで調製したもの)の溶液を入れ、次いでジメチル(フェニル)シラン(261mg、1.92mmol)、[Rh(cod)]BF(9.7mg、0.02mmol)及びKPO(153mg、0.72mmol)を添加した。反応物を90℃で16時間撹拌し、室温に冷却し、固体を濾過により除去した。濾液を水(50mL)で希釈し、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗産物を、分取HPLC(カラム、X Bridge C18 OBD分取カラム、10μm、19mm×250mm、移動相、水(10mmol/L NHHCO)及びACN(50.0% ACN、9分で75.0%まで)、検出器、UV 254/220nm)により精製して、30.8mgの表題化合物を灰色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C2831Siの計算値:471.2(M+H)、実測値:471.3。H NMR(400MHz,DMSO-d):δ12.82(br s,1H)、11.91(s,1H)、9.33(s,1H)、8.85(s,1H)、8.30(d,J=8.1Hz,1H)、7.81~7.71(m,2H)、7.56~7.46(m,3H)、7.34(d,J=2.4Hz,3H)、7.18(s,1H)、7.13(s,1H)、1.30(s,9H)、0.50(s,6H)。HPLC純度(254nm):98.9%。
【0121】
実施例8:N-[4-tert-ブチル-5-ヒドロキシ-2-(トリメチルシリル)フェニル]-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物8)の調製
A.4-ブロモ-2-tert-ブチルフェニルメチルカーボネート。窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した100mLの3つ首丸底フラスコに、DCM(10mL)中の4-ブロモ-2-tert-ブチルフェノール(1g、4.36mmol)、TEA(887mg、8.77mmol)、及びDMAP(54mg、0.42mmol)の溶液を入れ、次いでこの溶液を0℃に冷却し、クロロギ酸メチル(494mg、5.23mmol)を添加した。反応物を0℃で3時間撹拌し、次いで20mLの水の添加によりクエンチし、DCM(3×20mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、減圧下で濃縮して1.5gの表題化合物を黄色油として得た。
【0122】
B.4-ブロモ-2-tert-ブチル-5-ニトロフェニルメチルカーボネート。50mLの丸底フラスコに、濃縮硫酸(5mL)中の4-ブロモ-2-tert-ブチルフェニルメチルカーボネート(1.2g、4.18mmol、前の工程で調製したもの)の溶液を入れ、次いで溶液を0℃に冷却し、KNO(0.55g)を少量ずつ添加した。反応物を室温で2時間撹拌し、次いで30mLの水/氷の添加によりクエンチし、DCM(3×30mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、減圧下で濃縮した。残渣を、EtOAc/石油エーテル(1:20)で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、1.1gの表題化合物を黄色固体として得た。H NMR(300MHz,CDOD):δ7.87(s,1H)、7.77(s,1H)、3.91(s,3H)、1.35(s,9H)。
【0123】
C.5-アミノ-4-ブロモ-2-tert-ブチルフェニルメチルカーボネート。25mLの丸底フラスコに、THF(10mL)及びAcOH(2mL)中の4-ブロモ-2-tert-ブチル-5-ニトロフェニルメチルカーボネート(664mg、2.00mmol、前の工程で調製したもの)の溶液を入れ、Fe粉末(1000mg、17.91mmol)を66℃で15分かけて少量ずつ添加した。反応物を66℃で8時間撹拌し、室温に冷却し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮した。残渣を、EtOAc/石油エーテル(1:1)で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、450mgの表題化合物を黄色固体として得た。
【0124】
D.4-ブロモ-2-tert-ブチル-5-(4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-アミド)フェニルメチルカーボネート。25mLの丸底フラスコに、DMF(10mL)中の5-アミノ-4-ブロモ-2-tert-ブチルフェニルメチルカーボネート(604mg、2.00mmol、前の工程で調製したもの)の溶液を入れ、次いで4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸(567mg、3.00mmol)、DIEA(516mg、3.99mmol)、及びHATU(1524mg、4.00mmol)を添加した。反応物を65℃で16時間撹拌し、次いで50mLの水/氷の添加によりクエンチし、EtOAc(3×25mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、減圧下で濃縮した。残渣を、EtOAc/石油エーテル(1:1)で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、800mgの表題化合物を黄色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C2222BrN の計算値:473.1(M+H)、実測値:473.1。
【0125】
E.N-[4-tert-ブチル-5-ヒドロキシ-2-(トリメチルシリル)フェニル]-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド。40mLの密封管に、DMPU(1mL)中の4-ブロモ-2-tert-ブチル-5-(4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-アミド)フェニルメチルカーボネート(47.3mg、0.10mmol、前の工程で調製したもの)の溶液を入れ、次いで[Rh(cod)]BF(20.3mg、0.05mmol)、ヘキサメチルジシラン(1mL)、及びKPO(84.9mg、0.40mmol)を窒素下で添加した。反応物を110℃で16時間撹拌し、次いで10mLの氷/水の添加によりクエンチし、EtOAc(3×10mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗産物を、分取HPLC(HPLC-10:カラム、X Bridge Shield RP18 OBDカラム、19×250mm、10μm、移動相、水(10mmol/L NHHCO)及びMeCN(60.0% MeCN、11分で90.0%まで)、検出器、UV 254/220nm)により精製して、10.1mgの表題化合物を白色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C2329Siの計算値:409.2(M+H)、実測値:409.2。H NMR(300MHz,DMSO-d):δ11.73(s,1H)、8.96(s,1H)、9.51(s,1H)、8.43(s,1H)、8.30(d,J=8.4Hz,1H)、7.71~7.81(m,2H)、7.49(t,J=8.1Hz,1H)、7.29(s,1H)、7.21(s,1H)、1.34(s,9H)、0.28(s,9H)。HPLC純度(254nm):98.1%。
【0126】
実施例9:N-(4-(tert-ブチル)-2-(エチルジメチルシリル)-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物9)の調製
A.N-(4-(tert-ブチル)-2-(エチルジメチルシリル)-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド。窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した40mLの密封管に、DMPU(0.2mL)中の4-ブロモ-2-tert-ブチル-5-(4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-アミド)フェニルメチルカーボネート(47.3mg、0.10mmol、実施例8、工程Dで調製したもの)の溶液を入れ、次いでエチルジメチルシラン(2mL)、Rh(cod)BF(20mg)、及びKPO(84mg、0.40mmol)を添加した。反応物を110℃で16時間撹拌した。この反応を15回繰り返した。16粗反応物を合わせ、EtOAc(5mL)で希釈し、濾過し、真空下で濃縮した。粗産物を、分取HPLC(カラム、X Bridge C18 OBD分取カラム、10μm、19mm×250mm、移動相、水(10mmol/L NHHCO)及びACN(70% ACN、11分で85%まで)、検出器、UV 254/220nm)により精製して、20mgの表題化合物を白色固体として得た。質量スペクトル(LCMS ESI neg):C2429Siの計算値:421.2(M-H)、実測値:421.3。H NMR(300MHz,DMSO-d):δ12.72(br s,1H)、11.71(s,1H)、9.52(s,1H)、8.84(s,1H)、8.30(d,J=8.4Hz,1H)、7.82~7.71(m,2H)、7.49(t,J=8.1Hz,1H)、7.28(s,1H)、7.20(s,1H)、1.34(s,9H)、0.95~0.77(m,5H)、0.28(s,6H)。HPLC純度(254nm):99.0%。
【0127】
実施例10:N-(4-(tert-ブチル)-2-(tert-ブチルジメチルシリル)-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物10)の調製
A.N-(4-(tert-ブチル)-2-(tert-ブチルジメチルシリル)-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド。10mLの密封管に、DMPU(1mL)中の4-ブロモ-2-tert-ブチル-5-(4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-アミド)フェニルメチルカーボネート(47.3mg、0.10mmol、実施例8、工程Dで調製したもの)の溶液を入れ、次いでtert-ブチルジメチルシラン(0.5mL)、Rh(cod)BF(20mg)及びKPO(84mg、0.40mmol)を窒素下で添加した。反応物を110℃で16時間撹拌し、次いでEtOAc(5mL)で希釈し、濾過し、減圧下で濃縮した。粗産物を、分取HPLC(カラム、X Bridge C18 OBD調製カラム、10μm、19mm×250mm、移動相、水(10MMOL/L NHHCO)及びACN(83.0% ACN、11分で90.0%まで)、検出器、UV 254/220nm)により精製して、8.9mgの表題化合物を白色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C2635Siの計算値:451.2(M+H)、実測値:451.3。H NMR(300MHz,DMSO-d):δ12.81(br s,1H)、11.43(s,1H)、9.54(s,1H)、8.82(s,1H)、8.29(d,J=7.8Hz,1H)、7.81~7.71(m,2H)、7.51~7.46(m,1H)、7.22(s,1H)、7.05(s,1H)、1.34(s,9H)、0.86(s,9H)、0.25(s,6H)。HPLC純度(254nm):98.2%。
【0128】
実施例11:N-(5-ヒドロキシ-2,4-ビス(トリメチルシリル)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物11)の調製
A.N-(2,4-ジブロモ-5-ヒドロキシフェニル)アセトアミド。3000mLの丸底フラスコに、MeOH(300mL)及びDCM(1.2L)中のN-(3-ヒドロキシフェニル)アセトアミド(15g、99.23mmol)の溶液を入れ、次いでPy・Br(70.18g、220.13mmol)を室温で1時間かけて少量ずつ添加した。反応物を室温で一晩撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。得られた混合物を、800mLの水で希釈し、EtOAc(2×1.5L)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をEtOAc/石油エーテル(1:1)で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、9gの表題化合物を白色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):CBrNO の計算値:307.9(M+H)、実測値:308.1。
【0129】
B.5-アミノ-2,4-ジブロモフェノール。500mLの丸底フラスコに、HO(130mL)中のN-(2,4-ジブロモ-5-ヒドロキシフェニル)アセトアミド(10.4g、33.66mmol、前の工程で調製したもの)の溶液を入れ、次いで濃縮HCl(46mL)を添加した。反応物を100℃で3時間撹拌し、次いでNaOAcを添加してpHを7に調整した。固体を濾過により除去し、次いで濾液をEtOAc(3×300mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、8.2gの表題化合物を黄色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):CBrNOの計算値:265.9(M+H)、実測値:266.2。
【0130】
C.N-(2,4-ジブロモ-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド。100mLの丸底フラスコに、DMF(25mL)中の4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸(945mg、5.00mmol)の溶液を入れ、次いで5-アミノ-2,4-ジブロモフェノール(1.99g、7.46mmol、前の工程で調製したもの)、HATU(3.8g、9.99mmol)、及びDIEA(2g、15.48mmol)を添加した。反応物を85℃で2日間撹拌し、次いで100mLの水で希釈し、EtOAc(3×200mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、減圧下で濃縮した。粗産物をEtOAcで粉砕して、1.1gの表題化合物を白色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C1611Br の計算値:436.9(M+H)、実測値:437.1。
【0131】
D.N-[5-ヒドロキシ-2,4-ビス(トリメチルシリル)フェニル]-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド。窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した20mLの密封管に、DMPU(3mL)中のN-(2,4-ジブロモ-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(200mg、0.46mmol、前の工程で調製したもの)の溶液を入れ、次いでヘキサメチルジシラン(533mg、3.64mmol)、Pd2(dba)・CHCl(24mg、0.02mmol)、JohnPhos(20mg、0.07mmol)、及びKF/Al(50%、265mg、4.57mmol)を添加した。反応物を110℃で16時間撹拌し、室温に冷却し、濾過した。濾液を50mLの水で希釈し、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗産物を、分取HPLC(HPLC-10:カラム、X Bridge C18 OBD分取カラム、10μm、19mm×250mm、移動相、水(10mmol/L NHHCO)及びMeCN(60.0% MeCN、8分で85.0%まで)、検出器、UV 254/220nm)により精製して、8.2mgの表題化合物を白色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C2229Si の計算値:425.2(M+H)、実測値:425.1。H NMR(400MHz,DMSO-d):δ12.89(br s,1H)、11.86(s,1H)、9.60(s,1H)、8.87(s,1H)、8.32(d,J=8.4Hz,1H)、7.90~7.70(m,2H)、7.50(t,J=7.6Hz,1H)、7.35(d,J=7.6Hz,2H)、0.31(s,9H)、0.25(s,9H)。HPLC純度(254nm):96.1%。
【0132】
実施例12:N-(2-(tert-ブチル)-5-ヒドロキシ-4-(トリス(メチル-d)シリル)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物12)の調製
A.N-(2-(tert-ブチル)-5-ヒドロキシ-4-(トリス(メチル-d)シリル)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド。窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した8mLの密封管に、DMPU(3mL)中の2-ブロモ-4-tert-ブチル-5-(4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-アミド)フェニルメチルカーボネート(50mg、0.11mmol、実施例4、工程Bで調製したもの)の溶液を入れ、次いでd18-ヘキサメチルジシラン(52mg、0.32mmol)、[Rh(cod)]BF(2.2mg、0.01mmol)、及びKPO(34mg、0.16mmol)を添加した。反応物を90℃で16時間撹拌し、室温に冷却し、濾過した。濾液を50mLの水で希釈し、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。この反応をもう一度繰り返した後、2つのバッチを合わせ、分取HPLC(HPLC-10:カラム、X Bridge C18 OBD分取カラム、10μm、19mm×250mm、移動相、水(10mmol/L NHHCO)、及びMeCN(55.0% MeCN、7分で87.0%まで)、検出器、UV 254/220nm)により精製して、4.9mgの表題化合物を白色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C2320Siの計算値:418.3(M+H)、実測値:418.1。H NMR(400MHz,DMSO-d):δ12.89(br s,1H)、11.91(s,1H)、9.26(s,1H)、8.87(s,1H)、8.34~8.32(m,1H)、7.90~7.70(m,2H)、7.51(t,J=8.0Hz,1H)、7.25(s,1H)、7.15(s,1H)、1.39(s,9H)。HPLC純度(254nm):95.3%。
【0133】
実施例13:N-(5-ヒドロキシ-2,4-ビス(トリス(メチル-d)シリル)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物13)
A.N-(5-ヒドロキシ-2,4-ビス(トリス(メチル-d)シリル)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド。Nの不活性雰囲気でパージし、維持した40mLの密封管に、DMPU(1mL)中のN-(2,4-ジブロモ-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(50mg、0.11mmol、実施例9、工程Cで調製したもの)の溶液を入れ、次いでKF/Al(100mg、1.72mmol)、Pd(dba)CHCl(20mg、0.02mmol)、Johnphos(10mg、0.03mmol)、及びd18-ヘキサメチルジシラン(74mg、0.45mmol)を添加した。反応物を110℃で16時間撹拌した。この工程を更に5回繰り返し、次いで粗反応物を合わせ、EtOAc(100%)で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製した。得られた物質を、分取-HPLC(カラム、Atlantis分取T3 OBDカラム、19×250mm10μm、移動相、水(10mmol/L NHHCO)及びACN(75% ACN、8分で90%まで)、検出器、UV 254/220nm)により精製して、27.0mgの表題化合物を白色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C221118Si の計算値:443.3(M+H)、実測値:443.4。H NMR(400MHz,DMSO-d):δ12.90(s,1H)、11.82(s,1H)、9.61(s,1H)、8.87(s,1H)、8.32(d,J=8.0Hz,1H)、7.85~7.73(m,2H)、7.54(t,J=7.8Hz,1H)、7.36(s,1H)、7.33(s,1H)。HPLC純度(254nm):95.3%。
【0134】
実施例14:N-(3-ヒドロキシ-4-(トリメチルシリル)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物17)
A.5-ニトロ-2-(トリメチルシリル)フェノール。窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した20mLの密封管に、DMPU(10mL)中の2-ブロモ-5-ニトロフェノール(1.1g、5.05mmol)の溶液を入れ、次いでヘキサメチルジシラン(14.7g、100.42mmol)、Pd(dba)CHCl(520mg、0.50mmol)、JohnPhos(450mg、1.51mmol)、及びKF(1.45g、25.00mmol)を添加した。反応物を110℃で16時間油浴中で撹拌し、次いで室温に冷却し、濾過した。濾液を水(100mL)で希釈し、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をEtOAc/石油エーテル(0~50%)で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、850mgの黄色油を得た。質量スペクトル(LCMS、ESI neg):C12NOSiの計算値:210.1(M-H)、実測値:210.0。
【0135】
B.5-アミノ-2-(トリメチルシリル)フェノール。50mLの丸底フラスコに、メタノール/THF(4/2mL)中の5-ニトロ-2-(トリメチルシリル)フェノール(200mg、0.95mmol、前の工程で調製したもの)の溶液を入れ、次いでNI(OAc)(168mg、0.95mmol)、続いてNaBH(36mg、0.95mmol)を0℃で少量ずつ添加した。反応物を水/氷浴中で0℃で10分間撹拌し、次いで固体を濾過により除去した。反応を水(50mL)の添加によりクエンチし、得られた溶液をEtOAc(3×50mL)で抽出した。有機層を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、DMF(6mL)で希釈した。得られた溶液を減圧下で濃縮してEtOAcを除去し、表題化合物のDMF溶液を得、これを単離せずに次の工程で直接使用した。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C16NOSiの計算値:182.1(M+H)、実測値:182.1。
【0136】
C.N-(3-ヒドロキシ-4-(トリメチルシリル)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド。窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した50mLの丸底フラスコに、DMF(6mL、前の工程で調製したもの)中の5-アミノ-2-(トリメチルシリル)フェノールの溶液を入れ、次いで4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸(180mg、0.95mmol)、HATU(543mg、1.43mmol)、及びDIEA(245mg、1.90mmol)を添加した。反応物を室温で16時間撹拌し、次いで水(50mL)で希釈し、EtOAc(2×50mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗産物をEtOAcからの再結晶により精製して、59.4mgの表題化合物を白色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C1921Siの計算値:353.1(M+H)、実測値:353.3。H NMR(300MHz,DMSO-d):δ12.95(s,1H)、12.41(s,1H)、9.51(s,1H)、8.86(s,1H)、8.32(d,J=7.5Hz,1H)、7.82~7.74(m,2H)、7.54(t,J=7.5Hz,1H)、7.39(s,1H)、7.19(d,J=7.8Hz,1H)、7.02~7.69(m,1H)、0.23(s,9H)。HPLC純度(254nm):99.2%。
【0137】
実施例15:N-(3-ヒドロキシ-4-(トリメチルシリル)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物18)
A.2-ブロモ-4-フルオロフェニルメチルカーボネート。100mLの丸底フラスコに、DCM(20mL)中の2-ブロモ-4-フルオロフェノール(1.9g、9.95mmol)の溶液を入れ、次いでTEA(2.0g、19.76mmol)及びDMAP(120mg、0.98mmol)を添加し、続いてクロロギ酸メチル(1.23g、13.02mmol)を0℃で撹拌しながら滴下添加した。反応物を室温で3時間撹拌し、次いで水(100mL)の添加によりクエンチし、DCM(3×100mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮して、1.5gの表題化合物を黄色油として得た。
【0138】
B.2-ブロモ-4-フルオロ-5-ニトロフェニルメチルカーボネート。100mLの丸底フラスコに、DCM(10mL)中の2-ブロモ-4-フルオロフェニルメチルカーボネート(1g、4.02mmol、前の工程で調製したもの)の溶液を入れ、次いでHNO/HSO(1:1)(5mL)を、0℃で撹拌しながら滴下添加した。反応物を室温で2時間撹拌し、次いで200mLの水/氷に注ぎ、DCM(3×100mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をEtOAc/石油エーテル(2:1)で溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して、700mgの表題化合物を淡黄色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):CBrFNO の計算値:293.9(M+H)、実測値:294.0。
【0139】
C.4-フルオロ-5-ニトロ-2-(トリメチルシリル)フェノール。窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した20mLの密封管に、DMPU(3mL)中の2-ブロモ-4-フルオロ-5-ニトロフェニルメチルカーボネート(300mg、1.02mmol、前の工程で調製したもの)の溶液を入れ、次いでヘキサメチルジシラン(2.98g、20.36mmol)、PdCl(184mg、1.04mmol)、及びKPO(441mg、2.08mmol)を添加した。反応物を110℃で24時間油浴中で撹拌し、次いで室温に冷却し、濾過した。濾液を水(50mL)で希釈し、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をEtOAc/石油エーテル(0~60%)で溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して、150mgの表題化合物を黄色油として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI neg):C11FNOSiの計算値:228.1(M+H)、実測値:228.0。
【0140】
D.5-アミノ-4-フルオロ-2-(トリメチルシリル)フェノール。50mLの丸底フラスコに、メタノール/THF(2/2mL)中の4-フルオロ-5-ニトロ-2-(トリメチルシリル)フェノール(150mg、0.65mmol、前の工程で調製したもの)の溶液を入れ、次いでNi(OAc)(116mg、0.66mmol)を添加し、続いてNaBH(25mg、0.66mmol)を0℃で少量ずつ添加した。反応物を0℃で10分間撹拌し、次いで固体を濾過により除去した。濾液を水(20mL)で希釈し、EtOAc(3×20mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、100mgの表題化合物を黄色油として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C15FNOSiの計算値:200.1(M+H)、実測値:200.1。
【0141】
E.N-(3-ヒドロキシ-4-(トリメチルシリル)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド。50mLの丸底フラスコに、DMF(5mL)中の5-アミノ-4-フルオロ-2-(トリメチルシリル)フェノール(100mg、0.50mmol、前の工程で調製したもの)の溶液を入れ、次いで4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸(95mg、0.50mmol)、HATU(285mg、0.75mmol)、及びDIEA(129mg、1.00mmol)を添加した。反応物を室温で16時間撹拌し、次いで水(50mL)で希釈し、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗産物を、分取HPLC(カラム、X Bridge C18 OBD分取カラム、10μm、19mm×250mm、移動相、水(10mM NHHCO)及びACN(50.0% ACN、8分で83.0%まで)、検出器、UV 254/220nm)により精製して、68.2mgの表題化合物をオフホワイトの固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C1920FNSiの計算値:371.1(M+H)、実測値:371.1。H NMR(400MHz,DMSO-d):δ12.97(s,1H)、12.69(d,J=2.4Hz,1H)、9.48(s,1H)、8.88(s,1H)、8.35~8.32(m,1H)、8.08(d,J=6.0Hz,1H)、7.85~7.75(m,2H)、7.56~7.52(m,1H)、7.03(d,J=10.8Hz,1H)、0.24(s,9H)。HPLC純度(254nm):99.1%。
【0142】
実施例16:N-(5-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)-4-(トリメチルシリル)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物19)
A.2-ブロモ-4-(トリフルオロメチル)フェニルメチルカーボネート。250mLの丸底フラスコに、DCM(100mL)中の2-ブロモ-4-(トリフルオロメチル)フェノール(4.8g、19.92mmol)の溶液を入れ、次いでTEA(4g、39.53mmol)及びDMAP(250mg、2.05mmol)を添加し、続いてクロロギ酸メチル(3.8g、40.21mmol)を、0℃で撹拌しながら滴下添加した。反応物を室温で3時間撹拌し、次いで水(100mL)の添加によりクエンチし、DCM(3×100mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をEtOAc/石油エーテル(0~5%)で溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して、4.0gの表題化合物を黄色油として得た。
【0143】
B.2-ブロモ-5-ニトロ-4-(トリフルオロメチル)フェニルメチルカーボネート。250mLの丸底フラスコに、HSO(20mL)中の2-ブロモ-4-(トリフルオロメチル)フェニルメチルカーボネート(4g、13.38mmol、前の工程で調製したもの)の溶液を入れ、次いでHNO/HSO(1:1、10mL)を、0℃で撹拌しながら滴下添加した。反応物を室温で3時間撹拌し、次いで300mLの水/氷添加によりクエンチし、DCM(3×100mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をEtOAc/石油エーテル(0~50%)で溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して、1.0gの表題化合物を淡黄色固体として得た。
【0144】
C.5-ニトロ-4-(トリフルオロメチル)-2-(トリメチルシリル)フェノール。窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した40mLの密封管に、DMPU(3mL)中の2-ブロモ-5-ニトロ-4-(トリフルオロメチル)フェニルメチルカーボネート(300mg、0.87mmol、前の工程で調製したもの)の溶液を入れ、次いでヘキサメチルジシラン(2.6g、17.76mmol)、PdCl(154mg、0.87mmol)、及びKPO(369mg、1.74mmol)を添加した。反応物を110℃で24時間撹拌し、次いで冷却し、濾過した。濾液を水(50mL)で希釈し、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をEtOAc/石油エーテル(0~50%)で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、160mgの表題化合物を淡黄色油として得た。質量スペクトル(LCMS ESI neg):C1011NOSiの計算値:278.0(M+H)、実測値:278.0。
【0145】
D.5-アミノ-4-(トリフルオロメチル)-2-(トリメチルシリル)フェノール。25mLの丸底フラスコに、メタノール/THF(2mL)中の5-ニトロ-4-(トリフルオロメチル)-2-(トリメチルシリル)フェノール(160mg、0.57mmol、前の工程で調製したもの)及びNi(OAc)(102mg、0.58mmol)の溶液を入れ、次いでNaBH(22mg、0.58mmol)を0Cで少量ずつ添加した。反応物を0℃で10分間撹拌し、次いで濾過し、水(100mL)で希釈し、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、120mgの表題化合物を黄色油として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C1015NOSiの計算値:250.1(M+H)、実測値:250.1。
【0146】
E.N-(5-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)-4-(トリメチルシリル)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド。100mLの丸底フラスコに、DMF(10mL)中の5-アミノ-4-フルオロ-2-(トリメチルシリル)フェノール(120mg、0.48mmol、前の工程で調製したもの)の溶液を入れ、次いで4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸(137mg、0.72mmol)、HATU(365mg、0.96mmol)、及びDIEA(186mg、1.44mmol)を添加した。反応物を室温で16時間撹拌し、水(100mL)で希釈し、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をキラル分取HPLC(カラム、Chiralpak IA、2×25cm、5μm、移動相、Hex及びエタノール(10.0%エタノールを13分間保持)、検出器、UV 220/254nm)により精製して、6.6mgの表題化合物を白色固体として得た。質量スペクトル(LCMS、ESI pos):C2020Siの計算値:421.1(M+H)、実測値:421.2。H NMR(300MHz,DMSO-d):δ13.15(br s,1H)、12.67(s,1H)、10.37(s,1H)、8.86(s,1H)、8.31(d,J=8.1Hz,1H)、7.99(s,1H)、7.84~7.73(m,2H)、7.54~7.49(m,1H)、7.45(s,1H)、0.25(s,9H)。HPLC純度(254nm):99.8%。
【0147】
上記の合成手順によって調製された本開示の例示的な化合物を表1に示す。
【表1】










【0148】
実施例17:CFTR活性アッセイ
i.Ussing測定
上述したように、Ussing測定を使用してCFTR活性を測定する。この方法では、嚢胞性線維症を引き起こすΔF508突然変異に対してホモ接合性の原発性肺上皮細胞(hBE)を、Ussing測定前にSnapWellフィルタープレート上の空気-液体界面で最低4週間分化させる。細胞を化合物で処理する前に30分間、頂端的に粘液洗浄する。基底外側の培地を除去し、DMSOストックからその最終濃度に希釈した目的の化合物を含有する培地と交換する。処理した細胞を37℃及び5% COで24時間インキュベートする。処理期間の終わりに、フィルター上の細胞をUssingチャンバに移し、30分間平衡化させる。短絡電流は、電圧クランプモード(Vhold=0mV)で測定され、アッセイ全体は、36℃~36.5℃の温度で行われる。電圧が安定すると、チャンバがクランプされ、5秒毎のパルス読み取りによってデータが記録される。ベースライン電流安定化の後、以下の添加を適用することができ、細胞の電流及び抵抗の変化をモニターすることができる。
1.ENaCナトリウムチャネルを阻害するための、頂端チャンバへのベンザミル。
2.リン酸化によりΔF508-CFTRを活性化するための、両方のチャンバへのホルスコリン。
3.ΔF508-CFTRチャンネル開口を増強するための、頂端チャンバへのVX-770。
4.ΔF508-CFTR Cl-コンダクタンスを阻害するための、頂端チャンバへのCFTRinh-172。
【0149】
抑制可能な電流(CFTRinh-172により遮断される電流)は、ΔF508-CFTRチャネルの比活性として測定され、ビヒクルで処理された試料で観察される活性よりもこの活性の化合物に対する応答の増加が、試験した化合物によって与えられるΔF508-CFTR機能の補正として特定される。
【0150】
結果を以下の表2に示す。(+は、1μMで化合物を用いた補正因子(VX-809(3μM))の200%未満の活性を示す。++は、化合物を1μMで用いた補正因子(VX-809(3μM))の200%超の活性を示す。
【表2】






【0151】
本開示は、その特定の実施形態を参照して特に示され、記載されているが、添付の特許請求の範囲によって包含される開示の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の様々な変更を行うことができることは、当業者により理解されるであろう。
【0152】
参照による組み込み
以下に列挙された項目を含む、本明細書に記載されている全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物または特許が参照により具体的かつ個別に組み込まれているかのように、あらゆる目的でそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合には、本明細書中の任意の定義を含む本出願が支配する。
【0153】
等価物
主題の開示の特定の実施形態について論じたが、上記の明細書は例示的なものであり、限定的なものではない。本明細書を検討すると、当業者には本開示の多くの変形が明らかになるであろう。本開示の全範囲は、特許請求の範囲を、それらの均等物の全範囲及び明細書とともに、そのような変形とともに参照して決定されるべきである。
【0154】
別途指示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などを表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に依存して変化し得る近似値である。