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特許7061079重水素化デキストロメトルファンの合成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】重水素化デキストロメトルファンの合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 221/28 20060101AFI20220420BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 31/4748 20060101ALN20220420BHJP
【FI】
C07D221/28
A61P11/14
A61K31/4748
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2018568436
(86)(22)【出願日】2017-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 US2017040623
(87)【国際公開番号】W WO2018009488
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-07-01
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/088414
(32)【優先日】2016-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517085918
【氏名又は名称】アヴェニール ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, マット
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, チュンシャン
(72)【発明者】
【氏名】メン, ウェイファ
(72)【発明者】
【氏名】ルー, ジジュン
(72)【発明者】
【氏名】リ, ヤン
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-526089(JP,A)
【文献】ARKIVOC,No.3,2008年,pp.182-193
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 221/28
A61P
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の重水素化デキストロメトルファンまたはその薬学的に許容され得る塩
【化24】

を合成するための方法であって、
(i)N-脱メチル化の後、塩基およびヨードメタン-Dの存在下、-90℃~90℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるN-メチル化によって、式(II)のデキストロメトルファン化合物
【化25】

を式(III)の化合物
【化26】

に重水素化する工程;および
(ii)O-脱メチル化の後、塩基およびヨードメタン-Dの存在下、-10~10℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるO-メチル化によって、前記式(III)の化合物を式(I)の化合物に重水素化する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記工程(i)において使用される塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム、n-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドおよび第三級有機アミンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
臭化水素酸を含む溶液を用いる結晶化によって、前記式(I)の化合物を式(IV)の臭化水素酸塩一水和物
【化27】

に変換する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(I)の重水素化デキストロメトルファン
【化31】

を合成するための方法であって、
(i)式(II)のデキストロメトルファン化合物
【化32】

の第三級アミンをN-脱メチル化して、式(V)のN-脱メチル化された化合物
【化33】

を得る工程;
(ii)塩基およびヨードメタン-Dの存在下、-90℃~90℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるN-メチル化によって、前記式(V)のN-脱メチル化された化合物を式(III)の化合物
【化34】

に重水素化する工程;
(iii)式(III)のメトキシ基を式(VI)の化合物
【化35】

にO-脱メチル化する工程;および
(iv)塩基およびヨードメタン-Dの存在下、-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるO-メチル化によって、前記式(VI)のO-脱メチル化された化合物を式(I)の化合物に重水素化する工程
を含む、方法。
【請求項5】
前記工程(i)のN-脱メチル化が、クロロギ酸1-クロロエチルの存在下において行われる、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(iii)のO-脱メチル化が、臭化水素酸の存在下において行われる、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(ii)において使用される塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム、n-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドおよび第三級有機アミンから選択される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
臭化水素酸を含む溶液を用いる結晶化によって、前記式(I)の化合物を式(IV)の臭化水素酸塩一水和物
【化36】

に変換する工程をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
式(I)の重水素化デキストロメトルファン
【化41】

を合成するための方法であって、
(i)O-脱メチル化の後、塩基およびヨードメタン-Dの存在下、-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるO-メチル化によって、式(II)のデキストロメトルファン化合物
【化42】

を式(VII)の化合物
【化43】

に重水素化する工程;および
(ii)N-脱メチル化の後、塩基およびヨードメタン-Dの存在下、-90℃~90℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるN-メチル化によって、前記式(VII)の化合物を前記式(I)の化合物に重水素化する工程
を含む、方法。
【請求項10】
前記工程(i)において使用される塩基が、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシドおよびカリウムt-ブトキシドから選択される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記塩基が、カリウムt-ブトキシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(i)において用いられる温度が、-3℃~-1℃(両端を含む)の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(ii)において使用される塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム、n-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドおよび第三級有機アミンから選択される、請求項に記載の方法。
【請求項14】
臭化水素酸を含む溶液を用いる結晶化によって、前記式(I)の化合物を式(IV)の臭化水素酸塩一水和物
【化44】

に変換する工程をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記N-脱メチル化が、クロロギ酸1-クロロエチルの存在下において行われる、請求項に記載の方法。
【請求項16】
式(I)の重水素化デキストロメトルファン
【化48】

を合成するための方法であって、
(i)式(II)のデキストロメトルファン化合物
【化49】

のメトキシ基を式(VIII)の化合物
【化50】

にO-脱メチル化する工程;
(ii)塩基およびヨードメタン-Dの存在下、-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるO-メチル化によって、前記式(VIII)のO-脱メチル化された化合物を式(VII)の化合物
【化51】

に重水素化する工程;
(iii)式(VII)のデキストロメトルファン化合物の第三級アミンを式(IX)の化合物;
【化52】

にN-脱メチル化する工程;および
(iv)塩基およびヨードメタン-Dの存在下、-90℃~90℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるN-メチル化によって、前記式(IX)のN-脱メチル化された化合物を式(I)の化合物に重水素化する工程
を含む、方法。
【請求項17】
前記工程(iii)のN-脱メチル化が、クロロギ酸1-クロロエチルの存在下において行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記工程(i)のO-脱メチル化が、臭化水素酸の存在下において行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記工程(iv)において使用される塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム、n-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドおよび第三級有機アミンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記工程(ii)において使用される塩基が、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシドおよびカリウムt-ブトキシドから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
臭化水素酸を含む溶液を用いる結晶化によって、前記式(I)の化合物を式(IV)の臭化水素酸塩一水和物
【化53】

に変換する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2016年7月4日に出願された国際特許出願PCT/CN2016/088414の利益を主張し、この出願は本明細書において参照として援用される。
分野
【0002】
本開示は、重水素化デキストロメトルファン化合物ならびにそれらの薬学的に許容され得る塩、溶媒和物および水和物を作製する方法を提供する。本開示はまた、重水素化デキストロメトルファン化合物ならびにそれらの薬学的に許容され得る塩、溶媒和物および水和物にも関する。本開示はまた、本開示の化合物を含む組成物、ならびにデキストロメトルファンを投与することによって有益に処置される疾患および症状を処置する方法におけるそのような組成物の使用も提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
デキストロメトルファンは、現在最も広く使用されている鎮咳薬の1つである。デキストロメトルファンは、化学名(+)-3-メトキシ-17-メチル-(9α,13α,14α)-モルフィナンとしても知られており、デキストロメトルファン臭化水素酸塩および硫酸キニジンを含む製品の形態の商品名Nuedexta(商標)として、情動調節障害を処置するために2010年10月に米国食品医薬品局によって承認された。www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/ob/docs/obdetail.cfm?App l_No=021879&TABLE1=OB_Rxを参照のこと。
【0004】
コデインアナログであるレボルファノールの非オピオイドd-異性体であるデキストロメトルファン(DM)は、店頭販売の(OTC)鎮咳剤として約50年にわたって広範に使用されてきた。DMは、複雑な薬理学を有し、いくつかの異なるレセプターに対して結合親和性を有し、中枢神経系(CNS)において主要な活性を有する。DMは、その活性について、弱い非競合的なN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニストとして周知されており(K=1500nM)(Tortellaら、Trends Pharmacol Sci.1989;10(12):501-7;Chou YCら、Brain Res.1999;821(2):516-9;Netzer Rら、Eur J Pharmacol.1993;238(2-3):209-16;Jaffe DBら、Neurosci Lett.1989;105(1-2):227-32)、抗グルタミン酸興奮活性に対しても関連する可能性を有している。DMは、強力なシグマ-1アゴニストでもあり(Zhou GZら、Eur J Pharmacol.1991;206(4):261-9;Maurice Tら、Brain Res Brain Res Rev.2001;37(1-3):116-32;Cobos EJら、Curr Neuropharmacol.2008;6(4):344-66)(K=200nM)、セロトニントランスポーターに高い親和性で結合する(SERT;K=40nM)。DMは、ノルエピネフリントランスポーターに対して中程度の親和性しか有しないが(K=13μM)、ノルエピネフリンの取り込みを効果的に阻害する(K=240nM)(Codd EEら、J Pharmacol Exp Ther.1995;274(3):1263-70)。DMは、α3β4ニコチン性アセチルコリンレセプターのアンタゴニストであり、0.7μMというIC50(50%阻害をもたらす濃度)値が報告されている(Damajら、J Pharmacol Exp Ther.2005;312(2):780-5)。
【0005】
これらの相互作用のうちの1つまたはそれを超える相互作用の結果として、DMは、カリウムによって刺激されるグルタメートの放出を減少させ(Annels SJら、Brain res.1991;564(2):341-3)、モノアミン(セロトニン、ノルエピネフリンおよびドーパミン)神経伝達を調節する(Codd EEら、J Pharmacol Exp Ther.1995;274(3):1263-70;Maurice Tら、Pharmacol Ther.2009;124(2):195-206;Maurice Tら、Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry.1997;21(1):69-102)。α3β4ニコチン性アセチルコリンレセプターのDMの拮抗作用(Damaj MIら、J Pharmacol Exp Ther.2005;312(2):780-5)は、ある特定のCNS運動障害および嗜癖と関わりがあり得る(Silver AAら、J Am Acad Child Adolesc Psychiatry.2001;40(9):1103-10)。DMは、単独で投与されたとき、肝臓において主にデキストロルファン(DX)に迅速に代謝され、極めて低いバイオアベイラビリティをもたらすので、CNSへの曝露は限定的である。DXは、DMと同じレセプターのいくつかと、重要なレセプターに対しては異なる親和性で相互作用するが、グルクロニド抱合(概して血液脳関門の通過を妨げるがゆえに既定の用量ではCNSへの影響を低下させる)を迅速に起こす(Church Jら、Eur J Pharmacol.1985;111(2):185-90;Franklin PHら、Mol Pharmacol.1992;41(1):134-46)。
【0006】
デキストロメトルファンは、店頭販売の咳抑制製品において使用するために承認されている。デキストロメトルファンは、現在、痙攣性発声障害(voice spasm)を有する被験体の処置に対する第I相臨床試験中であり、レット症候群(RTT)の処置に対する第II相臨床研究中である(www.clinicaltrials.gov)。デキストロメトルファンは、自閉症スペクトラム障害の処置に対する第II/III相臨床試験、および糖尿病性黄斑浮腫の処置に対する第I/II相臨床研究においても評価されている(www.clinicaltrials.gov)。
【0007】
デキストロメトルファンは、湾岸戦争病の処置に対する第II相臨床試験においてナルトレキソンとの併用で研究されており、急性脳血管障害および脳浮腫の処置に対する第II相臨床研究において他の薬物(例えば、ジフェンヒドラミン、パントプラゾール、ファモチジン)との併用で研究されている(www.clinicaltrials.gov)。
【0008】
さらに、デキストロメトルファン臭化水素酸塩と硫酸キニジンとの併用は、現在、自閉症を有する成人の処置に対する第II相臨床試験中であり、認知症、脳卒中および外傷性脳損傷などのよく見られる症状を有する情動調節障害患者の処置に対する第IV相臨床研究中である(www.clinicaltrials.gov)。この併用は、筋萎縮性側索硬化症を有する患者の処置に対する、治療抵抗性大うつ病に対する、および偶発性片頭痛の疾患進行の予防および改変に対する第II相臨床試験中でもあり、その併用は、現在、アルツハイマー病を有する患者における情動調節障害の処置に対する第IV相臨床試験中である(www.clinicaltrials.gov)。
【0009】
デキストロメトルファンは、肝臓において代謝される。分解は、O-およびN-脱メチル化から始まり、一次代謝産物であるデキストロルファンおよび3-メトキシ-モルフィナンが形成され、この両方がさらに、3-ヒドロキシモルフィナンにそれぞれN-およびO-脱メチル化される(下記のデキストロメトルファンの生体内変換経路を参照のこと)。シトクロムP450酵素2D6(CPY2D6)が、デキストロメトルファンおよび3-メトキシモルフィナンのO-脱メチル化反応に関与している。デキストロメトルファンおよびデキストロルファンのN-脱メチル化は、関連するCPY3Aファミリーの酵素によって触媒される。デキストロルファンおよび3-ヒドロキシモルフィナンの抱合体が、経口摂取の数時間以内にヒトの血漿中および尿中で検出され得る。
【化1】
【0010】
水素の代わりにジュウテリウムを選択的に組み込むこと(重水素化)は、生理的に活性な化合物の生化学的な効力および選択性を保持するというユニークな効果を有する一方で、選ばれた例では、それらの全体的な治療的プロファイルに対して実質的な利点を与える(例えば、治療薬の代謝速度、安全性、有効性、耐容性にポジティブに影響する)。Harbeson & Tung,Medchem News No.2,2014年5月;Tung,Innovations in Pharmaceutical Technology Issue 32,2010を参照のこと。薬物動態学的研究のための、97~98%の同位体濃縮を有する重水素化デキストロメトルファン誘導体の合成は、Boelcskeiらによって報告されている(Boelcskeiら、ARKIVOC,2008:182-193)。デキストロメトルファンのCDO-誘導体(すなわち、d3-DM)も知られているが、その合成は、発表されていなかった(Boelcskeiら、ARKIVOC,2008:182-193,Eicholdら、J.Chromatogr B Biomed Sci Appl,1997;698:147-154)。
【0011】
重水素化デキストロメトルファンを合成するための方法を下に示す(すなわち、第二世代AVP-786プロセス)。この方法は、供給プロセス(supply chain)を特に商業規模において複雑にする3つの異なる重水素化された試薬(重水素化ギ酸、重水素化ホウ素ナトリウムおよびヨードメタン-D3)を使用する。結果として、供給プロセスを単純化し、操作上複雑でないプロセス工程を提供する改善されたプロセスが必要とされる。また、中間段階におけるさらなる制御によって、原薬純度が以前のプロセスと同じまたはそれより良くなることが保証される。
【化2】
【0012】
重水素化デキストロメトルファンも、その重水素化されていない対応物のように、肝臓において代謝され得る。d3-DMおよびd6-DMに対するヒトの主要な代謝経路は、下記に示される(重水素化デキストロメトルファンの生体内変換経路)。重水素化デキストロメトルファンに対する代謝経路は、重水素化されていないデキストロメトルファンに対する経路を反映する。まず、d3-DMおよび/またはd6-DMは、N-脱メチル化を受けて、一次代謝産物d3-3-メトキシモルフィナン(d3-3MM)を形成する。さらに、d6-DMは、O-脱メチル化を受けて、一次代謝産物d3-デキストロルファン(d3-DX)も形成し得る。次いで、d3-3MMとd3-DXの両方がさらに、3-ヒドロキシモルフィナンに代謝され得る。シトクロムP450酵素2D6(CPY2D6)が、d6-DMおよびd3-3MMのO-脱メチル化反応に関与しているのに対して、d3-およびd6-DMならびにd3-DXのN-脱メチル化は、関連するCPY3Aファミリーの酵素によって触媒される。
【化3】
【0013】
デキストロメトルファンの乱用は、その活性代謝産物であるデキストロルファンに結び付けられている。デキストロメトルファンに起因するPCP様の作用は、デキストロルファンによってより確実にもたらされるので、ヒトにおける乱用の可能性は、デキストロメトルファンがデキストロルファンに代謝されることに原因があり得る。Miller,S Cら、Addict Biol,2005,10(4):325-7;Nicholson,K Lら、Psychopharmacology(Berl),1999年9月1日,146(1):49-59;Pender,E Sら、Pediatr Emerg Care,1991,7:163-7を参照のこと。デキストロメトルファンの精神作用効果に関する1つの研究は、広範な代謝群が、低代謝群と比べてより高い乱用の可能性を報告することを見出し、デキストロルファンがデキストロメトルファン乱用の可能性に寄与するという証拠を提供した。Zawertailo L A,ら、J Clin Psychopharmacol,1998年8月,18(4):332-7を参照のこと。
【0014】
その集団のかなりの部分が、CYP2D6酵素に機能的欠損を有する。したがって、デキストロメトルファンに対する主要代謝経路は、CYP2D6を必要とするので、CYP2D6欠損被験体における低活性は、かなり長い作用時間をもたらし、より大きな薬物効果をもたらす。内因性機能的欠損に加えて、抗うつ薬などのある特定の薬剤も、CYP2D6酵素の強力な阻害剤である。一部の人々におけるより遅い代謝の場合、デキストロメトルファンは、特に他の薬剤との併用において、重篤な有害事象をもたらし得る。
【0015】
推奨される持続時間より長い時間、体内に薬物が存在すると、有益な効果は連続して提供され得るが、望まれない副作用が生まれるかまたは長引く恐れがある。推奨用量のデキストロメトルファン治療における望ましくない副作用としては、悪心、食欲不振、下痢、嗜眠状態、眩暈および無力が挙げられる。
したがって、デキストロメトルファンの有益な活性を有し、かつその薬理学的有効期間をさらに延長するため、被験体のコンプライアンスを高めるため、ならびに潜在的には、集団の薬物動態学的ばらつきを減少させるためおよび/もしくは危険な薬物-薬物相互作用の可能性を低下させるため、またはデキストロルファンなどの代謝産物の形成に起因するデキストロメトルファン乱用の可能性を低下させるために他の利点も有し得る化合物、例えば、有害な副作用が少なく、代謝の不都合が少ない化合物を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【文献】www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/ob/docs/obdetail.cfm?App l_No=021879&TABLE1=OB_Rx
【文献】Tortellaら、Trends Pharmacol Sci.1989;10(12):501-7
【文献】Chou YCら、Brain Res.1999;821(2):516-9
【文献】Netzer Rら、Eur J Pharmacol.1993;238(2-3):209-16
【文献】Jaffe DBら、Neurosci Lett.1989;105(1-2):227-32
【文献】Zhou GZら、Eur J Pharmacol.1991;206(4):261-9
【文献】Maurice Tら、Brain Res Brain Res Rev.2001;37(1-3):116-32
【文献】Cobos EJら、Curr Neuropharmacol.2008;6(4):344-66
【文献】Codd EEら、J Pharmacol Exp Ther.1995;274(3):1263-70
【文献】Damajら、J Pharmacol Exp Ther.2005;312(2):780-5
【文献】Annels SJら、Brain res.1991;564(2):341-3
【文献】Codd EEら、J Pharmacol Exp Ther.1995;274(3):1263-70
【文献】Maurice Tら、Pharmacol Ther.2009;124(2):195-206
【文献】Maurice Tら、Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry.1997;21(1):69-102
【文献】Damaj MIら、J Pharmacol Exp Ther.2005;312(2):780-5
【文献】Silver AAら、J Am Acad Child Adolesc Psychiatry.2001;40(9):1103-10
【文献】Church Jら、Eur J Pharmacol.1985;111(2):185-90
【文献】Franklin PHら、Mol Pharmacol.1992;41(1):134-46
【文献】www.clinicaltrials.gov
【文献】Harbeson & Tung,Medchem News No.2,2014年5月;Tung,Innovations in Pharmaceutical Technology Issue 32,2010
【文献】Boelcskeiら、ARKIVOC,2008:182-193
【文献】Eicholdら、J.Chromatogr B Biomed Sci Appl,1997;698:147-154
【文献】Miller,S Cら、Addict Biol,2005,10(4):325-7
【文献】Nicholson,K Lら、Psychopharmacology(Berl),1999年9月1日,146(1):49-59
【文献】Pender,E Sら、Pediatr Emerg Care,1991,7:163-7
【文献】Zawertailo L A,ら、J Clin Psychopharmacol,1998年8月,18(4):332-7
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
要旨
デキストロメトルファンを重水素化デキストロメトルファンに変換するための簡便かつ経済的な方法が本明細書中に記載される。1つの実施形態において、その方法は、従前の方法と比べて、中間体の改善された単離収率および純度、ならびにまた最終化合物の改善された収率および純度を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、従前の方法と比べて、収率は、>70%であり、純度は、>90%である。また、いくつかの実施形態において、従前の方法と比べて、収率は、約75%であり、代表的な純度は、≧98%である。1つの実施形態において、その合成は、単一の重水素化された試薬ヨードメタン-Dを使用する。いくつかの実施形態において、単一の重水素化された試薬の使用は、従前の方法と比べて供給プロセスを単純化する。1つの実施形態において、1つまたはそれを超える中間段階における制御によって、原薬純度が以前のプロセスと同じまたはそれより良くなることが保証される。
【0018】
1つの実施形態において、本開示は、重水素化デキストロメトルファン化合物を合成するための方法を提供する。1つの実施形態において、本開示は、式(I)の重水素化デキストロメトルファン化合物またはその薬学的に許容され得る塩
【化4】
を合成するための方法を提供する。1つの実施形態において、その方法は、
(i)式(II)のデキストロメトルファン化合物
【化5】
の第三級アミンをN-脱メチル化する工程を含む。
1つの実施形態において、その方法はさらに、(ii)反応(i)のN-脱メチル化された生成物を式(III)の化合物
【化6】
に重水素化する工程を含む。1つの実施形態において、反応(ii)の重水素化プロセスは、塩基およびヨードメタン-Dの存在下でのN-メチル化を含む。1つの実施形態において、反応(ii)の重水素化プロセスは、-90℃~90℃(両端を含む)の範囲内の温度において行われる。
1つの実施形態において、その方法はさらに、反応(iii)において、式(III)のメトキシ基をO-脱メチル化する工程を含む。
1つの実施形態において、その方法はさらに、反応(iv)において、反応(iii)のO-脱メチル化された生成物を式(I)の化合物に重水素化する工程を含む。1つの実施形態において、重水素化反応(iv)は、塩基およびヨードメタン-Dの存在下でのO-メチル化を含む。1つの実施形態において、重水素化反応(iv)は、-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内の温度において行われる。
【0019】
1つの実施形態において、N-脱メチル化反応(i)は、クロロギ酸1-クロロエチルの存在下において行われる。1つの実施形態において、N-脱メチル化反応(i)は、N-脱メチル化反応(i)が≧93%完了したとき、メタノールを加える工程および加熱を適用する工程をさらに含む。1つの実施形態において、N-脱メチル化反応(i)は、N-脱メチル化が≧98%完了したとき、メタノールの量が100ppm以下に減少するまで、真空を適用する工程をさらに含む。1つの実施形態において、N-脱メチル化反応(i)は、真空を適用する前にトルエンを加える工程をさらに含む。
【0020】
1つの実施形態において、式(II)の化合物は、2%以下で存在する。
【0021】
1つの実施形態において、反応(i)のN-脱メチル化された生成物をN-メチル化によって式(III)の化合物に重水素化するための反応(ii)において使用される塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム、n-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドおよび第三級有機アミンから選択される。1つの実施形態において、反応(ii)において使用される第三級有機アミン塩基は、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンである。1つの実施形態において、反応(ii)において使用される塩基は、n-ブチルリチウムである。1つの実施形態において、反応(ii)において用いられる温度は、-90℃~0℃(両端を含む)の範囲内である。1つの実施形態において、反応(ii)において用いられる温度は、-90℃~-50℃(両端を含む)の範囲内である。1つの実施形態において、反応(ii)において用いられる温度は、-90℃~-70℃(両端を含む)の範囲内である。
【0022】
1つの実施形態において、O-脱メチル化反応(iii)は、臭化水素酸の存在下において行われる。
【0023】
1つの実施形態において、反応(iii)のO-脱メチル化された化合物をO-メチル化によって式(I)の化合物に重水素化するための反応(iv)において使用される塩基は、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシドおよびカリウムt-ブトキシドから選択される。1つの実施形態において、反応(iv)において使用される塩基は、カリウムt-ブトキシドである。1つの実施形態において、反応(iv)において用いられる温度は、-3℃~-1℃(両端を含む)の範囲内である。
【0024】
1つの実施形態において、式(I)の化合物は、臭化水素酸塩である。1つの実施形態において、その臭化水素酸塩は、一水和物である。
【0025】
1つの実施形態において、化合物においてジュウテリウムと指定されていないいずれの原子も、その天然の同位体存在度で存在する。
【0026】
1つの実施形態において、本開示は、式(I)のデキストロメトルファン化合物を合成するための方法を提供し、その方法は、(i)式(II)のデキストロメトルファン化合物のメトキシ基を式(VIII)の化合物
【化7】
にO-脱メチル化する工程を含む。1つの実施形態において、その方法はさらに、(ii)式(VIII)のO-脱メチル化された化合物をO-メチル化によって式(VII)の化合物
【化8】
に重水素化する工程を含む。1つの実施形態において、重水素化反応(ii)は、塩基およびヨードメタン-Dの存在下において行われる。1つの実施形態において、重水素化反応(ii)は、-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内の温度において行われる。1つの実施形態において、その方法はさらに、(iii)(ii)からの式(VII)のデキストロメトルファン化合物の第三級アミンを式(IX)の化合物
【化9】
にN-脱メチル化する工程を含む。1つの実施形態において、その方法はさらに、(iv)式(IX)のN-脱メチル化された化合物をN-メチル化によって式(I)の化合物に重水素化する工程を含む。1つの実施形態において、重水素化反応(iv)は、塩基およびヨードメタン-Dの存在下において行われる。1つの実施形態において、重水素化反応(iv)は、-90℃~90℃(両端を含む)の範囲内の温度において行われる。
【0027】
1つの実施形態において、O-脱メチル化反応(i)は、臭化水素酸の存在下において行われる。
【0028】
1つの実施形態において、反応(i)のO-脱メチル化された生成物をO-メチル化によって重水素化するための反応(ii)において使用される塩基は、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシドおよびカリウムt-ブトキシドから選択される。1つの実施形態において、反応(ii)において使用される塩基は、カリウムt-ブトキシドである。1つの実施形態において、反応(ii)において用いられる温度は、-3℃~-1℃(両端を含む)の範囲内である。
【0029】
1つの実施形態において、N-脱メチル化反応(iii)は、クロロギ酸1-クロロエチルの存在下において行われる。1つの実施形態において、反応(iii)に記載されたN-脱メチル化反応は、N-脱メチル化反応(iii)が≧93%完了したとき、メタノールを加える工程および加熱を適用する工程をさらに含む。1つの実施形態において、N-脱メチル化反応(iii)は、N-脱メチル化が≧98%完了したとき、メタノールの量が100ppm以下に減少するまで、真空を適用する工程をさらに含む。1つの実施形態において、N-脱メチル化反応(iii)は、真空を適用する前にトルエンを加える工程をさらに含む。1つの実施形態において、式(VII)の化合物は、2%以下で存在する。
【0030】
1つの実施形態において、反応(iii)のN-脱メチル化された化合物をN-メチル化によって式(I)の化合物に重水素化するための反応(iv)において使用される塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム、n-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドおよび第三級有機アミンから選択される。1つの実施形態において、反応(iv)において使用される第三級有機アミン塩基は、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンである。1つの実施形態において、反応(iv)において使用される塩基は、n-ブチルリチウムである。1つの実施形態において、反応(iv)において用いられる温度は、-90℃~0℃(両端を含む)の範囲内である。1つの実施形態において、反応(iv)において用いられる温度は、-90℃~-50℃(両端を含む)の範囲内である。1つの実施形態において、反応(iv)において用いられる温度は、-90℃~-70℃(両端を含む)の範囲内である。
【0031】
1つの実施形態において、式(IV)の重水素化デキストロメトルファン化合物を合成するための方法が提供され、その方法は、臭化水素酸を含む溶液を用いる結晶化によって、本明細書中に提供される方法のいずれかによって生成された式(I)の化合物を式(IV)の臭化水素酸塩一水和物に変換する工程を含む。
【化10】
【0032】
1つの実施形態において、式(IV)の化合物は、臭化水素酸塩である。1つの実施形態において、式(IV)の化合物の臭化水素酸塩は、一水和物である。
【0033】
1つの実施形態において、上記方法は、有益なことに、従前の方法と比べて安価かつ簡単な方法によって重水素化デキストロメトルファンをかなりの収率で作製する手法を提供する。1つの実施形態において、重水素化デキストロメトルファンの収率は、以前に開示された方法と比べて改善されている。1つの実施形態において、上記方法は、有益なことに、単一の重水素化された試薬ヨードメタン-Dを使用し、このことによって、供給プロセスが単純化される。1つの実施形態において、単一の重水素化された試薬は、重水素化されたジメチルスルホキシド、ブロモメタン(bromethane)-D(メチル-d臭化物)、メチル-Dトリフレートまたは重水素化された硫酸ジメチルであるがこれらに限定されない。当業者は、使用され得る標準的なメチル化剤の他の重水素化された試薬も認識する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
前述の全般的な説明と以下の詳細な説明の両方が、例示的かつ説明的であって、特許請求される本発明を限定しないことが理解されるべきである。本発明の1つまたはそれを超える実施形態のある特定の詳細が、下記の説明に示される。当業者は、本発明の範囲によって包含される本発明の数多くのバリエーションおよび改変が存在することを認識する。本開示の他の特徴または利点が、下記の代表的な例およびまた添付の請求項から明らかになる。
【0035】
本明細書中で使用されるとき、有機化合物を含む化合物に対する命名は、一般名、命名に対するIUPAC、IUBMBまたはCASの推奨を用いて行われ得る。当業者は、名称が与えられれば、命名規則を用いた化合物構造の体系的な変形(systemic reduction)によって、またはCHEMDRAW(商標)(Cambridgesoft Corporation,U.S.A.)などの商業的に入手可能なソフトウェアによって、化合物の構造を容易に確かめることができる。
【0036】
本開示は、いくつかの数値を含む。本明細書中に開示される各値は、その特定の値自体に加えて、「約」その特定の値としても本明細書中に開示されることが理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」も開示される。ある開示される範囲内の2つの特定の単位量の間の各単位量も開示されることも理解される。例えば、10~15という範囲が開示される場合、少なくとも11、12、13および14も開示される。
【0037】
デキストロメトルファンおよびそのアナログの化学は、Rodd,E.H.,Ed.,Chemistry of Carbon Compounds(Elsevier Publ.,N.Y.,1960)、Goodman and Gilman’s Pharmacological Basis of Therapeutics,Choi Brain Res.1987,403:333-336およびChoiに対する米国特許第4,806,543号などの様々な参考文献に記載されている。その化学構造は、以下のとおりである:
【化11】
【0038】
デキストロメトルファン(DM)は、(+)-3-メトキシ-N-メチルモルフィナンに対する一般名である。デキストロメトルファンは、モルヒネ様オピオイド類の右旋性アナログである分子クラスの1つの特定の分子である。用語「オピエート」とは、モルヒネおよびコデインなどのアヘンに由来する薬物のことを指す。本明細書中で使用されるとき、用語「オピオイド」は、それよりも広い。この用語は、オピエートを含むが、哺乳動物において鎮痛薬または鎮静薬として作用する他の天然または合成の薬物も含む。
【0039】
合成において使用される化学材料の起源に応じて、合成された化合物における天然の同位体存在度にいくらかのばらつきが生じることが認識される。したがって、デキストロメトルファンの調製物は、本質的に少量の重水素化されたおよび/または13C含有アイソトポログ(isotopologues)を含み得る。天然に豊富な安定した水素同位体および炭素同位体の濃度は、このばらつきにもかかわらず、本開示の化合物の安定した同位体の置換度と比べて低い。例えば、Wada Eら、Seikagaku 1994,66:15;Ganes L Zら、Comp Biochem Physiol A Mol Integr Physiol 1998,119:725を参照のこと。本開示の化合物では、特定の位置がジュウテリウムを有すると指定されるとき、その位置におけるジュウテリウムの存在度は、およそ0.015%であるジュウテリウムの天然存在度よりも実質的に高いと理解される。1つの実施形態において、ジュウテリウムを有すると指定される位置は、前記化合物においてジュウテリウムと指定される各原子において少なくとも3000(45%のジュウテリウム組み込み率)という最小の同位体濃縮係数を有する。
【0040】
本明細書中で使用されるとき、用語「同位体濃縮係数」は、特定の同位体の同位体存在度と天然存在度との比を意味する。他の実施形態において、本開示の化合物は、指定の各ジュウテリウム原子に対して、少なくとも3500(指定の各ジュウテリウム原子における52.5%のジュウテリウム組み込み率)、少なくとも4000(60%のジュウテリウム組み込み率)、少なくとも4500(67.5%のジュウテリウム組み込み率)、少なくとも5000(75%のジュウテリウム組み込み率)、少なくとも5500(82.5%のジュウテリウム組み込み率)、少なくとも6000(90%のジュウテリウム組み込み率)、少なくとも6333.3(95%のジュウテリウム組み込み率)、少なくとも6466.7(97%のジュウテリウム組み込み率)、少なくとも6600(99%のジュウテリウム組み込み率)または少なくとも6633.3(99.5%のジュウテリウム組み込み率)であるがこれらに限定されない同位体濃縮係数を有する。
【0041】
本開示の化合物において、特定の同位体と明確に指定されていない原子はいずれも、その原子の任意の安定な同位体を表していると意味される。別段述べられない限り、ある位置が、「H」または「水素」と明確に指定されているとき、その位置は、水素をその天然存在度の同位体組成で有すると理解される。
【0042】
本明細書中で使用されるとき、用語「アイソトポログ」とは、1つまたはそれを超える位置における同位体組成を除いて、本開示の特定の化合物と同じ化学構造および式を有する種のことを指す(例えば、H対D)。したがって、アイソトポログは、本開示の特定の化合物とその同位体組成が異なる。
【0043】
用語「化合物」は、本明細書中で使用されるとき、その任意の塩、溶媒和物または水和物を含むとも意図されている。
【0044】
本明細書中で使用されるとき、本開示の化合物の塩は、その化合物の酸性基と塩基性基(例えば、アミノ官能基すなわち塩基と、その化合物のカルボキシル官能基などの酸性基)との間に形成される。別の実施形態によると、化合物は、薬学的に許容され得る酸付加塩である。
【0045】
本明細書中で使用されるとき、用語「薬学的に許容され得る」とは、適正な医学的判断の範囲内において、過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応などなく、ヒトおよび他の哺乳動物の組織との接触において使用するために適していて、合理的なベネフィット/リスク比に見合う構成要素のことを指す。「薬学的に許容され得る塩」は、レシピエントに投与されたとき、本開示の化合物を直接または間接的に提供できる任意の無毒性の塩を意味する。「薬学的に許容され得る対イオン」は、レシピエントに投与された際に塩から放出されたとき毒性でない、その塩のイオン部分である。
【0046】
薬学的に許容され得る塩を形成するために通常使用される酸としては、無機酸(例えば、硫化水素酸(hydrogen bisulfide)、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸およびリン酸)ならびに有機酸(例えば、パラ-トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、二酒石酸(bitartaric acid)、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラ-ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸)、ならびに関連する無機酸および有機酸が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、そのような薬学的に許容され得る塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-二酸塩、ヘキシン-1,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ヒドロキシ酪酸塩(hydroxybuterate)、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩および他の塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
1つの実施形態において、薬学的に許容され得る酸付加塩としては、塩酸および臭化水素酸などの鉱酸と形成されるもの、ならびにまたマレイン酸などの有機酸と形成されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書中で使用されるとき、用語「水和物」は、非共有結合性の分子間力によって結合された化学量論量または非化学量論量の水をさらに含む化合物を意味する。
【0049】
本明細書中で使用されるとき、用語「溶媒和物」は、非共有結合性の分子間力によって結合された化学量論量または非化学量論量の溶媒(例えば、水、アセトン、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、2-プロパノールなど)をさらに含む化合物を意味する。
【0050】
本開示の化合物は、不斉炭素原子、例えば、ジュウテリウム置換またはその他の方法の結果としての不斉炭素原子を含み得る。したがって、本開示の化合物は、個々のエナンチオマーとして、または2つのエナンチオマーの混合物として存在し得る。したがって、本開示の化合物は、ラセミ混合物と、考えられる別の立体異性体を実質的に含まない個々のそれぞれの立体異性体との両方を含み得る。用語「他の立体異性体を実質的に含まない」は、本明細書中で使用されるとき、25%未満の他の立体異性体、10%未満の他の立体異性体、5%未満の他の立体異性体、2%未満の他の立体異性体または「X」%未満の他の立体異性体(ここで、Xは、0~100(両端を含む)の数字である)しか存在しないことを意味する。所与の化合物に対する個々のエナンチオマーを得るまたは合成する方法は、当該分野で周知であり、最終化合物もしくは出発物質または中間体に対して実行可能であるように適用され得る。
【0051】
本明細書中で使用されるとき、用語「安定化合物」とは、その製造を可能にするのに十分な安定性を有し、かつ本明細書中で詳述される目的(例えば、治療的な製品への製剤化、治療的な化合物の生成において使用するための中間体、単離可能または貯蔵可能な中間体化合物、治療薬に応答する疾患もしくは症状を処置すること)のために有用であるのに十分な時間にわたってその化合物の完全性を維持する化合物のことを指す。
【0052】
本明細書中で使用されるとき、「D」とは、ジュウテリウムのことを指す。
【0053】
本明細書中で使用されるとき、用語「重水素化された試薬」、「ジュウテリウム試薬」および「重水素化試薬」は、少なくとも1つのジュウテリウム原子が水素の代わりに選択的に組み込まれた(重水素化)試薬を表すために交換可能に使用される。
【0054】
本明細書中で使用されるとき、「立体異性体」とは、エナンチオマーとジアステレオマーの両方のことを指す。
【0055】
本明細書中で使用されるとき、用語「1当量」とは、1モルの別の物質と反応する1つの物質の量のことを指す。
【0056】
本開示は、式(I)の化合物(その薬学的に許容され得る塩、溶媒和物および水和物を含む)を提供する。
【化12】
【0057】
1つの実施形態において、式(I)の化合物は、単離されるかまたは精製され、例えば、式(I)の化合物は、存在する式(I)のアイソトポログの総量の少なくとも50重量%(例えば、少なくとも55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、97重量%、98重量%、98.5重量%、99重量%、99.5重量%または99.9重量%)の純度でそれぞれ存在する。したがって、1つの実施形態において、式(I)の化合物を含む組成物は、あるアイソトポログ分布のその化合物を含み得るが、但し、アイソトポログの少なくとも50重量%が、列挙される化合物である。
【0058】
1つの実施形態において、Dを有すると指定される式(I)の化合物における任意の位置が、式(I)の化合物の指定された位置において少なくとも45%(例えば、少なくとも52.5%、少なくとも60%、少なくとも67.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%または少なくとも99.5%)という最小のジュウテリウム組み込み率を有する。したがって、1つの実施形態において、式(I)の化合物を含む組成物は、あるアイソトポログ分布のその化合物を含み得るが、但し、アイソトポログの少なくとも45%は、指定された位置にDを含む。
【0059】
1つの実施形態において、式(I)の化合物は、その化合物の他のアイソトポログを「実質的に含まず」、例えば、50%未満、25%未満、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満または0.5%未満の他のアイソトポログしか存在しない。
【0060】
1つの実施形態において、化合物においてジュウテリウムと指定されていないいずれの原子も、その天然の同位体存在度で存在する。
【0061】
1つの実施形態において、上記方法は、(i)式(II)のデキストロメトルファン化合物またはその薬学的に許容され得る塩
【化13】
の第三級アミンを脱メチル化して、式(V)の脱メチル化された化合物またはその薬学的に許容され得る塩
【化14】
を得る工程を含む。
【0062】
例えば、1つの実施形態において、デキストロメトルファン化合物のN-脱メチル化プロセスは、デキストロメトルファン出発物質が一水和物塩の形態で存在するとき、それを塩基で処理して、N-メチル化された出発物質を遊離塩基として得る工程を含む。1つの実施形態において、その塩基は、無機塩基である。1つの実施形態において、その無機塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは水酸化カルシウムのうちの少なくとも1つであり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その塩基は、水酸化ナトリウムである。1つの実施形態において、デキストロメトルファン塩の溶液が、有機溶媒に溶解され、塩基の水溶液と混合され、撹拌される。1つの実施形態において、その有機溶媒は、トルエン、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、塩化メチレンまたはジエチルエーテルであり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その有機溶媒は、トルエンである。1つの実施形態において、有機層が水層から分離され、次いで、その有機層が水で中性pHに洗浄され、共沸乾燥される。
【0063】
1つの実施形態において、N-脱メチル化プロセスは、一般的な公知の試薬(例えば、ハロゲン化シアン、ハロゲン化アシルおよび様々なクロロホルメート)を用いて行われる。1つの実施形態において、そのハロゲン化アシルは、塩化アセチルであり得るが、これに限定されない。1つの実施形態において、そのクロロホルメートは、クロロギ酸1-クロロエチル、クロロギ酸エチルまたはクロロギ酸2,2,2-トリクロロエチルのうちの少なくとも1つであり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、そのクロロホルメートは、クロロギ酸1-クロロエチルである。その後、1つの実施形態において、反応混合物を加熱し、式(V)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩が得られるまでメタノールを加えることによって、カルバメートが除去される。1つの実施形態において、N-脱メチル化反応は、極端でない温度において、例えば、周囲温度から反応混合物の還流温度までにおいて行われる。1つの実施形態において、周囲温度は、18℃~25℃(両端を含む)の範囲内である。1つの実施形態において、反応は、より高い温度、例えば、30℃~100℃(両端を含む)において進められる。1つの実施形態において、温度範囲は、40℃~90℃(両端を含む)である。1つの実施形態において、温度範囲は、50℃~80℃(両端を含む)である。1つの実施形態において、温度範囲は、60℃~70℃(両端を含む)である。
【0064】
1つの実施形態において、N-脱メチル化反応は、水分を含まない環境を維持するために、不活性雰囲気下(例えば、窒素下であるがこれに限定されない)において行われ得る。1つの実施形態において、中間体カルバメートを得るために、溶媒が除去され得る。次いで、1つの実施形態において、例えば、水溶液中でのZnおよび酢酸との反応によって、またはメタノールを加え、反応混合物を加熱還流することによって、そのカルバメートは加水分解される。
【0065】
1つの実施形態において、N-脱メチル化反応(i)は、その反応が≧93%完了するまで、クロロギ酸1-クロロエチルの存在下において行われる。次いで、1つの実施形態において、カルバメート官能基が、メタノールおよび加熱を用いて除去される。1つの実施形態において、そのメタノールは、N-脱メチル化が≧98%完了したとき、真空によって除去される。1つの実施形態において、残留メタノールの量は、100ppm以下である。
【0066】
1つの実施形態において、有機溶媒が、反応(i)における反応混合物に再度加えられ、溶媒が真空下で除去される。1つの実施形態において、その有機溶媒は、トルエンであるが、これに限定されない。1つの実施形態において、この手順は、メタノールの量が約100ppmまたはそれ未満になるまで繰り返される。
【0067】
1つの実施形態において、不純物を目標レベルまで減少させるために、反応(i)における反応混合物にアルコールが加えられる。1つの実施形態において、そのアルコールは、イソプロパノールであるが、これに限定されない。
【0068】
1つの実施形態において、デキストロメトルファンに対する不純物レベルは、2.0%以下に減少される。1つの実施形態において、デキストロメトルファンに対する不純物レベルは、2.5%以下に減少される。1つの実施形態において、デキストロメトルファンに対する不純物レベルは、3%以下に減少される。1つの実施形態において、デキストロメトルファンに対する不純物レベルは、3.5%以下に減少される。1つの実施形態において、デキストロメトルファンに対する不純物レベルは、4%以下に減少される。1つの実施形態において、デキストロメトルファンに対する不純物レベルは、4.5%以下に減少される。1つの実施形態において、デキストロメトルファンに対する不純物レベルは、5%以下に減少される。1つの実施形態において、デキストロメトルファンに対する不純物レベルは、5.5%以下に減少される。1つの実施形態において、デキストロメトルファンに対する不純物レベルは、6%以下に減少される。1つの実施形態において、デキストロメトルファンに対する不純物レベルは、6.5%以下に減少される。1つの実施形態において、デキストロメトルファンに対する不純物レベルは、7%以下に減少される。1つの実施形態において、不純物を目標レベルまで減少させるために、さらなるイソプロパノールが反応(i)において加えられる。
【0069】
1つの実施形態において、式(V)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、濾過によって単離され、有機溶媒でリンスされる。1つの実施形態において、その有機溶媒は、トルエンであるが、これに限定されない。次いで、1つの実施形態において、式(V)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、有機溶媒のレベルが≦3%になるまで、約50℃で乾燥される。1つの実施形態において、式(V)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、有機溶媒のレベルが≦3%になるまで、約40℃で乾燥される。1つの実施形態において、式(V)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、有機溶媒のレベルが≦3%になるまで、約30℃で乾燥される。
【0070】
1つの実施形態において、式(V)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、有機溶媒のレベルが≦2%になるまで、約40℃で乾燥される。1つの実施形態において、式(V)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、有機溶媒のレベルが≦2%になるまで、約30℃で乾燥される。
【0071】
1つの実施形態において、式(V)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、有機溶媒のレベルが≦1%になるまで、約40℃で乾燥される。1つの実施形態において、式(V)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、有機溶媒のレベルが≦1%になるまで、約30℃で乾燥される。
【0072】
1つの実施形態において、反応(i)における生成物の収率は、約>90%の純度で>70%である。
【0073】
1つの実施形態において、上記方法はさらに、反応(ii)において、塩基および重水素化された試薬の存在下、-90℃~90℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるN-メチル化によって、反応(i)からの式(V)のN-脱メチル化された化合物またはその薬学的に許容され得る塩を式(III)の化合物
【化15】
に重水素化する工程を含む。
【0074】
1つの実施形態において、そのN-メチル化反応は、水分を含まない環境を維持するために、不活性雰囲気下、例えば、窒素下またはアルゴン下で行われ得る。
【0075】
1つの実施形態において、反応(ii)において用いられる温度は、-80℃~80℃(両端を含む)、-70℃~70℃(両端を含む)、-60℃~60℃(両端を含む)、-50℃~50℃(両端を含む)、-40℃~40℃(両端を含む)、-30℃~30℃(両端を含む)、-20℃~20℃(両端を含む)または-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内である。
【0076】
例えば、1つの実施形態において、反応(ii)は、式(V)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を有機溶媒に溶解する工程およびその溶液を冷却する工程を含む。1つの実施形態において、その有機溶媒は、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル)、塩化メチレン、ジオキサン、トルエン、ペンタンまたはテトラヒドロフランのうちの少なくとも1つであるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その有機溶媒は、テトラヒドロフランである。1つの実施形態において、温度は、-90℃~0℃(両端を含む)の範囲内の温度に低下される。1つの実施形態において、温度は、-85℃~-5℃(両端を含む)、-75℃~-15℃(両端を含む)、-65℃~-25℃(両端を含む)、-55℃~-35℃(両端を含む)または-45℃~-40℃(両端を含む)の範囲内の温度に低下される。
【0077】
次いで、1つの実施形態において、塩基が反応(ii)に加えられた後、重水素化された試薬が加えられる。
【0078】
1つの実施形態において、重水素化された試薬は、ヨードメタン-D、硫酸ジメチル-Dまたはメチル-dトリフレートであり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、重水素化された試薬は、ヨードメタン-Dである。1つの実施形態において、反応は、好適な塩基中で行われる。1つの実施形態において、好適な塩基は、有機塩基(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン)または無機塩基(例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)であり得るが、これらに限定されない。
【0079】
1つの実施形態において、反応(ii)において使用される塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム、アルキルリチウム(例えば、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、n-ヘキシルリチウム)、リチウムアミド(例えば、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド(lithium hexamethyldesilazide))および第三級有機アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン)から選択され得るが、これらに限定されない。
【0080】
1つの実施形態において、第三級有機アミンは、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンである。1つの実施形態において、アルキルリチウムは、n-ブチルリチウムである。1つの実施形態において、リチウムアミドは、リチウムジイソプロピルアミドである。
【0081】
1つの実施形態において、反応(ii)において選択される塩基は、n-ブチルリチウムである。
【0082】
1つの実施形態において、反応(ii)において使用される塩基は、有効量である、すなわち、交換反応(ii)を促進するかまたは容易にする、任意の好適な量または濃度で使用され得る。例えば、1つの実施形態において、その塩基は、0.9~10当量の量で使用される。1つの実施形態において、その塩基は、2~8当量、3~7当量または4~6当量の量で使用される。1つの実施形態において、その塩基は、1.5~2.5当量の量で使用される。1つの実施形態において、その塩基は、0.9~1.3当量の量で使用される。
【0083】
1つの実施形態において、反応(ii)において使用される重水素化された試薬は、ヨードメタン-Dであるが、これに限定されない。
【0084】
1つの実施形態において、反応(ii)からの反応混合物は、所望の変換を達成するためにモニターされる。1つの実施形態において、d6-DM-J(スキーム1,反応(ii)を参照のこと)の残留レベルに応じて、さらなる部分の重水素化された試薬が加えられる。
【0085】
1つの実施形態において、反応(ii)は、所望のN-メチル化の進行を可能にする任意の好適な温度で行われる。
【0086】
1つの実施形態において、反応(ii)における温度範囲は、-90℃~90℃(両端を含む)である。
【0087】
1つの実施形態において、反応(ii)において用いられる温度は、-90℃~0℃(両端を含む)の範囲内である。
【0088】
1つの実施形態において、反応(ii)において用いられる温度は、-90℃~-50℃(両端を含む)の範囲内である。
【0089】
1つの実施形態において、反応(ii)において用いられる温度は、-80℃~-70℃(両端を含む)の範囲内である。
【0090】
次いで、1つの実施形態において、クエンチング試薬を加えることによって、反応(ii)混合物がクエンチされる。1つの実施形態において、そのクエンチング試薬は、弱酸性の溶液である。1つの実施形態において、そのクエンチング試薬は、有機溶媒である。1つの実施形態において、その有機溶媒は、メタノールまたはエタノールであり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、クエンチング試薬は、酸性水溶液である。1つの実施形態において、その酸性水溶液は、塩酸、硫酸、クエン酸または酢酸であり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、クエンチング試薬は、無機塩である。1つの実施形態において、その無機塩は、塩化アンモニウム、炭酸水素ナトリウムまたはリン酸塩であり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、クエンチング試薬は、塩化アンモニウム水溶液である。1つの実施形態において、クエンチング試薬は、水である。1つの実施形態において、塩化アンモニウム水溶液が、反応(ii)混合物に加えられ、その反応混合物が、減圧下で加温されて、任意の残留ヨードメタン-D3が除去される。1つの実施形態において、未反応のヨードメタン-D3は、-50℃~-40℃(両端を含む)の範囲内の温度における真空下で蒸発される。1つの実施形態において、精製水が、反応(ii)混合物に加えられる。次いで、1つの実施形態において、有機相が分離される。1つの実施形態において、水相が、有機溶媒で抽出される。1つの実施形態において、その有機溶媒は、ジエチルエーテルまたはメチル-t-ブチルエーテルであり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その有機溶媒は、メチル-t-ブチルエーテルである。1つの実施形態において、合わせた有機相が、真空下で濃縮され、溶媒が、好適なアルコールに交換される。1つの実施形態において、そのアルコールは、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールのうちの少なくとも1つであるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、そのアルコールは、メタノールである。1つの実施形態において、精製水がゆっくり加えられ、その混合物が冷却される。1つの実施形態において、式(III)の化合物は、濾過によって単離され、精製水で洗浄され、乾燥される。
【0091】
1つの実施形態において、反応(ii)混合物に対する反応が完了したら、過剰なヨードメタン-D3を消費するために、さらなるn-ブチルリチウムが加えられる。次いで、1つの実施形態において、反応(ii)混合物が、クエンチング試薬を加えることによってクエンチされる。1つの実施形態において、そのクエンチング試薬は、弱酸性の溶液である。1つの実施形態において、そのクエンチング試薬は、有機溶媒である。1つの実施形態において、その有機溶媒は、メタノールまたはエタノールであり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、クエンチング試薬は、酸性水溶液である。1つの実施形態において、その酸性水溶液は、塩酸、硫酸、クエン酸または酢酸であり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、クエンチング試薬は、無機塩である。1つの実施形態において、その無機塩は、塩化アンモニウム、炭酸水素ナトリウムまたはリン酸塩であり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、クエンチング試薬は、塩化アンモニウム水溶液である。次いで、1つの実施形態において、精製水が、反応(ii)混合物に加えられる。次いで、1つの実施形態において、有機相が分離される。1つの実施形態において、水相が、有機溶媒で抽出される。1つの実施形態において、その有機溶媒は、ジエチルエーテルまたはメチル-t-ブチルエーテルであり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、有機溶媒は、メチル-t-ブチルエーテルである。1つの実施形態において、合わせた有機相が、真空下で濃縮され、溶媒が、好適なアルコールに交換される。1つの実施形態において、そのアルコールは、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールのうちの少なくとも1つであるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、そのアルコールは、メタノールである。1つの実施形態において、精製水がゆっくり加えられ、その混合物が冷却される。1つの実施形態において、式(III)の化合物は、濾過によって単離され、精製水で洗浄され、乾燥される。
【0092】
1つの実施形態において、式(III)の化合物は、メタノール/水から再結晶化される。1つの実施形態において、収率は、純度>90%で>70%である。
【0093】
1つの実施形態において、式(III)の化合物は、臭化水素酸塩である。
【0094】
1つの実施形態において、式(III)の化合物の臭化水素酸塩は、一水和物である。
【0095】
1つの実施形態において、上記方法はさらに、反応(iii)において、反応(ii)からの式(III)のO-メチル化された化合物を式(VI)の化合物
【化16】
にO-脱メチル化する工程を含む。
【0096】
例えば、1つの実施形態において、式(III)の化合物が、好適な酸と混合され、d6-DM-Jのレベルが≦1%になるまで加熱される。1つの実施形態において、式(III)の化合物が、好適な酸と混合され、d6-DM-Jのレベルが≦1.5%になるまで加熱される。1つの実施形態において、式(III)の化合物が、好適な酸と混合され、d6-DM-Jのレベルが≦2%になるまで加熱される。1つの実施形態において、式(III)の化合物が、好適な酸と混合され、d6-DM-Jのレベルが≦2.5%になるまで加熱される。1つの実施形態において、式(III)の化合物が、好適な酸と混合され、d6-DM-Jのレベルが≦3%になるまで加熱される。1つの実施形態において、式(III)の化合物が、好適な酸と混合され、d6-DM-Jのレベルが≦3.5%になるまで加熱される。1つの実施形態において、式(III)の化合物が、好適な酸と混合され、d6-DM-Jのレベルが≦4%になるまで加熱される。1つの実施形態において、式(III)の化合物が、好適な酸と混合され、d6-DM-Jのレベルが≦4.5%になるまで加熱される。1つの実施形態において、式(III)の化合物が、好適な酸と混合され、d6-DM-Jのレベルが≦5%になるまで加熱される。
【0097】
1つの実施形態において、酸は、三臭化ホウ素または臭化水素酸であるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、酸は、臭化水素酸である。
【0098】
次いで、1つの実施形態において、反応(iii)混合物が冷却され、好適な塩基と混合される。1つの実施形態において、その塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム、炭酸二ナトリウムまたは水酸化アンモニウムのうちの少なくとも1つであるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その塩基は、炭酸カリウムである。次いで、1つの実施形態において、有機溶媒が反応混合物に加えられる。1つの実施形態において、その有機溶媒は、塩化メチレン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたは2-メチルテトラヒドロフランのうちの少なくとも1つであるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その有機溶媒は、2-メチルテトラヒドロフランである。次いで、1つの実施形態において、有機相が分離され、精製水で洗浄される。1つの実施形態において、合わせた水相がさらに、有機溶媒で抽出される。1つの実施形態において、その有機溶媒は、塩化メチレン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたは2-メチルテトラヒドロフランのうちの少なくとも1つであるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その有機溶媒は、2-メチルテトラヒドロフランである。次いで、1つの実施形態において、合わせた有機相が、真空下で濃縮され、溶媒が、非極性有機溶媒に交換される。1つの実施形態において、その非極性有機溶媒は、ペンタン、ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、1,4-ジオキサンまたはジエチルエーテルのうちの少なくとも1つであるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その非極性有機溶媒は、n-ヘプタンである。1つの実施形態において、混合物は、冷却され、濾過され、非極性有機溶媒で洗浄され、乾燥される。
【0099】
1つの実施形態において、式(VI)の化合物の収率は、>96%の純度で>70%である。
【0100】
1つの実施形態において、その方法はさらに、反応(iv)において、塩基および重水素化された試薬の存在下、-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内の温度において、反応(iii)からの式(VI)のO-脱メチル化された化合物を式(I)の化合物にO-メチル化する工程を含む。
【0101】
例えば、1つの実施形態において、式(VI)の化合物が、有機溶媒と混合され、得られた溶液が、含水量について試験される。1つの実施形態において、その有機溶媒は、非プロトン性溶媒(例えば、ジオキサン、ジエチルエーテル、塩化メチレン)であり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その有機溶媒は、塩化メチレン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテルまたはジメチルホルムアミドのうちの少なくとも1つであるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その有機溶媒は、ジメチルホルムアミドである。1つの実施形態において、含水量が>0.05%である場合、乾燥剤が混合物に加えられ、撹拌後、濾過によって除去される。1つの実施形態において、その乾燥剤は、種々のポアサイズを有するモレキュラーシーブであるが、これに限定されない。1つの実施形態において、そのモレキュラーシーブは、3Å~5Åのポアサイズを有する。1つの実施形態において、その乾燥剤は、4Åのポアサイズを有するモレキュラーシーブ粉末である。
【0102】
1つの実施形態において、O-メチル化は、塩基およびヨードメタン-Dの存在下、-10~10℃(両端を含む)の範囲内の温度において行われる。1つの実施形態において、その塩基は、水酸化セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムt-ブトキシドまたはカリウムt-ブトキシドのうちの少なくとも1つであり得るが、これらに限定されない。
【0103】
1つの実施形態において、O-メチル化は、塩基およびヨードメタン-Dの存在下、-3~-1℃(両端を含む)の範囲内の温度において行われる。
【0104】
1つの実施形態において、反応(iv)では、塩基は、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシドおよびカリウムt-ブトキシドから選択され得る。
【0105】
1つの実施形態において、反応(iv)において選択される塩基は、カリウムt-ブトキシドである。
【0106】
1つの実施形態において、O-メチル化は、カリウムt-ブトキシドの存在下において行われる。1つの実施形態において、カリウムt-ブトキシドが、反応混合物溶液に加えられ、撹拌後、ヨードメタン-D3を含むジメチルホルムアミド溶液が加えられる。1つの実施形態において、その反応は、残留する式(VI)の化合物が≦5%になるまで続けられるが、それより高いレベルも許容され得る。1つの実施形態において、精製水が加えられ、式(I)の化合物が、濾過によって単離される。1つの実施形態において、濾過ケークが、水で洗浄され、乾燥されることにより、式(I)の化合物が得られる。
【0107】
1つの実施形態において、式(I)の化合物の収率は、>96%の純度で>70%である。
【0108】
1つの実施形態において、反応(iv)において用いられる温度は、-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内である。
【0109】
1つの実施形態において、反応(iv)において用いられる温度は、-3℃~-1℃(両端を含む)の範囲内である。
【0110】
1つの実施形態において、上記方法の反応(v)はさらに、式(I)の化合物を薬学的に許容され得る塩に変換する工程を含む。1つの実施形態において、その塩は、式(IV)の臭化水素酸塩一水和物である。1つの実施形態において、その塩は、臭化水素酸を含む溶液を用いた結晶化によって形成される。
【0111】
1つの実施形態において、反応(v)では、1つまたはそれを超える溶液が、0.45μmフィルターを用いて濾過され、1つまたはそれを超える操作が、クラス100,000のクリーンルームにおいて行われる。1つの実施形態において、精製水および式(I)の化合物が、反応器において混合される。1つの実施形態において、臭化水素酸溶液が加えられた後、精製水が加えられる。1つの実施形態において、溶液が形成するまで、得られた混合物が加熱され、次いで、結晶化を生じさせるために冷却される。1つの実施形態において、粒径が最適化されるように、混合物が数サイクルにわたって加熱および冷却され、次いで、周囲温度に冷却される。1つの実施形態において、生成物が、濾過によって単離され、精製水で洗浄され、乾燥されることにより、式(IV)の化合物が得られる。1つの実施形態において、その乾燥は、30~50℃において行われる。1つの実施形態において、その乾燥は、40~45℃において行われる。
【0112】
1つの実施形態において、式(IV)の化合物の収率は、純度≧98%で約75%である。
【0113】
1つの実施形態において、本開示は、式(I)の重水素化デキストロメトルファンまたはその薬学的に許容され得る塩を合成するための方法も提供し、その方法は、
(i)式(II)のデキストロメトルファン化合物
【化17】
を式(VII)の化合物
【化18】
に重水素化する工程であって、式(II)のデキストロメトルファン化合物のメトキシ基を式(VIII)の化合物
【化19】
にO-脱メチル化することによる、工程;
(ii)塩基および重水素化された試薬の存在下、-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるO-メチル化によって、(i)のO-脱メチル化された反応生成物を式(VII)の化合物に重水素化する工程;
(iii)式(VII)のデキストロメトルファン化合物の第三級アミンを式(IX)の化合物;
【化20】
にN-脱メチル化する工程;および
(iv)塩基および重水素化された試薬の存在下、-90℃~90℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるN-メチル化によって、(iii)のN-脱メチル化された反応生成物を式(I)の化合物に重水素化する工程
を含む。
【0114】
1つの実施形態において、上記方法は、(i)式(II)のO-メチル化された化合物を式(VIII)の化合物にO-脱メチル化する工程を含む。
【0115】
例えば、1つの実施形態において、式(II)の化合物が、好適な酸と混合され、出発物質(すなわち、式IIの化合物)のレベルが≦1%になるまで加熱される。1つの実施形態において、その酸は、三臭化ホウ素または臭化水素酸であるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その酸は、臭化水素酸である。
【0116】
次いで、1つの実施形態において、反応(i)混合物が冷却され、好適な塩基と混合される。1つの実施形態において、その塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム、炭酸二ナトリウムまたは水酸化アンモニウムのうちの少なくとも1つであるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その塩基は、炭酸カリウムである。次いで、1つの実施形態において、有機溶媒が、反応混合物に加えられる。1つの実施形態において、その有機溶媒は、塩化メチレン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたは2-メチルテトラヒドロフランのうちの少なくとも1つであるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その有機溶媒は、2-メチルテトラヒドロフランである。次いで、1つの実施形態において、有機相が分離され、精製水で洗浄される。1つの実施形態において、合わせた水相がさらに、有機溶媒で抽出される。1つの実施形態において、その有機溶媒は、塩化メチレン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたは2-メチルテトラヒドロフランのうちの少なくとも1つであるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その有機溶媒は、2-メチルテトラヒドロフランである。次いで、1つの実施形態において、合わせた有機相が真空下で濃縮され、溶媒が有機溶媒と交換される。1つの実施形態において、その有機溶媒は、非極性有機溶媒である。1つの実施形態において、その非極性有機溶媒は、ペンタン、ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、1,4-ジオキサンまたはジエチルエーテルのうちの少なくとも1つであるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その非極性有機溶媒は、n-ヘプタンである。1つの実施形態において、混合物が冷却され、濾過され、非極性有機溶媒で洗浄され、乾燥されることにより、式(VIII)の化合物が得られる。1つの実施形態において、式(VIII)の化合物の収率は、>96%の純度で>70%である。
【0117】
1つの実施形態において、上記方法は、反応(ii)、塩基および重水素化された試薬の存在下、-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内の温度において、反応(i)からの式(VIII)のO-脱メチル化された化合物を式(VII)の化合物にO-メチル化する工程を含む。
【0118】
例えば、1つの実施形態において、式(VIII)の化合物が、有機溶媒と混合され、得られた溶液が、含水量について試験される。1つの実施形態において、その有機溶媒は、非プロトン性溶媒(例えば、ジオキサン、ジエチルエーテル、塩化メチレン)であり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その有機溶媒は、塩化メチレン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテルまたはジメチルホルムアミドのうちの少なくとも1つであるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その有機溶媒は、ジメチルホルムアミドである。1つの実施形態において、混合物の含水量が>0.05%である場合、乾燥剤が混合物に加えられ、撹拌後、濾過によって除去される。1つの実施形態において、その乾燥剤は、種々のポアサイズを有するモレキュラーシーブであるが、これに限定されない。1つの実施形態において、そのモレキュラーシーブは、3Å~5Åのポアサイズを有する。1つの実施形態において、その乾燥剤は、4Åのポアサイズを有するモレキュラーシーブ粉末である。
【0119】
1つの実施形態において、O-メチル化反応は、塩基およびヨードメタン-Dの存在下、-10~10℃(両端を含む)の範囲内の温度において行われる。1つの実施形態において、その塩基は、水酸化セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムt-ブトキシドまたはカリウムt-ブトキシドのうちの少なくとも1つであり得るが、これらに限定されない。
【0120】
1つの実施形態において、O-メチル化反応は、塩基および重水素化された試薬の存在下、-3~-1℃(両端を含む)の範囲内の温度において行われる。
【0121】
1つの実施形態において、O-メチル化反応(ii)において使用される重水素化された試薬は、ヨードメタン-Dである。
【0122】
1つの実施形態において、反応(ii)では、塩基は、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシドおよびカリウムt-ブトキシドから選択され得る。
【0123】
1つの実施形態において、反応(ii)のために選択される塩基は、カリウムt-ブトキシドである。
【0124】
1つの実施形態において、O-メチル化反応は、カリウムt-ブトキシドの存在下において行われる。1つの実施形態において、カリウムt-ブトキシドが、反応混合物溶液に加えられ、撹拌後、ヨードメタン-D3を含むジメチルホルムアミド溶液が加えられる。1つの実施形態において、その反応は、残留する式(VIII)の化合物が≦5%になるまで続けられるが、それより高いレベルも許容され得る。1つの実施形態において、精製水が加えられ、式(VII)の化合物が、濾過によって単離される。1つの実施形態において、濾過ケークが、水で洗浄され、乾燥されることにより、式(VII)の化合物が得られる。1つの実施形態において、式(VII)の化合物の収率は、>96%の純度で>70%である。
【0125】
1つの実施形態において、反応(ii)において用いられる温度は、-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内である。
【0126】
1つの実施形態において、反応(ii)において用いられる温度は、-3℃~-1℃(両端を含む)の範囲内である。
【0127】
1つの実施形態において、N-脱メチル化反応(iii)は、一般的な公知の試薬(例えば、ハロゲン化シアン、ハロゲン化アシルおよび様々なクロロホルメートであるがこれらに限定されない)を用いて行われ得る。1つの実施形態において、そのハロゲン化アシルは、塩化アセチルであり得るが、これに限定されない。1つの実施形態において、そのクロロホルメートは、クロロギ酸1-クロロエチル、クロロギ酸エチルまたはクロロギ酸2,2,2-トリクロロエチルのうちの少なくとも1つであり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、そのクロロホルメートは、クロロギ酸1-クロロエチルである。その後、1つの実施形態において、反応混合物を加熱し、式(IX)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩が得られるまでメタノールを加えることによって、カルバメートが除去される。1つの実施形態において、N-脱メチル化反応は、極端でない温度において、例えば、周囲温度から反応混合物の還流温度までにおいて行われる。1つの実施形態において、その反応は、より高い温度、例えば、30℃~100℃(両端を含む)において進められ得る。1つの実施形態において、その温度範囲は、40℃~90℃(両端を含む)である。1つの実施形態において、その温度範囲は、50℃~80℃(両端を含む)である。1つの実施形態において、その温度範囲は、60℃~70℃(両端を含む)である。
【0128】
1つの実施形態において、N-脱メチル化反応は、水分を含まない環境を維持するために、不活性雰囲気下、例えば、窒素下またはアルゴン下で行われ得る。1つの実施形態において、中間体カルバメートを得るために、溶媒が除去され得る。次いで、例えば、水溶液中でのZnおよび酢酸との反応によって、またはメタノールを加え、反応混合物を加熱還流することによって、中間体カルバメートは加水分解される。
【0129】
1つの実施形態において、N-脱メチル化反応(iii)は、その反応が≧93%完了するまで、クロロギ酸1-クロロエチルの存在下において行われる。次いで、1つの実施形態において、カルバメート官能基が、メタノールおよび加熱を用いて除去される。1つの実施形態において、メタノールは、N-脱メチル化が≧98%完了したとき、真空によって除去される。1つの実施形態において、残留メタノールの量は、100ppm以下である。
【0130】
1つの実施形態において、有機溶媒が、反応(iii)混合物に再度加えられ、溶媒が真空下で除去される。1つの実施形態において、その有機溶媒は、トルエンであるが、これに限定されない。1つの実施形態において、この手順は、メタノールの量が約100ppmまたはそれ未満になるまで繰り返される。
【0131】
1つの実施形態において、不純物を目標レベルまで減少させるために、反応(iii)混合物にアルコールが加えられる。1つの実施形態において、そのアルコールは、イソプロパノールであるが、これに限定されない。1つの実施形態において、式(VII)の化合物の不純物のレベルが、HPLCによって測定される。
【0132】
1つの実施形態において、式(VII)の化合物に対する不純物の目標レベルは、0.5%以下に減少される。
【0133】
1つの実施形態において、式(VII)の化合物に対する不純物レベルは、2.0%以下に減少される。
【0134】
1つの実施形態において、不純物を目標レベルまで減少させるために、さらなるイソプロパノールが、反応(iii)の生成物に加えられる。
【0135】
1つの実施形態において、式(IX)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、濾過によって単離され、有機溶媒でリンスされる。1つの実施形態において、その有機溶媒は、トルエンであるが、これに限定されない。次いで、1つの実施形態において、式(IX)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、有機溶媒のレベルが≦3%になるまで、約50℃で乾燥される。1つの実施形態において、式(IX)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、有機溶媒のレベルが≦3%になるまで、約40℃で乾燥される。1つの実施形態において、式(IX)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、有機溶媒のレベルが≦3%になるまで、約30℃で乾燥される。
【0136】
1つの実施形態において、式(IX)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、有機溶媒のレベルが≦2%になるまで、約40℃で乾燥される。1つの実施形態において、式(IX)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、有機溶媒のレベルが≦2%になるまで、約30℃で乾燥される。
【0137】
1つの実施形態において、式(IX)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、有機溶媒のレベルが≦1%になるまで、約40℃で乾燥される。1つの実施形態において、式(IX)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、有機溶媒のレベルが≦1%になるまで、約30℃で乾燥される。
【0138】
1つの実施形態において、反応(iii)において得られる生成物の収率は、約>90%の純度で>70%である。
【0139】
1つの実施形態において、上記方法は、反応(iv)において、塩基および重水素化された試薬の存在下、-90℃~90℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるN-メチル化によって、反応(iii)からの式(IX)のN-脱メチル化された化合物またはその薬学的に許容され得る塩を式(I)の化合物に重水素化する工程を含む。
【0140】
1つの実施形態において、反応(iv)において用いられる温度は、-80℃~80℃(両端を含む)、-70℃~70℃(両端を含む)、-60℃~60℃(両端を含む)、-50℃~50℃(両端を含む)、-40℃~40℃(両端を含む)、-30℃~30℃(両端を含む)、-20℃~20℃(両端を含む)または-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内である。
【0141】
例えば、1つの実施形態において、反応(iv)は、式(IX)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を有機溶媒に溶解する工程およびその溶液を冷却する工程を含む。1つの実施形態において、その有機溶媒は、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル)、塩化メチレン、ジオキサンまたはテトラヒドロフランのうちの少なくとも1つであるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その有機溶媒は、テトラヒドロフランである。1つの実施形態において、低温は、-90℃~0℃(両端を含む)の範囲内である。1つの実施形態において、低温は、-85℃~-5℃(両端を含む)、-75℃~-15℃(両端を含む)、-65℃~-25℃(両端を含む)、-55℃~-35℃(両端を含む)または-45℃~-40℃(両端を含む)の範囲内である。
【0142】
次いで、1つの実施形態において、塩基が反応(iv)に加えられた後、重水素化された試薬が加えられる。
【0143】
1つの実施形態において、重水素化された試薬は、ヨードメタン-Dであり得るが、これに限定されない。1つの実施形態において、その反応は、好適な塩基中で行われる。1つの実施形態において、好適な塩基は、有機塩基(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン)または無機塩基(例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)であり得るが、これらに限定されない。
【0144】
1つの実施形態において、反応(iv)のための塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム、アルキルリチウム(例えば、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、n-ヘキシルリチウム)、リチウムアミド(例えば、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド)および第三級有機アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン)から選択され得るが、これらに限定されない。
【0145】
1つの実施形態において、反応(iv)において使用される第三級有機アミンは、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンである。1つの実施形態において、反応(iv)において使用されるアルキルリチウム塩基は、n-ブチルリチウムである。1つの実施形態において、リチウムアミド塩基は、リチウムジイソプロピルアミドである。
【0146】
1つの実施形態において、反応(iv)において選択される塩基は、n-ブチルリチウムである。
【0147】
1つの実施形態において、反応(iv)において使用される塩基は、有効量である、すなわち、工程(iv)における交換反応を促進するかまたは容易にする、任意の好適な量または濃度で使用され得る。例えば、1つの実施形態において、その塩基は、0.9~10当量の量で使用される。1つの実施形態において、その塩基は、2~8当量、3~7当量または4~6当量の量で使用される。1つの実施形態において、その塩基は、1.5~2.5当量の量で使用される。1つの実施形態において、その塩基は、0.9~1.3当量の量で使用される。
【0148】
1つの実施形態において、反応(iv)において使用される重水素化された試薬は、ヨードメタン-Dである。
【0149】
1つの実施形態において、反応(iv)混合物は、所望の変換を達成するためにモニターされる。1つの実施形態において、出発物質を消費するために、さらなる部分の重水素化された試薬が加えられる。
【0150】
1つの実施形態において、反応(iv)は、所望のN-メチル化の進行を可能にする任意の好適な温度で行われる。
【0151】
1つの実施形態において、工程(iv)における温度範囲は、-90℃~90℃(両端を含む)である。
【0152】
1つの実施形態において、反応(iv)において用いられる温度は、-90℃~0℃(両端を含む)の範囲内である。
【0153】
1つの実施形態において、反応(iv)において用いられる温度は、-90℃~-50℃(両端を含む)の範囲内である。
【0154】
1つの実施形態において、反応(iv)において用いられる温度は、-80℃~-70℃(両端を含む)の範囲内である。
【0155】
次いで、1つの実施形態において、反応(iv)では、クエンチング試薬を加えることによって、反応混合物がクエンチされる。1つの実施形態において、そのクエンチング試薬は、弱酸性の溶液である。1つの実施形態において、そのクエンチング試薬は、塩化アンモニウム水溶液であるが、これに限定されない。1つの実施形態において、反応(iv)では、塩化アンモニウム水溶液が加えられ、その反応混合物が、減圧下で加温されて、任意の残留ヨードメタン-D3が除去される。1つの実施形態において、未反応のヨードメタン-D3は、-50℃~-40℃(両端を含む)の範囲内の温度における真空下で蒸発される。1つの実施形態において、精製水が、反応(iv)混合物に加えられる。次いで、1つの実施形態において、有機相が分離される。1つの実施形態において、水相が、有機溶媒で抽出される。1つの実施形態において、その有機溶媒は、ジエチルエーテルまたはメチル-t-ブチルエーテルであり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その有機溶媒は、メチル-t-ブチルエーテルである。1つの実施形態において、合わせた有機相が、真空下で濃縮され、溶媒が、好適なアルコールと交換される。1つの実施形態において、そのアルコールは、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールのうちの少なくとも1つであるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、そのアルコールは、メタノールである。1つの実施形態において、精製水がゆっくり加えられ、その混合物が冷却される。1つの実施形態において、式(I)の化合物は、濾過によって単離され、精製水で洗浄され、乾燥される。
【0156】
1つの実施形態において、式(I)の化合物は、メタノール/水から再結晶化される。1つの実施形態において、収率は、純度>90%で>70%である。
【0157】
1つの実施形態において、上記方法は、反応(v)において、式(I)の化合物を薬学的に許容され得る塩に変換する工程を含む。1つの実施形態において、その塩は、式(IV)の臭化水素酸塩一水和物である。1つの実施形態において、その塩は、臭化水素酸を含む溶液を用いた結晶化によって形成される。
【0158】
1つの実施形態において、反応(v)では、1つまたはそれを超える溶液が、0.45μmフィルターを用いて濾過され、1つまたはそれを超える操作が、クラス100,000のクリーンルームにおいて行われる。1つの実施形態において、精製水および式(I)の化合物が、反応器において混合される。1つの実施形態において、臭化水素酸溶液が加えられた後、精製水が加えられる。1つの実施形態において、溶液が形成するまで、得られた混合物が加熱され、次いで、結晶化を生じさせるために冷却される。1つの実施形態において、粒径が最適化されるように、混合物が数サイクルにわたって加熱および冷却され、次いで、周囲温度に冷却される。1つの実施形態において、生成物が、濾過によって単離され、精製水で洗浄され、乾燥されることにより、式(IV)の化合物が得られる。1つの実施形態において、その乾燥は、30~50℃において行われる。1つの実施形態において、その乾燥は、40~45℃において行われる。
【0159】
1つの実施形態において、式(IV)の化合物の収率は、純度≧98%で約75%である。
【0160】
スキーム1および2は、式(I)の重水素化デキストロメトルファンに至る例示的な経路を示している。スキーム3は、式(IV)の化合物に至る例示的な経路を示している。スキーム1に示されているように、デキストロメトルファン臭化水素酸塩一水和物が最初に、反応(i)において水酸化ナトリウムで処理された後、次いで、クロロギ酸1-クロロエチルを用いたアミンのアシル化が行われ、続いて、その反応混合物を加熱し、d6-DM-J HClが得られるまでメタノールを加えることによって、カルバメートが除去される。次いで、反応(ii)において、化合物d6-DM-J HClが、適切に重水素化されたヨードメタンを用いてn-BuLiの存在下においてN-メチル化されることにより、d6-DM-Fまたは式(III)の化合物が得られる。反応(iii)において、化合物d6-DM-Fまたは式(iii)の化合物が、臭化水素酸を用いてO-脱メチル化されることにより、アルコールd6-DM-Hまたは式VIの化合物が得られる。次いで、反応(iv)において、化合物d6-DM-Hまたは式(VI)の化合物が、カリウムt-ブトキシドの存在下において、適切に重水素化された(deuterared)ヨードメタンで処理されることにより、d6-DM遊離塩基または式(I)の化合物が得られる。
【0161】
スキーム2に示されているように、反応(i)において、式(II)の化合物が、臭化水素酸を用いてO-脱メチル化されることにより、式(VIII)のアルコールが得られる。反応(ii)において、式(VIII)の化合物が、カリウムt-ブトキシドの存在下において、適切に重水素化されたヨードメタンを用いてO-メチル化されることにより、式(VII)の化合物が得られる。次いで、反応(iii)において、式(VII)の化合物が、クロロギ酸1-クロロエチルを用いてN-アシル化された後、その後、その反応混合物を加熱し、式(IX)の化合物が得られるまでメタノールを加えることによって、カルバメートが除去される。次いで、反応(iv)において、式(IX)の化合物が、n-BuLiの存在下において、適切に重水素化されたヨードメタンを用いてN-メチル化されることにより、式(I)の化合物が得られる。
【0162】
式(IV)の化合物の調製は、スキーム1または2に示されているように得ることができる式(I)の化合物を用いるスキーム3を介して達成される。d6-DM遊離塩基の化合物または式(I)の化合物を水および臭化水素酸溶液で処理した後、加熱および冷却を繰り返すことによって、d6-DM臭化水素酸塩一水和物または式(IV)の化合物が得られる。
【0163】
式(I)の化合物を合成するための例示的な経路をスキーム1に示す。
【化21】
【0164】
式(I)の化合物を合成するための例示的な代替経路をスキーム2に示す。
【化22】
【0165】
式(IV)の化合物を合成するための例示的な経路をスキーム3に示す。
【化23】
【0166】
上に示された特定のアプローチおよび化合物は、限定していることを意図されていない。式(I)および(IV)の化合物ならびにそれらの合成前駆物質(本明細書中のスキームに明示的に示されていない経路内のものを含む)を合成するさらなる方法は、当該分野の通常の技能を有する化学者の手段の範囲内である。該当する化合物の合成において有用な合成化学の変換および保護基の方法(保護および脱保護)は、当該分野で公知であり、それらには、例えば、Larock R,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);Greene T Wら、Protective Groups in Organic Synthesis,第3版,John Wiley and Sons(1999);Fieser Lら、Fieser and Fiesre’s Reagents for Organic Synthesis,John WIley and SOns(1994);およびPaquette L,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)およびそれらのその後の版に記載されているものが含まれる。
組成物
【0167】
本開示は、式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容され得る塩、溶媒和物もしくは水和物を含む組成物も提供する。1つの実施形態において、本開示の組成物は、薬学的使用のために製剤化され(「薬学的組成物」)、ここで、その組成物は、薬学的に許容され得るキャリアを含む。そのキャリアは、製剤の他の成分と適合性であって、薬において使用される量ではそのレシピエントにとって有害でないという意味において、「薬学的に許容され得る」。1つの実施形態において、その組成物は、アジュバントを含み得る。1つの実施形態において、その組成物は、ビヒクルを含み得る。
【0168】
1つの実施形態において、本開示の薬学的組成物において使用され得る薬学的に許容され得るキャリア、アジュバントおよびビヒクルとしては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、ホスフェートなどの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0169】
1つの実施形態において、所望であれば、薬学的組成物における本開示の化合物の溶解度およびバイオアベイラビリティは、当該分野で周知の方法によって高められ得る。1つの方法としては、製剤における脂質賦形剤の使用が挙げられる。“Oral Lipid-Based Formulations:Enhancing the Bioavailability of Poorly Water-Soluble Drugs(Drugs and the Pharmaceutical Sciences),”David J.Hauss,ed.Informa Healthcare,2007;および“Role of Lipid Excipients in Modifying Oral and Parenteral Drug Delivery:Basic Principles and Biological Examples,”Kishor M.Wasan,ed.Wiley-Inter-science,2006を参照のこと。
【0170】
1つの実施形態において、バイオアベイラビリティを高める別の公知の方法は、必要に応じてLUTROL(商標)およびPLURONIC(商標)(BASF Corporation)などのポロキサマーまたはエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロック共重合体を用いて製剤化される非晶質形の本開示の化合物の使用である。米国特許第7,014,866号;ならびに米国特許出願公開第2006/0094744号および同第2006/0079502号を参照のこと。
【0171】
1つの実施形態において、本開示の薬学的組成物には、経口(例えば、錠剤、徐放カプセル剤およびリポソーム)、直腸、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)投与に適したものが含まれる。1つの実施形態において、本明細書中の式の化合物は、経皮的に(例えば、経皮パッチまたはイオン導入法を用いて)投与される。他の製剤は、単位剤形で好都合に提供され得、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製され得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,Pa.(第17版、1985)を参照のこと。
【0172】
1つの実施形態において、そのような調製方法は、薬学的に許容され得るキャリアなどの投与される成分と分子を合わせる工程を含む。1つの実施形態において、組成物は、活性成分を液体キャリア、リポソームまたは微粉化された固体キャリアのうちの1つまたはそれを超えるものと均一かつ密接に合わせ、次いで、所望であれば、生成物を成形することによって、調製される。
【0173】
1つの実施形態において、化合物は、経口的に投与される。経口投与に適した本開示の組成物は、別個の単位(例えば、各々が所定の量の活性成分を含む、カプセル、サシェまたは錠剤;散剤または顆粒剤;水性液体または非水性液体における液剤または懸濁剤;水中油型液体エマルジョン;油中水型液体エマルジョン;リポソームに詰められた状態;またはボーラスとしてなどであるがこれらに限定されない)として提供され得る。1つの実施形態において、ゼラチン軟カプセル剤は、そのような懸濁剤を含めるために有用であり得、それは、化合物の吸収速度を有利に高め得る。
【0174】
経口で使用するための錠剤の場合、通常使用されるキャリアとしては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられるが、これらに限定されない。ステアリン酸マグネシウムなどであるがこれに限定されない滑沢剤も通常加えられる。カプセル形態での経口投与の場合、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられるが、これらに限定されない。水性懸濁剤が、経口的に投与されるとき、活性成分は通常、乳化剤および懸濁化剤と合わせられる。1つの実施形態において、所望であれば、ある特定の甘味剤および/または香味剤および/または着色剤を加えてもよい。1つの実施形態において、経口投与に適した組成物としては、風味がつけられた基剤(通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント)中に成分を含むロゼンジ;ならびに不活性な基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア)中に活性成分を含むトローチ剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0175】
1つの実施形態において、非経口投与に適した組成物としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および意図されるレシピエントの血液と製剤を等張性にする溶質を含み得る水性および非水性の滅菌された注射液剤;ならびに懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の滅菌された懸濁剤が挙げられるがこれらに限定されない。1つの実施形態において、製剤は、単回投与用または複数回投与用の容器、例えば、密封されたアンプルおよびバイアルの中に提供され得、使用の直前に、滅菌された液体キャリア、例えば、注射用水を加えることだけが必要なフリーズドライされた(凍結乾燥された)状態で貯蔵され得る。1つの実施形態において、即時調合の注射液剤および注射懸濁剤は、滅菌された散剤、顆粒剤および錠剤から調製され得る。
【0176】
1つの実施形態において、そのような注射液剤は、例えば、滅菌された注射可能な水性または油性の懸濁剤の形態であり得る。この懸濁剤は、好適な分散剤または湿潤剤(例えば、Tween80)および懸濁化剤を用いた当該分野で公知の手法に従って製剤化され得る。1つの実施形態において、滅菌された注射可能な調製物は、無毒性で非経口的に許容され得る希釈剤または溶媒における滅菌された注射可能な液剤または懸濁剤、例えば、1,3-ブタンジオールにおける液剤でもあり得る。1つの実施形態において、使用され得る許容され得るビヒクルおよび溶媒は、マンニトール、水、リンガー溶液および等張性塩化ナトリウム溶液であるが、これらに限定されない。さらに、滅菌された固定油が、溶媒または懸濁媒として従来使用されている。この目的では、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含むがこれらに限定されない任意の低刺激の固定油が使用され得る。天然の薬学的に許容され得る油(例えば、オリーブ油またはひまし油であるがこれらに限定されない)、特に、それらのポリオキシエチル化されたバージョンと同様に、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸が、注射可能物の調製において有用である。1つの実施形態において、これらの油液剤または油懸濁剤は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤も含み得る。
【0177】
1つの実施形態において、本開示の薬学的組成物は、直腸投与用の坐剤の形態で投与され得る。これらの組成物は、室温では固体であるが直腸温度では液体になるがゆえに直腸において融解して活性な構成要素を放出する好適な非刺激性の賦形剤と本開示の化合物を混合することによって調製され得る。そのような材料としては、カカオバター、蜜ろうおよびポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
1つの実施形態において、本開示の薬学的組成物は、経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与され得る。そのような組成物は、薬学的製剤の分野で周知の手法に従って調製され、ベンジルアルコールもしくは他の好適な保存料、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または当該分野で公知の他の可溶化剤もしくは分散剤を用いて、食塩水における液剤として調製され得る。例えば、Alexza Molecular Delivery Corporationに譲渡されたRabinowitz J DおよびZaffaroni A Cの米国特許第6,803,031号を参照のこと。
【0179】
1つの実施形態において、所望の処置が、局所適用によって容易に接近可能な領域または器官を含むとき、本開示の薬学的組成物の局所投与が、使用され得る。皮膚への局所適用の場合、その薬学的組成物は、キャリアに懸濁または溶解された活性な構成要素を含む好適な軟膏を用いて製剤化され得る。本開示の化合物の局所投与のためのキャリアとしては、鉱油、流動石油、白色石油(white petroleum)、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう、および水が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、その薬学的組成物は、キャリアに懸濁または溶解された活性な化合物を含む好適なローションまたはクリームを用いて製剤化され得る。1つの実施形態において、好適なキャリアとしては、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の薬学的組成物は、直腸坐剤製剤によってまたは好適な浣腸製剤として下部腸管にも局所的に適用され得る。局所経皮パッチおよびイオン導入での投与も、本開示に含められる。
【0180】
1つの実施形態において、対象の治療の適用は、目的の部位に投与されるような局所的であり得る。対象組成物を目的の部位に提供するために様々な手法を用いることができ、それらの手法は、例えば、注射、カテーテル、外套針、発射物、プルロニックゲル、ステント、薬物徐放ポリマーまたは内部アクセスを提供する他のデバイスの使用である。
【0181】
したがって、1つの実施形態によると、本開示の化合物は、埋め込み型の医療デバイス(例えば、プロテーゼ、人工弁、血管移植片、ステントまたはカテーテル)をコーティングするための組成物に組み込まれ得る。1つの実施形態において、好適なコーティングおよびコーティングされた埋め込み型デバイスの一般的な調製法は、当該分野で公知であり、米国特許第6,099,562号;同第5,886,026号;および同第5,304,121号に例証されている。それらのコーティングは、通常、生体適合性のポリマー材料(例えば、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレンビニルアセテートおよびそれらの混合物)である。それらのコーティングは必要に応じて、組成物に制御放出の特色を付与するために、フルオロシリコーン、多糖、ポリエチレングリコール、リン脂質またはそれらの組み合わせの好適なトップコートによってさらに覆われることがある。侵襲性のデバイスに対するコーティングは、それらの用語が本明細書中で使用されるとき、薬学的に許容され得るキャリア、アジュバントまたはビヒクルの定義の範囲内に含められるべきである。
【0182】
1つの実施形態において、本開示は、本開示の化合物が、本開示の化合物または本開示の化合物を含む組成物が含浸されているかまたはそれらを含んでいる埋め込み型の薬物放出デバイスから放出され、治療的に活性であるような、前記デバイスを提供する。埋め込み型の薬物放出デバイスとしては、生分解性ポリマーのカプセルまたは小球(bullet)、非分解性で拡散性のポリマーのカプセルおよび生分解性ポリマーのオブラートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
1つの実施形態において、本開示は、本開示の化合物が治療的に活性であるように、前記化合物または前記化合物を含む組成物でコーティングされた埋め込み型の医療デバイスを提供する。
【0184】
ある器官または組織が、被験体から取り出されたために接近可能である場合、そのような器官または組織は、本開示の組成物を含む培地に漬けられ得るか、本開示の組成物は、その器官上に塗布され得るか、または本開示の組成物は、他の任意の便利な方法で適用され得る。
【0185】
1つの実施形態において、本開示の組成物はさらに、第2の治療薬を含む。その第2の治療薬は、デキストロメトルファンと同じ作用機序を有する化合物とともに投与されたとき、有益な特性を有すると知られているかまたはその有益な特性を示す任意の化合物または治療薬から選択され得る。1つの実施形態において、そのような作用物質としては、デキストロメトルファンとの併用において有用であると示唆されたものが挙げられ、それらとしては、米国特許第4,316,888号;同第4,446,140号;同第4,694,010号;同第4,898,860号;同第5,166,207号;同第5,336,980号;同第5,350,756号;同第5,366,980号;同第5,863,927号;米国再発行特許発明第38,115号;米国特許第6,197,830号;同第6,207,164号;同第6,583,152号;および同第7,114,547号;ならびに米国特許出願公開第2001/0044446号;同第2002/0103109号;同第2004/0087479号;同第2005/0129783号;同第2005/0203125号;および同第2007/0191411号に記載されているものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0186】
1つの実施形態において、第2の治療薬は、情動不安定;情動調節障害;自閉症;神経障害および神経変性疾患(例えば、認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリッグ病としても知られる)、アルツハイマー病、パーキンソン病および多発性硬化症);意識障害;脳損傷(例えば、脳卒中、外傷性脳損傷、虚血事象、低酸素事象および神経細胞死);心臓血管疾患(例えば、末梢血管疾患、心筋梗塞およびアテローム性動脈硬化症);緑内障;遅発性ジスキネジア;糖尿病性ニューロパシー;網膜症;ホモシステイン誘発性アポトーシスによって引き起こされる疾患または障害;高レベルのホモシステインによって引き起こされる疾患または障害;慢性疼痛;難治性疼痛;神経因性疼痛;交感神経介在性疼痛(例えば、異痛症、痛覚異常鋭敏症(hyperpathia)、痛覚過敏(hyperalgesia)、感覚異常(dysesthesia)、知覚異常(paresthesia)、求心路遮断疼痛および有痛性感覚脱失痛(anesthesia dolorosa pain));胃腸障害(例えば、過敏性腸症候群を含む)に伴う疼痛;口腔痛;てんかん発作;耳鳴;性機能障害;難治性咳嗽;皮膚炎;嗜癖障害(例えば、刺激物、ニコチン、モルヒネ、ヘロイン(heroine)、他のオピエート、アンフェタミン、コカインおよびアルコールに対する嗜癖または依存);RTT;制御されない喉頭の筋痙攣に起因する音声障害(例えば、外転型痙攣性発声障害、内転型痙攣性発声障害、筋緊張性発声障害および声の震えを含む);メトトレキサート神経毒性;およびがんによって引き起こされる疲労から選択されるがこれらに限定されない疾患または症状の処置または予防において有用な作用物質である。
【0187】
1つの実施形態において、第2の治療薬は、キニジンである。キニジンの共投与は、少なくとも2つの異なる有益な効果を有する。第1に、キニジンの共投与は、血液中に循環するデキストロメトルファンの量を大幅に増加させる。さらに、キニジンの共投与は、より一貫したおよび予測可能なデキストロメトルファン濃度ももたらす。デキストロメトルファンまたはキニジンとデキストロメトルファンとの共投与および血漿中濃度に対するキニジンの効果に関する研究は、特許文献に記載されている(例えば、Smithの米国特許第5,166,207号、米国特許第5,863,927号、米国特許第5,366,980号、米国特許第5,206,248号、米国特許第5,350,756号を参照のこと)。
【0188】
キニジンが、共投与に最もよく使用されているが、他の作用物質(例えば、Inabaら、Drug Metabolism and Disposition.1985;13:443-447、Forme-Pfisterら、Biochem.Pharmacol.1988;37:3829-3835およびBrolyら、Biochem.Pharmacol.1990;39:1045-1053に記載されているものであるがこれらに限定されない)も、デキストロメトルファンの代謝を減少させるためにデキストロメトルファンと共投与され得る。Inabaらに報告されているように、50マイクロモル濃度またはそれ未満のK値(Michaelis-Menton阻害値)を有するCYP2D6阻害剤としては、ノルトリプチリン、クロルプロマジン、ドンペリドン、ハロペリドール、ピパンペロン、ラベタロール、メトプロロール(metaprolol)、オクスプレノロール、プロプラノロール、チモロール、メキシレチン、キニン、ジフェンヒドラミン、アジュマリン、ロベリン、パパベリンおよびヨヒンビンが挙げられる。特に強力な阻害活性を有する化合物としては、ヨヒンビン、ハロペリドール、アジュマリン、ロベリンおよびピパンペロンが挙げられ、これらは、4~0.33μMの範囲のK値を有する。上で報告した作用物質に加えて、Eli Lilly and Co.が商品名Prozacとして販売しているフルオキセチンが、一部の人間の血液中のデキストロメトルファン濃度の上昇において有効であることも見出された。さらに、以下の化合物のいずれもが、CYP2D6を阻害するために使用され得る:テルビナフィン、シナカルセト、ブプレノルフィン、イミプラミン、ブプロピオン、リトナビル、セルトラリン、デュロキセチン、チオリダジン、メトクロプラミド、パロキセチンまたはフルボキサミン。他の酸化防止剤の投与量は、酸化防止剤によって異なり、個別の基準に基づいて決定される。
【0189】
1つの実施形態において、本開示は、別個の剤形の本開示の化合物および上に記載された第2の治療薬のうちのいずれか1つまたはそれを超えるものを提供し、ここで、その化合物および第2の治療薬の剤形は、互いに関連づけられている。用語「互いに関連づけられている」は、本明細書中で使用されるとき、別個の剤形が一緒に包装されていることを意味するか、またはそれらの別個の剤形が一緒に販売および投与される(互いの24時間未満以内に連続的または同時に)ことを意図されていることが直ちに明らかになるように互いに結び付けられていることを意味する。別の実施形態において、本開示の化合物および上に記載された第2の治療薬のうちのいずれか1つまたはそれを超えるものは、単回剤形で提供される。
【0190】
本開示の薬学的組成物において、本開示の化合物は、有効量で存在する。本明細書中で使用されるとき、用語「有効量」とは、適切な投薬レジメンで投与されたとき、処置されている障害の重症度、持続時間もしくは進行を減少させるかもしくは良くするか、処置されている障害の進行を予防するか、処置されている障害の後退を引き起こすか、または別の治療の予防効果もしくは治療効果を高めるかもしくは改善するのに十分な量のことを指す。
【0191】
動物に対する投与量とヒトに対する投与量との相互関係(体表面1平方メートルあたりのミリグラムに基づく)は、Freireichら、(1966)Cancer Chemother.Rep 50:219において説明されている。体表面積は、被験体の身長および体重から概算され得る。例えば、Scientific Tables,Geigy Pharmaceuticals,Ardsley,N.Y.,1970,537を参照のこと。
【0192】
1つの実施形態において、本開示の化合物の有効量は、0.4mg~400mg、4.0mg~350mg、10mg~90mgまたは30mg~45mg(両端を含む)の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、本開示の化合物の有効量は、約45mg、34mg、30mg、28mg、24mg、23mg、20mg、18mg、15mgまたは10mgである。
【0193】
有効な用量は、当業者が認識するように、処置される疾患、疾患の重症度、投与経路、被験体の性別、齢および全般的な健康状態、賦形剤の使用、他の治療的な処置(例えば、他の作用物質の使用)との共使用の可能性および担当医師の判断に応じても変動する。1つの実施形態において、例えば、有効な用量を選択するための指針は、デキストロメトルファンに対する処方情報を参照することによって判断され得る。
【0194】
本開示の化合物およびそれらを含む薬学的組成物は、モルベースで同じ量のデキストロメトルファンを含む薬学的組成物(「モル当量のデキストロメトルファン組成物」)と比べて、より長いクリアランスを示し、投薬の12時間後により高い血漿曝露レベルをもたらす。したがって、1つの実施形態において、本開示は、有効量の式Iの化合物を含む薬学的組成物を提供し、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、同じ投薬レジメンを用いて投与されるモル当量のデキストロメトルファン組成物の血漿曝露レベルを超える血漿曝露レベルがもたらされる。
【0195】
1つの実施形態において、血漿曝露レベルは、同等の被験体に投与されるモル当量のデキストロメトルファン組成物によってもたらされるデキストロメトルファンの血漿曝露レベルの少なくとも110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%またはそれを超える。
【0196】
1つの実施形態において、本開示は、10~60mgの式Iの化合物を含む薬学的組成物を提供し、ここで、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、250~750ナノグラム(ng)-時(h)/mL(AUC)の範囲内の血漿曝露レベルがもたらされる。
【0197】
1つの実施形態において、本開示は、10~60mgの式Iの化合物を含む薬学的組成物を提供し、ここで、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、400~1600ng-h/mL(AUC)の範囲内の血漿曝露レベルがもたらされる。
【0198】
1つの実施形態において、本開示は、10~60mgの式Iの化合物を含む薬学的組成物を提供し、ここで、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、500~1500ng-h/mL(AUC)の範囲内の血漿曝露レベルがもたらされる。
【0199】
1つの実施形態において、本開示は、10~60mgの式Iの化合物を含む薬学的組成物を提供し、ここで、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、1000~1500ng-h/mL(AUC)の範囲内の血漿曝露レベルがもたらされる。
【0200】
1つの実施形態において、本開示は、有効量の式Iの化合物を含む薬学的組成物を提供し、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、同じ投薬レジメンを用いて投与されるモル当量のデキストロメトルファン組成物と比べて、代謝産物の生成速度および生成量が減少する。
【0201】
1つの実施形態において、本開示は、10~60mgの式Iの化合物を含む薬学的組成物を提供し、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、1000ng-h/mL未満またはそれに等しい重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルがもたらされる。
【0202】
1つの実施形態において、本開示は、10~60mgの式Iの化合物を含む薬学的組成物を提供し、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、750ng-h/mL未満またはそれに等しい重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルがもたらされる。
【0203】
1つの実施形態において、本開示は、10~60mgの式Iの化合物を含む薬学的組成物を提供し、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、500ng-h/mL未満またはそれに等しい重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルがもたらされる。
【0204】
1つの実施形態において、本開示は、有効量の式Iの化合物を含む薬学的組成物を提供し、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、同じ投薬レジメンを用いて投与されるモル当量のデキストロメトルファン組成物から生成されるデキストロメトルファンおよびデキストロルファンの血漿曝露レベルと比べて、式Iの化合物の血漿曝露レベルの上昇と、デキストロメトルファン代謝産物アイソトポログ、特に、重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルの低下の両方がもたらされる。
【0205】
1つの実施形態において、本開示は、10~60mgの式Iの化合物を含む薬学的組成物を提供し、前記組成物は、12時間ごとに被験体に反復投与された後、定常状態の間、約1750~約250ng-h/mLという式Iの化合物の血漿曝露レベルを提供する。
【0206】
1つの実施形態において、第2の治療薬を含む薬学的組成物の場合、第2の治療薬の有効量は、その作用物質だけを使用する単独療法レジメンにおいて通常用いられる投与量の約0.01%~100%である。これらの第2の治療薬の通常の単独療法投与量は、当該分野で周知である。例えば、Wellsら編、Pharmacotherapy Handbook,第2版,Appleton and Lange,Stamford,Conn.(2000);PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Lorna Linda,Calif.(2000)(これらの各々の全体が参照により本明細書中に援用される)を参照のこと。
【0207】
1つの実施形態において、上で言及された第2の治療薬のいくつかは、本開示の化合物と相乗的に作用し得ると予想される。このことが生じるときは、第2の治療薬および/または本開示の化合物の有効な投与量を、単独療法において必要とされる投与量から減少させることが可能になり得る。これは、第2の治療薬もしくは(of)本開示の化合物の有毒な副作用が最小限に抑えられること、有効性の相乗的な改善、投与しやすさもしくは使用しやすさの改善、および/または化合物の調製もしくは製剤化の全体的な費用の減少という利点を有する。
【0208】
したがって、1つの実施形態において、本開示は、10~60mgの式Iの化合物および2.5~30mgのキニジンを含む薬学的組成物を提供し、前記組成物は、被験体において12~24時間ごとに反復投与された後、定常状態の間、約1750~約250ng-h/mLという式Iの化合物の最大の血漿曝露レベルを提供し、ここで、前記組成物を被験体に投与することにより、キニジンなしで投与される同モル量の式Iの化合物と比べて、重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルが低下する。
【0209】
1つの実施形態において、本開示は、10~60mgの式Iの化合物および2.5~20mgのキニジンを含む薬学的組成物を提供し、前記組成物は、被験体において12~24時間ごとに反復投与された後、定常状態の間、約1750~約250ng-h/mLという式Iの化合物の最大の血漿曝露レベルを提供し、ここで、前記組成物を被験体に投与することにより、キニジンなしで投与される同モル量の式Iの化合物と比べて、重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルが低下する。
【0210】
1つの実施形態において、本開示は、10~60mgの式Iの化合物および2.5~10mgのキニジンを含む薬学的組成物を提供し、前記組成物は、被験体において12~24時間ごとに反復投与された後、定常状態の間、約1750~約250ng-h/mLという式Iの化合物の最大の血漿曝露レベルを提供し、ここで、前記組成物を被験体に投与することにより、キニジンなしで投与される同モル量の式Iの化合物と比べて、重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルが低下する。
【0211】
1つの実施形態において、本開示は、15~45mgの式Iの化合物および2.5~30mgのキニジンを含む薬学的組成物を提供し、前記組成物は、被験体において12~24時間ごとに反復投与された後、定常状態の間、約1750~約250ng-h/mLという式Iの化合物の最大の血漿曝露レベルを提供し、ここで、前記組成物を被験体に投与することにより、キニジンなしで投与される同モル量の式Iの化合物と比べて、重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルが低下する。
【0212】
1つの実施形態において、本開示は、20~35mgの式Iの化合物および2.5~30mgのキニジンを含む薬学的組成物を提供し、前記組成物は、被験体において12~24時間ごとに反復投与された後、定常状態の間、約1750~約250ng-h/mLという式Iの化合物の最大の血漿曝露レベルを提供し、ここで、前記組成物を被験体に投与することにより、キニジンなしで投与される同モル量の式Iの化合物と比べて、重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルが低下する。
【0213】
1つの実施形態において、本開示は、式Iの化合物およびキニジンを含む薬学的組成物を提供し、前記組成物は、同じ投薬レジメンに従って投与される同じ量のキニジンをさらに含むモル当量のデキストロメトルファン組成物の投与に起因する同等の被験体におけるデキストロメトルファンおよびデキストロルファンの尿中濃度と比べて、被験体において式Iの化合物のより低い尿中濃度および重水素化されたデキストロルファンアイソトポログのより高い尿中濃度を提供する。
【0214】
1つの実施形態において、式Iの化合物およびキニジンは、併用量または別個の用量で投与される。その別個の用量は、実質的に同時に投与され得る。1つの実施形態において、式Iの化合物対キニジンの重量比は、約1:1またはそれ未満である。いくつかの実施形態において、その重量比は、約1:1、1:0.95、1:0.9、1:0.85、1:0.8、1:0.75、1:0.7、1:0.65、1:0.6、1:0.55または1:0.5またはそれ未満である。同様に、ある特定の実施形態において、投与量は、約1:0.5未満、例えば、約1:0.45、1:0.4、1:0.35、1:0.3、1:0.25、1:0.2、1:0.15または1:0.1、1:0.09、1:0.08、1:0.07、1:0.06、1:0.05、1:0.04、1:0.03、1:0.02または1:0.01またはそれ未満の式Iの化合物対キニジンの重量比を有する。その重量比は、例えば、約1:0.75、約1:0.68、約1:0.6、約1:0.56、約1:0.5、約1:0.44、約1:0.39、約1:0.38、約1:0.31、約1:0.30、約1:0.29、約1:0.28、約1:0.27、約1:0.26、約1:0.25、約1:0.24、約1:0.23、約1:0.22、約1:0.21、約1:0.20、約1:0.19、約1:0.18、約1:0.17、1:0.16、約1:0.15、約1:0.14、約1:0.13、約1:0.12、約1:0.11および約1:0.10であり得る。いくつかの実施形態において、式Iの化合物の遊離塩基対キニジンの遊離塩基の重量比は、約1:0.68、約1:0.56、約1:0.44、約1:0.38である。他の実施形態において、式Iの化合物の遊離塩基対キニジンの遊離塩基の重量比は、約1:0.30、約1:0.22、約1:0.19、約1:0.18、約1:0.16および約1:0.15である。
【0215】
ある特定の実施形態において、式Iの化合物およびキニジンが、1:1またはそれ未満の重量比で投与されるとき、50mg未満のキニジンが、任意の一時点に投与される。例えば、ある特定の実施形態において、キニジンは、約30、25もしくは20mgまたはそれ未満で投与される。他の実施形態において、キニジンは、約15、10、9.5、9.0、8.5、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0、5.5、5.0またはそれ未満で投与される。他の実施形態において、キニジンは、約5.00、4.95、4.90、4.85、4.80、4.75、4.70、4.65、4.60、4.55、4.50、4.45、4.40、4.35、4.30、4.25、4.20、4.15、4.10、4.05、4.00、3.95、3.90、3.85、3.80、3.75、3.70、3.65、3.60、3.55、3.50、3.45、3.40、3.35、3.30、3.25、3.20、3.15、3.10、3.05、3.00、2.95、2.90、2.85、2.80、2.75、2.70、2.65、2.60、2.55、2.50、2.45、2.40、2.35、2.30、2.25、2.20、2.15、2.10、2.05、2.00、1.95、1.90、1.85、1.80、1.75、1.70、1.65、1.60、1.55、1.50、1.45、1.40、1.35、1.30、1.25、1.20、1.15、1.10、1.05、1.00、0.95、0.90、0.85、0.80、0.75、0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15、0.10または0.05またはそれ未満で投与される。
【0216】
いくつかの実施形態において、1:1またはそれ未満の重量比の併用量(または同時に投与される別個の用量)は、1日あたりのある特定の投与量レベルが被験体に提供されるように、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回またはそれより頻繁に投与され、例えば、1日あたり60mgのキニジンおよび60mgの式Iの化合物が、2回用量(各用量が30mgのキニジンおよび30mgの式Iの化合物を含む)で提供されるか;1日あたり50mgのキニジンおよび50mgの式Iの化合物が、2回用量(各用量が25mgのキニジンおよび25mgの式Iの化合物を含む)で提供されるか;1日あたり40mgのキニジンおよび40mgの式Iの化合物が、2回用量(各用量が20mgのキニジンおよび20mgの式Iの化合物を含む)で提供されるか;1日あたり30mgのキニジンおよび30mgの式Iの化合物が、2回用量(各用量が15mgのキニジンおよび15mgの式Iの化合物を含む)で提供されるか;または1日あたり20mgのキニジンおよび20mgの式Iの化合物が、2回用量(各用量が10mgのキニジン(すなわち、約9mgのキニジン遊離塩基)および10mgの式Iの化合物を含む)で提供される。いくつかの実施形態において、併用量における式Iの化合物およびキニジンの総量は、1:1またはそれ未満の重量比を維持しつつ、被験体に好適な総1日投与量が提供されるように、1日あたりに投与される投与回数に応じて調整され得る。
【0217】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物およびキニジンの1日量は、30mgの式IVの化合物および30mgの硫酸キニジンである。他の投与量としては、例えば、15mgの式IVの化合物および9mgの硫酸キニジン(およそ11mgの式Iの化合物およびおよそ7.5mgのキニジンに対応する);23mgの式IVの化合物および9硫酸キニジン(およそ17mgの式Iの化合物およびおよそ7.5mgのキニジンに対応する);20mgの式IVの化合物および10硫酸キニジン(およそ15mgの式Iの化合物および8.3mgのキニジンに対応する);30mgの式IVの化合物および10硫酸キニジン(およそ22mgの式Iの化合物および8.3mgのキニジンに対応する)が挙げられる。
【0218】
30mgの式IVの化合物(分子式C1819NO.HBr.HO)および30mgの硫酸キニジン(分子式(C2024.HSO.2HO)という用量が、投与され得るかまたは使用され得る(およそ22.22mgの式Iの化合物および25mgのキニジンに対応する)。式Iまたは式IVの化合物に対する他の投与量としては、例えば、24mgの式IVの化合物および4.75mgの硫酸キニジン(およそ18mgの式Iの化合物およびおよそ3.96mgのキニジンに対応する);34mgの式IVの化合物および4.75硫酸キニジン(およそ25.18mgの式Iの化合物およびおよそ3.96mgのキニジンに対応する);18mgの式IVの化合物および4.9硫酸キニジン(およそ13.33mgの式Iの化合物および4.08mgのキニジンに対応する);24mgの式IVの化合物および4.9硫酸キニジン(およそ17.78mgの式Iの化合物および4.08mgのキニジンに対応する);28mgの式IVの化合物および4.9硫酸キニジン(およそ20.74mgの式Iの化合物および4.08mgのキニジンに対応する);30mgの式IVの化合物および4.9硫酸キニジン(およそ22.22mgの式Iの化合物および4.08mgのキニジンに対応する);34mgの式IVの化合物および4.9硫酸キニジン(およそ25.18mgの式Iの化合物および4.08mgのキニジンに対応する)が挙げられる。
【0219】
いくつかの実施形態において、治療は、より低い1日量、例えば、1日あたり約2.5~10mgのキニジンと併用される約18または30mgの式Iの化合物から開始され、被験体の全体的な応答に応じて、約10~20mgのキニジンと併用される最大約90mgの式Iの化合物またはそれを超えるまで増加される。いくつかの実施形態において、乳児、小児、65歳を超える被験体および腎臓または肝臓の機能が損なわれている被験体は、最初に低用量を投与され、個々の応答および血中濃度に基づいて、その用量が漸増され得る。一般に、18~90mgの式Iの化合物および4.75~20mgのキニジンという1日投与量が、ほとんどの被験体によって許容される。
【0220】
当業者には明らかであるように、場合によっては、開示されたこれらの範囲外の投与量も投与され得る。さらに、通常の技能を有する臨床医または担当医師は、個々の応答を考慮して、治療をどのようにおよびいつ中断するか、調整するかまたは終えるかを承知していることに注意されたい。
処置方法
【0221】
1つの実施形態において、本開示は、細胞においてσレセプターであるN-メチル-D-アスパラギン酸(NDMA)の活性またはα3β4ニコチンレセプターの活性を調節する方法を提供し、その方法は、細胞を1つまたはそれを超える式Iの化合物と接触させる工程を含む。
【0222】
1つの実施形態において、本開示は、式Iの化合物を投与することによって、脳における活性化レセプターからのグルタメートなどの神経伝達物質を阻害する方法ならびに/またはドーパミンおよびセロトニンの取り込みを阻害する方法を提供する。
【0223】
1つの実施形態において、本開示は、デキストロメトルファンによって有益に処置される疾患に罹患しているかまたはその疾患に罹患しやすい被験体を処置する方法を提供し、その方法は、有効量の式Iの化合物またはそのような化合物を含む組成物を前記被験体に投与する工程を含む。そのような疾患は、当該分野で周知であり、米国特許第4,316,888号;同第4,446,140号;同第4,694,010号;同第4,898,860号;同第5,166,207号;同第5,336,980号;同第5,350,756号;同第5,366,980号;同第5,863,927号;米国再発行特許発明第38,115号;米国特許第6,197,830号;同第6,207,164号;同第6,583,152号;および同第7,114,547号;ならびに米国特許出願公開第2001/0044446号;同第2002/0103109号;同第2004/0087479号;同第2005/0129783号;同第2005/0203125号;および同第2007/0191411号に記載されているものに開示されているがこれらに限定されない。
【0224】
1つの実施形態において、そのような疾患としては、情動不安定;情動調節障害;自閉症;神経障害および神経変性疾患(例えば、認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリッグ病としても知られる)、アルツハイマー病、パーキンソン病および多発性硬化症);意識障害;脳損傷(例えば、脳卒中、外傷性脳損傷、虚血事象、低酸素事象および神経細胞死);心臓血管疾患(例えば、末梢血管疾患、脳卒中、心筋梗塞およびアテローム性動脈硬化症);緑内障;遅発性ジスキネジア;糖尿病性ニューロパシー;網膜症;ホモシステイン誘発性アポトーシスによって引き起こされる疾患または障害;高レベルのホモシステインによって引き起こされる疾患または障害;慢性疼痛;難治性疼痛;神経因性疼痛;交感神経介在性疼痛(例えば、異痛症、痛覚異常鋭敏症(hyperpathia)、痛覚過敏(hyperalgesia)、感覚異常(dysesthesia)、知覚異常(paresthesia)、求心路遮断疼痛および有痛性感覚脱失痛(anesthesia delorosa pain));胃腸障害(例えば、過敏性腸症候群を含む)に伴う疼痛;口腔痛;てんかん発作;耳鳴;性機能障害;難治性咳嗽;皮膚炎;嗜癖障害(例えば、刺激物、ニコチン、モルヒネ、ヘロイン、他のオピエート、アンフェタミン、コカインおよび15アルコールに対する嗜癖または依存);RTT;制御されない喉頭の筋痙攣に起因する音声障害(例えば、外転型痙攣性発声障害、内転型痙攣性発声障害、筋緊張性発声障害および声の震えを含む);メトトレキサート神経毒性;およびがんによって引き起こされる疲労が挙げられるが、これらに限定されない。
【0225】
1つの実施形態において、本明細書中に示される処置方法は、被験体が、述べられている特定の処置を必要とすると特定されている方法も含む。そのような処置を必要とする被験体の特定は、被験体またはヘルスケアの専門家の判断におけるものであり得、主観的(例えば、考え)または客観的(例えば、検査方法または診断方法によって計測可能)であり得る。
【0226】
本明細書中に示される処置方法では、有効量の式Iの化合物を含む薬学的組成物が被験体に投与され、それによって、同じ投薬レジメンを用いて投与されるモル当量のデキストロメトルファン組成物の血漿曝露レベルより高い血漿曝露レベルがもたらされる。その血漿曝露レベルは、同等の被験体に投与されるモル当量のデキストロメトルファン組成物によってもたらされるデキストロメトルファンの血漿曝露レベルの少なくとも110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%またはそれを超える。
【0227】
1つの実施形態において、本開示は、疾患の処置を必要とする被験体において疾患を処置するための方法を提供し、前記方法は、10~60mgの式Iの化合物を含む薬学的組成物を被験体に投与する工程を含み、ここで、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、250~750ナノグラム(ng)-時(h)/mL(AUC)の範囲内の血漿曝露レベルがもたらされる。
【0228】
1つの実施形態において、本開示は、疾患の処置を必要とする被験体において疾患を処置するための方法を提供し、前記方法は、10~60mgの式Iの化合物を含む薬学的組成物を被験体に投与する工程を含み、ここで、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、400~1600ng-h/mL(AUC)の範囲内の血漿曝露レベルがもたらされる。
【0229】
1つの実施形態において、本開示は、疾患の処置を必要とする被験体において疾患を処置するための方法を提供し、前記方法は、10~60mgの式Iの化合物を含む薬学的組成物を被験体に投与する工程を含み、ここで、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、500~1500ng-h/mL(AUC)の範囲内の血漿曝露レベルがもたらされる。
【0230】
1つの実施形態において、本開示は、疾患の処置を必要とする被験体において疾患を処置するための方法を提供し、前記方法は、10~60mgの式Iの化合物を含む薬学的組成物を被験体に投与する工程を含み、ここで、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、1000~1500ng-h/mL(AUC)の範囲内の血漿曝露レベルがもたらされる。
【0231】
1つの実施形態において、本開示は、疾患の処置を必要とする被験体において疾患を処置するための方法を提供し、前記方法は、同じ投薬レジメンを用いて投与されるモル当量のデキストロメトルファン組成物と比べて、代謝産物の生成速度および生成量を減少させるのに有効な量の式Iの化合物を含む薬学的組成物を被験体に投与する工程を含む。
【0232】
1つの実施形態において、本開示は、疾患の処置を必要とする被験体において疾患を処置するための方法を提供し、前記方法は、10~60mgの式Iの化合物を含む薬学的組成物を被験体に投与する工程を含み、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、1000ng-h/mL未満またはそれに等しい重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルがもたらされる。
【0233】
1つの実施形態において、本開示は、疾患の処置を必要とする被験体において疾患を処置するための方法を提供し、前記方法は、10~60mgの式Iの化合物を含む薬学的組成物を被験体に投与する工程を含み、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、750ng-h/mL未満またはそれに等しい重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルがもたらされる。
【0234】
1つの実施形態において、本開示は、疾患の処置を必要とする被験体において疾患を処置するための方法を提供し、前記方法は、10~60mgの式Iの化合物を含む薬学的組成物を被験体に投与する工程を含み、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、500ng-h/mL未満またはそれに等しい重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルがもたらされる。
【0235】
1つの実施形態において、本開示は、疾患の処置を必要とする被験体において疾患を処置するための方法を提供し、前記方法は、10~60mgの式Iの化合物を含む薬学的組成物を被験体に投与する工程を含み、その薬学的組成物を被験体に投与することにより、同じ投薬レジメンを用いて投与されるモル当量のデキストロメトルファン組成物から生成されるデキストロメトルファンおよびデキストロルファンの血漿曝露レベルと比べて、式Iの化合物の血漿曝露レベルの上昇と、デキストロメトルファン代謝産物アイソトポログ、特に、重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルの低下の両方がもたらされる。
【0236】
1つの実施形態において、本開示は、疾患の処置を必要とする被験体において疾患を処置するための方法を提供し、前記方法は、10~60mgの式Iの化合物を含む薬学的組成物を被験体に投与する工程を含み、前記組成物は、12時間ごとに被験体に反復投与された後、定常状態の間、約1750~約250ng-h/mLという式Iの化合物の血漿曝露レベルを提供する。
【0237】
1つの実施形態において、上記の処置方法のいずれもが、1つまたはそれを超える第2の治療薬を被験体に共投与するさらなる工程を含む。第2の治療薬の選択は、デキストロメトルファンとの共投与に有用であると知られている任意の第2の治療薬から行われ得る。第2の治療薬の選択は、処置される特定の疾患または症状にも依存する。本開示の方法において使用され得る第2の治療薬の例は、本開示の化合物および第2の治療薬を含む併用組成物において使用するために上に示されたものである。
【0238】
1つの実施形態において、本開示の併用療法は、それを必要とする被験体への式Iの化合物またはそのような化合物を含む組成物と硫酸キニジンとの共投与を含む。
【0239】
用語「共投与される」は、本明細書中で使用されるとき、第2の治療薬が、単回剤形(例えば、本開示の化合物および上に記載されたような第2の治療薬を含む本開示の組成物)の一部としてまたは別個の複数回剤形として本開示の化合物とともに投与され得ることを意味する。1つの実施形態において、追加の作用物質は、本開示の化合物の投与前、投与と同時、または投与後に投与され得る。そのような併用療法処置では、本開示の化合物と第2の治療薬との両方が、従来の方法によって投与される。本開示の化合物と第2の治療薬の両方を含む本開示の組成物の被験体への投与は、処置コース中の別の時点における、同じ治療薬、他の任意の第2の治療薬または本開示の任意の化合物の前記被験体への別個の投与を除外しない。
【0240】
これらの第2の治療薬の有効量は、当業者に周知であり、投薬の指針は、本明細書中で参照される特許および公開特許出願ならびにWellsら編、Pharmacotherapy Handbook,第2版,Appleton and Lange,Stamford,Conn.(2000);PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Lorna Linda,Calif.(2000)および他の医学テキストに見られ得る。しかしながら、第2の治療薬の最適な有効量の範囲を決定することは、十分に当業者の範囲内である。
【0241】
第2の治療薬が被験体に投与される本開示の1つの実施形態において、本開示の化合物の有効量は、第2の治療薬が投与されない場合の有効量未満である。別の実施形態において、第2の治療薬の有効量は、本開示の化合物が投与されない場合の有効量未満である。このようにして、いずれかの作用物質の高用量に伴う望まれない副作用が、最小限に抑えられ得る。他の有望な利点(投薬レジメンの改善および/または薬物コストの減少が挙げられるがこれらに限定されない)は、当業者に明らかである。
【0242】
1つの実施形態において、本開示は、被験体における上に示された疾患、障害または症候の処置または予防のための、単一の組成物としてまたは別個の剤形としての薬の製造における、単独でのまたは1つもしくはそれを超える上に記載された第2の治療薬との併用での式Iの化合物の使用を提供する。1つの実施形態において、本開示は、被験体における本明細書中に示される疾患、障害またはその症候の処置または予防のための式Iの化合物の使用を提供する。
【0243】
したがって、1つの実施形態において、本開示は、疾患の処置を必要とする被験体において疾患を処置する方法を提供し、その方法は、10~60mgの式Iの化合物および2.5~30mgのキニジンを共投与する工程を含み、その組成物は、被験体において12~24時間ごとに反復投与された後、定常状態の間、約1750~約250ng-h/mLという式Iの化合物の最大の血漿曝露レベルを提供し、ここで、前記組成物を被験体に投与することにより、キニジンなしで投与される同モル量の式Iの化合物と比べて、重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルが低下する。
【0244】
したがって、1つの実施形態において、本開示は、疾患の処置を必要とする被験体において疾患を処置する方法を提供し、その方法は、10~60mgの式Iの化合物および2.5~20mgのキニジンを共投与する工程を含み、その組成物は、被験体において12~24時間ごとに反復投与された後、定常状態の間、約1750~約250ng-h/mLという式Iの化合物の最大の血漿曝露レベルを提供し、ここで、前記組成物を被験体に投与することにより、キニジンなしで投与される同モル量の式Iの化合物と比べて、重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルが低下する。
【0245】
したがって、1つの実施形態において、本開示は、疾患の処置を必要とする被験体において疾患を処置する方法を提供し、その方法は、10~60mgの式Iの化合物および2.5~10mgのキニジンを共投与する工程を含み、その組成物は、被験体において12~24時間ごとに反復投与された後、定常状態の間、約1750~約250ng-h/mLという式Iの化合物の最大の血漿曝露レベルを提供し、ここで、前記組成物を被験体に投与することにより、キニジンなしで投与される同モル量の式Iの化合物と比べて、重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルが低下する。
【0246】
したがって、1つの実施形態において、本開示は、疾患の処置を必要とする被験体において疾患を処置する方法を提供し、その方法は、15~45mgの式Iの化合物および2.5~30mgのキニジンを共投与する工程を含み、その組成物は、被験体において12~24時間ごとに反復投与された後、定常状態の間、約1750~約250ng-h/mLという式Iの化合物の最大の血漿曝露レベルを提供し、ここで、前記組成物を被験体に投与することにより、キニジンなしで投与される同モル量の式Iの化合物と比べて、重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルが低下する。
【0247】
したがって、1つの実施形態において、本開示は、疾患の処置を必要とする被験体において疾患を処置する方法を提供し、その方法は、20~35mgの式Iの化合物および2.5~30mgのキニジンを共投与する工程を含み、その組成物は、被験体において12~24時間ごとに反復投与された後、定常状態の間、約1750~約250ng-h/mLという式Iの化合物の最大の血漿曝露レベルを提供し、ここで、前記組成物を被験体に投与することにより、キニジンなしで投与される同モル量の式Iの化合物と比べて、重水素化されたデキストロルファンアイソトポログの血漿曝露レベルが低下する。
【0248】
したがって、1つの実施形態において、本開示は、疾患の処置を必要とする被験体において疾患を処置する方法を提供し、その方法は、式Iの化合物およびキニジンを共投与する工程を含み、その組成物は、同じ投薬レジメンに従って投与される同じ量のキニジンをさらに含むモル当量のデキストロメトルファン組成物の投与に起因する同等の被験体におけるデキストロメトルファンおよびデキストロルファンの尿中濃度と比べて、被験体において式Iの化合物のより低い尿中濃度および重水素化されたデキストロルファンアイソトポログのより高い尿中濃度を提供する。
【0249】
本開示は、以下の実施例を参照することによりさらに理解され得る。当業者および本明細書中に提供される教示を入手できる者は、本開示の範囲内に入るさらなる改変、適用、実施形態および等価物の置換を認識する。以下の実施例は、例証目的が意図されているだけであって、本開示の範囲を限定すると決して解釈されるべきでない。さらに、本明細書中で使用される項の見出しは、単に構成上の目的であって、記載される主題を限定すると解釈されるべきでない。
【実施例
【0250】
実施例1
式(I)の化合物の合成。下に記載される反応およびナンバリングされた中間体の各々は、前出のスキーム1における対応する反応および中間体のことを指す。
【0251】
反応(i)(中間体d6-DM-J塩酸塩):デキストロメトルファン(detromethorphan)臭化水素酸塩(1.1kg、2.97mol、1.0eq)を含むトルエン(13.2L、12v)溶液を、水酸化ナトリウム水溶液(1M濃度)と混合した。撹拌後、有機相を分離し、水で中性pHに洗浄し、共沸乾燥した。クロロギ酸1-クロロエチル(0.552kg、3.86mol、1.3eq)をその溶液に加え、変換が≧93%になるまで、その混合物を撹拌した。その混合物を65~70℃に加熱し、メタノール(2.09kg、1.9kg/kg)をゆっくり投入した。反応変換が≧98%になるまで、加熱を続けた。その反応混合物を冷却し、メタノールレベルがNMT100ppmに低下するまで真空下で濃縮した。トルエン(4.0L、3.6v)を加え、その混合物を再度、真空下で濃縮した。残留メタノールレベルが約100ppmまたはそれ未満になるまで、この手順を続けた。イソプロパノールを加え、その混合物を加熱および冷却した。不純物d6-DM-JAおよびデキストロメトルファンのレベルを、HPLCによって測定した(目標レベルは、d6-DM-JAについてはNMT0.5%およびデキストロメトルファンについてはNMT2.0%であった)。固体のd6-DM-J HClを濾過によって単離し、トルエンで数回リンスした。d6-DM-J HClを、トルエンレベルが≦1%になるまで約40℃で乾燥させた。化合物d6-DM-J HClが、84.2%の収率で98.2%の純度で得られた。1HNMR (CDCl3, 500MHz): δ9.67 (2H, s), 7.09 (1H, d, J = 5Hz), 6.81(1H, d, J = 5Hz), 6.76 (1H,dd, J = 2.5Hz, 1Hz), 3.77 (3H, s), 3.70 (1H, s), 3.14~3.27 (3H, m), 2.78~2.67 (1H, m), 2.34 (1H, d, J = 15Hz), 2.17 (1H, d, J = 10Hz), 2.00 (1H, dt, J = 10Hz, 15Hz), 1.63 (1H, d, J = 15Hz), 1.57~1.33 (5H, m), 1.33~1.20 (1H, m), 1.12~0.97 (1H, m).
【0252】
反応(ii)(中間体d6-DM-F):d6-DM-J塩酸塩(500g、1.702mol、1.0eq)をテトラヒドロフランに溶解し、-80~-70℃に冷却した。2.5M n-ブチルリチウム(1174.5g、2.5eq)を加えた後、ヨードメタン-D3(271.3g、1.872mol、1.1eq)を加えた。反応の完了をモニターし、d6-DM-Jが消費されるまで、さらなる部分のヨードメタン-D3(29.6g、0.204mol、0.12eq)を加えた。塩化アンモニウム水溶液(3000g、6.0g/g、20%濃度)を加え、その混合物を減圧下で加温することにより、任意の残留ヨードメタン-D3を除去した。精製水(1L、2v)を加え、有機相を分離し、水相をメチル-t-ブチルエーテルで抽出した。合わせた有機相を真空下で濃縮し、溶媒をメタノール(1L、2v)に交換した。精製水(3.5L、7v)をゆっくり加え、その混合物を冷却した。d6-DM-Fを濾過によって単離し、精製水で洗浄し、乾燥させることにより、式(III)の化合物を得た。d6-DM-Fをメタノール/水から再結晶化させた。得られた収率は、98.9%の純度で84.5%であった。HNMR (CDCl3, 500MHz): δ7.05 (1H, d, J = 10Hz), 6.81(1H, d, J = 5Hz), 6.71 (1H,dd, J = 5Hz, 10Hz), 3.77 (3H, s), 3.03~2.95 (2H, m), 2.75 (1H, dd, J = 5Hz, 1.5Hz), 2.63 (1H, dd, J = 5Hz, 10Hz), 2.35 (1H, d, J = 15Hz), 2.23 (1H, dt, J = 10Hz, 15Hz), 2.02 (1H, d, J = 15Hz), 1.91 (1H, dt, J = 15Hz, 15Hz), 1.64 (1H, d, J = 15Hz), 1.53 (1H, d, J = 15Hz), 1.47~1.22 (5H, m), 1.17~1.05 (1H, m).
【0253】
反応(iii)(中間体d6-DM-H):d6-DM-F(2576g、wt=83.0%、7.791mol、1.0eq)を臭化水素酸(9608g、3.73g/g)と混合し、d6-DM-Fレベルが≦1%になるまで90~95℃に加熱した。冷却した混合物を炭酸カリウム水溶液(20%濃度)と混合し、2-メチルテトラヒドロフラン(38.6L、15v)を加えた。有機相を分離し、精製水で洗浄した。合わせた水相を2-メチルテトラヒドロフランで抽出した。合わせた有機相を真空下で濃縮し、溶媒をn-ヘプタンに交換した。その混合物を冷却し、濾過し、n-ヘプタンで洗浄し、乾燥させた。化合物d6-DM-Hは、78.8%の収率で99.0%の純度で得られた。HNMR (CDCl3, 500 MHz): δ6.92 (1H, d, J = 5Hz), 6.71(1H, d, J = 2.5Hz), 6.58 (1H,dd, J = 5Hz, 10Hz), 2.94 (1H, d, J = 20Hz), 2.80~2.75 (1H, m), 2.60 (1H, dd, J = 5Hz, 15Hz), 2.45~2.30 (2H, m), 2.11 (1H, dt, J = 15Hz, 15Hz), 1.78 (1H, d, J = 10Hz), 1.72~1.50 (2H,m), 1.50 (1H, br s), 1.42~1.10 (6H, m).
【0254】
反応(iv)(中間体d6-DM遊離塩基):d6-DM-H(748.7g、wt=93.5%、2.6883mol、1.0eq)をジメチルホルムアミド(8.12L、11.6v)と混合し、得られた溶液を含水量について試験した。含水量が>0.05%であった場合、モレキュラーシーブ粉末(4A)を加え、撹拌した後に濾過によって除去した。カリウムt-ブトキシド(362.0g、3.226mol、1.2eq)をその溶液に加え、撹拌後、ヨードメタン-D3(448.1g、3.092mol、1.15eq)を含むジメチルホルムアミド溶液を加えた。残留d6-DM-Hが≦5%になるまで、反応を続けた。精製水を加え、d6-DM遊離塩基を濾過によって単離した。濾過ケークを水で洗浄し、乾燥させることにより、式(I)の化合物を得た。式(I)の化合物は、78.9%の収率で99.3%の純度で得られた。HNMR (CDCl3, 500MHz): δ7.02 (1H, d, J = 10Hz), 6.79(1H, d, J = 5Hz), 6.68 (1H,dd, J = 5Hz, 10Hz), 2.96 (1H, d, J = 20Hz), 2.82~2.75 (1H, m), 2.58 (1H, dd, J = 5Hz, 20Hz), 2.42 (1H, dd, J = 5Hz, 10Hz), 2.35(1H, d, J = 10Hz), 2.07 (1H, dt, J = 15Hz, 15Hz), 1.81(1H, d, J = 10Hz), 1.76 (1H, dt, J = 15Hz, 15Hz), 1.64(1H, d, J = 10Hz), 1.51(1H, d, J = 10Hz), 1.45~1.07 (6H, m).
実施例2
【0255】
式(IV)の化合物の合成。下に記載される反応およびナンバリングされた中間体の各々は、前出のスキーム3における対応する反応および中間体のことを指す。
【0256】
反応(v)(d6-DM臭化水素酸塩一水和物):すべての溶液を、0.45μmフィルターを用いて濾過し、すべての操作をクラス100,000のクリーンルームにおいて行う。精製水(1.1L、4v)およびd6-DM遊離塩基(277.4g、1.00mol)を反応器内で混合した。臭化水素酸溶液(48%濃度、177.0g、1.05mol)を加えた後、精製水(0.28L、1v)を加えた。得られた混合物を、溶液が形成されるまで65~70℃に加熱し、次いで、冷却して、結晶化を生じさせた。粒径を最適化するために、その混合物を数サイクルにわたって加熱および冷却し、次いで、周囲温度に冷却した。生成物を濾過によって単離し、精製水で洗浄し、40~45℃で乾燥させることにより、式(IV)の化合物を得た。式(IV)の化合物は、85.0%の収率で99.6%の純度で得られた。HNMR (CDCl3, 500 MHz): δ7.07 (1H, d, J = 10Hz), 6.79(1H, d, J = 3.5Hz), 6.68 (1H,d, J = 10Hz), 3.51 (1H, m), 3.17~29.0 (3H, m), 2.70~2.20 (4H, m), 1.63 (1H, d, J = 20Hz), 1.60~1.35 (5H, m), 1.30~1.15 (1H, m), 2.07 (1H, dq, J = 15Hz, 30Hz),.
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
式(I)の重水素化デキストロメトルファンまたはその薬学的に許容され得る塩
【化24】

を合成するための方法であって、
(i)N-脱メチル化の後、塩基およびヨードメタン-D の存在下、-90℃~90℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるN-メチル化によって、式(II)のデキストロメトルファン化合物
【化25】

を式(III)の化合物
【化26】

に重水素化する工程;および
(ii)O-脱メチル化の後、塩基およびヨードメタン-D の存在下、-10~10℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるO-メチル化によって、前記式(III)の化合物を式(I)の化合物に重水素化する工程
を含む、方法。
(項目2)
前記工程(i)において使用される塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム、n-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドおよび第三級有機アミンから選択される、項目1に記載の方法。
(項目3)
臭化水素酸を含む溶液を用いる結晶化によって、前記式(I)の化合物を式(IV)の臭化水素酸塩一水和物
【化27】

に変換する工程をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
(i)N-脱メチル化の後、塩基およびヨードメタン-D の存在下、-90℃~90℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるN-メチル化によって、式(II)のデキストロメトルファン化合物
【化28】

を式(III)の化合物
【化29】

に重水素化する工程;および
(ii)O-脱メチル化の後、塩基およびヨードメタン-D の存在下、-10~10℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるO-メチル化によって、前記式(III)の化合物を式(I)の化合物
【化30】

に重水素化する工程
を含むプロセスによって生成される、99%超の純度を有する高度に純粋なd6-デキストロメトルファン(d6-DM)。
(項目5)
式(I)の重水素化デキストロメトルファン
【化31】

を合成するための方法であって、
(i)式(II)のデキストロメトルファン化合物
【化32】

の第三級アミンをN-脱メチル化して、式(V)のN-脱メチル化された化合物
【化33】

を得る工程;
(ii)塩基およびヨードメタン-D の存在下、-90℃~90℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるN-メチル化によって、前記式(V)のN-脱メチル化された化合物を式(III)の化合物
【化34】

に重水素化する工程;
(iii)式(III)のメトキシ基を式(VI)の化合物
【化35】

にO-脱メチル化する工程;および
(iv)塩基およびヨードメタン-D の存在下、-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるO-メチル化によって、前記式(VI)のO-脱メチル化された化合物を式(I)の化合物に重水素化する工程
を含む、方法。
(項目6)
前記工程(i)のN-脱メチル化が、クロロギ酸1-クロロエチルの存在下において行われる、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記工程(iii)のO-脱メチル化が、臭化水素酸の存在下において行われる、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記工程(ii)において使用される塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム、n-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドおよび第三級有機アミンから選択される、項目5に記載の方法。
(項目9)
臭化水素酸を含む溶液を用いる結晶化によって、前記式(I)の化合物を式(IV)の臭化水素酸塩一水和物
【化36】

に変換する工程をさらに含む、項目5に記載の方法。
(項目10)
(i)式(II)のデキストロメトルファン化合物
【化37】

の第三級アミンをN-脱メチル化して、式(V)のN-脱メチル化された化合物
【化38】

を得る工程;
(ii)塩基およびヨードメタン-D の存在下、-90℃~90℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるN-メチル化によって、前記式(V)のN-脱メチル化された化合物を式(III)の化合物
【化39】

に重水素化する工程;
(iii)式(III)のメトキシ基を式(VI)の化合物
【化40】

にO-脱メチル化する工程;および
(iv)塩基およびヨードメタン-D の存在下、-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるO-メチル化によって、前記式(VI)のO-脱メチル化された化合物を式(I)の化合物に重水素化する工程
を含むプロセスによって生成される、99%超の純度を有する高度に純粋なd6-デキストロメトルファン(d6-DM)。
(項目11)
式(I)の重水素化デキストロメトルファン
【化41】

を合成するための方法であって、
(i)O-脱メチル化の後、塩基およびヨードメタン-D の存在下、-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるO-メチル化によって、式(II)のデキストロメトルファン化合物
【化42】

を式(VII)の化合物
【化43】

に重水素化する工程;および
(ii)N-脱メチル化の後、塩基およびヨードメタン-D の存在下、-90℃~90℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるN-メチル化によって、前記式(VII)の化合物を前記式(I)の化合物に重水素化する工程
を含む、方法。
(項目12)
前記工程(i)において使用される塩基が、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシドおよびカリウムt-ブトキシドから選択される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記塩基が、カリウムt-ブトキシドである、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記工程(i)において用いられる温度が、-3℃~-1℃(両端を含む)の範囲内である、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記工程(ii)において使用される塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム、n-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドおよび第三級有機アミンから選択される、項目11に記載の方法。
(項目16)
臭化水素酸を含む溶液を用いる結晶化によって、前記式(I)の化合物を式(IV)の臭化水素酸塩一水和物
【化44】

に変換する工程をさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目17)
前記N-脱メチル化が、クロロギ酸1-クロロエチルの存在下において行われる、項目11に記載の方法。
(項目18)
(i)O-脱メチル化の後、塩基およびヨードメタン-D の存在下、-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるO-メチル化によって、式(II)のデキストロメトルファン化合物
【化45】

を式(VII)の化合物
【化46】

に重水素化する工程;および
(ii)N-脱メチル化の後、塩基およびヨードメタン-D の存在下、-90℃~90℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるN-メチル化によって、前記式(VII)の化合物を式(I)の化合物
【化47】

に重水素化する工程
を含むプロセスによって生成される、99%超の純度を有する高度に純粋なd6-デキストロメトルファン(d6-DM)。
(項目19)
式(I)の重水素化デキストロメトルファン
【化48】

を合成するための方法であって、
(i)式(II)のデキストロメトルファン化合物
【化49】

のメトキシ基を式(VIII)の化合物
【化50】

にO-脱メチル化する工程;
(ii)塩基およびヨードメタン-D の存在下、-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるO-メチル化によって、前記式(VIII)のO-脱メチル化された化合物を式(VII)の化合物
【化51】

に重水素化する工程;
(iii)式(VII)のデキストロメトルファン化合物の第三級アミンを式(IX)の化合物;
【化52】

にN-脱メチル化する工程;および
(iv)塩基およびヨードメタン-D の存在下、-90℃~90℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるN-メチル化によって、前記式(IX)のN-脱メチル化された化合物を式(I)の化合物に重水素化する工程
を含む、方法。
(項目20)
前記工程(iii)のN-脱メチル化が、クロロギ酸1-クロロエチルの存在下において行われる、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記工程(i)のO-脱メチル化が、臭化水素酸の存在下において行われる、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記工程(iv)において使用される塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム、n-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドおよび第三級有機アミンから選択される、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記工程(ii)において使用される塩基が、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシドおよびカリウムt-ブトキシドから選択される、項目19に記載の方法。
(項目24)
臭化水素酸を含む溶液を用いる結晶化によって、前記式(I)の化合物を式(IV)の臭化水素酸塩一水和物
【化53】

に変換する工程をさらに含む、項目19に記載の方法。
(項目25)
(i)式(II)のデキストロメトルファン化合物
【化54】

のメトキシ基を式(VIII)の化合物
【化55】

にO-脱メチル化する工程;
(ii)塩基およびヨードメタン-D の存在下、-10℃~10℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるO-メチル化によって、前記式(VIII)のO-脱メチル化された化合物を式(VII)の化合物
【化56】

に重水素化する工程;
(iii)式(VII)のデキストロメトルファン化合物の第三級アミンを式(IX)の化合物
【化57】

にN-脱メチル化する工程;および
(iv)塩基およびヨードメタン-D の存在下、-90℃~90℃(両端を含む)の範囲内の温度におけるN-メチル化によって、前記式(IX)のN-脱メチル化された化合物を式(I)の化合物に重水素化する工程
を含むプロセスによって生成される、99%超の純度を有する高度に純粋なd6-デキストロメトルファン(d6-DM)。