(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】部分放電検出システム、回転電機、および部分放電検出方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/12 20200101AFI20220420BHJP
G01R 31/34 20200101ALI20220420BHJP
【FI】
G01R31/12 A
G01R31/34 D
(21)【出願番号】P 2019060228
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田上 剣汰
【審査官】越川 康弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-183247(JP,A)
【文献】特開2008-215865(JP,A)
【文献】特開2012-194065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/12
G01R 31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子巻線からの部分放電の位置を特定する部分放電検出システムであって、
固定子鉄心および回転子鉄心に対して軸方向の一方側でロータシャフトに取り付けられて
前記固定子鉄心と前記回転子鉄心との間の空隙と軸方向に並び、前記ロータシャフトとともに回転し、前記部分放電時の発光を検出する
光検出器、を具備する光検出装置と、
前記光検出装置に対向するように周方向の一か所に静止固定され発光を継続する定位置発光器と、
前記定位置発光器からの発光による周期的な光信号と前記部分放電の発光による光信号に基づいて前記部分放電の周方向の位置を特定する周方向位置特定装置と、
を具備することを特徴とする部分放電検出システム。
【請求項2】
前記光検出器は、前記部分放電による発光および前記定位置発光器からの前記周期的な光信号を検出
し、
前記光検出装置は、
前記光検出器で検出した光信号を無線で発信する光信号発信
器、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の部分放電検出システム。
【請求項3】
前記周方向位置特定装置は、
前記定位置発光器からの発光による周期的な光信号に対する前記部分放電による発光の位相を算出する位相算出部と、
前記位相に基づいて前記部分放電による発光がなされた固定子巻線の周方向位置を算出する周方向位置算出部と、
を具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の部分放電検出システム。
【請求項4】
前記部分放電による発光の軸方向の位置を特定する軸方向位置特定装置をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の部分放電検出システム。
【請求項5】
軸方向に延びたロータシャフトと前記ロータシャフトに取り付けられた回転子鉄心とを有する回転子と、
前記回転子鉄心の径方向外側に空隙を介して配置された固定子鉄心と前記固定子鉄心に形成され周方向に互いに間隔をおいて軸方向に貫通する複数のスロットに配設された固定子巻線とを有する固定子と、
前記ロータシャフトの前記回転子鉄心の軸方向の両側のそれぞれの部分において前記ロータシャフトを回転可能に支持する2つの軸受と、
前記固定子巻線からの部分放電の位置を特定する部分放電検出システムと、
を備えた回転電機であって、
前記部分放電検出システムは、
前記固定子鉄心および前記回転子鉄心に対して軸方向の一方側で前記ロータシャフトに取り付けられて
前記固定子鉄心と前記回転子鉄心との間の空隙と軸方向に並び、前記ロータシャフトとともに回転し、前記部分放電時の発光を検出する
光検出器、を具備する光検出装置と、
前記光検出装置に対向するように周方向の一か所に静止固定され発光を継続する定位置発光器と、
前記定位置発光器からの発光による周期的な光信号と前記部分放電の発光による光信号に基づいて前記部分放電の周方向の位置を特定する周方向位置特定装置と、
を具備することを特徴とする回転電機。
【請求項6】
回転電機の運転中に、定位置発光器を発光状態とするステップと、
信号弁別部が新たな光信号と判定した場合に位相算出部が、前記定位置発光器からの光信号と前記新たな光信号とに基づいて位相を算出するステップと、
周方向位置算出部が、前記位相に基づいて部分放電の周方向位置を算出するステップと、
を有
し、
前記新たな光信号は、固定子鉄心および回転子鉄心に対して軸方向の一方側でロータシャフトに取り付けられて前記固定子鉄心と前記回転子鉄心との間の空隙と軸方向に並び前記ロータシャフトとともに回転する光検出器、が検出した前記部分放電時の発光の光信号である、ことを特徴とする部分放電検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分放電検出システム、これを備える回転電機、および部分放電検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機をインバータ駆動する場合、インバータの高速スイッチングに起因したサージ電圧が発生し、電動機巻線の絶縁に影響を与えることが知られている。このようなサージ電圧はインバータサージと呼ばれ、その電圧値は電動機の定格電圧の2倍以上に及ぶこともある。インバータサージが電動機の巻線に加わる場合、巻線の内外において部分放電の発生が懸念される。部分放電は巻線を構成するたとえばエナメル線皮膜を劣化させる原因となる。皮膜が劣化するとやがては絶縁破壊に至ることから、電動機においては、その巻線にインバータサージが加わったとしても部分放電が発生しないような絶縁設計を行う必要がある。
【0003】
従来、電動機の巻線の絶縁性能は、アローペアやモータレットなどの模擬サンプル、あるいはステータコイルを用いて、所定のインパルス電圧を印加して部分放電発生の有無の検知による部分放電試験に基づいて評価されていた。部分放電は、ボイドや導体間距離不十分など絶縁上の弱点で生じるので、部分放電発生個所が特定できれば弱点の位置が明確になり、効果的な絶縁補強を図ることができる。
【0004】
部分放電発生個所を検出する方法として、特許文献1に示す方法が提案されている。部分放電センサであるアンテナを測定対象ステータの周方向に移動させ、最も強い放電信号を検出するまでの時間を計測して、最も短い時間に対応するアンテナ位置を部分放電発生個所として特定している。
【0005】
また、光を透過しない筐体で覆われた回転電機の温度の異常を監視するために、カメラで輻射光を撮影し正常な画像と比較する技術が特許文献2で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-69745号公報
【文献】国際公開第WO2008/044263号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
固定子巻線導体での部分放電の検出は、その後の対策にとっては、特にどのスロットに配されたものから生じたかを知ることが最も有効である。すなわち、周方向の位置を特定できれば、どのスロットに配された固定子巻線導体かを判別することができる。
【0008】
しかしながら、周方向の位置を特定するには、静止したアンテナやカメラを周方向にできるだけ多く配する必要があるが、スロットの周方向の間隔に対応した間隔で配置することは現実的に困難である。
【0009】
また、電動機等の対象物に印加する電圧レベルによっては、部分放電は、印加した直後に発生しないで数分から数時間後に発生する場合がある。このような場合、部分放電発生を見逃す可能性がある。
【0010】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであって、その目的は、回転電機に電圧が印加されたときの部分放電の発生位置を特定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明に係る部分放電検出システムは、固定子巻線からの部分放電の位置を特定する部分放電検出システムであって、固定子鉄心および回転子鉄心に対して軸方向の一方側でロータシャフトに取り付けられて前記固定子鉄心と前記回転子鉄心との間の空隙と軸方向に並び、前記ロータシャフトとともに回転し、前記部分放電時の発光を検出する光検出器、を具備する光検出装置と、前記光検出装置に対向するように周方向の一か所に静止固定され発光を継続する定位置発光器と、前記定位置発光器からの発光による周期的な光信号と前記部分放電の発光による光信号に基づいて前記部分放電の周方向の位置を特定する周方向位置特定装置と、を具備することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る回転電機は、軸方向に延びたロータシャフトと前記ロータシャフトに取り付けられた回転子鉄心とを有する回転子と、前記回転子鉄心の径方向外側に空隙を介して配置された固定子鉄心と前記固定子鉄心に形成され周方向に互いに間隔をおいて軸方向に貫通する複数のスロットに配設された固定子巻線とを有する固定子と、前記ロータシャフトの前記回転子鉄心の軸方向の両側のそれぞれの部分において前記ロータシャフトを回転可能に支持する2つの軸受と、前記固定子巻線からの部分放電の位置を特定する部分放電検出システムと、を備えた回転電機であって、前記部分放電検出システムは、前記固定子鉄心および前記回転子鉄心に対して軸方向の一方側で前記ロータシャフトに取り付けられて前記固定子鉄心と前記回転子鉄心との間の空隙と軸方向に並び、前記ロータシャフトとともに回転し、前記部分放電時の発光を検出する光検出器、を具備する光検出装置と、前記光検出装置に対向するように周方向の一か所に静止固定され発光を継続する定位置発光器と、前記定位置発光器からの発光による周期的な光信号と前記部分放電の発光による光信号に基づいて前記部分放電の周方向の位置を特定する周方向位置特定装置と、を具備することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る部分放電検出方法は、回転電機の運転中に、定位置発光器を発光状態とするステップと、信号弁別部が新たな光信号と判定した場合に位相算出部が、前記定位置発光器からの光信号と前記新たな光信号とに基づいて位相を算出するステップと、周方向位置算出部が、前記位相に基づいて部分放電の周方向位置を算出するステップと、を有し、前記新たな光信号は、固定子鉄心および回転子鉄心に対して軸方向の一方側でロータシャフトに取り付けられて前記固定子鉄心と前記回転子鉄心との間の空隙と軸方向に並び前記ロータシャフトとともに回転する光検出器、が検出した前記部分放電時の発光の光信号である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転電機に電圧が印加されたときの部分放電の発生位置を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態に係る回転電機の縦断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る部分放電検出システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る部分放電検出システムの一部を示す
図1のIII-III線矢視横断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る部分放電検出システムの一部を示す
図1のIV-IV線矢視横断面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る部分放電検出方法の手順を示すフロ―図である。
【
図6】第1の実施形態に係る部分放電検出方法を説明する光信号の時間変化を示すグラフである。
【
図7】第1の実施形態に係る部分放電検出方法における部分放電の周方向位置の特定を説明する概念的な横断面図である。
【
図8】第1の実施形態に係る部分放電検出方法において光検出器が複数設けられた場合を説明する光信号の時間変化を示すグラフである。
【
図9】第2の実施形態に係る部分放電検出システムの構成を示すブロック図である。
【
図10】第2の実施形態に係る回転電機の縦断面図である。
【
図11】第2の実施形態に係る部分放電検出方法を説明する音響信号の時間変化を示すグラフである。
【
図12】第2の実施形態に係る部分放電検出方法における部分放電の軸方向位置の特定を説明する概念的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る回転電機、部分放電検出システムおよび部分放電検出方法について説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る回転電機の縦断面図である。
【0018】
回転電機200は、回転子10、固定子20、フレーム30、結合側軸受32a、反結合側軸受32b、冷却器40、および
図2に示す部分放電検出システム100を有する。
【0019】
回転子10は、水平方向に延びたロータシャフト11と、ロータシャフト11の径方向の外側に取り付けられた円筒状の回転子鉄心12を有する。ロータシャフト11の一方の端部には、結合対象とたとえばボルト・ナットにより結合可能なカップリング部11aが形成されている。以下、回転電機200において、カップリング部11aの方向を結合側、その反対側を反結合側と呼ぶこととする。ロータシャフト11は、回転子鉄心12を挟んだ軸方向の両側で、結合側軸受32aおよび反結合側軸受32bによって回転可能に支持されている。また、ロータシャフト11の回転子鉄心12と反結合側軸受32bとの間の部分には、内扇15が取り付けられている。
【0020】
固定子20は、回転子鉄心12の径方向外側に空隙18を介して配された固定子鉄心21と、固定子鉄心21の内側表面に互いに間隔を空けて形成され軸方向に貫通する固定子巻線22とを有する。
【0021】
フレーム30は、固定子20の径方向外側を囲むように設けられている。フレーム30は、筒状であり、軸方向の端部には、結合側軸受ブラケット34aおよび反結合側軸受ブラケット34bが取り付けられている。結合側軸受ブラケット34aおよび反結合側軸受ブラケット34bは、結合側軸受32aおよび反結合側軸受32bをそれぞれ静止支持している。
【0022】
フレーム30には、冷却器40が取り付けられている。冷却器40は、冷却管41とこれを収納する冷却器カバー42を有する。フレーム30、結合側軸受ブラケット34a、反結合側軸受ブラケット34bおよび冷却器カバー42は互いに相まって閉空間30aを形成する。フレーム30内の空間と冷却器カバー42内の空間は、冷却器入口開口43および内扇15側に形成された冷却器出口開口44により連通し、全体として閉空間30aを構成する。
【0023】
部分放電検出システム100は、定位置発光器101(
図2)、光検出装置110、光信号受信器120、および周方向位置特定装置130を有する。定位置発光器101は、後に
図4を引用しながら説明するように、固定子鉄心21に取り付けられて、測定中は、常時発光状態におかれている。
【0024】
ここで、定位置発光器101、光検出装置110、光信号受信器120などに係る光は、可視光のみではなく、たとえば、紫外線を含むものとし、紫外線を含めて、以下、光と呼ぶ。
【0025】
光検出装置110は、ロータシャフト11の、回転子鉄心12と結合側軸受32aとの間の部分に取り付けられており、ロータシャフト11とともに回転する。光信号受信器120は、結合側軸受ブラケット34aの機内側の面に取り付けられている。周方向位置特定装置130は、光信号受信器120と伝送線120aで接続され、機外に設置される。周方向位置特定装置130は、結合側軸受ブラケット34aの外側表面あるいはフレーム30の外側表面に取り付けられる。あるいは、別置きで、回転電機200の近傍あるいは、別室に設置されてもよい。
【0026】
図2は、第1の実施形態に係る部分放電検出システムの構成を示すブロック図である。
【0027】
部分放電検出システム100は、前述のように、定位置発光器101と、ロータシャフト11に取り付けられた光検出装置110と、結合側軸受ブラケット34aの内面に取り付けられた光信号受信器120と、機外に設置された周方向位置特定装置130を有する。
【0028】
光検出装置110は、光を検出する光検出器111と、検出した光検出信号を発信する光信号発信器112を有する。ここで、光検出器111は、前述のように、可視光を感知する素子のみでなく、紫外光を感知する素子でもよい。光信号発信器112は、たとえば電波などの無線で送信可能な信号の発信機能を有する部分を有し、光検出器111で受信した信号を、無線信号に変換して発信する。
【0029】
光信号受信器120は、光検出装置110の光信号発信器112が発信した光検出信号を受信する。なお、たとえば、周方向の反対側に光検出装置110があるときに光検出信号が発信され、光信号受信器120が受信できない可能性がある場合は、光信号受信器120を周方向に間隔をおいて複数台を設置してもよい。
【0030】
ここで、光信号発信器112と光信号受信器120との間の信号の送受信は、上述のような電波による方法に限定せずに、たとえば光を媒体にした方法などでもよい。
【0031】
周方向位置特定装置130は、入力部131、光信号記憶部132、制御部133、出力部134、演算部140を有する。
【0032】
入力部131は、光信号受信器120からの光信号を受け入れる。光信号記憶部132は、入力部131で受け入れた光信号を収納、記憶する。収納の形態は、たとえば、サンプリング間隔ごとに、時間と光信号の強度を対応させた形で行う。なお、光信号記憶部132は、たとえば、1日分など、所定の期間分を記憶し、記憶される内容は、時間経過とともに順次、古い部分を消去し新しい情報を加えるような時間移動により更新されることでもよい。あるいは、所定の期間ごとに、その分を別の記憶装置に記憶、収納させることでもよい。
【0033】
出力部134は、演算部140での演算結果を出力する。出力部134は、例えばLCD等のディスプレイ、プリンタ、信号を出力するコネクタ、電子回路を用いたインターフェイス等のハードウェアにより実現される。
【0034】
制御部133は、周方向位置特定装置130を構成する各部の処理のタイミングの制御、各部間の情報の授受等の取り合いの制御を行う。
【0035】
演算部140は、信号弁別部141、位相算出部142、周方向位置算出部143を有する。
【0036】
信号弁別部141は、入力部131で受け入れた光信号が、所定の閾値を超えているか否かを判別し、所定のレベルを超えた場合のみ有意な信号と判定する。そのため、信号弁別部141は、たとえば、波高弁別器を有する。なお、後述する定位置発光器101(
図4)からの信号レベルは、前述の閾値を十分越えるものであるとする。
【0037】
位相算出部142は、入力部131が受け入れた定位置発光器101からの光信号以外の新たな光信号と、定位置発光器101からの光信号とから、当該光信号の位相を算出する。
【0038】
周方向位置算出部143は、入力部131が受け入れた新たな光信号の位相に基づいて、当該新たな光信号が発せられた周方向の位置を算出し、固定子スロットを特定する。
【0039】
図3は、第1の実施形態に係る部分放電検出システムの一部を示す
図1のIII-III線矢視横断面図である。なお、本来、
図3の矢視には入らないが、寸法的な説明の便宜のために、回転子鉄心12の外周と固定子鉄心21の内周に相当する位置を破線にて表示し、回転中心からそれぞれの位置までの寸法を、それぞれR1およびR2と表示し、併せて回転子鉄心12と固定子鉄心21との間の空隙18を表示している。
【0040】
図3は、部分放電検出システム100の一部である光検出装置110の構成を示している。光検出装置110は、光検出器111、光信号発信器112、支持部113、およびボス114を有する。
【0041】
ボス114は、結合側軸受32aの
図3において手前、すなわち、ロータシャフト11の、結合側軸受32aと回転子鉄心12との間の部分にロータシャフト11の径方向外側を囲むように取り付けられている。なお、ボス114は、ロータシャフト11に嵌め込まれることでもよいし、たとえば周方向に分割され互いにボルト等で結合されることでもよい。
【0042】
ボス114には、支持部113が、取り付けられ、径方向に、空隙18に相当する位置より外側まで延びている。それぞれの支持部113には、光検出器111および光信号発信器112が取り付けられている。光検出器111は、径方向に空隙18に対応する位置に設けられている。また、光信号発信器112は、光検出器111の径方向の内側に設けられている。
【0043】
図4は、第1の実施形態に係る部分放電検出システムの一部を示す
図1のIV-IV線矢視横断面図である。部分放電検出システム100は、固定子鉄心21の径方向の内側端部の所定の周方向位置P0に取り付けられた定位置発光器101を有する。定位置発光器101は、部分放電検出システム100による検出が行われている間は、常時、発光する。
【0044】
定位置発光器101による発光は、方向性を有している。発光した光が伝播すべき方向は、光検出器111が定位置発光器101の周方向位置と同じ周方向位置にある時の光検出器111の方向である。すなわちロータシャフト11の長手方向にほぼ平行な方向である。伝播すべき方向以外への光の放射、あるいは散乱を避けるために、円筒状のガイド(図示せず)を定位置発光器101の周囲に設けてもよい。あるいは光学的に光検出器111の位置で焦点を結ぶようにしてもよい。
【0045】
また、
図1で示すように、固定子鉄心21の軸方向の端部外側付近は、固定子巻線22の固定子鉄心21の外側部分、すなわち固定子巻線22の端部処理部分となり、固定子鉄心21の端部に設けると定位置発光器101からの発光が光検出器111に到達しない場合がある。この場合は、固定子巻線22の端末部の軸方向の外側に配置することでもよい。この場合は、定位置発光器101は、フレーム30により支持することでもよい。
【0046】
図5は、第1の実施形態に係る部分放電検出方法の手順を示すフロ―図である。
【0047】
回転電機200の運転状態のもとで、部分放電検出を行う(ステップS01)。まず、定位置発光器101を発光状態とする(ステップS02)。
【0048】
この状態において、信号弁別部141が、新たな光信号の有無を判定する(ステップS03)。
【0049】
図6は、第1の実施形態に係る部分放電検出方法を説明する光信号の時間変化を示すグラフである。横軸は時間を、縦軸は周方向位置特定装置130の入力部131が受け入れた光信号の強度を示す。
【0050】
時間間隔t0ごとに、定位置発光器101の発光による固定信号SFが入力される。すなわち、光検出器111は、周方向に回転し、一周ごとに定位置発光器101が設けられている周方向位置P0を通過する。ここで、時間間隔t0は、光検出器111が一周まわるに要する時間である。回転子10の回転速度が毎秒N回の場合は、t0は次の式(1)により得られる。
t0=1/N ・・・(1)
【0051】
このようにt0ごとに固定信号SFが入力される定常的な状態において、ある固定信号SFの後であって次の固定信号SFの前に、新たな光信号SBが入力され、その強度レベルが所定のレベルLsを超えている場合、信号弁別部141は、これを有意な信号と判断し、新たな光信号SBと判定する。
【0052】
信号弁別部141が新たな光信号と判定しなかった場合(ステップS04 NO)には、ステップS03およびステップS04を繰り返す。
【0053】
信号弁別部141が新たな光信号と判定した場合(ステップS04 YES)には、位相算出部142が、新たな光信号の位相を算出する(ステップS05)。位相Θは、次の式(2)により与えられる。
Θ=2π・t1/t0 ・・・(2)
ここで、t1は、固定信号SFと新たな光信号SBとの時間間隔である。
【0054】
なお、位相Θを算出するためのデータは、入力部131が受け入れた光信号を順次記憶する光信号機億部132に収納されたデータが用いられる。光信号の受け入れの時刻は、たとえば、所定の閾値に最初に到達した時間を受け入れ時刻としてもよい。あるいは、所定の閾値に到達した時刻と低下時にそれを横切った時刻の中間値を受け入れ時刻としても良い。
【0055】
次に、周方向位置算出部143が、位相算出部142が算出した位相Θに基づいて、周方向位置P1を算出し、スロットを特定する(ステップS06)。
【0056】
図7は、第1の実施形態に係る部分放電検出方法における部分放電の周方向位置の特定を説明する概念的な横断面図である。
【0057】
いま、固定子21に形成されているスロットの数をN個とする。
図7に示すように、固定子20の端部の外側から見て、時計回りに定位置発光器101に隣接するスロットをスロットS1、その隣をスロットS2と順次、番号を付すると、最後は、反時計回りに定位置発光器101に隣接するスロットSNとなる。
【0058】
ステップS05で算出した位相Θと、発光した固定子巻線22の固定子巻線導体が収納されているスロットSmとは、次の式(3)の関係となる。
Θ/(2π)=(0.5+m)/N ・・・(3)
【0059】
したがって、該当するスロットSmの番号mは、次の式(4)により与えられる。
m=(N・Θ)/(2π)-0.5 ・・・(4)
【0060】
算出されたmの値が、ほぼ整数である場合は、m番目のスロットに収納された固定子巻線導体であると特定できる。
【0061】
算出されたmの値が、ほぼ整数m0であるとは判断されない場合には、その前後のスロットのいずれかであると判断する。
【0062】
ここで、整数m0であると判断する基準としては、次の式(5)を満たす場合とする。
m0-α<m<m0+α ・・・(5)
(ただし、αは1より十分に小さい正の小数とする。)
たとえば、αとして、0.1ないし0.3程度でもよい。
【0063】
以上、
図3に示すように、光検出器111が1台設けられている場合について説明したが、これに限定されない。すなわち、ボス114に周方向に互いに間隔をおいて、複数の支持部113にそれぞれ光検出器111が設けられている場合でもよい。
【0064】
図8は、第1の実施形態に係る部分放電検出方法において光検出器が複数設けられた場合を説明する光信号の時間変化を示すグラフである。
図8では、光検出器111が2台設けられた場合を示す。この場合、時間間隔t0は、光検出器111が1つの場合の時間間隔の半分となる。
【0065】
また、新たな光信号SBと、光検出器111からの固定信号SFとの関係において、いずれの光検出器111からの遅れを位相とするかについては、区別することができない。したがって、位相は、
図8に示すように、直前の固定信号SFと新たな光信号SBとの発生時間差t1、さらにその前の固定信号SFと新たな光信号SBとの発生時間差t2のそれぞれに基づいて算出することになる。したがって、これにより算出されるスロットの位置も2つ得られ、発光源はこの2つのスロット位置に収納されている固定子巻線導体うちのいずれかという結果となる。
【0066】
同様に、M個の光検出器111を設けた場合は、M個のスロット位置が算出されるので、発光源はM個のスロット位置に収納されている固定子巻線導体のいずれかであるという結果が得られる。
【0067】
通常、回転電機200の固定子鉄心21には、多数のスロットが形成されている。この中から、複数であっても発光源である固定子巻線導体が収納されているスロット位置が絞り込まれることは、回転電機200の復旧に大きな効果がある。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る部分放電検出システム100により、測定対象物である回転電機200に電圧が印加されたときの部分放電の発生位置を特定することができる。
【0069】
[第2の実施形態]
図9は、第2の実施形態に係る部分放電検出システムの構成を示すブロック図である。
【0070】
本第2の実施形態は、第1の実施形態の変形である。本第2の実施形態に係る部分放電検出システム100aは、軸方向位置特定装置150をさらに有する。その他の点では、第1の実施形態と同様である。以下、軸方向位置特定装置150について説明する。
【0071】
軸方向位置特定装置150は、第1音響信号検出器151、第2音響信号検出器152、時間差測定部160、および軸方向位置算出部170を有する。
【0072】
第1音響信号検出器151および第2音響信号検出器152は、それぞれ部分放電が発生した際に放出される音響信号を検出する。時間差測定部160は、第1音響信号検出器151および第2音響信号検出器152それぞれからの音響信号が到達する時間差を測定する。軸方向位置算出部170は、時間差測定部160が測定した時間差に基づいて音響信号の発生個所の軸方向位置を算出する。
【0073】
図10は、第2の実施形態に係る回転電機の縦断面図である。
【0074】
第1音響信号検出器151は、結合側軸受32aの近傍で結合側軸受ブラケット34aの内側の近傍に配置されている。また、第2音響信号検出器152は、回転子鉄心12を挟んで第1音響信号検出器151と反対側の、反結合側軸受32bの近傍で反結合側軸受ブラケット34bの内側の近傍に配置されている。
【0075】
時間差測定部160および軸方向位置算出部170は、フレーム30の外側のたとえば、筐体内に収納されている。時間差測定部160には、伝送部150aを経由して、第1音響信号検出器151および第2音響信号検出器152それぞれからの音響信号が入力される。
【0076】
図11は、第2の実施形態に係る部分放電検出方法を説明する音響信号の時間変化を示すグラフである。
【0077】
第1音響信号検出器151および第2音響信号検出器152それぞれからの音響信号P1、P2が入力され、その強度レベルが所定のレベルL0を超えている場合、時間差測定部160は、これらの音響信号が到達した時間差t2を測定する。
【0078】
図12は、第2の実施形態に係る部分放電検出方法における部分放電の軸方向位置の特定を説明する概念的な縦断面図である。
【0079】
いま、固定子鉄心21の第1音響信号検出器151に近い側の端部からΔXの位置で、音響信号が発生した場合を考える。この場合、次の関係式(6)が成立する。
(L2+H-ΔX)-(ΔX+L1)=t2・V ・・・(6)
ただし、L1は第1音響信号検出器151と固定子鉄心21の端部間の距離、L2は第2音響信号検出器152と固定子鉄心21の端部間の距離、Hは固定子鉄心21の軸方向の長さ、Vは音速を示す。
【0080】
したがって、音響信号が発生した軸方向位置ΔXは、次の式(7)により算出される。
ΔX=(L2-L1+H-t2・V)/2 ・・・(7)
【0081】
以上のように、本第2の実施形態に係る部分放電検出システム100aによって、部分放電が発生した箇所について、周方向の角度位置に加えて、軸方向の位置の特定が可能である。
【0082】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0083】
たとえば、実施形態では、光信号発信器112からの信号を光信号受信器120が受信し、この信号を信号弁別部141がバックグラウンドと区別可能な有意な信号であるか否かを弁別する方式の場合を例にとって示したが、これに限定されない。たとえば、光信号発信器112が、光検出器111からの信号がある強度以上の場合に、パルス信号を出力する方式であっても良い。この場合は、周方向位置特定装置130において、信号弁別部141は不要である。
【0084】
さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0085】
10…回転子、11…ロータシャフト、11a…カップリング部、12…回転子鉄心、15…内扇、18…空隙、20…固定子、21…固定子鉄心、22…固定子巻線、30…フレーム、30a…閉空間、32a…結合側軸受、32b…反結合側軸受、34a…結合側軸受ブラケット、34b…反結合側軸受ブラケット、40…冷却器、41…冷却管、42…冷却器カバー、43…冷却器入口開口、44…冷却器出口開口、100、100a…部分放電検出システム、101…定位置発光器、110…光検出装置、111…光検出器、112…光信号発信器、113…支持部、114…ボス、120…光信号受信器、120a…伝送線、130…周方向位置特定装置、131…入力部、132…光信号記憶部、133…制御部、134…出力部、140…演算部、141…信号弁別部、142…位相算出部、143…周方向位置算出部、150…軸方向位置特定装置、150a…伝送部、151…第1音響信号検出器、152…第2音響信号検出器、160…時間差測定部、170…軸方向位置算出部、200…回転電機