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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】車両の全方位の障害物回避方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220420BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20220420BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220420BHJP
   G06T 7/579 20170101ALI20220420BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G06T1/00 315
G06T1/00 330A
G06T7/00 650A
G06T7/579
H04N7/18 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019215138
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2020087476
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2019-11-28
(31)【優先権主張番号】107142647
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】507416610
【氏名又は名称】メタル インダストリーズ リサーチ アンド ディベロップメント センター
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ツォン ハン リー
(72)【発明者】
【氏名】ハン-ユアン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジン-フェン,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】シー-チュン シュー
(72)【発明者】
【氏名】ツ-クン チャン
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-228740(JP,A)
【文献】特開2007-304841(JP,A)
【文献】特開2017-083232(JP,A)
【文献】特開2016-142647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G06T 1/00
G06T 7/00
G06T 7/579
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の全方位の障害物回避方法であって、
車両の複数の深度カメラ装置を用いて複数の周辺画像を記録し、複数の周辺深度情報を、検出アルゴリズムにより、取得するステップであり、前記複数の周辺画像は、一つまたは複数の障害物を含んでおり、前記一つまたは複数の障害物は、前記車両の周辺領域に位置する;
前記複数の周辺画像を、統合アルゴリズムにより、一枚の全方位の周囲画像として統合し、一定期間繰り返すことにより、前記全方位の周囲画像を複数取得し、前記複数の周辺深度情報を複数の全方位の深度情報に統合し、前記車両の前記周辺領域を、前記複数の全方位の周囲画像および前記複数の全方位の深度情報により、複数の検出領域に分割するステップ;
前記複数の周辺深度情報および前記複数の全方位の周囲画像を、前記複数の検出領域により、加速度ベクトル情報および距離情報を与えるように、算出するステップ;
前記一つまたは複数の障害物の移動経路を、前記一つまたは複数の障害物の前記加速度ベクトル情報および前記距離情報により、算出するステップ;
アラーム情報を、前記一つまたは複数の障害物の前記移動経路により、生成するステップ;を含み、
前記複数の周辺深度情報および前記複数の全方位の周囲画像を、前記複数の検出領域により、算出する前記ステップは、前記複数の周辺深度情報および前記複数の全方位の周囲画像により計算する画像差分法を使用して、複数のオプティカルフローベクトルを与えるステップと、さらに、前記複数のオプティカルフローベクトルにより、前記加速度ベクトル情報および前記距離情報を与えるステップを含む、
方法。
【請求項2】
車両の複数の深度カメラ装置を用いて複数の周辺画像を記録し、前記複数の周辺深度情報を、検出アルゴリズムにより、取得する前記ステップでは、前記周辺深度情報は、前記複数の深度カメラ装置および前記検出アルゴリズムの検出結果により、推定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の周辺画像を、統合アルゴリズムにより、複数の全方位の周囲画像に統合し、前記車両の前記周辺領域から複数の検出領域に分割する前記ステップは、前記統合アルゴリズムにより、前記複数の周辺画像の重複領域を除去し、前記全方位の周囲画像に統合するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一つまたは複数の障害物の移動経路を、前記一つまたは複数の障害物の前記加速度ベクトル情報および前記距離情報により、算出する前記ステップは、前記一つまたは複数の障害物の移動速度および移動距離を算出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アラーム情報を、前記一つまたは複数の障害物の前記移動経路により、生成する前記ステップは、前記一つまたは複数の障害物を避けるように、前記車両を操作するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
アラーム情報を、前記一つまたは複数の障害物の前記移動経路により、生成する前記ステップの前に、前記一つまたは複数の障害物を分類し、ラベル付けするステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アラーム情報は、障害物のアラーム情報および回避情報を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、障害物回避方法に関し、特に、車両の全方位の障害物回避方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車両上に記録装置、検出装置および処理装置を導入することにより、例えば画像の正確さを較正するための距離パラメータを用いた3D自動車パノラマ画像システムなどの画像記録装置を車両に取り付けることは、かなり成熟した技術である。記録装置は、自動車を取り囲む全方位の空中画像を記録し、送信するために使用される。検出装置は、複数の距離信号を生成し、送信することにより、自動車と周囲の物体との間の距離を検出するために、使用される。処理装置は、較正モジュールと、スティッチモジュールと、操作モジュールとを含む。処理モジュールは、記録装置によって送信された空中画像と、検出装置によって送信された距離信号とを受信する。較正モジュールは、距離信号により空中画像の座標系を較正する。次に、操作装置は、3D自動車パノラマ画像を与えるために、アルゴリズムならびに挿入およびパッチ技術を使用する。記録装置は、自動車を取り囲む複数の全方位の空中画像を記録し、送信するために使用される。検出装置は、自動車と自動車を取り囲む1つもしくは複数の物体との間の距離を検出し、複数の距離信号を生成し、送信するために使用される。それにもかかわらず、超音波センサは、距離が近く、検出精度が高い場合でなければ、完全な距離情報を得ることができないため、移動する自動車の障害物の検出に適用できない。
【0003】
検出精度を改善するために、従来技術によれば、複数のカメラレンズによって形成されたカメラレンズセットがある。カメラレンズは複数の外部画像を撮影して出力するために、自動車の周囲の異なる位置に配置される。画像を受信するために使用される3次元画像処理モジュールは、パノラマ投影画像を用いて3次元画像を与え、運転者の視野角に対応する運転者の視野に応じた部分的な3次元パノラマ投影画像を記録し、部分的な3次元の外部画像を出力するために、合成する。残念ながら、移動中の他の角度の画像を同時に観察することはできない。また、車両周辺の障害物の距離情報をリアルタイムに取得することができない。
【0004】
その後、監視のために車両周辺の障害物を検出する際に改善がなされるが、他の車両に加えて、車両の動きに影響を及ぼす可能性のある物体がさらに多く存在する。例えば、歩行者、動物、および移動物体は、車両の障害物とみなすことができる。それらは、移動中の車両に緊急状態を引き起こす可能性がある。この影響は、都市の混雑した道路で最も深刻である。
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、車両用の全方位の障害物回避方法を提供する。全方位の画像および全方位の深度情報を取得することにより、車両周辺の障害物情報を与えられる。そして、より危険性の高い障害物を回避するように車両を制御し、全方位の障害物回避の目的を達成する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、全方位の障害物を検出し、回避するためのアラームするための深度情報と共に統合した全方位の画像を提供することにより、車両の全方位の障害物回避方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、全方位の障害物回避のためのアラームを提供し、更に障害物を回避するために車両を操作することにより、車両の全方位の障害物回避の方法を提供することである。
【0008】
本発明は、車両の全方位の障害物回避方法であって、車両の複数の深度カメラ装置を用いて複数の周辺画像を記録し、周辺深度情報の複数の部分を、検出アルゴリズムにより、取得するステップであり、前記複数の周辺画像は、一つまたは複数の障害物を含んでおり、前記一つまたは複数の障害物は、前記車両の一つの面に位置する;前記複数の周辺画像を、統合アルゴリズムにより、複数の全方位の周囲画像に統合し、前記車両の前記面から複数の検出領域に分割するステップ;前記複数の部分の周辺深度情報および前記複数の全方位の周囲画像を、前記複数の検出領域により、加速度ベクトル情報および距離情報を与えるように、操作するステップ;前記一つまたは複数の障害物の移動経路を、前記一つまたは複数の障害物の前記加速度ベクトル情報および前記距離情報により、算出するステップ;アラーム情報を、前記一つまたは複数の障害物の前記移動経路により、生成するステップ;を含む、方法を開示している。これにより、本発明は、車両の全方位の周囲における障害物に対する回避のアラームを提供することができるため、車両の運転者は周辺の障害物に起因する危険を防止することができる。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、車両の複数の深度カメラ装置を用いて検出アルゴリズムにより複数の周辺の深度情報を取得するステップでは、複数の周辺の3次元の深度情報は、複数の深度カメラ装置の検出結果および検出アルゴリズムにより、与えられる。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、複数の周辺画像を複数の全方位の周囲画像に統合するステップでは、統合アルゴリズムにより複数の周辺画像の複数の重複領域を除去し、複数の全方位の周囲画像に統合する。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、統合アルゴリズムは、複数の重複領域を与え、除去するために、画像記録モジュールの複数の検出範囲により複数の周辺画像の縁をさらに検出する。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、加速度ベクトル情報および1つ以上の障害物の距離情報に基づいて1つまたは複数の障害物の移動経路を算出するステップでは、1つまたは複数の障害物の移動速度および移動距離をさらに算出する。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、1つまたは複数の障害物の加速度ベクトル情報および距離情報により、1つまたは複数の障害物の移動経路を算出するステップでは、画像差分法を用いて複数のオプティカルフローベクトルを与えるように計算し、複数のオプティカルフローベクトルにより、1つまたは複数の障害物の加速度ベクトル情報、距離情報、移動速度、および移動距離を算出する。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、1つまたは複数の障害物の移動経路に従ってアラーム情報を生成するステップにおいて、さらに1つまたは複数の障害物を回避するように車両を制御する。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、1つまたは複数の障害物の移動経路によりアラーム情報を生成するステップの前に、さらに1つまたは複数の障害物を分類し、1つまたは複数の障害物にラベル付けする。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、アラーム情報は、障害物のアラーム情報及び回避情報を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態によるフローチャートを示す。
図2A】本発明の一実施形態による深度検出モジュールの概略図を示す。
図2B】本発明の一実施形態による深度情報を統合する概略図を示す。
図2C】本発明の一実施形態による重複領域の概略図を示す。
図2D】本発明の一実施形態による画像統合の概略図を示す。
図2E】本発明の一実施形態による障害物検出の概略図を示す。
図2F】本発明の別の実施形態による障害物検出の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の構造および特性ならびに有効性を、さらに理解および認識させるために、本発明の詳細な説明は、実施形態および添付の図面とともに以下に提供される。
【0019】
本発明の一実施形態によるフローチャートを示す図1を参照されたい。図に示すように、本発明による全方位の障害物の回避方法は、以下のステップを含む。
【0020】
ステップS10:車両の深度カメラ装置を用いて周辺画像を記録し、検出アルゴリズムにより周辺深度情報を取得するステップ。
【0021】
ステップS20:統合アルゴリズムにより周辺画像を全方位の周囲画像に統合し、車両の一つの面を検出領域に分割するステップ。
【0022】
ステップS30:検出領域により周辺深度情報および全方位の周囲画像を操作して、障害物の加速度ベクトル情報および距離情報を与えるステップ。
【0023】
ステップS40:障害物の加速度ベクトル情報および距離情報により、障害物の移動経路を算出するステップ。
【0024】
ステップS50:障害物の移動経路に応じたアラーム情報を生成するステップ。
【0025】
ステップS10において、図2Aに示すように、車両10は深度検出モジュール20内の複数の深度カメラ装置22を用いて周辺画像を撮影する。自動車制御チップ12の演算処理部122を用いて、図2Bに示すように、複数の周辺深度情報、INFOを取得する。自動車制御チップ12の画像処理部124を用いて、図2Bに示すように、複数の周辺画像I1を取得する。本実施形態では、複数の深度カメラ装置22が車両10の周囲にそれぞれ配置され、車両10の周囲の複数の周辺画像を一度に撮像する。さらに、本実施形態によれば、深度検出モジュール20は、半径15メートル以内の深度画像を取得するための複数の高解像度深度カメラ装置22を含む。複数の深度カメラ装置22は、複数の周辺深度情報Infoを取得する。
【0026】
自動車制御チップ12は、複数の深度カメラ装置に接続され、全方位の深度画像を取得する深度検出モジュール20を形成する。演算処理部122および画像処理部124の動作および処理の後、複数の周辺深度情報Info1および複数の周辺画像I1が与えられる。複数の深度カメラ装置22は、赤外線または超音波方法を使用してさらに検出することができる。また、図2Bに示すように、本実施形態によれば、複数の深度カメラ装置22の検出結果は、複数の周辺深度情報INFOを生成する検出アルゴリズムに従って演算処理部122によって演算され、演算処理部122によって統合された、複数の全方位の方向深度情報DINFOが形成される。
【0027】
演算処理部122によって実行される検出アルゴリズムを、以下のように説明する。
【0028】
〔ソーベルエッジ検出〕
画像内の各画素およびその近傍の画素は、3×3マトリックスにより表し、方程式1においてP1、P2、P3、P4、、、P9により表す:
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【数6】

【数7】
【0029】
画像は、ワールド座標に対応する2つの深度センサ間の角度αによって形成される。ワールド座標は、Ow-XwYwZwとして定義され、ここで、Xc=Xw、Yc=-Yw、Zc=L-Zw、およびAは画像A’である。そして:
【数8】

これにより、ワールド座標によって方程式8が書き換えられる。前の平面方程式は、周辺の環境に対する検出結果を推定するためにワールド座標により表され、次式が与えられる:
【数9】

【数10】

【数11】

【数12】

【数13】

【数14】

【数15】

【数16】

【数17】
【0030】
ステップS20において、図2Dに示すように、複数の周辺画像I1を全方位の周囲画像I2に統合する。本実施形態によれば、統合アルゴリズムは、f(x,y)を採用し、f(x,y)は、方程式18の中に示す。xまたはyがある事実を満たす場合、特性関数は1となる。
【0031】
【数18】
【0032】
観測値に対応する隠されたステータスは、コンテキスト(観測、ステータス)によって決定される。特性関数を使用することによって、環境特性(観測または状態の組み合わせ)を選択することができる。すなわち、隠れマルコフモデル(HMM)モデルにおけるナイーブベイズの独立観測の仮定によって課される制約を回避するために、観測の代わりに特性(観測組み合わせ)を用いる。
【0033】
サイズTを用いたトレーニングデータ
【数19】

によれば、経験的期待値は方程式(19)により表され、モデル期待値は方程式(20)により表される。最大エントロピーモデルの学習は、制約最適化と等価である。
【0034】
【数20】

【数21】
【0035】
経験的期待値がモデル期待値と同一であると仮定すると、以下の方程式21により表される、任意の特性関数Fiの条件付き確率分布に関連する制約を満たしている複数の集合Cが存在する:
【数22】
【0036】
最大エントロピー理論によって、不完全な情報(制限されたトレーニングデータなど)から妥当な確率分布のみを推定するためには、その情報により課される制約が満たされると、エントロピーは最大にすべきである。すなわち、最大エントロピーの分布は、限られた状態の確率集合が与えられると、最適化された分布である。これにより、最大エントロピーモデルは、凸関数に対する制約最適化問題となる。
【0037】
【数23】

【数24】

【数25】
【0038】
ラグランジュ二重性は一般に、極値を解くために、方程式を制約のない方程式に変換するために採用される:
【0039】
【数26】

【数27】
【0040】
pについてLangrage関数の偏導関数を計算し、それを0に等しくする。方程式を解く。いくつかのステップを省略することによって、以下の方程式が導出される:
【数28】

【数29】
【0041】
〔最大エントロピーマルコフモデル(MEMM)〕
【数30】

HMMの2つの条件付き確率分布を置き換えるには、
【数31】

分布を使用する。前の状態と現在の観測値によって、現在の状態の確率を計算することを意味する。このような分布関数
【数32】

の各々は、最大エントロピーに準拠するインデックスモデルである。
【0042】

【数33】

の離散確率分布の点および最大情報エントロピーが発見され、発見される確率分布が
【数34】

と発見された場合、最大エントロピー方程式は以下の通りである:
【数35】

各点
【数36】

における確率分布
【数37】

の合計は、1でなければならない:
【数38】

ラグランジュ乗数を用いることによって、最大エントロピーの角度を推定することができ、
【数39】

は、
【数40】

の離散確率分布のすべての
【数41】

をカバーする:
【数42】

以下を行うための
【数43】

方程式の系が与えられ、ここで
【数44】

である:
【数45】

これらの
【数46】

方程式を拡張することにより、次式が得られる:
【数47】

λのみに依存するため、全ての
【数48】

が等しいことを意味する。以下の制約を使用する:
【数49】

は以下を与える:
【数50】

これにより、均一な分布は最大エントロピーの分布となる。
【0043】
【数51】

方程式37を用いることによって、最大エントロピー分布を推定することができる。図2Cに示すように、画像統合のプロセス中に、画像重複領域Oが除去され、図2Dに示すように、全方位の周囲画像I2が生成される。すなわち、方程式37により与えられる最大エントロピー分布を用いて、全ての周辺画像I1を統合し、重複領域Oを除去し、全方位の周囲画像I2を生成する。
【0044】
また、図2Aおよび図2Bに示すように、ステップS20において、複数の全方位の周囲画像I2および複数の全方位の深度情報DINFOによって、車両10の周辺領域を複数の検出領域Aに分割する。
【0045】
ステップS30において、図2Aおよび図2Bを参照し、複数の検出領域AおよびLucas-Kanadeオプティカルフローアルゴリズムを用いて、障害物が算出される。始めに、画像差分法を用いて、画像制約方程式にテイラー方程式を適用し、次式を得る:
【数52】
【0046】
H.O.T.は、高次の項を表し、これは、移動が十分に小さい場合には無視することができる。この方程式によれば、次のように求めることができる:
【数53】

あるいは
【数54】

から、以下が与えられる:
【数55】

、V、およびVは、それぞれx、y、およびz方向におけるI(x,y,z,t)のオプティカルフローベクトル成分である。
【数56】

および
【数57】

は、画像内の点(x,y,z,t)の対応する方向の差である。これにより、方程式42は次の方程式に変換することができる:
【数58】

方程式42は、以下のようにさらに書き換えることができる:
【数59】

方程式41には3つの未知数(Vx,Vy,Vz)があるため、後続のアルゴリズムを使用して未知数を推定する。
【0047】
始めに、オプティカルフロー(V,V,V)が、mm(m>1)の小さなウィンドウにおいて、一定であると仮定する。次に、プリミティブ1からn、°n=m°3°に従って、以下の一セットの方程式が与えられる:
【数60】
【0048】
上記の複数の方程式はすべて、3つの未知数を含み、方程式の集合を形成する。方程式の集合は重複決定された方程式の集合であり、次のように表すことができる:
【数61】

これは、方程式46として示される。
【0049】
【数62】
【0050】
この重複決定された問題を解決するために、方程式46は、最小二乗法を用いて、導き出す:
【数63】

または
【数64】

から、以下が与えられる
【数65】
【0051】
方程式49の結果を方程式41に代入し、1つまたは複数の障害物の加速度ベクトル情報および距離情報を算出する。
【0052】
ステップS40において、図2Eに示すように、前のステップS30により与えられた加速度ベクトル情報および距離情報を用いて、車両の周辺の1つまたは複数の障害物の移動方向を推定し、そして1つまたは複数の障害物OBの移動経路P1を算出することができる。また、本実施形態に係る車両10は、自動車制御チップ12の演算処理部122をさらに用いて、第1の障害物OB1の移動速度V1および移動距離D1をさらに算出することができる。本実施形態に係る第1の障害物OB1は、車両10の前方を通過し、そして車両10は、第1の障害物OB1の移動経路P1を横断する。
【0053】
ステップS50において、車両10の自動車制御チップ12は、1つまたは複数の障害物の移動経路に応じたアラーム情報を生成する。本実施形態によれば、自動車制御チップ12は、車両10と第1の障害物OB1との間の第1のアラーム距離DA1が第1の閾値内に到達したと判断し、一般の障害物としてのアラーム情報を送信する。例えば、アラーム情報は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)上に表示される。第1のアラーム距離DA1が第2の閾値に入ると、自動車制御チップ12は、単一のアラーム音を出力し、アラーム情報を表示するようにHUDを制御する。第1のアラーム距離DA1が第3の閾値に入ると、自動車制御チップ12は間欠的なアラーム音を出力し、HUD(図示せず)を制御してアラーム情報を表示する。第1のアラーム距離DA1が第4の閾値に入ると、自動車制御チップ12は連続アラーム音を出力し、HUD(図示せず)を制御してアラーム情報を表示する。第4の閾値は、障害物OBが車両10に非常に近いことを意味するため、自動車制御チップ12はアラームを表現するために緊急の方法を使用する。
【0054】
図2Fに示すように、本発明の別の実施例が示されている。本発明に係る車両の全方位の障害物回避方法を用いることにより、第2の障害物OB2が検出され、第2の障害物OB2の移動経路P2が算出される。自動車制御チップ12は、車両が第2の障害物OB2の移動経路P2を横断しないと判断する。また、判定後、第2の障害物OB2の移動距離D2及び移動速度V2は変化しない。これにより、車両10と第2の障害物OB2との距離が第2のアラーム距離DA2であり、第2のアラーム距離DA1が第1、または第4の閾値以内にある場合のみ、自動車制御チップ12は、アラーム情報を表示するようにHUDを制御する。上述のHUDは、車両用の成熟した技術である。本発明は、HUDに重点を置いていないため、それは、表示方法を説明するために用いられる。本発明によれば、車両10のダッシュボード上のディスプレイ、例えば、カーオーディオ及びビデオディスプレイに、アラーム情報を更に表示することができる。
【0055】
また、本発明によれば、ステップS50の前に、自動車制御チップ12は、障害物を分類してラベル付けすることができる。例えば、第1の障害物OB1を危険な障害物とし、第2の障害物OB2を危険ではない障害物とする。それらは、全方位の周囲画像I2においてラベル付けされ、HUD上に表示されるか、又はカーオーディオ及びビデオディスプレイ上に表示される。
【0056】
要約すると、本発明は、車両が予防的な回避を達成するための、全方位の障害物回避方法を提供する。センサが提供する、障害物の距離、位置、速度、加速度に応じて、移動方向などの複数種類の情報を算出することができる。この情報により、運転リスクを評価し、運転者に参考として提供することができる。また、移動中に危険に遭遇した車両の障害物情報は、参照データとして提供され、予防・判断のための重要なデータとして影響を与える。これにより、事前に高リスク行動を回避し、効果的にリスクを低減し、以下の効果を奏することができる。
【0057】
1.全方位の回避技術は、逆転レーダを用いて、車を逆進させるなど、様々な環境に適用することができる。また、より詳細な距離情報及びより広い識別範囲を取得することに加えて、事故を防止するために、車両の移動方向を予めアラームすることができる。これにより、より良好なアラーム効果を得ることができる。
【0058】
2.サイドブラインドスポットリマインダは、運転手がドアを開き、車から降りる前において、歩行者に気を付けることを運転手に認識させるために、アラームを提供することができる。本発明は、旋回および車線変更に適用することができる。現在の方法と比較して、本発明は、運転者の判断に役立つより多くの運転情報を、提供することができる。現在、自動車事故は、主に運転者の注意散漫によって引き起こされる。本発明は、注意散漫な運転によって引き起こされる運転リスクを抑制することができる。
【0059】
したがって、前述の説明は、本発明の実施形態に過ぎず、本発明の範囲および幅を限定するために用いられるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載された形状、構造、特徴、または技術的思想に従ってなされた同等の変更または修正は、本発明の特許請求の範囲に含まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F