(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】耐屈曲性に優れた二次電池用電解銅箔及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20220420BHJP
C25D 1/04 20060101ALI20220420BHJP
C25D 1/00 20060101ALI20220420BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20220420BHJP
【FI】
H01M4/66 A
C25D1/04 311
C25D1/00 311
H01M4/139
(21)【出願番号】P 2019524213
(86)(22)【出願日】2017-03-28
(86)【国際出願番号】 KR2017003374
(87)【国際公開番号】W WO2018088645
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2019-05-09
(31)【優先権主張番号】10-2016-0150362
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515059290
【氏名又は名称】イルジン マテリアルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ILJIN MATERIALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,テジン
(72)【発明者】
【氏名】パク,スルギ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,キドク
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-033475(JP,A)
【文献】特開2008-013847(JP,A)
【文献】国際公開第2014/081041(WO,A1)
【文献】特許第3346774(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64-4/66
C25D 1/04
C25D 1/00
C25D 7/06
C25C 1/12
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池用電解銅箔の製造方法であって、
(1)銅、TOC、コバルト及びヒ素を含むめっき液を用意するステップと、
(2)温度が30℃乃至70℃である条件で、電流密度30ASD乃至150ASDを加え、ドラムを利用して電解めっきを実行するステップと、及び
(3)前記電解めっきによって形成された電解銅箔に陰極活物質をコーティングするステップとを含み、
ここで、前記めっき液中に含まれるTOCの濃度は、100ppm以上であり、前記めっき液中に含まれるコバルトの濃度は、1mg/L乃至50mg/Lであり、前記めっき液中に含まれるヒ素の濃度は、ヒ素は10mg/L乃至80mg/Lであり、
前記電解銅箔に含まれるTOCとコバルト及びヒ素の割合は、下記式1に従い、
下記式1のTOCとコバルト及びヒ素は、質量比である、
前記二次電池用電解銅箔の製造方法。
式1:TOC/(コバルト+ヒ素)=1.30~1.55
【請求項2】
前記電解銅箔は、MIT屈曲性テストでの屈曲回数が110回以上である、
請求項
1に記載の二次電池用電解銅箔の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ(2)を介する電解めっきによって形成された電解銅箔は、前記ドラムと接する一面と、前記一面の反対面である他面からなり、
前記一面及び他面のRz粗さは、2.0μm以下である、
請求項
1に記載の二次電池用電解銅箔の製造方法。
【請求項4】
前記電解銅箔の引張強度は、30kgf/mm2乃至51kgf/mm2である、
請求項
1に記載の二次電池用電解銅箔の製造方法。
【請求項5】
前記電解銅箔の延伸率は、2%乃至15%である、
請求項
1に記載の二次電池用電解銅箔の製造方法。
【請求項6】
前記電解銅箔の厚さは、4μm乃至10μmである、
請求項
2に記載の二次電池用電解銅箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐屈曲性に優れた二次電池用電解銅箔及びその製造方法に関し、更に詳細には、銅箔製造時、銅電解液に添加剤を多数使用しなくても、耐屈曲性に優れた二次電池用電解銅箔及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電解銅箔は、電気/電子産業分野で使用されるPCB(Printed Circuit Board:プリント回路基板)の基礎材料として広く使用されるものであり、スリム型ノートパソコン、個人携帯端末(PDA)、電子ブック、MP3プレーヤー、次世代携帯電話、超薄型フラットパネルディスプレイなどの小型製品を中心に、その需要が急速に増大している。また、電解銅箔の物性を改善して、二次電池の陰極集電体としても広く使用されている。
【0003】
通常、電解銅箔は、電気分解の方法で生成され、チタンからなる円筒状の陰極(ドラムとも呼ばれる)と一定の間隔を維持する形の鉛合金又はイリジウム酸化物が被覆されたチタンからなる陽極、電解液及び電流の電源を含む電解槽で製造される。電解液は、硫酸及び/または硫酸銅からなり、円筒形陰極を回転させながら陰極と陽極との間に直流電流を流すと、陰極に銅が電着(electrodeposited)されて、連続的な電解銅箔の生産が可能となる。このように、電気分解の方法で銅イオンを金属に還元させる工程を製箔工程という。
【0004】
その後、製箔工程で得られた銅箔は、必要に応じて、絶縁基板との接着力を向上させるために、よどみ処理工程(Nodule処理工程とも呼ばれる)、銅イオンの拡散を防止する拡散防止処理、外部からの酸化を防止するための防錆処理、絶縁基板との接着力を補完させる化学的接着力の向上処理などの追加的な表面処理工程を経ることができる。表面処理工程を経ると、ロープロファイル(low profile)印刷回路用銅箔になり、表面処理工程の中で防錆処理のみを行うと二次電池用銅箔になる。
【0005】
電着された銅箔は、プリント回路用に使用される場合には、表面処理された後、絶縁基板と接着された形態(ラミネート)でPCB加工業者に供給される。これに比べて二次電池用として使用する場合には、防錆処理のみを経て二次電池生産業者に供給される。
【0006】
このような二次電池は、陽極及び陰極を有し、陽極集電体の表面上に陽極活物質が結着されており、陰極集電体の表面上には陰極活物質が結着された構成となっている。このような二次電池は、充放電を繰り返すと、活物質層の膨張及び収縮によって、集電体と活物質との間に応力が加えられて、活物質層の脱落を引き起こしたり、集電体が破壊される現象が現れて、サイクル特性が低下される問題がある。
【0007】
従って、充放電が繰り返されても活物質層の膨張及び収縮による変化に耐えることができるように、物性変化が少なく、耐屈曲性に優れた二次電池用電解銅箔が求められているのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、銅電解液にTOC及び金属添加剤であるコバルト及びヒ素を一定の含有量で存在するようにして、銅箔の物性を一定に維持させ、高い耐屈曲性を有する二次電池用電解銅箔及びその製造方法に関する。
【0009】
また、本発明は、高い耐屈曲性により電池の寿命が優れて現れる二次電池用電解銅箔及びその製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によれば、本発明の実施例は,TOC(Total organic carbon)、コバルト及びヒ素を含むめっき液でドラムを利用して製造され、陰極活物質がコーティングされた二次電池用電解銅箔であって、前記電解銅箔に含まれるTOCとコバルト及びヒ素の割合は、下記式1に従う、前記二次電池用電解銅箔を含む。
【0011】
式1:TOC/(コバルト+ヒ素)=1.30~1.55
前記電解銅箔は、MIT屈曲性テストでの屈曲回数が110回以上であることを特徴とする。
【0012】
前記めっき液中に含まれるTOCの濃度は、100ppm以上であることを特徴とする。
【0013】
前記電解銅箔は、前記ドラムと直接に接する一面と、前記一面の反対面である他面からなり、前記一面及び他面のRz粗さは、2.0μm以下であることを特徴とする。
【0014】
前記電解銅箔の引張強度は、30kgf/mm2乃至51kgf/mm2であることを特徴とする。
【0015】
前記電解銅箔の延伸率は、2%乃至15%であることを特徴とする。
【0016】
前記電解銅箔の厚さは、4μm乃至10μmであることを特徴とする。
【0017】
本発明の一側面によれば、本発明の実施例は,二次電池用電解銅箔の製造方法であって、(1)銅、TOC、コバルト及びヒ素を含むめっき液を用意するステップと、(2)温度が30℃乃至70℃である条件で、電流密度30ASD乃至150ASDを加え、ドラムを利用して電解めっきを実行するステップと、及び (3)前記電解めっきによって形成された電解銅箔に陰極活物質をコーティングするステップとを含み、前記電解銅箔に含まれるTOCとコバルト及びヒ素の割合は、下記式1に従う、前記二次電池用電解銅箔の製造方法を含む。
【0018】
式1:TOC/(コバルト+ヒ素)=1.30~1.55
前記電解銅箔は、MIT屈曲性テストでの屈曲回数が110回以上であることを特徴とする。
【0019】
前記めっき液中に含まれるTOCの濃度は、100ppm以上であることを特徴とする。
前記ステップ(2)を介する電解めっきによって形成された電解銅箔は、前記ドラムと接する一面と、前記一面の反対面である他面からなり、前記一面及び他面のRz粗さは、2.0μm以下であることを特徴とする。
【0020】
前記電解銅箔の引張強度は、30kgf/mm2乃至51kgf/mm2であることを特徴とする。
【0021】
前記電解銅箔の延伸率は、2%乃至15%であることを特徴とする。
【0022】
前記電解銅箔の厚さは、4μm乃至10μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、銅電解液にTOC及びコバルト及びヒ素を一定の含有量で存在するようにして、銅箔の物性を一定に維持させ、耐屈曲性を向上させることができる。
【0024】
また、本発明によれば、耐屈曲性に優れて電池の寿命サイクル特性が向上された二次電池用電解銅箔を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施例による二次電池用電解銅箔の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施例によるドラムを利用して、電解銅箔を製造するステップを示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
その他の実施例の具体的な事項は、詳細な説明及び図面に含まれている。
【0027】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付される図面とともに、詳細に後述されている実施例を参照すると明確になるであろう。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものでなく、お互いに異なる多様な形態で具現されることができ、以下の説明で、ある部分が他の部分と接続されているとする場合、これは直接に接続されている場合だけではなく、その中間に他の媒体を挟んで接続されている場合も含む。また、図面で本発明と関係のない部分は、本発明の説明を明確にするために省略しており、明細書全体を通じて類似した部分については同一の符号を付けた。
【0028】
以下、添付された図面を参照して、本発明について説明する。
【0029】
次は、本発明の一実施例に係る耐屈曲性が向上された二次電池用電解銅箔についてさらに詳細に説明する。
【0030】
本発明の一実施例に係る二次電池用電解銅箔は、ドラムを利用して製造され、陰極活物質がコーティングされた二次電池用電解銅箔であって、前記電解銅箔は、MIT屈曲性テストでの屈曲回数が110回以上である二次電池用電解銅箔を含む。
【0031】
従来の電解銅箔の製造技術では、添加剤を多数使用して銅箔の強度を増加し、耐屈曲性を向上させる方法を使用した。しかし、銅箔製造時、添加剤が多数使用されると、延伸率が低下し、銅箔の量産時に物性を維持させることが難しく、二次電池の充放電サイクル特性が低下して、好ましくない。
【0032】
本発明では前記の問題点を解決するために、銅箔製造時、銅電解液に添加剤を多数使用しなくても、耐屈曲性に優れた二次電池用電解銅箔及びその製造方法を提供する。
【0033】
本発明に係る電解銅箔は、銅めっき時に使用される銅電解液にTOCが一定の含有量で存在するように数値限定して、銅箔の量産時に物性が変化することを防止し、耐屈曲性が向上された二次電池用電解銅箔を得ることができる。本発明の二次電池用電解銅箔は、MIT屈曲性テストでの屈曲回数が110回以上現れることを特徴とする。銅箔の屈曲性が優れた場合、電池の充放電時に活物質の大きい体積変化に伴う箔にかかる大きい応力を効果的に吸収して、サイクル特性が低下されたり、集電体が破壊される現象を防止することができる。
【0034】
本発明では、電解銅箔製造時、銅電解液にTOCを100ppm以上存在するようにすることにより、銅箔の物性を一定に維持し、耐屈曲性を向上させて、寿命サイクルを向上させ、クラックを防止する。
【0035】
また、本発明に係る二次電池用電解銅箔は、前記ドラムと直接に接する一面と、前記一面の反対面である他面からなり、前記一面及び他面のRz粗さは、2.0μm以下であることができる。二次電池内の活物質が充放電時に体積変化を見せるが、これにより電池の寿命を優秀に維持するためには、銅箔である集電体と活物質との接着状態を良好に維持することが非常に重要である。従って、接着状態を良好にするためには、活物質の溶媒の展延性をよくし、バインダーの分布が均一で接着力が増加するように電解銅箔の表面粗さが平坦化しなければならない。電解銅箔の一面及び他面の表面粗さが2.0μmを超える場合、集電体と活物質との接着力が低下されて、二次電池の充放電時の体積変化により電池の性能が低下されることができる。
【0036】
図1は、本発明の一実施例による二次電池用電解銅箔の製造方法を示すフローチャートである。
図1を参照すると、本発明に係る二次電池用電解銅箔の製造方法は、(1)銅イオン(Cu
2+)60g/L乃至140g/L、硫酸70g/L乃至200g/L、塩素10ppm乃至90ppm、TOC100ppm以上、コバルト及びヒ素を含むめっき液を用意するステップ(S100)と、(2)温度が30℃乃至70℃である条件で、電流密度30ASD乃至150ASDを加え、ドラムを利用して、電解めっきを実行するステップ(S200)と、及び(3)前記電解めっきによって形成された電解銅箔に陰極活物質をコーティングするステップ(S300)とを含む。
【0037】
ステップ(1)(S100)では、めっき液を用意するステップとして、銅イオン(Cu2+)60g/L乃至140g/L、硫酸70g/Lから200g/L、塩素10ppm乃至90ppm、TOC100ppm以上、コバルト及びヒ素を含むめっき液を用意する。前記めっき液で、TOCは、電解めっき時、銅箔内のグレインサイズの変化を最小化する役割をする。
【0038】
また、本発明では、二次電池用電解銅箔の耐屈曲性を向上するために、TOC以外の金属添加剤としてコバルト及びヒ素をさらに含む。前記電解銅箔は、めっき液を電解めっきして製造することができるが、前記めっき液中でTOCは、一定の含有量で含まれることができ、前記コバルトは1mg/L乃至50mg/Lで含まれ、ヒ素は10mg/L乃至80mg/Lで含まれることができる。
【0039】
前記TOC、コバルト及びヒ素などの濃度は、電解めっきによって製造される電解銅箔と常に同じではなく、同じかより小さく含まれることができる。
【0040】
前記コバルト及びヒ素は、電解めっき時の銅のめっき速度を調節して表面を平坦にし、電解銅箔の内部の炭素含有量が過度に増加することを調節する。従って、電解銅箔内のコバルト及びヒ素とTOCの割合が下記式1の範囲であるとき、低温で電解銅箔の物性変化が最小限に抑えられる。
【0041】
式1:TOC/(コバルト+ヒ素)=1.30~1.55
前記TOCとコバルト及びヒ素の割合が1.30未満である場合、めっき液に投入されるコバルト及びヒ素の含有量が増加して、めっき液内のTOCが、グレインが異常成長するのを防止する効果を抑制するので、好ましくなく、前記割合が1.30を超える場合、電解銅箔内の過多なTOC含有量によりグレイン内に応力が発生して、めっき後、電解銅箔内のグレインが異常成長して、耐屈曲性に有利な結晶構造が形成されることが妨げられる。従って、二次電池用電解銅箔の耐屈曲性を向上するためには、コバルト及びヒ素とTOCの割合が前記式1のように1.30乃至1.55の間の範囲を維持することが好ましい。
【0042】
前記めっき液で銅イオン及び硫酸イオンが前記範囲を外れた場合、以後実行される電解めっき時に銅箔が正しく析出されなかったり、銅箔の硬さが低下されることがある問題がある。
【0043】
また、前記めっき液で、塩素は10ppm乃至90ppmを含み、塩素は電解めっき時に、結晶粒界界面に形成されるCuCl2の析出物が高温に加熱時、結晶成長を抑制して、高温での熱的安定性を向上させるようにする。塩素濃度が10ppm乃至90ppmの範囲を外れた場合、電解銅箔の引張強度が低下され、高温での熱的安定性が低下されることができる。
【0044】
ステップ(2)(S200)では、前記ステップ(1)で用意しためっき液を、温度が30℃乃至70℃である条件で、電流密度30ASD(Ampere per Square Deci-metre)乃至150ASDを加え、ドラムを利用して電解めっきを実行する。ちなみに、
図2は、本発明の一実施例によるドラムを利用して、電解銅箔を製造するステップを示す図である。めっき温度及び電流密度が前述した範囲を外れる場合には、めっきが正常に行われず、電解銅箔の表面が均一に形成されなかったり、引張強度及び延伸率が低下されて電池性能の低下の原因になることができる。
【0045】
ステップ(3)(S300)では、前記電解めっきによって形成された電解銅箔に陰極活物質をコーティングするステップを含み、ステップ(3)(S300)によって形成された陰極活物質がコーティングされた電解銅箔は、耐屈曲性が優れて、MIT屈曲性テストでの屈曲回数が110回以上である。
【0046】
また、前記ステップ(2)を介する電解めっきによって形成された電解銅箔は、前記ドラムと接する一面と、前記一面の反対面である他面からなり、前記一面及び他面のRz粗さは、2.0μm以下であることができる。電解銅箔の一面及び他面の表面粗さが2.0μmを超える場合、集電体と活物質との接着力が低下されて、二次電池の充放電時の体積変化によって、電池性能が低下することがあって好ましくないため、電解銅箔の前記一面及び他面のRz粗さは、2.0μm以下であることが好ましい。
【0047】
また、本発明に係る二次電池用電解銅箔の引張強度は30kgf/mm2乃至51kgf/mm2であることが好ましい。前記引張強度が30kgf/mm2未満の場合には、電極活物質のコーティング後、プレス製造工程で変形や破断することができる。二次電池の充放電時には、グラファイトなどの他の活物質がリチウムイオンのやりとり過程で、二次電池の体積が膨張または収縮するが、この時、活物質層が電解銅箔と密着するため、膨張または収縮による応力が発生する。従って、引張強度が30kgf/mm2未満の場合には、電解銅箔が応力に耐えられず、破断されて電池性能を維持することができず、破断により変形して陽極と陰極が短絡される問題が発生することができる。
【0048】
また、本発明に係る二次電池用電解銅箔の延伸率は、2%乃至18%であることが好ましい。電解銅箔の延伸率が高い場合には、電極の製造工程で活物質のコーティング時、張力に耐えて、工程上の破断を防止することができ、電極を巻く工程で受けるストレスで破断を防止することができる利点がある。また、電池の充放電サイクル時に、効率低下を防止し、破断を防止して電池の性能を向上させる。しかし、延伸率が18%を超える場合には、充放電時、二次電池の変形がひどくなり、短絡されることができ、延伸率が2%未満である場合には、電解銅箔が容易に破断することができる。
【0049】
前述した引張強度及び延伸率は互いに反比例して、引張強度が増加すると、延伸率は低下し、引張強度が減少すると、延伸率は増加することになるので、破断を防止しながらも、高い引張強度を有する電解銅箔を製造するためには、適正範囲の引張強度及び延伸率を維持することが重要である。従って、引張強度は、30kgf/mm2乃至51kgf/mm2を維持することが好ましく、延伸率は2%乃至18%の範囲を維持することが好ましい。
【0050】
また、本発明に係る二次電池用電解銅箔の厚さは、4μm乃至10μmであることが好ましい。前記電解銅箔の厚さが4μm未満の場合には、薄い厚さにより電解銅箔が容易に破断されることができ、電解銅箔の厚さが10μmを超える場合には、製造される二次電池の体積及び重量が増加して好ましくない。
【0051】
以下、本発明の実施例及び比較例を記載する。しかし、下記の実施例は、本発明の好ましい一実施例だけであり、本発明の権利範囲が下記の実施例により制限されるものではない。
【0052】
実験1.TOC濃度及びMIT回数による電池寿命テスト
(実施例1)
銅イオン100g/L、硫酸110g/L、塩素30ppm、TOC340ppm、コバルト0.025g/L及びヒ素0.045g/L(コバルト及びヒ素の合計が0.775g/Lである)を含むめっき液を用意して、50℃、90ASDの電流密度で、ドラムを利用して電解めっきを実行し、電解めっきによって形成された電解銅箔に陰極活物質をコーティングした。
【0053】
(実施例2乃至実施例8)
めっき液内に含まれるTOCの濃度、コバルト及びヒ素の量を下記表3のように実行することを除いて実施例1と同様に製造した。
【0054】
(比較例1乃至比較例4)
比較例1乃至比較例4は、めっき液の製造の時、TOCの濃度、コバルト及びヒ素の量を下記表3のように実行することを除いて実施例1と同じ条件で電解銅箔を製造した。
【0055】
実施例1乃至実施例8及び比較例1乃至比較例4の実験条件は、上記と同じであり、前記方法で製造されたそれぞれの二次電池用電解銅箔の常温引張強度及び延伸率、MITテスト回数、300サイクル後の電池寿命を測定して、下記表2及び表3に記載した。
【0056】
引張強度及び延伸率は、実施例1乃至実施例8及び比較例1乃至比較例4から得られた電解銅箔を幅12.7mm×ゲージの長さ50mmで引張試験片を採取した後、50.8mm/minのクロスヘッド速度での引張試験でIPC-TM-6502.4.18B規格に基づいて実施して測定される引張強度の最大荷重を引張強度とし、破断時の延伸率を延伸率とし、引張強度及び延伸率は、すべて常温で測定した。
【0057】
また、銅箔を溶かした後TOCとコバルト及びヒ素の割合値は、実施例1乃至実施例8及び比較例1乃至比較例4から得られた電解銅箔を塩酸(35%)60ml、過酸化水素水(30%)40mlに溶かした後、ICP(Inductively coupled plasma mass spectrometry)を利用して分析した。TOCとコバルト及びヒ素の割合値は、前述した式1を用いて計算し、下記表3にその結果を記載した。
【0058】
MIT屈曲試験は、MIT屈曲試験装置によりMIT屈曲試験を行った。屈曲試験は、下記の条件の下で屈曲を繰り返し、試験片が断線されるまでの回数を屈曲回数として求め、表3にその結果を記載した。
1)状態:原箔
2)屈曲半径(R):0.38mm
3)屈曲角度:135°
4)屈曲速度:175回/分
5)荷重(load):500g
電池評価条件は、下記のように設定して実験し、セル(Cell)の設計、陽極、陰極、セパレーター(separator)、電解液の条件は、下記表1のように設定して実験した。
1)定電流充電:電流値1C、充電終止電圧4.2V
2)20分間休止
3)定電流放電:電流値1C、充電終止電圧:2.5V cut off
4)1C=487mAh
5)Cycle:300cycle評価、温度:55℃
【0059】
【表1】
表2及び表3を参照すると、TOC濃度が100ppm未満である比較例1乃至比較例4は、MIT屈曲回数がすべて90回未満に現れたことを確認することができ、一方、TOC濃度がすべて100ppm以上である実施例1乃至実施例8は、MIT屈曲回数がすべて110回以上であることを確認することができる。電解銅箔の製造時、TOCが100ppm以上のめっき液に含まれる場合、電解めっき時に銅箔内のグレインサイズ及び結晶構造が変化することを防止することができて、銅箔の引張強度及び耐屈曲性が向上される。
【0060】
また、TOC/(コバルト+ヒ素)の割合がすべて1.30未満である比較例1乃至比較例4を見ると、MIT屈曲回数がすべて90回以下であることを確認することができ、300サイクル後、電池の寿命も低く現れたことを確認することができる。TOC/(コバルト+ヒ素)の割合が1.30未満では、金属添加剤のコバルト及びヒ素の含有量が増加して、めっき液内のTOCがグレインの異常成長を防止する効果を起こすことに問題となって、低温での電解銅箔の物性変化が大きく起きている。
【0061】
また、前記表3から300サイクル後の容量を確認した実施例1乃至実施例8と比較例1乃至比較例4による電池を、電解銅箔(陰極板として作用した)の状態を確認するために解体した。このとき、実施例1乃至実施例8による電解銅箔の場合には、外観不良がなく、最初と同じであることを確認することができた。一方、比較例1乃至比較例4の場合には、電池の寿命が低下されただけでなく、電解銅箔の一部が破断または剥離されたことを確認することができ、比較例1の場合には、陰極活物質が電解銅箔から剥離される部分が存在することを確認することができ、比較例2及び比較例4では電解銅箔の外側部分に破断された部分が形成されるのが確認することができた。
【0062】
当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具大的な形態で実施されることができることを理解できるだろう。従って、以上で記述した実施例は、すべての方面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりも、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。