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  • 特許-弾性膜 図1A
  • 特許-弾性膜 図1B
  • 特許-弾性膜 図2
  • 特許-弾性膜 図3
  • 特許-弾性膜 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】弾性膜
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/30 20120101AFI20220420BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220420BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20220420BHJP
【FI】
B24B37/30 A
H01L21/304 622H
B24B41/06 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020018163
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021122896
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷 康平
(72)【発明者】
【氏名】増根 昭洋
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-182064(JP,A)
【文献】特開2013-111717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/005,37/10,37/30,41/06,
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CMP装置の研磨ヘッドに取り付けられて前記研磨ヘッドとの間に単一の密閉空間を形成するウエハ保持用の弾性膜であって、
研磨ヘッド取付側に設けられたゴム製の内側ゴム層と、
ウエハ保持側に設けられたゴム製の外側ゴム層と、
前記内側ゴム層と前記外側ゴム層との間に設けられ前記内側ゴム層及び前記外側ゴム層よりも剛性の高い材料で形成された中間剛体層と、
を備えた円盤状の膜本体を有し、
前記膜本体の全領域に前記中間剛体層が設けられ且つ前記膜本体の側面に前記中間剛体層が露出している弾性膜。
【請求項2】
請求項1に記載された弾性膜において、
前記内側ゴム層及び前記外側ゴム層が同一の架橋ゴムで形成されている弾性膜。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された弾性膜において、
前記中間剛体層が樹脂又は金属で形成されている弾性膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMP装置の研磨ヘッドに取り付けられるウエハ保持用の弾性膜に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスで用いられるCMP装置では、通常、研磨ヘッドにウエハ保持用の弾性膜が取り付けられる。この弾性膜は、研磨ヘッドとの間に形成される密閉空間の圧力調整により半導体ウエハを吸着して保持する。そして、弾性膜に保持された半導体ウエハは、研磨パッドに圧接されて研磨される。このとき、半導体ウエハの研磨パッドへの圧接力が不均一であると、半導体ウエハに研磨不足の部分や過研磨の部分が生じてしまうこととなる。そこで、研磨ヘッドと弾性膜との間に複数の密閉空間を区画形成し、各密閉空間毎に圧力調整を行うことにより、半導体ウエハの研磨パッドへの圧接力の均一化を図ることが行われている。例えば、特許文献1には、研磨ヘッドとの間に複数の密閉空間を区画形成した弾性膜において、隣接する密閉空間に跨がるように剛性の高いダイヤフラムを埋設したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5236705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
研磨ヘッドと弾性膜との間に複数の密閉空間を区画形成する構成では、研磨ヘッド及び弾性膜の構造も、半導体ウエハの研磨パッドへの圧接力を均一化するための各密閉空間毎の圧力調整も複雑となる。また、消耗品である弾性膜の研磨ヘッドへの取り付け時におけるゴミの混入や取付ミスが危惧されるのに加え、その取付に多大の作業工数がかかる。
【0005】
本発明の課題は、研磨ヘッドとの間に単一の密閉空間を形成する弾性膜において、半導体ウエハの研磨パッドへの圧接力を均一化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、CMP装置の研磨ヘッドに取り付けられて前記研磨ヘッドとの間に単一の密閉空間を形成するウエハ保持用の弾性膜であって、研磨ヘッド取付側に設けられたゴム製の内側ゴム層と、ウエハ保持側に設けられたゴム製の外側ゴム層と、前記内側ゴム層と前記外側ゴム層との間に設けられ前記内側ゴム層及び前記外側ゴム層よりも剛性の高い材料で形成された中間剛体層とを備えた円盤状の膜本体を有し、前記膜本体の全領域に前記中間剛体層が設けられ且つ前記膜本体の側面に前記中間剛体層が露出している
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内側ゴム層と外側ゴム層との間に、それらよりも剛性の高い中間剛体層が設けられていることにより、研磨ヘッドとの間に単一の密閉空間を形成する弾性膜において、半導体ウエハの研磨パッドへの圧接力を均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】実施形態に係る弾性膜の斜視図である。
図1B】実施形態に係る弾性膜の断面斜視図である。
図2】実施形態に係る弾性膜がCMP装置の研磨ヘッドに取り付けられた状態を示す縦断面図である。
図3】実施形態に係る弾性膜の膜本体の外周部を示す縦断面図である。
図4】実施形態に係る弾性膜の変形例の膜本体の外周部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1A及びBは、実施形態に係る弾性膜10を示す。実施形態に係る弾性膜10は、図2に示すように、CMP装置20の研磨ヘッド21に取り付けられて研磨パッド22で研磨する半導体ウエハWのウエハ保持用途に用いられるものである。
【0011】
実施形態に係る弾性膜10は、円盤状の膜本体11と、その周縁の研磨ヘッド取付側に縦壁状に一体に設けられた筒状部12と、その上端に連続して内側に延びるように一体に設けられた環状部13とを有する浅底の円形皿状に形成されている。膜本体11、筒状部12、及び環状部13の厚さは、例えば0.3mm以上6mm以下である。
【0012】
実施形態に係る弾性膜10は、筒状部12及び環状部13が、それらの全周において、研磨ヘッド21に係合するように取り付けられ、且つ膜本体11が、円形の研磨パッド22の偏心位置に対向して配置されるとともに、研磨ヘッド21との間に単一の密閉空間23を形成する。そして、被研磨物である半導体ウエハWは、一方の面が研磨ヘッド21に取り付けられた弾性膜10及び他方の面が研磨パッド22にそれぞれ当接するように配置され、密閉空間23が負圧にされることにより弾性膜10に吸着されて保持され、研磨ヘッド21及び研磨パッド22がそれぞれ軸回転することにより研磨パッド22上を摺動して研磨される。
【0013】
実施形態に係る弾性膜10の膜本体11は、研磨ヘッド取付側に設けられたゴム製の内側ゴム層111と、ウエハ保持側に設けられたゴム製の外側ゴム層112と、それらの内側ゴム層111と外側ゴム層112との間に設けられた中間剛体層113とを備える3層積層構造を有する。内側ゴム層111の研磨ヘッド取付側に露出した表面及び外側ゴム層112のウエハ保持側に露出した表面は、いずれも平坦面である。
【0014】
内側ゴム層111及び外側ゴム層112は、架橋ゴムで形成されている。内側ゴム層111及び外側ゴム層112を形成する架橋ゴムのゴム成分としては、例えば、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、EPDM、NBR、天然ゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。内側ゴム層111及び外側ゴム層112は、膜本体11の膜構造の安定性の観点から、少なくともそれらを形成する架橋ゴムのゴム成分が同一であることが好ましく、同一の架橋ゴムで形成されていることがより好ましい。
【0015】
内側ゴム層111及び外側ゴム層112を形成する架橋ゴムのタイプAデュロメータで測定される硬さは、好ましくは10以上90以下、より好ましくは30以上75以下である。この架橋ゴムの硬さは、JIS K6253-3:2012に基づいて測定されるものである。
【0016】
内側ゴム層111及び外側ゴム層112の厚さは、例えば0.1mm以上2mm以下である。内側ゴム層111及び外側ゴム層112の厚さは、異なっていてもよいが、膜本体11の膜構造の安定性の観点から、同一であることが好ましい。
【0017】
中間剛体層113は、内側ゴム層111及び外側ゴム層112よりも剛性の高い材料で形成された円盤で構成されている。中間剛体層113を形成する材料としては、樹脂及び金属が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)などの熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂等が挙げられる。金属としては、例えば、SUS304などのステンレス等が挙げられる。中間剛体層113は、樹脂層と金属層との複合材で構成されていてもよい。
【0018】
中間剛体層113が樹脂で形成されている場合、そのタイプDデュロメータで測定される硬さは、好ましくは10以上95以下、より好ましくは50以上95以下である。この架橋ゴムの硬さは、JIS K7215-1986に基づいて測定されるものである。
【0019】
中間剛体層113の厚さは、例えば0.02mm以上2mm以下である。中間剛体層113の厚さは、内側ゴム層111及び外側ゴム層112の厚さと、同一であっても、異なっていても、どちらでもよい。
【0020】
膜本体11の膜構造の安定性の観点からは、中間剛体層113の外径は、膜本体11の外径よりもやや小さく、したがって、中間剛体層113の外側において、内側ゴム層111と外側ゴム層112とが結合することにより、中間剛体層113が内側ゴム層111及び外側ゴム層112間に埋設されていることが好ましい。この場合、図3に示すように、中間剛体層113の外側の内側ゴム層111と外側ゴム層112との結合部分の幅a及び弾性膜10の膜本体11の厚さをtとしたとき、膜本体11の膜構造の安定性の観点からは、0.01t≦aであることが好ましい。一方、後述する半導体ウエハWの研磨パッド22への圧接力を均一化する観点からは、a≦10tであることが好ましく、a≦5tであることがより好ましく、a≦3tであることが更に好ましい。
【0021】
半導体ウエハWの研磨パッド22への圧接力を均一化する観点からは、膜本体11の全領域に中間剛体層113が設けられ、図4に示すように、膜本体11の側面に中間剛体層113が露出していていることが好ましい。
【0022】
なお、中間剛体層113と、内側ゴム層111及び/又は外側ゴム層112との間に接着剤層を設け、それらの間の密着性を化学的に高めてもよい。また、中間剛体層113の表面粗さを高めて、内側ゴム層111及び/又は外側ゴム層112との間の密着性を物理的に高めてもよい。
【0023】
筒状部12及び環状部13は、膜本体11の内側ゴム層111及び/又は外側ゴム層112を形成するのと同一の架橋ゴムで形成されていることが好ましい。
【0024】
実施形態に係る弾性膜10は、例えば、プレス金型に、内側ゴム層111を形成するための未架橋ゴムシート、円盤状の中間剛体層113、及び外側ゴム層112を形成するための未架橋ゴムシートを積層して仕込み、これをプレス成形することにより製造することができる。
【0025】
以上の構成の実施形態に係る弾性膜10によれば、内側ゴム層111と外側ゴム層112との間に、それらよりも剛性の高い中間剛体層113が設けられていることにより、研磨ヘッド21との間に単一の密閉空間23を形成するものの、半導体ウエハWの研磨パッド22への圧接力を均一化することができる。これは、弾性膜10と研磨ヘッド21との間の単一の密閉空間23における圧力分布に従った弾性膜10の変形が高剛性の中間剛体層113により軽減され、半導体ウエハWの研磨パッド22への圧接力が均一化されるのであると考えられる。
【0026】
なお、上記実施形態では、弾性膜10が浅底の円形皿状に形成された構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、弾性膜が筒状部及び環状部を有さない膜本体のみで構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、CMP装置の研磨ヘッドに取り付けられるウエハ保持用の弾性膜の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0028】
10 弾性膜
11 膜本体
111 内側ゴム層
112 外側ゴム層
113 中間剛体層
12 筒状部
13 環状部
20 CMP装置
21 研磨ヘッド
22 研磨パッド
23 密閉空間
W 半導体ウエハ
図1A
図1B
図2
図3
図4