(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】遮熱シート、及び遮熱成型体
(51)【国際特許分類】
B32B 15/14 20060101AFI20220420BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20220420BHJP
B32B 7/027 20190101ALN20220420BHJP
【FI】
B32B15/14
F16L59/02
B32B7/027
(21)【出願番号】P 2020060079
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】508179545
【氏名又は名称】東洋紡STC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 大
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 賢一
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-358827(JP,A)
【文献】実開昭64-033400(JP,U)
【文献】特開平08-306482(JP,A)
【文献】特開2020-029047(JP,A)
【文献】特開平08-182147(JP,A)
【文献】特開2015-161039(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0151510(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105916735(CN,A)
【文献】炭素繊維とは,短繊維協会,日本,日本化学繊維協会 炭素繊維協会委員会,2022年01月20日,https://www.carbonfiber.gr.jp/material/index.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00-18/04
F16L59/00-59/22
B32B15/14
B32B 7/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布と、
前記不織布の一方の主面側に設けられた金属層とを有し、
前記不織布は、炭化ポリアクリロニトリル繊維を含み、JIS L1096(2010)8.3.2 A法の規定に基づいて測定される目付が200~1100g/m
2であり、且つJIS L1096(2010)8.4 A法の規定に基づいて測定される厚さが3~18mmであり、
且つJIS L1096(2010)8.17.1 A法の規定に基づいて測定される引裂強さが5N以上、25N以下であり、
前記金属層の厚さは、0.05mm以下であることを特徴とする遮熱シート。
【請求項2】
不織布と、
前記不織布の一方の主面側に設けられた金属層とを有し、
JIS L1096(2010)8.21.1 A法の規定に基づいて測定される剛軟度が100mm以下であり、
前記不織布は、炭化ポリアクリロニトリル繊維を含み、JIS L1096(2010)8.3.2 A法の規定に基づいて測定される目付が200~1100g/m
2であり、且つJIS L1096(2010)8.4 A法の規定に基づいて測定される厚さが3~18mmであり、
前記金属層の厚さは、0.05mm以下であることを特徴とする遮熱シート。
【請求項3】
前記不織布は、380~780nmの可視光線の反射率が5.0%以下である請求項1または2に記載の遮熱シート。
【請求項4】
下記測定方法にて求められる熱伝導率K1が70%以下、熱放射率K2が30%以下である請求項1~
3のいずれかに記載の遮熱シート。
〈測定方法〉
厚さ2mm、20cm四方の第1の鉄板と、厚さ2mm、20cm四方のシリコンヒーターと、20cm四方の前記遮熱シートとを順に積層して第1の積層体を得る。次いで、厚さ2mm、20cm四方の第2の鉄板に20cm四方の黒色紙を貼り付けて、第2の積層体を得る。更に前記第1の積層体の前記遮熱シートの露出面から垂直方向に200mm離れた位置に、前記黒色紙の露出面と前記遮熱シートの露出面が対向するようにして前記第2の積層体を配置する。次いで、前記シリコンヒーターに連結した温度調節機に所定温度Ts(℃)を入力し、前記シリコンヒーターに通電し発熱させる。通電開始60分後の前記遮熱シートの露出面の中央部分の温度Ta(℃)と、前記黒色紙の露出面の中央部分の温度Tb(℃)の温度とをサーモグラフを用いて計測する。Ts(℃)、Ta(℃)、Tb(℃)を下記式に当てはめて、熱伝導率K1(%)と熱放射率K2(%)とを求める。
熱伝導率K1=Ta/Ts×100
熱放射率K2=Tb/Ts×100
【請求項5】
請求項1~
4のいずれかに記載の遮熱シートを有する遮熱成型体。
【請求項6】
取り外し式遮熱成型体である請求項
5に記載の遮熱成型体。
【請求項7】
縫い目を有するものである請求項
5または
6に記載の遮熱成型体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱シート、及び遮熱成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに様々な遮熱シートが知られている。例えば特許文献1には、アルミニウム基材と、無孔質陽極酸化皮膜と、アクリル樹脂からなる保護皮膜とが積層された遮熱シートが開示されており、これを建築物の屋根やコンテナ、トラック荷台などの屋外に設置できることが記載されている。また特許文献2には、織布と、エチレン共重合体からなる接着層と、金属箔と、アイオノマー樹脂層とが積層された遮熱シートが開示されており、当該遮熱シートは畜舎用屋根材、農業用ハウス材、トラックシートとして好適に用いられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-064296号公報
【文献】特開2001-191453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、発熱体の周辺の空気の温度上昇等を防ぐために、発熱体を遮熱シートで覆う場合があった。発熱体には種々の形状があるため、遮熱シートを発熱体の形状に沿った形に加工したいという要求があったが、これまでの遮熱シートは加工性に優れているとは言えなかった。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加工性に優れた遮熱シート、及び当該遮熱シートより得られた遮熱成型体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することのできた本発明に係る遮熱シートは、下記[1]の通りである。 [1]不織布と、
上記不織布の一方の主面側に設けられた金属層とを有し、
上記不織布は、炭化ポリアクリロニトリル繊維を含み、JIS L1096(2010)8.3.2 A法の規定に基づいて測定される目付が200~1100g/m2であり、且つJIS L1096(2010)8.4 A法の規定に基づいて測定される厚さが3~18mmであり、
上記金属層の厚さは、0.05mm以下であることを特徴とする遮熱シート。
【0006】
上記構成により、加工性に優れた遮熱シートを提供することができる。本発明には、好ましくは下記[2]~[8]の遮熱シートと遮熱成型体も含まれる。
[2]上記不織布は、JIS L1096(2010)8.17.1 A法の規定に基づいて測定される引裂強さが5N以上、25N以下である[1]に記載の遮熱シート。
[3]上記不織布は、380~780nmの可視光線の反射率が5.0%以下である[1]または[2]に記載の遮熱シート。
[4]JIS L1096(2010)8.21.1 A法の規定に基づいて測定される剛軟度が100mm以下である[1]~[3]のいずれかに記載の遮熱シート。
[5]下記測定方法にて求められる熱伝導率K1が70%以下、熱放射率K2が30%以下である[1]~[4]のいずれかに記載の遮熱シート。
〈測定方法〉
厚さ2mm、20cm四方の第1の鉄板と、厚さ2mm、20cm四方のシリコンヒーターと、20cm四方の上記遮熱シートとを順に積層して第1の積層体を得る。次いで、厚さ2mm、20cm四方の第2の鉄板に20cm四方の黒色紙を貼り付けて、上記第2の積層体を得る。更に上記第1の積層体の上記遮熱シートの露出面から垂直方向に200mm離れた位置に、上記黒色紙の露出面と上記遮熱シートの露出面が対向するようにして第2の積層体を配置する。次いで、上記シリコンヒーターに連結した温度調節機に所定温度Ts(℃)を入力し、上記シリコンヒーターに通電し発熱させる。通電開始60分後の上記遮熱シートの露出面の中央部分の温度Ta(℃)と、上記黒色紙の露出面の中央部分の温度Tb(℃)の温度とをサーモグラフを用いて計測する。Ts(℃)、Ta(℃)、Tb(℃)を下記式に当てはめて、熱伝導率K1(%)と熱放射率K2(%)とを求める。
熱伝導率K1=Ta/Ts×100
熱放射率K2=Tb/Ts×100
[6][1]~[5]のいずれかに記載の遮熱シートを有する遮熱成型体。
[7]取り外し式遮熱成型体である[6]に記載の遮熱成型体。
[8]縫い目を有するものである[6]または[7]に記載の遮熱成型体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば上記構成により、加工性に優れた遮熱シート、及び当該遮熱シートより得られた遮熱成型体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る遮熱シートの断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る遮熱シートを有する遮熱成型体の斜視図である。
【
図5】
図5は、熱伝導率の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の遮熱シートは、不織布と、上記不織布の一方の主面側に設けられた金属層とを有し、上記不織布は、炭化ポリアクリロニトリル繊維を含み、JIS L1096(2010)8.3.2 A法の規定に基づいて測定される目付が200~1100g/m2であり、且つJIS L1096(2010)8.4 A法の規定に基づいて測定される厚さが3~18mmであり、上記金属層の厚さは、0.05mm以下である。これにより、加工性に優れた遮熱シートを提供することができる。以下、各構成について詳述する。
【0010】
不織布は、繊維間に空気層を有し断熱性に優れる。不織布は、ニードルパンチ不織布であることが好ましく、短繊維ニードルパンチ不織布であることがより好ましい。これらの不織布は、剛軟性(ドレープ性)、即ち被覆材としての柔軟性を有するため取り扱い性に優れる。
【0011】
不織布を製造するに当たっては、繊維同士を各種接着剤で固めるケミカルボンド加工;使用する繊維の一定割合または複合紡糸による芯鞘繊維の鞘側に低融点ポリマーを配し、カードウエッブ作製後に加熱することで溶融成分を溶かし繊維同士を接着して不織布を作製するサーマルボンド加工;エアースルー加工;繊維同士を物理的に絡ませて不織布とするウォーターパンチ加工;ニードルパンチ加工;等を行ってもよい。これらのうちニードルパンチ加工を行うことが好ましい。ニードルパンチ加工は、返しのついた針で繊維ウエッブを連続して突き刺し繊維同士を絡ませる加工である。ニードルパンチ加工によれば、突き刺す針の間隔、針の種類、速度などで繊維同士の絡み合い状態を制御したり不織布中の空間を適度に維持したりすることができる。更にこれにより、空気層を含みかつ適切な厚さの不織布を形成することができ、得られた不織布は繊維同士の結合が物理的結合に限定されているため相互に動きやすく柔らかい風合いとなる。
【0012】
不織布は、JIS L1096(2010)8.3.2 A法の規定に基づいて測定される目付が200~1100g/m2である。目付が200g/m2以上であることにより断熱層としての効果を発揮し易くすることができる。より好ましくは300g/m2以上、更に好ましくは400g/m2以上である。一方、目付が1100g/m2以下であることにより切断性、可縫性、ドレープ性を向上させることができる。切断性とは例えばハサミや刃物による切断性であり、可縫性とは例えばミシンや手縫いによる縫い糸の通し易さや糸目の綺麗さのことであり、ドレープ性とは例えば発熱体に合わせた形状に縫製した場合に容易に変形しフィットし易い柔軟性のことである。目付は、より好ましくは1000g/m2以下、更に好ましくは950g/m2以下である。
【0013】
不織布は、JIS L1096(2010)8.4 A法の規定に基づいて測定される厚さが3~18mmである。厚さが3mm以上であることにより断熱層としての効果を発揮し易くすることができる。より好ましくは4mm以上である。一方、厚さが18mm以下であることにより切断性、可縫性、ドレープ性を向上させることができる。より好ましくは17mm以下である。
【0014】
不織布は、JIS L1096(2010)8.17.1 A法の規定に基づいて測定される引裂強さが5N以上、25N以下であることが好ましい。引裂強さが5N以上であることにより、不織布の加工に伴う損傷を低減することができる。より好ましくは7N以上、更に好ましくは10N以上、更により好ましくは11N以上、特に好ましくは12N以上である。一方、引裂強さが25N以下であることにより、切断性を向上することができる。そのため、より好ましくは23N以下、更に好ましくは21N以下である。不織布のタテ、ヨコのいずれか一方の方向における引裂強さが上記範囲を満足することが好ましく、両方向における引裂強さが上記範囲を満足することがより好ましい。
【0015】
不織布は、炭化ポリアクリロニトリル繊維を含む。炭化ポリアクリロニトリル繊維は、250℃を超える加熱環境下でも熱による収縮が少なく、溶融による繊維構造変化も生じ難い。遮熱シートが炭化ポリアクリロニトリル繊維を含むことにより、加熱環境下における変形を防止して形態保持性を向上させることができる。また炭化ポリアクリロニトリル繊維は、機械的特性にも優れ、不織布加工時のカード、ニードルパンチ加工のよる損傷を軽減することができる。当該加工に当たっては、加工用油剤を塗布したり、滑剤を添加してもよい。
【0016】
不織布は、不織布100質量%中、炭化ポリアクリロニトリル繊維を55質量%以上の含量で含むことが好ましく、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更により好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。一方、上限は100質量%以下であってもよく、98質量%以下であってもよい。
【0017】
炭化ポリアクリロニトリル繊維の熱伝導率は、好ましくは0.26W/mK以下、より好ましくは0.24W/mK以下である。これにより遮熱性を向上することができる。熱伝導率の下限は0.18W/mK以上であってもよく、0.20W/mK以上であってもよい。
【0018】
炭化ポリアクリロニトリル繊維は、JIS L 1091のLOI法の規定に基づいて測定される限界酸素指数が(LOI値)が35以上であることが好ましい。これにより遮熱シートの耐熱性を向上することができる。より好ましくは40以上である。上限は特に限定されないが、90以下であってもよく、80以下であってもよく、70以下であってもよい。
【0019】
炭化ポリアクリロニトリル繊維は、比重が1.1g/cm3以上、1.6g/cm3以下であることが好ましく、1.2g/cm3以上、1.4g/cm3以下であることがより好ましい。炭化ポリアクリロニトリル繊維は、繊度が1.8デシテックス以上、2.4デシテックス以下であることが好ましく、繊度が2.0デシテックス以上、2.3デシテックス以下であることがより好ましい。これにより加工性が向上する。
【0020】
不織布は、380~780nmの可視光線の反射率が5.0%以下であることが好ましい。当該反射率は、不織布に含まれる炭化ポリアクリロニトリル繊維の炭化度が高い程、低くなる。即ち、不織布の反射率が5.0%以下であることにより不織布の耐熱性を向上させることができる。不織布の反射率は、より好ましくは4.0%以下、更に好ましくは3.5%以下、更により好ましくは3.0%以下である。一方、不織布の反射率の下限は特に限定されないが、0.1%以上であってもよく、0.5%以上であってもよく、1.0%以上であってもよい。
【0021】
金属層は、不織布の一方の主面側に設けられているものであり、一方の主面に直接固定されていてもよく、後記する接着層等の他の層を介して一方の主面に固定されていてもよい。また金属層は、不織布の一方の主面側に加えて、他方の主面側にも形成されていてもよい。
【0022】
金属層として、金、銀、銅、白金、アルミニウム等の金属層が挙げられる。これらは反射特性が優れているため好ましい。これらのうち特にアルミニウム層は、軽量で加工し易く、安価であるためより好ましい。アルミニウム層の素材としては、純アルミニウムの1000系、アルムニウム銅合金系、アルミニウム銅マグネシウム系の2000系合金、アルミニウムマンガン合金の3000系合金、アルミニウムシリコン合金の4000系合金、アルミニウムマンガン系の5000系合金、アルミニウムマンガンシリコン合金の6000系合金、アルミニウム亜鉛マグネシウム銅系、アルミニウム亜鉛マンガン合金の7000系等が挙げられる。これらのうち特に純アルミニウムの1000系は耐久性に優れるため好ましい。金属層は、これらの金属を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0023】
金属層の厚さは0.05mm以下である。厚さが0.05mm以下であることにより、シートとしての柔軟性を向上し、ハサミ等による切断性や縫製加工性を向上させることができる。そのため、好ましくは0.02mm以下、より好ましくは0.01mm以下である。一方、金属層の厚さが0.001mm以上であることにより、放射熱を遮断して遮熱し易くすることができる。そのため金属層の厚さは0.001mm以上であることが好ましく、0.002mm以上であることがより好ましい。
【0024】
遮熱シートは、不織布の一方の主面と金属層との間に、不織布と金属層とを接着するための接着層を有していることが好ましい。これにより金属層の剥離を防止し易くすることができる。
【0025】
接着層は接着剤により形成することができる。接着剤としては、ユリア樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤や、溶剤形接着剤、水性形接着剤、反応型接着剤、ホットメルト形接着剤、変性シリコン系接着剤、シリル化ウレタン系接着剤、等が挙げられる。溶剤形接着剤に含まれる樹脂としては、酢酸ビニル樹脂、ゴム系樹脂が挙げられる。水性形接着剤に含まれる樹脂としては、酢酸ビニル樹脂 、酢酸ビニル共重合樹脂、EVA樹脂、アクリル樹脂、イソシアネート系水性樹脂、合成ゴム系ラテックスが挙げられる。反応型接着剤に含まれる樹脂としては、エポキシ樹脂、シアノアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂 、アクリル樹脂等が挙げられる。変性シリコン系接着剤に含まれる樹脂としては、シリル化ウレタン系接着剤が挙げられる。ホットメルト形接着剤としては、各種熱可塑性樹脂が挙げられ、それら樹脂の変性物や共重合物を用いることができる。これら樹脂としては、耐熱性、耐薬品性、耐油性が良好な樹脂が好ましく、具体的にはメラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、その変性物や共重合物等が好ましい。接着層は、これらの樹脂を1種のみ含んでいてもよく2種以上含んでいてもよい。接着層は、1層に限らず2層以上設けられていてもよく、各層の素材は同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0026】
本発明では炭化ポリアクリロニトリル繊維と金属層の接着力をより高めるために、接着層には、上記の樹脂に加えて天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ブタジエン・イソプレン共重合ゴム、ブタジエン・スチレン・イソプレン共重合ゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム等の重合体を添加してもよい。このうちスチレン・ブタジエン系共重合体、α,β-不飽和ニトリル・共役ジエン系共重合体、及びアクリル酸エステル系重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。当該重合体は、少なくとも1種の官能基で変性されたものであってもよい。官能基としては、カルボン酸基、N-メチロール基、グリシジル基、水酸基、スルホン酸基等を挙げることができる。このうちカルボン酸基が好ましい。
【0027】
水系の接着剤は、反応性乳化剤を用いて上記重合体を重合させて共重合エマルジョンとして用いればよい。反応乳化剤としては、スルホン酸基及び/又はサルフェート基を含有する反応性乳化剤;カルボキシル基及び/又はカルボキシレート基を含有する反応性乳化剤;リン酸基及び/又はその塩を含有する反応性乳化剤;リン酸エステル基を含有する反応性乳化剤;アリルスルホン酸、2-メチルアリルスルホン酸等のアリル基含有スルホン酸類又はその塩;イソプレンスルホン酸類又はその塩;(メタ)アクリル酸2-スルホエチル、(メタ)アクリル酸2-スルホプロピル等の(メタ)アクリロイル基含有スルホン酸類又はその塩;(メタ)アクリルアミド-t-ブチルスルホン酸等の(メタ)アクリルアミド基含有スルホン酸類又はその塩などが挙げられる。
【0028】
接着剤は、JIS-D1201の燃焼性試験において、燃え尽きることなく自己消火するものが好ましい。これにより高温環境下でも火災発生の危険を避けることができ、接着力を維持し易くすることができる。
【0029】
接着剤に難燃性を付与する方法としては、樹脂と難燃成分を共重合させたり、接着剤に難燃剤を添加する等の方法が挙げられる。本発明ではどちらの方法でも採用できるが、難燃剤を添加する方法が、炭化ポリアクリロニトリル繊維と金属層の接着力をコントロールしやすいので好ましい。樹脂と難燃成分を共重合させる方法としては、ハロゲン系物質を含有する塩化ビニル単量体、塩化ビニリデン単量体、含リン単量体等を樹脂に共重合させる方法が挙げられる。難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウムのような非ハロゲン系化合物、ハロゲン系化合物が好ましく、難燃性能やコストの観点からハロゲン系化合物がより好ましい。
【0030】
ハロゲン系難燃剤は、臭素含有率が高い方が好ましく、具体的には難燃剤の臭素含有率は60~90%であることが好ましい。難燃剤の臭素含有率とは、JIS K 7229に記載の酸素フラスコ燃焼法に準拠して前処理した試料を、イオンクロマトグラフィにより測定した値である。
【0031】
難燃剤としては、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニルエーテル等の臭素化高分子化合物が挙げられる。具体的には、1,4-ジペンタブロモフェニルエーテル-2,3,5,6-テトラブロモベンゼン、1,5-ジペンタブロモフェニルエーテル-2,3,4,6-テトラブロモベンゼン(C6Br5-O-C4Br4-O-C6Br5)、1,4-ジテトラブロモフェニルエーテル-2,3,5,6-テトラブロモベンゼン(C6Br4-O-C4Br4-O-C6Br4)、2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン等の臭素化化合物を用いることができる。
【0032】
接着剤に含まれる難燃剤の含有量は、接着剤に含まれる樹脂100質量部に対して5~200質量部であることが好ましい。本発明では接着剤に、上記難燃剤に加えて他の種類の難燃剤を更に添加することが、難燃性を更に向上できてより好ましい。併用できる難燃剤として、具体的には、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸グアニジン、リン酸エステル、ホウ酸亜鉛等の酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化亜鉛等の金属水酸化物等、従来公知の難燃剤を用いることができる。
【0033】
接着層の厚さは、好ましくは5μm以上、20μm以下、より好ましくは10μm以上、15μm以下である。
【0034】
不織布の一方の主面に金属層を設ける方法としては、不織布の表面に直接、金属を蒸着させる方法、接着層を介して不織布に接着させる方法が挙げられる。接着層を介して接着する方法としては、不織布と、金属箔を有するか又は金属蒸着させた樹脂フイルム等との間に接着性のある薬剤を吹き付けたり塗布する等して積層する方法、縫製糸で縫い付けて積層する方法等が挙げられる。接着性のある薬剤は、熱溶融型、溶剤発散型、加熱硬化型、紫外線硬化型等であってもよい。不織布と金属層をシート化する際に接着成分を用いる場合には、接着成分の量を必要最低限にすることが好ましい。これにより、シート剛性を適度に低減して取り扱い性を向上し、且つ発熱体の接触時においても接着成分の揮発や蒸発等を低減することができる。
【0035】
遮熱シートは、厚さが3~20mmであることが好ましく、より好ましくは4~17mmである。また遮熱シートは、厚さが3mm以上、10mm未満の場合に密度が0.05~0.1g/cm3であることが好ましく、遮熱シートの厚さが10mm以上、20mm以下の場合に密度が0.03~0.07g/cm3であることが好ましい。これらの寸法制御により、例えば遮熱シートを縫製しカバーを形成して発熱体に取り付けた場合でも、圧迫等の変形が生じ難く空気含有層を維持し易くすることができ、シートとしてのドレープ性を維持し易くすることもでき、更に軽量化によって取り扱い性を向上することもできる。
【0036】
遮熱シートは、JIS L1096(2010)8.21.1 A法の規定に基づいて測定される剛軟度が100mm以下であることが好ましい。これによりドレープ性が向上して、屈曲部や湾曲部を有する発熱体を被覆し易くすることができる。剛軟度は、より好ましくは75mm以下、更に好ましくは50mm以下である。一方、剛軟度の下限は特に限定されないが、5mm以上であってもよく、10mm以上であってもよい。
【0037】
遮熱シートは、JIS L1086(2013)7.10の規定に基づいて測定される金属層の剥離強さが130cN以上であることが好ましい。130cN以上であることにより、加工し易くすることができる。より好ましくは135cN以上、更に好ましくは140cN以上、更により好ましくは150cN以上、特に好ましくは165cN以上である。一方、上限は特に限定されず、200cN以下であってもよく、190cN以下であってもよい。遮熱シートのタテ、ヨコのいずれか一方の方向における剥離強さが上記範囲を満足することが好ましく、両方向における剥離強さが上記範囲を満足することがより好ましい。
【0038】
遮熱シートは、測定方法にて求められる熱伝導率K1が70%以下、熱放射率K2が30%以下であることが好ましい。
〈測定方法〉
厚さ2mm、20cm四方の第1の鉄板と、厚さ2mm、20cm四方のシリコンヒーターと、20cm四方の遮熱シートとを順に積層して第1の積層体を得る。次いで、厚さ2mm、20cm四方の第2の鉄板に20cm四方の黒色紙を貼り付けて、第2の積層体を得る。更に第1の積層体の遮熱シートの露出面から垂直方向に200mm離れた位置に、黒色紙の露出面と遮熱シートの露出面が対向するようにして第2の積層体を配置する。次いで、シリコンヒーターに連結した温度調節機に所定温度Ts(℃)を入力し、シリコンヒーターに通電し発熱させる。通電開始60分後の遮熱シートの露出面の中央部分の温度Ta(℃)と、黒色紙の露出面の中央部分の温度Tb(℃)の温度とをサーモグラフを用いて計測する。Ts(℃)、Ta(℃)、Tb(℃)を下記式に当てはめて、熱伝導率K1(%)と熱放射率K2(%)とを求める。
熱伝導率K1=Ta/Ts×100
熱放射率K2=Tb/Ts×100
【0039】
遮熱シートの熱伝導率K1が70%以下であることにより、遮熱性を向上させることができる。より好ましくは65%以下である。一方、熱伝導率K1の下限は特に限定されないが、10%以上であってもよく、20%以上であってもよく、30%以上であってもよい。遮熱シートは熱伝導率K1の上記範囲を、所定温度Ts(℃)が200℃のときに満たすことが好ましく、250℃のときに満たすことがより好ましい。
【0040】
遮熱シートの熱放射率K2が30%以下であることにより、遮熱性を向上させることができる。より好ましくは28%以下、更に好ましくは27%以下、更により好ましくは26%以下、特に好ましくは25%以下である。一方、熱放射率K2の下限は特に限定されないが、5%以上であってもよく、10%以上であってもよい。遮熱シートは熱放射率K2の上記範囲を、所定温度Ts(℃)が200℃のときに満たすことが好ましく、250℃のときに満たすことがより好ましい。
【0041】
本発明の遮熱シートは、炭化ポリアクリロニトリル繊維を含む不織布と金属層とを備えることにより、難燃性に優れ、また空気層等の断熱性を発揮させて、発熱体からの放射熱を低減することを防ぐことができるため、発熱体の周辺環境の温度上昇を抑制することができる。更に当該遮熱シートは、不織布と金属層の厚さ等が所定範囲に制御されていることにより、可縫性、切断性、剛軟度等に優れているため、複雑な形状の発熱体に沿うように加工することができる。
【0042】
以上、本発明の遮熱シートについて説明したが、本発明には、上記遮熱シートを有する遮熱成型体も含まれる。
図1は、本発明の実施の形態に係る遮熱シートの断面図であり、
図2は本発明の実施の形態に係る遮熱シートを有する遮熱成型体の斜視図であり、
図3は、発熱体の斜視図であり、
図4は、
図2の遮熱成型体を
図3の発熱体に被覆したときの斜視図である。以下では、
図1~4を参照しながら遮熱成型体について説明する。
【0043】
図2の遮熱成型体20は、
図1に示す不織布1と接着層3と金属層2とが順に積層された遮熱シート10を複数用いて形成されている。具体的には複数の遮熱シート10の不織布1側を内側に向けて配置し、それぞれの端部が縫い目4部分で互いに縫い合わされている。このように端部をそれぞれ縫い合わせることにより複雑な形状の遮熱成型体20を形成することが可能である。なお遮熱成型体20は、必ずしも複数の遮熱シート10を用いて形成されている必要は無く、1つの遮熱シート10を用いて形成されていてもよい。
【0044】
遮熱成型体20は、縫い目4を有するものであることが好ましい。即ち、縫製により遮熱成型体20を形成することにより、例えば深絞り等の加工を行わずに立体形状を形成することができ、加工に伴う損傷を回避し易くすることができるため、このような遮熱成型体20は強度に優れたものとなる。
【0045】
遮熱成型体20は、取り外し式遮熱成型体であることが好ましい。具体的には、例えば
図3に示すような発熱体30に対して、
図2、4に示すように遮熱成型体20を開放部5から衣服を着用させるように被覆して、発熱体30が発熱した後に、遮熱成型体20を取り外しできるように構成されていることが好ましい。遮熱成型体20を構成する遮熱シート10は上述の通り加熱に対する形態保持性に優れており発熱後の変形が生じ難いため、遮熱成型体20は取り外しが容易なものである。このような取り外し式の遮熱成型体20は、再利用したり、定期的に取り換えたりすることができる。
【0046】
遮熱成型体20の形状は特に限定されないが、円柱状、円錐状、箱状、多角柱状、多角錐状、これらの組み合わせ形状、これらの少なくとも一部に開放部が設けられた形状、衣服状等が挙げられる。
【0047】
本発明に係る遮熱シート、遮熱成型体は、ボイラー配管、排熱配管、コークス製造炉設備等の発熱体に対して好適に用いることができる。これらの発熱体は、室内の温度を上昇し易いものであるため、本発明に係る遮熱シート、遮熱成型体を用いることにより、室内の温度上昇を低減することができる。また本発明に係る遮熱シート、遮熱成型体は、工業材料、建築資材、車両用途、家具等の分野においても適用が可能である。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0049】
<不織布の目付け>
JIS L1096(2010)8.3.2 A法に基づいて不織布の目付けを測定した。
【0050】
<不織布の厚さ>
JIS L1096(2010)8.4.A法に基づいて不織布の厚さを測定した。
【0051】
<不織布の引裂強さ>
JIS L1096(2010)8.17.1 A法のシングルタング法の規定に基づいて不織布の引裂強さを測定した。
【0052】
<不織布の可視光線の反射率>
下記条件に基づいて、不織布の380~780nmの可視光線の反射率を測定した。
測定器:島津UV-3600PC
積分球付属装置ISR-3100
積分球内径60mmΦ
測定波長:380-780nm
標準白板:硫酸バリウム
【0053】
<金属層の厚さ>
金属層の厚さは、膜厚10μm以上のものについては尾崎製作所製のPeacockダイヤルシックネスゲージを用いて測定した。膜厚10μm未満のものについては、厚さ方向の断面写真を、キーエンス社製のデジタルマイクロスコープ VHX-5000を用いて撮影し、厚さを求めた。
【0054】
<剥離強さ>
JIS L1086(2013)7.10の規定に基づいて遮熱シートの金属層の剥離強さを測定した。
【0055】
<剛軟度>
JIS L1096(2010) 8.21.1 A法(45°カンチレバー法)に基づいて遮熱シートの剛軟度の測定を行った。測定により得られた数値をドレープ性(曲げ柔らかさ)の評価として下記基準で判定した。
○:50mm以下(極めて柔らかい)
△:50mm超100mm以下(柔らかい)
×:100mm超(硬い)
【0056】
<切断性>
裁ちばさみ(KAWAGUCHI 庄三郎 標準型 240mm)を使用し、幅20cm、長さ50cmの遮熱シートを幅方向の中心位置で、長さ方向に両断した。被験者は30~50代の男性3名、女性3名の計6名で行い、平均値を算出し下記基準で判定した。
○:15秒以下の時間で切断できる
△:15秒超、60秒以下の時間で切断できる
×:60秒超の時間で切断できる、又は切断できない
【0057】
<可縫性>
Juki社製の本縫いミシン(SPUR30(TL-30))にて縫い糸、下糸ともに帝人株式会社製のエースクラウンコーネックス30番を用いて、ミシン目:3mm、縫い速度:750針/分、網目:本縫いの条件で遮熱シートに対して縫製を行った。縫い目が乱れていないか、縫い糸のほつれ等が発生しているか否か等の下記評価を行った。
○:縫製が可能であり、縫い目に異常なし
△:縫製が可能であるが、縫い目に乱れがあり
×:ミシン針が損傷するか、または糸切れが発生
【0058】
<保持性>
長さ30cm、幅15cmの遮熱シート長さの半分の位置で2つ折りにし、15cm×15cmの正方形にした。この上に寸法が20cm×20cmであって、重さが450gの鉄板を乗せて、200℃の循環式乾燥機にて30分間熱処理し、その後、自然冷却した。十分に冷却した後、鉄板を取り除いて、遮熱シートの戻りと折り目を観察して、下記基準で熱負荷後の形態保持性の判定を行った。
〇:サンプルは平たく戻ることができ、折り目が目立たない
△:サンプルは平たく戻ることができるが、折り目が残る
×:サンプルは折れたままであり、平たく戻ることができない
【0059】
<遮熱性>
室温20℃、湿度60%の無風状態の環境化にて、
図5に示すように厚さ2mm、20cm四方の第1の鉄板41と、厚さ2mm、20cm四方のシリコンヒーター42と、温度調節機45の検温端子47と、20cm四方の遮熱シート10とを順に積層して第1の積層体を得た。この際、金属層が露出するように遮熱シート10を積層した。次いで、厚さ2mm、20cm四方の第2の鉄板43に20cm四方の黒色紙44を貼り付けて、第2の積層体を得た。更に第1の積層体の遮熱シート10の露出面から垂直方向に200mm離れた位置に、黒色紙44の露出面と遮熱シート10の露出面が対向するようにして第2の積層体を配置した。次いで、シリコンヒーター42に連結した温度調節機45に所定温度Ts(℃)を入力し、電力ケーブル46を介してシリコンヒーター42に通電し発熱させた。通電開始60分後の遮熱シート10の露出面の中央部分の温度Ta(℃)と、黒色紙44の露出面の中央部分の温度Tb(℃)の温度とをサーモグラフ(図示せず)を用いて計測した。得られたTs(℃)、Ta(℃)、Tb(℃)を下記式に当てはめて、熱伝導率K1(%)と熱放射率K2(%)とを求めた。なお所定温度Ts(℃)=200℃、250℃の両方について試験を行った。
熱伝導率K1=Ta/Ts×100
熱放射率K2=Tb/Ts×100
【0060】
遮熱性の評価試験にいて用いた機材は下記の通りである。
・シリコンヒーター:アズワン社製のシリコンラバーヒーター
200m/m×200m/m S、100V、240W
・消費電力計:株式会社トップランド社製のELEMONI M075
・温度調節機:株式会社八光電機製のFINETHERMO DG2N-100
・サーモグラフ:FLIR社製のFLIR ONEPRO
【0061】
実施例1
ZOLTEK社製の炭化ポリアクリロニトリル繊維ZOLTEK OX(2.2デシテックス、繊維長51mm、LOI値40以上、強度2.6g/d、比重1.37g/cm3、熱伝導率0.23W/mK)を用い、ニードルパンチ加工を行って、目付450g/m2、厚さ5mmのニードルパンチ不織布を得た。次いで市販のアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(ポリエチレンフィルム厚さ12μm、アルミ蒸着部分の厚さ3μm)を接着剤として、株式会社イーテック製 難燃性変性アクリル系接着剤(製品名CL7609)をアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートに均一に塗り、前述のニードルパンチ不織布に張り付け遮熱シートを作製した。難燃性変性アクリル系接着剤(製品名CL7609)は、変性アクリル樹脂10~20質量%、スチレンブタジエンメタクリル酸アルキル共重合体1~10質量%、臭素系難燃剤10~20質量%、三酸化二アンチモン4.7質量%、アンモニア0.2~0.5質量%、鉱物0.1~0.3質量%、酸化亜鉛0.1~0.3質量%含む水系エマルジョンである。
【0062】
実施例2
ニードルパンチ不織布を表1に示す目付、厚さとしたこと以外は実施例1と同様にして、遮熱シートを作製した。
【0063】
実施例3
ニードルパンチ不織布を表1に示す目付、厚さとしたこと以外は実施例1と同様にして、遮熱シートを作製した。
【0064】
実施例4
アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを市販の三菱アルミニウム株式会社製のアルミ箔(厚さ12μm)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、遮熱シートを作製した。
【0065】
比較例1
ニードルパンチ不織布を表1に示す目付、厚さとしたこと以外は実施例1と同様にして、遮熱シートを作製した。
【0066】
比較例2
ニードルパンチ不織布を表1に示す目付、厚さとしたこと以外は実施例1と同様にして、遮熱シートを作製した。
【0067】
比較例3
実施例1で使用したアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートを遮熱シートとして用いた。
【0068】
比較例4
アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、遮熱シートを作製した。
【0069】
比較例5
アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムをアルミ(A1050 厚さ0.298mm)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、遮熱シートを作製した。
【0070】
比較例6
炭化ポリアクリルニトリル繊維を、東洋紡株式会社製のポリフェニレンサルファイド繊維PROCON(2.2デシテックス、繊維長51mm、LOI値34、強度3.9g/d、比重1.34g/cm3、熱伝導率0.29W/mK)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、遮熱シートを作製した。
【0071】
比較例7
炭化ポリアクリルニトリル繊維を、東洋紡株式会社製のポリエチレンテレフタレート繊維TOYOBO ESTER(2.2デシテックス、繊維長51mm、LOI値22、強度4.8g/d、比重1.38g/cm3、熱伝導率0.21W/mK)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして遮熱シートを作製した。
【0072】
実施例1~4、比較例1~7の評価結果を表1に示す。実施例1~4のいずれにおいても良好な遮熱性を示し、更に剛軟性、切断性、可縫性、及び保持性も良好であった。
【0073】
【0074】
ミニュチュアローラーカードを用いて、実施例1で使用した炭化ポリアクリロニトリル繊維に対してカーディングを行った。次いで、捲き取りローラー上で目付500g以上のカードウエッブを作製し、採取した後、層を剥離して目付450gに調整し、カードウエッブ不織布を作製した。
【0075】
更にカードウエッブ不織布を用いて、実施例1と同様に遮熱シートを製造した。この不織布の目付け、厚さと、遮熱シートの剥離強さを測定し、上記実施例1の遮熱シートと比較した。その結果を表2に示す。
【0076】
【符号の説明】
【0077】
1 不織布
2 金属層
3 接着層
4 縫い目
5 開放部
10 遮熱シート
20 遮熱成型体
30 発熱体
41 第1の鉄板
42 シリコンヒーター
43 第2の鉄板
44 黒色紙
45 温度調節機
46 電力ケーブル
47 検温端子