(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】ペリクル除去方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G03F 1/62 20120101AFI20220420BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
G03F1/62
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2020081103
(22)【出願日】2020-05-01
(62)【分割の表示】P 2018228032の分割
【原出願日】2016-08-31
【審査請求日】2020-05-27
(32)【優先日】2016-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510036425
【氏名又は名称】レイヴ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ジェイ グレノン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ ボイエット
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04255216(US,A)
【文献】特開2007-307286(JP,A)
【文献】特開平07-120931(JP,A)
【文献】特開平04-301638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 1/00-1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリクルフレームをフォトマスクに固定している接着剤を、当該フォトマスクから取り除く方法であって、
前記ペリクルフレームを、冷却システムの近傍に配置するステップと、
前記フォトマスクの一部分を冷却剤から隔離するステップと、
前記冷却剤を前記ペリクルフレームにスプレーするステップと、
前記ペリクルフレームを前記フォトマスクから取り除くステップと、
を含み、
前記スプレーするステップは、前記ペリクルフレームを前記フォトマスクに固定している前記接着剤を、当該接着剤の脆化温度にまで冷却
し、
前記冷却剤は、極低温の冷却剤を含み、
当該方法は、更に、
前記ペリクルフレームにマニホルドを熱的に結合するステップと、
前記極低温の流体を前記マニホルドに流すステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記接着剤の接着力は、ペリクルに加えられる歪がない状態で前記接着剤が取り除かれ得るレベルまで、低下される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
歪力が、前記接着剤と前記フォトマスクとの間にもたらされる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記歪力は、前記ペリクルフレームの運動によって適用される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記スプレーするステップは、前記接着剤上に冷却剤をスプレーするステップを含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記フォトマスクの冷却を制限するべく前記フォトマスクを断熱するステップを更に含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
フォトマスクの一部分を冷却剤から隔離するステップと、
ペリクルフレームを選択的に冷却して当該ペリクルフレームとフォトマスクとの間の接着剤の接着力を低減するために、前記冷却剤を前記ペリクルフレームにスプレーするステップと、
前記接着力が低減された後、前記フォトマスクから前記ペリクルフレームを取り除くステップと、
を含
む方法であって、
前記冷却剤は、極低温の冷却剤を含み、
当該方法は、更に、
前記ペリクルフレームにマニホルドを熱的に結合するステップと、
前記極低温の流体を前記マニホルドに流すステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記接着剤の接着力は、ペリクルに加えられる歪がない状態で前記接着剤が取り除かれ得るレベルまで、低下される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
歪力が、前記接着剤と前記フォトマスクとの間にもたらされる、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記歪力は、前記ペリクルフレームの運動によって適用される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記スプレーするステップは、前記接着剤上に冷却剤をスプレーするステップを含む、請求項7乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記冷却剤は、一酸化炭素を含む、請求項1乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記冷却剤は、ハイドロフルオロカーボンを含む、請求項1乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記極低温の冷却剤は、窒素、アルゴン、酸素、水素、ヘリウム、フッ素、メタン、ネオン、及び一酸化炭素から本質的になる群から選択される、請求項
1乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
フォトマスクからペリクルを分離するための装置であって、
冷却剤流体を入れた第1のマニホルドと、
第1の調節可能な支持体と、
を有し、
前記第1の調節可能な支持体は、前記フォトマスクの一部分が前記冷却剤流体から隔離された状態で、ペリクルフレームを冷却するべく前記冷却剤流体を前記ペリクルフレームにスプレーすることで前記ペリクルフレームを選択的に冷却して当該ペリクルフレームと前記フォトマスクとの間の接着剤の接着力を低減するべく、前記第1のマニホルドに対して当該ペリクルフレームを固定する、装置。
【請求項16】
前記第1の調節可能な支持体は、前記マニホルドの向きを調整する、請求項
15記載の装置。
【請求項17】
第2の調節可能な支持体を更に含み、当該第2の調整可能な支持体は、前記フォトマスクを所定位置に固定する、請求項
16記載の装置。
【請求項18】
前記ペリクルフレームに歪力を適用する手段を更に含む、請求項
17記載の装置。
【請求項19】
フォトマスクからペリクルを分離するための装置であって、
冷却剤流体を入れた第1のマニホルドと、
調節可能な支持体と、
を有し、
前記第1のマニホルドは、接着剤でフォトマスクに固定されたペリクルのフレームの第1の部分と接触関係をなして配置され、
前記ペリクルのフレームの前記第1の部分と前記第1のマニホルドとの接触が、前記接着剤が前記フォトマスクから分離する温度にまで前記接着剤を冷却し、
前記フォトマスクは、前記冷却剤流体から隔離されており、
前記調節可能な支持体は、前記ペリクルのフレーム及び前記フォトマスクに対して前記第1のマニホルドを固定し、
前記フォトマスクに対する前記ペリクルのフレームの移動が、前記フォトマスクから前記ペリクルを除去する、装置。
【請求項20】
前記第1のマニホルドは、チタンであり、前記第1のマニホルドは、厚さが0.005~0.13インチ(0.127~3.302mm)の範囲にある薄壁区分を有する、請求項19記載の装置。
【請求項21】
前記第1のマニホルドは、チタンであり、前記第1のマニホルドは、厚さが0.06インチ(1.524mm)の薄壁区分を有する、請求項19記載の装置。
【請求項22】
前記フォトマスクを前記装置内に固定する構造体を更に有する、請求項19記載の装置。
【請求項23】
前記第1のマニホルド及び前記調節可能な支持体が収容されている露点制御式エンクロージャを更に有する、請求項22記載の装置。
【請求項24】
第2のマニホルドを更に有し、前記第2のマニホルドは、前記ペリクルの前記フレームの第2の部分と接触関係をなして配置される、請求項23記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願における開示の内容、即ち本発明は、一般にフォトマスク製造に関する。特に、本発明は、フォトマスクからのペリクルの除去に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路デバイスの製造の際、フォトレチクル又はレチクルと別称されているフォトマスクは、集積回路のためのパターンを半導体ウェーハ上に投影するために用いられる。投影パターン中にエラーをもたらす場合のある汚染からフォトマスクを保護するため、アルミニウム又はプラスチックフレーム内に納められた透明なポリマー薄膜で構成されているペリクルをペリクルフレームとフォトマスクとの間の接着剤による結合によってフォトマスクの一方の側に取り付けるのが良い。
【0003】
ペリクルの使用中、フォトマスク中に検出された欠陥の修復、ペリクルの下でフォトマスク上に生じたヘイズの除去、機械的損傷又は露光による損傷に起因したペリクルの交換を含む多くの理由によりペリクルを除去することが必要になる場合がある。ペリクルをフォトマスクから除去する方法では、典型的には、機械的力をペリクルフレームに加えてペリクルフレームをフォトマスクから分離することが必要であった。しかしながら、機械的分離と関連して生じる問題としては、接着剤の除去が不完全であることやストリンガと呼ばれるペリクル接着剤がフォトマスクのパターン領域中に堆積することが挙げられ、これらは両方共、時間のかかるクリーニングを必要とし、これによりフォトマスクが使用不能であると言って良いほどまで劣化する場合がある。損傷は又、機械的分離中にフォトマスク上への金属膜(フィルム)を生じさせる場合があり、それによりフォトマスクに対するコストのかかる修復が必要であり又は損傷によって新たなフォトマスクを作製する必要が生じることがある。
【0004】
ペリクルをフォトマスクから除去するために用いられている代替的な方法では、ペリクル化された(ペリクルが施された)フォトマスクを高温溶剤中に浸漬させて接着剤を溶解させている。これらプロセスは、これらが可燃性且つ/又は毒性のある溶剤を利用しているので理想的ではない。用いられている別の方法では、ペリクル化フォトマスクを高温プレート上に配置して接着剤を溶融させ、その後ペリクルをフォトマスクから機械的に分離している。このプロセスでは、多量のペリクル接着剤がフォトマスク上に残る場合が多く、それにより次の相当多くのクリーニングステップが必要になる。
【0005】
米国特許第4,255,216号(以下、「第’216号特許」という場合がある)明細書(発明の名称:Pellicle Ring Removal Method and Tool )は、機械的なペリクル除去の問題に対して、冷却剤を利用してペリクルのための接着剤をその脆化温度未満にすると共にガラスフォトマスクがペリクルリング及び接着剤の収縮とは別の速度で収縮するようにし、それによりフォトマスクからの接着剤の分離を助ける解決手段の提案を記載している。第’216号特許の提案する解決手段では、フォトマスクは、ペリクルが下に向いた状態でペリクル除去ツール内に配置され、フォトマスクは、フォトマスクからの接着剤の分離時にペリクルから上方へ引き離される。冷却剤がペリクルの反対側でフォトマスクに直接施され、かくして、ペリクルフレーム及び接着剤は、フォトマスクを介する熱伝達によって間接的に冷却される。フォトマスクのために用いられる石英ガラスは、一般に、その温度安定性のゆえに選択されているので、フォトマスクは、冷却作用を接着剤及びペリクルフレームに提供するための理想的な熱伝導媒体ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ペリクル除去後におけるフォトマスクの過酷な化学的クリーニングの必要性を更に減少させ又はなくし、再ペリクル化サイクル時間を減少させ、そして金属層の損傷又はマスクパターン中におけるペリクル接着剤の堆積の結果として起こるフォトマスクの損傷を減少させる改良型ペリクル除去プロセス及び装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一観点では、本開示は、ペリクルをフォトマスクから除去する方法を説明している。この方法は、ペリクルのフレームとフォトマスクとの間の接着剤を冷却するステップを含む。この方法では、接着剤を冷却するステップは、フォトマスクの一部分を断熱するステップ及びペリクルのフレームを冷却するステップを含む。
【0009】
別の観点では、本開示は、ペリクルをフォトマスクから分離する装置を説明している。この装置は、冷却流体を入れた第1のマニホルドを有し、第1のマニホルドは、ペリクルのフレームの第1の部分と接触関係をなして配置される。この装置は、調節可能な支持体を更に有し、これら調節可能な支持体は、第1のマニホルドをペリクルフレーム及びフォトマスクに対して固定する。
【0010】
さらに別の観点では、本開示は、ペリクルをフォトマスクから分離する装置を説明している。この装置は、第1の冷却剤スプレーノズルを有し、第1の冷却剤スプレーノズルは、冷却剤をペリクルのフレームの第1の部分上にスプレーするよう差し向けられている。この装置は、調節可能な支持体を更に有し、これら調節可能な支持体は、ペリクルを冷却剤スプレーノズルに対して固定する。この装置は、バリヤを更に有し、このバリヤは、フォトマスクの一部分をスプレー冷却剤から遮蔽するよう差し向けられている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一観点に従ってペリクルをフォトマスクから除去する例示の装置の上から見た斜視図である。
【
図3】フォトマスク及びペリクルに係合した
図1の冷却マニホルドの部分断面側面図である。
【
図4】本発明の一観点による冷却剤分布システムの略図である。
【
図5】本発明のペリクル除去方法及び装置の別の観点の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
いま、図面(図中、同一の参照符号は、同一の要素を指している)を参照すると、本発明の第1の観点によるペリクル除去装置100が示されている。装置100は、4本の支持脚104によって支持されたベース102を有し、このベース上には、種々の調節可能な支持体が設けられている。本発明のこの観点に示されているように、第1の「L字形」マニホルド106がそり状部108に取り付けられており、このマニホルドをそり状部108に設けられたねじ穴内に設けられているねじ山付きロッド112に連結されたスクリューノブ110の回転によって第1の方向にベースに沿って動かすことができるようになっている。マニホルド106をそり状部108に取り付けられたラック116に係合するピニオン又は小歯車114の回転によって第1の方向に垂直な第2の方向に動かすことができる。第2のL字形マニホルド118がベース102に剛性的に取り付けられており、第1のマニホルド106と第2のマニホルド118は、長方形のエンクロージャを形成している。支持アーム106,118がL字形マニホルドのコーナー部の支持体となっており、これら支持アームは、それぞれ、マニホルドを互いに対して水平調節するためにベース102中にねじ込まれたねじ山付きロッドに取り付けられている支持体120,122の回転によって調節できる。
【0013】
支持プレート124,126がベース102の2つの側部に平行な状態でマニホルド106,118の上方に設けられており、これら支持プレートを圧縮ばね130の作用によってベースの中心に近づけたりこれから遠ざけたりすることができるようになっている。圧縮ばね130は、一端が支持プレート124,126に連結され且つ支柱又はスタンチョン132を通って自由に摺動することができるようになっている肩付きねじ128周りに支持されている。支持プレートは、係合部品135を有し、係合部品135をこれら係合部品中にねじ込まれたねじ山付きロッド(図示せず)に連結されているノブ134の回転によってベースに対して上方又は下方に動かすことができる。支持プレート124,126は、ベースの中心から外方に押し離されてばね130を圧縮し、それにより装置中へのフォトマスクの装填を可能にする。
【0014】
別個の支柱136がベース102に取り付けられており、この支柱136は、ベース102の平面に垂直な軸線回りに回転することができるようになっている。V字形溝付きジグ138が回転可能な支柱136に取り付けられており、このV字形溝付きジグを、回転運動を側方運動に変換する仕方でV字形溝付きジグ138に取り付けられているねじ山付きロッド(図示せず)に連結されているノブ142の回転によってハウジング140内で上下に動かすことができるようになっている。ハウジング140は又、ハウジング140に設けられているねじ穴内にねじ込まれているねじ山付きロッド(図示せず)に取り付けられたノブ144の回転によって支柱136に対して内外に動かすことができる。ハウジング140の位置をねじ山付きロックノブ146によって支柱に対して固定することができる。
【0015】
各マニホルド106,118は、吸気供給ライン148及び排気供給ライン150を備えている。容易に理解されるように、吸気及び排気供給ライン148,150は、ペリクル除去装置100を冷却剤の供給源及びマニホルド106,118の通過後に冷却剤を収集するためのリザーバに連結するための種々の取り付け具及び供給ホースを有し、これらのうちの一部だけが
図1に示されている。好ましい実施形態では、液体窒素が冷却剤として用いられるが、任意他の適当な冷却剤を用いることができ、かかる冷却剤としては、アルゴン、酸素、水素、ヘリウム、フッ素、メタン、ネオン、及び一酸化炭素が挙げられる。用いられる冷却剤は、接着剤の温度を、接着剤がフォトマスクの表面から容易に剥離してペリクルフレームの表面上に残るのに十分にその接着特性を低下させるレベルまで又はそれ以下に減少させることが望ましい。
図2のペリクル除去装置100の図からは吸気及び排気供給ラインが部分的に省かれている。
図2に示されているように、ペリクル除去装置は、支柱136を弛めてこの支柱がベース102に垂直に回転することができるよう回転可能であり又は支柱136の回転運動を阻止するよう締め付け可能なハンドル152を有している。同様に、そり状部108の運動を可能にし又はそり状部108を定位置にロックするようベース102に垂直に回転可能なハンドル154が設けられている。
【0016】
図3に示されているように、フォトマスク156には、典型的には高さが3ミリメートルから6.35ミリメートルまでの範囲にわたるフレーム158を備えたペリクルが施されることになる。他の代表的なペリクルフレーム高さは、3.15ミリメートル、4ミリメートル、5ミリメートル及び6ミリメートルである。ペリクルフレーム158は、接着剤160によってフォトマスク156に固定されている。マニホルド106,118の構成及び動作中におけるマニホルド106,118の向きは、マニホルドが任意高さのペリクルフレームを収容することができるようなものである。
図3に示されているように、マニホルド106,118は、マニホルド106,118の包囲された状態の冷却剤流体通路164の一部をなすと共にフレーム及び接着剤160の熱伝達による冷却を可能にするようペリクルフレーム158に押し付けられる薄壁区分162を有している。好ましい実施形態では、マニホルド106,118は、チタンから3D印刷され、マニホルド106,118の薄壁区分162は、少なくとも一方のマニホルド106への切欠き168の形成を可能にするよう0.005インチ(0.127mm)から0.13インチ(3.302mm)までの範囲にある厚さ、好ましくは0.06インチ(1.524mm)の厚さを有する。チタンが好ましい実施形態で用いられるが、その理由は、チタンが高い熱伝達率及び低い熱膨張率を有しているからである。また、チタンの強度により、薄壁区分162の厚さの減少が可能になり、それにより動作中におけるマニホルドの損傷を阻止するのに十分な強度を維持した状態でペリクルフレームから冷却剤への熱の伝達を増大させることができる。変形実施形態では、マニホルドは、熱膨張率が低い材料、例えば鉄ニッケル合金又はステンレス鋼で構成される。本発明の目的を達成すると共に全体的コストを減少させる他の実施形態としては、マニホルド106,118の製造に用いられる材料、例えば、薄壁区分162に用いられるチタンとマニホルドの残部のためのステンレス鋼の組み合わせが挙げられる。変形実施形態では、冷却を促進するために冷却剤が直接ペリクルフレームに接触することができるようにするための水抜き穴又はウィープホールがマニホルド106,118に設けられている。
【0017】
動作原理を説明すると、形状が全体として長方形であるフォトマスク156の2つの側部を支持プレート124,126によって固定すると共に反対側のコーナー部をV字形溝付きジグ138によって固定する。容易に理解されるように、種々のサイズのフォトマスクをベース102に対する支持プレート124,126及びV字形溝付きジグ138の調節によって装置内に保持することができる。本発明のこの実施形態の具体化において、フォトマスク156をペリクルが下に向いた状態で装置100内に保持し、係合部品135及びV字形溝付きジグ138を上方又は下方に調節してマニホルド106,118がフォトマスクに触れることがないようにすると共に更にL字形マニホルド106,118とペリクルフレーム158の係合状態を調節する。好ましい実施形態では、フォトマスク156からのペリクルフレーム158の迅速な離脱時間は、マニホルド106,118とペリクルフレーム158の接触を最大にすることによって達成される。ペリクルフレーム158は、フィルタ(図示せず)を備えた通気穴を備え、これら通気穴は、ペリクルとフォトマスクとの間のキャビティ内の均圧を可能にするよう縁に沿って設けられている。切欠き168は、均圧が起こることができるようにするために動作中にペリクルのフィルタと位置合わせされる少なくとも一方のマニホルド106に設けられている。ペリクルフレームの通気穴と位置合わせされる切欠き168を提供することが必要ではない用途では、マニホルド106の薄いプロフィールの壁162が一般的には、冷却容量を増大させる上で好ましい。一実施形態では、ペリクルフレームが装置の作用によってフォトマスクから離されると、そり状部108を引っ込めてペリクルに対するグリップを解除し、ペリクルが落下するようになる。変形実施形態では、係合部品135及びV字形溝付きジグ138を持ち上げることによってフォトマスクをペリクルフレームから遠ざけても良い。
【0018】
変形実施形態が
図4に示されており、この
図4には、フォトマスク174に取り付けられたペリクルフレーム172を有するペリクル170が示されている。この実施形態では、ペリクルフレーム172の4つの側部の各々を別々のマニホルド176,178,180,182に係合させる。別々のマニホルドの使用により、ペリクル除去装置は、広範なペリクルサイズに対応することができる。供給ライン184,186を通って適当なリザーバ、例えば極低温貯蔵ジュワー166から冷却剤を第1のマニホルド176に供給する。この実施形態では、マニホルドを互いに連結している供給ライン188,190,192経由で連続体をなして位置するマニホルド178,180,182の各々に冷却剤を順次供給する。認識されるように、変形実施形態では、冷却剤をマニホルドに平行に設けても良い。冷却剤は、かかる連続体中の最後のマニホルド182から収集リザーバ196、例えば開口ジュワーに流れる。
図4に示されているように、弁がマニホルドに対する冷却剤の供給を制御するために設けられている。
【0019】
また
図4に示されているように、ペリクル除去装置は、凝縮がプロセス中に生じるのを阻止すると共にフォトマスクを汚染から保護するために
図4に破線で表された露点制御式環境200、例えばグローブボックス内に収納される。好ましい実施形態では、露点制御式環境は、窒素で満たされる。同様に、
図1のペリクル除去装置100も又、露点制御式環境内に設けられても良い。変形実施形態では、
図1及び
図4のペリクル除去装置内におけるフォトマスク及びペリクルフレームの配置及び固定並びにフォトマスクからのペリクルの分離は、露点制御式エンクロージャ200内に納められたロボット設備を用いて自動化される。
【0020】
動作原理を説明すると、ペリクルが取り付けられたフォトマスクをペリクル除去装置内に固定する。好ましい実施形態では、接着剤が残滓を殆ど又は全く残さない状態でフォトマスクから剥離することができるのに十分な時間の間、冷却剤の流れをマニホルドに供給する。変形実施形態では、機械的力によってペリクルフレーム及び接着剤をフォトマスクから離脱させることができて残滓を殆ど又は全く残さない脆化温度まで接着剤を冷却する。ペリクルフレームと接着剤の分離は、単独で又は組み合わせ状態で働く以下の要因、即ち、(1)接着剤の接着力が冷却剤によって大幅に低下する要因、(2)ペリクルフレーム、接着剤及びフォトマスクの互いに異なる熱膨張率及び熱収縮率が接着剤とフォトマスクとの間に歪を加える要因、及び、(3)例えばペリクルフレームに対するマニホルドの運動による装置に対するペリクルフレーム又はフォトマスクの運動が接着剤とフォトマスクとの間に歪力をもたらすという要因、のうちの1つ又は2つ以上の結果として達成される。
【0021】
例えば、ペリクルフレームとフォトマスクがほぼ同じ熱膨張率及び熱収縮率を有する場合のように、ペリクルに加えられる歪が殆どなく又は全くない状態で接着剤がフォトマスクから分離するレベルまで接着剤の温度を減少させることによって本発明の方法を採用することができる。また、例えば接着剤がフォトマスクから分離することがない脆化点まで接着剤の温度を減少させ、ペリクルフレーム、接着剤及びフォトマスクの互いに異なる熱膨張率及び熱収縮率によって歪を発生させることによって、本発明の方法を採用することができる。本発明の方法及び装置を採用して上述の要因の各々を単独で又は組み合わせ状態で利用することができるので、冷却剤、冷却剤の適用方法及びペリクル除去に必要な時間の選択において融通性が提供される。
【0022】
好ましい実施形態では、冷却剤は、窒素であり、冷却剤を収容したマニホルドは、3分間から5分間にわたってペリクルフレームと接触関係に配置される。ペリクルフレームを冷却する時間の長さは、冷却剤の種類、冷却剤をペリクルフレームに適用するために採用される機構、及び用いられる特定のペリクル、接着剤及びフォトマスクの熱膨張率によって影響を受け、これらを本発明の方法及び装置の使用によって互いに異なる用途について容易に決定することができる。例示のフォトマスクでは、アクリル系接着剤は、ほぼ75×10
-6m/mK°熱膨張・熱収縮率を有し、アルミニウム製のペリクルフレームは、ほぼ22×10
-6m/mK°の熱膨張・収縮率を有し、石英製のフォトマスクは、ほぼ0.77×10
-6m/mK°の熱膨張・収縮率を有する。
図3に示されているように、好ましい実施形態では、マニホルド106,118は、ペリクルフレーム158及び接着剤160に接触するが、フォトマスク156に接触することはなく、かくしてフォトマスクは、マニホルドによる損傷から保護される。加うるに、マニホルドをフォトマスクから離隔させることによって、マニホルドとフォトマスクとの間に断熱空隙分離状態が作られ、ペリクルフレームは、フォトマスクよりも迅速に冷え、それによりペリクルフレーム及び接着剤の収縮量とフォトマスクの収縮量の差が大きくなって分離が迅速に起こることができるようになる。
【0023】
図5に示された変形実施形態では、1つ又は2つ以上のスプレーノズル202を用いて冷却剤をペリクルフレーム204及び接着剤206へスプレーするのが良い。2つの側部にしか示されていないが、理解されるべきこととして、スプレーノズルは、好ましくは、ペリクル204の4つの側部全てを目がけてスプレーを行うよう位置決めされる。この用途に適した例示のスプレーノズルは、米国特許第6,173,916号明細書に記載されているエコ‐スノー・システムズ(Eco-Snow Systems)社製のCO
2スプレーノズル20-44220-001-02 である。この実施形態では、ペリクルを除去プロセス中に保持する真空チャック208に当ててペリクルを配置する。真空チャック208は、ペリクルが除去中に損傷を受ける場合にはフォトマスク210の潜在的な汚染を減少させる。この実施形態は、定位置へのペリクルの機械的固定を必要としないので、装置内におけるペリクルの正確な位置合わせは、極めて重要であるというわけではなく、除去プロセスを迅速に実施することができる。幾つかの実施形態では、利用されるガスとしては、CO
2、N
2、ハイドロフルオロカーボン、R12及び他のクロロフルオロカーボンが挙げられる。容易に理解されるように、ガスの上述のリストは、例示であるに過ぎず、ガスがスプレーノズルを出てペリクルに当たってフォトマスクからの接着剤の所望の分離を達成するのでガスの膨張中に十分に低い温度を達成するこの変形実施形態では任意他のガスを冷却剤として用いることができる。さらに、最も大きなペリクルと同じほど大きい真空チャック208を用いることによって、任意の寸法形状のペリクルをこの装置内に収容することができる。真空チャック208上へのペリクルの配置後、スプレーノズル202を調節可能な支持体によってペリクルフレーム204に対して位置決めすることができる。容易に理解されるように、ペリクルに対するスプレーノズルの位置決めは、手動又は自動プロセス及び機器によって実施できる。変形実施形態では、断熱体又はバリヤ212をフォトマスク210とスプレーノズル202との間に挿入してフォトマスク210の冷却を制限しても良い。
【0024】
上記の説明の実施形態の目的に関してペリクル除去装置に対するペリクル化フォトマスクの特定の空間的向きに関して説明したが、容易に理解されるように、かかる向きは、本明細書において説明した本発明を採用する場合には必要ではない。本明細書において説明した本発明は、ペリクルが上に向いた状態でフォトマスクが片側に又は任意所望の空間方向に取り付けられる装置に採用することができる。加うるに、ペリクル及びフォトマスクに対する冷却剤の相対的な配置を支援すると共に調節するための特定の構造を有するものとして上述の実施形態を説明したが、容易に理解されるように、他の構造を用いても本発明の精神及び範囲から逸脱することなく同一の結果を達成することができる。
【0025】
また、上記説明は開示したシステム及び技術の実施例を提供していることは理解されよう。しかしながら、本発明の他の具体化例が、上述の実施例とは細部において異なる場合のあることが想定される。本発明又はその実施例と言った場合にはこれらは全て、その時点で説明中の特定の実施例を指すようになっており、本発明の範囲全体に関して何ら限定を意味するものではない。或る特定の特徴に関する区別及び軽視となる全ての用語は、これら特徴について優先順位がないことを示しており、別段の指定がなければ、本発明の範囲からこのような用語を全く排除するものではない。
【0026】
本明細書での値の範囲についての記載は、本明細書において別段の指定がなければ、その範囲に含まれる別個の各値を個別的に参照する簡潔な方法として役立つようになっているに過ぎず、各別個の値は、これが個別的に本明細書に記載されているかのように本明細書に記載されているものとする。本明細書において説明した方法の全ては、本明細書において別段の指定がなければ或いは文脈上明らかな矛盾がなければ、任意適当な順序で実施できる。
【符号の説明】
【0027】
100 ペリクル除去装置
102 ベース
104 支持脚
106,118 マニホルド
130 圧縮ばね
132 136 支柱
138 V字形溝付きジグ
140 ハウジング
148 吸気供給ライン
150 排気供給ライン
156 フォトマスク
158 ペリクルフレーム
160 接着剤
162 薄壁区分
164 冷却剤流体通路