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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】試験室構造体、及び試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20220420BHJP
【FI】
G01N17/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020097005
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021189114
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108890
【氏名又は名称】株式会社ダイキンアプライドシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 慎治
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-318046(JP,A)
【文献】特開平06-117992(JP,A)
【文献】特開2018-185267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0284916(US,A1)
【文献】特開昭59-211845(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107192567(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験物(T)を収容する試験室(S)を形成し、該試験室(S)に該被験物(T)を搬入するための開口(50)が形成された箱状の本体部(30)と、
前記開口(50)を開閉する扉(40)とを備えた試験室構造体(10)であって、
前記本体部(30)は、天板部(35)と、互いに向かい合う第1側板部(31)及び第2側板部(32)とを有し、
前記開口(50)は、前記第1側板部(31)に形成されて前記被験物(T)が通過する側方開口(56)と、前記天板部(35)に形成されて前記被験物(T)を吊り下げる吊り具が通過する上方開口(51)とを含み、
前記上方開口(51)は、前記第1側板部(31)から前記第2側板部(32)に向かって延び、前記側方開口(56)に連続している
ことを特徴とする試験室構造体。
【請求項2】
請求項1において、
前記扉(40)は、スライドすることによって前記上方開口(51)を開閉する上方扉(41)を含む
ことを特徴とする試験室構造体。
【請求項3】
請求項2において、
前記扉(40)は、前記上方扉(41)とは別体に形成され、上下方向に延びる回転軸(A)を中心に回転することによって前記側方開口(56)を開閉する側方扉(46)を含む
ことを特徴とする試験室構造体。
【請求項4】
請求項1において、
前記扉(40)は、スライドすることによって前記側方開口(56)を開閉する側方扉(46)を含む
ことを特徴とする試験室構造体。
【請求項5】
請求項2又は3において、
前記上方扉(41)は、前記上方開口(51)を覆う平板部(42)と、該平板部(42)の下面に取り付けられる複数の車輪(W)とを備え、
前記本体部(30)は、前記天板部(35)に設けられて前記上方扉(41)がスライドするように前記車輪(W)を案内するレール(R)を備える
ことを特徴とする試験室構造体。
【請求項6】
請求項5において、
前記レール(R)は、前記上方開口(51)を挟んで一直線上に配置される第1レール(R1)と第2レール(R2)とを含み、
前記上方扉(41)は、
前記上方開口(51)を覆う閉位置では、前記第1レール(R1)及び前記第2レール(R2)の両方に支持され、
前記上方開口(51)を開く開位置では、前記第1レール(R1)だけに支持される
ことを特徴とする試験室構造体。
【請求項7】
請求項6において、
前記上方扉(41)では、一直線上に並んだ3つ以上の前記車輪(W)からなる車輪群(WF)が形成され、
前記車輪群(WF)を構成する車輪(W)は、
前記上方扉(41)が閉位置のときに、前記第1レール(R1)と前記第2レール(R2)のそれぞれに少なくとも1つずつの前記車輪(W)が載り、
前記上方扉(41)が開位置のときに、前記第1レール(R1)に少なくとも2つの前記車輪(W)が載るように配置される
ことを特徴とする試験室構造体。
【請求項8】
請求項7において、
前記上方扉(41)の重心は、前記上方扉(41)が開位置のときに前記第1レール(R1)に載っている複数の前記車輪(W)のうち、前記上方開口(51)に最も近い車輪(W)と前記上方開口(51)から最も遠い車輪(W)との間に位置する
ことを特徴とする試験室構造体。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1つにおいて、
前記上方開口(51)は、前記第1レール(R1)及び前記第2レール(R2)に挟まれた部分が最も狭い
ことを特徴とする試験室構造体。
【請求項10】
請求項2,3,5~9のいずれか1つにおいて、
前記上方扉(41)は、前記上方開口(51)を覆う閉位置以外の位置から閉位置へ移動するときに、下方へ移動して前記天板部(35)に近づく
ことを特徴とする試験室構造体。
【請求項11】
請求項1において、
前記扉(40)は、前記上方開口(51)と前記側方開口(56)の両方を開閉する1つの扉本体(60)を備える
ことを特徴とする試験室構造体。
【請求項12】
請求項11において、
前記扉本体(60)は、スライドすることによって前記上方開口(51)及び前記側方開口(56)を開閉する
ことを特徴とする試験室構造体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1つに記載の試験室構造体(10)と、
前記試験室(S)の室内空気を調和する空気調和装置(20)とを備える
ことを特徴とする試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験室構造体、及び試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の環境条件下で、製品(被験物)の耐久性や性能を試験するための環境試験室が知られている。特許文献1には、空調システムが設けられた環境試験室が開示されている。具体的には、空調システムが冷却された空気を環境試験室の室内空間に供給し、室内空間の空気温度を所望の温度範囲に制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-16374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の環境試験室では、被験物をフォークリフトで持ち上げて、試験室の側面に形成された開口から試験室内に搬入する。しかし、被験物の重量及び形状によっては、被験物をフォークリフトに載せて搬入することが手間な場合があった。
【0005】
本開示の目的は、被験物を試験室に搬入しやすくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、被験物(T)を収容する試験室(S)を形成し、該試験室(S)に該被験物(T)を搬入するための開口(50)が形成された箱状の本体部(30)と、前記開口(50)を開閉する扉(40)とを備えた試験室構造体(10)を対象とする。
【0007】
試験室構造体(10)は、前記本体部(30)は、天板部(35)と、互いに向かい合う第1側板部(31)及び第2側板部(32)とを有し、前記開口(50)は、前記第1側板部(31)に形成されて前記被験物(T)が通過する側方開口(56)と、前記天板部(35)に形成されて前記被験物(T)を吊り下げる吊り具が通過する上方開口(51)とを含み、前記上方開口(51)は、前記第1側板部(31)から前記第2側板部(32)に向かって延び、前記側方開口(56)に連続していることを特徴とする。
【0008】
第1の態様では、天板部(35)に、側方開口(56)に連続している上方開口(51)が形成されている。これにより、被験物(T)を吊り下げた状態で試験室(S)に搬入できるので、被験物(T)の重量または形状にかかわらず、被験物(T)を試験室(S)へ容易に搬入できる。
【0009】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記扉(40)は、スライドすることによって前記上方開口(51)を開閉する上方扉(41)を含むことを特徴とする。
【0010】
第2の態様では、上方扉(41)がスライドすることによって、上方開口(51)が開閉される。
【0011】
本開示の第3の態様は、第2の態様において、前記扉(40)は、前記上方扉(41)とは別体に形成され、上下方向に延びる回転軸(A)を中心に回転することによって前記側方開口(56)を開閉する側方扉(46)を含むことを特徴とする。
【0012】
第3の態様では、側方扉(46)が回転することによって、側方開口(56)が開閉される。
【0013】
本開示の第4の態様は、第1の態様において、前記扉(40)は、スライドすることによって前記側方開口(56)を開閉する側方扉(46)を含むことを特徴とする。
【0014】
第4の態様では、側方扉(46)がスライドすることによって、側方開口(56)が開閉される。
【0015】
本開示の第5の態様は、第2又は第3の態様において、前記上方扉(41)は、前記上方開口(51)を覆う平板部(42)と、該平板部(42)の下面に取り付けられる複数の車輪(W)とを備え、前記本体部(30)は、前記天板部(35)に設けられて前記上方扉(41)がスライドするように前記車輪(W)を案内するレール(R)を備えることを特徴とする。
【0016】
第5の態様では、本体部(30)の天板部(35)に設けられたレール(R)によって、上方扉(41)の車輪(W)が案内される。これにより、上方扉(41)がスライドする。
【0017】
本開示の第6の態様は、第5の態様において、前記レール(R)は、前記上方開口(51)を挟んで一直線上に配置される第1レール(R1)と第2レール(R2)とを含み、前記上方扉(41)は、前記上方開口(51)を覆う閉位置では、前記第1レール(R1)及び前記第2レール(R2)の両方に支持され、前記上方開口(51)を開く開位置では、前記第1レール(R1)だけに支持されることを特徴とする。
【0018】
第6の態様では、第1レール(R1)と第2レール(R2)とが上方開口(51)を挟んで一直線上に配置されている。これにより、試験室(S)に被験物(T)を搬入する際、第1レール(R1)と第2レール(R2)との間に吊り具を通過させることができる。
【0019】
本開示の第7の態様は、第6の態様において、前記上方扉(41)では、一直線上に並んだ3つ以上の前記車輪(W)からなる車輪群(WF)が形成され、前記車輪群(WF)を構成する車輪(W)は、前記上方扉(41)が閉位置のときに、前記第1レール(R1)と前記第2レール(R2)のそれぞれに少なくとも1つずつの前記車輪(W)が載り、前記上方扉(41)が開位置のときに、前記第1レール(R1)に少なくとも2つの前記車輪(W)が載るように配置されることを特徴とする。
【0020】
第7の態様では、上方扉(41)が閉位置にある場合と開位置にある場合のどちらの場合においても、2つ以上の車輪(W)が第1レール(R1)又は第2レール(R2)に載っている。これにより、上方扉(41)が安定した状態でスライド移動できる。
【0021】
本開示の第8の態様は、第7の態様において、前記上方扉(41)の重心は、前記上方扉(41)が開位置のときに前記第1レール(R1)に載っている複数の前記車輪(W)のうち、前記上方開口(51)に最も近い車輪(W)と前記上方開口(51)から最も遠い車輪(W)との間に位置することを特徴とする。
【0022】
第8の態様では、上方扉(41)が開位置にあるときに、上方扉(41)が傾くことなく安定して静止できる。
【0023】
本開示の第9の態様は、第6~第8の態様のいずれか1つにおいて、前記上方開口(51)は、前記第1レール(R1)及び前記第2レール(R2)に挟まれた部分が最も狭いことを特徴とする。
【0024】
第9の態様では、上方開口(51)における第1レール(R1)と第2レール(R2)とに挟まれた部分が最も狭い。これにより、上方扉(41)がスライドする過程で、一部の車輪(W)が第1レール(R1)と第2レール(R2)のどちらにも載らない状態の距離を短くできる。
【0025】
本開示の第10の態様は、第2,第3,第5~第9の態様のいずれか1つにおいて、前記上方扉(41)は、前記上方開口(51)を覆う閉位置以外の位置から閉位置へ移動するときに、下方へ移動して前記天板部(35)に近づくことを特徴とする。
【0026】
第10の態様では、上方扉(41)が閉位置へ移動する際に、上方扉(41)が天板部(35)に近づくことで上方開口(51)が閉じられる。これにより、試験室(S)の気密性を確保できる。
【0027】
本開示の第11の態様は、第1の態様において、前記扉(40)は、前記上方開口(51)と前記側方開口(56)の両方を開閉する1つの扉本体(60)を備えることを特徴とする。
【0028】
第11の態様では、1つの扉本体(60)によって上方開口(51)及び側方開口(56)を開閉できる。
【0029】
本開示の第12の態様は、第11の態様において、前記扉本体(60)は、スライドすることによって前記上方開口(51)及び前記側方開口(56)を開閉することを特徴とする。
【0030】
第12の態様では、扉本体(60)をスライドさせることで、上方開口(51)及び側方開口(56)を開閉できる。
【0031】
本開示の第13の態様は、第1~第12の態様のいずれか1つに記載の試験室構造体(10)と、前記試験室(S)の室内空気を調和する空気調和装置(20)とを備えることを特徴とする試験装置()である。
【0032】
第13の態様では、空気調和装置(20)によって試験室(S)の内部空気を調和することにより、所望の試験環境を設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、実施形態1に係る試験装置の構成を示す概略の縦断面図である。
図2図2は、試験室構造体の本体部を示す斜視図である。
図3図3は、試験室構造体の上方扉周辺を示す平面図である。
図4図4は、図3における上方扉の前端周辺を示す拡大図である。
図5図5は、試験室構造体の側方扉周辺を示す正面図である。
図6図6は、図3のVI-VI線矢視断面図である。
図7図7は、上方扉が閉位置から右へ移動したときの図5に相当する図である。
図8図8は、上方扉がさらに右へ移動したときの図5に相当する図である。
図9図9は、上方扉が開位置にあるときの図5に相当する図である。
図10図10は、実施形態2に係る試験室構造体の上方開口が閉じた状態を示す平面図である。
図11図11は、試験室構造体の側方開口が閉じた状態を示す正面図である。
図12図12は、試験室構造体の上方開口が開いた状態を示す平面図である。
図13図13は、試験室構造体の側方開口が開いた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
《実施形態1》
実施形態1について説明する。
【0035】
試験装置(1)は、所定の環境条件下での被験物(T)の耐久性や性能を試験するための装置である。試験装置(1)は、天井に作業用のクレーンが設置された建屋の内部に設置される。図1に示すように、試験装置(1)は、試験室構造体(10)と、空気調和装置(20)とを備える。なお、以下の説明の「上」「下」「右」「左」「前」「後」は、図2に示すように、試験室構造体(10)を正面から見たときの方向である。
【0036】
〈試験室構造体の概要〉
試験室構造体(10)は、本体部(30)と、扉(40)とを有する。本体部(30)は、箱状に形成されている。本体部(30)は、その内部空間に試験室(S)を形成する。試験室(S)は、被験物(T)を収容するための空間である。
【0037】
本体部(30)の内部空間における中央には、区画壁(37)が配置されている。区画壁(37)は、試験室(S)を第1室(S1)と第2室(S2)とに区画している。区画壁(37)の中央には、被験物(T)が配置されている。本実施形態では、被験物(T)は、サッシ窓である。
【0038】
本体部(30)には、試験室(S)に被験物(T)を搬入するための開口(50)が形成されている。扉(40)は、本体部(30)の開口(50)を開閉する。開口(50)及び扉(40)の詳細については、後述する。
【0039】
本体部(30)には、2つの給気口(30a,30b)と2つの還気口(30c,30d)とが形成されている。第1給気口(30a)及び第1還気口(30c)は、第1室(S1)に連通している。第2給気口(30b)及び第2還気口(30d)は、第2室(S2)に連通している。
【0040】
〈空気調和装置〉
試験装置(1)は、2つの空気調和装置(21,22)を備える。第1空気調和装置(21)は、第1室(S1)の室内空気を調和し、第2空気調和装置(22)は、第2室(S2)の室内空気を調和する。
【0041】
各空気調和装置(21,22)は、それぞれ空調部(26)と、給気ダクト(27)と、還気ダクト(28)とを有する。各給気ダクト(27,27)は、その一端が空調部(26,26)の流出口(26a,26a)に接続され、その他端が本体部(30,30)の給気口(30a,30b)に接続されている。各還気ダクト(28,28)は、その一端が空調部(26,26)の流入口(26b,26b)に接続され、その他端が本体部(30,30)の還気口(30c,30d)に接続されている。
【0042】
空調部(26,26)は、還気口(30c,30d)から流入し還気ダクト(28,28)を通過した室内空気の温度と湿度を調節し、これらを調節した空気を給気ダクト(27,27)及び給気口(30a,30b)を通じて試験室(S)に供給する。
【0043】
本実施形態では、例えば、第1室(S1)における室内空気の温度を第2室(S2)における室内空気の温度よりも低くすることで、区画壁(37)に設けられた被験物(T)としてのサッシ窓の断熱性能等を試験する。
【0044】
-試験室構造体の詳細-
〈本体部〉
図2に示すように、本体部(30)は、略直方体状に形成されている。本体部(30)は、天板部(35)と、4つの側板部(31,32,33,34)と、床板部(36)と、区画壁(37)と、レール(R)を備える。
【0045】
天板部(35)、4つの側板部(31,32,33,34)、及び区画壁(37)は、板状の部材である。天板部(35)は、本体部(30)の上面に設けられている。
【0046】
第1側板部(31)は、本体部(30)の前面に設けられる。第2側板部(32)は、本体部(30)の後面に設けられる。第1側板部(31)と第2側板部(32)とは、互いに向かい合って配置されている。
【0047】
第3側板部(33)は、本体部(30)の右面に設けられる。第4側板部(34)は、本体部(30)の左面に設けられる。第3側板部(33)と第4側板部(34)とは、互いに向かい合って配置されている。
【0048】
本体部(30)の内部空間が試験室(S)である。試験室(S)は、第1~第4側板部(31,32,33,34)と、天板部(35)と、床板部(36)とに囲まれた空間である。
【0049】
区画壁(37)は、本体部(30)の長手方向の中央に配置される。区画壁(37)は、本体部(30)の内部空間を、第3側板部(33)側の第1室(S1)と、第4側板部(34)側の第2室とに区画する。具体的に、区画壁(37)は、第3側板部(33)及び第4側板部(34)と概ね平行に配置される。区画壁(37)は、左右方向において第3側板部(33)と第4側板部(34)との間を等間隔に分けるように配置される。区画壁(37)は、第1側板部(31)及び第2側板部(32)と概ね直交するように配置される。区画壁(37)の中央には、貫通穴が形成されている。貫通穴は、区画壁(37)の板厚方向(左右方向)に貫通している。区画壁(37)の貫通穴には、被験物(T)が設置される。
【0050】
本体部(30)の天板部(35)には、1対のレール(R)が配置されている。1対のレール(R)は、後述する上方扉(41)の車輪を案内する。1対のレール(R)は、前方レール(RF)と後方レール(RB)とで構成される。
【0051】
前方レール(RF)は、第1レール(R1)と、第2レール(R2)とを含む。第1レール(R1)と第2レール(R2)とは、後述する上方開口(51)の突出開口部(53)を挟んで一直線上に配置される。
【0052】
第1レール(R1)は、天板部(35)の前側の縁に沿って配置される。また、第1レール(R1)は、上方開口(51)の右側に配置される。第1レール(R1)は、区画壁(37)をまたぐように配置される。図6図9に示すように、第1レール(R1)は、左端から右へ向かうにしたがって上方に上がり、その後一定の高さになるように形成されている。言い換えると、第1レール(R1)は、左端部が残りの部分よりも一段低くなっている。
【0053】
第2レール(R2)は、天板部(35)の前側の縁に沿って配置される。また、第2レール(R2)は、上方開口(51)の左側に配置される。第2レール(R2)は、左端から右へ向かうにしたがって上方に上がり、その後一定の高さになるように形成されている。第2レール(R2)の長さは、第1レール(R1)の長さより短い。
【0054】
後方レール(RB)は、天板部(35)の後側の縁部に沿って配置される。後方レール(RB)は、区画壁(37)をまたぐように配置される。後方レール(RB)は、前方レール(RF)と実質的に平行である。後方レール(RB)は、第1レール(R1)及び第2レール(R2)より長い。
【0055】
〈開口〉
本体部(30)に形成された開口(50)は、上方開口(51)と、側方開口(56)とを有する。
【0056】
上方開口(51)は、被験物(T)を試験室(S)に搬入する際に、被験物(T)を吊り下げる吊り具が通過するための開口である。上方開口(51)は、天板部(35)に形成される。上方開口(51)は、天板部(35)における区画壁(37)よりも左側に形成されている。上方開口(51)は、試験室(S)の第1室(S1)に開口している。上方開口(51)は、前方レール(RF)と後方レール(RB)との間に形成されている。
【0057】
上方開口(51)は、概ね矩形状に形成されている。上方開口(51)は、天板部(35)の前端から後方へ向かって延びている。言い換えると、上方開口(51)は、第1側板部(31)から第2側板部(32)に向かって延びている。
【0058】
上方開口(51)は、大開口部(52)と突出開口部(53)とで構成される。大開口部(52)は、後方レール(RB)付近から前方に延びるように形成されている。突出開口部(53)は、大開口部(52)の前端から天板部(35)の前端に亘って形成されている。突出開口部(53)は、第1レール(R1)と第2レール(R2)とに挟まれている。
【0059】
突出開口部(53)の幅(左右方向の長さ)は、大開口部(52)の幅(左右方向の長さ)よりも小さくなっている。上方開口(51)の幅は、突出開口部(53)の幅が最も狭い。言い換えると、上方開口(51)の幅は、第1レール(R1)及び第2レール(R2)に挟まれた部分が最も狭い。
【0060】
図6に示すように、本体部(30)の天板部(35)には、第1シール部材(35a)が設けられる。第1シール部材(35a)は、ゴムや発泡樹脂等の可撓性の材料からなる線状の部材である。第1シール部材(35a)は、上方開口(51)の周囲を囲むように配置されている。
【0061】
側方開口(56)は、被験物(T)を試験室(S)に搬入する際に、被験物(T)が通過するための開口である。側方開口(56)は、第1側板部(31)に形成される。側方開口(56)は、第1側板部(31)における区画壁(37)よりも左側に形成されている。側方開口(56)は、試験室(S)の第1室(S1)に開口している。
【0062】
側方開口(56)は、右側開口(57)と、左側開口(58)とで構成される。右側開口(57)及び左側開口(58)は、矩形状に形成されている。
【0063】
右側開口(57)は、本体部(30)の下端から上端に亘って開口している。右側開口(57)は、主開口部(57a)と延長開口部(57b)とで構成される。主開口部(57a)は、本体部(30)の下端から上方に向かって形成され、本体部(30)の上下方向中央よりも上の位置まで形成されている。
【0064】
延長開口部(57b)は、主開口部(57a)の上端から本体部(30)の上端に亘って開口している。延長開口部(57b)の幅(左右方向の長さ)は、主開口部(57a)の幅(左右方向の長さ)よりも小さい。延長開口部(57b)の幅は、上方開口(51)の突出開口部(53)の幅と概ね同じである。主開口部(57a)の幅は、上方開口(51)の大開口部(52)の幅と概ね同じである。延長開口部(57b)は、上方開口(51)の突出開口部(53)と連続している。
【0065】
左側開口(58)の高さは、右側開口(57)の高さよりも低い。左側開口(58)の幅(左右方向の長さ)は、右側開口(57)の主開口部(57a)の幅と概ね同じである。
【0066】
本体部(30)の第1側板部(31)には、第2シール部材(31a)が設けられる。第2シール部材(31a)は、ゴムや発泡樹脂等の可撓性の材料からなる線状の部材である。第2シール部材(31a)は、側方開口(56)の周囲を囲むように配置されている。
【0067】
上方開口(51)の突出開口部(53)の前端は、右側開口(57)の延長開口部(57b)の上端と連続している。言い換えると、上方開口(51)及び側方開口(56)の縦断面は、L字状に形成されている。
【0068】
側方開口(56)と連続した上方開口(51)が本体部(30)に形成されていることにより、被験物(T)をクレーン等で吊り下げたまま、試験室(S)に被験物(T)を搬入できる。
【0069】
〈扉〉
扉(40)は、上方扉(41)と、側方扉(46)とを含む。図3に示すように、上方扉(41)は、上方開口(51)を開閉するための扉である。図3は、上方扉(41)によって上方開口(51)が閉じられた状態を示している。本実施形態の上方扉(41)は、左右方向にスライドする。具体的には、上方扉(41)は、上方開口(51)を覆う閉位置と、上方開口(51)を開く開位置との間をスライドする。
【0070】
上方扉(41)は、本体部(30)の天板部(35)の上面に配置される。図3及び図5に示すように、上方扉(41)は、平板部(42)と、1対の車輪群(WF,WB)とを備える。平板部(42)は、板状の部材である。平板部(42)は、概ね矩形状に形成されている平板部(42)は、天板部(35)の前端から後端に亘って延びている。平板部(42)の前端には、その一部が前方に突出した突出部(42a)が形成されている。
【0071】
平板部(42)の形状は、上方開口(51)の形状に対応して同形状に形成されている。平板部(42)の後部の幅(左右方向の長さ)は、上方開口(51)の大開口部(52)の幅(左右方向の長さ)よりも大きい。平板部(42)の突出部(42a)の幅は、上方開口(51)の突出開口部(53)の幅よりも大きい。
【0072】
図3及び図4に示すように、平板部(42)は、1対の車輪群(WF,WB)を固定するための一対の固定部(43,44)を有する。具体的には、各固定部(43,44)は、平板部(42)における前側面及び後側面のそれぞれに取り付けられている。各固定部(43,44)は、矩形棒状の部材である。前側の固定部(43)は、第1固定部(43a)と第2固定部(43b)とから構成される。
【0073】
第1固定部(43a)は、平板部(42)の突出部(42a)の右側に取り付けられている。第2固定部(43b)は、平板部(42)の突出部(42a)の左側に取り付けられている。第1固定部(43a)と第2固定部(43b)とは、左右方向に一直線上に並んで配置されている。
【0074】
第1固定部(43a)の左右方向の長さは、平板部(42)の突出部(42a)よりも右側の幅と同じである。言い換えると、第1固定部(43a)の右端と平板部(42)の右端とは揃っている。
【0075】
第2固定部(43b)は、平板部(42)の突出部(42a)よりも左側の幅よりも長い。言い換えると、第2固定部(43b)は、平板部(42)の左端から突出するように配置されている。第2固定部(43b)の長さは、第2レール(R2)の長さより長い。
【0076】
図3に示すように、後側の固定部(44)は、平板部(42)の後側面に沿って取り付けられている。後側の固定部(44)の左右方向の長さは、平板部(42)の後側の幅よりも長い。後側の固定部(44)の右端と平板部(42)の右端とは揃っている。一方、後側の固定部(44)の左端は、平板部(42)の左端よりも左側に突出するように配置されている。
【0077】
1対の車輪群(WF,WB)は、平板部(42)の1対の固定部(43,44)におけるそれぞれの下面に取り付けられる。一方の車輪群(WF)は、平板部(42)の前側に取り付けられる。他方の車輪群(WB)は、平板部(42)の後側に取り付けられる。1つの車輪群は、複数の車輪(W)から構成される。
【0078】
図6に示すように、前側の車輪群(WF)は、3つの車輪で構成される。前側の車輪群(WF)は、左右方向に一直線上に並んでいる。右から左に向かって順に、第1車輪(W1)と、第2車輪(W2)と、第3車輪(W3)とが配置されている。言い換えると、前側の複数の車輪(W)は、一直線上に並んだ3つ以上の車輪(W)からなる車輪群(WF)を形成する。
【0079】
第1車輪(W1)は、第1固定部(43a)の左端に取り付けられる。第2車輪(W2)は、第2固定部(43b)の右端に取り付けられる。第3車輪(W3)は、第2固定部(43b)の左端に取り付けられる。前側の車輪群(WF)は、前方レール(RF)の上を左右方向に移動するように、平板部(42)における前方レール(RF)に対応する位置に取り付けられている。前側の車輪群(WF)を構成する各車輪(W1~W3)は、それぞれの回転中心軸が互いに実質的に平行であり、且つ前方レール(RF)の伸長方向と実質的に直交する。
【0080】
図3に示すように、後側の車輪群(WB)は、2つの車輪(W)で構成される。後側の車輪群(WB)は、左右方向に一直線上に並んでいる。後側の車輪群(WB)のうち一方の車輪(W)は、後側の固定部(44)の右端に取り付けられ、他方の車輪(W)は、後側の固定部(44)の左端に取り付けられている。後側の車輪群(WB)は、後方レール(RB)の上を左右方向に移動するように、平板部(42)における後方レール(RB)に対応する位置に取り付けられている。後側の車輪群(WB)を構成する各車輪(W,W)は、それぞれの回転中心軸が互いに実質的に平行であり、且つ後方レール(RB)の伸長方向と実質的に直交する。
【0081】
上方扉(41)の重心(C)は、前方から見て平板部(42)の突出部(42a)における中央よりも左寄りに位置している。また、上方扉(41)の重心(C)は、前方から見て第1車輪(W1)と第2車輪(W2)の間に位置している。更に、上方扉(41)の重心(C)は、前方から見て第1車輪(W1)と第2車輪(W2)の中央よりも第2車輪(W2)寄りに位置している。
【0082】
本実施形態では、上方扉(41)は、電動でスライド移動する。具体的には、上方扉(41)は、右側方に取り付けられた駆動部(D)によって左右方向に移動する。
【0083】
(側方扉)
図5に示すように、側方扉(46)は、側方開口(56)を開閉するための扉である。図5は、側方扉(46)によって、側方開口(56)が閉じられた状態を示している。本実施形態の側方扉(46)は、両開き(いわゆる、観音開き)の扉である。側方扉(46)は、側方開口(56)を開く開放位置と、側方開口(56)を塞ぐ閉鎖位置との間を回転移動する。
【0084】
側方扉(46)は、上方扉(41)とは別体に形成されている。側方扉(46)は、本体部(30)の第1側板部(31)の側面に配置される。側方扉(46)は、右側方扉(47)と左側方扉(48)とから構成される。右側方扉(47)は、右側開口(57)を開閉し、左側方扉(48)は、左側開口(58)を開閉する。右側方扉(47)及び左側方扉(48)は、概ね矩形状に形成された板状の部材である
右側方扉(47)の形状は、右側開口(57)よりも一回り大きい平板状に形成されている。右側方扉(47)は、第1側板部(31)の下端から上端に亘って形成されている。右側方扉(47)は、主扉部(47a)と延長部(47b)とで構成される。
【0085】
主扉部(47a)は、右側開口(57)の下端から上方に形成されている。延長部(47b)は、主扉部(47a)の上端から上方に延長された部分である。延長部(47b)の幅は、主扉部(47a)の幅よりも小さい
右側方扉(47)は、その右端に上下方向に延びる回転軸(A)を有する。具体的には、回転軸(A)は、右側方扉(47)の右端部に取り付けられた5つの蝶番(45)の軸である。5つの蝶番(45)の各軸は、同軸に配置されている。右側方扉(47)は、回転軸(A)を中心に回転することによって右側開口(57)を開閉する。
【0086】
左側方扉(48)の形状は、左側開口(58)よりも一回り大きい長方形板状に形成されている。左側方扉(48)は、第1側板部(31)の下端から上方に延びている。左側方扉(48)の高さは、右側方扉(47)の主扉部(47a)の高さよりも低い。
【0087】
左側方扉(48)は、その左端に上下方向に延びる回転軸(A)を有する。具体的には、回転軸(A)は、右側方扉(47)と同様に、左側方扉(48)の左端部に取り付けられた4つの蝶番(45)の軸である。左側方扉(48)は、回転軸(A)を中心に回転することによって左側開口(58)を開閉する。
【0088】
左側方扉(48)の下部には、片開き扉(49)が設けられている。片開き扉(49)は、人が試験室(S)に出入りするための扉である。
【0089】
-被験物の搬入動作-
次に、被験物(T)を試験装置(1)に搬入する動作について説明する。
【0090】
被験物(T)を試験装置(1)に搬入する際は、上方扉(41)の開放、側方扉(46)の開放、被験物(T)の搬入の順序で行う。各動作について、順に説明する。
【0091】
〈上方扉の開放〉
まず、上方扉(41)を開く。具体的には、上方扉(41)を閉位置から開位置になるように右方向にスライド移動させる。
【0092】
図6では、上方扉(41)が閉位置に位置する。このとき、上方扉(41)は、上方開口(51)を完全に覆っている。第1車輪(W1)は、第1レール(R1)の左端に載っている。第3車輪(W3)は、第2レール(R2)の右端に載っている。第2車輪(W2)は、第1及び第2レール(R2)のいずれにも載っていない。言い換えると、上方扉(41)が閉位置にあるときに、第1レール(R1)と第2レール(R2)のそれぞれに少なくとも1つずつの車輪が載っている。
【0093】
第1車輪(W1)及び第3車輪(W3)は、第1レール(R1)及び第2レール(R2)において天板部(35)に近づくように一段下がっている部分に位置している。第2車輪(W2)は、第1レール(R1)と第2レール(R2)のどちらにも載っておらず、第2レール(R2)の右端と第1シール部材(35a)との間に入り込んでいる。
【0094】
このように、上方扉(41)が閉位置にあるとき、上方扉(41)が天板部(35)に近づくように配置されることで、上方扉(41)は、その自重で第1シール部材(35a)に押し付けられて、上方扉(41)と第1シール部材(35a)とが密着する。これにより、上方扉(41)と天板部(35)との密閉性が確保される。
【0095】
図6において、上方扉(41)の重心(C)は、第1レール(R1)に載っている第1車輪(W1)と第2レール(R2)に載っている第3車輪(W3)との間に位置している。上方扉(41)は、閉位置では、第1レール(R1)及び第2レール(R2)の両方に支持されている。
【0096】
上方扉(41)は、閉位置から右方向にスライド移動すると、図7に示す状態になる。このとき、第1車輪(W1)及び第3車輪(W3)は、第1レール(R1)と第2レール(R2)のそれぞれに載ったまま、右方向にスライド移動する。
【0097】
具体的には、第1車輪(W1)は、第1レール(R1)に沿って右方向へ移動しながら徐々に上方へ移動し、その後に水平方向に移動する。第3車輪(W3)は、第1車輪(W1)と同様に、第2レール(R2)に沿って右方向へ移動しながら徐々に上方へ移動し、その後に水平方向に移動する。第2車輪(W2)は、上方開口(51)の上を移動する。
【0098】
図7において、上方扉(41)の重心(C)は、第1レール(R1)に載っている第1車輪(W1)と第2レール(R2)に載っている第3車輪(W3)との間に位置している。そのため、上方扉(41)は、傾くことなく第1レール(R1)に支持される。
【0099】
次に、上方扉(41)が図7に示す位置から更に右方向にスライド移動すると、図8に示す状態になる。上方扉(41)が図7に示す位置から右方向へスライド移動すると、第2車輪(W2)が第1レール(R1)の上に載る。さらに上方扉(41)が右へスライドすると、第3車輪(W3)が第2レール(R2)から離れ、どこにも接触しない状態となる。そして、第3車輪(W3)は、上方開口(51)の上を移動する。図8の状態では、第1車輪(W1)及び第2車輪(W2)は、第1レール(R1)上に載っている。
【0100】
図8において、上方扉(41)の重心(C)は、第1レール(R1)に載っている第1車輪(W1)及び第2車輪(W2)との間に位置している。そのため、上方扉(41)は、傾くことなく第1レール(R1)に支持される。
【0101】
次に、上方扉(41)が図8に示す位置から更に右方向へスライド移動すると、図9に示す状態になる。図9において、上方扉(41)は、開位置に位置する。このとき、上方開口(51)は、完全に開かれている。第1車輪(W1)及び第2車輪(W2)は、第1レール(R1)の上に載っている。第3車輪(W3)は、第1及び第2レール(R2)のいずれにも載っていない。上方扉(41)が閉位置にあるときに、第1レール(R1)に少なくとも2つの車輪が載っている。
【0102】
図9において、上方扉(41)の重心(C)は、第1レール(R1)に載っている第1車輪(W1)と第2車輪(W2)との間に位置している。上方扉(41)が開位置のときに、上方扉(41)の重心(C)は、第1レール(R1)に載っている複数の車輪のうち、上方開口(51)に最も近い第2車輪(W2)と上方開口(51)から最も遠い第1車輪(W1)との間に位置する。上方扉(41)は、開位置では、第1レール(R1)だけに支持される。
【0103】
このように、上方扉(41)の重心(C)は、レールに乗っている車輪のうち、両端の車輪の間に常に位置しているので、上方扉(41)は傾くことなく、安定してスライド移動することができる。
【0104】
〈側方扉の開放〉
次に、閉じられた状態の側方扉(46)を開く。ここで、側方扉(46)が閉じられているとき、側方扉(46)は第2シール部材(31a)に押し付けられて、側方扉(46)と第2シール部材(31a)とが密閉している。
【0105】
側方扉(46)が閉じられた状態から、先ず左側方扉(48)を左側の回転軸(A)を中心に回転させて、左側開口(58)を開放する。次に、右側方扉(47)を右側の回転軸(A)を中心に回転させて、右側開口(57)を開放する。これにより、側方開口(56)が完全に開かれた状態になる。
【0106】
〈被験物の搬入〉
次に、被験物(T)を試験室(S)内に搬入する。具体的には、まず、試験装置(1)の外部に設置されたクレーンのワイヤー(吊り具)を被験物(T)に取り付ける。次に、ワイヤーに吊るされた被験物(T)をクレーンで持ち上げ、側方開口(56)の近くまで運ぶ。
【0107】
クレーンで吊り下げられた状態の被験物(T)を試験室構造体(10)の後方に向かって移動させて、右側開口(57)から第1室(S1)に搬入する。このとき、ワイヤーは、右側開口(57)の延長開口部(57b)及び上方開口(51)の突出開口部(53)を通過する。
【0108】
被験物(T)が第1室(S1)の前後方向中央付近に到達すると、被験物(T)を右方向に移動させて、区画壁(37)に近づける。そして、被験物(T)を区画壁(37)の貫通穴に嵌め込み、被験物(T)を区画壁(37)に固定した後に、被験物(T)からワイヤーを外す。
【0109】
被験物(T)の設置が完了すると、ワイヤーを第1室(S1)から出した後、先ず側方扉(46)を移動させて側方開口(56)を閉じる。このとき、側方扉(46)を第2シール部材(31a)に押し付けて、側方扉(46)と第2シール部材(31a)とを密閉する。
【0110】
その後に上方扉(41)を移動させて上方開口(51)を閉じる。上方開口(51)を閉じる場合において、上方扉(41)は、上方開口(51)を覆う閉位置以外の位置から閉位置へ移動するときに、下方へ移動して天板部(35)に近づく。上方扉(41)が天板部(35)に近づくことで、上方扉(41)は、その自重で第1シール部材(35a)に押し付けられて、上方扉(41)と第1シール部材(35a)とが密閉する。これにより、試験室(S)の密閉性が確保される。
【0111】
-試験装置の運転動作-
次に、試験装置(1)の運転動作について説明する。試験室(S)に被験物(T)を搬入した後、第1空気調和装置(21)及び第2空気調和装置(22)の各設定温度及び湿度を決定し、両装置を稼働させる。本実施形態では、第1空気調和装置(21)の温度を第2空気調和装置(22)の温度よりも低く設定する。
【0112】
第1空気調和装置(21)が稼働すると、第1給気口(30a)から冷たい空気が第1室(S1)に流れ込む。第2空気調和装置(22)が稼働すると、第2給気口(30b)から温かい空気が第2室(S2)に流れ込む。
【0113】
このようにして、被験物(T)としてのサッシ窓を挟んで左側及び右側の空気の温度及び湿度を変えることで、サッシ窓の断熱性能や結露性能等の試験を行う。
【0114】
-実施形態1の特徴(1)-
本実施形態の試験室構造体(10)では、上方開口(51)は、第1側板部(31)から第2側板部(32)に向かって延びる。上方開口(51)は、側方開口(56)に連続している。
【0115】
本実施形態の試験室構造体(10)では、本体部(30)の天板部(35)に上方開口(51)が形成されている。上方開口(51)は、側方開口(56)に連続している。この構造では、被験物(T)を工場の天井に設置されたクレーン等で吊り下げた状態で、側方開口(56)を被験物(T)が通過し、上方開口(51)を吊り具が通過して、被験物(T)を試験室(S)に搬入できる。これにより、被験物(T)の重量または形状にかかわらず、被験物(T)を試験室(S)へ容易に搬入できる。
【0116】
-実施形態1の特徴(2)-
本実施形態の扉(40)は、スライドすることによって上方開口(51)を開閉する上方扉(41)を含む。
【0117】
本実施形態の試験室構造体(10)では、上方扉(41)がスライドすることによって、上方開口(51)が開閉される。
【0118】
-実施形態1の特徴(3)-
本実施形態の扉(40)は、上方扉(41)とは別体に形成される。扉(40)は、上下方向に延びる回転軸(A)を中心に回転することによって側方開口(56)を開閉する側方扉(46)を含む。
【0119】
本実施形態の試験室構造体(10)では、側方扉(46)が回転することによって、側方開口(56)が開閉される。
【0120】
-実施形態1の特徴(4)-
本実施形態の上方扉(41)は、平板部(42)と、複数の車輪(W)とを備える。本体部(30)は、天板部(35)に設けられて上方扉(41)がスライドするように車輪(W)を案内するレール(R)を備える。
【0121】
本実施形態の試験室構造体(10)では、天板部(35)に設けられたレール(R)によって、上方扉(41)の車輪(W)が案内される。これにより、上方扉(41)がスライドする。
【0122】
-実施形態1の特徴(5)-
本実施形態のレール(R)は、上方開口(51)を挟んで一直線上に配置される第1レール(R1)と第2レール(R2)とを含む。上方扉(41)は、上方開口(51)を覆う閉位置では、第1レール(R1)及び第2レール(R2)の両方に支持され、上方開口(51)を開く開位置では、第1レール(R1)だけに支持される。
【0123】
本実施形態の試験室構造体(10)では、第1レール(R1)と第2レール(R2)とが上方開口(51)を挟んで一直線上に配置されている。これにより、試験室(S)に被験物(T)を搬入する際、第1レール(R1)と第2レール(R2)との間に吊り具を通過させることができる。
【0124】
-実施形態1の特徴(6)-
本実施形態の上方扉(41)では、一直線上に並んだ3つ以上の前記車輪(W)からなる車輪群(WF)が形成され、車輪群(WF)を構成する車輪(W)は、上方扉(41)が閉位置のときに、第1レール(R1)と第2レール(R2)のそれぞれに少なくとも1つずつの車輪(W)が載り、上方扉(41)が開位置のときに、第1レール(R1)に少なくとも2つの車輪(W)が載るように配置される。
【0125】
本実施形態の試験室構造体(10)では、上方扉(41)が閉位置にある場合と開位置にある場合のどちらの場合においても、2つ以上の車輪(W)が第1レール(R1)又は第2レール(R2)に載っている。これにより、上方扉(41)が安定した状態でスライド移動できる。
【0126】
-実施形態1の特徴(7)-
本実施形態の上方扉(41)の重心は、上方扉(41)が開位置のときに第1レール(R1)に載っている複数の車輪(W)のうち、上方開口(51)に最も近い第2車輪(W2)と上方開口(51)から最も遠い第1車輪(W1)との間に位置する。
【0127】
本実施形態の試験室構造体(10)では、上方扉(41)が開位置にあるときに、上方扉(41)が傾くことなく安定して静止できる。
【0128】
-実施形態1の特徴(8)-
本実施形態の上方開口(51)は、第1レール(R1)及び第2レール(R2)に挟まれた部分が最も狭い。
【0129】
本実施形態の試験室構造体(10)では、上方開口(51)における第1レール(R1)と第2レール(R2)とに挟まれた部分が最も狭い。これにより、上方扉(41)がスライドする過程で、一部の車輪(W)が第1レール(R1)と第2レール(R2)のどちらにも載らない状態の距離を短くできる。
【0130】
-実施形態1の特徴(9)-
本実施形態の上方扉(41)は、上方開口(51)を覆う閉位置以外の位置から閉位置へ移動するときに、下方へ移動して天板部(35)に近づく。
【0131】
本実施形態の試験室構造体(10)では、上方扉(41)が閉位置へ移動する際に、上方扉(41)が天板部(35)に近づくことで上方開口が閉じられる。これにより、試験室(S)の気密性を確保できる。
【0132】
また、本実施形態の試験室構造では、上方扉(41)が上下に移動することによって、上方扉(41)を、閉位置において第1シール部材(35a)と密着する状態と、閉位置以外の位置において第1シール部材(35a)から離れる状態とに切り換えることができる。そのため、閉位置では上方扉(41)を第1シール部材(35a)と密着させて試験室(S)の気密性を確保できる一方、閉位置以外の位置では第1シール部材(35a)から離れた上方扉(41)を比較的小さな力でスムーズに移動させることができる。
【0133】
-実施形態1の特徴(10)-
本実施形態の試験装置(1)は、試験室構造体(10)と、試験室(S)の室内空気を調和する空気調和装置(20)とを備える。
【0134】
本実施形態の試験装置(1)では、空気調和装置(20)によって試験室(S)の内部空気を調和することにより、所望の試験環境を設定できる。
【0135】
-実施形態1の変形例-
〈変形例1〉
本実施形態の試験室構造体(10)では、側方扉(46)は、左右方向にスライド移動してもよい。側方扉(46)は、基本的に実施形態1の上方扉(41)と同様の構造である。
【0136】
具体的には、側方扉(46)は、側方開口(56)の全体を覆う1枚の板部材である。側方扉(46)における本体部(30)側の面の上部には、車輪群が取り付けられている。第1側板部(31)における側方開口(56)の上部には、レールが配置される。側方扉(46)の車輪群は、第1側板部(31)のレールに案内される。
【0137】
側方扉(46)がスライドする構造の場合、上方扉(41)は、左右方向にスライドすることで上方開口(51)を開閉してもよく、回転軸を中心に回転することで上方開口(51)を開閉してもよい。
【0138】
-変形例1の特徴(1)-
本実施形態の扉(40)は、スライドすることによって側方開口(56)を開閉する側方扉(46)を含む。
【0139】
本実施形態の試験室構造体(10)では、側方扉(46)がスライドすることによって、側方開口(56)が開閉される。
【0140】
〈変形例2〉
本実施形態の試験室構造体(10)では、第1シール部材(35a)が上方扉(41)の下面に取り付けられていてもよい。また、第2シール部材(31a)は、側方扉(46)の後面に取り付けられていてもよい。
【0141】
《実施形態2》
実施形態2について説明する。本実施形態の試験装置(1)は、実施形態1の試験装置(1)において、扉(40)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態の扉(40)、及び扉(40)の変更に伴って変更されたレール(R)と開口(50)について、実施形態1と異なる点を説明する。
【0142】
〈レール〉
図10及び図12に示すように、本体部(30)の第1側板部(31)には、前方レール(RF)が配置されている。図11に示すように、前方レール(RF)は、第1側板部(31)の上方に配置される。前方レール(RF)は、第1レール(R1)と第2レール(R2)とを含む。第1レール(R1)と第2レール(R2)は、側方開口(56)の延長開口部(57b)を挟んで左右両側に配置されている。
【0143】
第1レール(R1)及び第2レール(R2)は、3次元的に曲がっている。具体的には、第1レール(R1)及び第2レール(R2)は、一定の高さで左右方向に水平に延びる部分から、右へ向かうにしたがって上方かつ前方に上がり、一段高くなったところで一定の高さで左右方向に水平に延びるように形成されている。
【0144】
第1レール(R1)の一段高くなっている部分の長さは、第2レール(R2)の一段高くなっている部分の長さよりも長い。第1レール(R1)の一段高くなっている部分と、第2レール(R2)の一段高くなっている部分とは、一直線上に並んでいる。第1レール(R1)の一段低くなっている部分と、第2レール(R2)の一段低くなっている部分とは、一直線上に並んでいる。
【0145】
図10及び図12に示すように、本体部(30)の天板部(35)には、後方レール(RB)が配置されている。後方レール(RB)は、天板部(35)の後方に配置される。後方レール(RB)は、第3レール(R3)と第4レール(R4)とを含む。
【0146】
第3レール(R3)は、天板部(35)における第1レール(R1)の後方に配置される。第3レール(R3)は、第1レール(R1)と同じ形状である。第4レール(R4)は、天板部(35)における第2レール(R2)後方に配置される。第4レール(R4)は、第2レール(R2)と同じ形状である。
【0147】
〈開口〉
図13に示したように、本実施形態の側方開口(56)は、右側開口(57)のみで構成される。言い換えると、第1側板部(31)には、左側開口(58)が形成されていない。右側開口(57)の基本的な構成は、実施形態1と同様である。上方開口(51)の構成も、実施形態1と同様である。
【0148】
〈扉〉
図10図13に示すように、扉(40)は、上方開口(51)と側方開口(56)の両方を開閉する1つの扉本体(60)を備える。扉本体(60)は、L字状に折れ曲がった厚板状に形成される。扉本体(60)は、左右方向にスライドする。扉本体(60)は、上方扉部(61)と側方扉部(62)とを備える。
【0149】
上方扉部(61)は、実施形態1の上方扉に相当する部分である。上方扉部(61)は、スライドすることで上方開口(51)を開閉する。上方扉部(61)は、上方車輪群(図示省略)を備える。上方車輪群は、実施形態1の上方扉(41)の前側の車輪群と同様の構成である。上方車輪群は、後方レール(RB)の上を左右方向に移動するように、上方扉部(61)における後方レール(RB)に対応する位置に取り付けれている。
【0150】
側方扉部(62)は、実施形態1の側方扉に相当する部分である。側方扉部(62)は、スライドすることで側方開口(56)を開閉する。側方扉部(62)は、側方車輪群(図示省略)を備える。側方車輪群は、実施形態1の上方扉(41)の前側の車輪群と同様の構成である。側方車輪群は、前方レール(RF)の上を左右方向に移動するように、側方扉部(62)における前方レール(RF)に対応する位置に取り付けれている。
【0151】
被験物(T)を試験装置(1)に搬入する際は、扉本体(60)の開放、被験物(T)の搬入の順序で行う。扉本体(60)の開放は、実施形態1の上方扉(41)の開放と同様に行う。本実施形態では、扉本体(60)は、上方扉部(61)と側方扉部(62)とが一体になっているので、一つのスライド動作で開口(50)を開閉できる。扉本体(60)が開放した後の被験物(T)の搬入は、実施形態1と同じ動作である。
【0152】
-実施形態2の特徴(1)-
本実施形態の扉(40)は、上方開口(51)と側方開口(56)の両方を開閉する1つの扉本体(60)を備える。
【0153】
本実施形態の試験室構造体(10)では、1つの扉本体(60)によって、上方開口(51)及び側方開口(56)を一度にまとめて開閉できる。
【0154】
-実施形態2の特徴(2)-
本実施形態の扉本体(60)は、スライドすることによって上方開口(51)及び側方開口(56)を開閉する。
【0155】
本実施形態の試験室構造体(10)では、扉本体(60)をスライドさせることで、上方開口(51)及び側方開口(56)を一つの動作で開閉できる。
【0156】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0157】
上記各実施形態の試験装置(1)において、被験物(T)は、サッシ窓以外であってもよい。例えば、被験物(T)は、空気調和装置の室外機や自動車のエンジン等でもよい。
【0158】
上記各実施形態の試験室構造体(10)において、被験物の種類によって区画壁(37)はなくてもよい。
【0159】
上記実施形態1の上方扉(41)の固定部(43,44)は、上方扉(41)に設けられていなくてもよい。その場合、上方扉(41)の平板部(42)の下面に直接取り付けてもよい。
【0160】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、及びその他の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0161】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0162】
以上説明したように、本開示は、試験室構造体、及び試験装置について有用である。
【符号の説明】
【0163】
10 試験室構造体
20 空気調和装置
30 本体部
31 第1側板部
32 第2側板部
35 天板部
40 扉
41 上方扉
42 平板部
46 側方扉
50 開口
51 上方開口
56 側方開口
60 扉本体
T 被験物
S 試験室
A 回転軸
R レール
R1 第1レール
R2 第2レール
W 車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13