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特許7061158雷情報検索サーバ、および配電線雷保護支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】雷情報検索サーバ、および配電線雷保護支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20220420BHJP
   G01R 31/08 20200101ALI20220420BHJP
【FI】
G06Q50/06
G01R31/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020104605
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021197017
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2020-06-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔刊行物による公開〕 論文公知日 :令和元年8月23日 刊行物名 :令和元年電気学会電力・エネルギー部門論文集(論文番号274),第8-3-5、8-3-6頁
(73)【特許権者】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000130835
【氏名又は名称】株式会社サンコーシヤ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智之
(72)【発明者】
【氏名】小柳 遼平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐一
(72)【発明者】
【氏名】辻 大樹
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-333453(JP,A)
【文献】特開2006-266942(JP,A)
【文献】特開2009-270981(JP,A)
【文献】特開2007-017203(JP,A)
【文献】佐藤 智之,LLSデータを用いた配電線雷害対策支援手法,技術総合誌OHM,日本,株式会社オーム社,2017年06月05日,第104巻,第6号,第22-25頁
【文献】高橋 明久 他,冬季雷を考慮した高圧架空配電線路の雷リスクアセスメントに関する検討,平成21年 電気学会全国大会講演論文集 [CD-ROM] 平成21年電気学会全国大会講演論文集 (第7分冊),2009年03月19日,第228-229頁
【文献】佐藤 智之 他,東北地方における配電線雷ハザードマップの検討(2009-2014年),平成28年 電気学会全国大会講演論文集 [CD-ROM] 平成28年電気学会全国大会講演論文集 (第7分冊),2016年03月18日,第211-212頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G01R 31/08-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信デバイスが取得した情報やデータおよび、各種プログラムを格納するメモリと、
前記メモリから前記各種プログラムを読み込んで実行するプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
指定された、雷事故による区間停電を起こしたフィーダの情報および期間を取得する処理と、
前記指定された期間における、落雷位置の情報を含む落雷情報をLLSから取得する処理と、
前記フィーダの情報に基づいて配電設備データベースから抽出された配電設備のうち、前記落雷位置に最も近い配電設備を特定する処理と、
前記落雷位置に最も近い配電設備の情報を出力する処理と、
下記式(1)によって、雷ハザードHを算出し、当該雷ハザードHをマップ表示する処理と、
を実行する、雷情報検索サーバ。
【数1】

ここで、Lsは夏季雷撃数(stroke)、Lwは冬季雷撃数(stroke)、α’は雷事故率比(冬季/夏季)、Yは年数(年)をそれぞれ表す。
【請求項2】
請求項1において、
前記プロセッサは、さらに、
指定期間および指定地域の雷撃情報にもとづいて、前記指定地域における複数の分割地域の雷撃頻度を算出する処理と、
前記雷撃頻度を出力する処理と、
を実行する雷情報検索サーバ。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記プロセッサは、さらに、
指定期間および指定地域の、雷事故データと、雷撃頻度と、電柱数とを取得し、配電線雷事故密度Ddと、雷撃密度Dsと、電柱密度Dpとを算出する処理と、
前記配電線雷事故密度Dd、前記雷撃密度Ds、および前記電柱密度Dpを用いて、雷事故率αを算出する処理と、
を実行する雷情報検索サーバ。
【請求項4】
通信デバイスが取得した情報やデータおよび、各種プログラムを格納するメモリと、
前記メモリから前記各種プログラムを読み込んで実行するプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
指定された、雷事故による区間停電を起こしたフィーダの情報および期間を取得する処理と、
前記指定された期間における、落雷位置の情報を含む落雷情報をLLSから取得する処理と、
前記フィーダの情報に基づいて配電設備データベースから抽出された配電設備のうち、前記落雷位置に最も近い配電設備を特定する処理と、
前記落雷位置に最も近い配電設備の情報を出力する処理と、
下記式(2)によって、雷リスクRを算出し、当該雷リスクRをマップ表示する処理と、
を実行する、雷情報検索サーバ。
【数2】

ここで、Pは電柱基数(本)、Lは雷撃数(stroke)、Bは高構造物数(箇所)をそれぞれ表す。
【請求項5】
通信デバイスが取得した情報やデータおよび、各種プログラムを格納するメモリと、
前記メモリから前記各種プログラムを読み込んで実行するプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
指定された、雷事故による区間停電を起こしたフィーダの情報および期間を取得する処理と、
前記指定された期間における、落雷位置の情報を含む落雷情報をLLSから取得する処理と、
前記フィーダの情報に基づいて配電設備データベースから抽出された配電設備のうち、前記落雷位置に最も近い配電設備を特定する処理と、
前記落雷位置に最も近い配電設備の情報を出力する処理と、
下記式(1)によって、雷ハザードHを算出する処理と、
下記式(2)によって、雷リスクRを算出する処理と、
各所定の領域に関して、前記雷ハザードHと雷リスクRとの和を求め、当該和に基づいて、マップ表示する処理と、
実行する、雷情報検索サーバ。
【数1】

【数2】

ここで、Lsは夏季雷撃数(stroke)、Lwは冬季雷撃数(stroke)、α’は雷事故率比(冬季/夏季)、Yは年数(年)をそれぞれ表し、Pは電柱基数(本)、Lは雷撃数(stroke)、Bは高構造物数(箇所)をそれぞれ表す。
【請求項6】
通信デバイスが取得した情報やデータおよび、各種プログラムを格納するメモリと、
前記メモリから前記各種プログラムを読み込んで実行するプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
指定された、雷事故による区間停電を起こしたフィーダの情報および期間を取得する処理と、
前記指定された期間における、落雷位置の情報を含む落雷情報をLLSから取得する処理と、
前記フィーダの情報に基づいて配電設備データベースから抽出された配電設備のうち、前記落雷位置に最も近い配電設備を特定する処理と、
前記落雷位置に最も近い配電設備の情報を出力する処理と、
下記式(1)によって、雷ハザードHを算出する処理と、
前記雷ハザードHの値に基づいて、複数の所定の地域を複数のグループに分け、当該グループに対して雷対策の優先度を割り当てる処理と、
前記優先度が分かるように、前記複数のグループをマップ表示する処理と、
を実行する、雷情報検索サーバ。
【数1】

ここで、Lsは夏季雷撃数(stroke)、Lwは冬季雷撃数(stroke)、α’は雷事故率比(冬季/夏季)、Yは年数(年)をそれぞれ表す。
【請求項7】
請求項1からの何れか1項に記載の雷情報検索サーバと、
雷位置を標定するLLSと、
複数のフィーダにおける複数の配電設備の情報を格納する配電設備データベースと、
過去の雷事故の情報を、少なくとも発生日時および発生位置に対応付けて格納する雷事故データベースと、
前記検索サーバに指定期間、指定地域、および区間停電を起こしたフィーダの情報を送信し、前記検索サーバから情報を受信して表示装置の表示画面上に表示する、複数の端末装置と、
を備える配電線雷保護支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷情報検索サーバ、および配電線雷保護支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
落雷による被害の把握や、迅速な復旧作業のための被害場所の特定などのため、落雷位置を標定するシステムがある。よく知られている方法は、落雷により放出された電磁波を検知するセンサ(観測点)を複数設置し、電磁波が発生した方向(MDF方式)や、電磁波を検知した時間差などを利用して落雷位置を標定する方法(TOA方式)である。落雷位置標定方式では、落雷により抄出された電磁波を受信した観測点からの観測データを全て使って落雷位置を標定している。例えば、特許文献1は、比較的精度良く落雷位置を標定するLLS(雷位置標定システム)について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-85965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、LLSによって標定された落雷の情報(日時、位置、電流等の情報)は今まで充分に活用されていなかった。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、LLSによって標定された落雷の情報を活用するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明による検索サーバは、通信デバイスが取得した情報やデータおよび、各種プログラムを格納するメモリと、メモリから各種プログラムを読み込んで実行するプロセッサと、を備える。そして、当該プロセッサは、指定された、雷事故による区間停電を起こしたフィーダの情報および期間を取得する処理と、指定された期間における落雷情報をLLSから取得する処理と、フィーダの情報に基づいて配電設備データベースから抽出された配電設備のうち、落雷位置に最も近い配電設備を特定する処理と、落雷位置に最も近い配電設備の情報を出力する処理と、を実行する。
【0006】
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本発明の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本発明の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味に於いても限定するものではないことを理解する必要がある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、LLSによって標定された落雷の情報を有意義に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】配電用変電所のフィーダ内で発生した落雷による再閉路成功事故時の探査について説明するための図である。
図2】フィーダの状態を示す図である。図2Aは、再送電時に事故点が除去されている場合(F.O.した配電設備が復帰状態)であって、再閉路成功となって当初の事故点が不明な状態を示している。図2Bは、再送電時に事故点が除去されていない場合(F.O.した配電設備が地絡または短絡状態)であって、再閉路失敗となって事故区間が自動ロック(停電)された状態を示している。
図3】本発明の実施形態による配電線雷保護支援システム1の概略構成を示す機能ブロック図である。
図4】本実施形態による雷情報検索サーバ10の内部構成例を示す図である。
図5】本発明の実施形態による落雷検索処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
図6】本発明の実施形態の雷撃頻度算出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の実施形態による雷撃事故率算出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
図8】本発明の実施形態による雷ハザード算出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
図9】本発明の実施形態による雷リスク算出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
図10】本発明の実施形態による雷ハザード算出処理および雷リスク算出処理のマップ表示を示す図である。
図11】本発明の実施形態による雷害対策区分析機能のマップ表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、LLSで標定された雷位置の情報を活用すべく、落雷位置に最も近い配電設備であって、落雷によって停電を起こした、フィーダにおける所定の区間の配電設備を特定する。
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施形態と実装例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0011】
本実施形態では、当業者が本発明を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本発明の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0012】
更に、本発明の実施形態は、後述されるように、汎用コンピュータ上で稼動するソフトウェアで実装しても良いし専用ハードウェア又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実装しても良い。
【0013】
以下では「各種プログラム(例えば、落雷検索プログラム等)」を主語(動作主体)として本発明の実施形態における各処理について説明を行うが、プログラムはプロセッサ(中央処理装置)によって実行されることで定められた処理をメモリ及び通信デバイスを用いながら行うため、プロセッサを主語とした説明としてもよい。
【0014】
<フィーダ検索を用いた事故点の探査について:本発明の概要(思想)>
図1は、配電用変電所のフィーダ内で発生した落雷による再閉路成功事故時の探査について説明するための図である。
【0015】
現状では、配電系統におけるあるフィーダ内のある配電設備(例えば、電柱など)付近で雷撃が発生し、その雷撃によってその配電設備が設置されている区間が一時的に停電となった場合、再閉路処理が行われる。再閉路成功となった場合、事故区間の特定ができないため当該フィーダ全域の巡視点検により事故点探査を行っている。特に、直ぐに再送電可能(直ぐに復帰)となったときには、フィーダのどこで事故が発生し、どの配電設備が影響を受けたかを特定することが困難となってしまう。図2Aは、再送電時に事故点が除去されている場合(F.O.した配電設備が復帰状態)であって、再閉路成功となって当初の事故点が不明な状態を示している。このように、再閉路成功事故の場合は、事故区間が分らないため、フィーダ全区域で巡視(線路途中に事故点表示器などがある場合もある)しなければならず非常に作業の負担が掛かっていた。一方、図2Bは、再送電時に事故点が除去されていない場合(F.O.した配電設備が地絡または短絡状態)であって、再閉路失敗となって事故区間が自動ロック(停電)された状態を示している。このような場合には、特定の区間(図2Bでは、第6区間)のみがロックするため、事故区間だけの巡視を行えばよいことになる。しかし、この場合でも該当区間の全ての配電設備をチェックしなければならず、再閉路成功の場合よりは作業負担が軽減されるものの、さらなる作業負担の軽減が望まれている。
【0016】
そこで、本発明は、フィーダ検索機能を活用し、このような課題を解決するための技術を提案する。例えば、本発明によれば、オペレータ(ユーザ)が検索する配電用変電所のフィーダ名(停電が発生したフィーダは停電日時とフィーダ名を特定可能)を選択(指定)することにより、当該フィーダの範囲にある電柱を地図上に表示するとともに検索期間内の落雷位置情報をプロットすることが可能となる。そして、この情報を基に巡視優先エリアの選定(絞込み)に活用することができるようになる。
【0017】
<配電線雷保護支援システムの構成例>
図3は、本発明の実施形態による配電線雷保護支援システム1の概略構成を示す機能ブロック図である。配電線雷保護支援システム1は、オペレータによって指示入力された項目に基づいて対応する雷情報を検索する雷情報検索サーバ10と、落雷位置を標定し雷情報として提供するLLS20と、オペレータによって操作され、雷情報検索サーバ10に対して検索のための項目(情報)を送信する複数の端末装置30_1から30_nと、変電所から延設される複数のフィーダとそれに接続された配電設備(例えば、電柱など)の情報(設備種別、設置位置、付属設備(例えば、ガイシの種類など)、設備(電柱)につながれている電線の太さなどの情報)を格納する配電設備DB40と、LLSが標定した過去の雷撃情報のうち、事故につながった雷撃の情報(位置、日時、電流値など)を格納する雷事故DB50と、を備え、それらが相互にネットワーク60を介して接続されている。ネットワーク60は一例としてインターネットを用いても良いし、専用線を用いても良い。
【0018】
<検索サーバの構成例>
図4は、本実施形態による雷情報検索サーバ10の内部構成例を示す図である。雷情報検索サーバ10は、例えば、必要な演算処理及び制御処理等を行う中央処理装置(プロセッサ)100と、データの入出力を行うための入出力装置110と、中央処理装置100での処理に必要なプログラムを格納するプログラムメモリ120と、中央処理装置100での処理対象となるデータまたは処理後のデータや地図情報などを格納する記憶装置130と、外部との通信を実行する通信デバイス140と、各種データや情報を一時的に格納するメモリ150と、を備えている。
【0019】
入出力装置110は、データを表示するための表示装置111やプリンタ(図示せず)等で構成される出力デバイスと、表示されたデータに対してメニューを選択するなどの操作を行うためのキーボード112、マウスなどのポインティングデバイス113と、を有している。
【0020】
プログラムメモリ120は、落雷検索処理を実行する落雷検索プログラム121と、雷撃頻度を算出する雷撃頻度算出プログラム122と、雷事故率を算出する雷事故率算出プログラム123と、雷ハザードを算出する雷ハザード算出プログラム124と、雷リスクを算出する雷リスク算出プログラム125と、を格納している。各処理プログラムは、プログラムコードとしてプログラムメモリ120に格納されており、中央処理装置100が各プログラムコードを実行することによって各処理が実現される。
【0021】
なお、記憶装置130は、ネットワークを介して遠隔的に配置されているストレージシステムであってもよい。また、記憶装置130が、図3に示される配電設備DB40や雷事故DB50に含まれる情報あるいはデータの少なくとも一部を格納していてもよい。
【0022】
以上に述べた処理プログラム・データ・各プログラム等は、CD-ROM、DVD-ROM、MO、フロッピー(登録商標)ディスク、USBメモリ等の種々の記録媒体に格納して提供することもできる。
【0023】
<落雷検索処理の詳細>
図5は、本発明の実施形態による落雷検索処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0024】
(i)ステップ101
オペレータは、端末装置30_1から30_n(以下、端末装置30と称することとする)を操作して、停電が発生した時刻(停電発生時刻)を落雷時刻と推定し、停電時刻±所定時間(例えば、1時間)の期間を指定(指定期間)し、当該指定期間の情報を雷情報検索サーバ10に送信する。
雷情報検索サーバ10の通信デバイス140は、各端末装置30から送信されてきた指定期間の情報をメモリ150に格納する。
【0025】
(ii)ステップ102
オペレータは、さらに、端末装置30_1から30_n(以下、端末装置30と称することとする)を操作して、雷事故により区間停電を起こしたフィーダの情報(例えば、フィーダ名などのフィーダを一意に特定・識別する情報)を指定(端末装置30に表示されたGUI上でフィーダ名が選択できるようになっている場合には、オペレータの選択動作によって指定)し、当該フィーダの情報を雷情報検索サーバ10に送信する。
雷情報検索サーバ10の通信デバイス140は、各端末装置30から送信されてきたフィーダの情報をメモリ150に格納する。
【0026】
(iii)ステップ103
落雷検索プログラム121は、通信デバイス140を用いて、配電設備DB(データベース)40にアクセスし、受信した処理対象のフィーダ名と配電設備DB40を照合して、当該処理対象のフィーダに含まれる配電設備の情報(設備種別や設置位置など)を取得する。
【0027】
(iv)ステップ104
落雷検索プログラム121は、ステップ103で抽出した配電設備を地図(記憶装置130から取得された情報)上に識別できるように配置し、その情報を対象の端末装置30に送信する。端末装置30は、雷情報検索サーバ10で抽出された配電設備が識別できるように地図を表示装置111の画面上に表示する。
【0028】
(v)ステップ105
落雷検索プログラム121は、まず、指定期間内における落雷情報(落雷日時、落雷位置、電流値、χ2乗値(落雷標定信頼度を示す情報であって、値が小さい程信頼度が高い情報である)多重度など)をLLS20から取得する。そして、落雷検索プログラム121は、抽出した各配電設備の位置の情報と、LLS20から取得した落雷位置の情報とからそれぞれの距離を算出し、落雷位置に最も近い配電設備を特定する。
【0029】
(vi)ステップ106
落雷検索プログラム121は、ステップ105で特定した配電設備情報(配電設備の位置、種別、付属設備等の情報を含む)と、落雷情報(落雷日時、落雷位置、電流値、χ2乗値(落雷標定信頼度を示す情報であって、値が小さい程信頼度が高い情報である)多重度など)とを関連付ける。
【0030】
(vii)ステップ107
落雷検索プログラム121は、関連付けた配電設備情報と落雷データを端末装置30に送信する。これらの情報を受信した端末装置30は、落雷位置を地図上に表示すると共に、落雷位置に最も近い配電設備を他の配電設備から区別できるように地図上に表示する。
【0031】
なお、表示される地図は、落雷データを保持したまま拡大・縮小・マウスドラッグによる地図中心の移動を行うことができるようにしてもよい。また、地図上の情報表示として、県境、高速道路、河川、鉄道、電柱(線路名+電柱番号)、発変電所、過去の配電線事故情報を設定するようにしてもよい。
【0032】
<雷撃頻度算出処理の詳細>
本実施形態による配電線雷保護支援システム1は、ある地域における雷撃頻度を算出する機能を有する。図6は、本発明の実施形態の雷撃頻度算出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0033】
(i)ステップ201
オペレータは、端末装置30_1から30_n(以下、端末装置30と称することとする)を操作して、雷撃頻度を算出する対象の、期間(例えば、年度や2018年1月1日から2018年3月31日などの特定の期間の指定)および地域を指定し、これらの情報を雷情報検索サーバ10に送信する。なお、地域指定に関しては、予め用意された地域の情報のうち、全ての地域を指定するようにしてもよいし、一部を指定するようにしてもよい。この地域情報は、メッシュデータとして登録されていてもよい(例えば、メッシュ間隔を、1/2、1/4、1/16、1/32、1/64、1/128度に設定する)。
【0034】
雷情報検索サーバ10の通信デバイス140は、各端末装置30から送信されてきた雷撃頻度を算出する対象の期間および地域の情報をメモリ150に格納する。
【0035】
(ii)ステップ202
雷撃頻度算出プログラム122は、ステップ201で取得した対象の期間および地域の情報をメモリ150から読み出し、通信デバイス140を介してLLS(雷位置標定システム)20にアクセスして当該期間および地域における雷撃情報を取得する。なお、LLS20にアクセスして雷撃情報を取得する他、雷撃情報を蓄積して格納するデータベースを別途設け、雷情報検索サーバ10が当該データベースに直接アクセスして雷撃情報を取得するようにしてもよい。
【0036】
(iii)ステップ203
雷撃頻度算出プログラム122は、ステップ202で取得した雷撃情報に含まれる指定期間中の雷撃数を指定地域の各メッシュに対して割り当てて、各メッシュの雷撃頻度とする。また、雷撃頻度算出プログラム122は、雷撃数を割り当てたメッシュのうち、雷撃数が最大となるメッシュから最小となるメッシュにk段階(例えば、5段階)の色(例えば、濃淡)を割り当てる。
【0037】
(iv)ステップ204
雷撃頻度算出プログラム122は、ステップ203で各メッシュに割り当てた色の情報を、通信デバイス140を用いて、端末装置30に送信する。
端末装置30は、地図上の各メッシュに対して色情報を重畳し、算出された雷撃情報を地図上に色表示(表示装置111の画面上に表示)する。
【0038】
<雷事故率算出処理>
本実施形態による配電線雷保護支援システム1は、ある地域における雷撃事故率を算出する機能を有する。図7は、本発明の実施形態による雷撃事故率算出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0039】
(i)ステップ301
オペレータは、端末装置30_1から30_n(以下、端末装置30と称することとする)を操作して、雷事故率を算出する対象の、期間(例えば、年度や2018年1月1日から2018年3月31日などの特定の期間の指定)および地域(例えば、地方単位、県単位、市単位、営業所単位など)を指定し、これらの情報を雷情報検索サーバ10に送信する。
【0040】
雷情報検索サーバ10の通信デバイス140は、各端末装置30から送信されてきた雷事故率を算出する対象の期間および地域の情報をメモリ150に格納する。
【0041】
(ii)ステップ302
雷事故率算出プログラム123は、ステップ301で取得した対象の期間および地域の情報をメモリ150から読み出し、通信デバイス140を介して雷事故DB50にアクセスして当該期間および地域における雷事故データ(過去の雷事故データ)を取得する。なお、雷事故データは、例えば、雷事故の発生時刻、雷事故の発生位置、雷事故に関連する配電線の線路名および当該線路における電柱の識別情報(例えば、電柱番号)などのデータを含んでいる。
【0042】
(iii)ステップ303
雷事故率算出プログラム123は、ステップ302で取得した過去の雷事故データに基づいて、各メッシュについて、配電線雷事故密度Dd=雷事故数/メッシュ面積を算出する。
【0043】
(iv)ステップ304
ステップ301で取得した対象の期間および地域について、雷撃頻度算出プログラム122によって既に雷撃頻度が算出され、メモリ150や記憶装置130に保持されている場合には、雷事故率算出プログラム123は、雷撃頻度をメモリ150あるいは記憶装置130から読み込む。一方、雷撃頻度がまだ算出されていない場合には、雷事故率算出プログラム123は、ステップ301で取得した対象の期間および地域の情報をメモリ150から読み出し、雷撃頻度算出プログラム122に当該対象の期間および地域について雷撃頻度を算出するようにリクエストする。そして、雷事故率算出プログラム123は、雷事故率算出プログラム123から、対応の雷撃頻度を取得する。
【0044】
(v)ステップ305
雷事故率算出プログラム123は、ステップ304で取得した雷撃頻度の情報を用いて、各メッシュについて、雷撃密度Ds=雷撃頻度/メッシュ面積を算出する。
【0045】
(vi)ステップ306
雷事故率算出プログラム123は、ステップ301で取得した対象の期間および地域の情報をメモリ150から読み出し、通信デバイス140を介して配電設備DB40にアクセスして当該期間および地域における電柱数の情報を取得する。
【0046】
(vii)ステップ307
雷事故率算出プログラム123は、ステップ306で取得した電柱数の情報を用いて、各メッシュについて、電柱密度Dp=電柱数/メッシュ面積を算出する。
【0047】
(viii)ステップ308
雷事故率算出プログラム123は、ステップ303、305、および307でそれぞれ算出したDd、Ds、およびDpを用いて、各メッシュについて、雷事故率α=Dd/(Ds×Dp)を算出する。
【0048】
(ix)ステップ309
雷事故率算出プログラム123は、ステップ308で求めた各メッシュの雷事故率αを、通信デバイス140を用いて、端末装置30に送信する。
【0049】
端末装置30は、受信した各メッシュの雷事故率αを表示装置111の画面上に表示する。雷事故率αは、各メッシュに重畳してその数値を表示してもよいし、各メッシュの識別情報に対応してその数値を一覧表示するようにしてもよい。
【0050】
<雷ハザード解析>
本実施形態による配電線雷保護支援システム1は、ある地域における雷ハザードを算出する機能を有する。例えば、東北地方における配電線雷事故率は、夏季よりも冬季の方が高い(約3倍高い)が、冬季雷撃数に雷事故率比(冬季/夏季)を乗じた指標を雷ハザードとする。この雷ハザードをマップ化(図10A)することにより、配電線の耐雷設計に反映することが可能となる。
【0051】
単位面積(1メッシュ(1km))当たりの雷ハザードH(回・年/km)は、下記式(1)で表すことができる。
【数1】
ここで、Lsは夏季雷撃数(stroke)、Lwは冬季雷撃数(stroke)、α’は雷事故率比(冬季/夏季)、Yは年数(年)をそれぞれ表している。
【0052】
図8は、本発明の実施形態による雷ハザード算出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0053】
(i)ステップ401
オペレータは、端末装置30_1から30_n(以下、端末装置30と称することとする)を操作して、雷ハザードを算出する対象の、期間(例えば、年度や2018年1月1日から2018年3月31日などの特定の期間の指定)および地域(例えば、地方単位、県単位、市単位、営業所単位など)を指定し、これらの情報を雷情報検索サーバ10に送信する。
【0054】
雷情報検索サーバ10の通信デバイス140は、各端末装置30から送信されてきた雷ハザードを算出する対象の期間および地域の情報をメモリ150に格納する。
【0055】
(ii)ステップ402
雷ハザード算出プログラム124は、ステップ401で取得した対象の期間および地域の情報をメモリ150から読み出し、通信デバイス140を介してLLS(雷位置標定システム)20にアクセスして当該期間および地域における雷撃情報を取得する。なお、LLS20にアクセスして雷撃情報を取得する他、雷撃情報を蓄積して格納するデータベースを別途設け、雷情報検索サーバ10が当該データベースに直接アクセスして雷撃情報を取得するようにしてもよい。
【0056】
(iii)ステップ403
雷ハザード算出プログラム124は、ステップ402で取得した雷撃情報から夏季雷撃数Lsおよび冬季雷撃数Lwを取得する。
【0057】
(iv)ステップ404
ステップ401で取得した対象の期間および地域について、雷事故率算出プログラム123によって既に夏季雷事故率または/および冬季雷事故率が算出され、メモリ150や記憶装置130に保持されている場合には、雷ハザード算出プログラム124は、夏季雷事故率または/および冬季雷事故率をメモリ150あるいは記憶装置130から読み込む。一方、夏季雷事故率または/および冬季雷事故率がまだ算出されていない場合には、雷ハザード算出プログラム124は、ステップ401で取得した対象の期間および地域の情報をメモリ150から読み出し、雷事故率算出プログラム123に当該対象の期間および地域について夏季雷事故率または/および冬季雷事故率を算出するようにリクエストする。そして、雷ハザード算出プログラム124は、雷ハザード算出プログラム124から、夏季雷事故率または/および冬季雷事故率を取得する。
【0058】
(v)ステップ405
雷ハザード算出プログラム124は、ステップ404で取得した夏季雷事故率および冬季雷事故率を用いて、雷事故率比α’(冬季雷事故率/夏季雷事故率)を算出する。
【0059】
(vi)ステップ406
雷ハザード算出プログラム124は、ステップ401で取得した対象の期間の情報をメモリ150から読み出し、当該期間における年数Yの情報を取得する。
【0060】
(vii)ステップ407
雷ハザード算出プログラム124は、ステップ403、405、および406でそれぞれ取得または算出したLs、Lw、α’およびYを用いて、各メッシュについて、雷ハザードH=(Ls+Lw×α’)×Y/kmを算出する。
【0061】
(viii)ステップ408
雷ハザード算出プログラム124は、ステップ407で求めた各メッシュの雷ハザードHを、通信デバイス140を用いて、端末装置30に送信する。
【0062】
端末装置30は、受信した各メッシュの雷ハザードHを表示装置111の画面上に表示する。図10Aは、式(1)によって算出した雷ハザードHのマップ表示を示す図である。この雷ハザードマップ表示は、例えば、所定の範囲の地域(例えば、東北地方)の各単位面積における雷ハザードHの最大値を100として黒で表し、最大値に対して20%ごとに低い値を示す地域を段階的に色が異なるように(例えば、黒→濃いグレー→薄いグレー→・・・→白)状況を表示する。これにより、雷ハザードHが高い地域を一目瞭然にしている。
【0063】
<雷リスク解析>
本実施形態による配電線雷保護支援システム1は、ある地域における雷のリスクを評価する指標である雷リスクを算出する機能を有する。
【0064】
雷リスクは、上記雷ハザードに対する雷被害の大きさと発生頻度、各種対策による被害低減効果を評価する指標として用いることができる。例えば、東北地方は、夏季に雷が多い地域と、日本海側のように冬季に雷が多い地域が混在しており、年間を通じて雷が多く発生する。特に、冬季雷は、夏季雷と比べて雷雲底の高度が低いため、アンテナ鉄塔等の地表面突起物で初期電界が強くなり、上向きの雷放電路となることが多い。そのため、エネルギーが非常に大きい落雷が高構造物(高さ20m以上の構造物)に集中する可能性があり、逆流雷による配電設備被害が懸念される。そこで、本発明では、冬季雷による高構造物への落雷による配電線への逆流雷リスクを考慮して、メッシュ面積(km)当たりの雷リスクRを式(2)のように算出する。
【数2】
ここで、Pは電柱基数(本)、Lは雷撃数(stroke)、Bは高構造物数(箇所)をそれぞれ表している。
【0065】
(i)ステップ501
オペレータは、端末装置30_1から30_n(以下、端末装置30と称することとする)を操作して、雷リスクを算出する対象の、期間(例えば、年度や2018年1月1日から2018年3月31日などの特定の期間の指定)および地域(例えば、地方単位、県単位、市単位、営業所単位など)を指定し、これらの情報を雷情報検索サーバ10に送信する。
【0066】
雷情報検索サーバ10の通信デバイス140は、各端末装置30から送信されてきた雷リスクを算出する対象の期間および地域の情報をメモリ150に格納する。
【0067】
(ii)ステップ502
雷リスク算出プログラム125は、ステップ501で取得した対象の地域の情報をメモリ150から読み出し、通信デバイス140を介して配電設備DB40にアクセスして当該地域における電柱基数Pの情報を取得する。
【0068】
(iii)ステップ503
雷リスク算出プログラム125は、ステップ501で取得した対象の期間および地域の情報をメモリ150から読み出し、通信デバイス140を介してLLS(雷位置標定システム)20にアクセスして当該期間および地域における雷撃数Lを取得する。なお、LLS20にアクセスして雷撃数Lを取得する他、雷撃情報を蓄積して格納するデータベースを別途設け、雷情報検索サーバ10が当該データベースに直接アクセスして雷撃数Lを取得するようにしてもよい。
【0069】
(iv)ステップ504
雷リスク算出プログラム125は、ステップ501で取得した対象の期間および地域の情報をメモリ150から読み出し、通信デバイス140を介して配電設備DB40にアクセスして当該期間および地域における高構造物数Bの情報を取得する。
【0070】
(v)ステップ505
雷リスク算出プログラム125は、ステップ502、503、および504でそれぞれ算出したP、L、およびBを用いて、各メッシュについて、雷リスクR=P×L×B/kmを算出する。
【0071】
(vi)ステップ506
雷リスク算出プログラム125は、ステップ505で求めた各メッシュの雷リスクRを、通信デバイス140を用いて、端末装置30に送信する。
【0072】
端末装置30は、受信した各メッシュの雷リスクRを表示装置111の画面上に表示する。図10Bは、式(2)によって算出した雷リスクRのマップ表示を示す図である。この雷リスクマップ表示は、上記雷ハザードマップ表示(図10A)と同様に、例えば、所定の範囲の地域(例えば、東北地方)の各単位面積における雷リスクRの最大値を100として黒で表し、最大値に対して20%ごとに低い値を示す地域を段階的に色が異なるように(例えば、黒→濃いグレー→薄いグレー→・・・→白)状況を表示する。これにより、雷リスクRが高い地域を一目瞭然にしている。
【0073】
また、図10Cは、雷ハザードHと雷リスクを重ね合せたマップである。図10Cのマップデータは、例えば、各地域(各メッシュ)において、対応する雷ハザードHと雷リスクRとの和を求め、その和の最大値を100として黒で表し、最大値に対して20%ごとに低い値を示す地域を段階的に色が異なるように(例えば、黒→濃いグレー→薄いグレー→・・・→白)状況を表示する。これにより、雷ハザードと雷リスクとの総合的な観点から雷対策が必要な地域を判断できるようになる。
【0074】
<雷害対策区分析機能>
本実施形態による配電線雷保護支援システム1は、さらに、雷害対策優先度を見える化する雷害対策区分析機能を有する。
雷害対策区分析機能は、ハザードマップ表示の粒度を下げ、例えば、所定の地域において、雷ハザードHの上位20%の値を取るメッシュを優先度「高」に設定して黒で表示し、雷ハザードHの上位21%から70%の値を取るメッシュを優先度「中」に設定してグレーで表示し、雷ハザードHの上位71%から100%(下位30%)の値を取るメッシュを優先度「低」に設定して白で表示する機能である。表示範囲は、例えば、大領域(東北地方全体)、中領域(支社管轄エリア毎)、小領域(各電力センターの管轄エリア毎)等とすることができる。
【0075】
図11は、当該雷害対策区分析機能によるマップ表示を示す図である。図11Aは、大領域マップ表示の例を示す図である。図11Bは、中領域マップ表示の例を示す図である。図11Cは、小領域マップ表示の例を示す図である。このように、雷害対策優先度を例えば3段階(任意の段階数に分けることが可能:ただし、雷ハザードマップ表示よりも粒度は粗くする)で評価することにより、これを指針として雷対策を取ることができるため、効果的に雷対策を打つことできると共に、作業員などのリソースを効率よく使用することが可能となる。
【0076】
<まとめ>
(i)本発明の実施形態による雷情報検索サーバは、指定された(端末装置30を操作するオペレータによって指定される)、雷事故による区間停電を起こしたフィーダの情報および期間を取得し、指定された期間における落雷情報をLLSから取得し、フィーダの情報に基づいて配電設備データベースから抽出された配電設備のうち、落雷位置に最も近い配電設備を特定する。そして、この落雷位置に最も近い配電設備の情報は端末装置30に送信され、オペレータに提示される。このようにすることにより、落雷位置に最も近い配電設備(電柱)を特定することができるので、落雷による停電後のフィーダ巡視作業を効率よく行うことが可能となる。このように、本発明によれば、LLSによって標定された落雷位置を十分に活用することができる。
【0077】
(ii)また、本実施形態では、指定期間および指定地域の雷撃情報にもとづいて、前記指定地域における複数の分割地域の雷撃頻度を算出する。このように、LLSによって標定された落雷位置を統計的に処理することが可能となり、雷撃の傾向を分析することができるので、今後の落雷対策を講じることが可能となる。
【0078】
(iii)本実施形態では、さらに、指定期間および指定地域の、雷事故データと、雷撃頻度と、電柱数とを取得し、配電線雷事故密度Ddと、雷撃密度Dsと、電柱密度Dpとを算出し、これらに基づいて、雷事故率αを算出する。このように雷事故率を求めることにより、今後の雷害対策地域の選定や設備形成の合理化に資することが可能となる。
【0079】
(iv)本実施形態による雷情報検索サーバは、下記式(1)によって、雷ハザードHを算出し、当該雷ハザードHをマップ表示する処理を実行する。
【数3】
ここで、Lsは夏季雷撃数(stroke)、Lwは冬季雷撃数(stroke)、α’は雷事故率比(冬季/夏季)、Yは年数(年)をそれぞれ表す。
また、当該雷情報検索サーバは、下記式(2)によって、雷リスクRを算出し、当該雷リスクRをマップ表示する処理を実行する。
【数4】
ここで、Pは電柱基数(本)、Lは雷撃数(stroke)、Bは高構造物数(箇所)をそれぞれ表す。
【0080】
なお、各所定の領域に関して、雷ハザードHと雷リスクRとの和を求め、当該和に基づいて、マップ表示するようにしてもよい。
さらに、雷ハザードHの値に基づいて、複数の所定の地域を複数のグループに分け、当該グループに対して雷対策の優先度を割り当て、当該優先度が分かるように、複数の地域のグループをマップ表示するようにしてもよい。
【0081】
(v)本発明は、実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或は装置に提供し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0082】
また、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータ上のメモリに書きこまれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータのCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。
【0083】
さらに、実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することにより、それをシステム又は装置のハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、使用時にそのシステム又は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしても良い。
【0084】
最後に、ここで述べたプロセス及び技術は本質的に如何なる特定の装置に関連することはなく、コンポーネントの如何なる相応しい組み合わせによってでも実装できる。更に、汎用目的の多様なタイプのデバイスがここで記述した方法に従って使用可能である。ここで述べた方法のステップを実行するのに、専用の装置を構築するのが有益である場合もある。また、実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。本発明は、具体例に関連して記述したが、これらは、すべての観点に於いて限定の為ではなく説明の為である。本分野にスキルのある者には、本発明を実施するのに相応しいハードウェア、ソフトウェア、及びファームウエアの多数の組み合わせがあることが解るであろう。例えば、記述したソフトウェアは、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0085】
さらに、上述の実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていても良い。
【0086】
加えて、本技術分野の通常の知識を有する者には、本発明のその他の実装がここに開示された本発明の明細書及び実施形態の考察から明らかになる。記述された実施形態の多様な態様及び/又はコンポーネントは、単独又は如何なる組み合わせでも使用することが出来る。
【符号の説明】
【0087】
1 配電線雷保護支援システム
10 雷情報検索サーバ
20 LLS
30 端末装置
40 配電設備DB
50 雷事故DB
60 ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11