(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】住宅空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 3/044 20060101AFI20220420BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20220420BHJP
F24F 1/0014 20190101ALI20220420BHJP
F24F 3/14 20060101ALI20220420BHJP
F24F 3/147 20060101ALI20220420BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20220420BHJP
F24F 1/0067 20190101ALI20220420BHJP
F24F 1/0059 20190101ALI20220420BHJP
【FI】
F24F3/044
F24F5/00 L
F24F5/00 101Z
F24F1/0014
F24F3/14
F24F3/147
F24F7/08 A
F24F1/0067
F24F1/0059
(21)【出願番号】P 2020176379
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2020-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000244958
【氏名又は名称】木村工機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 恵一
(72)【発明者】
【氏名】浦野 勝博
(72)【発明者】
【氏名】石田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 和也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英数
【審査官】佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-022204(JP,A)
【文献】特開2001-304614(JP,A)
【文献】特開2020-067200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/00 - 3/167
F24F 5/00
F24F 1/0007 - 1/0097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器(9)を有するコイルユニット(1)と、室内空気と屋外空気の一方又は両方を前記コイルユニット(1)に取込んで前記熱交換器(9)で熱交換して空調用空気として送風するファンユニット(2)と、前記ファンユニット(2)から送風された前記空調用空気を室内(S)に給気する給気ユニット(3)と、前記コイルユニット(1)と複数台の前記ファンユニット(2)とをつなぐ送風ダクト(5)と、制御装置(8)と、を備え、
前記熱交換器(9)が、熱交換用水が通水される伝熱管群(20)を複数のグループ(G)に分配しかつ一部又は全部の前記グループ(G)の前記熱交換用水の限界通水量の割合が異なるように分配した分流回路(18)を、備え、
前記制御装置(8)が、前記室内(S)が低空調負荷の場合に前記分流回路(18)の最少限界通水量の第1の前記グループ(G1)で前記
熱交換用水の通水量を増減させる空調負荷対応部(16)を、備え、
前記熱交換器(9)を通過する空気の気流方向から見たときに、前記分流回路(18)の前記第1グループ(G1)を除いた第2の前記グループ(G2)に、前記第1グループ(G1)と重ならない不重複ゾーン(F)が、形成されるように構成すると共に、前記第1グループ(G1)が前記不重複ゾーン(F)で挟まれるように前記分流回路(18)を構成したことを特徴とする住宅空調システム。
【請求項2】
前記制御装置(8)が、前記ファンユニット(2)の運転台数を制限して前記室内(S)を任意時間空調すると共に前記ファンユニット(2)全台数で前記室内(S)を24時間空調する運転制御部(15)を、備えた請求項1に記載の住宅空調システム。
【請求項3】
前記給気ユニット(3)が、前記ファンユニット(2)から送風された前記空調用空気で前記室内空気を誘引して混合すると共にこの混合空気を前記室内(S)に給気しつつ前記混合空気の熱を放射する誘引放射ユニット(13)、である請求項1又は2に記載の住宅空調システム。
【請求項4】
前記コイルユニット(1)が、前記室内空気で前記屋外空気を熱交換する全熱交換器(11)を、備えた請求項1から3のいずれかに記載の住宅空調システム。
【請求項5】
前記室内(S)に給気される空調用空気を加湿する蒸気加湿器(12)を、備えた請求項1から4のいずれかに記載の住宅空調システム。
【請求項6】
前記コイルユニット(1)の前記熱交換器(9)の伝熱管群(20)を楕円管にて構成した請求項1から5のいずれかに記載の住宅空調システム。
【請求項7】
前記コイルユニット(1)を住宅内中央部に設置すると共に前記ファンユニット(2)及び前記給気ユニット(3)を各室に分散設置にした請求項1から6のいずれかに記載の住宅空調システム。
【請求項8】
前記屋外空気及び前記室内空気の混合空気と前記熱交換用水とをヒートポンプを介して熱交換して前記熱交換用水の温度を調整する熱源装置(7)を、備え、前記熱源装置(7)を床下又は屋外に設置した請求項1から7のいずれかに記載の住宅空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のように住宅の天井に冷温水式の放射空調機を設けて、各室を空調する住宅用空気調和装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この放射空調機の熱交換器は、熱交換用水の下限通水量の制御が難しく低空調負荷の場合、能力過多となって冷やし過ぎや温め過ぎが生じ、省エネ性と快適性に問題が生じやすかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、熱交換器を有するコイルユニットと、室内空気と屋外空気の一方又は両方を前記コイルユニットに取込んで前記熱交換器で熱交換して空調用空気として送風するファンユニットと、前記ファンユニットから送風された前記空調用空気を室内に給気する給気ユニットと、前記コイルユニットと複数台の前記ファンユニットとをつなぐ送風ダクトと、制御装置と、を備え、前記熱交換器が、熱交換用水が通水される伝熱管群を複数のグループに分配しかつ一部又は全部の前記グループの前記熱交換用水の限界通水量の割合が異なるように分配した分流回路を、備え、前記制御装置が、前記室内が低空調負荷の場合に前記分流回路の最少限界通水量の第1の前記グループで前記熱交換用水の通水量を増減させる空調負荷対応部を、備え、前記熱交換器を通過する空気の気流方向から見たときに、前記分流回路の前記第1グループを除いた第2の前記グループに、前記第1グループと重ならない不重複ゾーンが、形成されるように構成すると共に、前記第1グループが前記不重複ゾーンで挟まれるように前記分流回路を構成したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、低空調負荷の場合に熱交換器の分流回路の第1グループで熱交換用水の通水量を増減させて下限通水量をさらに最少化できる。そのため、熱交換器の下限能力制御範囲が広がって低空調負荷の場合でも能力過多とならず、エネルギー浪費及び冷やし過ぎや温め過ぎが無くなって省エネ性と快適性が向上する。
冷房時に熱交換用水を熱交換器の分流回路の第1グループに流通させて第2グループに流通させないようにし、第1グループを通過して過冷却除湿した空気を、不重複ゾーンを通過した前記過冷却除湿空気よりも高温のバイパス空気で再熱し、不快な冷感がないドライエアーを得ることができる。このとき、前記過冷却除湿空気が逃げないように前記バイパス空気で挟むので混合が促進されて確実に再熱することができる。そのため、湿度が高くてジメジメする中間期でも、コールドドラフトのないカラッとした気流で空調ができ快適性が向上する。しかも、バイパスダンパ等の機器が不要でコストダウンとコンパクト化を図れる。
【0007】
請求項2の発明によれば、在室の所のファンユニット(全台数より少ない台数)で送風量(給気風量)を制御して任意時間空調したり、全台数のファンユニットで、最大から最小までのうちの最小の送風量に制御して24時間住宅の全館空調をすることができる。
請求項3の発明によれば、給気ユニットで空調用空気と室内空気を誘引混合して、混合空気の温度を室内の温度に近づけることができるため、コールドドラフトがなく冷房時の結露防止効果が得られる。誘引放射ユニットの熱放射の作用によりドラフト感や温度ムラがなく快適性が向上する。
【0008】
請求項4の発明によれば、全熱交換器で省エネ性能を一層向上させることができる。
請求項5の発明によれば、蒸気加湿なので加湿不足がなく快適性が向上し、加湿暖房もできる。
請求項6の発明によれば、伝熱管群の通風抵抗が小さくてさらに省エネとなり、熱交換効率が向上するので、熱交換器及びコイルユニットの小型化を図れる。
【0009】
請求項7と8の発明によれば、通常一体設置されているコイルユニットとファンユニットを分けてセパレート化して各室に分散設置し、床下や屋外に熱源装置を設置するので、生活スペースが無駄に制限されず、保守点検も容易となる。
請求項8の発明によれば、熱源装置が、エクセルギーの高い室内空気を混ぜて熱源用空気として利用するので、デフロスト運転の軽減と熱交換用水の温度調整能力の高効率化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の住宅空調システムを正面から見た簡略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
図1は本発明の住宅空調システムの一実施例で、この住宅空調システムは、コイルユニット1、ファンユニット2、給気ユニット3、排気ファン4、送風ダクト5、水配管6、熱源装置7及び制御装置8を備えている。コイルユニット1は住宅内中央部(図例では2階建て住宅Hの中央廊下)に設置し、ファンユニット2及び給気ユニット3は各室に分散設置する。
【0012】
送風ダクト5は、コイルユニット1と複数台のファンユニット2、ファンユニット2と給気ユニット3、排気口10と排気ファン4、の間で互いに空気が流れるように接続する。室内空気(還気)、屋外空気(外気)、給気、排気などの空気の流れる方向は太い点線の矢印で図示する。図中の符号RAは室内空気、OAは屋外空気、SAは給気、EAは排気を示し、住宅Hの内壁、外壁、床、天井等に穴部を設けて、これらの空気が通るようにする。
【0013】
コイルユニット1は、熱交換用水を通水させる熱交換器9と、室内空気で屋外空気を熱交換する全熱交換器11と、室内Sに給気される空調用空気を加湿する蒸気加湿器12と、を備えている。熱交換器9、全熱交換器11及び蒸気加湿器12の噴霧ノズルはケーシング内に設けるが、全熱交換器1は省略するも自由である。熱交換用水は、熱源装置7にて、屋外空気及び室内空気の混合空気と、熱交換用水と、を内蔵のヒートポンプ(図示省略)を用いて熱交換して熱交換用水の温度を調整し、冷房用の冷水又は暖房用の温水にする。この冷水と温水を季節に応じて切換えて水配管6を介して熱交換器9と熱源装置7の間で循環させる。熱源装置7は、住宅Hの床下又は屋外に設置する。
【0014】
ファンユニット2は、ケーシング内に送風ファンを設けたもので、室内空気と屋外空気の一方又は両方(図例では両方)をコイルユニット1に取込んで熱交換器9の熱交換用水で熱交換して空調用空気として給気ユニット3に送風する。給気ユニット3は、ファンユニット2から送風された空調用空気を室内Sに給気する。給気ユニット3は、誘引放射ユニット13と誘引レジスタ14の一方又は両方を用いる。誘引放射ユニット13は、ファンユニット2から送風された空調用空気で室内空気を誘引して混合すると共にこの混合空気を室内Sに給気しつつ混合空気の熱を放射する。誘引レジスタ14は、ファンユニット2から送風された空調用空気で室内空気を誘引して混合すると共にこの混合空気を室内Sに給気する。図例では、1台のファンユニット2に2台の給気ユニット3を接続しているが、1台のファンユニット2に1台の給気ユニット3を接続してもよく、接続台数の増減は自由である。
【0015】
制御装置8は、コイルユニット1の熱交換器9の通水量と、ファンユニット2の送風量と、蒸気加湿器12の加湿量と、を制御する。ファンユニット2の送風量はインバーターなどで増減させる。制御装置8は運転制御部15を備え、運転制御部15は、ファンユニット2の運転台数を制限して室内Sを任意時間空調すると共に、ファンユニット2の全台数で室内Sを24時間空調する。
【0016】
図2から
図4に示すように、熱交換器9は、フィン群17と分流回路18とを備えている。フィン群17は、空気が通る隙間をあけて配置した多数のプレートフィン19から成る。分流回路18は、熱交換用水が通水される伝熱管群20を複数のグループGに分配しかつ一部又は全部のグループGの熱交換用水の限界通水量(熱交換量)の割合が異なるように分配して構成する。たとえば、太い一点鎖線で示す第1のグループG(G1)と、細い一点鎖線で示す第2のグループG(G2)と、に分け、第1グループG1は単独で最少の限界通水量となるように構成し、第1グループG1を除いた第2グループG2は、第1グループG1よりも限界通水量が多くなるように構成する。
【0017】
第1グループG1の熱交換用水の入口は第1の分岐ヘッダ21に接続し、第2グループG2の熱交換用水の入口は第2の分岐ヘッダ21に接続する。第1グループG1と第2グループG2の熱交換用水の出口は両方とも合流ヘッダ22に接続する。分岐ヘッダ21はバルブ23を介して水配管6の往管に接続し、合流ヘッダ22は水配管6の還管に接続する。伝熱管群20はフィン群17を通過する空気の気流方向を横切るように蛇行させてフィン群17と接続する。伝熱管群20の直管部は楕円管にて構成するのが望ましいが円形管としてもよい。
【0018】
制御装置8は、空調負荷対応部16と、熱交換用水の通水量を調整するバルブ23と、を備える。バルブ23は通水量(弁開度)を無段階に調整することができる比例制御弁とし、分流回路18のグループGごとに設ける。空調負荷対応部16は、室内Sが低空調負荷の場合に分流回路18の最少限界通水量の第1グループG1で熱交換用水の通水量を増減させる。
【0019】
また、空調負荷対応部16は、高空調負荷の場合に全グループGで熱交換用水の通水量を増減させると共に、高空調負荷と低空調負荷域との間の通常空調負荷の場合に第2グループG2で熱交換用水の通水量を増減させる。これにより真夏や真冬などのように最大の熱交換量が必要となる高空調負荷の場合から、中間期などのように僅少な熱交換量で足りる低空調負荷の場合まで幅広く対応できる。
【0020】
分流回路18は、熱交換器9のフィン群17を通過する空気の気流方向から見たときに、分流回路18の第2グループG2に、第1グループG1と重ならない不重複ゾーンFが、複数形成されるように構成すると共に、第1グループG1が不重複ゾーンFで挟まれるように構成する。なお、図例では分流回路18のグループGを2つのグループG1とG2に分配しているが、3つ以上のグループGに分配してそのうちの1つのグループGを最少限界通水量とするも自由である。
【0021】
図5と
図6に示すように、誘引放射ユニット13は、空気供給部24、空気誘引部25及び空気混合部26を備え、天井板の開口部から空気混合部26の底面を室内Sに向けた状態で設置する。空気供給部24はファンユニット2からの送風された空調用空気を噴流し、空気誘引部25は噴流空気の誘引作用にて室内Sの還気を引き込んで空調用空気と混合する。空気混合部26は、混合空気の熱を蓄熱するプレート27と貫孔28の群を備え、貫孔28を介してプレート27から熱を室内Sへ放射しつつ混合空気を室内Sへ放出する。
【符号の説明】
【0022】
1 コイルユニット
2 ファンユニット
3 給気ユニット
5 送風ダクト
7 熱源装置
8 制御装置
9 熱交換器
11 全熱交換器
12 蒸気加湿器
13 誘引放射ユニット
15 運転制御部
16 空調負荷対応部
18 分流回路
20 伝熱管群
F 不重複ゾーン
G グループ
H 住宅
S 室内
【要約】
【課題】 省エネ性と快適性を両立する住宅空調システムを得る。
【解決手段】 コイルユニット、ファンユニット、給気ユニット及び制御装置(8)を備える。コイルユニットの熱交換器(9)が、伝熱管群(20)を複数のグループ(G)に分配しかつ一部又は全部のグループ(G)の限界通水量の割合が異なるように分配した分流回路(18)を、備える。熱交換器(9)を通る空気の気流方向から見たときに、分流回路(18)の第1グループ(G1)を除いた第2グループ(G2)に、第1グループ(G1)と重ならない不重複ゾーン(F)が、形成されるように構成すると共に、第1グループ(G1)が不重複ゾーン(F)で挟まれるように分流回路(18)を構成する。
【選択図】
図4