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特許7061178特に時計ムーブメント用の宝石およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】特に時計ムーブメント用の宝石およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 31/008 20060101AFI20220420BHJP
【FI】
G04B31/008
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020200775
(22)【出願日】2020-12-03
(65)【公開番号】P2021092562
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】19214883.1
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599044744
【氏名又は名称】コマディール・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ・ベスッティ
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・ルトルヴェ
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-90801(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0135108(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 31/00 - 31/08
G04D 3/00 - 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計用の、多結晶型の宝石(40)を製造するための方法(10)であって、前記宝石(40)は、Al 2 3 Cr型のポリルビーまたはZrO2型のジルコニアを含み、前記方法は、前駆物質(21)を生成する第1のステップ(7)を含み、前記方法は、物体(30)を形成するために前記前駆物質(21)を圧縮する第2のステップ(8)を含み、前記圧縮(8)が、前記前駆物質(21)が配置される圧縮空間(25)を定める上部金型(22)および下部金型(16)を備えている圧縮デバイス(20)を使用して実行され、前記上部金型(22)が楕円形の凹部(23)を備えており、前記デバイスが、前記下部金型(16)を少なくとも部分的に横切って前記圧縮空間(25)に通じるワイヤ(17)を備えており、前記下部金型(16)が、前記ワイヤ(17)の周囲でスライドすることができ、前記圧縮(8)が、前記下部金型(16)および前記上部金型(22)を互いに近づけ、ドーム(31)を備えている上面(36)および少なくとも部分的に前記ドーム(31)内に延びる穴(32)を備えている下面(37)を含む物体(30)を形成することによって実行されることを特徴とする、方法(10)。
【請求項2】
前記上部金型(22)に向かって前記下部金型(16)を移動することによって前記圧縮(8)が実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
圧縮(8)の間に、前記物体(30)の前記上面(36)の前記ドーム(31)の周囲に円形のくぼみ(33)が形成され、前記上部金型(22)が、前記凹部(23)の境界を定めるフランジ(24)を備えていることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記上部金型(22)は、前記下部金型(16)の移動の影響の下で上方に移動し、前記上部金型(22)の前記移動は、前記下部金型(16)の前記移動よりも小さいことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法(10)は、無機質体を形成するために前記物体(30)を焼結する第3のステップ(9)を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法(10)は、貫通孔(32)を得るために、前記物体(30)から前記ドーム(31)の上部(48)を除去するための第4の機械加工ステップ(11)を含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法(10)は、前記無機質体の粗研磨および/またはブラッシングおよび/または研磨の第5の最終加工ステップ(12)を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
多結晶型の物体から形成され、Al 2 3 Cr型のポリルビーまたはZrO2型のジルコニアを含む、時計ムーブメント用の宝石(40)であって、前記物体(30)は、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法(10)によって取得することができ、前記物体(30)がを備えている下面(37)を含み、前記物体(30)が前記上面(36)にドーム(31)を含み、前記穴(32)が前記ドーム(31)内に部分的に延びることを特徴とする、宝石(40)。
【請求項9】
前記穴(32)の前記直径は、0.2~0.8mmの範囲の間隔に含まれるか、または0.4~0.6mmの範囲の間隔に含まれることを特徴とする、請求項8に記載の宝石。
【請求項10】
前記ドーム(31)は、30°~90°、または50°~70°または60°の範囲の間隔に含まれる角度を形成することを特徴とする、請求項8または9に記載の宝石。
【請求項11】
前記穴(32)は貫通孔であり、前記ドーム(31)の上部(48)は除去されることを特徴とする、請求項8~10のいずれか一項に記載の宝石。
【請求項12】
前記物体(30)の上面(36)は、前記穴(32)の周囲に配置された円形のくぼみ(33)を含むことを特徴とする、請求項8~11のいずれか一項に記載の宝石。
【請求項13】
宝石の下面(37)の前記穴(32)の周囲にフレアー(34)を含むことを特徴とする、請求項8~12のいずれか一項に記載の宝石。
【請求項14】
軸受け用の、請求項8~13のいずれか一項に記載の宝石を備える、時計。
【請求項15】
時計用の宝石(30)を製造するための圧縮デバイス(20)であって、前記デバイス(20)は、筐体内を移動できるように構成された上部金型(22)および下部金型(16)を備え、前記金型(16、22)は、前駆物質(21)を配置できる圧縮空間(25)を定め、前記デバイス(20)が、前記下部金型(16)を少なくとも部分的に横切って前記圧縮空間に通じるワイヤ(17)を備えており、前記下部金型(16)が前記ワイヤ(17)の周囲でスライドすることができ、前記上部金型が凹部(23)を含むことを特徴とする、圧縮デバイス(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に時計ムーブメント用の宝石を製造するための方法に関する。
【0002】
本発明は、特に時計ムーブメントの宝石(例えば、工業用宝石または工業用セラミック)にも関する。
【0003】
本発明は、そのような宝石を含む時計ムーブメントにも関する。
【0004】
本発明は、この方法を実施するための圧縮デバイスにも関する。
【背景技術】
【0005】
時計製造の従来技術では、時計の軸受けと呼ばれるカウンタピボットまたは軸受部品を形成するために、ルビー、ZrO2、またはサファイアの種類の宝石が、特に使用されている。これらのカウンタピボットおよび軸受部品は、旋回軸が最小限の摩擦で回転運動できるように、旋回軸と接触するよう意図されている。したがって、これらのカウンタピボットおよび軸受部品は、例えば、回転する取り付けられた軸の軸受けのすべてまたは一部を形成する。軸受部品は、通常、旋回軸のピンを挿入するための貫通孔を備えている。
【0006】
図1は、従来技術に従って回転可能な旋回軸2の軸受け1を表している。軸受け1は、軸受部品4(本明細書では、宝石)が配置される軸受けブロック3を備えている。宝石は、旋回軸2の端部6を受け入れるための貫通孔5を含む。したがって、旋回軸2は、穴5の内部で回転できる。
【0007】
通常、時計ムーブメントでは工業用人工宝石が使用される。特に、単結晶型の宝石を製造するためのベルヌーイ型の手法が知られている。圧縮ツールから未来の宝石のグリーン体を取得するために、前駆物質を圧縮することによって製造される、多結晶型の宝石も存在する。多結晶型の宝石は、望ましい寸法を有する完成した形状を取得するために、その後、焼結され、機械加工される。特に、多結晶の宝石で作られている軸受部品に関しては、圧縮ツールは、例えば、穴の空間の構築に関与するワイヤを備えている。
【0008】
しかし、これらの多結晶の宝石を機械加工するためのこれらの技術は、小さい穴を取得することができない。具体的には、現在知られている通常の技術を使用して、0.11mmの直径に達することができる。しかし、この値を下回ることはできない。この値を下回るには、レーザー技術を用いる必要があるが、レーザー技術は工業的に実施することが困難であり、穴の高品質の表面仕上げを直接提供しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、宝石を大規模に製造し、非常に小さい直径の穴を生成できるようにするための方法を提案することによって、前述の不利益のすべてまたは一部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、本発明は、特に時計用の、多結晶型の宝石を製造するための方法に関し、この宝石は、例えば、Al2O3Cr型のポリルビーまたはZrO2型のジルコニア・セラミックを含み、この方法は、前駆物質を生成する第1のステップを含む。
【0011】
この方法は、物体を形成するために前駆物質を圧縮する第2のステップを含み、この圧縮が、前駆物質が配置される圧縮空間を定める上部金型および下部金型を備えている圧縮デバイスを使用して実行され、上部金型が楕円形の凹部を含んでおり、このデバイスが、下部金型を少なくとも部分的に横切って圧縮空間に通じるワイヤを備えており、下部金型が、ワイヤの周囲でスライドすることができ、この圧縮が、下部金型および上部金型を互いに近づけ、ドームを備えている上面および少なくとも部分的にドーム内に延びる穴を備えている下面を含む物体を形成することによって実行される、という点において、注目に値する。
【0012】
したがって、この方法は、グリーン体を形成することができ、このグリーン体は、焼結および機械加工の後に、非常に小さい直径(具体的には、0.1mm以下)の穴を含む宝石を提供する。この方法は、使用するのが容易な圧縮デバイスによってさらに実施され、使用される圧縮デバイスは、グリーン体を製造するための従来のデバイスの改良である。したがって、本発明は、高価で実施するのが複雑なシステムを用いる必要なしに、これらの宝石を工業的に大規模に製造することを可能にする。
【0013】
本発明の特定の一実施形態によれば、固定されたワイヤの周囲で上部金型に向かって下部金型を移動することによって、圧縮ステップが実行される。
【0014】
本発明の特定の一実施形態によれば、圧縮中に、物体の上面のドームの周囲に円形のくぼみが形成され、上部金型は、凹部の境界を定めるフランジを備えている。
【0015】
本発明の特定の一実施形態によれば、上部金型は、下部金型の移動の影響の下で上方に移動し、上部金型の移動は、下部金型の移動よりも小さい。
【0016】
本発明の特定の一実施形態によれば、この方法は、無機質体を形成するために前述の物体を焼結する第3のステップを含む。
【0017】
本発明の特定の一実施形態によれば、この方法は、宝石を横切る穴を得るために、無機質体からドームの上部を除去するための第4の機械加工ステップを含む。
【0018】
本発明の特定の一実施形態によれば、この方法は、第5の最終加工ステップ(例えば、無機質体の粗研磨および/またはブラッシングおよび/または研磨)を含む。
【0019】
本発明は、多結晶型の物体から形成される、例えばAl2O3Cr型のポリルビーまたはZrO2型のジルコニアを含む、特に時計ムーブメント用の宝石にも関し、この物体は、本発明に従う方法によって取得することができる。この宝石は、物体が0.11mm未満の直径を有する穴を備えている下面を含み、この宝石が上面にドームを含み、この穴がドーム内に部分的に延びるという点において、注目に値する。
【0020】
本発明の特定の一実施形態によれば、このドームは、30°~90°、好ましくは50°~70°または60°の範囲の間隔に含まれる角度を形成する。
【0021】
本発明の特定の一実施形態によれば、この穴の直径は、0.2~0.8mmの範囲の間隔に含まれるか、または0.4~0.6mmの範囲の間隔にさえ含まれる。
【0022】
本発明の特定の一実施形態によれば、この穴は貫通孔であり、ドームの上部が除去されている。
【0023】
本発明の特定の一実施形態によれば、宝石の上面は、穴の周囲に配置された円形のくぼみを含む。
【0024】
本発明の特定の一実施形態によれば、この宝石は、その下面の穴の周囲にフレアーを含む。
【0025】
本発明は、特にテンプ輪の軸受け用のそのような宝石を備えている時計にも関する。
【0026】
本発明は、特に時計用の宝石を製造するための圧縮デバイスにも関し、このデバイスは、筐体を定めるケースと、筐体の内部で移動できるように構成された上部金型および下部金型とを備え、これらの金型は、前駆物質を配置できる圧縮空間を定め、上部金型はフランジを備え、このデバイスは、下部金型を少なくとも部分的に横切って圧縮空間に通じるワイヤを備えており、このワイヤは、下部金型と相対的に固定され、上部金型のフランジの中心に配置され、下部金型は、ワイヤを受け入れるための開口部を備え、下部金型は、ワイヤの周囲でスライドすることができる。
【0027】
その他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、非限定的方法で以下に示される説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来技術の既知の一実施形態に従う旋回軸の軸受けの概略図である。
図2】本発明に従って宝石を製造するための方法のブロック図である。
図3】本発明に従う圧縮デバイスの一部の概略図である。
図4】前駆物質を含む一部の概略図である。
図5】本発明に従う圧縮デバイスの概略図である。
図6】本発明に従う圧縮中の圧縮デバイスの概略図である。
図7】本発明に従う方法によって圧縮ステップの後に取得されたグリーン体の概略図である。
図8】本発明に従う方法によって機械加工ステップの一部の後に取得された無機質体の概略図である。
図9】本発明に従う方法によって取得された宝石の概略図である。
図10】本発明に従う圧縮デバイスを備える、宝石を製造するためのシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
前述したように、本発明は、時計の軸受部品を形成できる宝石を製造するための方法に関する。例えば、宝石は、例えばテンプ輪の軸の旋回軸(トラニオンとも呼ばれる)が最小限の摩擦で回転運動できるようにするために、この旋回軸と接触するよう意図されている。したがって、本発明は、特に宝石を製造できるようにし、この宝石は、図1に示されている軸受けなどの、回転する取り付けられた軸の軸受けのすべてまたは一部を形成することができると理解される。
【0030】
この宝石は、グリーン体として形成された前駆物質から形成され、このグリーン体はサファイアの多結晶型の無機質体になり、この物体は、例えば、Al2O3Cr型のポリルビーまたはZrO2型のジルコニア・セラミックを含む。この無機質体が切断されて、最終的な宝石になる。
【0031】
図2に示されている方法の実施形態5では、そのような方法は、結合剤との少なくとも1つの粉末材料の混合物から前駆物質を生成する第1のステップ7を含む。この材料は、非限定的かつ非網羅的な方法で、セラミックであることができる。このステップ7は、結合剤に含まれるセラミック系の粉末から前駆物質を形成するよう意図されている。
【0032】
この文脈において、セラミック系の粉末は、少なくとも1つの金属酸化物、1つの金属窒化物、または1つの金属炭化物を含むことができる。例えば、セラミック系の粉末は、合成サファイアを形成するための酸化アルミニウム、または合成ルビーを形成するための酸化アルミニウムおよび酸化クロムの混合物、または酸化ジルコニウムを含んでよい。加えて、結合剤は、例えば高分子型または有機型などの、さまざまな性質のものであることができる。
【0033】
次に、実施形態は、未来の宝石のグリーン体を形成するために、圧縮デバイスの上部金型および下部金型から前駆物質を圧縮する第2のステップ8を含む。圧縮ステップは、図4乃至図7に示されており、これらの図が以下で説明される。圧縮ステップ8は、ドームおよびドームの内部で少なくとも部分的に延びる穴を備えているグリーン体を取得できるようにする。したがって、ドームの形状が圧縮デバイス20の上部金型22の凹部23によって与えられ、穴の形状が圧縮デバイス20の下部金型16のワイヤ17の形状によって与えられるということが、理解される。
【0034】
この方法は、前述の少なくとも1つの材料で未来の宝石の無機質体を形成するために、前述のグリーン体を焼結する第3のステップ9を含む。この材料は、前述したように、セラミックであることができる。言い換えると、このステップ9は、グリーン体を焼結して、未来の穴のあいた宝石のセラミック体を形成するよう意図されている。本発明によれば、焼結ステップ9は、例えば熱脱バインダによる、熱分解を含むことができるのが好ましい。
【0035】
方法10は、宝石を横切る穴を得るために、特に無機質体からドームの一部を除去するための第4の機械加工ステップ11を含む。機械加工は、ドームの上部を削ることを伴う。このようにして、上部を除去することによって、グリーン体の上面に穴が開けられ、貫通孔を得る。機械加工ステップ11は、既定の宝石の厚さを得るために、上面および下面を成形するサブステップも含む。
【0036】
この方法は、第5の最終加工ステップ12(例えば、無機質体の粗研磨および/またはブラッシングおよび/または研磨)を含む。この最終加工は、用途に適合する表面状態を宝石に与えることができる。そのような最終加工ステップは、最終寸法の調整および/またはエッジの除去および/または粗さの局所的な修正も可能にする。
【0037】
図3乃至図6で、圧縮デバイス20は、チャンバを備えているケース15を備え、ケース15内で上部金型22および下部金型16がスライドすることができる。各金型16、22は、複動プレスに固定される。上部金型22および下部金型16は、前駆物質21が配置される圧縮空間25を定める。
【0038】
図3および図4では、下部金型16のみが示されている。デバイス10は、下部金型16を少なくとも部分的に横切って圧縮空間25に通じるワイヤ17をさらに備えている。ワイヤ17は、下部金型16と相対的に固定され、下部金型16の中心に配置される。下部金型16は、ワイヤ17を通すための開口部19を備える。したがって、下部金型16は、ワイヤ17の周囲でスライドする。したがって、ワイヤ17は、下部金型16と相対的に固定される。
【0039】
下部金型16は、好ましくは大きい開き角度(例えば、60°~140°の範囲の間隔に含まれ、好ましくは90°~120°の範囲の間隔に含まれる開き角度)を有する円錐形の、ドーム形部分18をさらに備えている。ドーム形部分18は、通路19およびしたがってワイヤ17がドーム形部分18の上部に配置されるように、下部金型16の中心に配置される。
【0040】
図4に示されているように、前駆物質21が圧縮空間25内に配置される。次に、上部金型22が、筐体内の前駆物質21の上に配置される。
【0041】
上部金型22は、楕円形の凹部23を備えている。凹部23は、上部金型22の軸の中心に配置される。凹部23は、円形の基部を持つ円錐形を有するのが好ましく、この円錐部の上部が、凹部23の底部を定める。凹部の底部は、例えば円形を有する。この円錐部は、例えば、30°~90°、好ましくは50°~70°または60°の範囲の間隔に含まれる開き角度を有する。
【0042】
上部金型22は、凹部23の境界を定めるフランジ24をさらに備えている。フランジ24は、円形であり、実質的に円形の形状を有するのが好ましい。したがって、圧縮中に、凹部の周囲のグリーン体の上面に円形のくぼみが形成される。フランジ24の最小直径は、凹部23の円形の基部の最小直径よりも大きい。この最小直径は、凹部23の円形の基部の最小直径に対応するのが好ましい。したがって、上面36に形成されたくぼみ33は、凹部23の外周に隣接する。くぼみ33の内壁38は、凹部23の基部を形成する。
【0043】
圧縮空間25内の前駆物質21を圧縮するために、上部金型22および下部金型16を互いに近づけることによって、圧縮8が実行される。固定されたワイヤ17の周囲で上部金型22に向かって下部金型16を移動することによって、圧縮8が実行されるのが好ましい。したがって、2つの金型16、22が互いに近づくと、前駆物質21が上部金型22に詰め込まれ、圧縮空間25に対応する形状をグリーン体に与える。したがって、グリーン体は、物体の上面36および下面37に関して、上部金型22および下部金型16の形状を取る。
【0044】
したがって、そのような圧縮ステップ8は、前駆物質21を圧縮して、上面のドームおよび下面の穴を有する未来の穴のあいた宝石のグリーン体を形成するよう意図されている。
【0045】
上部金型22は、下部金型16の圧力の影響の下で移動し、上部金型22の移動は、下部金型の移動よりも小さいのが好ましい。このようにして、圧縮8の間にワイヤ17を壊す危険が低減される。
【0046】
図7は、このようにして取得されたグリーン体30を示している。グリーン体30は、ドーム31およびドーム31の周囲のくぼみ33を備えている上面36を含んでいる。ドーム31は、上部金型16の凹部23の形状に対応する円形の基部を持つ円錐形を有するのが好ましい。ドーム31は、上面36から突き出ている。言い換えると、ドーム31は、上面36の他の部分を少なくとも部分的に越えて伸びている。くぼみ33を越えるグリーン体の上面36は、実質的に平面状の外周面35を含み、外周面35の高さは、ドーム31の高さより低いが、くぼみ33よりは高い。
【0047】
グリーン体30は、穴32を備えている下面37を含む。穴32は、圧縮中にワイヤによって形成された。穴32は、円筒形を有する。穴32は、宝石のドーム31内を少なくとも部分的に通って延びるように選択された深さを有する。この深さは、例えば、下面37から延びて、くぼみ33の底部を越えるように選択される。この段階で、穴32は、貫通孔ではなく、ドーム31内に配置された底部を含む。この方法により、非常に小さい直径を有する穴32が得られ、この直径は、具体的には0.1mm未満になることができ、0.05mm未満になることもできる。
【0048】
グリーン体30の下面37は、広がった部分34を備えており、広がった部分34は、穴32に隣接する。広がった部分34は、円錐形を有する。次にこのフレアーは、穴のあいた宝石40をかみ合わせるための円錐部を形成する。円錐部12は、円形であるのが好ましい。この円錐部は、その基部に第1の開口部39を有し、その上部に第2の開口部41を有する。第1の開口部39は、第2の開口部41より大きく、物体30の下面37に形成される。エッジを形成するために、第2の開口部41を介して、円錐部34と穴32の接続が実行される。したがって、フレアー34は、特に衝突が発生した場合に、回転運動できる部品の軸の旋回軸の挿入を容易にすることができる。円錐部の角度は、円錐部の上部および穴8によって形成されるエッジが過度に突き出るのを防ぐように、選択される。例えば、60°~140°の範囲に含まれる角度、好ましくは90°~120°の範囲に含まれる角度が選択される。
【0049】
グリーン体30が形成された後に、同一の形状を維持する無機質体を取得するために、グリーン体30に対して焼結ステップが実施される。
【0050】
図8は、機械加工ステップ11の部分の後の無機質体30を示しており、機械加工ステップ11の間に、貫通孔32を得るために、ドーム31の上部48が除去されている。無機質体30は、形状が異なる上面36および下面37を備えている。実際、下面37は、穴32に隣接する円錐形を有しており、上面36は、穴32の周囲にくぼみを有している。そのような貫通孔32は、無機質体内で定められ、下面37に通じる第1の開口部49を含む。貫通孔32は、無機質体30内で定められ、上面36に通じる第2の開口部51も含む。そのような宝石は、例えば、0.18mmの厚さおよび0.8mmの直径を有し、0.1mm未満の直径の穴を含む。そのような寸法は、非常に小さい直径の旋回軸の使用を可能にする。上面36全体が同じ高さを有するのが好ましい。したがって、物体の上面36は、穴32およびくぼみ33を除いて平坦である。材料を外周面35から除去し、望ましい宝石の厚さを得ることもできる。
【0051】
機械加工ステップ11は、決定された直径を無機質体30に与えるために、無機質体30の周囲の面52を削るサブステップを含むこともできる。機械加工ステップ11は、下面37を削るサブステップを含むこともでき、あるいは穴32を広げるか、または切断するサブステップを含むこともできる。
【0052】
図9は、方法10のすべてのステップの後に取得された宝石40の例を示している。そのような宝石40は、図1の軸受部品などの、軸受け内に取り付けられる軸受部品として使用できる。しかし、そのような宝石は、時計製造分野に限定されず、軸受けと相対的に移動できるように取り付けられた任意の要素、または工業用宝石(ウォーター・ジェット・ノズルなど)、またはセラミック技術(絶縁体など)に適用することができる。宝石40は、上記の方法において説明された特徴を含む。旋回軸を受け入れるよう意図された穴42が、宝石40を横切っている。宝石40は上面46および下面47を含み、これらの面のうちの1つは機能要素を含み、本明細書では、円錐部44が貫通孔42に通じている。上面36は、くぼみ43および貫通孔42の反対側を含む。言い換えると、穴42は、上面46および下面47に通じている。
【0053】
当然ながら、本発明は、示された例に限定されず、当業者にとって明らかであろうさまざまな変形および変更が可能である。特に、圧縮ステップ中に形成される機能要素の他の種類が、本発明に従って有利に検討され得る。
【0054】
図10を参照すると、本発明は、宝石製造システム60にも関する。このシステム60は、以下のさまざまなデバイスを含んでいる。
- 結合剤との少なくとも1つの粉末材料の混合物から前駆物質を生成するためのデバイス51。
- 上記で定められたように前駆物質材料を圧縮するためのデバイス20。
- 前述のグリーン体を焼結するためのデバイス53。
- グリーン体の焼結から生じる未来の宝石8の物体30を機械加工するための機械54。
【0055】
これらのデバイス20、51、53、および54のうちの少なくとも2つが、システム60の同じ実体を一緒に形成できるということに、留意されるであろう。そのようなシステム60は、図2のステップを経ることによって、図9に示されている宝石40を製造するための方法を実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 軸受け
2 旋回軸
3 軸受けブロック
4 軸受部品
5 貫通孔
6 端部
7 ステップ
8 ステップ
9 ステップ
10 方法
11 ステップ
12 ステップ
15 ケース
16 下部金型
17 ワイヤ
18 ドーム形部分
19 通路
20 圧縮デバイス
21 前駆物質
22 上部金型
23 凹部
24 フランジ
25 圧縮空間
30 グリーン体
31 ドーム
32 貫通孔
33 くぼみ
34 フレアー
35 外周面
36 上面
37 下面
38 くぼみの内壁
39 開口部
40 宝石
41 開口部
42 貫通孔
43 くぼみ
44 円錐部
46 上面
47 下面
48 ドームの上部
49 開口部
51 開口部
51 デバイス
52 周囲の面
53 デバイス
54 デバイス
60 システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10