(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】向上した熱伝導度を有するグラファイトシート用ポリイミドフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20220420BHJP
C01B 32/184 20170101ALI20220420BHJP
B01J 31/02 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C01B32/184
B01J31/02 102M
(21)【出願番号】P 2020544947
(86)(22)【出願日】2018-07-20
(86)【国際出願番号】 KR2018008198
(87)【国際公開番号】W WO2019164067
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-08-26
(31)【優先権主張番号】10-2018-0023077
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514225065
【氏名又は名称】ピーアイ アドヴァンスド マテリアルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PI Advanced Materials CO., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】キム、ギョンス
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジョンヨル
(72)【発明者】
【氏名】ウォン、ドンヨン
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/023713(WO,A1)
【文献】特開平01-294742(JP,A)
【文献】特開2017-043668(JP,A)
【文献】特開2008-024571(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0031336(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0049912(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00- 5/02
C08J 5/12- 5/22
C08G 73/10- 73/16
C01B 32/00- 32/991
B01J 21/00- 38/74
C08G 73/10- 73/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイトシート用ポリイミドフィルムの製造方法であって、
有機溶媒、ジアミン単量体及び二無水物単量体を混合することによってポリアミック酸溶液を製造する段階;
前記ポリアミック酸溶液に脱水剤、イミド化剤及び触媒を投入することによって前駆体組成物を製造する段階;
前記前駆体組成物を支持体にキャスティングして
、前記キャスティングされた前駆体組成物を100℃~130℃で乾燥させることによってゲルフィルムを製造する
乾燥段階;及び
前記ゲルフィルムを
500℃~600℃で熱処理することによってポリイミドフィルムを形成するイミド化段階;を含み、
前記触媒は、線形構造の第1触媒及び環構造の第2触媒を含み、
前記第2触媒の含量は、前記第1触媒及び第2触媒の総量を基準にして10モル%~30モル%であるポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1触媒及び前記第2触媒の総投入量は、前記ポリアミック酸溶液のうちアミック酸基1モルを基準にして1.5モル比~4.5モル比で混合される、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ポリアミック酸溶液のうちアミック酸基1モルを基準にして、前記脱水剤は1.5モル~4.5モル投入され、前記イミド化剤は0.15モル~0.6モル投入される、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記第1触媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)及びジエチルホルムアミド(DEF)からなる群から選ばれる一つ以上である、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記第1触媒はジメチルホルムアミドである、請求項
4に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記第2触媒はN-メチル-2-ピロリドンである、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記脱水剤は、酢酸無水物、プロピオン酸無水物及び乳酸無水物からなる群から選ばれる一つ以上である、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記イミド化剤は、β-ピコリン、キノリン、イソキノリン及びピリジンからなる群から選ばれる一つ以上である、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記前駆体組成物は、ポリアミック酸の重量を基準にして2,000ppm~5,000ppmの平均粒径が1.0μm~5.0μmであるフィラーをさらに含む、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記フィラーは、第2リン酸カルシウム、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムからなる群から選ばれる一つ以上である、請求項
9に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向上した熱伝導度を有するグラファイトシート用ポリイミドフィルム、その製造方法及びこれを用いて製造されたグラファイトシートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子機器に含まれる各素子は、電子機器の駆動時に熱を発生させる。このようにして機器内で発生した熱を外部に放出できない場合、機器内部の温度上昇によって製品の性能が低下することは当然で、過度な発熱によって誤作動したり、機器の寿命が低下したりするおそれがあり、さらに、爆発する場合がある。
【0003】
特に、近年、電子機器が高性能化され、製品の軽量化及び小型化を志向するにつれて、各電子素子の高集積化が必須となり、これによって、機器の内部で発生する熱を効果的に放出し、内部の発熱問題を解決することが非常に重要な技術的問題となりつつある。
【0004】
このような発熱問題を解決するためには、以前からヒートシンク、冷却ファン、ヒートパイプなどの多様な放熱機構が使用されてきたが、これらは、基本的に相当な空間を占めるので、近年のスリム化及び小型化の傾向に適していないという問題を有していた。
【0005】
したがって、近年、スマートフォン、タブレットPC、薄膜型ディスプレイ製品などを中心に、放熱シート、放熱パッド又は放熱塗料などが冷却手段として広く使用されている。
【0006】
このうち、放熱シートは、特定発熱部位の熱をシート領域全体に拡散させることによって全体の冷却面積を拡張させ、放熱性能を向上させることを原理とする製品であって、グラファイトシート、高分子-セラミック複合シート、多層コーティング金属薄膜シートなどの形態に製作される。
【0007】
このようなグラファイトシートの代表的な製造方法としては、天然グラファイトを硫酸と酢酸の混合液に浸漬させた後で急激に加熱し、酸を洗浄して除去した後、高圧プレスによってフィルム状に加工して製造する膨張化グラファイト法(expanded graphite method)を挙げることができる。
【0008】
しかし、このように製造されたグラファイトシートは、強度が弱く、残留する酸によって変質するなどの問題を有するので、これを解決するために、特殊な高分子フィルムを直接熱処理することによってグラファイト化する方法が開発された。
【0009】
このような高分子グラファイト化法は、従来の方法よりも簡略で、不純物の混入を起こすことなく、単結晶グラファイトに近い優れた熱伝導性や電気伝導性が得られるという長所を有し、具体的には、ポリイミド、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾールなどの高分子フィルムに対する炭化(carbonization)及び黒鉛化(praphitization)工程の熱処理を通じてグラファイトシートを製造することができる。
【0010】
このうち、ポリイミドは、強直な芳香族主鎖と共に、化学的に安定性に優れたイミド環をベースとし、最高水準の耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐化学性及び耐候性を有するので、グラファイトシートの製造時、優れた収率、結晶化度及び熱伝導度を可能にし、最適なグラファイトシートの材料として知られている。
【0011】
しかし、前記のようなポリイミドを用いてグラファイトシートを製造したとしても、発熱密度が急激に増加している近年の電子機器が要求する放熱性能を充足させるのには限界があった。
【0012】
近年、グラファイトシートに高熱伝導性フィラーを含ませたり、炭化及び黒鉛化工程の昇温速度を調節したりすることによって、熱伝導度の向上を図っているが、フィラーを含ませることによって、加工性及び機械的強度などの物理的特性が低下するという問題があり、数千度以上の超高温での昇温速度の工程制御が非常に難しいだけでなく、これらの各技術を通じても熱伝導度が向上する程度が不十分であるという限界がある。
【0013】
したがって、今まで知られている通常のポリイミドフィルムの製造方法から離脱し、物性が低下することなく、優れた熱伝導度を発揮するポリイミドフィルム及びグラファイトシートの具現が可能な根本的な技術に対する必要性が高い実情にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者等は、深度ある研究及び多様な実験を繰り返した結果、以下で説明するように、ポリアミック酸溶液に含まれる触媒の具体的な組成によって製造されるポリイミドフィルムの物理的/化学的特性を調節し、これから製造されるグラファイトシートの熱伝導度を向上できることを確認した。これと同時に、前駆体組成物の乾燥温度及びゲルフィルムのイミド化温度を特定の温度範囲に含まれるように調節する場合、グラファイトシートの熱伝導度がさらに向上し得ることを確認し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、向上した熱伝導度を有するグラファイトシート用ポリイミドフィルム、その製造方法及びこれを用いて製造されたグラファイトシートを提供することにある。
【0016】
以下では、本発明に係る「ポリイミドフィルムの製造方法」、「ポリイミドフィルム」及び「グラファイトシート」の順に、発明の実施様態をより詳細に説明する。
【0017】
説明の前に、本明細書及び特許請求の範囲に使用された用語や単語は、通常的又は辞典的な意味に限定して解釈するものではなく、発明者が、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという原則に立脚し、本発明の技術的思想に符合する意味及び概念で解釈しなければならない。
【0018】
したがって、本明細書に記載した実施例の構成は、本発明の最も好ましい一つの実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないので、本出願時点において、これらに取って代わる多様な均等物及び変形例が存在し得ることを理解しなければならない。
【0019】
本明細書において、単数の表現は、文脈上、明らかに異なる意味を有していない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」又は「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素又はこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴、数字、段階、構成要素、又は、これらの組み合わせなどの存在又は付加可能性を予め排除するものではないことを理解しなければならない。
【0020】
本明細書において、「二無水物(dianhydride)」は、その前駆体又は誘導体を含むことを意図とする。これらの前駆体又は誘導体は、技術的には二無水物でない場合にもかかわらず、ジアミンとの反応によってポリアミック酸を形成可能であり、このポリアミック酸はポリイミドに変換され得る。
【0021】
本明細書において、「ジアミン(diamine)」は、その前駆体又は誘導体を含むことを意図とする。これらの前駆体又は誘導体は、技術的にはジアミンでない場合にもかかわらず、二無水物との反応によってポリアミック酸を形成可能であり、このポリアミック酸はポリイミドに変換され得る。
【0022】
本明細書において、量、濃度、又は他の値あるいはパラメーターが、範囲、好ましい範囲又は好ましい上限値及び好ましい下限値の列挙として与えられる場合、範囲が別途に開示されるかどうかに関係なく、任意の一対の任意の上側範囲限界値又は好ましい値及び任意の下側範囲限界値又は好ましい値で形成された全ての範囲を具体的に開示するものと理解しなければならない。数値の範囲が本明細書で言及される場合、異なる形で記述しない限り、その範囲は、その終点及びその範囲内の全ての整数及び分数を含むことを意図とする。本発明の範疇は、範囲を定義するときに言及される特定値に限定されないことを意図とする。
【0023】
本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法は、
有機溶媒、ジアミン単量体及び二無水物単量体を混合することによってポリアミック酸溶液を製造する段階、
前記ポリアミック酸溶液に脱水剤、イミド化剤及び触媒を投入することによって前駆体組成物を製造する段階、
前記前駆体組成物を支持体にキャスティングして乾燥させることによってゲルフィルムを製造する乾燥段階、及び、
前記ゲルフィルムを熱処理することによってポリイミドフィルムを形成するイミド化段階、を含んでもよく、
このとき、前記触媒は、線形構造の第1触媒及び環構造の第2触媒を含み、前記第2触媒の含量は、前記第1触媒及び第2触媒の総量を基準にして10モル%~30モル%であってもよい。
【0024】
本発明に係る製造方法は、前記各触媒のうち線形構造を有する第1触媒と環構造を有する第2触媒が共に含まれるように構成し、特に、第2触媒を第1触媒及び第2触媒の総量を基準にして特定の範囲で含む場合、物理的特性が低下することなく、熱伝導度が改善されるという効果を発揮することができる。前記第2触媒は、環構造によってポリアミック酸がイミド化される過程でポリイミド分子構造のパッキング効率を向上できるものと予測される。
【0025】
但し、前記第2触媒の含量が本発明で限定した前記範囲を逸脱して10モル%以下で含まれる場合は、ポリイミド分子構造のパッキング効率が十分に向上しないので、グラファイトシートの製造時、均一な反復構造を形成しにくく、熱伝導度の改善効果が大きくない。その一方で、前記第2触媒の含量が30モル%を超えて含まれる場合は、イミド化率が低下し、ポリイミドフィルムの機械的強度が低下したり、同一のイミド化率を達成するためにさらに多くの時間がかかったりして、全体的な工程効率が低下し得る。
【0026】
前記有機溶媒、ジアミン単量体及び二無水物単量体を混合することによってポリアミック酸溶液を製造する段階において、前記ポリアミック酸溶液は、有機溶媒のうち少なくとも1種のジアミン単量体と少なくとも1種の二無水物単量体(「酸二無水物」)との重合反応で製造され得る。
【0027】
前記ポリアミック酸溶液の製造に利用可能な二無水物単量体は、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)及びこれらの類似物を含み、これらは、単独で用いてもよく、任意の比率で混合した混合物として用いてもよい。
【0028】
前記ポリアミック酸の製造に利用可能なジアミンは、4,4’-オキシジアニリン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’-ジクロロベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(4,4’-オキシジアニリン)、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル(3,3’-オキシジアニリン)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-オキシジアニリン)、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’-ジアミノジフェニルN-メチルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルN-フェニルアミン、1,4-ジアミノベンゼン(p-フェニレンジアミン)、1,3-ジアミノベンゼン、1,2-ジアミノベンゼン及びこれらの類似物を含み、これらは、単独で用いてもよく、任意の比率で混合した混合物として用いてもよい。一方、一般に、ポリアミック酸溶液の製造に使用可能な有機溶媒としては、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、カルビトール、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N-ビニルピロリドン1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチル尿素、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)]エーテルから選ばれるものが使用可能である。
【0029】
また、前記有機溶媒は、ポリアミック酸が溶解され得る溶媒であれば特に限定されないが、非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)であってもよい。
【0030】
前記非プロトン性極性溶媒の非制限的な例として、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)などのアミド系溶媒、p-クロロフェノール、o-クロロフェノールなどのフェノール系溶媒、N-メチル-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン(GBL)及びジグリム(Diglyme)などを挙げることができ、これらは、単独で使用されてもよく、2種以上が組み合わされて使用されてもよい。
【0031】
場合に応じては、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、水などの補助的溶媒を用いてポリアミック酸の溶解度を調節することもできる。
【0032】
一つの具体的な例において、本発明の前駆体組成物の製造に特に好ましく使用可能な有機溶媒は、アミド系溶媒であるN,N-ジメチルホルムアミド及びN,N-ジメチルアセトアミドであってもよい。
【0033】
一つの具体的な例において、前記線形構造の第1触媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)及びジエチルホルムアミド(DEF)からなる群から選ばれる一つ以上であってもよく、熱伝導度の改善の側面でジメチルホルムアミドであることが最も好ましい場合がある。
【0034】
一つの具体的な例において、前記環構造の第2触媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N-ビニルピロリドン及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンからなる群から選ばれる一つ以上であってもよく、特に、N-メチルピロリドンであることが最も好ましい。
【0035】
一つの具体的な例において、前記第1触媒及び第2触媒の総投入量は、前記ポリアミック酸溶液のうちアミック酸基1モルを基準にして1.5モル~4.5モルの範囲内であってもよく、より詳細には、2.5モル~3.5モルの範囲内であってもよい。前記第1触媒及び第2触媒の総投入量が前記範囲を上回ったり下回ったりする場合、適切なポリアミック酸溶液の分子量及び粘度を得ることが難しく、これは、製造されるポリイミドフィルム又はグラファイトシートの熱的及び/又は機械的物性を低下させ得るので好ましくない。
【0036】
本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法は、化学的イミド化法又は複合イミド化法を用いることができ、例えば、前記ポリアミック酸溶液に脱水剤及びイミド化剤を混合して反応させることによって前駆体組成物を製造する段階を含んでもよい。
【0037】
ここで、「脱水剤」とは、ポリアミック酸に対する脱水作用を通じて閉環反応を促進する効果を有する成分を意味し、一つの具体的な例において、前記脱水剤は、例えば、酢酸無水物、プロピオン酸無水物及び乳酸無水物からなる群から選ばれる一つ以上であってもよいが、これに制限されるものではなく、前記ポリアミック酸溶液のうちアミック酸基1モルを基準にして1.5モル~4.5モル投入されてもよい。
【0038】
また、「イミド化剤」とは、ポリアミック酸に対する閉環反応を促進する効果を有する成分を意味し、一つの具体的な例において、前記イミド化剤は、3級アミン類に代表されるイミド化剤として、β-ピコリン、キノリン、イソキノリン及びピリジンからなる群から選ばれる一つ以上であってもよいが、これに制限されるものではなく、前記ポリアミック酸溶液のうちアミック酸基1モルを基準にして0.15モル~0.6モル投入されてもよい。
【0039】
前記脱水剤及びイミド化剤の各含量比率が前記範囲を下回ると、製造時間が長くかかったり、フィルム化過程でフィルムが割れたりする現象が発生し得る一方で、前記脱水剤及びイミド化剤の各含量比率が前記範囲を上回ると、製造されたフィルムの透明性が低下するという問題があるので好ましくない。
【0040】
また、本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法は、前記前駆体組成物を支持体にキャスティングして乾燥させることによってゲルフィルムを製造する段階を含んでもよく、一つの具体的な例において、前記キャスティングされた前駆体組成物は100℃~130℃で乾燥されてもよい。
【0041】
前記乾燥温度が100℃を下回ると、製造される乾燥時間が過度に長くかかり、効果的な乾燥が行われない一方で、前記乾燥温度が130℃を上回ると、製造されるポリイミドフィルムの均一性が低下するおそれがあるので好ましくない。
【0042】
また、本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法は、前記化学的イミド化法と熱的イミド化法を併用できるので、前記ゲルフィルムを熱処理することによってポリイミドフィルムを形成するイミド化段階を含んでもよく、一つの具体的な例において、前記ゲルフィルムを500℃~600℃で熱処理することができる。
【0043】
前記イミド化温度が500℃を下回ると、所望の水準に熱伝導度が向上しないだけでなく、イミド化率が低下し、ポリイミドフィルムの機械的強度が低下したり、イミド化時間が過度に長くかかり得る。その一方で、前記イミド化温度が600℃を上回ると、イミド化に過度に多くのエネルギーが消費され、ポリイミドフィルムの外観不良が増加し得る。
【0044】
また、本発明に係るポリイミドフィルムは、フィラーをさらに含んでもよく、一つの具体的な例において、前記フィラーは、第2リン酸カルシウム、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムからなる群から選ばれる一つ以上であってもよく、ポリアミック酸の重量を基準にして2,000ppm~5,000ppmの含量で含まれてもよく、平均粒径が1.0μm~5.0μmであってもよい。このようなフィラーは、グラファイトシートを製造するための炭化及び黒鉛化工程で昇華され、前記グラファイトシートに空隙を形成することができる。
【0045】
このとき、前記フィラーの含量が2,000ppm未満である場合は、ポリイミドフィルムの粗度が低くなり、表面摩擦力が低下し、工程上の取り扱い性が低下し得る一方で、前記フィラーの含量が5,000ppmを超える場合は、機械的強度が低下し得る。
【0046】
また、本発明は、前記製造方法で製造されるポリイミドフィルムを提供し、これは、以下のような明らかな利点を提供することができる。
【0047】
具体的に、ポリイミドフィルム内のイミド分子間のパッキング性に優れるだけでなく、最適温度での乾燥及びイミド化を通じて最終的なポリイミドフィルム内の高分子構造の均一性が高くなった点により、これから製造されるグラファイトシートは、機械的強度が低下することなく、さらに向上した熱伝導度を有するので、これに基づいて、小型化、薄膜化及び高集積化の要求に応じる優れた放熱性能を発揮することができる。
【0048】
また、本発明は、前記ポリイミドフィルムを用いて熱伝導度が向上したグラファイトシートを提供し、この場合、グラファイトシートは、ポリイミドフィルムに対する炭化(carbonization)及び黒鉛化(graphitization)工程で製造され得る。
【0049】
前記炭化工程は、減圧又は窒素ガス中でホットプレス及び/又は電気炉を用いて行ってもよく、一つの具体的な例において、前記炭化工程は、窒素/アルゴン雰囲気である常温から最高温度である1,000℃~1,500℃の温度範囲まで約1時間~12時間、より詳細には、約1時間~5時間にわたって昇温及び維持させることによって行ってもよいが、これは、発明の実施を促進するための例示であって、前記条件に本発明の範疇が限定されることはない。
【0050】
前記黒鉛化工程は、前記炭化工程に連続して進めることができ、黒鉛化工程もホットプレス及び/又は電気炉を用いることができる。また、このような黒鉛化工程は、不活性ガス中で行われてもよく、不活性ガスの好ましい例としては、アルゴン及び少量のヘリウムを含む混合気体を挙げることができる。一つの具体的な例において、前記黒鉛化工程の熱処理温度は、最低2,500℃以上である必要があり、経済性及び黒鉛化工程の効率性の側面で、前記温度は2,700℃以上3,000℃以下であることが好ましい。
【0051】
一つの具体的な例において、本発明に係る炭化及び黒鉛化工程(後圧延工程まで)を実施して製造されたグラファイトシートは、10μm~100μm、好ましくは18μm~60μmの厚さを有してもよく、熱伝導度が1,600W/(m・K)以上であってもよい。
【0052】
また、本発明は、前記グラファイトシートを含む電子機器を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用及び効果をより詳細に説明する。但し、このような実施例は、発明の例示として提示されたものに過ぎなく、これによって発明の権利範囲が定められることはない。
【0054】
<実施例1>
[前駆体組成物の製造]
0.5Lの反応器に、窒素雰囲気下で有機溶媒としてジメチルホルムアミド404.8gを投入した。
【0055】
温度を20℃に設定した後、ジアミン単量体として4,4’-オキシジアニリン45.59gを投入して約30分間撹拌し、単量体を溶解させた後、二無水物単量体としてピロメリット酸二無水物49.66gを投入して撹拌することによってポリアミック酸溶液を製造した。
【0056】
次に、反応器内のポリアミック酸溶液に対して、イミド化剤としてβ-ピコリン1.6g、脱水剤として酢酸無水物12.0g、第1触媒としてジメチルホルムアミド6.8g、及び第2触媒としてN-メチル-2-ピロリドン2.3gを投入した。
【0057】
その後、無機物系フィラーとして、平均粒径が3μmである第2リン酸カルシウム0.26gを投入し、温度を維持しながら1時間にわたって撹拌することによって前駆体組成物を製造した。
【0058】
このとき、N-メチル-2-ピロリドンの含量は、ジメチルホルムアミド及びN-メチル-2-ピロリドンの総量を基準にして20モル%で、ポリアミック酸のアミック酸基1モル当たりのβ-ピコリンの投入モル比は0.39で、酢酸無水物の投入モル比は2.65であった。これに対しては、実施例と比較例の明確な対比のために表1にまとめた。
【0059】
[ゲルフィルムの製造]
以上のように製造された前駆体組成物を、厚さ50μmのポリイミドフィルムの収得が可能な推定値重量である70gでステンレス製のエンドレスベルトに塗布し、110℃で4分間熱風で乾燥させることによってゲルフィルムを製造した。
【0060】
[ポリイミドフィルムの製造]
以上のように製造されたゲルフィルムをエンドレスベルトから剥離した後、これをテンターに固定させた。次に、ゲルフィルムが固定されたテンターを真空オーブンに入れ、500℃で4分間加熱することによってイミド化を完了した。その後、温度を徐々に下げ、テンターから分離することによってポリイミドフィルムを収得した。
【0061】
<実施例2~実施例5>
ジメチルホルムアミドとN-メチル-2-ピロリドンの含量を表1のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0062】
<実施例6及び実施例7>
熱風でゲルフィルムを乾燥させる温度を表1のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0063】
<実施例8及び実施例9>
真空オーブンでゲルフィルムをイミド化させる温度を表1のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0064】
<比較例1>
N-メチル-2-ピロリドンを溶媒として含まず、ジメチルホルムアミドの含量を増加させたことを除いては、実施例1と同一の方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0065】
<比較例2~比較例5>
ジメチルホルムアミドとN-メチル-2-ピロリドンの含量を表1のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0066】
<比較例6及び比較例7>
熱風でゲルフィルムを乾燥させる温度を表1のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0067】
<比較例8及び比較例9>
真空オーブンでゲルフィルムをイミド化させる温度を表1のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0068】
<比較例10~比較例13>
ジメチルホルムアミドとN-メチル-2-ピロリドンの含量、乾燥温度及びイミド化温度を表1のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0069】
【0070】
[実験例1:熱伝導度の測定]
実施例1~実施例5及び比較例1~比較例13で製造されたポリイミドフィルムを黒鉛板間に挟み、炭化が可能な高温炉を用いて窒素気体下で1℃/分の速度で1,200℃まで昇温させて約2時間維持(炭化)させた。続いて、超高温炉を用いてアルゴン気体下で20℃/分の昇温速度で2,800℃まで昇温させて8時間維持(黒鉛化)させた後、これを冷却することによってグラファイトシートを得た。
【0071】
続いて、得られたそれぞれのグラファイトシートを直径1インチ、厚さ25μmの大きさに切り取ることによってサンプルを準備し、熱拡散率測定装備(モデル名:LFA 467、Netsch社製)を用いてレーザーフラッシュ法でグラファイトシートの熱拡散率を測定した。
【0072】
このように測定された熱拡散率値(25℃の温度でそれぞれ5回ずつ測定した平均値)に密度(重量/体積)及び比熱(理論値として0.85KJ/(Kg・K))を掛けることによって熱伝導率を算出し、その結果を下記の表2に示した。
【0073】
【0074】
前記表2を参照すると、実施例1~実施例9の場合、触媒中のN-メチル-2ピロリドンの含量、乾燥温度及びイミド化温度が本発明で限定した範囲を全て満足し、グラファイトシートの熱伝導度が1,600W/(m・K)以上であって非常に優秀であることを確認することができる。
【0075】
また、触媒がN-メチル-2-ピロリドンの単独成分で構成されたり(比較例1)、ジメチルホルムアミドを共に含むとしても、本発明に係る範囲を逸脱する場合(比較例2~比較例5)、実施例に比べて低下した熱伝導度を示し、乾燥温度及び/又はイミド化温度が本発明に係る範囲を逸脱する場合(比較例6~比較例13)は、ポリイミドフィルムの熱伝導度がさらに低いことが分かる。
【0076】
これにより、本発明に係るポリイミドフィルムを用いて製造されたグラファイトシートの向上した熱伝導度は、環構造の触媒の含量、乾燥温度及びイミド化温度がいずれも本発明における特定の条件を満足する場合にのみ発揮することができ、これらのうちいずれか一つでも逸脱する場合は発揮できないことが分かる。
【0077】
[実験例2:モジュラスの測定]
実施例1~実施例9及び比較例1~比較例13でそれぞれ製造したポリイミドフィルムに対して、Instron 5564モデルを用いてASTM D 882方法でモジュラスを測定し、その結果を下記の表3に示した。
【0078】
【0079】
表3を参照すると、本発明に係る触媒中のN-メチル-2-ピロリドンの含量範囲、乾燥温度及びイミド化温度が本発明に係る範囲を全て満足する実施例1~実施例9のポリイミドフィルムは、2.7Gpa以上の優れたモジュラスを有する一方で、触媒中にN-メチル-2-ピロリドンが30モル%を超えて含まれていたり(比較例3~比較例5)、500℃より低い温度でイミド化が行われていたり(比較例8~比較例11)する場合のポリイミドフィルムは、モジュラスが実施例に比べて相対的に低いこと(2.1Gpa~2.6Gpa)が分かり、これらがいずれも本発明に係る範囲を逸脱する場合(比較例13)、実施例に比べてさらに低下したモジュラス(2.1Gpa)を有することを確認することができる。
【0080】
これにより、ポリイミドフィルムの機械的強度は、特に、環構造の触媒の相対的な含量及びイミド化温度によって変化可能であり、本発明に係る範囲を全て満足する場合にのみ、これを用いて製造されたグラファイトシートが、優れた熱伝導度を有しながらも機械的強度の低下を防止できることが分かる。
【0081】
以上、本発明の各実施例を参照して説明したが、本発明の属する分野で通常の知識を有する者であれば、前記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形を行うことが可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係る製造方法は、前駆体組成物をイミド化するとき、互いに異なる特性を有する2種以上の触媒を用いてこれから製造されるポリイミドフィルムの物理的/化学的特性を調節することができ、これから製造されるグラファイトシートの熱伝導度を向上させながらも機械的強度の低下を防止するという効果を表すことができる。また、前駆体組成物の乾燥温度及びゲルフィルムのイミド化温度を特定の範囲に設定することによって、グラファイトシートの熱伝導度をさらに向上させることができる。
【0083】
本発明に係る製造方法は、既存に使用された触媒の組成及び工程条件の特殊な組み合わせを通じて熱伝導度を向上させるという点で、別途の熱伝導性増進剤の使用や工程の追加が必要でないので、製造費用が節減されるという利点を有する。
【0084】
(付記)
(付記1)
グラファイトシート用ポリイミドフィルムの製造方法であって、
有機溶媒、ジアミン単量体及び二無水物単量体を混合することによってポリアミック酸溶液を製造する段階;
前記ポリアミック酸溶液に脱水剤、イミド化剤及び触媒を投入することによって前駆体組成物を製造する段階;
前記前駆体組成物を支持体にキャスティングして乾燥させることによってゲルフィルムを製造する段階;及び
前記ゲルフィルムを熱処理することによってポリイミドフィルムを形成するイミド化段階;を含み、
前記触媒は、線形構造の第1触媒及び環構造の第2触媒を含み、
前記第2触媒の含量は、前記第1触媒及び第2触媒の総量を基準にして10モル%~30モル%であるポリイミドフィルムの製造方法。
【0085】
(付記2)
前記第1触媒及び前記第2触媒の総投入量は、前記ポリアミック酸溶液のうちアミック酸基1モルを基準にして1.5モル比~4.5モル比で混合される、付記1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0086】
(付記3)
前記ポリアミック酸溶液のうちアミック酸基1モルを基準にして、前記脱水剤は1.5モル~4.5モル投入され、前記イミド化剤は0.15モル~0.6モル投入される、付記1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0087】
(付記4)
前記イミド化段階において、ゲルフィルムを500℃~600℃で熱処理する、付記1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0088】
(付記5)
前記乾燥段階において、キャスティングされた前駆体組成物を100℃~130℃で乾燥させる、付記1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0089】
(付記6)
前記第1触媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)及びジエチルホルムアミド(DEF)からなる群から選ばれる一つ以上である、付記1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0090】
(付記7)
前記第1触媒はジメチルホルムアミドである、付記6に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0091】
(付記8)
前記第2触媒はN-メチル-2-ピロリドンである、付記1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0092】
(付記9)
前記脱水剤は、酢酸無水物、プロピオン酸無水物及び乳酸無水物からなる群から選ばれる一つ以上である、付記1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0093】
(付記10)
前記イミド化剤は、β-ピコリン、キノリン、イソキノリン及びピリジンからなる群から選ばれる一つ以上である、付記1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0094】
(付記11)
前記前駆体組成物は、ポリアミック酸の重量を基準にして2,000ppm~5,000ppmの平均粒径が1.0μm~5.0μmであるフィラーをさらに含む、付記1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0095】
(付記12)
前記フィラーは、第2リン酸カルシウム、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムからなる群から選ばれる一つ以上である、付記11に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0096】
(付記13)
付記1に係る製造方法で製造されるポリイミドフィルム。
【0097】
(付記14)
付記13に係るポリイミドフィルムを炭化及び/又は黒鉛化させることによって製造されるグラファイトシート。
【0098】
(付記15)
前記グラファイトシートは、18μm~60μmの厚さを有し、熱伝導度が1,600W/(m・K)以上である、付記14に記載のグラファイトシート。
【0099】
(付記16)
付記14に係るグラファイトシートを含む電子装置。