(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】ニッケル電解めっき皮膜及びめっき構造体
(51)【国際特許分類】
C25D 5/12 20060101AFI20220421BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20220421BHJP
C22C 19/03 20060101ALI20220421BHJP
H01L 23/50 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
C25D5/12
C25D7/00 H
C22C19/03 L
H01L23/50 D
(21)【出願番号】P 2020218234
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2021-03-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596133201
【氏名又は名称】松田産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【氏名又は名称】小越 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【氏名又は名称】小越 勇
(72)【発明者】
【氏名】野村 薫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】松岡 貴文
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-242372(JP,A)
【文献】特開昭57-145351(JP,A)
【文献】特開平10-284667(JP,A)
【文献】特開2020-017692(JP,A)
【文献】特表2007-519261(JP,A)
【文献】特開2000-077593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 3/00-7/12,
H01L 23/48-23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅又は銅合金から構成される基板に、基板の上に形成されたニッケル電解めっき皮膜と、ニッケル電解めっき皮膜の上に形成されたパラジウムめっき皮膜と、パラジウムめっき皮膜の上に形成された金めっき皮膜、の3層からなるめっき構造体であって、前記ニッケル電解めっき皮膜が、リンを0.01wt%以上0.61wt%以下含有するニッケル電解めっき皮膜であり、リンの含有量が0.01wt%以上0.05wt%未満のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.1μm以上10μm以下であり、リンの含有量が0.05wt%以上0.2wt%未満のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.06μm以上10μm以下であり、リンの含有量が0.2wt%以上0.61wt%以下のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.01μm以上10μm以下である
、めっき構造体。
【請求項2】
銅又は銅合金から構成される基板に、基板の上に形成されたニッケル電解めっき皮膜と、ニッケル電解めっき皮膜の上に形成されたパラジウムめっき皮膜、の2層からなるめっき構造体であって、前記ニッケル電解めっき皮膜が、リンを0.01wt%以上0.61wt%以下含有するニッケル電解めっき皮膜であり、リンの含有量が0.01wt%以上0.05wt%未満のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.1μm以上10μm以下であり、リンの含有量が0.05wt%以上0.2wt%未満のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.06μm以上10μm以下であり、リンの含有量が0.2wt%以上0.61wt%以下のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.01μm以上10μm以下である
、めっき構造体。
【請求項3】
銅又は銅合金から構成される基板に、基板の上に形成されたニッケル電解めっき皮膜と、ニッケル電解めっき皮膜の上に形成された金めっき皮膜、の2層からなるめっき構造体であって、前記ニッケル電解めっき皮膜が、リンを0.01wt%以上0.61wt%以下含有するニッケル電解めっき皮膜であり、リンの含有量が0.01wt%以上0.05wt%未満のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.1μm以上10μm以下であり、リンの含有量が0.05wt%以上0.2wt%未満のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.06μm以上10μm以下であり、リンの含有量が0.2wt%以上0.61wt%以下のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.01μm以上10μm以下である
、めっき構造体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のめっき構造体を備えたリードフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル電解めっき皮膜及び該めっき皮膜を備えためっき構造体に関し、特に、ICやLSIなどの半導体パッケージにおけるワイヤボンディングなどの接合部のめっき皮膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやLSIなどの半導体パッケージにおいて半導体素子を基板上に実装する方法として、バンプと呼ばれる突起状の端子によって電気的に接続するフリップチップという方法と、リードフレームを用いて外部配線と電気的に接続する(ワイヤボンディング)方法が知られている。フリップチップ実装に関しては、例えば、特許文献1~4には、半導体素子の接続端子部にNi/Pd/Auの無電解めっき皮膜を形成し、その上に、はんだバンプを形成することが開示されている。
【0003】
一方、ワイヤボンディングに関して、本出願人は以前、電解めっきによって形成したGe-Ni/Pd/Auの三層からなるめっき構造に関する発明を提供した(特許文献5)。また、電解めっきによって、Ni/Pd-P/Au皮膜を形成する技術も知られている(特許文献6)。上記のめっき皮膜は電解めっき又は無電解めっきによって形成することが可能であるが、電解めっきと無電解めっきとは、各々メリットとデメリットがあるため、被めっき物に応じて使い分けられるのが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-345896号公報
【文献】特開2006-179797号公報
【文献】国際公開第2006/112215号
【文献】特開2016-162770号公報
【文献】特開2009-228021号公報
【文献】特開2012-241260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リードフレームの表面処理法の一つとして、Pd-PPF(Pre Plated Frame)という手法がある(特許文献6、参照)。これは、銅系のリードフレームの全面に、Ni/Pd/Auの三層めっきを施したものであり、これによって、はんだ濡れ性を向上させることができ、十分な接合性能を得ることができるというものである。このPd-PPFリードフレームにおけるコスト削減の試みとして、AuやPdなどの貴金属皮膜の薄膜化が推し進められている。
【0006】
貴金属めっき皮膜の薄膜化は、はんだ濡れ性を損なわないようにしなければならない。この効果を維持できているかの判定は、めっき皮膜に対して加熱処理後のはんだ濡れ性を評価することで行われている。例えば、特許文献5に記載されているように、めっき皮膜を形成した試験片を加熱処理後、はんだ浴に浸漬し、濡れ応力値がゼロになるまでの時間(ゼロクロスタイム:ZCT)を測定し、この時間が十分に短ければ、はんだ濡れ性を保っているとみなすことができる。
【0007】
現在の技術では、Au、Pdめっき皮膜は数nm~数十nmでも十分なはんだ濡れ性を維持できるまでになっており、貴金属めっき皮膜の薄膜化によるコスト低減は限界に達している。一方、Niめっき膜については、未だ改善の余地があり、Niめっき膜の特性(はんだ濡れ性)を改善することで薄膜化を可能とし、タクトタイムの短縮によるさらなるコスト低減が期待できる。本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、はんだ濡れ性に優れた、Niめっき皮膜及び該Niめっき皮膜を備えためっき構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意研究を行った結果、Ni電解めっき皮膜に所定量のP(リン)を含有させることにより、はんだ濡れ性に優れたNi電解めっき皮膜を形成することができるとの知見が得られ、本発明を完成するに至った。前記課題は、以下に示す手段によって解決される。
【0009】
1)リンを0.01wt%以上1.0wt%以下含有するニッケル電解めっき皮膜であり、リンの含有量が0.01wt%以上0.05wt%未満のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.1μm以上10μm以下であり、リンの含有量が0.05wt%以上0.2wt%未満のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.06μm以上10μm以下であり、リンの含有量が0.2wt%以上1.0wt%以下のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.01μm以上10μm以下であるニッケル電解めっき皮膜。
2)ニッケル電解めっき皮膜と、ニッケル電解めっき皮膜の上に形成されたパラジウムめっき皮膜と、パラジウムめっき皮膜の上に形成された金めっき皮膜、の3層からなるめっき構造体であって、前記ニッケル電解めっき皮膜が上記1)に記載のニッケル電解めっき皮膜であるめっき構造体。
3)ニッケル電解めっき皮膜と、ニッケル電解めっき皮膜の上に形成されたパラジウムめっき皮膜、の2層からなるめっき構造体であって、前記ニッケル電解めっき皮膜が上記1)に記載のニッケル電解めっき皮膜であるめっき構造体。
4)ニッケル電解めっき皮膜と、ニッケル電解めっき皮膜の上に形成された金めっき皮膜、の2層からなるめっき構造体であって、前記ニッケル電解めっき皮膜が上記1)に記載のニッケル電解めっき皮膜であるめっき構造体。
5)上記2)~4)のいずれか一に記載のめっき構造体を備えたリードフレーム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、はんだ濡れ性に優れたNi電解めっき皮膜を得ることができるという優れた効果を有する。また、良好なはんだ濡れ性を維持しつつ、Niめっき電解皮膜の薄膜化を達成することができるという優れた効果を有する。めっき皮膜の成膜工程において、特に成膜時間がかかっているのは、Niめっき皮膜であることから、Niめっき皮膜を薄膜化することで、タクトタイムの大幅な短縮につなげることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
無電解めっきは、電気を使用しないため、電気の流れに左右されることなく、均一にめっきすることができる一方、化学反応を用いて皮膜を形成するため、皮膜を形成する速度が遅く、また、めっき浴を化学的に安定させる必要があり、薬液やめっき槽の維持管理にコストがかかるということがある。このような事情から、リードフレームの全面にめっき皮膜を形成する場合には、通常、電解めっきによって、めっき皮膜を形成することが行われる。
【0012】
本発明者は、このような電解めっき皮膜におけるはんだ濡れ性改善について鋭意研究したところ、Ni電解めっき皮膜に所定量のP(リン)を含有させることにより、めっき皮膜のはんだ濡れ性を向上させることができることを見出した。特にNiめっき皮膜を薄くした場合であっても、十分なはんだ濡れ性を維持することができることを見出した。これによって、Niめっき皮膜の薄膜化によるタクトタイムを短縮でき、コストの低減が見込まれる。
【0013】
本発明の実施形態に係るNi電解めっき皮膜は、P(リン)を0.01wt%以上、1.0wt%以下含有することを特徴とする。Niめっき皮膜中のリン含有量を上記の範囲とすることにより、Niめっき皮膜のはんだ濡れ性を良好なものとすることができる。一方、リン含有量が0.01wt%未満であると、はんだ濡れ性向上の効果が得られず、また、リン含有量が1.0wt%を超えると、はんだ濡れ性は逆に低下する。好ましくはリン含有量が0.08wt%以上0.8wt%以下、より好ましくはリン含有量が0.18wt%以上0.61wt%以下とする。
【0014】
P(リン)を含有したNi電解めっき皮膜を走査型電子顕微鏡で観察すると、リン含有量の増加に伴って、Ni電解めっき皮膜の粒子が微細化する傾向が見られた。また、このNi電解めっき皮膜を加熱すると加熱前と比較して結晶が拡大していたが、リン含有量が高いほど、結晶拡大が抑制されている様子が見られた。このような結晶微細化は粒界にリンが濃縮して、結晶成長を阻害したためと考えられる。はんだ濡れ性の低下は下地金属(Cu又はCu合金など)がめっき皮膜最表面まで拡散し、大気に曝されて酸化することが原因であると考えられているが、このような粒界に濃縮したリンが、下地金属の拡散を抑制して、はんだ濡れ性の低下を抑制していると考えられる。
【0015】
Ni電解めっき皮膜の膜厚は、リンの含有量との関係で決定することができ、リンの含有量が0.01wt%以上0.05wt%未満のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.1μm以上10μm以下であり、リンの含有量が0.05wt%以上0.2wt%未満のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.06μm以上10μm以下であり、リンの含有量が0.2wt%以上1.0wt%以下のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.01μm以上10μm以下とする。
本実施形態のNi電解めっき皮膜は、Ni電解めっき皮膜の膜厚を1μm以下と薄膜化した場合であっても、良好なはんだ濡れ性を確保することができる点で、特に優れているといえる。
【0016】
リンの含有量が0.01wt%以上0.05wt%未満のとき、Niめっき皮膜の膜厚が0.1μmよりも薄いと、下地金属(Cu又はCu合金)の拡散防止効果が弱くなり、表面にCuの酸化物が形成し、はんだ濡れ性が低下する。
また、リンの含有量が0.05wt%以上0.2wt%未満のとき、Niめっき皮膜の膜厚が0.06μmよりも薄いと、下地金属(Cu又はCu合金)の拡散防止効果が弱くなり、表面にCuの酸化物が形成し、はんだ濡れ性が低下する。
さらに、リンの含有量が0.2wt%以上1.0wt%以下のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.01μmよりも薄いと、上記と同様、下地金属の拡散防止機能が弱くなり、はんだ濡れ性が低下する。
好ましくは膜厚が0.06μm以上、より好ましくは膜厚が0.1μm以上、さらに好ましくは膜厚が0.2μm以上である。
なお、Ni電解めっき皮膜の膜厚が厚いほど、はんだ濡れ性が高くなるが、必要以上に膜厚が厚いと、余分なNiを付着させることとなり、コストが増加する。したがって膜厚は10μm以下とし、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.5μm以下である。
【0017】
本発明の実施形態に係るめっき構造体は、以下の構造を採用することができる。
3層構造:(基板)/Niめっき皮膜/Pdめっき皮膜/Auめっき皮膜(最表面)
2層構造:(基板)/Niめっき皮膜/Pdめっき皮膜(最表面)
2層構造:(基板)/Niめっき皮膜/Auめっき皮膜(最表面)
ここで、上記Niめっき皮膜は、本実施形態に係るP含有Ni電解めっき皮膜である。上記いずれのめっき皮膜も電解めっき皮膜によって形成することができる。また、Pdめっき皮膜は純Pdだけでなく、Pd合金であってもよい。上記めっき構造体は、用途や要求特性によって選択することができる。最表面に形成されるAuめっき皮膜やPdめっき皮膜は、Niめっき皮膜の酸化防止やNiの表面への拡散防止を主な目的としている。
【0018】
本発明の他の実施形態は、上記めっき構造体を備えたリードフレームである。リードフレームは、銅又は銅合金から構成されることが多い。このようなリードフレーム上に本実施形態に係るめっき構造体を形成することにより、ワイヤボンディングやはんだ付けにおいて、優れた接合が可能となる。なお、本実施形態に係るめっき構造体は、リードフレームだけではなく、フリップチップ実装で使用されるはんだパッド部分に形成することも可能であり、同様に優れた接合が得られることが推測できる。
【0019】
ところで、被めっき物によっては、Ni/Pd/Auのめっき膜を無電解めっきによって形成することも行われている。無電解めっきの場合には、めっき液中の還元剤としてリン化合物が使用されることがあり、その場合、Ni皮膜にはP(リン)が必然的に含まれることなる。リン化合物以外の還元剤を使用することで、P含有量が0wt%のNi皮膜を形成することも可能であるが、還元剤由来のため、Ni皮膜中のP含有量を2wt%以下で制御することは非常に困難である。
【0020】
本実施形態に係るNiめっき皮膜は、リン化合物を含むニッケルめっき浴を用いて、電解めっきにより形成することができる。リン化合物として、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸などを用いることができる。また、他のリンを含有した化合物でも代替可能である。ニッケルめっき浴は、ワット浴、スルファミン浴、クエン酸浴などを用いることができる。また、他のニッケルを含有するめっき浴でも代替可能である。上記に示したリン化合物やニッケルめっき浴は例示的なものであって、限定的なものではない。
Niめっき浴中のニッケル塩の量は、金属換算で40~125g/Lとすることができる。また、リン化合物の量は、リン換算で5~300mg/Lとすることができる。上記に示したニッケル塩の量やリン化合物の量は例示的なものであって、開示した範囲に限定する意図はないことを理解されたい。
【0021】
Ni電解めっき条件は以下の通りとすることができる。但し、この電解めっき条件は例示的なものであって、Ni電解めっきを実施するための多くの処理システムや処理装置が存在し、その処理システムや処理装置に応じて、電解めっき条件の変更を行ってもよいことは明らかである。したがって、開示する電解めっき条件に限定する意図はないことに注意されたい。
陰極電流密度: 1~10A/dm2
電解時間: 5~30min
pH: 3~6
浴温: 30~60℃
カソード: 銅又は銅合金
アノード: ニッケル
【0022】
Pdめっき皮膜およびAuめっき皮膜については、公知のめっき浴、公知の電解めっき条件を用いて、形成することができる(例えば、特許文献5)。
【実施例】
【0023】
次に、本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、以下の実施例はあくまで代表的な例を示しているもので、本願発明は、これらの実施例に制限される必要はなく、明細書の記載される技術思想の範囲で解釈されるべきものである。
【0024】
<評価サンプルの作製について>
Cu合金からなるリードフレームに、前処理として、電解脱脂(液温:68℃、電流密度:10A/dm2、浸漬時間:60秒)を行い、次いで、酸洗浄(5vol.%硫酸、30秒)を行い、その後、純水で洗浄した。前処理したリードフレームに、順次、以下のめっき条件にて、Niめっき、Pdめっき、Auめっき、を施した。このとき、Niめっき液中のP濃度を変化させて、評価サンプルを調整した。
【0025】
(Niめっき条件)
めっき浴: リン化合物を含む無光沢ワット浴
Ni濃度: 66g/L
P濃度: 0~200mg/L
電流密度: 5A/dm2
浴温: 50℃
pH: 4
狙い膜厚: 0.13μm
【0026】
(Pdめっき条件)
めっき浴: パラジウムめっき液(松田産業株式会社製:パラシグマUF)
Pd濃度: 3g/L
電流密度: 0.5A/dm2
浴温: 40℃
pH: 6.5
狙い膜厚: 0.025μm
アノード: 酸化イリジウム
【0027】
(Auめっき条件)
めっき浴: 金めっき液(松田産業株式会社製:オーロシグマF)
Au濃度: 2g/L
電流密度: 2A/dm2
浴温: 45℃
pH: 4
狙い膜厚: 0.005μm
アノード: 酸化イリジウム
【0028】
(リン含有量の測定)
各評価サンプルのNiめっき皮膜中のリン含有量の測定は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置を用いて測定した。
【0029】
(はんだ濡れ性の評価)
各評価サンプルを所定の温度条件(400℃±2℃)で時間保持することによって、高温の熱履歴を加えた後、はんだ浴(63%-Sn、37%-Pb、液温:230℃±5℃)に浸漬してから、該はんだ浴より受ける力がゼロになるまでの所要時間(ゼロクロスタイム)を測定し、はんだ濡れ性を評価した。ゼロクロスタイムは、短いほどはんだ濡れ性に優れていることを意味する。はんだ浴への浸漬条件は、浸漬深さを1mm、浸漬速度を2mm/秒、浸漬時間を5秒とし、はんだ付け促進剤として、R-typeフラックス(非活性タイプ)を用いた。
【0030】
<Niめっき膜のP含有量の評価>
Ni皮膜中に含まれるP含有量とゼロクロスタイムの関係を表1に示す。表1に示す通り、リンを加えることで、はんだ濡れ性が改善されることが確認された。特にリン含有量が0.1wt%以上、0.8wt%以下の場合、はんだ濡れ性が大幅に改善されていた。なお、一般にPbフリーはんだの方が、Pb-Snはんだよりもはんだ濡れ性が悪いものであるが、Pbフリーはんだ(Sn-3.0Ag-0.5Cu)を用いた場合でも、はんだ濡れ性に問題がないことを確認している。
【0031】
【0032】
<Niめっき膜の薄膜化の評価>
Niめっき液中のP濃度を5.4mg/L、10.9mg/L、32.7mg/L、76.3mg/L、119.9mg/Lとし、Niめっき膜厚を表2の通りに変化させた以外は、上記と同様のめっき条件で、評価サンプルを作製した。そして、各種サンプルに対して、上記と同様の条件ではんだ濡れ性を評価した。なお、めっき膜厚が0.13μmについては、表1の結果をそのまま引用したものである。その結果を表2に示す。表2に示す通り、Niめっき皮膜の膜厚が1.0μm以下であっても、良好なはんだ濡れ性を維持できていることが確認できた。なお、Niめっき膜の膜厚を厚くするほど、はんだ濡れ性が向上することから、膜厚0.3μm超については、実施例に示していないが、はんだ濡れ性が問題ないことを確認している。
【0033】
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、はんだ濡れ性に優れたNi電解めっき皮膜を得ることができるという優れた効果を有する。また、良好なはんだ濡れ性を維持しつつ、Niめっき電解皮膜の薄膜化を達成することができるという優れた効果を有する。本発明に係る電解めっき皮膜やめっき皮膜構造体は、リードフレーム、プリント配線板、リジッド基板、フレキシブル基板、テープキャリア、コネクタ、パワーデバイス、ワイヤー、ピン、等に有用である。
【要約】 (修正有)
【課題】はんだ濡れ性に優れたNiめっき皮膜及び該Niめっき皮膜を備えためっき構造体を提供する。
【解決手段】リンを0.01wt%以上1.0wt%以下含有するニッケル電解めっき皮膜であり、リンの含有量が0.01wt%以上0.05wt%未満のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.1μm以上10μm以下であり、リンの含有量が0.05wt%以上0.2wt%未満のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.06μm以上10μm以下であり、リンの含有量が0.2wt%以上1.0wt%以下のとき、前記ニッケル電解めっき皮膜の膜厚が0.01μm以上10μm以下であるニッケル電解めっき皮膜。
【選択図】なし