(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】動作矯正システム及び動作矯正方法
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20220421BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
A61H1/02 A
A61B5/11 200
(21)【出願番号】P 2018207729
(22)【出願日】2018-11-02
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】518391030
【氏名又は名称】株式会社Cooperation Works
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】田中 寿昌
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/123293(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0303849(US,A1)
【文献】特開2016-173713(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0169411(US,A1)
【文献】特開2016-002408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に装着され、装着された位置での前記人体の動きを示す情報を検出するモーションセンサと、
前記人体の異なる位置にそれぞれ装着され、装着された位置で前記人体に刺激を付与する複数の刺激提供デバイスと、
前記モーションセンサで検出された前記人体の動きを示す情報に基づいて、前記人体の動作状況を示すデータを生成する動作状況生成部と、
前記動作状況生成部で生成された前記人体の動作状況を示すデータに基づいて、前記刺激提供デバイスが装着された複数の位置の中から、刺激を与える位置を選択する選択部と、
前記選択部で選択された位置に装着された前記刺激提供デバイスを駆動する駆動部と、
を備え、
前記動作状況生成部は、
生成した前記人体の動作状況を示すデータに基づいて、前記人体の動きの速さ
に応じてその動作を判
定し、
判
定した
動作に応じて、生成した前記人体の動作状況を示すデータを補正する、
動作矯正システム。
【請求項2】
前記人体の動作状況を示すデータの基準となる基準データを記憶する基準データ記憶部を備え、
前記選択部は、
前記基準データと、前記動作状況生成部で生成された前記人体の動作状況を示すデータとのずれに関する情報を算出し、算出したずれに関する情報に基づいて、刺激を与える位置を選択する、
請求項1に記載の動作矯正システム。
【請求項3】
前記選択部で選択された位置に装着された前記刺激提供デバイスを前記駆動部で駆動しながら、前記モーションセンサで検出された前記人体の動きを示す情報に基づいて前記動作状況生成部で生成された前記人体の動作状況を示すデータを蓄積するデータ蓄積部と、
前記データ蓄積部で蓄積されたデータに基づいて、前記基準データを生成して、前記基準データ記憶部に記憶する基準データ生成部と、
を備える、
請求項2に記載の動作矯正システム。
【請求項4】
前記モーションセンサは、前記人体が装着する衣服の複数箇所に配置されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の動作矯正システム。
【請求項5】
前記刺激提供デバイスは、前記人体が装着する衣服に格子状に配置されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の動作矯正システム。
【請求項6】
前記刺激提供デバイスは、機械的刺激、電気的刺激、磁気的刺激、超音波刺激及び熱的刺激の少なくとも1つの刺激を前記人体に与える、
請求項1から5のいずれか一項に記載の動作矯正システム。
【請求項7】
前記動作状況生成部で生成された前記人体の動作状況を示すデータ又は前記選択部で選択された刺激を与える位置に基づいて、前記刺激提供デバイスで前記人体に付与される刺激の強度を調整する調整部を備え、
前記刺激提供デバイスは、前記調整部で調整された強度で、前記人体に刺激を付与する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の動作矯正システム。
【請求項8】
人体に装着され、前記人体の動きを示す情報を検出するモーションセンサと、前記人体に装着され、前記人体に刺激を与える刺激提供デバイスと、を用いて前記人体の動作を支援する動作矯正システムによって実行される動作矯正方法であって、
前記モーションセンサで検出された前記人体の動きを示す情報に基づいて、前記人体の動作状況を示すデータを生成する動作状況生成ステップと、
前記動作状況生成ステップで生成された前記人体の動作状況を示すデータに基づいて、前記刺激提供デバイスにより刺激を付与する前記人体上の位置を決定する決定ステップと、
を含み、
前記動作状況生成ステップにおいて、
生成した前記人体の動作状況を示すデータに基づいて、前記人体の動きの速さ
に応じてその動作を判
定し、
判
定した
動作に応じて、生成した前記人体の動作状況を示すデータを補正する、
動作矯正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作矯正システム及び動作矯正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人体にモーションセンサを装着して、その人体の動作状況を計測する技術が開示されている。さらに、計測された人体の動作状況に応じて人体の動作を矯正する技術が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、歩行、運動の動作時にも生体情報を正確に計測することができるセンシングウェアが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、被検者の腰部及び胸背部の少なくとも2か所にモーションセンサを取り付けて2か所の動作状況を算出する歩行の指導方法及び装置が開示されている。この指導方法及び装置は、算出された2か所の動作状況に基づいて、被験者の矢状面、前額面、水平面のそれぞれにおいて、2か所の動揺軌跡を重ね合わせてモニタに表示する。指導者は、モニタに表示された腰部の動揺軌跡の二重化が顕著か否かを判断し、判断結果に応じた歩行指導を行う。
【0005】
また、特許文献3には、複数のハードウェアデータキャプチャデバイスと、クロスプラットフォーム互換性物理演算エンジンと、被験者の運動にリアルタイムフィードバックを送達するための対話型プラットフォームおよびユーザインターフェイスと、を備える方法及びシステムが開示されている。この方法及びシステムによれば、対話型エンジンにより、ユーザに対して測定された人体の動作状況に関するデータをリアルタイムに表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-29692号公報
【文献】特開2017-35449号公報
【文献】特表2017-520336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、人体の生体情報又は動作状況を計測し、その計測結果を表示して人体の動作の矯正に生かす技術が開示されている。しかしながら、これらの技術では、計測結果を動作の矯正に適切に生かせるか否かは、計測結果を確認するユーザの熟練度又は感覚に左右される。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、人体の動作をより確実に矯正することができる動作矯正システム及び動作矯正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る動作矯正システムは、
人体に装着され、装着された位置での前記人体の動きを示す情報を検出するモーションセンサと、
前記人体の異なる位置にそれぞれ装着され、装着された位置で前記人体に刺激を付与する複数の刺激提供デバイスと、
前記モーションセンサで検出された前記人体の動きを示す情報に基づいて、前記人体の動作状況を示すデータを生成する動作状況生成部と、
前記動作状況生成部で生成された前記人体の動作状況を示すデータに基づいて、前記刺激提供デバイスが装着された複数の位置の中から、刺激を与える位置を選択する選択部と、
前記選択部で選択された位置に装着された前記刺激提供デバイスを駆動する駆動部と、
を備え、
前記動作状況生成部は、
生成した前記人体の動作状況を示すデータに基づいて、前記人体の動きの速さに応じてその動作を判定し、
判定した動作に応じて、生成した前記人体の動作状況を示すデータを補正する。
【0010】
この場合、前記人体の動作状況を示すデータの基準となる基準データを記憶する基準データ記憶部を備え、
前記選択部は、
前記基準データと、前記動作状況生成部で生成された前記人体の動作状況を示すデータとのずれに関する情報を算出し、算出したずれに関する情報に基づいて、刺激を与える位置を選択する、
こととしてもよい。
【0011】
また、前記選択部で選択された位置に装着された前記刺激提供デバイスを前記駆動部で駆動しながら、前記モーションセンサで検出された前記人体の動きを示す情報に基づいて前記動作状況生成部で生成された前記人体の動作状況を示すデータを蓄積するデータ蓄積部と、
前記データ蓄積部で蓄積されたデータに基づいて、前記基準データを生成して、前記基準データ記憶部に記憶する基準データ生成部と、
を備える、
こととしてもよい。
【0012】
前記モーションセンサは、前記人体が装着する衣服の複数箇所に配置されている、
こととしてもよい。
【0013】
前記刺激提供デバイスは、前記人体が装着する衣服に格子状に配置されている、
こととしてもよい。
【0014】
前記刺激提供デバイスは、機械的刺激、電気的刺激、磁気的刺激、超音波刺激及び熱的刺激の少なくとも1つの刺激を前記人体に与える、
こととしてもよい。
【0015】
前記動作状況生成部で生成された前記人体の動作状況を示すデータ又は前記選択部で選択された刺激を与える位置に基づいて、前記刺激提供デバイスで前記人体に付与される刺激の強度を調整する調整部を備え、
前記刺激提供デバイスは、前記調整部で調整された強度で、前記人体に刺激を付与する、
こととしてもよい。
【0017】
本発明の第2の観点に係る動作矯正方法は、
人体に装着され、前記人体の動きを示す情報を検出するモーションセンサと、前記人体に装着され、前記人体に刺激を与える刺激提供デバイスと、を用いて前記人体の動作を支援する動作矯正システムによって実行される動作矯正方法であって、
前記モーションセンサで検出された前記人体の動きを示す情報に基づいて、前記人体の動作状況を示すデータを生成する動作状況生成ステップと、
前記動作状況生成ステップで生成された前記人体の動作状況を示すデータに基づいて、前記刺激提供デバイスにより刺激を付与する前記人体上の位置を決定する決定ステップと、
を含み、
前記動作状況生成ステップにおいて、
生成した前記人体の動作状況を示すデータに基づいて、前記人体の動きの速さに応じてその動作を判定し、
判定した動作に応じて、生成した前記人体の動作状況を示すデータを補正する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、人体の動作状況を示すデータを生成し、生成したデータに基づいて、刺激を付与する位置を選択する。選択した位置には、刺激提供デバイスにより自動的に刺激が与えられる。このようにすれば、モーションセンサにより得られた人体の動作状況を示すデータに基づいて、指導者等を介在させることなく動作を矯正させるための刺激を人体に付与することができるので、人体の動作をより確実に矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る動作矯正システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】モーションセンサ及びそれを収納する衣服等を示す斜視図である。
【
図3】モーションセンサが検出する情報を示す図である。
【
図4】(A)~(F)は、位置及び傾斜の時間的変動の一例を示す図である。
【
図5】人体の動作中における位置及び傾きを示す模式図である。
【
図6】刺激提供デバイス及び刺激提供デバイスを収容する衣服の一例を示す図である。
【
図7】選択された刺激提供デバイスの一例を示す図である。
【
図8】
図1の制御部のハードウエアの構成を示すブロック図である。
【
図9】
図1の動作矯正システムの動作を示すフローチャートである。
【
図10】モーションセンサの設定画面の一例を示す図である。
【
図11】位置及び傾きの軌跡を表示する画面の一例を示す図である。
【
図12】本発明の実施の形態2に係る動作矯正システムの構成を示すブロック図である。
【
図13】動作状況を示すデータと理想となる基準データとの違いを示す図である。
【
図14】本発明の実施の形態3に係る動作矯正システムの構成を示すブロック図である。
【
図15】本発明の実施の形態4に係る動作矯正システムの制御部の構成を示すブロック図である。
【
図16】(A)及び(B)は、調整部の動作を示す図である。
【
図17】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態5に係る動作矯正システムの制御部の動作状況生成部の動作を示す模式図である。
【
図18】本発明の実施の形態6に係る動作矯正システムに用いられるモーションセンサの配置を示す図である。
【
図19】本発明の実施の形態7に係る動作矯正方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。全図において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号が付されている。本実施の形態に係る動作矯正システム及び動作矯正方法は、人体の動作を矯正するのに用いられる。
【0021】
実施の形態1.
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
図1に示すように、動作矯正システム1は、複数のモーションセンサ2と、複数の刺激提供デバイス3と、制御部10と、を備える。
【0022】
モーションセンサ2は、人体Bにおける複数の異なる部位にそれぞれ装着されている。本実施の形態では、人体Bの頭部(位置P1)、右肩部(位置P2)、左肩部(位置P3)、胸部(位置P4)、腹部(位置P5)、左右の脚部(位置P6,P7)にモーションセンサ2がそれぞれ装着される。
【0023】
図2に示すように、モーションセンサ2は、防水ケース2Aに収納された状態で、人体Bが装着する衣服Wに収納されている。人体Bが衣服Wを着ることにより、モーションセンサ2が人体Bの7つの部位にそれぞれ装着される。
【0024】
モーションセンサ2は、装着された部位での人体Bの動きを示す情報を検出する。例えば、
図3に示すように、人体Bの頭部に装着されたモーションセンサ2は、直交する3軸(X,Y,Z)方向の加速度(Ax,Ay,Az)を検出し、その3軸回り(θX、θY、θZ)の角速度(Ωx,Ωy,Ωz)を検出する。ここで、X軸方向を人体Bの左右方向とし、+Z方向を人体Bの前方とし、+X方向を人体Bの上方向とする。同様に、位置P2~P7(
図1)に取り付けられたモーションセンサ2は、直交する3軸方向(X,Y,Z)の加速度(Ax,Ay,Az)を検出し、その3軸回り(θX、θY、θZ)の角速度(Ωx,Ωy,Ωz)を検出する。
【0025】
例えば、頭部に装着されたモーションセンサ2で検出された直交する3軸方向の加速度(Ax,Ay,Az)及び3軸回りの角速度(Ωx,Ωy,Ωz)をサンプリングすれば、例えば、
図4(A)~
図4(F)に示すように、位置P1の変動、傾きの時間的な変動を求めることができる。この場合、
図4(A)の左右方向の位置(Y)、
図4(B)の前後方向の位置(Z)、
図4(C)の上下方向の位置(X)で、各時点の位置P1が決まる。また、
図4(D)のθX、
図4(E)のθY、
図4(F)のθZで、位置P1における各時点の傾斜V1(
図5参照)が決まる。このことは、モーションセンサ2が装着された他の位置P2~P7でも同様である。なお、
図5に示すように、位置P2~P7での人体Bの各部分の傾きをV2~V7とする。このように、複数の部位に装着された複数のモーションセンサ2により、位置P1~P7の軌跡と、位置P1~P7における傾斜V1~V7の軌跡が得られる。
【0026】
人体Bの姿勢が偏っている場合には、位置P1~P7の軌跡と、傾斜V1~V7の軌跡は、理想的な状態からずれる。本実施の形態に係る動作矯正システム1は、このような動作中の人体Bの偏り又は癖を偏りがないように矯正する。
【0027】
人体Bの偏り又は癖の矯正は、刺激提供デバイス3を用いて行われる。
図1に戻り、刺激提供デバイス3は、人体Bの異なる部位にそれぞれ装着されている。刺激提供デバイス3は、装着された部位(位置M1~M4のいずれか)で、人体Bに刺激を付与する。
図6に示すように、刺激提供デバイス3は、直方体型であり、刺激提供デバイス3は、人体Bが身につける衣服Wに収納される形で、人体Bに装着される。
【0028】
刺激提供デバイス3が与える刺激には、例えば、機械的刺激、電気的刺激、磁気的刺激、超音波刺激及び熱的刺激の少なくとも1つがある。機械的刺激とは、例えば、物体の物理的な力で付与される刺激であり、例えば人体Bをたたいたり(打撃)、振動を伝達したりすることによって付与される。物体は、固体でもよいし、液体、気体でもよい。物体が気体である場合には、人体Bの周辺を加圧、減圧することも機械的刺激に含まれる。電気的刺激とは、人体Bに微弱な電流を流したりして電気的に人体Bを刺激することを意味する。また、磁気的刺激とは、人体Bの一部に磁場により刺激を与えることを意味する。さらに、超音波刺激とは、人体Bに超音波を照射することにより、人体Bに与えられる刺激である。熱的刺激とは、人体Bを加熱あるいは冷却することにより、人体Bに与えられる刺激である。人体Bに反応を起こさせる刺激であれば、害を与えるものでない限り、あらゆる刺激が含まれる。刺激提供デバイス3から刺激が与えられると、人体Bの反応により、刺激が付与された部分が活性化してその部分を動かし易くなり、その結果、人体Bの動作が矯正される。このような刺激の付与による運動の矯正は、固有受容性神経筋促通法(PNF;Proprioceptive Neuromuscular Facilitation)を根拠とするものであり、一般的には、治療やリハビリテーションに用いられている方法である。
【0029】
図1に戻り、制御部10は、コンピュータであり、例えば、パーソナルコンピュータ又は情報端末(例えばスマートフォン)である。制御部10は、動作状況生成部11と、選択部12と、駆動部13と、を備える。
【0030】
動作状況生成部11は、モーションセンサ2で検出された複数の位置P1~P7の人体Bの動きを示す情報に基づいて、人体Bの動作状況を示すデータを生成する。動作状況生成部11は、複数のモーションセンサ2との間で、無線通信が可能となっている。無線通信としては、例えばBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)が用いられる。BLEは、近距離無線通信技術Bluetooth(登録商標)の拡張仕様の1つであり、極低電力で通信が可能である。
【0031】
動作状況生成部11は、このような無線通信を介してモーションセンサ2の検出値を収集する。動作状況生成部11は、収集したモーションセンサ2の検出値に基づいて、人体Bの動作状況データを生成する。例えば、動作状況生成部11は、人体Bの動作状況データとして、
図5に示すように、人体Bの各部分の位置P1~P7の軌跡及び傾斜V1~V7の軌跡を求める。
【0032】
選択部12は、動作状況生成部11により生成された人体の動作状況を示すデータに基づいて、刺激提供デバイス3が装着された複数の位置M1~M4の中から、刺激を与える位置を選択する。選択部12は、人体Bの各部分の位置P1~P7の軌跡及び傾斜V1~V7の軌跡の偏り量を求める。例えば、位置P1~P7の平均値などを偏り量とすることができる。選択部12は、位置P1~P7の軌跡及び傾斜V1~V7の軌跡の偏り量の組み合わせと、刺激を与える位置との相関関係を示すデータベースを記憶している。このデータベースは、固有受容性神経筋促通法に基づくものであり、例えば理学療法士の経験則に基づき構築されている。選択部12は、動作状況生成部11で得られた人体Bの各部分の位置P1~P7の軌跡及び傾斜V1~V7の軌跡の偏り量を用いて、このデータベースを参照し、刺激を付与する位置を読み出して、その位置付近に装着された刺激提供デバイス3を選択する。なお、このようなデータベースは、通信ネットワーク上のサーバやクラウドコンピュータに置かれていてもよい。
【0033】
駆動部13は、選択部12により選択された位置M1~M4に装着された刺激提供デバイス3を駆動する。例えば、選択部12が、左半身側の位置M2の刺激提供デバイス3を選択していた場合、駆動部13は、位置M2に装着された刺激提供デバイス3を駆動する。駆動部13は、複数の刺激提供デバイス3との間で、無線通信を行う。無線通信の規格としては、例えばBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)が用いられる。駆動部13は、無線通信を介して、選択された位置に装着された刺激提供デバイス3を駆動する。
【0034】
例えば、
図7に示すように、選択部12により、刺激を付与する位置として位置M2が選択された場合には、駆動部13は、位置M2に装着された刺激提供デバイス3を駆動する。すると、この刺激に起因する反応で左側の腰部の可動領域が拡がって、人体Bの左半身がよく動くようになる。これにより、例えば右側への人体Bの偏荷重が解消され、動作中の人体Bのバランスが改善される。
【0035】
図8に示すように、制御部10は、CPU(Central Processing Unit)31、主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35及び通信部36を備える。主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35及び通信部36はいずれも内部バス30を介してCPU31に接続されている。
【0036】
CPU31は、ソフトウエアプログラムを実行する演算処理装置である。外部記憶部33に記憶されているプログラム39を実行することにより、
図1に示す動作矯正システム1の各構成要素が実現される。
【0037】
主記憶部32は、RAM(Random-Access Memory)等から構成されている。主記憶部32には、外部記憶部33に記憶されているプログラム39がロードされる。この他、主記憶部32は、CPU31の作業領域(データの一時記憶領域)として用いられる。
【0038】
外部記憶部33は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD-RAM(Digital Versatile Disc Random-Access Memory)、DVD-RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリから構成される。外部記憶部33には、CPU31に実行させるためのプログラム39があらかじめ記憶されている。また、外部記憶部33は、CPU31の指示に従って、このプログラム39の実行の際に用いられるデータをCPU31に供給し、CPU31から供給されたデータを記憶する。
【0039】
操作部34は、キーボード及びマウスなどのポインティングデバイス等と、キーボード及びポインティングデバイス等を内部バス30に接続するインターフェイス装置から構成されている。操作部34を介して、操作者が操作した内容に関する情報がCPU31に入力される。
【0040】
表示部35は、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(ElectroLuminescence)などから構成される。操作者が操作情報を入力する場合は、表示部35には、操作用の画面が表示される。
【0041】
通信部36は、外部機器との間で、短距離通信を行う通信ドライバである。このような短距離通信の方式には、BLEを用いるとしているが、これには限定されない。例えば、通常のBluetooth(登録商標)方式を採用してもよいし、WiFi通信方式、NFC通信方式、ZigBee(登録商標)方式を採用してもよい。また、通信部36は、インターネット等の通信ネットワークに接続して通信を行う。
【0042】
なお、CPU31のプログラム39の実行により、
図1に示す動作矯正システム1の構成要素の機能が発揮される。ここで、動作状況生成部11は、CPU31、主記憶部32、外部記憶部33及び通信部36に対応する。また、選択部12は、CPU31、主記憶部32、外部記憶部33に対応する。また、駆動部13は、CPU31、主記憶部32、外部記憶部33及び通信部36に対応する。
【0043】
次に、本実施の形態に係る動作矯正システム1の動作について説明する。
【0044】
図9に示すように、動作矯正システム1は、制御部10における初期設定を行う(ステップS10)。ここでは、モーションセンサ2及び刺激提供デバイス3の位置の設定、モーションセンサ2のキャリブレーション、ユーザの個人情報の設定が行われる。
【0045】
モーションセンサ2の位置の設定は、例えば、モーションセンサ2の電源を1台だけ入れ、制御部(スマートフォン)10と通信させた状態で、
図10に示すように、制御部(スマートフォン)10の画面への操作入力で、そのモーションセンサ2の位置を指定することにより行う。この操作が、全てのモーションセンサ2について行われた後、モーションセンサ2の位置の設定が完了する。刺激提供デバイス3も同様である。
【0046】
また、モーションセンサ2のキャリブレーションは、実際に、ユーザに対象となる動作を行わせ、そのときにモーションセンサ2で3軸の加速度(Ax,Ay,Az)及び3軸回りの角速度(Ωx,Ωy,Ωz)を計測し、その計測結果に基づいて行われる。動作状況生成部11は、モーションセンサ2から得られた各軸の加速度(Ax,Ay,Az)のサンプリングデータに基づいて、速度(SP(i):iはサンプリング番号)、速度平均、時間平均、速度の標準偏差、時間の標準偏差、共分散、相関係数、回帰直線の回帰係数(α1)、回帰直線の切片(β1)を求める。さらに、動作状況生成部11は、以下の式を用いて、補正後の速度coSP(i)を算出する。
coSP(i)=SP(i)-(α1×t+β1)…(1)
ここで、tは時間である。
【0047】
さらに、動作状況生成部11は、以下の式を用いて、補正後の位置P(i)を算出する。
P(i)=((coSP(i)+coSP(i-1))/2)×(t(i)-t(i-1))+P(i-1)…(2)
【0048】
動作状況生成部11は、モーションセンサ2から得られた各軸回りの角速度(Ωx,Ωy,Ωz)のサンプリングデータに基づいて、角度(Rd(i):iはサンプリング番号)、角度平均、時間平均、角度の標準偏差、時間の標準偏差、共分散、相関係数、回帰直線の回帰係数(α2)、回帰直線の切片(β2)を求める。さらに、動作状況生成部11は、以下の式を用いて、補正後の角度coRd(i)を算出する。
coRd(i)=Rd(i)-(α2×t+β2)…(3)
これ以降、動作状況生成部11は、モーションセンサ2から得られた各軸の加速度のサンプリングデータに基づいて、上記式(1)~式(3)を用いて、補正後の位置P(i)、補正後の角度coRd(i)を算出し、算出した値を、位置P1~P7及び傾きV1~V7とする。
【0049】
続いて、ユーザは、対象となる動作を開始すると、動作矯正システム1は、位置P1~P7に装着されたモーションセンサ2で人体Bの動きを示す情報を検出する(ステップS11;動き検出ステップ)。検出された情報は、制御部10へ送られる。
【0050】
続いて、制御部10の動作状況生成部11は、モーションセンサ2で検出された複数の位置P1~P7での人体Bの動きを示す情報に基づいて、人体Bの動作状況を示すデータを生成する(ステップS12;動作状況生成ステップ)。これにより、位置P1~P7及び傾きV1~V7の軌跡が得られ、その偏り量が算出される。
【0051】
続いて、制御部10の選択部12が、動作状況生成部11により取得された人体Bの動作状況を示すデータ(位置P1~P7及び傾きV1~V7の軌跡の偏り量)に基づいて、データベースを参照し、複数の位置M1~M4の中から、人体Bの動作を矯正する刺激を付与する人体B上の位置を選択する(ステップS13;選択ステップ)。すなわち、この選択ステップは、上述の動作状況生成ステップ(ステップS12)で生成された人体Bの動作状況を示すデータに基づいて、刺激提供デバイス3により刺激を付与する人体B上の位置を決定する決定ステップであるとみなすことができる。
【0052】
続いて、駆動部13が、選択部12により選択された位置に装着された刺激提供デバイス3を駆動して、選択された位置に刺激を付与する(ステップS14;刺激付与ステップ)。例えば、
図7に示すように、位置M2に装着された刺激提供デバイス3を駆動して、刺激を付与すると、人体Bの反応により、右側に傾いていた人体Bが、鉛直方向を向くように変化する。これにより、動作中の人体Bの動作の偏りが矯正される。動作状況生成部11は、このときの人体Bの動作状況を示すデータの生成をさらに継続する。このデータにより、人体Bの動作の偏りが矯正されていることを確認することができる。
【0053】
なお、
図11に示すように、計測中、制御部(スマートフォン)10は、動作状況生成部11で生成された位置P1~P7及び傾きV1~V7の軌跡を表示するようにしてもよい。
図11に示す画面の下部には、1~7のモーションセンサ2の選択画面50が表示されている。1~7は、位置P1~P7を示す。1が選択されると、選択結果表示部51では、頭部が選択されたことが表示される。また、ボタン52として、Top、Front、Sideのボタンが表示されている。Topボタンは、上から位置の軌跡を見る場合に選択される。また、Frontボタンは、前から位置の軌跡を見る場合に選択される。さらに、Sideボタンは、横から位置の軌跡を見る場合に選択される。軌跡表示部53には、選択された向きからの位置の軌跡が表示される。このような表示により、位置P1~P7の軌跡を可視化することができる。傾斜表示部54には、選択された向きからの傾斜が表示される。このような表示により、傾斜V1~V7を可視化することができる。
【0054】
なお、この実際の軌跡と、理想的な軌跡を重ね合わせて表示するようにしてもよい。このようにすれば、ユーザ自身の軌跡と理想的な軌跡とを比較しながら、ユーザ自身で動作の反復練習を行うことができる。理想的な軌跡は、病院、メーカ等から提供されたものを用いることができる。
【0055】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、人体Bの動作状況を示すデータを生成し、生成したデータに基づいて、刺激を付与する位置を選択する。選択した位置には、刺激提供デバイス3により自動的に刺激が与えられる。このようにすれば、モーションセンサ2により得られた人体Bの動作状況を示すデータに基づいて、指導者等を介在させることなく人体Bの動作を矯正させるための刺激を付与することができるので、人体Bの動作をより確実に矯正することができる。
【0056】
人体Bの動作状況を示すデータの算出方法は、様々な方法を適用することができる。例えば、検出値の平均、重み付け平均、モーションセンサ2間の位置関係を考慮した算出方法を用いることができる。また、すべての検出値を用いてもよいし、一部の検出値を用いてもよい。
【0057】
また、選択部12により選択される刺激提供デバイス3も1つだけに限られない。選択部12が、同時に複数の刺激提供デバイス3を選択するようにしてもよい。
【0058】
また、モーションセンサ2及び刺激提供デバイス3の装着箇所も、
図1に示す位置には限られない。例えば、頭部、背中、両腕、手首等に装着することも可能である。また、本実施の形態では、モーションセンサ2の数を4つとし、刺激提供デバイス3の数を4つとしたが、本発明はこれには限られない。刺激提供デバイス3の数は、複数であれば何個であってもよい。モーションセンサ2の数は、少なくとも1個あればよい。
【0059】
また、モーションセンサ2及び刺激提供デバイス3は、衣服Wに装着されるだけでなく、人体Bに直接取り付けられるようにしてもよいし、眼鏡、帽子、靴、腕時計など、様々な着用品に装着することができる。
【0060】
また、本実施の形態では、モーションセンサ2を複数配置したが、モーションセンサ2は1つであってもよい。
【0061】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
【0062】
図12に示すように、本実施の形態に係る動作矯正システム1は、基準データ記憶部14を備える点が、上記実施の形態1と異なっている。基準データ記憶部14は、人体Bの動作状況を示すデータの基準となる基準データを記憶する。
【0063】
基準データとは、理想的に動作した場合における人体Bの動作状況を示すデータである。したがって、動作状況生成部11で生成される人体Bの動作状況を示すデータが、基準データどおりであれば、人体Bは理想的な動作を行っていることになる。逆に言えば、
図13に示すように、人体Bの動作状況を示すデータ(実測データ:実線)が、基準データ(点線)と異なる場合には、人体Bの動作には矯正される余地があるということになる。
【0064】
そこで、本実施の形態では、選択部12は、基準データと、動作状況生成部11で生成された人体Bの動作状況を示すデータとのずれに関する情報を算出する。この情報は、人体Bの動作の偏り又は癖を示す情報となる。ここで、偏りは、
図13に示すように、人体Bの動作が、一方向に偏っている場合のずれ(基準データと実測データとのずれ)を示すが、癖は一方向への偏りだけでなく、基準データとのずれの方向が変化する場合なども含んでいる。選択部12は、算出した人体Bの動作の偏り又は癖を示す情報、すなわち基準データとのずれに基づいて、刺激を付与する位置を位置M1~M4の中から選択する。
【0065】
このように、本実施の形態に係る動作矯正システム1によれば、理想的な基準データと実測データとのずれに基づいて、人体Bの動作を矯正するので、人体Bの動作を理想的な動作により近づけ易くすることができる。
【0066】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
【0067】
図14に示すように、本実施の形態に係る動作矯正システム1は、基準データ記憶部14を備える点は、上記実施の形態2と同じである。基準データ記憶部14は、人体Bの動作状況を示すデータの基準となる基準データを記憶する。
【0068】
本実施の形態に係る動作矯正システム1の制御部10は、さらに、データ蓄積部15と、基準データ生成部16と、を備える。動作矯正システム1では、人体Bの動作中に、選択部12により選択された位置に装着された刺激提供デバイス3を駆動して人体Bに刺激を与えながら、動作状況生成部11で人体Bの動作状況を示すデータを生成する。動作矯正システム1は、この処理を複数回繰り返す。データ蓄積部15は、この処理が繰り返される度に動作状況生成部11で生成される人体Bの動作状況を示すデータを記憶する。すなわち、動作矯正システム1では、人体Bの動作の矯正を複数回行った場合にそれぞれ得られる人体Bの動作状況を示すデータが、データ蓄積部15に蓄積される。
【0069】
データ蓄積部15に蓄積されたデータは、理想的な動作状況を示すデータではないが、動作矯正システム1により理想的な動作に近づくように矯正された場合の動作状況を示すデータとなる。本実施の形態では、これら蓄積されたデータを用いて、理想的な動作を示すデータと同等とみなせる基準データが生成される。
【0070】
具体的には、基準データ生成部16は、データ蓄積部15で蓄積されたデータに基づいて、基準データを生成する。例えば、データ蓄積部15で蓄積されたデータの平均データを基準データとして生成することができる。データ蓄積部15に蓄積されたデータは、理想的な動作状況を示すデータではないが、平均化により、それぞれのデータのばらつきが相殺され、理想的な動作を示すデータにより近づけることができるためである。
【0071】
生成された基準データは、基準データ記憶部14に記憶される。選択部12は、基準データ記憶部14に記憶された基準データと、動作状況生成部11で生成された人体Bの動作状況を示すデータとのずれに関する情報を、人体Bの偏り及び癖を示す情報として、算出する。選択部12は、算出した人体Bの偏り及び癖を示す情報に基づいて、刺激を与える位置を位置M1~M4から選択する点は、上記実施の形態2に係る動作矯正システム1と同じである。
【0072】
なお、基準データ記憶部14には、仮の基準データが記憶されており、データ蓄積部15にデータが十分に蓄積されていない状態、すなわち基準データ生成部16で基準データが生成されていない状態では、選択部12は、仮の基準データを用いて、刺激を与える位置を位置M1~M4から選択すればよい。
【0073】
このように、本実施の形態に係る動作矯正システム1によれば、人体Bの動作状況を示すデータを用いて基準データを生成することができるので、基準データを生成する際の負担を軽減することができる。
【0074】
なお、データ蓄積部15及び基準データ生成部16を、制御部10が備える必要はない。例えば、データ蓄積部15及び基準データ生成部16が、制御部10と通信可能なクラウドコンピュータ上に構築されるようにしてもよい。この場合、他の人についてのデータについても蓄積し、基準データ生成部16は、特定の動作についての複数人の使用状況を示すデータに基づいて、基準データを生成するようにしてもよい。
【0075】
また、基準データ生成部16は、全ての動作状況を示すデータの平均を基準データとしたが、これには限られない。複数回の処理により、残差が所定範囲内にあるデータのみ選抜して、その平均を基準データとして求めるようにしてもよい。
【0076】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
【0077】
図15に示すように、本実施の形態に係る動作矯正システム1は、調整部17を備える点が、上記実施の形態と異なる。調整部17は、動作状況生成部11により生成された人体Bの動作状況を示すデータ又は選択部12で選択された刺激を与える位置に基づいて、刺激提供デバイス3により人体Bに付与される刺激の強度を調整する。刺激提供デバイス3は、調整部17で調整された強度で、人体Bに刺激を与える。
【0078】
例えば、それぞれ被験者が異なる
図16(A)と
図16(B)とを比較して示すように、同じ位置M2に装着された刺激提供デバイス3で刺激を付与する場合であっても、人体Bの動作状況を示すデータに基づいて、個人毎に、調整部17により、刺激の強度を調整することができる。この結果、人体Bに付与される強度を、個人個人に応じた最適なものとすることができる。これにより、例えば、人体Bに付与される刺激が強すぎて、人体Bが逆に反応しなくなるのを防止することができる。また、選択された刺激提供デバイス3が異なる場合には、選択された刺激提供デバイス3に応じて、調整部17により、刺激の強度を調整するようにしてもよい。
【0079】
以上のように、本実施の形態によれば、刺激の強度を調整可能とし、人体Bの反応の強さを、個人個人に合わせた刺激量又は刺激を与える部位に応じた刺激量とすることができるので、人体Bの動作の矯正を最適化することができる。
【0080】
また、選択部12が複数の刺激提供デバイス3を選択した場合、個々の刺激提供デバイス3について、個別に刺激の強度を調整することができるようにしてもよい。
【0081】
実施の形態5.
次に、本発明の実施の形態5について説明する。
【0082】
本実施の形態に係る動作矯正システム1の構成は、上記実施の形態2に係る動作矯正システム1(
図12参照)と同じである。本実施の形態では、動作状況生成部11の動作が上記実施の形態2と異なっている。
【0083】
動作矯正システム1が対象とする動作は様々である。例えば、動作矯正システム1は、歩行動作も対象とすると、ランニングや他の動作も矯正の対象となる。しかしながら、そのため、モーションセンサ2で検出される情報と、実際の値との間にはずれが生じるが、そのずれは各動作で異なる。これは、各動作で人体Bの各部分の速度が異なるためであると考えられる。本実施の形態に係る動作矯正システム1は、動作間で生じる上記ずれをキャンセルする機能を有する。
【0084】
この機能において、まず、動作状況生成部11は、生成した人体Bの動作状況を示すデータに基づいて、人体Bが行っている動作を判定する。例えば、
図17(A)に示すように、歩行中である場合には、前方(+Z)への移動速度SPzは閾値Tよりも小さくなる。この場合、動作状況生成部11は、歩行中であると判定することができる。また、
図17(B)に示すように、ランニング中である場合には、前方(+Z)への移動速度SPzは閾値Tよりも大きくなるので、この場合、動作状況生成部11は、ランニング中であると判定することができる。なお、移動速度SPzは、例えば、位置P2~P5のモーションセンサ2の検出値から求めることができる。
【0085】
続いて、動作状況生成部11は、判定した動作に応じて、生成した人体Bの動作状況を示すデータを補正する。例えば、
図17(A)に示すように、歩行中であると判定した場合には、動作状況生成部11は、位置P1~P7及び傾斜V1~V7を補正せずそのままとする一方、
図17(B)に示すように、ランニング中であると判定した場合には、位置P1及び傾斜V1を、前方(+Z)の方向に補正する。
【0086】
このように、人体Bの動作が早ければ早いほど、モーションセンサ2の検出値と、実際の動きとの間では誤差が大きくなる。動作状況生成部11は、動作の種別を判定し、動作に応じてその誤差がキャンセルできるように、人体Bの動作状況を示すデータを補正する。この補正により、人体Bの動作状況を高精度に検出することができる。
【0087】
実施の形態6.
次に、本発明の実施の形態6について説明する。
【0088】
図18に示すように、モーションセンサ2は、人体Bが装着する衣服W全体に格子状に配設されている。このようにすれば、人体Bの動きをより精細に把握することができ、人体Bの動作状況を示すデータとしてより正確なものを生成することができる。
【0089】
なお、刺激提供デバイス3についても衣服W全体に格子状に配置するようにしてもよい。このようにすれば、人体Bに対して、きめ細かく刺激を付与することにより、細かい動作も矯正することが可能となる。
【0090】
実施の形態7.
次に、本発明の実施の形態7について説明する。
【0091】
本実施の形態では、前提として、人体Bに刺激提供デバイス3は、装着されていない。本実施の形態に係る動作矯正方法は、刺激提供デバイス3の装着箇所を、動作が矯正される位置に決定することを目的とする。
【0092】
図19に示すように、動作矯正システム1は、制御部10における初期設定を行う(ステップS10)。ここでは、モーションセンサ2が人体Bのどの位置に装着されているかなどの位置の設定、モーションセンサ2のキャリブレーション、ユーザの個人情報の設定が行われる。
【0093】
続いて、ユーザは、対象となる動作を開始する。動作矯正システム1は、位置P1~P7に装着されたモーションセンサ2で検出された人体Bの動きを示す情報に基づいて、人体Bの動作状況を示すデータを生成する(ステップS11;動き検出ステップ)。検出された情報は、制御部10へ送られる。
【0094】
続いて、制御部10の動作状況生成部11は、モーションセンサ2で検出された複数の位置P1~P4での人体Bの動きを示す情報に基づいて、人体Bの動作状況を示すデータを生成する(ステップS12;動作状況生成ステップ)。
【0095】
続いて、選択部12が、動作状況生成部11により取得された人体Bの動作状況を示すデータに基づいて、刺激提供デバイス3により刺激を付与する人体B上の位置を決定する(ステップS23;決定ステップ)。ここでは、例えば、
図7の位置M2が、刺激提供デバイス3の装着箇所として決定される。決定された装着箇所には、刺激提供デバイス3が装着される。
【0096】
続いて、駆動部13が、選択部12により決定された位置に装着された刺激提供デバイス3を駆動して、決定された位置に刺激を与える(ステップS14;刺激付与ステップ)。これにより、例えば、人体Bの動作中に、位置M2に刺激が加えられて、動作が矯正される。
【0097】
上記各実施の形態に係る動作矯正システム1は、人体Bの動作の矯正を目的とするものとしたが、本発明はこれには限られない。例えば、他の人の動作の模倣を目的とするものであってもよい。例えば、他の人の動作を模倣しようとする場合、模倣対象となる人の動作状況を示すデータを、基準データとして基準データ記憶部14に記憶し、その基準データを用いて動作の矯正を行うようにすればよい。このように、基準データは、理想となる動作状況を示すデータには限られない。
【0098】
上記各実施の形態に係る動作矯正システム1によれば、歩行姿勢、運動スキルの改善、上達に寄与することができる。例えば、競技においては、個人の長所を伸ばし短所をカバーする練習や指導に用いることができる。この動作矯正システム1を用いれば、ユーザの特徴及び能力に合わせた動作の矯正をすることができるので、ユーザの能力等の個人差に関わらず、多くの人が動作の改善、進歩を実感することができる。また、トレーニングジム、病院などにおいては、動作矯正システム1に独自のプログラムを組み込んで使用すれば、顧客や患者の獲得に寄与することができる。また、動作矯正システム1によれば、多くの人の動作状況に関するデータをビッグデータとして取得することができるので、そのビッグデータを活用することができる。例えば、このビッグデータを、刺激提供デバイス3の選択及び設置箇所の決定を行うAI(Artificial Intelligence)の学習データとして用いることができる。また、このようなビッグデータを、競技毎の偏りや年齢別の分布などの分析に役立てることができるうえ、メーカの商品開発等に応用することができる。
【0099】
その他、動作矯正システム1のハードウエア構成やソフトウエア構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0100】
CPU31、主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35、通信部36及び内部バス30などから構成される動作矯正システム1の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する動作矯正システム1を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで動作矯正システム1を構成してもよい。
【0101】
動作矯正システム1の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0102】
搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)にコンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介してコンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0103】
上記実施の形態では、制御部10は、1台のコンピュータであったが、本発明はこれには限られない。スマートフォンと、パーソナルコンピュータと、クラウドコンピュータとを組み合わせて、制御部10として用いるようにしてもよい。
【0104】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、人の動作を矯正又は模倣するのに適用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 動作矯正システム、2 モーションセンサ、2A 防水ケース、3 刺激提供デバイス、10 制御部、11 動作状況生成部、12 選択部、13 駆動部、14 基準データ記憶部、15 データ蓄積部、16 基準データ生成部、17 調整部、18 動作設定部、19 補正部、30 内部バス、31 CPU、32 主記憶部、33 外部記憶部、34 操作部、35 表示部、36 通信部、39 プログラム、50 選択画面、51 選択結果表示部、52 ボタン、53 軌跡表示部、54 軌跡表示部、B 人体、P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7 位置、M1、M2、M3、M4 位置、W 衣服