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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】発電フェンス及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   H02S 20/10 20140101AFI20220421BHJP
【FI】
H02S20/10 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022503930
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2021031763
【審査請求日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2021016269
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和2年9月9日 株式会社アルシスは、東京産業株式会社東海支店において、東京産業株式会社東海支店および豊通ファシリティーズ株式会社の担当者に、本発明を公開した。(2)令和2年9月9日 株式会社アルシスは、株式会社アルシスにおいて、株式会社グリンバンクの担当者に、本発明を公開した。(3)令和2年9月15日 株式会社アルシスは、株式会社アルシスにおいて、鍋清株式会社および鍋清グローリー株式会社の担当者に、本発明を公開した。(4)令和2年10月1日 株式会社アルシスは、高砂香料工業株式会社磐田工場において、高砂フードプロダクツ株式会社の担当者に、本発明を公開した。(5)令和2年10月1日 株式会社アルシスは、ファミリーレストラン「ジョイフル」磐田福田店において、株式会社インフィニット・バリューの担当者に、本発明を公開した。(6)令和2年11月13日 株式会社アルシスは、豊橋総合動植物公園において、豊橋総合動植物公園、NTT・TCリース株式会社東海支店、および豊橋市役所の担当者に、本発明を公開した。(7)令和2年11月23日 株式会社アルシスは、大都技研株式会社の担当者に、本発明の画像をモバイルアプリケーションLINEで送信、および電話連絡をして公開した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320015142
【氏名又は名称】株式会社アルシス
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】梅村 佳弘
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3222991(JP,U)
【文献】特開2004-257100(JP,A)
【文献】特開2016-204882(JP,A)
【文献】特開平10-116046(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03742602(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 20/10
E04H 17/16
E01F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面受光型太陽電池パネルと、該両面受光型太陽電池パネルの受光面が垂直となるように設置され、前記両面受光型太陽電池パネルの上辺、下辺及び一対の側辺を固定する金属製の固定構造と、を備え、
前記固定構造が、地中に打設される杭を有する、管状の一対の第1部材と、前記両面受光型太陽電池パネルを第1締結部材により固定する管状の第2部材と、を備え、
前記第1部材と前記第2部材とが脱着可能な構造であり、
前記第2部材が、一対の横フレームと、該横フレームの両端に固定される一対の支柱管と、から構成され、
前記支柱管が、両側に縦方向の凹溝を有し、
前記凹溝が、2段に縮径されており、外側に広い段部、内側に狭い段部を有し、
前記内側の狭い段部の内部に、前記第1締結部材の一部が配置され、
前記両面受光型太陽電池パネルの上辺と下辺が、前記一対の横フレームに固定され、
前記両面受光型太陽電池パネルの側端部を前記外側の広い段部に嵌合することにより、前記一対の側辺が前記第2部材の支柱管の上部領域の内側に固定され、
前記第1部材の上端と、前記第2部材の下端とが、それぞれ、長孔付きのフランジを有し、前記それぞれのフランジが突合わされて、第2締結部材で固定が可能であり、
前記支柱管の両側に前記両面受光型太陽電池パネルを直線上に接続することを特徴とする、
発電フェンス。
【請求項2】
前記両面受光型太陽電池パネルが駐車場又は遊休地の区画又は境界に沿って配置される請求項1に記載の発電フェンス。
【請求項3】
前記第1部材の長孔と、前記第2部材の長孔とが直線上の複数対の長孔であり、対応する位置に設けられる請求項1又は2に記載の発電フェンス。
【請求項4】
前記横フレームに横導管を有し、該横導管の中空に配線がなされ、前記凹溝が一対の連続溝であり、背向するように配置され、前記第2部材の支柱管の前記凹溝に前記一対の側辺を差し込む構造を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の発電フェンス。
【請求項5】
前記横フレームに切欠部を設ける請求項1~4のいずれか1項に記載の発電フェンス。
【請求項6】
前記地中に打設される杭が、中空であり、先端に切削刃を有する請求項1~5のいずれか1項に記載の発電フェンス。
【請求項7】
前記支柱管の中空に補強部材を備える請求項1~6のいずれか1項に記載の発電フェンス。
【請求項8】
杭打ち機を使用して垂直方向を維持しながら長孔付きのフランジを上端に有する杭である管状の一対の第1部材を地中に打ち込み、前記フランジを地表に配置する杭打工程と、
両面受光型太陽電池パネルの上下に一対の横フレームを配置し、前記両面受光型太陽電池パネルの両側に、外側の広い段部と内側の狭い段部との2段に縮径された、縦方向の凹溝を有する支柱管を配置し、前記両面受光型太陽電池パネルの側端部を前記外側の広い段部に嵌合し、一部が前記内側の狭い段部に配置された第1締結部材により、前記両面受光型太陽電池パネルの一対の側辺が前記支柱管の上部領域の内側に位置するように、前記一対の横フレームと前記支柱管とから構成される第2部材に前記両面受光型太陽電池パネルを固定する第1固定工程と、
前記第1部材の上端のフランジと、前記第2部材の下端にある長孔付きのフランジを突合わせて、第2締結部材で固定することにより、両面受光型太陽電池パネルと、該両面受光型太陽電池パネルの受光面が垂直となるように設置される第2固定工程と、
前記第2部材とは別の第2部材を用いて、前記第1締結部材により、前記両面受光型太陽電池パネルとは別の両面受光型太陽電池パネルの一対の側辺が前記支柱管のうちの一つの上部領域と、前記別の第2部材の支柱管の上部領域と、の内側に位置するように、前記第2部材及び前記別の第2部材に前記両面受光型太陽電池パネルを固定することにより、2以上の両面受光型太陽電池パネルを直線上に垂直に配置する連結工程と、
を備える発電フェンスの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直に設置された太陽電池パネルを用いる発電フェンス及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の発明は、生産性の向上により工期短縮が可能なソーラーパネルを、平坦な土地だけでなく傾斜地、起伏のある土地、軟弱な地盤の土地にも建設できる工法を開発することを目的とし、破砕性能に優れたスクリュー杭の打ち込み方法、当該スクリュー杭を基礎部材として使用するソーラーパネル用ユニット工法を開発することを目的とし、接地部がRを有するリーダー式杭打ち機でスクリュー抗を打ち込む第1工程、工場又はヤードにおいて予めソーラーユニット用枠と架台を組み立て、モジュールを当該枠にはめ込みソーラーユニットを組み立てる第2工程、ソーラーユニットをクレーンでつり上げてスクリュー杭上へ移動する第3工程、スクリュー杭にソーラーユニットの架台をフランジで接合設置する第4工程からなるソーラーパネル用ユニット工法により達成される。
【0003】
特許文献2に記載の発明は、表裏の受光面への日射の妨げが少ない両面受光型太陽電池モジュール垂直設置用太陽電池アレイを提供するため、複数個の両面受光型太陽電池モジュールを太陽電池モジュールの受光面が地表面と垂直となるように設置した両面受光型太陽電池アレイにおいて、両面受光型太陽電池アレイ内の構造部材が前記両面受光型太陽電池モジュールの外周部に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-127501号公報
【文献】特開2002-76416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、太陽電池パネルを傾斜して配置しなければならず、広大な設置面積が必要となり、太陽電池パネルの設置できる場所が制約される。太陽電池パネルを傾斜して配置するので、施工が複雑化する。
【0006】
特許文献2では、単独での設置であるため、設置場所が制約される。また、垂直支柱としての役割を果たす構造部材を固定するためには、地面を大きく掘削して、コンクリート等で固定しなければならない。そのため、施工性が悪く、設置場所が制約されて、太陽電池パネルの容易設置性が阻害される。構造部材の凹部が露出しており、配線施工性や外観が劣る。複数の両面受光型の太陽電池モジュールの個々に対して、枠状の構造部材で囲って固定してあるので、個々の太陽電池モジュールの接合部分に大きな風圧が加わった場合、太陽電池モジュールが変形したり、破損するおそれがある。
【0007】
太陽電池パネルは、建築物、構造物等に設置することが多いが、耐震工事等の補強工事を必要になるという問題がある。
【0008】
二酸化炭素ガスの排出量削減を目的として、太陽電池パネルの大規模小売店舗の敷地内への設置の需要があるが、大規模小売店舗立地法により求められる駐車場の収容台数を確保する必要があるため、太陽電池パネルの設置に多くの敷地を割り当てることができず、太陽電池パネルの設置場所の拡大が求められている。
【0009】
本発明の課題は、設置場所を拡大し、設置の自由度を高め、施工性を改善し、耐風圧性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、両面受光型太陽電池パネルと、該両面受光型太陽電池パネルの受光面が垂直となるように設置され、前記両面受光型太陽電池パネルの上辺、下辺及び一対の側辺を固定する金属製の固定構造と、を備え、前記固定構造が、地中に打設される杭を有する、管状の一対の第1部材と、前記両面受光型太陽電池パネルを第1締結部材により固定する管状の第2部材と、を備え、前記第1部材と前記第2部材とが脱着可能な構造であり、前記第2部材が、一対の横フレームと、該横フレームの両端に固定される一対の支柱管と、から構成され、前前記支柱管が、両側に縦方向の凹溝を有し、前記凹溝が、2段に縮径されており、外側に広い段部、内側に狭い段部を有し、前記内側の狭い段部の内部に、前記第1締結部材の一部が配置され、前記横フレームに横導管を有し、前記両面受光型太陽電池パネルの上辺と下辺が、前記一対の横フレームに固定され、前記両面受光型太陽電池パネルの側端部を前記外側の広い段部に嵌合することにより、前記一対の側辺が前記第2部材の支柱管の上部領域の内側に固定され、前記第1部材の上端と、前記第2部材の下端とが、それぞれ、長孔付きのフランジを有し、前記それぞれのフランジが突合わされて、第2締結部材で固定が可能であり、前記支柱管の両側に前記両面受光型太陽電池パネルを直線上に接続することを特徴とする発電フェンスである。
【0012】
前記両面受光型太陽電池パネルが駐車場又は遊休地の区画又は境界に沿って配置される。
【0013】
前記第1部材の長孔と、前記第2部材の長孔とが直線上の複数対の長孔であり、対応する位置に設けられる。
【0014】
前記横フレームに横導管を有し、該横導管の中空に配線がなされ、前記凹溝が一対の連続溝であり、背向するように配置され、前記第2部材の支柱管の前記凹溝に前記一対の側辺を差し込む構造を有する。
【0015】
前記横フレームに切欠部を設ける。前記切欠部は、下方に向かって縮径しており、下面に開口を有する。開口は適宜の形状でよい。
【0016】
前記地中に打設される杭が、中空であり、先端に切削刃を有する。前記杭を地中に打設する際に、地表面が盛り上がることを防止することができる。
【0017】
前記支柱管の中空に補強部材をさらに備える。前記発電フェンスの耐風圧性が向上する。
【0018】
本発明の別の発明は、杭打ち機を使用して垂直方向を維持しながら長孔付きのフランジを上端に有する杭である管状の一対の第1部材を地中に打ち込み、前記フランジを地表に配置する杭打工程と、両面受光型太陽電池パネルの上下に一対の横フレームを配置し、前記両面受光型太陽電池パネルの両側に、外側の広い段部と内側の狭い段部との2段に縮径された、縦方向の凹溝を有する支柱管を配置し、前記両面受光型太陽電池パネルの側端部を前記外側の広い段部に嵌合し、一部が前記内側の狭い段部に位置する第1締結部材により、前記両面受光型太陽電池パネルの一対の側辺が前記支柱管の上部領域の内側に位置するように、前記一対の横フレームと前記支柱管とから構成される第2部材に前記両面受光型太陽電池パネルを固定する第1固定工程と、前記第1部材の上端のフランジと、前記第2部材の下端にある長孔付きのフランジを突合わせて、第2締結部材で固定することにより、両面受光型太陽電池パネルと、該両面受光型太陽電池パネルの受光面が垂直となるように設置される第2固定工程と、前記第2部材とは別の第2部材を用いて、第1締結部材により、前記両面受光型太陽電池パネルとは別の両面受光型太陽電池パネルの一対の側辺が前記支柱管のうちの一つの上部領域と、前記別の第2部材の支柱管の上部領域と、の内側に位置するように、前記第2部材及び前記別の第2部材に前記両面受光型太陽電池パネルを固定することにより、2以上の両面受光型太陽電池パネルを直線上に垂直に配置する連結工程と、を備える発電フェンスの施工方法である。
【0019】
本明細書において、字句の解釈は次の通りである。「杭」は、前記固定構造を設置するために地中に打設される部材であり、スクリュー杭、鋼管杭、H形鋼杭等が採用できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、施工性を改善し、設置場所の自由度が大きく、配線施工性や外観を向上させ、耐風圧性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明第1実施形態の発電フェンスの正面図である。
図2図1のC-C端面図である。
図3図1のA-A断面図及び両面受光型太陽電池パネルの上下端の部分拡大図である。
図4図1のB-B端面図及び上下端の部分拡大図である。
図5】本発明第1実施形態の第1部材及び第2部材の下端部を示す図であり、(a)は第1部材の平面図及び正面図、(b)は第2部材の下端部の正面図及び底面図、(c)は第1部材の上端部と第2部材の下端部を突き合わせて固定した状態を示す平面図及び正面図、(d)は第1部材の変更形態を示す平面図及び正面図である。
図6】本発明第1実施形態の支柱管の変更形態の端面図である。
図7】本発明第1実施形態の発電フェンスの施工例を示す正面図である。
図8】同じく側面図である。
図9】3つの相違する角度からの太陽電電池モジュールへの日射量の比較を示すグラフである。
図10】4つの相違する角度からの太陽電電池モジュールへの日射量の比較を示す一覧図表である。
図11】本発明第1実施形態の発電フェンスの駐車場への適用例を示す施工平面図である。
図12】本発明第2実施形態の発電フェンスの正面図である。
図13】本発明第2実施形態の上横フレーム及び下横フレームを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は左側面図、(d)は上横フレームに板体を固定した状態を示す左側面図、(e)は下横フレームに板体を固定した状態を示す左側面図である。
図14】本発明第2実施形態の補強部材が設けられた支柱管を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は平面図、(d)は板体を固定した状態を示す平面図である。
図15】実施例1の発電フェンスを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明第1実施形態の発電フェンス1は、両面受光型太陽電池パネル2(以下、パネル2という。)と、パネル2の受光面21が地表面Gと垂直となるように設置され、パネル2の上辺22a、下辺22b及び一対の側辺23a,23bを固定する金属製のコ字形の固定構造3と、を備えている。パネル2の下側にスペースSを有している(図1参照)。受光面21が地表面Gと垂直であるため、設置場所を拡大することができる。
【0023】
この固定構造3が、地中に打設されるスクリュー杭41を有する、管状の一対の第1部材4と、パネル2を第1締結部材5により固定する管状の第2部材6と、を備え、第1部材4と前記第2部材6とが脱着可能な構造である。
【0024】
第2部材6が、上下一対の平行に配置される上横フレーム61a、下横フレーム61bと、上横フレーム61a、下横フレーム61bの両端に固定される左右一対の支柱管62と、を有している。下横フレーム61b及び上横フレーム61aと、支柱管62とは、固定具69、例えばアングル形状のブラケットを介してそれぞれボルト・ナット5a,5bで締結されている(図2~4参照)。上横フレーム61aの上側に横導管63が配置されている。パネル2の上辺22aと下辺22bが、一対の横フレーム61a、61bに固定され、一対の側辺23a,23bが第2部材6の支柱管62の上部領域の内側に固定されている。第2部材6の下端には、支柱管62の下端を挿入する管65を設けており、管65と支柱管62とはボルト・ナット5cで締結されている。
【0025】
管65の下端と、第1部材4の上端に、それぞれ、長孔付きのフランジ7,8を有し、それぞれのフランジ7,8が突合わされて、第2締結部材9で固定が可能である(図5(a)~(c)参照)。このように固定されるため、設置の自由度が高く、施工性がよい。
【0026】
図5(d)示すように、第1部材4は、スクリュー杭41に換えて、中空の円筒体であり、先端に切削刃141aを有するホールソーである中空杭141を採用してもよい。地中に打設される際に、中空杭141の内部に土が収容されるため、打設による地表面の盛り上がりを防止することができ、施工性がより向上する。
【0027】
支柱管62は断面略円形であり、支柱管62の両側に一対の縦方向に設けられた凹溝66を背向するように有し、この凹溝66の両側からパネル2の側辺23a,23bを差し込むことにより、パネル2が直線上に連結される(図2参照)。パネル2の連結数は適宜に選択できる。支柱管62の中空62aに、棒状の補強部材64を設けてもよい。補強部材64を設けることにより、発電フェンス1の耐風圧性を向上させることができる。補強部材64を設ける場合には、図6に示すように、縦方向(パネル2の厚さ方向)の幅が、横方向(パネル2の長さ方向)の幅よりも大きい補強部材64を設けるための中空162aを中心に形成した支柱管162を使用してもよい。これにより、発電フェンス1の耐風性がより向上する。支柱管62,162の断面形状は、略円形に限定されず、矩形、多角形、楕円形、長円形等であってもよい。
【0028】
第1部材4の長孔42と、第2部材6の長孔67とが、直線上の複数対の長孔であり、対応する位置に設けられる。
【0029】
横導管63の中空に配線スペースHが設けられて配線がなされ、支柱管62の凹溝66が一対の連続溝で背向するように配置され、凹溝66に一対の側辺23a,23bを差し込んで固定する構造である。凹溝66は2段に縮径されていて、外側に広い段部、内側に狭い段部を備え、パネル2の端部を受容するようになっている。パネル2は、その中央部に電極24,25(図7参照)と縦方向の配線カバー26とを有しており、電極24,25に接続された配線(図示略)は配線カバー26内に配置されている。配線カバー26は、その上端部が横導管63にビス止めされ、その下端部が、ボルト・ナット5dで下横フレーム61bに固定された固定具69にビス止めされることによって固定されている。
【0030】
上横フレーム61aに、上横フレーム61aと横導管63の内部と配線カバー26の内部を連通する位置に縦方向の切欠部68が設けられており、電極24,25に接続された配線は切欠部68を通じて横導管63の配線スペースHに誘導されるようになっている(図4参照)。
【0031】
発電フェンス1によれば、配線等の施工性を改善し、設置場所の自由度が大きくなり、外観を向上でき、耐風圧性を改善することができる。例えば、駐車場200であれば、発電フェンス1が駐車の邪魔にならず、駐車場200を円滑に運営や利用ができる。
【0032】
本発明第1実施形態の発電フェンス1の施工方法について説明する。オーガ式杭打ち機(図示略)を使用して垂直方向を維持しながら、スクリュー杭41を有する、管状の一対の第1部材4を地中に打ち込み、フランジ8を地表に配置する杭打工程を実施する。
【0033】
パネル2の側辺23a,23bを凹溝66に嵌合させ、パネル2の上辺22aの上面に上横フレーム61a、下辺22bの下面に下横フレーム61bを当て、上横フレーム61aの上側に横導管63を組み付け、配線スペースHに配線工事を行い、固定具69等の固定用の部材を用いて、第1締結部材5(ボルト・ナット5a~5c)で緊締し、配線カバー26を組み付けることにより、パネル2の一対の側辺23a,23bが支柱管62の上部領域の内側に位置するように、上横フレーム61a、下横フレーム61b、及び支柱管62等で構成される第2部材6にパネル2を固定する第1固定工程を実施する。第1固定工程は、予め、工場で行っても、現場で行ってよい。
【0034】
フランジ7,8が突合わされて、第2締結部材9で固定することにより、パネル2の受光面21が地表面Gと垂直となるように設置される第2固定工程を実施する。
【0035】
第1固定工程と同様に他のパネル2と他の第2部材6とを組み立て(第1工程において組み立てた第2部材6と接合する側の支柱管62は取り付けない)、配線スペースHに配線工事を行い、支柱管62を取り付けていない側の他のパネル2の側辺を第1固定工程で組み立てた第2部材6の支柱管62に取り付け、パネル2の片側のみに第2固定工程を行う連結工程を実施する。この工程により、複数のパネルをそれらの受光面21が垂直となるように直線上に連結して配置することができる。
【0036】
図7図8は駐車場200にパネル2を2個、設置した例であり、駐車場200の隣接する区画の境界ライン上に設置し、駐車区画に自動車100を駐車するものである。
【0037】
このような発電フェンスの施工方法を実施することにより、発電フェンス1と同様の効果を奏する。架台が不要で、パネル2をその架台下部を水平に維持しかつ任意の傾斜によりつり上げ移動する工程がなく、パネル2をつり上げるワイヤー調整型吊具も不要となるので、効率的な構築ができる利点がある。
【0038】
図9図10は、パネル2の月平均日射量、出力、発電量等の関係を示すものであり、十分な電力が得られることがわかる。
【0039】
図11に、駐車場200の区画に沿って、多数の発電フェンス1が直線上に配置された例を示す。
【0040】
本発明の第2実施形態の発電フェンス201を説明する。第1実施形態と共通するものについては、同一の符号を付して、その図示及び説明を援用し、主に相違点を説明する。発電フェンス201は、第2部材6に換えて、上横フレーム261a、下横フレーム261b、及び支柱管262を有する第2部材206を備える(図12参照)。上横フレーム261a、下横フレーム261b、及び支柱管262は、断面略矩形であり、各側面には、長さ方向に連続する溝210が少なくとも1つ設けられた中空の棒状体である(図12~14参照)。溝210にボルトの頭部を挿入可能である。支柱管262としては、上横フレーム261a及び下横フレーム261bよりも断面の寸法が大きいものを使用してもよい。これにより、発電フェンス201の耐風圧性が向上する。上横フレーム261a、下横フレーム261b、及び支柱管262は、汎用のアルミフレームを使用することができるため、製造コストを削減することができる。
【0041】
支柱管262の中空262aには、補強部材64が設けられている(図12、14参照)。補強部材64を設けることにより、発電フェンス201の耐風圧性を向上させることができる。支柱管262により発電フェンス201が十分な耐風圧性を有する場合には、補強部材64を設けなくてもよい。パネル2の第2部材206への固定は、上横フレーム261a、下横フレーム261b、及び支柱管262のそれぞれに、ボルト・ナット205により板体211を取り付け(図12、13(d)、14(d)参照)、この板体211にパネル2の上辺22a、下辺22b、及び側辺23a、23bを固定することにより行う。
【実施例
【0042】
[実施例1]
実施例1では、パネル2を直線上に2枚連結した第2実施形態の発電フェンス301を作成し(図15参照)、耐風圧試験を行った。発電フェンス301は、設置した状態において地上に位置する部分のみを作成した。発電フェンス301の寸法は、長さ4482mm、高さ2120mmであった。パネル2には、Astro Twins 450W(商品名、A CHINT.CO製)を採用した。パネル2の寸法は、長さが2094mm、高さが1038mm、幅が30mmであった。上横フレーム261a及び下横フレーム261bは、長さが2131mm、断面が30mm×30mmのA6N01S-T5(アルミニウム合金)製のアルミフレームであるNFS3030(型式、鍋清グローリー株式会社製)を採用した。支柱管262は、長さが1870mm、断面が60mm×60mmのA6N01S-T5製のアルミフレームであるNFS6060(型式、鍋清グローリー株式会社製)を採用した。各支柱管262の中空262aには、長さが1870mmであり、断面が38mm×19mmの角棒体であるSS400製の補強部材64を設けた。配線カバー26及び横導管63は、A6N01S-T5製の厚さ1.5mmの板を曲げて作成した。管65は、長さ300mm、断面が71mm×71mm、厚みが5mmのSS400製の角管体を採用した。フランジ7、8は、外径が200mm、厚みが10mmのSS400製の円盤体を採用した。第1部材4は、設置時に地上に位置する部分のみであり、フランジ8を除いた部分は、長さが120mm、外径が76mm、厚みが5.5mmのSS400製の円管体を採用した。
【0043】
耐風圧試験は、第1部材4の下端部を固定した状態で耐風圧試験装置(図示略)に取り付けた発電フェンス301に対して、正面から背面に向かって風圧力を加えることにより行った。加えた風圧力は、粗度区分II~IVの地点における風速40m/sに対応するものとし、風圧力を加える時間を10秒間とした。上記風圧力は、日本工業規格(JIS C 8955:2017)、建築基準法施行令第87条、及び建設省告示第1454号に基づいて算出し、粗度区分II~IVにおいて、それぞれ、2.39kPa、1.61kPa、1.39kPaであった。耐風圧試験の評価は、設定した風圧力を加えた時(載荷時)及び除去した後(除荷後)における、パネル2及び支柱管262の最大たわみ量の測定と発電フェンス301の状態の観察により行った。最大たわみ量の測定は、発電フェンス301に分解能0.01mm及び0.05mmの変位計(図示略)を設置し、耐風圧試験前の位置を基準として、正面視で中央及び右側に位置する支柱管262と右側のパネル2に対して行った(図15参照)。正面から背面への変位を+側の変位として最大たわみ量を算出した。耐風圧試験の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
粗度区分IIの条件時の中央の支柱管262が、載荷時及び除荷後において最も大きい最大たわみ量を示し、その値はそれぞれ、236.7mm及び73.0mmであった。いずれの風圧力の載荷時及び除荷後においても、破損が確認されず、発電フェンス301は、高い耐風圧性を有していた。
【0046】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、改変等を加えることが出来るものであり、それらの改変、均等物等も本発明の技術的範囲に含まれる。固定構造3の形状、構造は、実施形態に限定されず、適宜、変更や追加が可能である。上横フレーム61aと横導管63は、パネル2の1個に各々対応する形状に設定されているが、パネル2の複数個に各々対応する形状に設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、フェンスが直立した発電パネルを備えることで、駐車場、土地境界部分等を活用して、太陽光パネルの設置場所を増大させて、太陽光発電の量を増大させることにより、発電ニーズに的確に応えることができ、その工業的利用価値は大である。
【符号の説明】
【0048】
1,201,301…発電フェンス
2…両面受光型太陽電池パネル
21…受光面
22a…上辺
22b…下辺
23a,23b…側辺
24,25…電極
26…配線カバー
3…固定構造
4…第1部材
41…スクリュー杭
42…長孔
5…第1締結部材
5a,5b,5c,5d,205…ボルト・ナット
6,206…第2部材
61a,261a…上横フレーム
61b,261b…下横フレーム
62,162,262…支柱管
62a,162a,262a…中空
63…横導管
64…補強部材
65…管
66…凹溝
67…長孔
68…切欠部
69…固定具
7,8…フランジ
9…第2締結部材
100…自動車
141…中空杭
141a…切削刃
200…駐車場
210…溝
211…板体
G…地表面
H…配線スペース
S…スペース
【要約】
施工性を改善し、設置場所の自由度が大きく、配線施工性や外観を向上させ、耐風圧性を改善することを目的とする。発電フェンス1は、両面受光型太陽電池パネル2と、パネル2の受光面21が地表面Gと垂直となるように設置され、パネル2の上辺22a、下辺22b及び一対の側辺23a,23bを固定する金属製の固定構造3と、を備え、パネル2の下側にスペースSを有し、この固定構造3が、地中に打設されるスクリュー杭41を有する、管状の一対の第1部材4と、パネル2を第1締結部材5により固定する管状の第2部材6とが脱着可能な構造である。
図1
図2
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図15