(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】67kDaラミニンレセプター活性化剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/353 20060101AFI20220421BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220421BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20220421BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220421BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220421BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20220421BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220421BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220421BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220421BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220421BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220421BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220421BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
A61K31/353
A23L33/105
A61K31/7048
A61K45/00 ZNA
A61P3/04
A61P7/02
A61P9/10 101
A61P21/00
A61P29/00
A61P35/00
A61P37/04
A61P37/08
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2017151708
(22)【出願日】2017-08-04
【審査請求日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2016158139
(32)【優先日】2016-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】立花 宏文
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-075790(JP,A)
【文献】特開2007-119412(JP,A)
【文献】特開2005-336117(JP,A)
【文献】特開2001-039881(JP,A)
【文献】特開平08-003054(JP,A)
【文献】特開平10-077231(JP,A)
【文献】国際公開第11/162320(WO,A1)
【文献】国際公開第15/199169(WO,A1)
【文献】中村淳一 他,特定保健用食品「黒烏龍茶 OTPP」の継続摂取による内蔵脂肪低減効果とその安全性,薬理と治療,2007年06月,Vol.35, No.6,p.661-671,第662頁右欄、[2.試験飲料]、第671頁左欄第10-19行
【文献】松井陽吉,茶系飲料について ウーロン茶の魅力,日本食生活学会誌,2000年,Vol,11 No.1,第2-15頁,第10頁右欄[表17]、第11頁左欄(2)
【文献】吉本孝憲,ウーロンホモビスフラバンBは67LRを介して多発性骨髄腫細胞にアポトーシスを誘導する,JSoFF LETTER [online],No.71, 6月号,2017年06月15日,インターネット, 第11頁,<URL:http://nodaiweb.university.jp/jsoff/jsoffletter71.pdf>, 第11頁全文
【文献】第21回日本フードファクター学会学術集会、2016年11月、第74頁、アブストラクト番号YIA-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/353
A23L 33/105
A61K 31/7048
A61K 45/00
A61P 3/04
A61P 7/02
A61P 9/10
A61P 21/00
A61P 29/00
A61P 35/00
A61P 37/04
A61P 37/08
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウーロンホモビスフラバンBを有効成分として含有する、67kDaラミニンレセプター(67LR)
活性化剤。
【請求項2】
67LR関連疾患の予防又は治療用で
あり、前記67LR関連疾患が、癌、アレルギー、動脈硬化、炎症、筋委縮、血栓症又は免疫不全である、請求項
1に記載の67LR
活性化剤。
【請求項3】
請求項
1に記載の67LR
活性化剤と、ホスホジエステラーゼ阻害剤又はフラバノン若しくはその配糖体とを含有する、67LR
を活性化するための組成物
であって、
前記ホスホジエステラーゼ阻害剤がホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害剤であり、
前記フラバノン若しくはその配糖体が、エリオジクチオール、ナリンゲニン、ヘスペレチン、エリオジクチオール配糖体、ナリンゲニン配糖体又はヘスペレチン配糖体である、組成物。
【請求項4】
67LR関連疾患の予防又は治療用で
あり、前記67LR関連疾患が、癌、アレルギー、肥満又は炎症である、請求項
3に記載の67LR
を活性化するための組成物。
【請求項5】
前記67LR関連疾患が癌である、請求項4に記載の67LRを活性化するための組成物。
【請求項6】
請求項
1に記載の67LR
活性化剤を含有する、67LR関連疾患の予防又は改善用食品組成物
であって、前記67LR関連疾患が、癌、アレルギー、動脈硬化、炎症、筋委縮、血栓症又は免疫不全である、食品組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の67LR活性化剤と、ホスホジエステラーゼ阻害剤又はフラバノン若しくはその配糖体
とを含有する
、67LR関連疾患の予防又は改善用食品組成物
であって、
前記ホスホジエステラーゼ阻害剤がホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害剤であり、
前記フラバノン若しくはその配糖体が、エリオジクチオール、ナリンゲニン、ヘスペレチン、エリオジクチオール配糖体、ナリンゲニン配糖体又はヘスペレチン配糖体であり、
前記67LR関連疾患が、癌、アレルギー、肥満又は炎症である、食品組成物。
【請求項8】
前記67LR関連疾患が癌である、請求項7に記載の食品組成物。
【請求項9】
請求項
6に記載の食品組成物を
非ヒト動物に摂取させる工程を備える、
癌、アレルギー、動脈硬化、炎症、筋委縮、血栓症又は免疫不全の予防又は改善方
法。
【請求項10】
請求項7に記載の食品組成物を非ヒト動物に摂取させる工程を備える、癌、アレルギー、肥満又は炎症の予防又は改善方法。
【請求項11】
請求項8に記載の食品組成物を非ヒト動物に摂取させる工程を備える、癌の予防又は改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、67kDaラミニンレセプター(以下、「67LR」という場合がある。)アゴニスト及びその使用に関する。より具体的には、67LRアゴニスト、67LRアゴニスト組成物、67LR関連疾患の予防又は改善用食品組成物及び67LR関連疾患の予防又は改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶に含まれる主要なカテキンの一種であるエピガロカテキンガレート(Epigallocatechin-O-gallate、以下、「EGCG」という場合がある。)は、抗癌作用を有することが報告されており(例えば、非特許文献1を参照。)、血液癌の一種である慢性リンパ性白血病患者において第二相臨床試験が行われている(例えば、非特許文献2を参照。)。
【0003】
発明者らは、これまでにEGCGが細胞膜上の67LRに結合することで抗癌作用を発揮することを明らかにした(例えば、非特許文献3を参照。)。67LRの発現は癌細胞において異常に亢進している。EGCGが67LRに結合すると、Aktが活性化され、内皮性一酸化窒素合成酵素(eNOS)を活性化され、一酸化窒素(NO)及び環状グアノシン一リン酸(cGMP)の産生が誘導され、タンパク質キナーゼCδ(PKCδ)が活性化され、産生スフィンゴミエリナーゼ(ASM)が活性化され、その結果、細胞死が誘導される。すなわち、EGCGは、67LRを介してeNOS/PKCδ/ASM経路を活性化し、細胞致死活性を示す。
【0004】
67LRを介したEGCGの作用には、抗癌作用だけでなく、抗アレルギー作用、抗肥満作用、抗動脈硬化作用、抗炎症作用、筋萎縮阻害作用、コレステロール低下作用、抗血栓性作用、免疫増強作用、神経細胞保護作用等が知られている(例えば、特許文献1、2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2011/162320号
【文献】国際公開第2015/199169号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Khan N, et al., Targeting multiple signaling pathways by green tea polyphenol (-)-epigallocatechin-3-gallate., Cancer res., 66 (5), 2500-2505, 2006.
【文献】Shanafelt TD, et al., Phase I trial of daily oral Polyphenon E in patients with asymptomatic Rai stage 0 to II chronic lymphocytic leukemia., J. Clin. Oncol., 27 (23), 3808-3814, 2009.
【文献】Tachibana H, et al., A receptor for green tea polyphenol EGCG., Nat. Struct. Mol. Biol., 11 (4), 380-381, 2004.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況のもと、EGCGの作用増強が強く望まれている。本発明は、EGCGよりも強力な67LRアゴニストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の態様を含む。
[1]ウーロン茶重合ポリフェノール又はその誘導体を有効成分として含有する、67LRアゴニスト。
[2]前記ウーロン茶重合ポリフェノール又はその誘導体が、下記式(1)又は(2)で表される化合物である、[1]に記載の67LRアゴニスト。
【化1】
[式(1)中、R
1はそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1~3のアルキル基又は-OR
2(ここで、R
2はグルコース、マンノース、キシロース、ガラクトース又はマルトースから水素原子を1個除いた基を表す。)を表し、R
3はそれぞれ独立に存在しないか又はハロゲン原子若しくは炭素数1~3のアルキル基を表し、R
4はそれぞれ独立に水素原子又は下記式(1A)で表される基を表す。]
【化2】
[式(1A)中、R
1及びR
3の定義は前記式(1)における定義に同じである。]
【化3】
[式(2)中、R
1、R
3、及びR
4の定義は前記式(1)における定義に同じである。]
[3]前記ウーロン茶重合ポリフェノール又はその誘導体が、下記式(3)~(6)のいずれかで表される化合物である、[1]又は[2]に記載の67LRアゴニスト。
【化4】
[式(3)中、R
1、R
3、及びR
4の定義は前記式(1)における定義に同じである。]
【化5】
[式(4)中、R
1、R
3、及びR
4の定義は前記式(1)における定義に同じである。]
【化6】
[式(5)中、R
1、R
3、及びR
4の定義は前記式(1)における定義に同じである。]
【化7】
[式(6)中、R
1、R
3、及びR
4の定義は前記式(1)における定義に同じである。]
[4]67LR関連疾患の予防又は治療用である、[1]~[3]のいずれかに記載の67LRアゴニスト。
[5]前記67LR関連疾患が、癌、アレルギー、肥満、動脈硬化、炎症、筋委縮、高コレステロール血症、血栓症又は免疫不全である、[4]に記載の67LRアゴニスト。
[6][1]~[3]のいずれかに記載の67LRアゴニストと、ホスホジエステラーゼ阻害剤又はフラバノン若しくはその配糖体とを含有する、67LRアゴニスト組成物。
[7]67LR関連疾患の予防又は治療用である、[6]に記載の67LRアゴニスト組成物。
[8]前記67LR関連疾患が、癌、アレルギー、肥満、動脈硬化、炎症、筋委縮、高コレステロール血症、血栓症又は免疫不全である、[7]に記載の67LRアゴニスト組成物。
[9][1]~[3]のいずれかに記載の67LRアゴニストを含有する、67LR関連疾患の予防又は改善用食品組成物。
[10]ホスホジエステラーゼ阻害剤又はフラバノン若しくはその配糖体を更に含有する、[9]に記載の67LR関連疾患の予防又は改善用食品組成物。
[11][9]又は[10]に記載の食品組成物をヒト又は動物に摂取させる工程を備える、67LR関連疾患の予防又は改善方法(ヒトに対する医療行為を除く。)。
[12]前記67LR関連疾患が、癌、アレルギー、肥満、動脈硬化、炎症、筋委縮、高コレステロール血症、血栓症又は免疫不全である、[11]に記載の予防又は改善方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、EGCGよりも強力な67LRアゴニストを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)~(n)は、実験例1における各癌細胞株の生存率を示すグラフである。
【
図2】実験例1において、各癌細胞株に対するウーロンホモビスフラバンB(OHBFB)のIC
50とEGCGのIC
50をプロットしたグラフである。
【
図3】(a)及び(b)は、実験例2における蛍光顕微鏡写真である。
【
図4】実験例3における細胞生存率の測定結果を示すグラフである。
【
図5】実験例4における細胞内cGMPの測定結果を示すグラフである。
【
図6】実験例5における細胞生存率の測定結果を示すグラフである。
【
図7】(a)は、実験例6において、リン酸化eNOS
Ser1177及びeNOSをウエスタンブロット法により検出した結果を示す写真である。(b)は、(a)の結果を数値化し、eNOSの存在量に対するリン酸化eNOS
Ser1177の存在量を算出した結果を示すグラフである。
【
図8】実験例7における細胞生存率の測定結果を示すグラフである。
【
図9】実験例8におけるAkt活性の測定結果を示すグラフである。
【
図10】実験例9における細胞生存率の測定結果を示すグラフである。
【
図11】実験例10における細胞生存率の測定結果を示すグラフである。
【
図12】実験例11におけるアイソボログラム解析の結果を示すグラフである。
【
図13】実験例12におけるアイソボログラム解析の結果を示すグラフである。
【
図14】実験例13における細胞生存率の測定結果を示すグラフである。
【
図15】(a)及び(b)は、実験例14において、CV-caspase-3を免疫染色した結果を示す蛍光顕微鏡写真である。(c)は、(a)及び(b)における、CV-caspase-3陽性細胞数を計測した結果を示すグラフである。
【
図16】(a)及び(b)は、実験例14において、リン酸化eNOS
Ser1177を免疫染色した結果を示す蛍光顕微鏡写真である。
【
図17】(a)及び(b)は、実験例14において、リン酸化PKCδ
Ser662を免疫染色した結果を示す蛍光顕微鏡写真である。
【
図18】実験例14において、OHBFB非投与群(対照)及び投与群の腫瘍組織におけるASM活性の測定結果を示すグラフである。
【
図19】OHBFBにより活性化される、eNOS/PKCδ/ASM経路の模式図を示す。
【
図20】実験例16における細胞内cGMPの測定結果を示すグラフである。
【
図21】(a)~(c)は、実験例17におけるリアルタイムPCRの結果を示すグラフである。
【
図22】実験例18におけるリアルタイムPCRの結果を示すグラフである。
【
図23】実験例19におけるリアルタイムPCRの結果を示すグラフである。
【
図24】実験例20におけるTNF-α量の算出結果を示すグラフである。
【
図25】実験例21におけるβ-ヘキソサミニダーゼの遊離率の算出結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[67LRアゴニスト]
1実施形態において、本発明は、ウーロン茶重合ポリフェノール又はその誘導体を有効成分として含有する、67LRアゴニストを提供する。
【0012】
実施例において後述するように、本実施形態の67LRアゴニストは、EGCGよりも強力に67LRの下流のシグナル伝達経路を活性化する。ここで、EGCGよりも強力であるとは、例えば、EGCGと比較して50%阻害濃度(IC50)が低いことを意味する。IC50は、例えば、癌細胞の培地に段階希釈した67LRアゴニストを添加し、96時間培養後の細胞生存率を測定すること等により測定することができる。
【0013】
ウーロン茶重合ポリフェノールとは、半発酵というウーロン茶の独特の製造方法において、酵素反応や熱重合反応により形成される、カテキン類が複雑に結合した化合物の総称であり、例えばカテキン類の2量体、カテキン類の3量体等が挙げられる。カテキン類の2量体としては、例えば、後述するウーロンホモビスフラバンA、モノデスガロイルウーロンホモビスフラバンA、ウーロンホモビスフラバンB、ウーロンホモビスフラバンC等のウーロンホモビスフラバン類等が挙げられる。
【0014】
本実施形態の67LRアゴニストの分子量は、例えば800以上であってもよく、例えば900以上であってもよく、例えば1000以上であってもよい。67LRアゴニストの分子量の上限は特に制限されないが、概ね3000程度であってもよい。
【0015】
一般的に、分子量が500以上の化合物は、経口投与した場合に生体内への吸収が悪いと考えられている。このため、ウーロン茶重合ポリフェノールは、経口投与しても生体内に吸収されにくいと考えられている。
【0016】
これに対し、発明者らは、実施例において後述するように、本実施形態の67LRアゴニストは、分子量が比較的大きいにもかかわらず、経口投与により生体内の癌組織に到達し、67LRの下流のシグナル伝達経路を活性化することができることを明らかにした。
【0017】
本実施形態の67LRアゴニストは、ウーロン茶重合ポリフェノール又はその誘導体の溶媒和物であってもよく、ウーロン茶重合ポリフェノール又はその誘導体の薬学的に許容される塩であってもよく、薬学的に許容される塩の溶媒和物であってもよい。
【0018】
薬学的に許容される塩としては、例えば、無機酸塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等が挙げられる。より具体的には、例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メシル酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、亜鉛塩等の金属塩;アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;モルホリン、ピペリジン等の有機アミン付加塩;グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸付加塩等が挙げられる。
【0019】
また、ウーロン茶重合ポリフェノール又はその誘導体の溶媒和物、ウーロン茶重合ポリフェノール又はその誘導体の塩の溶媒和物としては、薬学的に許容される溶媒和物であれば特に制限されず、例えば、水和物、有機溶媒和物等が挙げられる。
【0020】
より具体的な本実施形態の67LRアゴニストとしては、例えば、下記式(1)又は(2)で表される化合物が挙げられる。
【0021】
【化8】
[式(1)中、R
1はそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1~3のアルキル基又は-OR
2(ここで、R
2はグルコース、マンノース、キシロース、ガラクトース又はマルトースから水素原子を1個除いた基を表す。)を表し、R
3はそれぞれ独立に存在しないか又はハロゲン原子若しくは炭素数1~3のアルキル基を表し、R
4はそれぞれ独立に水素原子又は下記式(1A)で表される基を表す。]
【0022】
【化9】
[式(1A)中、R
1及びR
3の定義は前記式(1)における定義に同じである。]
【0023】
【化10】
[式(2)中、R
1、R
3、及びR
4の定義は前記式(1)における定義に同じである。]
【0024】
上記式(1)で表される化合物は、ウーロンホモビスフラバン類と呼ばれる化合物又はその誘導体を含む。いいかえると、上記式(1)で表される化合物は、カテキン類の2量体を骨格とする化合物であるということができる。また、上記式(2)で表される化合物は、カテキン類の3量体を骨格とする化合物であるということができる。
【0025】
本実施形態の67LRアゴニストは、67LRのアゴニスト活性を有している限り、ウーロン茶重合ポリフェノールの誘導体であってもよい。ウーロン茶重合ポリフェノールの誘導体としては、例えばウーロン茶重合ポリフェノールを基本骨格として、一部の官能基を変更する等した化合物が挙げられる。
【0026】
ウーロン茶重合ポリフェノールを誘導体化することにより、例えば、水溶性、脂溶性等の物理的な性質や、67LRアゴニスト活性、血中滞留性、生体毒性等の生物学的な活性等を所望の範囲に調節することができる。
【0027】
ウーロン茶重合ポリフェノールの誘導体としては、上記式(1)、上記式(1A)又は上記式(2)において、R1がそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1~3のアルキル基又は-OR2(ここで、R2はグルコース、マンノース、キシロース、ガラクトース又はマルトースから水素原子を1個除いた基を表す。)であり、R3がそれぞれ独立に存在しないか又はハロゲン原子若しくは炭素数1~3のアルキル基である化合物等が挙げられる。
【0028】
ここで、R1又はR3で表される炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。炭素数1~3のアルキル基は置換されていてもよい。炭素数1~3のアルキル基の置換基としては、例えばハロゲン原子が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。また、R3で表されるハロゲン原子としては、フッ素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0029】
更に具体的な本実施形態の67LRアゴニストとしては、例えば、下記式(3)~(6)のいずれかで表される化合物が挙げられる。
【0030】
【化11】
[式(3)中、R
1、R
3、及びR
4の定義は前記式(1)における定義に同じである。]
【0031】
式(3)で表され、式(3)中、R1がヒドロキシル基であり、R3が存在せず、R4が上記式(1A)で表され、式(1A)中、R1がヒドロキシル基であり、R3が存在しない化合物は、ウーロンホモビスフラバンAとして知られる化合物である。すなわち、本実施形態の67LRアゴニストは、ウーロンホモビスフラバンA又はその誘導体であってもよい。
【0032】
また、上記のウーロンホモビスフラバンAにおいて、R4で表される基の一方が水素原子である化合物は、モノデスガロイルウーロンホモビスフラバンAとして知られる化合物である。すなわち、本実施形態の67LRアゴニストは、モノデスガロイルウーロンホモビスフラバンA又はその誘導体であってもよい。
【0033】
【化12】
[式(4)中、R
1、R
3、及びR
4の定義は前記式(1)における定義に同じである。]
【0034】
式(4)で表され、式(4)中、R1がヒドロキシル基であり、R3が存在せず、R4が上記式(1A)で表され、式(1A)中、R1がヒドロキシル基であり、R3が存在しない化合物は、ウーロンホモビスフラバンBとして知られる化合物である。すなわち、本実施形態の67LRアゴニストは、ウーロンホモビスフラバンB又はその誘導体であってもよい。
【0035】
【化13】
[式(5)中、R
1、R
3、及びR
4の定義は前記式(1)における定義に同じである。]
【0036】
式(5)で表され、式(5)中、R1がヒドロキシル基であり、R3が存在せず、R4が上記式(1A)で表され、式(1A)中、R1がヒドロキシル基であり、R3が存在しない化合物は、ウーロンホモビスフラバンCとして知られる化合物である。すなわち、本実施形態の67LRアゴニストは、ウーロンホモビスフラバンC又はその誘導体であってもよい。
【0037】
【化14】
[式(6)中、R
1、R
3、及びR
4の定義は前記式(1)における定義に同じである。]
【0038】
式(6)で表される化合物は、例えば、次のような製造方法により製造することができる。すなわち、エピガロカテキン-3-O-ガレート等のフラバン-3-オール類を、メタノール、エタノール等の溶媒中で、塩酸、硫酸等の酸の存在下、ホルムアルデヒドと反応させること等により製造することができる。反応溶液中のホルムアルデヒドの濃度は、3~37w/v%が好ましい。生じた生成物は、必要に応じてエステル化、加水分解等の誘導化を行ってもよい。
【0039】
本実施形態の67LRアゴニストは、67LR関連疾患の予防又は治療用に好適に用いることができる。本明細書において、67LR関連疾患としては、癌、アレルギー、肥満、動脈硬化、炎症、筋委縮、高コレステロール血症、血栓症、免疫不全等が挙げられる。
【0040】
実施例において後述するように、本実施形態の67LRアゴニストを生体に投与することにより、例えば癌細胞致死活性、すなわち抗癌活性を発揮することができる。癌としては、67LRの発現が亢進している癌であれば特に制限されず、例えば、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、前立腺癌、メラノーマ、乳癌、肺癌、子宮頸癌、結腸癌等が挙げられる。
【0041】
また、実施例において後述するように、本実施形態の67LRアゴニストの作用機序はEGCGの作用機序と同様である。したがって、本実施形態の67LRアゴニストは、EGCGにおいて見出されているものと同様の用途に用いることができる。
【0042】
[67LRアゴニスト組成物]
1実施形態において、本発明は、上述した67LRアゴニストと、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤又はフラバノン若しくはその配糖体とを含有する、67LRアゴニスト組成物を提供する。67LRアゴニストとしては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
本実施形態の67LRアゴニスト組成物は、上述した67LRアゴニストと、PDE阻害剤とを含有するものであってもよい。
【0044】
実施例において後述するように、上述した67LRアゴニストと、PDE阻害剤とを併用することにより、67LRアゴニストの活性を相乗的に増強することができる。
【0045】
PDE阻害剤は、cAMP、cGMP等の環状リン酸ジエステルを加水分解する酵素を阻害する物質であり、非選択的なPDE阻害剤と選択的なPDE阻害剤とが知られている。本実施形態の67LRアゴニスト組成物が含有するPDE阻害剤は、非選択的なPDE阻害剤であってもよく、選択的なPDE阻害剤であってもよい。
【0046】
非選択的なPDE阻害剤としては、例えば、カフェイン、テオフィリン、テオブロミン、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、ペントキシフィリン等が挙げられる。
【0047】
選択的なPDE阻害剤としては、例えば、8-メトキシ-3-イソブチル-1-メチルキサンチン等のPDE1阻害剤;エリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニン塩酸塩等のPDE2阻害剤;シロスタミド、ミルリノン、トレキシン等のPDE3阻害剤;エタゾラート塩酸塩、デンブフィリン等のPDE4阻害剤;バルデナフィル、シルデナフィル、ザプリナスト、タダラフィル、ジピリダモール、4-{[3’,4’-(メチレンジオキシ)ベンジル]アミノ}-6-メトキシキナゾリン、1-(3-クロロアニリノ)-4-フェニルフタラジン(MY-5445)、硫化水素等のPDE5阻害剤が挙げられる。中でも、PDE3阻害剤又はPDE5阻害剤が好ましい。
【0048】
ところで、生体にポリスルフィド類を投与すると、代謝されて硫化水素が生成される。このため、ポリスルフィド類はPDE5阻害剤であるということができる。ポリスルフィド類としては、例えばジアリルジスルフィド、ジアリルトリスルフィド等が挙げられる。
【0049】
本実施形態の67LRアゴニスト組成物において、PDE阻害剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、67LRアゴニストも、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
本実施形態の67LRアゴニスト組成物において、PDE阻害剤100質量部あたりの67LRアゴニストの配合割合は、例えば1~1000質量部であってもよく、例えば1~500質量部であってもよく、例えば10~100質量部であってもよく、例えば10~80質量部であってもよい。
【0051】
本実施形態の67LRアゴニスト組成物は、上述した67LRアゴニストと、フラバノン若しくはその配糖体とを含有するものであってもよい。
【0052】
実施例において後述するように、上述した67LRアゴニストと、フラバノン若しくはその配糖体とを併用することにより、67LRアゴニストの活性を相乗的に増強することができる。
【0053】
フラバノン若しくはその配糖体としては、エリオジクチオール、ナリンゲニン、ヘスペレチン、エリオジクチオール配糖体、ナリンゲニン配糖体、ヘスペレチン配糖体等が挙げられる。
【0054】
本実施形態の67LRアゴニスト組成物において、フラバノン若しくはその配糖体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、67LRアゴニストについても、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
本実施形態の67LRアゴニスト組成物において、フラバノン若しくはその配糖体100質量部あたりの67LRアゴニストの配合割合は、例えば1~100質量部であってもよく、例えば10~100質量部であってもよく、例えば20~100質量部であってもよい。
【0056】
本実施形態の67LRアゴニスト組成物は、上述した67LRアゴニストと、PDE阻害剤と、フラバノン若しくはその配糖体とを含有するものであってもよい。
【0057】
本実施形態の67LRアゴニスト組成物は、67LR関連疾患の予防又は治療用であってもよい。67LR関連疾患としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
【0058】
[医薬組成物]
上述した67LRアゴニスト又は67LRアゴニスト組成物は、薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物として製剤化されていてもよい。
【0059】
上記の医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤等の形態で経口的に、あるいは、注射剤、坐剤、皮膚外用剤等の形態で非経口的に投与することができる。皮膚外用剤としては、より具体的には、軟膏剤、貼付剤等の剤型が挙げられる。
【0060】
薬学的に許容される担体としては、通常医薬組成物の製剤に用いられるものを特に制限なく用いることができる。より具体的には、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴム等の結合剤;デンプン、結晶性セルロース等の賦形剤;アルギン酸等の膨化剤;水、エタノール、グリセリン等の注射剤用溶剤;ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤等が挙げられる。
【0061】
医薬組成物は添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;ショ糖、乳糖、サッカリン、マルチトール等の甘味剤;ペパーミント、アカモノ油等の香味剤;ベンジルアルコール、フェノール等の安定剤;リン酸塩、酢酸ナトリウム等の緩衝剤;安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の溶解補助剤;酸化防止剤;防腐剤等が挙げられる。
【0062】
医薬組成物は、上述した67LRアゴニスト又は67LRアゴニスト組成物と、上述した薬学的に許容される担体及び添加剤を適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することができる。
【0063】
医薬組成物の投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、経口投与の場合には、例えば、投与単位形態あたり0.1~100mg/kg体重の有効成分(67LRアゴニスト)を投与すればよい。また、注射剤の場合には、例えば、投与単位形態あたり0.01~50mgの有効成分を投与すればよい。
【0064】
また、医薬組成物の1日あたりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、例えば、成人1日あたり0.1~100mg/kg体重の有効成分を1日1回又は2~4回程度に分けて投与すればよい。
【0065】
[食品組成物]
1実施形態において、本発明は、上述した67LRアゴニストを含有する、67LR関連疾患の予防又は改善用食品組成物を提供する。本実施形態の食品組成物は、PDE阻害剤又はフラバノン若しくはその配糖体を更に含有していてもよい。
【0066】
実施例において後述するように、本実施形態の食品組成物を生体に摂取させることにより、67LR関連疾患を予防又は改善することができる。67LR関連疾患としては、上述したものが挙げられる。
【0067】
本実施形態の食品組成物において、67LRアゴニストとしては、上述したもののうち、食品への添加が認められたものを適宜使用することができる。
【0068】
より具体的な67LRアゴニストとしては、例えば、ウーロン茶から抽出されたウーロン茶重合ポリフェノール、ウーロンホモビスフラバンA、モノデスガロイルウーロンホモビスフラバンA、ウーロンホモビスフラバンB、ウーロンホモビスフラバンC等が挙げられる。
【0069】
67LRアゴニストは、化学的に合成されたもの又は天然物から精製されたものを添加してもよく、67LRアゴニストを含む食品を食品組成物の原料に用いることにより含有させてもよい。67LRアゴニストを含有する食品としては、例えば、ウーロン茶、ウーロン茶抽出物、紅茶、紅茶抽出物等が挙げられる。
【0070】
本実施形態の食品組成物において、PDE阻害剤は、食品への添加が認められた成分であることが好ましく、例えば、カフェイン、テオフィリン、テオブロミン、ポリスルフィド類等が挙げられる。ポリスルフィド類としては、例えばジアリルジスルフィド、ジアリルトリスルフィド等が挙げられる。これらのPDE阻害剤は、化学的に合成されたもの又は天然物から精製されたものを添加してもよく、これらのPDE阻害剤を含む食品を食品組成物の原料に用いることにより含有させてもよい。カフェインを含有する食品としては、例えば、コーヒー、緑茶、ウーロン茶、紅茶、ココア等が挙げられる。テオフィリンを含有する食品としては、例えば、茶葉等が挙げられる。テオブロミンを含有する食品としては、例えば、カカオ等が挙げられる。ポリスルフィド類を含有する食品としては、ニンニク、ネギ、ニラ、タマネギ、ラッキョウ等のネギ属野菜等が挙げられる。
【0071】
本実施形態の食品組成物において、フラバノン若しくはその配糖体としては、食品への添加が認められた成分であることが好ましく、例えば、エリオジクチオール、ナリンゲニン、ヘスペレチン、エリオジクチオール配糖体、ナリンゲニン配糖体、ヘスペレチン配糖体等が挙げられる。
【0072】
これらのフラバノン若しくはその配糖体は、化学的に合成されたもの又は天然物から精製されたものを添加してもよく、これらのフラバノン若しくはその配糖体を含む食品を食品組成物の原料に用いることにより含有させてもよい。これらのフラバノン若しくはその配糖体を含有する食品としては、例えば、柑橘類が挙げられる。柑橘類としては、例えば、オレンジ、グレープフルーツ、ユズ、ダイダイ、カボス、スダチ、ユコウ、ゆうこう、シークヮーサー、レモン、ライム、ナツミカン、ハッサク、イヨカン、ブンタン、マンダリンオレンジ、ウンシュウミカン、ポンカン、タチバナ、紀州ミカン、バレンシアオレンジ、ネーブルオレンジ、ブラッドオレンジ、ジャッファ・オレンジ、ベルガモット、キノット等のミカン属柑橘類、カラタチ属柑橘類、キンカン属柑橘類等が挙げられる。
【0073】
本実施形態の食品組成物において、67LRアゴニスト、PDE阻害剤、フラバノン若しくはその配糖体は、それぞれ1種を単独で添加してもよく、2種以上を混合して添加してもよい。
【0074】
本実施形態の食品組成物は、1日あたり0.1~100mg/kg体重の67LRアゴニストを摂取するように用いられてもよい。また、食品組成物は、1日1回又は2~4回程度に分けて摂取するように用いられてもよい。
【0075】
本実施形態の食品組成物は、例えば、サプリメントの形態であってもよいし、飲料の形態であってもよいし、固形状、半固形状又はゲル状食品の形態であってもよいし、任意の調理済み食品の形態等であってもよい。サプリメントの形状としては、例えば、実施例において使用したカプセル等の形状が挙げられる。
【0076】
本実施形態の食品組成物は、機能性表示食品であってもよい。「機能性表示食品」とは、科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出られた食品を意味する。当該表示として、例えば、「血中コレステロールを低下させる」、「自然免疫力を向上させ、感染因子からの保護に寄与する」等が挙げられるが、これらに限定されない。また、機能性表示のない食品組成物であっても、機能性をチラシ、広告等に記載又は音声等で表示して製造、販売することも考えらえる。
【0077】
本実施形態の食品組成物は、特別用途食品であってもよい。特別用途食品とは、国の許可を受けて、乳児、幼児、妊産婦、病者等の発育、健康の保持・回復等に適するという特別の用途について表示する食品を意味する。本実施形態の食品組成物は、特別用途食品のうちの病者用食品であってもよい。あるいは、本実施形態の食品組成物は、特別用途食品のうちの特定保健用食品であってもよい。特定保健用食品とは、健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、その効果の表示が許可されている食品を意味する。表示されている効果や安全性については国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官により許可される。
【0078】
[67LR関連疾患の予防又は改善方法]
1実施形態において、本発明は、上述した食品組成物をヒト又は動物に摂取させる工程を備える、67LR関連疾患の予防又は改善方法(ヒトに対する医療行為を除く。)を提供する。ここで、67LR関連疾患としては上述したものが挙げられる。本実施形態の67LR関連疾患の予防又は改善方法において、医療行為とは、医師(医師の指示を受けた者を含む。)がヒトに対して治療を実施する行為を意味する。
【0079】
本実施形態の67LR関連疾患の予防又は改善方法において、ヒト又は動物に摂取させる食品組成物の量としては、1日あたり0.1~100mg/kg体重の67LRアゴニストを摂取する量が挙げられる。食品組成物は、1日1回又は2~4回程度に分けて摂取させてもよい。
【0080】
[その他の実施形態]
1実施形態において、本発明は、ウーロン茶重合ポリフェノール又はその誘導体の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、67LR関連疾患の治療方法を提供する。ここで、ウーロン茶重合ポリフェノール又はその誘導体としては、上述した67LRアゴニストが挙げられる。また、67LR関連疾患としては上述したものが挙げられる。
【0081】
1実施形態において、本発明は、67LR関連疾患の治療のためのウーロン茶重合ポリフェノール又はその誘導体を提供する。ここで、ウーロン茶重合ポリフェノール又はその誘導体としては、上述した67LRアゴニストが挙げられる。また、67LR関連疾患としては上述したものが挙げられる。
【0082】
1実施形態において、本発明は、67LR関連疾患の予防又は治療薬を製造するためのウーロン茶重合ポリフェノール又はその誘導体の使用を提供する。ここで、ウーロン茶重合ポリフェノール又はその誘導体としては、上述した67LRアゴニストが挙げられる。また、67LR関連疾患としては上述したものが挙げられる。
【実施例】
【0083】
次に実験例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0084】
[実験例1]
(ウーロンホモビスフラバンBの抗癌作用)
ウーロンホモビスフラバンB(Oolong homo bis flavan B、以下、「OHBFB」という場合がある。)の抗癌作用を検討した。具体的には、各種の癌細胞株の培地にOHBFBを添加し、生細胞数を測定した。比較のために、エピガロカテキンガレート(以下、「EGCG」という場合がある。)の抗癌作用についても同様に検討した。
【0085】
癌細胞株としては、ヒト多発性骨髄腫細胞株であるU266、ヒト多発性骨髄腫細胞株であるARH77、ヒト多発性骨髄腫細胞株であるRPMI8226、ヒト慢性リンパ性白血病細胞株であるMec-1、ヒト急性骨髄性白血病細胞株であるHL60、ヒト急性骨髄性白血病細胞株であるKasumi-1、ヒト慢性骨髄性白血病細胞株であるKU812を用いた。
【0086】
各癌細胞株は、10%ウシ胎児血清(FCS)を添加したRPMI 1640培地を用いて、37℃、水蒸気飽和した5%CO2条件下で継代し、対数増殖期で培養維持したものを使用した。
【0087】
EGCG(シグマアルドリッチ社製)は、5mMとなるように超純水に溶解して-30℃で保存し、適宜解凍して用いた。OHBFB(長良バイオサイエンス社製)は、5mMとなるように超純水に溶解して-30℃で保存し、適宜解凍して用いた。
【0088】
各癌細胞株を、1%FCS、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)(5U/mL)、カタラーゼ(200U/mL)を添加したRPMI 1640培地に5×104個/mLになるようにそれぞれ懸濁して96ウェルプレートに播種し、終濃度0、5、10又は25μMのOHBFB又はEGCGをそれぞれ添加して96時間培養した。その後、市販のキット(商品名「ATPlite」、パーキンエルマー社)を用いて生細胞数を測定した。
【0089】
図1(a)~(n)は、各癌細胞株の生存率を示すグラフである。
図1(a)~(g)は培地にOHBFBを添加した結果を示し、
図1(h)~(n)は培地にEGCGを添加した結果を示す。
図1(a)及び(h)はU266細胞の結果を示し、
図1(b)及び(i)はARH77細胞の結果を示し、
図1(c)及び(j)はRPMI8226細胞の結果を示し、
図1(d)及び(k)はMec-1細胞の結果を示し、
図1(e)及び(l)はHL60細胞の結果を示し、
図1(f)及び(m)はKasumi-1細胞の結果を示し、
図1(g)及び(n)はKU812細胞の結果を示す。
【0090】
その結果、OHBFBは、U266(IC50=4.0μM)、ARH77(IC50=0.2μM)、RPMI8226(IC50=4.4μM)、Mec-1(IC50=1.4μM)、HL60(IC50=2.5μM)、Kasumi-1(IC50=3.0μM)、KU812(IC50=0.2μM)の各癌細胞株に対して抗癌作用を示すことが明らかとなった。
【0091】
また、EGCGも、U266(IC50=11.8μM)、ARH77(IC50=4.0μM)、RPMI8226(IC50=11.1μM)、Mec-1(IC50=8.3μM)、HL60(IC50=9.5μM)、Kasumi-1(IC50=9.6μM)、KU812(IC50=6.2μM)の各癌細胞株に対して抗癌作用を示すことが確認された。
【0092】
また、OHBFBとEGCGのIC50の比較から、OHBFBはEGCGよりも少なくとも3倍程度強い抗癌作用を有することが明らかとなった。
【0093】
また、
図2は、各癌細胞株に対するOHBFBのIC
50とEGCGのIC
50をプロットしたグラフである。その結果、各癌細胞株のOHBFBに対する感受性とEGCGに対する感受性との間に正の相関があることが明らかとなった。
【0094】
なお、実験結果の統計処理にはTukey’s testを用い、P値は0.05未満を有意とした。以下の実験例においても同様である。
【0095】
[実験例2]
(OHBFBは脂質ラフトの局在変化を誘導する)
癌細胞の脂質ラフトに対するOHBFBの影響を評価した。具体的には、まず、ヒト多発性骨髄腫細胞株U266を、1%FCSを添加したRPMI 1640培地に1×107個/mLになるように懸濁し、96ウェルプレートに1ウェルあたり200μLずつ添加した。
【0096】
続いて、アレクサフルオロ(登録商標)555標識コレラトキシンBサブユニット(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)(1mg/mL)を1ウェルあたり3μL添加し、氷上で15分間染色した。染色後、遠心して上清を除去し、終濃度5μMのOHBFBを含有するRPMI 1640培地を添加して3時間インキュベートした。続いて、油浸レンズ(60倍)を用いて蛍光顕微鏡で観察した。
【0097】
対照には、OHBFBの代わりに同容量のリン酸バッファー(PBS)を添加した以外は上記と同様の操作を行った試料を用いた。PBSは、超純水1Lに対し、NaCl 8.0g、KCl 0.2g、Na2HPO4 1.15g、KH2PO4 0.2gを溶解し、オートクレーブ滅菌して調製した。
【0098】
図3(a)及び(b)は、蛍光顕微鏡写真である。
図3(a)は対照試料の結果を示す写真であり、
図3(b)はOHBFBを添加した結果を示す写真である。その結果、OHBFBはEGCGと同様に脂質ラフト会合作用を示すことが明らかとなった。
【0099】
[実験例3]
(酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)阻害剤によるOHBFBの抗癌作用の阻害)
OHBFBの癌細胞に対する生細胞数低下作用における酸性スフィンゴミエリナーゼの関与を評価した。
【0100】
具体的には、ヒト多発性骨髄腫細胞株U266を、1%FCS、SOD(5U/mL)、カタラーゼ(200U/mL)を添加したRPMI 1640培地に5×104個/mLとなるように懸濁して24ウェルプレートに播種し、酸性スフィンゴミエリナーゼ阻害剤であるデシプラミン(シグマアルドリッチ社製)を終濃度5μMとなるように添加して3時間インキュベートした。その後、OHBFBを終濃度が5μMとなるように添加し、更に96時間培養した。続いて、トリパンブルー染色により細胞生存率を測定した。
【0101】
デシプラミン(シグマアルドリッチ社製)は、5mMとなるように超純水に溶解して-30℃で保存し、適宜解凍して用いた。
【0102】
図4は、細胞生存率の測定結果を示すグラフである。その結果、OHBFBの癌細胞致死活性はデシプラミンの添加により阻害されることが明らかとなった。この結果から、OHBFBが、EGCGと同様に、酸性スフィンゴミエリナーゼ依存的に抗癌作用を示すことが明らかとなった。
【0103】
[実験例4]
(OHBFBのcGMP産生誘導能1)
OHBFBの癌細胞に対するcGMP産生誘導作用を評価した。具体的には、ヒト多発性骨髄腫細胞株であるU266を、終濃度5μMのOHBFB及び1%FCSを含有するRPMI 1640培地に5.0×105個/ウェルの細胞密度で懸濁し、96ウェルプレートに播種して3時間インキュベートした。その後、市販のキット(商品名「cGMP EIA kit」、ケイマンケミカル社製)を用いて細胞内のcGMP量を測定した。
【0104】
図5は、細胞内cGMPの測定結果を示すグラフである。その結果、OHBFBが、EGCGと同様に、癌細胞におけるcGMP産生誘導作用を有することが明らかとなった。
【0105】
[実験例5]
(cGMP合成酵素である可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)の阻害剤によるOHBFBの抗癌作用の阻害)
OHBFBの癌細胞に対する生細胞数低下作用における可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)の関与を評価した。具体的には、ヒト多発性骨髄腫細胞株であるU266を、1%FCS、SOD(5U/mL)、カタラーゼ(200U/mL)を添加したRPMI 1640培地に5×104個/mLとなるように懸濁して24ウェルプレートに播種した。
【0106】
続いて、sGC阻害剤であるNS2028(シグマアルドリッチ社製)を終濃度5μMとなるように添加して3時間インキュベートした。続いて、細胞の培地を、OHBFBを終濃度5μM含有する培地に交換し、更に96時間培養した。その後、トリパンブルー染色により細胞生存率を測定した。
【0107】
NS2028(シグマアルドリッチ社製)は、5mMとなるように超純水に溶解して-30℃で保存し、適宜解凍して用いた。
【0108】
図6は、細胞生存率の測定結果を示すグラフである。その結果、OHBFBの癌細胞致死活性はsGC阻害剤の添加によって消失することが明らかとなった。つまり、OHBFBは、EGCGと同様に、sGC依存的に抗癌作用を示すことが明らかとなった。
【0109】
[実験例6]
(OHBFBによる内皮型一酸化合成酵素(eNOS)の活性化)
癌細胞のeNOSに対するOHBFBの影響を評価した。具体的には、ヒト多発性骨髄腫細胞株であるU266を、1%FCSを添加したRPMI 1640培地に1×106個/mLとなるように懸濁し、24ウェルプレートに播種した。続いて、OHBFBを終濃度が5μMとなるように添加して1時間培養した。対照として、OHBFBを添加しなかった細胞を用いた。
【0110】
続いて、eNOS活性化の指標であるeNOSSer1177のリン酸化レベルを、抗リン酸化eNOSser1177抗体を用いたウエスタンブロット法により測定した。
【0111】
図7(a)は、リン酸化eNOS
Ser1177及びeNOSをウエスタンブロット法により検出した結果を示す写真である。
図7(b)は、
図7(a)の結果を数値化し、eNOSの存在量に対するリン酸化eNOS
Ser1177の存在量を算出した結果を示すグラフである。対照における値を100とした割合(%)で結果を示す。
【0112】
その結果、OHBFBは、EGCGと同様に、癌細胞のeNOSser1177リン酸化を誘導する、すなわち、eNOSを活性化することが明らかとなった。
【0113】
[実験例7]
(eNOS阻害剤によるOHBFBの抗癌作用の阻害)
OHBFBの癌細胞に対する生細胞数低下作用におけるeNOSの関与を評価した。具体的には、ヒト多発性骨髄腫細胞株であるU266を、1%FCS、SOD(5U/mL)、カタラーゼ(200U/mL)を添加したRPMI 1640培地に5×104個/mLとなるように懸濁して24ウェルプレートに播種した。
【0114】
続いて、eNOS阻害剤であるL-NAME(和光純薬工業社製)を終濃度10mMとなるように添加して3時間インキュベートした。続いて、OHBFBを終濃度が5μMとなるように添加して更に96時間培養した。その後、トリパンブルー染色により細胞生存率を測定した。
【0115】
L-NAME(和光純薬工業社製)は、1Mとなるように超純水に溶解して-30℃で保存し、適宜解凍して用いた。
【0116】
図8は、細胞生存率の測定結果を示すグラフである。その結果、OHBFBの癌細胞致死活性は、eNOS阻害剤の添加により阻害された。つまり、OHBFBは、EGCGと同様に、eNOS依存的に抗癌作用を示すことが明らかとなった。
【0117】
[実験例8]
(OHBFBのAkt活性化能の検討)
OHBFBの癌細胞におけるAkt活性化能を評価した。具体的には、ヒト多発性骨髄腫細胞株であるU266を、1%FCSを添加したRPMI 1640培地に1×107個/mLとなるように懸濁し、24ウェルプレートに播種した。続いて、OHBFBを終濃度が5μMとなるように添加して1時間インキュベートした。対照として、OHBFBを添加しなかった細胞を用いた。続いて、細胞溶解バッファーを添加して細胞を溶解し回収した。
【0118】
続いて、市販のキット(商品名「K-LISA(商標)Akt Activity Kit」、型式「CBA019」、メルクミリポア社製)を用いて回収したサンプルのAkt活性を測定した。
【0119】
図9は、Akt活性の測定結果を示すグラフである。対照における値を100とした割合(%)で結果を示す。その結果、OHBFBは、EGCGと同様に、癌細胞のAkt活性化作用を示すことが明らかとなった。
【0120】
[実験例9]
(抗67LRモノクローナル抗体によるOHBFBの抗癌作用の阻害)
OHBFBの癌細胞に対する生細胞数低下作用における67LRの関与を評価した。具体的には、ヒト多発性骨髄腫細胞株であるU266を、1%FCS、SOD(5U/mL)、カタラーゼ(200U/mL)を添加したRPMI 1640培地に5×104個/mLとなるように懸濁し、96ウェルプレートに播種した。
【0121】
続いて、抗67LRモノクローナル抗体(型式「MLuc5」、アブカム社製)又はコントロール抗体を終濃度20μg/mLとなるように添加し、3時間インキュベートした。続いて、OHBFBを終濃度が5μMとなるよう添加し、更に96時間培養した。その後、トリパンブルー染色により細胞生存率を測定した。
【0122】
図10は、細胞生存率の測定結果を示すグラフである。その結果、抗67LRモノクローナル抗体で前処理した細胞では、OHBFBの添加による生細胞数低下作用が著しく低下することが明らかとなった。すなわち、OHBFBは、EGCGと同様に、67LR依存的に抗癌作用を示すことが明らかとなった。
【0123】
[実験例10]
(67LRの発現抑制によるOHBFBの抗癌作用の阻害)
OHBFBの抗癌作用における67LRの関与を評価した。具体的には、マウスメラノーマ細胞株B16を、5%FCSを添加したDMEM培地で1×104個/mLとなるように懸濁し、24ウェルプレートに播種した。続いて、67LR siRNA(ライフテクノロジーズ社製)又はコントロールsiRNA(ライフテクノロジーズ社製)を導入し、72時間培養した。siRNAの導入には、市販のキット(商品名「RNAiMAX」、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を使用した。
【0124】
その後、各細胞を1×104個/mLの細胞密度で96ウェルプレートに播種しなおし、24時間インキュベートした。培地には5%FCSを添加したDMEM培地を用いた。続いて、OHBFBを終濃度が5μMとなるよう添加して、更に72時間培養した。その後、トリパンブルー染色により細胞生存率を測定した。
【0125】
図11は、細胞生存率の測定結果を示すグラフである。その結果、67LRの発現を低下させた癌細胞では、OHBFBの添加による癌細胞増殖抑制活性が著しく低下することが明らかとなった。この結果は、OHBFBが、EGCGと同様に、67LR依存的に抗癌作用を示すことを更に支持するものである。
【0126】
[実験例11]
(ホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害剤によるOHBFBの抗癌活性増強作用)
PDE5阻害剤によるOHBFBの抗癌活性増強作用を評価した。具体的には、ヒト多発性骨髄腫細胞株U266を、1%FCS、SOD(5U/mL)、カタラーゼ(200U/mL)を添加したRPMI 1640培地に5×104個/mLになるように懸濁し、96ウェルプレートに播種した。
【0127】
続いて、PDE5阻害剤であるバルデナフィル(ケイマンケミカル社製)を終濃度5μMとなるように添加し、3時間インキュベートした。続いて、終濃度0、0.5、1.0及び2.5μMのOHBFBを添加し、更に96時間培養した。その後、市販のキット(商品名「ATPlite」、パーキンエルマー社)を用いて細胞生存率を測定した。
【0128】
その結果、OHBFB及びバルデナフィルの併用時におけるOHBFBのIC50は1.07μMと算出された。
【0129】
また、上記と同様の検討を、終濃度0、5、10、25、50及び100μMのバルデナフィル単独の存在下においても行った。その結果、バルデナフィルのIC50は92.68μMと算出された。
【0130】
続いて、アイソボログラム解析により、OHBFB及びバルデナフィルの併用による抗癌活性が拮抗的であるか、相加的であるか、相乗的であるかについて検討した。
図12は、アイソボログラム解析の結果を示すグラフである。
【0131】
具体的には、
図12に示すように、OHBFBのIC
50(4.0μM)をx軸に、バルデナフィルのIC
50(92.68μM)をy軸にそれぞれプロットし、それらの値を結んだ直線を引いた。また、バルデナフィル(終濃度5μM)との併用時におけるOHBFBのIC
50(1.07μM)をプロットした。
【0132】
その結果、OHBFB及びバルデナフィルの併用時のプロットが、上記の直線よりも原点側にあったことから、PDE5阻害剤はOHBFBの抗癌活性を相乗的に増強することが明らかとなった。
【0133】
[実験例12]
(エリオジクチオールによるOHBFBの抗癌活性増強作用)
エリオジクチオールによるOHBFBの抗癌活性増強作用を評価した。具体的には、ヒト多発性骨髄腫細胞株であるU266を、1%FCS、SOD(5U/mL)、カタラーゼ(200U/mL)を添加したRPMI 1640培地に5×104個/mLになるように懸濁し、96ウェルプレートに播種した。
【0134】
続いて、エリオジクチオール(EXTRASYNTHESE社製)の非存在下又は終濃度5μMの存在下において、終濃度0、1.0、2.5及び5.0μMのOHBFBを添加し、96時間培養した。その後、市販のキット(商品名「ATPlite」、パーキンエルマー社)を用いて細胞生存率を測定した。
【0135】
その結果、OHBFB及びエリオジクチオールの併用時におけるOHBFBのIC50は1.16μMと算出された。
【0136】
また、上記と同様の検討を、終濃度0、5、10、25及び50μMのエリオジクチオール単独の存在下においても行った。その結果、エリオジクチオールのIC50は89.4μMと算出された。
【0137】
続いて、アイソボログラム解析により、OHBFB及びエリオジクチオールの併用による抗癌活性が拮抗的であるか、相加的であるか、相乗的であるかについて検討した。
図13は、アイソボログラム解析の結果を示すグラフである。
【0138】
具体的には、
図13に示すように、OHBFBのIC
50(4.0μM)をx軸に、エリオジクチオールのIC
50(89.4μM)をy軸にそれぞれプロットし、それらの値を結んだ直線を引いた。また、エリオジクチオール(終濃度5μM)との併用時におけるOHBFBのIC
50(1.16μM)をプロットした。
【0139】
その結果、OHBFB及びエリオジクチオールの併用時のプロットが、上記の直線よりも原点側にあったことから、エリオジクチオールはOHBFBの抗癌活性を相乗的に増強することが明らかとなった。
【0140】
[実験例13]
(フラバノンによるOHBFBの抗癌活性増強作用)
フラバノンによるOHBFBの抗癌活性増強作用を評価した。具体的には、ヒト多発性骨髄腫細胞株であるU266を、1%FCS、SOD(5U/mL)、カタラーゼ(200U/mL)を添加したRPMI 1640培地に5×104個/mLになるように懸濁し、96ウェルプレートに播種した。続いて、終濃度5μMのフラバノン及び終濃度0μM又は2.5μMのOHBFBをそれぞれ添加し、96時間培養した。対照としては、フラバノンの代わりに同容量のPBSを添加した試料を使用した。
【0141】
フラバノンとしては、エリオジクチオール(EXTRASYNTHESE社製)、ナリンゲニン(東京化成工業社製)及びヘスペレチン(和光純薬工業社製)を使用した。
【0142】
続いて、市販のキット(商品名「ATPlite」、パーキンエルマー社)を用いて細胞生存率を測定した。
【0143】
図14は、細胞生存率の測定結果を示すグラフである。その結果、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチンは、いずれもOHBFBの抗癌活性を増強することが明らかとなった。
【0144】
[実験例14]
(経口投与したOHBFBの腫瘍組織に対する67LR依存的癌細胞致死活性誘導能)
マウスにOHBFBを経口投与し、67LR依存的な癌細胞致死活性誘導能を評価した。
【0145】
具体的には、まず、5週齢のメスのbalb/cマウスを2週間予備飼育した。続いて、マウス多発性骨髄腫細胞株であるMPC-11を5×106個/mLとなるようにRPMI 1640培地に懸濁したもの200μLを、上記のマウスの右背部に皮下注射移植した。続いて、移植5日後に、OHBFBを10mg/kgの投与量で経口投与した。続いて、5時間後にマウスを屠殺して腫瘍を摘出し、組織切片を作製した。対照には、OHBFBを投与しなかった点以外は上記と同様にして作製した腫瘍組織切片を使用した。
【0146】
続いて、腫瘍組織切片を免疫染色し、Cleaved(CV)-caspase-3(CV-caspase-3)、リン酸化eNOSSer1177、及びリン酸化PKCδSer662の存在を検出した。
【0147】
《CV-caspase-3の検出》
図15(a)及び(b)は、CV-caspase-3を免疫染色した結果を示す蛍光顕微鏡写真である。
図15(a)は対照の腫瘍組織切片の染色結果を示す写真であり、
図15(b)はOHBFBを投与したマウスの腫瘍組織切片の染色結果を示す写真である。また、
図15(c)は、
図15(a)及び
図15(b)における、CV-caspase-3陽性細胞数を計測した結果を示すグラフである。
【0148】
その結果、OHBFBを経口投与したマウスの腫瘍組織において、アポトーシスの指標であるCV-caspase-3陽性細胞数が増加したことが明らかとなった。
【0149】
《リン酸化eNOS
Ser1177》
図16(a)及び(b)は、リン酸化eNOS
Ser1177を免疫染色した結果を示す蛍光顕微鏡写真である。
図16(a)は対照の腫瘍組織切片の染色結果を示す写真であり、
図16(b)はOHBFBを投与したマウスの腫瘍組織切片の染色結果を示す写真である。
【0150】
その結果、OHBFBを経口投与したマウスの腫瘍組織において、リン酸化eNOSSer1177が顕著に増加したことが明らかとなった。
【0151】
《リン酸化PKCδ
Ser662の検出》
図17(a)及び(b)は、リン酸化PKCδ
Ser662を免疫染色した結果を示す蛍光顕微鏡写真である。
図17(a)は対照の腫瘍組織切片の染色結果を示す写真であり、
図17(b)はOHBFBを投与したマウスの腫瘍組織切片の染色結果を示す写真である。
【0152】
その結果、OHBFBを経口投与したマウスの腫瘍組織において、リン酸化PKCδSer662が顕著に増加したことが明らかとなった。
【0153】
《ASM活性の測定》
また、腫瘍組織の酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)活性を測定した。ASM活性は次のようにして測定した。OHBFBを10mg/kgの投与量で経口投与した上記のマウスを、OHBFBの投与から6時間後に屠殺して腫瘍組織を摘出した。対照には、OHBFB非投与群のマウスから摘出した腫瘍組織を使用した。
【0154】
続いて、摘出した各腫瘍組織を破砕して遠心し、上清をPBSで2mgタンパク質/mLとなるように調整した後、チューブに20μL分注した。続いて、このチューブに基質混合液(BODIPY-C12-スフィンゴミエリン(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)2μL、10%Triton X-100 10μL、1M酢酸ナトリウム(pH4.5)20μL、水78μL)を8μL添加して混合し、37℃で8時間インキュベートした。この反応の結果、ASMの活性により、BODIPY-C12-スフィンゴミエリンからBODIPY標識セラミドが生成される。
【0155】
続いて、停止液(クロロホルム:メタノール=2:1)を60μL添加し、あらかじめ乾燥器で活性化させた薄層クロマトグラフィープレートに10μLずつスポットし、展開溶媒(水:メタノール:クロロホルム=8:35:60)で展開した。
【0156】
続いて、薄層クロマトグラフィープレートに紫外光を照射し、蛍光イメージアナライザー(商品名「Fusion System」、ビルバー・ルーマット社製)を用いてBODIPY標識セラミドの蛍光シグナルを検出し、解析ソフト(商品名「kyplot」、カイエンス社)を用いて解析し、数値化した。
【0157】
図18は、OHBFB非投与群(対照)及び投与群の腫瘍組織におけるASM活性の測定結果を示すグラフである。対照におけるASM活性の測定値を100とした割合(%)で結果を示す。
【0158】
その結果、OHBFBを経口投与したマウスの腫瘍組織において、ASM活性が顕著に増加したことが明らかとなった。
【0159】
以上の結果から、OHBFBは、EGCGと同様に、生体内においてeNOS/PKCδ/ASM経路の活性化を特徴とする67LR依存的な癌細胞致死活性を示すことが明らかとなった。
図19に、OHBFBにより活性化される、eNOS/PKCδ/ASM経路の模式図を示す。
【0160】
[実験例15]
(経口投与したOHBFBは腫瘍組織に送達される)
一般的に、分子量が500以上の化合物は、経口投与した場合に生体内への吸収が悪いと考えられている。このため、ウーロン茶重合ポリフェノールは、経口投与しても生体内に吸収されにくいと考えられている。そこで、経口投与したOHBFBが腫瘍組織に到達するか否かを検討した。
【0161】
《OHBFBの経口投与と腫瘍組織の摘出》
まず、Balb/cマウス(5週齢雌性)を2週間予備飼育した。続いて、マウス形質細胞腫細胞株であるMPC-11を1×106個/マウスとなるように右背部に皮下注射移植した。
【0162】
続いて、腫瘍形成が確認されたマウスにOHBFB(10mg/kg)を経口投与(i.g.)し、投与から5時間後にイソフルラン麻酔下で心臓採血により屠殺を行って腫瘍組織を摘出した。
【0163】
続いて、摘出した腫瘍組織に2%アスコルビン酸含有PBSを400mL、内部標準の100mMプロピルガレートを5mL加えて、ビーズショッカーにて組織破砕を行なった。続いて、破砕した組織を遠心分離し、上清をチューブに回収し、酢酸エチル抽出を行った。抽出サンプルは乾固させた後、内部標準である4-ヒドロキシベンゾフェノン(4HB)(10mM)含有50%アセトニトリル溶液100mLに再溶解させ、0.22mmのPVDFフィルターに通した後にLC-MS分析に供した。
【0164】
《LC-MS分析》
サンプルを5μLの注入量でLCMS-IT-TOF(島津製作所)に供した。移動相には(A)0.05%ギ酸含有超純水及び(B)0.05%ギ酸含有アセトニトリルを用いた。流速は0.15mL/分とし、移動相Bの濃度が、0~2分:5%、2~3.5分:5~20%、3.5~10分:20~40%、10~13分:40~100%、13~15.5分:100%、15.5~16分:100~5%、16~20分:5%となるグラジエント条件下で測定を行なった。カラムにはL-column2 ODS(2.1×150mm、3μm、CERI)を用いた(カラムオーブン:40℃)。なお、イオン化はElectrospray ionization(ESI)法(ネガティブイオンモード)により行い、CDL及びヒートブロック温度を200℃に設定し、スキャンモード(m/z 350~1,400)にてデータを取得した。
【0165】
OHBFB(C45H36O22)の精密質量はm/z 928.169であり、標準品のLC-MS分析(ネガティブイオンモード)では、水素が脱離したイオンm/z 927.158[M-H]-(理論値:927.169)としてMSピークが認められた。
【0166】
そこで、腫瘍サンプルのMSスペクトルを確認したところ、OHBFB未投与群では、そのようなイオンピークは観察されなかったが、OHBFB投与群ではm/z 927.157のピークが認められた。また、本ピークのMS/MS分析では、m/z 758.132、608.113、470.071が主要なプロダクトイオンとして検出された。
【0167】
これらの検出ピークは、OHBFBの標準品のMS/MS分析によるプロダクトイオン(m/z 758.139、608.106、470.081)と一致したことから、OHBFBが経口投与後に腫瘍組織に存在することが明らかとなった。
【0168】
[実験例16]
(OHBFBのcGMP産生誘導能2)
OHBFBの細胞に対するcGMP産生誘導作用を評価した。具体的には、まず、ヒト臍帯静脈内皮細胞であるHUVECをEGM-2培地に懸濁し、5×106個/mLとなるように調製した。続いて、OHBFBを終濃度5μMとなるように添加し、96ウェルプレートに50μL/ウェルで播種した。続いて、37℃で1時間インキュベートした後、RT-FRET法(cGMP assay、cisbio社)により、細胞内のcGMP量を測定した。
【0169】
図20は、細胞内cGMPの測定結果を示すグラフである。
図20中、データは平均値±標準偏差で表す(n=3)。また、「**」はスチューデントのt検定によりp<0.01で統計的有意差が存在することを表す。
【0170】
その結果、OHBFBが、ヒト臍帯静脈内皮細胞HUVECに対して細胞内cGMPの産生を促進することが明らかとなった。この結果は、OHBFBが、EGCGと同様に、cGMPが関与する生理作用を有することを更に支持するものである。
【0171】
[実験例17]
(OHBFBの免疫機能増強作用)
OHBFBの免疫機能増強作用を検討した。具体的には、まず、Balb/cマウス(6週齢、雌性)の脾臓から単核球を採取し、2×106個/mLとなるように12ウェルプレートに播種した。
【0172】
続いて、単核球を、OHBFBを含む10%FBS-RPMI培地にて24時間培養後、TRI Reagent(コスモバイオ社)によりRNAを回収した。続いて、cDNAを合成後、細菌の鞭毛タンパク質を認識する受容体であるToll様受容体(TLR)5、ウイルスの一本鎖RNAを認識する受容体であるTLR7、CD8陽性T細胞増殖に関与するCCR5のmRNAの発現量をリアルタイムPCR法により測定した。TLR5、TLR7、CCR5の発現量は、ハウスキーピング遺伝子であるβ-アクチン遺伝子の発現量を用いて標準化した。
【0173】
TLR5のPCRには、配列番号1に塩基配列を示すセンスプライマー及び配列番号2に塩基配列を示すアンチセンスプライマーを使用した。また、TLR7のPCRには、配列番号3に塩基配列を示すセンスプライマー及び配列番号4に塩基配列を示すアンチセンスプライマーを使用した。また、CCR5のPCRには、配列番号5に塩基配列を示すセンスプライマー及び配列番号6に塩基配列を示すアンチセンスプライマーを使用した。また、β-アクチン遺伝子のPCRには、配列番号7に塩基配列を示すセンスプライマー及び配列番号8に塩基配列を示すアンチセンスプライマーを使用した。
【0174】
図21(a)~(c)は、リアルタイムPCRの結果を示すグラフである。
図21(a)は、TLR5の発現量の測定結果を示すグラフである。また、
図21(b)は、TLR7の発現量の測定結果を示すグラフである。また、
図21(c)は、CCR5の発現量の測定結果を示すグラフである。
図21(a)~(c)中、データは平均値±標準偏差で表す(n=3~4)。また、「*」は、ダネットの検定により、OHBFB 0μMの結果に対してp<0.05で統計的有意差が存在することを表す。また、「**」は、ダネットの検定により、OHBFB 0μMの結果に対してp<0.01で統計的有意差が存在することを表す。
【0175】
その結果、OHBFBは脾臓単核球に対してTLR5、TLR7、CCR5の発現を促進することが明らかとなった。つまり、OHBFBは、これらの分子の発現を促進することにより、細菌感染やウイルス感染を予防する能力を高める作用を有することが明らかとなった。したがって、OHBFBは免疫機能増強作用を有するということができる。
【0176】
[実験例18]
(OHBFBの動脈硬化予防作用・血栓症予防作用)
OHBFBの動脈硬化予防作用・血栓症予防作用を検討した。具体的には、まず、ヒト臍帯静脈内皮細胞であるHUVECを、10%ウシ胎児血清(FBS)-EGM-2培地に懸濁して1.5×105個/mLとなるように調製し、12ウェルプレートに播種した。続いて、24時間の前培養後、培地を、終濃度0、1、5μMのOHBFBを含む10%FBS-EGM-2培地に置換し、更に24時間培養した。
【0177】
その後、細胞の回収、RNAの精製、cDNAの合成を行い、リアルタイムPCR法にて動脈硬化予防作用や血栓予防作用を示すTissue factor pathway inhibitor(TFPI)のmRNAの発現量を測定した。
【0178】
TFPIの発現量は、ハウスキーピング遺伝子であるβ-アクチン遺伝子の発現量を用いて標準化した。TFPIのPCRには、配列番号9に塩基配列を示すセンスプライマー及び配列番号10に塩基配列を示すアンチセンスプライマーを使用した。また、β-アクチン遺伝子のPCRには、配列番号11に塩基配列を示すセンスプライマー及び配列番号12に塩基配列を示すアンチセンスプライマーを使用した。
【0179】
図22は、リアルタイムPCRの結果を示すグラフである。
図22中、データは平均値±標準偏差で表す(n=3)。また、「**」は、ダネットの検定により、OHBFB 0μMの結果に対してp<0.01で統計的有意差が存在することを表す。
【0180】
その結果、OHBFBは、ヒト臍帯静脈内皮細胞HUVECに対してTFPIの発現を促進することが明らかとなった。すなわち、OHBFBは、動脈硬化予防作用・血栓症予防作用を有することが明らかとなった。
【0181】
[実験例19]
(OHBFBの筋委縮予防作用)
OHBFBの筋委縮予防作用を検討した。具体的には、まず、マウス筋芽細胞株であるC2C12を10%ウシ胎児血清(FCS)-DMEM培地に懸濁して2×104個/mLとなるように調製し、24時間前培養を行った。続いて0.5%FCS-DMEMの分化誘導培地に置換し、更に72時間培養した。筋管細胞に分化後、OHBFBを含む分化誘導培地に置換し、更に48時間培養した。
【0182】
その後、細胞からRNAを抽出し、cDNAを合成し、リアルタイムPCRによって筋萎縮関連遺伝子の一種であるMuscle RING-Finger Protein-1(MuRF1)のmRNAの発現量を測定した。MuRF1の発現量は、ハウスキーピング遺伝子であるグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子の発現量を用いて標準化した。
【0183】
MuRF1のPCRには、配列番号13に塩基配列を示すセンスプライマー及び配列番号14に塩基配列を示すアンチセンスプライマーを使用した。また、GAPDH遺伝子のPCRには、配列番号15に塩基配列を示すセンスプライマー及び配列番号16に塩基配列を示すアンチセンスプライマーを使用した。
【0184】
図23は、リアルタイムPCRの結果を示すグラフである。
図23中、データは平均値±標準偏差で表す(n=3)。また、「n.s.」は、ダネットの検定により、OHBFB 0μMの結果に対して統計的有意差がないことを表し、「*」は、ダネットの検定により、OHBFB 0μMの結果に対してp<0.05で統計的有意差が存在することを表す。
【0185】
その結果、OHBFBは骨格筋細胞におけるMuRF1の発現を抑制することが明らかとなった。すなわち、OHBFBは筋萎縮抑制作用を有することが明らかとなった。
【0186】
[実験例20]
(OHBFBの抗炎症作用)
OHBFBの抗炎症作用を検討した。具体的には、まず、マウスマクロファージ様細胞株であるRAW264.7を5%FBS-DMEM培地に懸濁して1×104個/mLとなるように調製し、24ウェルプレートに播種して24時間前培養を行った。
【0187】
続いて、終濃度1μMのOHBFBを含む5%FBS-DMEMと培地交換を行い、更に1時間培養した。また、比較のために、OHBFBを添加しなかった群も用意した。続いて、終濃度50ng/mLのリポポリサッカライド(LPS)を添加し、更に24時間培養した。また、比較のために、LPSを添加しなかった群も用意した。
【0188】
その後、培養上清を回収し、炎症性のサイトカインであるTNF-αの濃度をELISA法により定量した。また、培養上清中のタンパク質量を測定し、単位タンパク質量あたりのTNF-α量を算出した。
【0189】
図24は、TNF-α量の算出結果を示すグラフである。
図24中、データは平均値±標準偏差で表す(n=3)。また、「***」は、テューキーの検定により、p<0.001で統計的有意差が存在することを表す。
【0190】
その結果、OHBFBはマクロファージにおいて、LPS誘導性のTNF-α発現誘導を抑制することが明らかとなった。すなわち、OHBFBは抗炎症用を有することが明らかとなった。
【0191】
[実験例21]
(OHBFBの抗アレルギー作用)
OHBFBの抗アレルギー作用を検討した。具体的には、好塩基球性細胞からのβ-ヘキソサミニダーゼの遊離に与えるOHBFBの影響を検討した。
【0192】
まず、2×105個のヒト好塩基球性細胞であるKU812を、タイロード液100mLに懸濁した。続いて、この細胞懸濁液100mLと、終濃度1mMのCaCl2、終濃度50mMのカルシウムイオノファA23187、OHBFBを含むタイロード液100mLとを混合し、37℃で20分恒温した。その後、氷上で5分間静置し反応を停止させた。
【0193】
続いて、4℃、200×gで5分間遠心し、上清を回収した。回収した上清50mLに基質溶液(0.5mM p-nitrophenyl-N-acetyl-b-D-glucosaminide)50mLを添加し、37℃で60分間反応させた。
【0194】
続いて、反応停止液(0.1M sodium bicarbonate buffer、pH10)200mLを添加し、波長405nmにおける吸光度を測定し、上清中のβ-ヘキソサミニダーゼ活性を測定した。
【0195】
また、細胞懸濁液に終濃度1%のTriton-Xを添加して上記と同様の操作を行い、細胞内のβ-ヘキソサミニダーゼ活性を測定した。続いて、下記式(F1)により、β-ヘキソサミニダーゼの遊離率を算出した。
【0196】
β-ヘキソサミニダーゼの遊離率(%)=上清中のβ-ヘキソサミニダーゼ活性(波長405nmにおける吸光度)/細胞内のβ-ヘキソサミニダーゼ活性(波長405nmにおける吸光度)×100 …(F1)
【0197】
図25は、β-ヘキソサミニダーゼの遊離率の算出結果を示すグラフである。
図25中、データは平均値±標準偏差で表す(n=3)。また、「**」は、ダネットの検定により、OHBFB 0μMの結果に対してp<0.01で統計的有意差が存在することを表す。
【0198】
その結果、OHBFBは好塩基球性細胞に対して脱顆粒を阻害することが明らかとなった。すなわち、OHBFBは抗アレルギー作用を有することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0199】
本発明によれば、EGCGよりも強力な67LRアゴニストを提供することができる。
【配列表】