(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】防鳥用索条の張架装置
(51)【国際特許分類】
H02G 7/00 20060101AFI20220421BHJP
H02G 7/12 20060101ALI20220421BHJP
A01M 29/32 20110101ALI20220421BHJP
【FI】
H02G7/00
H02G7/12
A01M29/32
(21)【出願番号】P 2018060453
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000115382
【氏名又は名称】ヨツギ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】山川 卓司
(72)【発明者】
【氏名】池側 勝己
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-38488(JP,A)
【文献】特開2006-174708(JP,A)
【文献】特開2015-97445(JP,A)
【文献】特開2019-47615(JP,A)
【文献】特開2019-4609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/00
H02G 7/12
H02G 1/02
A01M 29/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱間に架設された電線に掛止められる取付け枠であって、前記取付け枠内の予め定める掛止め位置に前記電線を配設するために、前記電線を挿入するための開口が設けられた取付け枠と、
前記取付け枠の上部から上方へ突出し、索条を係止するための係止片を有する索条係止部と、
前記取付け枠の下部と前記上部との間に変位可能に設けられ、前記掛止め位置に配置された電線を前記上部との間で挟持するための押圧部材と、
前記押圧部材を、前記下部から前記上部に向かってばね付勢するばねと、を備えることを特徴とする防鳥用索条の張架装置。
【請求項2】
前記取付け枠の前記上部は、前記開口を挟んで互いに近接/離反する方向に弾性変形可能な一対の電線受け部を有することを特徴とする請求項1に記載の防鳥用索条の張架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本の電柱間にわたって張架された電線に鳥が飛来して停まることを防ぐために、ワイヤ、テグスなどの線状体から成る防鳥用索条を、各電柱間にわたって電線と平行に張架するために用いられる防鳥用索条の張架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な従来技術の防鳥用索条の張架装置は、たとえば特許文献1に鳥害防止器具の自由支持具として開示されている。鳥害防止器具は、電柱間に架設された電線の両端側にそれぞれ取付けられる一対の固定支持具と、各固定支持具間における電線に、該電線から上方に離隔したが状態で張架される複数の自由支持具とによって構成される。
【0003】
自由支持具は、電線が遊通される通し孔を有するガイド部と、ガイド部から上方に突出しかつ防鳥用索条の取付部を具備した起立部とを備える。自由支持具は、電線を基準として、起き上がりこぼしのように左右に揺れ動くことができ、重心を底に置くことによって、ガイド部が重みで下がり、起立部を立てた状態に保ち、風や振動などに影響されることなく、電線の上方に間隔をあけて防鳥用索条が張架されるように構成されている。
【0004】
このように自由支持具は、ガイド部の通し孔に電線が挿通された状態で、防鳥用索条を電線に沿って保持するように構成されるので、電線の捩れに対して自由支持具が追従せず、これによって防鳥用索条と電線とが近接してしまうことが防がれ、防鳥用索条を電線から離間させた状態に維持することができる。このように、この従来技術では、自由支持具を電線の捩れに対して追従しないように取付けて、防鳥用索条を電線から常に離した状態に維持することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術では、自由支持具は、電線がガイド部の通し孔に拘束されず挿通するように構成される。したがって、防鳥用索条の弛み度が大きい場合にその防鳥用索条を緊張して防鳥用索条の張力が高くなると、自由支持具が防鳥用索条によって持上げられ、ガイド部は電線に対して上方へ変位して電線と防鳥用索条との間隔が大きくなり、電線に鳥が留まる可能性が高くなって、防鳥効果が低下するという問題がある。
【0007】
また、自由支持具の通し孔の隙間が大きい場合には、風などの作用によってガイド部が電線に当接し、電線の摩耗が生じ、「カタカタ…」などの当接による異音または騒音の発生も懸念される。
【0008】
さらに、日射などによって防鳥用索条が温度上昇すると、該防鳥用索条は膨張し、防鳥用索条の張力が低下する。これによって自由支持具は下方へ変位するので、電線はガイド部の通し孔内でガイド部に接触せず、いわば非接触で浮いた状態となる場合が生じ得る。電線がガイド部に接触せずに浮いた状態では、自由支持具が風などの作用によって容易に傾斜してしまい、防鳥用索条を電線の直上に一定の間隔で保持することができなくなり、鳥の飛来に対して充分な防鳥効果を発揮することができないという問題がある。
【0009】
このような問題を解決するためには、自由支持具を固定支持具のように、電線に固定可能な構成とすることが考えられる。このように自由支持具を電線に固定可能な構成にすると、複数の自由支持具を各電柱間の電線に取付ける際、各自由支持具を電線の一方の電柱寄りの端部にまとめて装着し、ガイド部に電線が挿通された状態で、順次的に電線の他方の電柱寄りの端部に向かって移動させる必要があるので、移動時に各自由支持具の電線への固定状態を解除しなければならず、各自由支持具の取付け作業に極めて手間を要してしまうという問題がある。
【0010】
したがって本発明の目的は、取付け時に電線に沿って容易に移動可能とし、取付け作業の手間を低減し、電線の直上に一定の間隔で防鳥用索条を安定に保持することができる防鳥用索条の張架装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電柱間に架設された電線に掛止められる取付け枠であって、前記取付け枠内の予め定める掛止め位置に前記電線を配設するために、前記電線を挿入するための開口が設けられた取付け枠と、
前記取付け枠の上部から上方へ突出し、索条を係止するための係止片を有する索条係止部と、
前記取付け枠の下部と前記上部との間に変位可能に設けられ、前記掛止め位置に配置された電線を前記上部との間で挟持するための押圧部材と、
前記押圧部材を、前記下部から前記上部に向かってばね付勢するばねと、を備えることを特徴とする防鳥用索条の張架装置である。
【0012】
また本発明は、前記取付け枠の前記上部は、前記開口を挟んで互いに近接/離反する方向に弾性変形可能な一対の電線受け部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電柱間に架設された電線は、取付け枠に開口を介して挿入され、取付け枠内の予め定める掛止め位置に配設される。取付け枠の上部には、上方へ突出する索条係止部が設けられる。索条係止部は、係止片を有し、係止片によって索条が係止される。取付け枠の下部と上部との間には、押圧部材が変位可能に設けられる。押圧部材は、ばねによって、下部から上部に向かってばね付勢される。取付け枠の上部と押圧部材との間の掛止め位置に配置された電線は、取付け枠の上部に支持された状態で、下方から押圧部材によって押圧され、上部と押圧部材とによって挟持される。
【0014】
このように取付け枠の掛止め位置に配置された電線は、取付け枠の上部と押圧部材とによって弾発的に挟持されるので、張架部材を電線に沿って移動させることができるとともに、索条の張力が変化しても、電線が取付け枠から離れてしまうことが防がれる。したがって、複数の張架装置を電線に取付ける際には、各張架装置を電線に沿って容易に移動させ、所定の取付け位置に取付けることができる。また所定の取付け位置に取付けられた各張架装置は、取付け枠が電線から離れないので、索条の張力が変化しても、索条は電線の直上に一定の間隔をあけて安定に保持され、防鳥効果が損なわれることを防止することができる。
【0015】
また本発明によれば、取付け枠の上部は、開口を挟んで互いに近接/離反する方向に弾性変形可能な一対の電線受け部を有するので、電線を各電線受け部間の開口を通過させて取付け枠内へ容易に挿入することができる。また、張架装置の交換、取付け位置の調整、保守点検などのために張架装置を電線から取外す場合であっても、電線を各電線受け部間の開口を通過させて取付け枠から離脱させることができ、電線への取付け枠の取付けおよび電線からの取付け枠の取外しを容易に行うことが可能となり、電線に対する取付け枠の着脱作業を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態の防鳥用索条の張架装置1を示す正面図である。
【
図5】取付け枠4および索条係止部8の正面図である。
【
図6】押圧部材10およびばね11の正面図である。
【
図7】押圧部材10およびばね11の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の一実施形態の防鳥用索条の張架装置1を示す斜視図であり、
図2は張架装置1の側面図であり、
図3は張架装置1の平面図であり、
図4は張架装置1の斜視図である。2本の電柱間に張架された電線2には、本実施形態の防鳥用索条の張架装置(以下、「張架装置」と記す場合がある)1によって、防鳥用索条(以下、「索条」と記す場合ある)3が電線2とほぼ平行に張架される。電線2には、各電柱近傍で図示しない固定具がそれぞれ固定され、これらの固定具に索条3の両端部が固定される。索条3は、電線2と平行に張架され、電線2の軸線と索条3の軸線とは、静止状態において、共通な仮想一鉛直面内またはその近傍にあり、この索条3が障害となって、飛来した鳥が電線2に停まることが防がれる。このように、張架装置1は、電線2の上方に、電線2に沿って張架される索条3を保持して張架するために、複数の張架装置1が各電柱間の電線2に互いに間隔をあけて設置される。
【0018】
張架装置1は、電柱間に架設された電線2に掛止められる取付け枠4を備える。取付け枠4は、該取付け枠4内の予め定める掛止め位置Pに電線2を配設するために、電線2を挿入するための開口5が設けられる。張架装置1は、さらに、取付け枠4の上部6から上方へ突出し、索条3を係止するための係止片7を有する索条係止部8と、取付け枠4の下部9と上部6との間に変位可能に設けられ、掛止め位置Pに配置された電線2を上部6との間で挟持するための押圧部材10と、押圧部材10を下部9から上部6に向かってばね付勢するばね11とを備える。このばね11を取付け枠4に保持するために、張架装置1は、取付け枠4の下部9に設けられ、ばね11を保持する保持部材12を備える。
【0019】
このような張架装置1は、電気絶縁性に優れた合成樹脂の射出成形品によって実現される。合成樹脂としては、たとえばポリカーボネート、ポリアセタール、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)、AES(Acrylonitrile-Ethylene-Styrene resin)、またはポリプロピレンを用いることができる。
【0020】
図5は取付け枠4および索条係止部8の正面図である。取付け枠4の上部6は、開口5を挟んで互いに近接/離反する方向に弾性変形可能な一対の電線受け部13a,13bを有する。各電線受け部13a,13bは、逆L字状のフック状部分14a,14bと、各フック状部分14a,14bのそれぞれの基部が共通に連なり、平面視において略四角形の底部15とを有する。各フック状部分14a,14bは、前述の上部6をそれぞれ含む。各上部6は、上方(
図1の上方)に凸に屈曲し、電線2が下方から接触して位置決めされる掛止め位置Pを規定する逆V字状に形成される。
【0021】
図6は押圧部材10およびばね11の正面図であり、
図7は押圧部材10およびばね11の斜視図である。押圧部材10は、押圧板20、一対の立ち上がり片21a,21bと、案内軸部22とを含む。押圧板20は、正面視において略M字状であり、かつ平面視において長方形の板状体によって構成される。各立ち上がり片21a,21bは、押圧板20の各短辺部のそれぞれから直角に立上がって形成される。案内軸部22は、押圧板20の下面の中心部から各立ち上がり片21a,21bと反対側へ延びる。
【0022】
ばね11は、複数のU字状の屈曲片23が、仮想一平面に関して交互に反転した向きに連なり、正面視において波状の部材を構成する圧縮ばねから成る。このようなばね11の長手方向一端部は、前述の押圧部材10の案内軸部22に連なって形成される。参考までに、
図7を参照して、ばね11の各寸法を述べると、横幅a=15mm、縦幅b=8mm、厚さt=1.3mm、各屈曲片23のピッチΔL=13mmである。これらの寸法a、b、t、ΔLは、一例であって、これに限るものではなく、電線2の外径、風圧などの外力に応じて適宜設定される。
【0023】
図8は保持部材12の正面図であり、
図9は保持部材12の側面図であり、
図10は保持部材12の斜視図であり、
図11は保持部材12の平面図であり、
図12は保持部材12の底面図である。保持部材12は、基台30と、係止片31a,31bと、案内筒部32と、底蓋部33とを含む。基台30は、平面視において長方形の扁平部材から成る。各係止片31a,31bは、基台30の各短辺部のそれぞれから直角に立ち上がって形成される。案内筒部32は、基台30の中心部に長手方向一端部32aが貫通して連なる四角筒状体から成る。底蓋部33は、案内筒部32の長手方向他端部32bの開口を塞ぐように設けられる。
【0024】
保持部材12の案内筒部32には、押圧部材10の案内軸部22およびばね11が収容され、案内軸部22が案内筒部32によって軸線方向の移動が案内され、上部6と下部9との間で押圧部材10が案内筒部32の軸線に沿って移動可能に保持される。
【0025】
基台30には、雨水、雪、結露などによって発生した水を排出するための複数の第1透孔35が形成される。また、底蓋部33には、上記の水を排出するための第2透孔36が形成される。また、これらの第1および第2透孔35,36によって張架装置1全体の重量も軽減され、軽量化が図られている。
【0026】
以上のように構成された張架装置1によれば、電柱間に架設された電線2は、取付け枠4に開口5を介して挿入され、取付け枠4内の予め定める掛止め位置Pに配設される。取付け枠4の上部6には、上方へ突出する索条係止部8が設けられる。索条係止部8は、係止片7を有し、係止片7によって索条3が係止される。取付け枠4の下部9と上部6との間には、押圧部材10が変位可能に設けられる。押圧部材10は、ばね11によって、下部9から上部6に向かってばね付勢される。取付け枠4の上部6と押圧部材10との間の掛止め位置Pに配置された電線2は、取付け枠4の上部6に支持された状態で、下方から押圧部材10によって押圧され、上部6と押圧部材10とによって挟持される。
【0027】
取付け枠4の掛止め位置Pに配置された電線2は、取付け枠4の上部6と押圧部材10とによって弾発的に挟持されるので、張架部材1を電線2に沿って移動させることができるとともに、索条3の張力が変化しても、電線2が取付け枠4から離れてしまうことが防がれる。したがって、複数の張架装置1を電線2に取付ける際には、各張架装置1を電線2に沿って容易に移動させ、所定の取付け位置に取付けることができる。また所定の取付け位置に取付けられた各張架装置1は、取付け枠4が電線2から離れないので、索条3の張力が変化しても、索条3は電線2の直上に一定の間隔をあけて安定に保持され、防鳥効果が損なわれることを防止することができる。
【0028】
また、取付け枠4の上部6は、開口5を挟んで互いに近接/離反する方向に弾性変形可能な一対の電線受け部13a,13bを有するので、電線2を各電線受け部13a,13b間の開口5を通過させて取付け枠4内へ容易に挿入することができる。また、張架装置1の交換、取付け位置の調整、保守点検などのために張架装置1を電線2から取外す場合であっても、電線2を各電線受け部13a,13b間の開口5を通過させて取付け枠4から離脱させることができ、電線2への取付け枠4の取付けおよび電線2からの取付け枠4の取外しを容易に行うことが可能となり、電線2への取付け枠4の着脱作業を容易化することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 張架装置
2 電線
3 索条
4 取付け枠
5 開口
6 上部
7 係止片
8 索条係止部
9 下部
P 掛止め位置
10 押圧部材
11 ばね
12 保持部材
13a,13b 電線受け部
14a,14b フック状部分
15 底部
20 押圧板
21a,21b 立ち上がり片
22 案内軸部
23 屈曲片
30 基台
31a,31b 係止片
32 案内筒部
33 底蓋部