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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】無線中継装置、及び、制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/10 20180101AFI20220421BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20220421BHJP
   H04W 12/06 20210101ALI20220421BHJP
【FI】
H04W76/10
H04W84/12
H04W12/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019055461
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020156054
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-10-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500112146
【氏名又は名称】サイレックス・テクノロジー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青山 悠
【審査官】石田 信行
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-205194(JP,A)
【文献】特開2016-165096(JP,A)
【文献】特開2018-148426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末と外部音声により無線接続処理を行う無線中継装置であって、
無線通信のための認証処理に必要な情報を前記通信端末に向けて通知する無線通信部と、
前記外部音声を受け付ける音声入力部と、
音声データ識別情報テーブルおよびSSID設定情報テーブルを格納する記憶部と、
前記音声入力部で受け付けた音声信号を、前記音声データ識別情報テーブルを用いて解析し音声信号データ変換する音声信号認識部と、
通信端末との間で無線接続のためのWPS処理を開始するように前記無線通信部を制御する通信制御部と、
判定部であって、
前記音声信号認識部により音声信号データ変換された文字列データに対し、前記SSID設定情報テーブルを参照してWPS処理開始判定およびSSID識別判定を行い、
前記文字列データが、前記SSID設定情報テーブルに格納されたWPS処理開始条件と一致する文字列を含み、さらに前記SSID設定情報テーブルに格納されたいずれかのSSIDを含む場合は、当該SSIDを前記通信制御部に通知する
判定部と、
を備える無線中継装置。
【請求項2】
前記判定部は、さらに判定失敗回数カウンタを備え、
前記判定失敗回数カウンタの数値が前記SSID設定情報テーブルに格納されたSSID判定限度値に達した場合には、一定時間経過するまで、SSID識別判定を行わない
請求項1に記載の無線中継装置。
【請求項3】
通信端末と外部音声により無線接続処理を行う無線中継装置の制御方法であって、
無線通信のための認証処理に必要な情報を前記通信端末に向けて通知する無線通信ステップと、
前記外部音声を受け付ける音声入力ステップと、
音声データ識別情報テーブルおよびSSID設定情報テーブルを格納する記憶ステップと、
前記音声入力ステップで受け付けた音声信号を、前記音声データ識別情報テーブルを用いて解析し音声信号データ変換する音声信号認識ステップと、
通信端末との間でSSIDをもとに無線接続のためのWPS処理を開始させる通信制御ステップと、
判定ステップであって、
前記音声信号データ変換された文字列データに対し、前記SSID設定情報テーブルを参照してWPS処理開始判定およびSSID識別判定を行い、
前記文字列データが、前記SSID設定情報テーブルに格納されたWPS処理開始条件と一致する文字列を含み、さらに前記SSID設定情報テーブルに格納されたいずれかのSSIDを含む場合は、当該SSIDを前記通信制御ステップに通知する
判定ステップと、を含む
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線中継装置、及び、制御方法に関し、特に無線接続に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN(Local Area Network)を構築する1つの形態として、無線中継装置(アクセスポイント)と1つあるいは複数の無線端末(ノートパソコン、タブレット、スマートフォン等)とを無線接続するインフラストラクチャ方式で通信システムが構築される。
【0003】
無線中継装置に無線端末を帰属させる一般的な方法は、ユーザが無線端末を操作して、無線中継装置を選択し、暗号化キー等の接続情報を入力する方法である。当該接続情報(無線パラメータとも呼ぶ)は、例えば、複数の無線中継装置が周囲に存在した場合に、それぞれの無線中継装置を識別するための識別子であるSSID(Service Set Identifier)、暗号化キーやパスワードなど無線通信におけるセキュリティに関する情報などである。
【0004】
しかしながら、この各種接続情報を設定する作業は、無線LANの知識をある程度必要とし、利用者にとっては手間のかかるものである。
【0005】
そこで、この手間を軽減して、無線端末を無線中継装置に容易に帰属させる機能として、WPS(Wi-Fi(登録商標) Protected Setup)機能が知られている。WPS機能で無線接続を行う方法には、例えば、一定時間内に無線中継装置と無線端末の双方に設けられているボタン(スイッチ)を押すPBC(Push Button Configuration)方式が知られている。
【0006】
WPS機能では、無線パラメータ設定処理用の特別なプロトコル(Registrationプロトコルと呼ぶ)を用いて、無線中継装置から無線端末へ無線パラメータが提供される。
具体的には、Registrationプロトコルにおける無線中継装置と無線端末間の通信は、無線中継装置と無線端末との間で暗号および認証を行うことなく通信できるパケットEAP(Extensible Authentication Protocol)パケットを用いて行われる。また、PBC方式では、無線中継装置および無線端末の双方が備えるプッシュボタンがそれぞれ押下されることをトリガーに無線接続設定処理が開始される。そして、当該無線接続設定処理(以後、WPS処理とも呼ぶ)では、無線中継装置および無線端末がEAPパケットを用いたメッセージの送受信を行うことにより、無線中継装置から無線端末に対して無線パラメータの提供が行われる。無線端末は、無線中継装置から提供された無線パラメータを設定する。これにより、無線中継装置および無線端末との間で暗号および認証を用いたデータ通信を行うことが可能となる。
【0007】
ここで、PBC方式を上記通信システムで適用する場合には、問題が生じ得る。例えば、上記通信システムで設置される無線中継装置は、管理者以外が容易に触れることができないように、通常、地上から高い場所、部屋の天井、および壁内に設置されることが多く、一度設置されると、容易に触れることができない。また、ボタンを押す方式(PBC方式)の場合は、無線中継装置が機構的な制約によりボタンを実装できない場合には、適用することができない。
【0008】
このような問題に対し、特許文献1には、通信装置(アクセスポイント)は、センサ(例えば、撮像装置や音声入力装置など)によって所定のイベントが検知されたことに応じて、他の装置(例えばステーションなど)との無線接続を確立することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2018-148426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、WPS機能で無線接続処理を実行させる際の利便性を向上させることができるが、その構築できる無線ネットワークは1つに限られる。例えば、隣接する複数の無線中継装置が存在した場合に、それぞれの無線通信(無線中継装置と配下の複数の無線端末との間で行う無線通信)をセキュリティ上、別々の無線ネットワークとして構築したい場合には、対応できないという課題がある。また、特許文献1に記載の技術では、音声入力装置で集音された音声信号に所定の音声処理や圧縮符号化処理を行って音声データを生成し、当該音声データを基にイベントが検知されたことを判断するが、通信装置の周囲の環境(雑音を含むなど)によって音声データは一定値を示すとは限らず、利用する場所それぞれで音声データを設定する必要が生じ得る。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、通信端末と無線接続設定を簡便に行うことができ、さらに複数のネットワーク構築を可能することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様による無線中継装置は、通信端末と外部音声により無線接続処理を行う無線中継装置であって、無線通信のための認証処理に必要な情報を通信端末に向けて通知する無線通信部と、外部音声を受け付ける音声入力部と、音声データ識別情報テーブルおよびSSID設定情報テーブルを格納する記憶部と、音声入力部で受け付けた音声信号を、音声データ識別情報テーブルを用いて解析し音声信号データ変換する音声信号認識部と、通信端末との間で無線接続のためのWPS処理を開始するように無線通信部を制御する通信制御部と、判定部であって、音声信号認識部により音声信号データ変換された文字列データに対し、SSID設定情報テーブルを参照してWPS処理開始判定およびSSID識別判定を行い、音声信号データ変換された文字列データが、SSID設定情報テーブルに格納されたWPS処理開始条件と一致する文字列を含み、さらにSSID設定情報テーブルに格納されたいずれかのSSIDを含む場合は、当該SSIDを通信制御部に通知する判定部とを備える。
【0013】
これによれば、無線中継装置は、PBC方式のWPS処理を開始するためには、従来、無線中継装置の物理的なスイッチ(プッシュボタン)を押下し、かつ、通信端末に備わるプッシュボタンを押下する必要があったが、無線中継装置のスイッチを押下できない状況においても、ユーザがWPS処理を開始するための音声信号を無線中継装置に発し、さらにSSIDを音声として発することで、簡便にWPS処理を開始し、無線接続処理を行うことができる。
【0014】
また、判定部は、さらに判定失敗回数カウンタを備え、判定失敗回数カウンタの数値がSSID設定情報テーブルに格納されたSSID判定限度値に達した場合には、一定時間経過するまで、SSID識別判定を行わないことにしてもよい。
【0015】
これによれば、無線中継装置は、外部発声によってWPS処理を開始しないため、想定外の者による無線中継装置の不正利用を一定の条件で排除しセキュリティの向上に寄与する。
【0016】
本発明の別の一態様による無線中継装置の制御方法は、通信端末と外部音声により無線接続処理を行う無線中継装置の制御方法であって、無線通信のための認証処理に必要な情報を通信端末に向けて通知する無線通信ステップと、外部音声を受け付ける音声入力ステップと、音声データ識別情報テーブルおよびSSID設定情報テーブルを格納する記憶ステップと、音声入力ステップで受け付けた音声信号を、音声データ識別情報テーブルを用いて解析し音声信号データ変換する音声信号認識ステップと、通信端末との間でSSIDをもとに無線接続のためのWPS処理を開始させる通信制御ステップと、判定ステップであって、音声信号データ変換された文字列データに対し、SSID設定情報テーブルを参照してWPS処理開始判定およびSSID識別判定を行い、音声信号データ変換された文字列データが、SSID設定情報テーブルに格納されたWPS処理開始条件と一致する文字列を含み、さらにSSID設定情報テーブルに格納されたいずれかのSSIDを含む場合は、当該SSIDを通信制御ステップに通知する判定ステップと、を含む。
【0017】
これによれば、制御方法は、上記無線中継装置と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる無線中継装置は、通信端末と無線接続設定を簡便に行うことができ、さらに複数のネットワーク構築を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施の形態にかかる通信システムの全体図である。
図2図2は、本発明の実施の形態にかかる無線中継装置のハードウェア構成図である。
図3図3は、本発明の実施の形態にかかる無線中継装置の機能ブロック図である。
図4図4は、本発明の実施の形態にかかる無線中継装置が外部音声を受け付けてから周囲の通信端末および無線端末と無線接続処理を行うまでの動作フロー図である。
図5図5は、本発明の実施の形態にかかる無線中継装置が備えるSSID設定情報テーブルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0021】
以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置位置などは、一例であり、発明の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
【0022】
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態にかかる通信システムの全体図である。
【0023】
図1に示されるように、通信システム100は、無線中継装置1と、通信端末2と,情報処理装置3と、無線端末5と、外部ネットワーク9とを備える。また、通信システム100は、通信リンク7、通信リンク8、およびデータ通信のための通信経路であるLAN10を備えている。
【0024】
通信システム100は、通信端末2と情報処理装置3との間を、通信リンク7、無線中継装置1およびLAN10を介し、相互にデータ通信を行うことができる通信システムである。
【0025】
また、通信システム100は、無線端末5と外部ネットワーク9との間を、通信リンク8、無線中継装置1およびLAN10を介し、相互にデータ通信を行うことができる通信システムである。なお、通信システム100では、通信端末2と情報処理装置3との間の通信(第一ネットワーク通信とも呼ぶ)と、無線端末5と外部ネットワーク9との間の通信(第二ネットワーク通信とも呼ぶ)とは異なるネットワークで運用されている。さらに、当該異なるネットワークは、セキュリティレベルが異なってもよい。例えば、第一ネットワーク通信は、社内ネットワークとして運用され、高セキュリティレベル(例えば、暗号化にWPA2(Wi-Fi(登録商標)Protected Access 2)を利用)であるのに対し、第二ネットワーク通信は、ゲスト用(例えば、来訪者用など)として運用され、第一ネットワーク通信ほどの高セキュリティレベルではない。
【0026】
無線中継装置1は、通信端末2と情報処理装置3との間の通信、および、無線端末5と外部ネットワーク9との間の通信を中継する、例えば、アクセスポイントである。具体的には、無線中継装置1は、例えば、通信端末2から情報処理装置3に向けたIP(Internet Protocol)パケットを通信リンク7を通じて受信した場合に、当該IPパケットに含まれる宛先アドレス(情報処理装置3のアドレス)を取得し、LAN10を通じて、当該宛先アドレスを付与されている情報処理装置3にIPパケットを転送する。
【0027】
無線中継装置1は、無線通信インタフェースと有線通信インタフェースの両方を備えていてもよいし、無線通信インタフェースのみを備えていてもよい。
【0028】
また、無線中継装置1は、周辺に複数のアクセスポイントが存在した場合に互いに構築されたネットワークの無線通信が混線しないようにするためのネットワーク識別子(SSID)を複数個(例えば、4つなど)、備えている。これら複数個のSSIDのそれぞれは、無線中継装置1に接続する通信端末、無線端末を異なるネットワークに帰属させる場合に割り当てられ、運用される。
【0029】
通信端末2は、無線中継装置1との間で通信リンク7を通じて、相互に無線通信する装置であり、例えばノートPC、タブレット、携帯端末(スマートフォン)などである。通信端末2は、少なくとも無線通信インタフェースを備える。
【0030】
無線端末5は、無線中継装置1との間で通信リンク8を通じて、相互に無線通信する装置であり、例えばノートPC、タブレット、携帯端末(スマートフォン)などである。無線端末5は、無線通信インタフェースを備える。
【0031】
情報処理装置3は、LAN10を通じて無線中継装置1と通信を行う。情報処理装置3は、例えば、サーバ用PCなどである。
【0032】
外部ネットワーク9は、例えば、インターネットであり、LAN10を通じて無線中継装置1と通信を行う。
【0033】
通信リンク7および通信リンク8は、IEEE802.11a、b、g、n、ac規格等に適合する無線通信による接続である。
【0034】
LAN10は、IEEE802.3規格などに適合する有線LANなどである。なお、LAN10は、IEEE802.11a、b、g、n、ac規格等に適合する無線LANであってもよい。
【0035】
なお、上記した本発明の実施の形態における通信システム100の端末は、無線中継装置1と通信する通信端末2、無線端末5をそれぞれ1台とし、2つの異なるネットワークが運用されるとして説明するが、当該端末は3つ以上の複数台で構成されてもよく、また3つ以上のネットワークで運用されるものであってもよい。
【0036】
図2は、本発明の実施の形態にかかる無線中継装置1のハードウェア構成図である
【0037】
図2に示すとおり、無線中継装置1は、CPU20、ROM(Read Only Memory)21、RAM(Random Access Memory)22、記憶装置23、WNIC(Wireless Network Interface Card)24、NIC(Network Interface Card)25、音声入力IF26、スイッチ27、および内部バス28などを備えている。
【0038】
CPU20は、ROM21に格納された制御プログラムを実行するプロセッサである。
【0039】
ROM21は、制御プログラム等を保持する読み出し専用記憶領域である。
【0040】
RAM22は、CPU20が制御プログラムを実行するときにワークエリアとして用いられる記憶領域である。
【0041】
記憶装置23は、制御プログラム、制御情報、装置情報、または認証情報などを記憶する記憶領域である。
【0042】
WNIC24は、無線通信を行う無線通信インタフェースを備えている。例えば、IEEE802.11a、b、g、n、ac規格等に適合する無線LANの通信インタフェースである。
【0043】
NIC25は、有線通信を行う有線通信インタフェースを備えている。例えば、IEEE802.3規格等に適合する有線LANの通信インタフェースである。なお、NIC25は必須ではない。
【0044】
音声入力IF26は、例えば、マイクロフォン(マイク)のような音声入力装置(図示しない)およびそのインタフェースである。音声入力IF26を通じて音声入力装置から入力された外部音声(例えば、人の発声)を入力波形に変換し、例えば、CPU20に出力される。
【0045】
スイッチ27は、無線中継装置1に備わるスイッチ部品で構成される。スイッチ27は、ユーザによって、無線中継装置1を制御する特定の指示(例えば、WPS機能実行時など)を受け付けるために備わる。本発明の実施の形態にかかる無線中継装置1では、必須ではない。
【0046】
内部バス28は、CPU20,ROM21、RAM22、記憶装置23、WNIC24、NIC25、音声入力IF26、スイッチ27を電気的に接続し、電気信号のやりとりを行うバスである。
【0047】
図3は、本発明の実施の形態にかかる無線中継装置1の機能構成を示すブロック図である。
【0048】
図3に示されるように、無線中継装置1は、音声入力部31と、音声信号認識部32と、記憶部33と、判定部34と、通信制御部35と、無線通信部36とを備える。さらに、記憶部33は、音声データ識別情報テーブル331と、SSID設定情報テーブル332とを備える。
【0049】
音声入力部31は、ユーザが発した音声(外部音声)を音声信号として入力されたか否か(受け付けたか否か)を判断する。このため、音声入力部31は、周囲の雑音と人の発声を区別可能であることが望ましい。音声入力部31は、音声信号を受け付けた場合には、当該音声信号を音声信号認識部32に通知し、メモリ(例えば、RAM22)に一時的に当該音声信号を格納する。なお、音声入力部31は、外部音声を受け付ける場合に、1つの外部音声と次に受け付けた外部音声との間に一定の空白時間(例えば、500msなど)が生じていれば、各々異なる外部音声と認識し、音声信号認識部32に通知してもよい。
【0050】
音声入力部31は、CPU20、ROM21、RAM22、音声入力IF26などにより実現される。
【0051】
音声信号認識部32は、音声信号を解析し、音声信号を文字列データに変換(音声信号データ変換とも呼ぶ)する。ここで、音声信号データ変換処理は、様々な処理方法が考えられるが、例えば、当該変換処理は、音声信号をアナログ信号からデシタル信号に変換(サンプリング)し、演算処理(例えば、フーリエ変換など)を行い、音の種類(例えば、母音、子音など)と合わせて解析しデータ化する。そして、音声信号認識部32は、当該解析されたデータと予め記憶部33に格納された音声データ識別情報テーブル331を参照して音声信号を文字データに変換する。具体的には、音声信号認識部32は、音声入力部31から通知された音声信号を、WPS処理を開始するための条件の候補となる文字列データ(文字列データA)とSSID名候補となる文字列データ(文字列データB)とに音声信号データ変換する。なお、音声信号認識部32は、音声入力部31から通知を受けた信号を一括で音声信号データ変換してもよい。あるいは、音声入力部31から通知された音声信号から、WPS処理を開始するための条件の候補となる文字列データAとSSID名候補となる文字列データの2つの文字列データBとして分離して変換できてもよい。
【0052】
音声信号認識部32は、CPU20、ROM21、RAM22、記憶装置23などにより実現される。
【0053】
記憶部33は、音声データ識別情報テーブル331と、SSID設定情報テーブル332を備える。また、記憶部33は、種々の装置に関する設定情報を格納する。例えば、MAC(Media Access Control)アドレス、無線通信に使用可能なチャネル、認証情報(WPS処理のための無線パラメータ)など)、その他制御に関する様々な情報(無線中継装置1の仕様に依存する)を格納する。
【0054】
記憶部33は、ROM21、RAM22、記憶装置23などにより実現される。
【0055】
音声データ識別情報テーブル331は、音声信号を文字列データに変換するために必要となる情報が格納されている。例えば、音声認識のために辞書的な利用がなされる情報である。具体的には専門分野の辞書(日常生活、医療、金融、オフィスなど)の音響モデル、言語モデル、発音辞書などのデータベースである。
【0056】
SSID設定情報テーブル332は、WPS処理を開始するための条件となる文字列データ(WPS処理開始条件とも呼ぶ)を格納する。また、SSID設定情報テーブル332は、複数のSSID(文字列データで格納)を格納する。さらに、SSID設定情報テーブル332は、SSID判定限度値を格納する(以下、図5で詳細に説明する)。
【0057】
なお、SSID設定情報テーブル332は、WPS処理を開始するための条件となる文字列データおよびSSIDの文字列データを、予めユーザにより専用ツールなどで設定してもよいし、工場出荷時に設定されてもよい。
【0058】
判定部34は、音声信号認識部32により音声信号データ変換された文字列データAとWPS処理を開始するための条件となるSSID設定情報テーブル332に格納された文字列データとが、一致するか否かを判定(以後、WPS処理開始判定とも呼ぶ)する。判定部34は、当該判定で一致していた場合には、その旨を通信制御部35に通知する。
【0059】
また、判定部34は、音声信号認識部32により音声信号データ変換された文字列データBと、SSID設定情報テーブル332に格納されている複数のSSIDのうちいずれかの文字列データとが一致するか否かを判定(SSID識別判定とも呼ぶ)する。判定部34は、文字列データが一致する場合には、一致した文字列データ(つまり複数のSSIDのうちのいずれかの文字列データ)を通信制御部35に通知する。なお、当該一致した文字列データは、記憶部33において一時的あるいは一定期間の間、格納されてもよい。例えば、ユーザが使用している端末装置が無線中継装置1と一時的に無線通信が切断された場合(例えば、無線環境悪化などによる)でも、再接続したい場合には、同じユーザが同じ端末装置であれば外部音声なしに無線接続処理を開始できる。
【0060】
さらに、判定部34は、SSID識別判定の処理で失敗した回数をカウントする判定失敗回数カウンタを備える。具体的には、判定失敗回数カウンタは、初期値は0(ゼロ)であり、SSID識別判定の処理でSSID設定情報テーブル332格納されたいずれのSSIDとも一致していない場合には値を1増加しメモリに記憶する。判定部34は、判定失敗回数カウンタの数値がSSID設定情報テーブル332に格納されたSSID判定限度値に達したか否かを判定する。判定部34は、SSID判定限度値に達した場合には、一定時間(例えば30分)経過するまで、SSID識別判定の処理を行わないことにしてもよいし、そして一定時間(例えば30分)経過すれば、初期値にリセットされてもよい。このようにすることで、無線中継装置1は外部発声によってWPS処理を開始しないため、想定外の者による無線中継装置1の不正利用に対するセキュリティが向上する。
【0061】
判定部34は、CPU20、ROM21、RAM22、記憶装置23などにより実現される。
【0062】
通信制御部35は、判定部34から、音声信号データ変換された文字列データAとWPS処理を開始するための条件となる文字列データとが一致する旨の通知を受け、さらに、識別判定が完了したSSIDを受信した場合、当該SSIDをもとに、通信端末2あるいは無線端末5と無線中継装置1との間で無線接続のためのWPS処理を開始するよう、無線通信部36に通知する。
【0063】
通信制御部35は、CPU20、ROM21、RAM22、記憶装置23などにより実現される。
【0064】
無線通信部36は、通信端末2あるいは無線端末5との間で無線通信を行う。
【0065】
無線通信部36は、通信制御部35の通知をもとに、通信端末2あるいは無線端末5との間でWPS処理を行うために、無線通信のための認証処理に必要な情報(例えば、SSID、認証方式、暗号方式など)を通知する。
【0066】
無線通信部36は、CPU20、ROM21、RAM22、記憶装置23、WNIC24などにより実現される。
【0067】
つぎに、図4は、本発明の実施の形態にかかる無線中継装置1が外部音声を受け付けてから通信端末2および無線端末5とWPS処理を開始するまでの処理を順を追って説明する。
【0068】
図4では、本発明の実施形態における無線中継装置1が、通信端末2および無線端末5がそれぞれ無線接続を行うために各々のユーザから音声信号(外部音声)を受信し、その音声信号をもとに、通信リンク7を通じて通信端末2とWPS処理を開始、また通信リンク8を通じて無線端末5とWPS処理を開始し、双方の通信リンクで無線接続を行う場合を前提に説明する。
【0069】
ステップS41において、判定失敗回数カウンタの数値がSSID設定情報テーブル332に格納されたSSID判定限度値に達したか否かを判定する。判定部34は、判定失敗回数カウンタがSSID判定限度値に達した場合には、処理を終了する(ステップS41のYes)。一方、判定部34は、判定失敗回数カウンタがSSID判定限度値に達していない場合には、ステップS42に遷移する(ステップS41のNo)。ここで、判定失敗回数カウンタの値は、一定時間(例えば30分)経過すれば、初期値にリセットされてもよい。
【0070】
ステップS42において、音声入力部31は、ユーザが発した音声(外部音声)を音声信号として入力されたか否か(受信したか否か)を判断する。音声入力部31は、音声信号を受信した場合には、当該音声信号を音声信号認識部32に通知する(ステップS42のYes)。一方、音声入力部31は、音声信号を受信していない場合には、ステップS42を繰り返す(ステップS42のNo)。
【0071】
ステップS43において、音声信号認識部32は、ステップS42で通知を受けた音声信号を解析し、音声信号データ変換し、変換された文字列データを判定部34に通知する。ここで、判定部34に通知される文字列データは、WPS処理を開始するための条件の候補となる文字列データAとSSID名候補となる文字列データBを個別に、あるいは同時に含むものである。
【0072】
ステップS44において、判定部34は、ステップS43で通知された文字列データAと、SSID設定情報テーブル332に格納されたWPS処理を開始するための条件となる文字列データ(WPS処理開始条件)とが一致するか否かを判定する。判定部34は、文字列データが一致する場合には、その旨を通信制御部35に通知する(ステップS44のYes)。一方、判定部34は、文字列データが一致しない場合には、ステップS42に戻って、音声信号が入力されるまで待機する(ステップS44のNo)。
【0073】
ステップS45において、判定部34は、SSID設定情報テーブル332を参照し、ステップS43で通知された文字列データB(SSID名候補となる文字列データ)と、SSID設定情報テーブル332に格納されている複数のSSIDのうちのいずれかとが一致するか否かを判定する。判定部34は、文字列データが一致する場合には、一致した文字列データ(つまり複数のSSIDのいずれかの文字列データ)を通信制御部35に通知する(ステップS45のYes)。一方、判定部34は、文字列データが一致しない場合には、ステップS49に遷移する(ステップS45のNo)。
【0074】
ステップS46において、通信制御部35は、ステップS43で通知された文字列データAと、SSID設定情報テーブル332に格納されているWPS処理を開始するための条件となる文字列とが一致する通知を受けると(ステップS45のYes)、ステップS45で通知されたSSIDをもとに、通信端末2あるいは無線端末5と無線中継装置1との間で無線接続のためのWPS処理を実行する。具体的には、通信制御部35は、ステップS45で通知されたSSIDがSSID1(例えば、後述する図5のEigyou)の場合には、その旨を無線通信部36に通知し、ステップS47に遷移する。また、通信制御部35は、ステップS45で通知されたSSIDがSSID2(例えば、後述する図5のGesuto)の場合には、その旨を無線通信部36に通知し、ステップS48に遷移する。
【0075】
ステップS47において、無線通信部36は、ステップS46で通知されたSSIDがSSID1であるという判定に従って、WPS処理を行おうとしている通信端末2に向けて、無線通信のための認証処理に必要な情報(例えば、SSID1、認証方式、暗号方式など)を通知する。
【0076】
ステップS48において、無線通信部36は、ステップS46で通知されたSSIDがSSID2であるという判定に従って、WPS処理を行おうとしている無線端末5に向けて、無線通信のための認証処理に必要な情報(例えば、SSID2、認証方式、暗号方式など)を通知する。
【0077】
ここで、ステップS47およびステップS48におけるWPS処理については、例えば、通信端末2あるいは無線端末5のユーザは、端末装置に備わるプッシュボタンを押下することで、無線中継装置1とWPS処理を開始することができる。
【0078】
このように、PBC方式のWPS処理を開始するためには、従来、無線中継装置1のスイッチ27を押下し、かつ、通信端末2あるいは無線端末5に備わるプッシュボタンを押下する必要があったが、無線中継装置1のスイッチ27を押下できない状況においても、ユーザがWPS処理を開始するための音声信号を無線中継装置1に発することで、簡便にWPS処理を開始することができるのである。ステップS49において、判定部34は、判定失敗回数カウンタ値を1増加し、ステップS41にもどる。
【0079】
図5を用いて、本発明の実施の形態にかかるSSID設定情報テーブル332の一例について説明する。
【0080】
図5に示されるとおり、SSID設定情報テーブル332は、WPS処理開始条件51、SSID52、SSID判定限度値53などを項目別に備える。
【0081】
WPS処理開始条件51は、無線中継装置1が通信端末2あるいは無線端末5と無線接続するためのWPS処理を開始するためのトリガーとなる文字列を示している。
【0082】
SSID52は、無線中継装置1を識別するための識別子である複数のSSIDを備えている。各SSIDは、それぞれ異なるネットワークを構築する際に利用される。
【0083】
SSID判定限度値53は、外部発声を受け付ける限度値を示している。無線中継装置1は、本発明の実施の形態では、判定失敗回数カウンタ値がSSID判定限度値に達した場合には、外部発声を受け付けるが、WPS処理を開始しない。
【0084】
また、SSID設定情報テーブル332において、(1)WPS開始条件51の文字列が複数のSSIDに対して同一である、または(2)WPS開示条件51の文字列がSSID52の文字列をも兼ね、文字列データAを文字列データBとしても判定に用いる、としてもよい。この場合、セキュリティのレベルは多少低下するが、ユーザは接続のためのパラメータを容易に記憶できるメリットがある。
【0085】
このように、本発明の実施の形態にかかる無線中継装置1は、SSID設定情報テーブル332に備わる各項目の組み合わせにより、利用者がWPS処理を実行することを制限できる。例えば、通常、無線中継装置1の利用許可を受けているユーザは、使用する無線中継装置1のWPS処理開始条件の文字列51とSSID52を知っているため、所定の回数(できるだけ少ない方がよい)以内にWPS処理を実行することができるはずである。一方、通信システム100において、悪意のある者が無線中継装置1に向けて複数回(WPS処理開始条件に一致するまでの回数)、外部発声を行うことでWPS処理が実行されてしまうことを避けるために、無線中継装置1はSSID判定限度値53と判定失敗回数カウンタ値とが一致した場合には、セキュリティの観点から、WPS処理を開始しないようにしているのである。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、無線接続設定を簡便に行うWPS機能を用いて複数のネットワーク構築したい場合などに利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
100 通信システム
1 無線中継装置
2 通信端末
3 情報処理装置
5 無線端末
7、8 通信リンク
9 外部ネットワーク
10 LAN
20 CPU
21 ROM
22 RAM、
23 記憶装置
24 WNIC
25 NIC
26 音声入力IF
27 スイッチ
31 音声入力部、
32 音声信号認識部
33 記憶部
331 音声データ識別情報テーブル
332 SSID設定情報テーブル
34 判定部
35 通信制形部
36 無線通信部
51 WPS処理開始条件
52 SSID
53 SSID判定限度値

図1
図2
図3
図4
図5