(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/46 20060101AFI20220421BHJP
H01R 4/18 20060101ALI20220421BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20220421BHJP
H01R 43/24 20060101ALI20220421BHJP
H01R 13/405 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
H01R13/46 B
H01R4/18 A
H01R43/00 B
H01R43/24
H01R13/405
(21)【出願番号】P 2017140308
(22)【出願日】2017-07-19
【審査請求日】2020-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】391018732
【氏名又は名称】富士電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】東浦 孝至
(72)【発明者】
【氏名】山本 正明
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-280855(JP,A)
【文献】登録実用新案第3088913(JP,U)
【文献】特開平09-185972(JP,A)
【文献】実開昭52-161489(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/46
H01R 4/18
H01R 43/00
H01R 43/24
H01R 13/405
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
該ハウジングの基部に対して両側から突出するとともに互いに平行に配設された複数の端子とを備え、
前記端子は、
前記基部に対して一方側から突出する栓刃部と、他方側から突出して電線に加締めるカシメ部とを有して形成され、
前記カシメ部にはカシメ面が形成されるとともに、前記栓刃部には栓刃面が形成されており、
前記複数の端子は、
少なくとも一対の端子の前記栓刃面の夫々が同一方向を向くとともに、前記他方側から視て前記栓刃面の指向方向の直交方向において、前記カシメ部が互いにオーバーラップするレイアウトで配設された構成において、
前記複数の端子は、
前記カシメ面が、前記栓刃面の指向方向と異なる指向方向において夫々が同一方向を向くとともに、前記他方側から視て前記カシメ面の指向方向の直交方向において、前記カシメ面の夫々が互いにオーバーラップしないレイアウトで配設され、
前記栓刃部と前記カシメ部との間に、前記栓刃面と前記カシメ面との各指向方向の違いを許容しながら介在する板状の方向転換部を備え、
前記方向転換部は、前記栓刃部の側に延設する栓刃側延設片と、前記カシメ部の側に延設するカシメ側延設片とを有するとともに、前記栓刃側延設片と前記カシメ側延設片との間において、端子軸方向に延びる曲げ変形部を介して曲げ変形され、
前記栓刃部は、前記栓刃面と、該栓刃面よりも幅小の栓刃板厚相当面とで角棒状に形成され、
前記方向転換部および前記カシメ部は、前記栓刃板厚相当面の幅よりも薄い板厚で形成され、
前記栓刃側延設片は、前記栓刃
部の後端における板厚方向の一端側から前記栓刃面と同じ向きに指向するように延設され、
前記栓刃
部の基端には、前記栓刃
部と前記栓刃側延設片との板厚差に相当する段部が形成され、
前記カシメ側延設片は、前記曲げ変形部において前記栓刃側延設片に対して、前記他方側から視て
前記段部と近接する側へ略直角に谷折りされた
電気コネクタ。
【請求項2】
前記複数の端子は、
前記カシメ面の指向方向が前記栓刃面の指向方向の直交方向となるレイアウトで配設された
請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記端子の前記栓刃部と前記カシメ部との間部分に、前記ハウジングに保持されるハウジング被保持部を備えた
請求項1又は2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記端子は、前記栓刃部、前記ハウジング被保持部、前記方向転換部および前記カシメ部を該端子の軸方向において一体に形成された
請求項
3に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングに、前記複数の端子を挿通保持するとともに前記基部としての保持壁部を備え、
前記保持壁部は、前記端子の軸方向の直交断面視で略矩形状に形成され、
前記複数の端子は、前記カシメ部の幅方向が前記保持壁部の長手方向と平行となるレイアウトで前記保持壁部の面上に配設された
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、電気機器の電源入力部に取り付けられ、電源コードを着脱可能とするインレットコネクタに例示されるような電気コネクタに関し、詳しくは、軸方向の一方に栓刃部を有するとともに軸方向の他方に電線に加締めるカシメ部を有して形成される複数の端子と、複数の端子を保持するハウジングと、を備えた電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
上述したような電気コネクタに備えた端子と電線との接合に関して、ハンダ付けやロウ付け等の溶着方法は、強固な接合状態が得られることから特許文献1に例示されるように従来から広く行われている。
【0003】
特許文献1のACインレットは、端子の後部に設けられた内部電極(2)がハウジング(3)の後背面から後方へ突出形成されたものであり、端子と電線との接合時には、電線の先端部分を内部電極(2)に貫通形成された小孔に挿通した後、該小孔の縁部に巻き付ける等して内部電極(2)に係合し、さらにこの係合部分を半田付けすることによって接合するものである。
【0004】
しかし、端子と電線とを溶着により接合する方法は、上述した特許文献1のように一連の作業工程を要するとともに電線の先端部分の内部電極(2)への係合部分全体を斑なく半田付けする必要がある等、手間を要し、接続作業の効率性、ひいては電気コネクタの生産性の観点で難点があった。
【0005】
また電気コネクタに備えた端子と電線との接合に関して、端子の後部にカシメ部が形成され、該カシメ部によって電線を加締めて接合する方法も上述した溶着と同様に強固な接合状態が得られることから広く行われている。
【0006】
ところで、軸方向の一方に栓刃部を備え、他方にカシメ部を備えた端子において、栓刃部が栓刃面を有する角棒状などの構成の場合、該栓刃面の指向性(栓刃面に直交する方向)は、電気コネクタの規格や、接続相手側部材に設けられた栓刃部差込み用穴のレイアウトの関係に依存する。一方、カシメ部についても、電線の先端部分に加締めるカシメ面が設けられていることから、一般に栓刃部とカシメ部とは共に軸方向の直交断面において向き(姿勢)を特定して(つまり異方性を有して)ハウジングに保持されている。このような異方性を有する端子において、特許文献1のACインレットのように、単純に端子を、栓刃部から後方に真直ぐに延設し、その後方延設部分に、栓刃面と指向方向が同じになるカシメ面を有するカシメ部を設けた場合には、例えば、
図8に示すようにハウジング短手方向(
図8中のY方向)において、複数の端子100間で、夫々に備えたカシメ部102aが互いにオーバーラップするおそれがある。
【0007】
ここで、加締め作業においては、一般にアンビル(固定型)とクリンパ(可動型)とを備えた加締め用工具が用いられ、アンビルに対してクリンパを、近接する方向に移動させることでカシメ部を電線ごと挟み込むようにして該カシメ部を電線に加締めることが行われる。
【0008】
しかし、上述したように、複数の端子間の夫々に備えたカシメ面が互いにオーバーラップする場合には、加締め用工具を用いた加締め作業時に、加締め対象の端子にオーバーラップする他の端子が加締め用工具に干渉することになり、加締め作業に支障を来たすことになる。
【0009】
このため、加締めにより電線と端子とを接続する際には、端子100を、栓刃部材101と、カシメ部102aを備えたファストン端子102(カシメ部材102)との分割構造で別々に構成し、
図9(a)に示すように、電線4の先端部分4aをファストン端子102によって予め加締めておき、
図9(b)、(c)に示すように、電線4を加締めたファストン端子102を、栓刃部材101に嵌合する等して後付けで連結することも従来から行われている。
【0010】
しかしながらこのような電気コネクタ使用時に、端子100における、ファストン端子102と栓刃部材101との連結部に振動等の負荷が加わった場合には、ファストン端子102が栓刃部材101から外れるおそれもあり、また、加締めにより電線と端子とを接続する際にも上述した一連の工程を要し、電線4と端子100との接合強度や接合作業性について改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、端子を電線に強固に接続することができつつ、端子を電線に接続する際の作業効率、生産性の向上を図ることができる電気コネクタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の電気コネクタは、ハウジングと、該ハウジングの基部に対して両側から突出するとともに互いに平行に配設された複数の端子とを備え、前記端子は、前記基部に対して一方側から突出する栓刃部と、他方側から突出して電線に加締めるカシメ部とを有して形成され、前記カシメ部にはカシメ面が形成されるとともに、前記栓刃部には栓刃面が形成されており、前記複数の端子は、少なくとも一対の端子の前記栓刃面の夫々が同一方向を向くとともに、前記他方側から視て前記栓刃面の指向方向の直交方向において、前記カシメ部が互いにオーバーラップするレイアウトで配設された構成において、前記複数の端子は、前記カシメ面が、前記栓刃面の指向方向と異なる指向方向において夫々が同一方向を向くとともに、前記他方側から視て前記カシメ面の指向方向の直交方向において、前記カシメ面の夫々が互いにオーバーラップしないレイアウトで配設され、前記栓刃部と前記カシメ部との間に、前記栓刃面と前記カシメ面との各指向方向の違いを許容しながら介在する板状の方向転換部を備え、前記方向転換部は、前記栓刃部の側に延設する栓刃側延設片と、前記カシメ部の側に延設するカシメ側延設片とを有するとともに、前記栓刃側延設片と前記カシメ側延設片との間において、端子軸方向に延びる曲げ変形部を介して曲げ変形され、前記栓刃部は、前記栓刃面と、該栓刃面よりも幅小の栓刃板厚相当面とで角棒状に形成され、前記方向転換部および前記カシメ部は、前記栓刃板厚相当面の幅よりも薄い板厚で形成され、前記栓刃側延設片は、前記栓刃部の後端における板厚方向の一端側から前記栓刃面と同じ向きに指向するように延設され、前記栓刃部の基端には、前記栓刃部と前記栓刃側延設片との板厚差に相当する段部が形成され、前記カシメ側延設片は、前記曲げ変形部において前記栓刃側延設片に対して、前記他方側から視て前記段部と近接する側へ略直角に谷折りされたことを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、端子を電線に強固に加締めることができつつ、端子を電線に加締める際の作業効率、生産性の向上を図ることができる。
【0015】
また、上記構成によれば、栓刃部を例えば、角棒状等の形状等栓刃面を有して形成した場合には、該栓刃部を配置する際の姿勢が電気コネクタの規格等によって特定される。このため、端子の一方側に有する栓刃部を、上記規格等に従って所定の姿勢で配置すると、それに伴って端子の他方側に有するカシメ部の配置、姿勢にも影響を及ぼすことになる。
【0016】
このように、栓刃部の配置、姿勢に影響を受けた状態でカシメ部が配置されると、各カシメ面が互いにオーバーラップするおそれがあり、加締め用工具を用いた効率的な加締め作業が阻害されることになる。
【0017】
これに対して上述したように、前記複数の端子を、前記各カシメ面が、前記栓刃面の指向方向と異なる指向方向となるレイアウトで配設することにより、たとえカシメ部が栓刃面の指向方向の直交方向においてオーバーラップするレイアウトであっても、各カシメ面が互いにオーバーラップすることなく配置することができる。
【0018】
従って、カシメ部を電線に加締める際に、加締め用工具の動作が、オーバーラップする他方の端子によって阻害されることがなく、加締め作業をスムーズ且つ確実に行うことができる。
【0019】
また、上述したように、前記複数の端子は、前記各カシメ面の指向方向が同一方向を向くレイアウトで配設されたものであるため、複数の端子の各カシメ面が全て同一方向を向くレイアウトとなり、加締め用工具により電線をカシメ部によって加締める際に、加締め用工具とカシメ部との相対姿勢を複数の端子ごとに設定せずとも容易に電線を加締めることができる。
【0020】
また上述したように、前記端子をその軸方向全体において一体に形成することにより、例えば、軸方向の一方側と他方側とを別々に形成し、これら別部材同士をリベット等の結合手段で結合した構成のように、結合部分が脆弱化して破断するおそれがなく、端子の強度を確保することができる。
【0021】
また、上述したように、前記カシメ部は、薄い板厚で形成することにより、曲げ変形し易くなるため、電線の外周に巻き付くように加締め変形して該電線にしっかりと加締めることができる。同様に前記方向転換部についても、薄い板厚で形成することにより、曲げ加工し易くなるため、指向方向が互いに異なるように形成した前記栓刃面と前記カシメ面との各指向方向の違いを許容することができる。
【0022】
この発明の態様として、前記複数の端子は、前記カシメ面の指向方向が前記栓刃面の指向方向の直交方向となるレイアウトで配設されたものである。
【0023】
上記構成によれば、前記複数の端子を栓刃面の指向方向においてカシメ面がオーバーラップしないレイアウトとすることができるため、栓刃面の指向方向の直交方向において加締め用工具を移動させることで、加締め用工具が他の端子に干渉することなく複数の端子を夫々について電線に接続することができる。
【0024】
この発明の態様として、前記ハウジングに、前記複数の端子を挿通保持するとともに前記基部としての保持壁部を備え、前記保持壁部は、前記端子の軸方向の直交断面視で略矩形状に形成され、前記複数の端子は、前記カシメ部の幅方向が前記保持壁部の長手方向と平行となるレイアウトで前記保持壁部の面上に配設されたものである。
【0025】
上記構成によれば、前記複数の端子を、前記カシメ部の幅方向が前記保持壁部の長手方向と平行となるレイアウトで該保持壁部の面上に配設できるため、前記複数の端子を、前記カシメ部の幅方向において該各カシメ部が互いにオーバーラップしないレイアウトで配設させつつ、より多くの端子を前記保持壁部の面上に効率よく配設することができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、端子を電線に強固に接続することができつつ、端子を電線に接続する際の作業効率、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態のACインレットを背面側から見た斜視図。
【
図2】本実施形態のACインレットの正面図(a)、平面図(b)、右側面図(c)。
【
図3】本実施形態のACインレットの背面図(a)、
図3(a)の領域Xの拡大図、
図2(b)のA-B-B’-C線矢視図(c)。
【
図5】中間端子部材の平面図(a)右側面図(b)。
【
図6】カシメ部を電線に加締める前(a)、最中(b)、完了後(c)の夫々を示した加締め工程の説明図。
【
図7】他の実施形態の端子を
図4に対応させて示した斜視図。
【
図8】従来のACインレットを背面側から見た斜視図。
【
図9】従来のACインレットにおける端子を電線に加締める手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本実施形態のACインレット1は、AC電源入力部に用いる電源用コネクタであって、外部電源からAC電源を供給する電源ケーブルの先端に備えたメス型の差込ソケットが差し込まれる差込口がパーソナルコンピュータ等の不図示の電気機器の筐体に構成されるように該筐体のAC電源入力部に取り付けられている。
【0029】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
本実施形態のACインレット1は、
図1~
図5に示すように、3本の端子2…と、これら3本の端子2…を平行に保持するハウジング3と、を備えた3極インレットである。
【0030】
ここで、ACインレット1は、端子2とハウジング3の夫々の軸方向は平行であり、これら軸方向が、不図示の筐体に対して直交するとともに、不図示の差込ソケットの差込み方向と一致するように取り付けられている。
【0031】
図中、矢印X、矢印Xr、Xlは夫々ACインレット1の幅方向、右方向、左方向、矢印Y、矢印Yu、矢印Ydは夫々ACインレット1の上下方向、上方向、下方向、矢印Z、矢印Zf、矢印Zrは夫々ACインレット1の軸方向、前方向、後方向を示すものとする。
なお、ACインレット1は、その前方向が電気機器の外方向に、その後方向が電気機器の内方向に夫々一致するように電気機器の筐体に取り付けられている。
【0032】
ハウジング3は、
図2(a)(b)、
図3(c)に示すように、前方が差込ソケットの差込口として開口する開口35を有するとともに、3本の端子2…の少なくとも後述する栓刃部21をその外周側から包囲する有底角筒状に形成されている。
【0033】
図1、
図2(a)(b)(c)、
図3(a)(c)に示すように、ハウジング3は、筒状の胴部30と、胴部30内部の空洞34(
図3(c)参照)を該胴部30の後端において閉塞する保持壁部31と(
図2(b)、
図3(c)参照)、胴部30の前部において左右各側に張り出すとともに軸方向に貫通する小孔が形成された一対のフランジ部32(
図1、
図2(a)(b)、
図3(a)参照)と、各端子2の保持壁部31から後方への突出位置に対応して保持壁部31の後方へ膨出するように該後面に配設した3つの台座部33(
図1、
図2(b)(c)、
図3(a)(b)(c)参照)とで合成樹脂等の絶縁材によって一体に形成されている。
【0034】
図1、
図3(a)に示すように、胴部30は、軸方向の直交断面が、上下方向(Y方向)に対して幅方向(X方向)に長い矩形状であるとともに、該胴部30の上面部30Aと左側面部30B、および上面部30Aと右側面部30Cとで形成される両サイドのコーナー部30D,30Dを面取り形状とした角筒状に形成している。胴部30の軸方向のフランジ部32よりも前側には、開口縁部を形成するように前方突出部36が突設されている。
【0035】
図1、
図2(b)、
図3(a)(c)に示すように、保持壁部31は、軸方向に直交する直交面を構成して、胴部30の後端側の開口を閉塞する。そして胴部30を上述のとおり角筒状に形成するに伴って、保持壁部31についても背面視で上下方向に対して幅方向に長い矩形状に形成されている(
図1、
図3(a)参照)。
【0036】
なお
図2(a)に示すように、胴部30の空洞34に面する内壁上面部30aと内壁左側面部30b、および内壁上面部30aと内壁右側面部30cとで形成される左右両サイドの内壁コーナー部30d,30dも面取り形状に形成し、不図示の差込みソケットの空洞34への差込み時に、適切な姿勢での差し込みを許容している。
【0037】
3本の端子2…は、共に軸方向の前端から後端にかけて、栓刃部21、ハウジング被保持部22、方向転換部23およびカシメ部24がこの順に銅や真鍮などの伝導部材により一体に形成されている。
【0038】
3本の端子2…のうち2本の端子2a,2aは、不図示の電源ケーブルを通じて外部から同じく不図示の電気機器の内部へ電流を入力する一対の入力端子2a,2aであるとともに、残り1本の端子2bはアース端子2bである。
なお、アース端子2bは、電源ケーブルの差込ソケットの差込み時に一対の入力端子2a,2aよりも差込ソケットの不図示の接続孔に備えた不図示のメス型端子に先に接触するように一対の入力端子2a,2aよりも栓刃部21を前方へより突出させて長く形成されている(
図2(b)、
図3(c)参照)。
【0039】
3本の端子2…は、アース端子2bが一対の入力端子2a,2aよりも栓刃部21の前方への突出長さが長い以外は、同一形状で形成されている。このため、
図4では一対の入力端子2a,2aの一方を示しており、
図5(a)(b)では該一方の入力端子2aの製造過程で生成される中間端子部材2Aを示しているが、以下の説明については、他方の入力端子2aは勿論、アース端子2bについても該一方の入力端子2aの構成に基づいて説明する。
【0040】
図2(a)(b)、
図3(c)、
図4に示すように、栓刃部21は、軸方向の直交断面が、栓刃面21a(幅広面)と、該栓刃部21の板厚部分に相当する板厚相当面21b(幅狭面)とを有した略矩形状をした角棒状に形成している。そして、板厚相当面21bがハウジング3の長手方向(X方向)、栓刃面21aがハウジング3の短手方向(Y方向)にそれぞれ一致する向き(姿勢)で配設されている(
図2(a)参照)。すなわち、3本の端子2…は、各栓刃面21aの指向方向がX方向となるように配設されている(
図2(a)、
図4中の太矢印参照)。
【0041】
図2(a)に示すように、3本の端子2…の各栓刃部21は、正面視で差込口としての開口35の幅方向(X方向)の中間位置にアース端子2bの栓刃部21が配設され、アース端子2bの栓刃部21に対して左右各側に同一距離を隔てた位置に一対の入力端子2a,2aの各栓刃部21が配設されている。
【0042】
さらに同図に示すように、3本の端子2…の各栓刃部21は、一対の入力端子2a,2aの各栓刃部21が、上下方向(Y方向)において同一位置(つまり同一高さ)で配設されているのに対して、これら一対の入力端子2a,2aの各栓刃部21に対して少なくとも栓刃面21aの長さ相当分だけ上方にずらした位置にアース端子2bの栓刃部21が配設されている。
【0043】
このような3本の端子2…の各栓刃部21のレイアウト(配置、姿勢)は、国際電気標準機構(IEC)のガイドラインに準拠するものであり、各栓刃部21は共に軸方向の直交断面について、配置および姿勢が特定されている(つまり異方性を有している)。
【0044】
図2(b)、
図3(c)、
図4に示すように、ハウジング被保持部22は、ハウジング3の成形時に該ハウジング3の保持壁部31に挿通するように埋め込まれた(インサートされた)部分であり、これにより、3本の端子2…は、互いに平行かつ上述したレイアウト(配置および姿勢)でインサート部品としてハウジング3に一体に保持されている。
【0045】
このとき、3本の端子2…は、
図2(b)、
図3(c)に示すように、最も前方へ突出するアース端子2bも含めて各栓刃部21が、ハウジング3の胴部30の開口35から前方へ突出しない長さで空洞34において保持壁部31から前方(Zf方向)へ直線状に突出するとともに、
図1、
図2(b)(c)、
図3(c)に示すように、保持壁部31の後背面に突設された台座部33からさらに後方(Zr方向)へ方向転換部23とカシメ部24とがこの順で突出する。
【0046】
さらに
図3(c)、
図4、
図5(a)(b)に示すように、ハウジング被保持部22には、その幅方向(Y方向)の中間位置に板厚方向(X方向)に貫通する貫通穴22aが形成されており、ハウジング被保持部22の外側周辺だけでなく貫通穴22aにもハウジング3の形成材料としての樹脂Rが充填されている(
図3(b)参照)。
【0047】
ここで、特に
図4、
図5(a)(b)に示すように、端子2のハウジング被保持部22よりも後側部位、すなわち方向転換部23およびカシメ部24は、端子2の方向転換部23よりも前側部位、すなわちハウジング被保持部22および栓刃部21よりも板厚を薄肉としてこれら方向転換部23およびカシメ部24のそれぞれを曲げ変形可能に形成している。
なお、当例では端子2の方向転換部23よりも前側部位の板厚(
図4、
図5(b)中の符号T参照)を2mmで形成するとともに、端子2のハウジング被保持部22よりも後側部位の板厚(同図中の符号t参照)を0.45mmで形成している。
【0048】
図1、
図2(b)(c)
図3(a)(b)(c)、
図4に示すように、カシメ部24は、電気機器の筐体内に内蔵されたバッテリやインバータ等の不図示の電源供給部品側から延出する電線4(リード線)(
図6参照)の一端側に加締め可能に、カシメ部本体部24aと、該カシメ部本体部24aの幅方向(X方向)の両外側かつ上方へ突出形成する左右一対のカシメ片部24b,24bとを有している。これにより、カシメ部24は、電線4に加締める前の状態において軸方向の直交断面を略U字形状に形成している(
図1、
図3(a)(b)参照)。
【0049】
カシメ部24の上面、すなわちカシメ部本体部24aおよびカシメ片部24b,24bの各上面は、カシメ面24cとして形成されており、このうちカシメ部本体部24aに相当するカシメ面24cにおいては、電線4の先端側の被覆を剥がした電線先端部4aを載置可能に上方(Yu方向)を向いて形成されている。つまり当例では、3本の端子2…における各カシメ面24cの指向方向を共に上方向としている(
図1、
図2(c)、
図3(a)(b)(c)、
図4中の白抜き矢印参照)。
【0050】
図1、
図2(b)(c)、
図3(a)(b)(c)、
図4に示すように、方向転換部23は、端子2上方から視て谷折り稜線を形成する曲げ変形部23a(
図3(b)、
図4参照)と、曲げ変形部23aに対して栓刃部21側に延設する栓刃側延設片23bと、曲げ変形部23aに対してカシメ部24側に延設するカシメ側延設片23cとで形成している。
【0051】
図2、
図4、
図5(a)(b)に示すように、栓刃側延設片23bは、栓刃面21aと同じ幅方向(X方向)を指向するとともに、ハウジング被保持部22との板厚差に相当する段部23dを介してハウジング被保持部22と一体に連結するように形成されている。一方、
図2(b)、
図4に示すように、カシメ側延設片23cは、幅小部23eを介してカシメ部24と一体に連結するように形成されており、カシメ部24のカシメ面24cと同じ上方向(Yu方向)を指向するように形成されている。
なお、幅小部23eは、端子幅方向(Y方向)の両外縁が幅方向内側へ凹状に形成することによってカシメ側延設片23cのX方向への延設長さよりも幅小に形成したものであり、該幅小部23eを形成することにより、カシメ部24の加締め変形時に、該カシメ部24のみを独立して加締め変形し易く形成している。
【0052】
そして
図1、
図4に示すように、栓刃側延設片23bとカシメ側延設片23cとの成す角度α(
図1参照)が略直角になるように曲げ変形部23aにおいては略直角に曲げ変形して、栓刃面21aとカシメ面24cとの各指向方向の違いを許容するように形成している。
【0053】
要するに、3本の端子2…の各栓刃部21は、上述したように国際電気標準機構(IEC)のガイドラインに準拠する上述したレイアウト(配置、姿勢)で配設されており、これに伴って、3本の端子2…のうち一対の入力端子2a,2aは、正面視で栓刃面21aの指向方向(X方向)の直交方向(Y方向)において、栓刃部21が互いにオーバーラップするレイアウトで保持壁部31に配設されている(
図2(a)参照)。換言すると、3本の端子2…は、背面視で栓刃面21aの指向方向(X方向)の直交方向(Y方向)において、カシメ部24が互いにオーバーラップするレイアウトで保持壁部31に配設されている(
図1、
図3(a)参照)。
【0054】
一方、3本の端子2…は、栓刃面21aの指向方向(X方向)において、各カシメ部24が互いにオーバーラップしないレイアウトで配設されている(
図1、
図2(b)、
図3(a)参照)。
【0055】
詳しくは、3本の端子2…の各カシメ部24は、共にカシメ面24cの指向方向が、栓刃面21aの指向方向(X方向)の直交方向(Y方向)と一致する(平行となる)レイアウト、詳しくは上方向(Yu方向)となるレイアウトで配設されている(同図参照)。
【0056】
本実施形態のACインレット1は以下の製造方法で製造される。
端子2の形成部材として、軸方向全体に例えば、2mmの板厚を有する角棒状の金属部材を各端子2a,2a,2bに対応して3本用意し、ハウジング被保持部22よりも後側部位を、方向転換部23よりも前側部位(栓刃板厚相当面21b)と比較して薄い板厚(例えば、0.45mm)になるようにその板厚方向(X方向)の一面側からフライス盤等の切削工具で切削する(端子切削工程)。これにより、
図5(a)(b)に示すような中間端子部材2Aを得る。
【0057】
中間端子部材2Aに対して方向転換部23を、曲げ変形部23aが段部23dを有する面から見て谷折りの稜線となるように、カシメ側延設片23cをカシメ部24ごと栓刃側延設片23bに対して直角に曲げ加工することでカシメ側延設片23cと栓刃側延設片23bとの成す角度α(
図1参照)を直角とし、これに伴ってカシメ面24cの指向方向(Yu方向)が、栓刃面21aの指向方向(X方向)に対して直角となるように形成する(方向転換部曲げ工程)。
【0058】
さらにカシメ部24を軸方向(Z方向)の直交断面が上述した略U字形状となるように曲げ加工して各端子2a,2a,2bを形成することができる(カシメ部曲げ工程)。
なお、方向転換部曲げ工程とカシメ部曲げ工程とは、上述したように、この順に段階的に行うに限らず、順番を入れ換えてもよく、また同時に行ってもよい。
【0059】
上述した工程により形成した3本の端子2…における各ハウジング被保持部22を、ハウジング3の成形時に、不図示の金型内に挿入した状態で樹脂Rを注入してハウジング3と端子2とを一体化する(インサート成形工程)。
その際、ハウジング被保持部22に形成された貫通穴22aにハウジング3を形成する樹脂Rが鋳込まれる(流入する)ことで、ハウジング3と端子2との一体性を高めている(
図3(c)参照)。
【0060】
また、上記貫通穴22aは、上述した切削工程或いは曲げ工程の際、又はこれら工程の前後の適宜の段階においてハウジング被保持部22に不図示のドリル等の穿孔工具を用いて形成することができる。
【0061】
図6(a)(b)(c)は、
図2(c)中のD-D線断面矢視にてあらわした、ACインレット1に備えた3本の端子2…の夫々を電線4に加締める工程の説明図であって、
図6(a)は加締め前、
図6(b)は加締め中、
図6(c)は加締め完了後の状態を示す。
【0062】
具体的には、
図6(a)に示すように、3本の端子2…の夫々について、カシメ部24を、加締め用工具50(アンビル51(固定型)およびクリンパ52(可動型))のうち、アンビル51の凹状の上面にセットし、カシメ部24のカシメ面24cに、電線4の先端側の被覆を剥がした電線先端部4aを載置する。そしてアンビル51に対してカシメ部24および電線4を隔てて上方で対向するクリンパ52を降下(Xd方向にスライド)させる。
【0063】
このとき、3本の端子2…は、背面視で各カシメ面24cが互いにオーバーラップしないため、換言すると、栓刃面21aの指向方向(X方向)において、各カシメ部24(各カシメ面24c)が互いにオーバーラップしないため、当該加締め対象と異なる端子2が加締め用工具50に干渉することなく、
図6(b)に示すように、3本の端子2…の夫々に対応する組み合わせのアンビル51とクリンパ52とによって、カシメ部24を電線先端部4aごと挟み込むことができる。
これにより、
図6(c)に示すように、ACインレット1に備えた3本の端子2…の各カシメ部24を電線先端部4aに加締めて各端子2a,2a,2bを電線4に接続することができる。
【0064】
本実施形態のACインレット1は、軸方向の前側(Zf方向)に栓刃部21を有するとともに軸方向の後側(Zr方向)に電線先端部4aに加締めるカシメ部24を有して形成される3本の端子2…と、3本の端子2…を保持するハウジング3と、を備え、栓刃部21には栓刃面21aが、カシメ部24にはカシメ面24cが夫々形成されており(
図2(a)(b)、
図3(b)、
図4参照)、3本の端子2…のうち一対の端子2a,2aの各栓刃面21a同士が互いに対向する指向方向(X方向)になるように夫々同一姿勢で平行に配置され(
図2(a)(b)参照)、且つ背面視で栓刃面21aの指向方向(X方向)の直交方向(Y方向)において、カシメ部24が互いにオーバーラップする(重なる)レイアウト(
図3(a)参照)で配設された電気コネクタであって、3本の端子2…は、背面視でカシメ面24cが互いにオーバーラップしない(重ならない)ように栓刃面21aの指向方向(X方向)と異なる指向方向(Yu方向)に配設されたものである(
図1、
図2(b)(c)、
図3(a)(b)、
図4参照)。
【0065】
上記構成によれば、カシメ部24を電線4に加締めることにより電線4と端子2とを強固に接続することができつつ、カシメ部24を電線4に加締める際の作業効率、生産性の向上を図ることができる。
【0066】
具体的には、本実施形態においては、3本の端子2…は、これらのうち一対の入力端子2a,2aのカシメ部24が、背面視で栓刃面21aの指向方向(X方向)の直交方向(Y方向)において、互いにオーバーラップするレイアウトで配設されている(特に
図2(a)参照)。このため、仮に3本の端子2…の夫々ついて、各カシメ面24cが栓刃面21aの指向方向(X方向)と一致する指向方向となるレイアウトで配設された構成である場合には、X方向の一方を指向するカシメ面24cに対してX方向の両側に配置した加締め用工具50(アンビル51およびクリンパ52)を用いてX方向の両側から挟み込むようにしてカシメ部24を電線4に加締めようとしても、Y方向においてオーバーラップする他の端子2が邪魔になり、加締め用工具50を用いてカシメ部24を電線4に加締めることができないこととなる。
【0067】
これに対して、本実施形態においては、3本の端子2…の夫々において、各カシメ面24cを、上述したように、栓刃面21aの指向方向(X方向)と異なる指向方向(Yu方向)に配設することで、背面視で各カシメ面24cが互いにオーバーラップしないようにカシメ部24(カシメ面24c)を栓刃面21aの指向方向(X方向)に対して端子2の軸方向(Z方向)回りに振った(すなわち姿勢変更した)姿勢となるように形成している。
【0068】
これにより、例えば、一対の入力端子2a,2aのカシメ部24同士が互いにオーバーラップする本実施形態のような場合においても、加締め用工具50を用いてカシメ部24を電線4に加締める際に、加締め用工具50を、各端子2…が互いにオーバーラップしない方向において動作させることができるため、加締め用工具50の加締め動作が、オーバーラップする他方の端子2aによって阻害されることがなく、3本の端子2…について加締め用工具50を用いてカシメ部24を電線4にスムーズ且つ強固に加締めることができる。
【0069】
従って
図9(a)(b)(c)に示すように、栓刃部材101と、カシメ部102aを備えたファストン端子102(カシメ部材102)とを互いに連結可能な2部材から成る構造とした従来の端子100のように、予めファストン端子102を電線先端部4aに加締めておき、電線先端部4aに加締めたファストン端子102を、栓刃部材101に後付けで連結するような手間を要さず、加締め用工具50を用いてカシメ部24を加締め変形させて電線先端部4aに加締めるだけで電線4と端子2とを容易に且つ強固に接続することができる。また、カシメ部24と栓刃部21とは、そもそも上述した従来の端子100のように、別部材101,102で構成して後付けで連結する必要がないため、振動等の負荷が加わることでカシメ部24(ファストン端子102に相当する部分)が栓刃部21側(栓刃部材101に相当する部分)から外れることもなく、端子2を電線4に強固に接続することができる。
【0070】
さらに、加締め用工具50を用いてカシメ部24を加締め変形させて電線4に加締めるだけで電線4と端子2とを容易に接続することができるため、電線4と端子2とをハンダ付け、ロウ付け、溶接等の溶着によって接続するよりも相対的に接続作業効率、生産性を向上させることができる。
【0071】
この発明の態様として、3本の端子2…は、カシメ面24cの指向方向(Yu方向)が栓刃面21aの指向方向(X方向)の直交方向(Y方向)となるレイアウトで配設されたものである(
図1、
図2(a)(b)(c)、
図3(a)(b)、
図4の特に
図2(b)、
図3(b)、
図4参照)。
【0072】
上記構成によれば、3本の端子2…を栓刃面21aの指向方向(X方向)において各カシメ面24cが互いにオーバーラップしないレイアウトとすることができるため、栓刃面21aの指向方向(X方向)の直交方向(Y方向)において加締め用工具50を移動させることで(
図6(a)(b)(c)参照)、加締め用工具50が他の端子2に干渉することなく3本の端子2…の夫々について電線4に接続することができる。
【0073】
この発明の態様として、3本の端子2…は、各カシメ面24cの指向方向(Yu方向)が同一方向を向くレイアウトで配設されたものである(
図1、
図2(b)(c)、
図3(a)(b)参照)。
【0074】
上記構成によれば、加締め用工具50(アンビル51およびクリンパ52)を用いてカシメ部24を加締め変形させて電線4に加締めた際に、3本の端子2…ごとに、カシメ面24cの指向方向に応じてACインレット1の加締め用工具50に対する設置姿勢を変えずとも加締めることができる。さらに、加締め用工具50を用いた加締め作業に際して、複数組から成る端子2と電線4とを一組ずつ接続せずとも複数組をまとめて加締めることも可能となる。
【0075】
この発明の態様として、端子2の軸方向(Z方向)における、栓刃部21とカシメ部24との間部分に、ハウジング3に保持されるハウジング被保持部22を備え(
図2(b)、
図3(c)
図4参照)、ハウジング被保持部22とカシメ部24との間に、栓刃面21aとカシメ面24cとの各指向方向の違いを許容しながら介在する方向転換部23を備え(
図1、
図2(b)(c)、
図3(b)(c)、
図4参照)、栓刃部21は、栓刃面21aと、該栓刃面21aよりも幅小の栓刃板厚相当面21bとで角棒状に形成し(
図2(a)、
図3(c)、
図4参照)、方向転換部23およびカシメ部24を、栓刃板厚相当面21bよりも薄い板厚で形成したものである(
図4参照)。
【0076】
上記構成によれば、カシメ部24は、薄い板厚で形成することで曲げ変形し易くなるため、電線4の外周に巻き付くように加締め変形して該電線4にしっかりと加締めることができる。同様に方向転換部23についても、薄い板厚で形成することで曲げ加工し易くなるため、指向方向が互いに異なるように形成した栓刃面21aとカシメ面24cとの各指向方向の違いを許容することができる。
【0077】
この発明の態様として、端子2は、栓刃部21、ハウジング被保持部22、方向転換部23およびカシメ部24を軸方向(Z方向)においてこの順に一体に形成したものである(
図2(b)、
図3(c)、
図4参照)。
【0078】
ここで本発明は、上述したように、例えば、栓刃部21およびハウジング被保持部22と、これら21,22よりも板厚が薄い方向転換部23およびカシメ部24とを、夫々別部材で作成し、厚肉部分に相当するハウジング被保持部22と薄肉部分に相当する方向転換部23との対向部分をリベット等の結合手段で結合した構成を採用してもよい(図示省略)。但し、上述したように、端子2をその軸方向全体において一体に形成することにより、結合部分にリベット差込用の穿孔を形成したり、穿孔にリベット等を打ち込んだりする等して該結合部分が脆弱化して破断するおそれがなく、端子2の強度を確保することができる。
【0079】
この発明の態様として、ハウジング3に、3本の端子2…を挿通保持する保持壁部31を備え(
図1、
図2(b)、
図3(a)(c)参照)、保持壁部31は、軸方向(Z方向)の直交断面視で略矩形状に形成され(
図3(a)参照)、3本の端子2…は、カシメ部24の幅方向(X方向)が保持壁部31の長手方向(X方向)と平行となるレイアウトで保持壁部31の面上に配設されたものである(
図3(a)参照)。
【0080】
上記構成によれば、3本の端子2…を、カシメ部24の幅方向が保持壁部31の長手方向と平行となるレイアウトで該保持壁部31の面上に配設できるため、3本の端子2…を、カシメ部24の幅方向において各カシメ部24が互いにオーバーラップしないレイアウトで配設させつつ、より多くの端子2(当例では3本の端子…)を保持壁部31の面上に効率よく配設することができる。
【0081】
本実施形態の電気コネクタの製造方法は、ハウジング3を、ハウジング被保持部22がハウジング3内に埋め込まれた(インサートされた)状態で樹脂R(
図3(c)参照)をモールドするインサート成形によって端子2と一体に形成し、ハウジング被保持部22には、貫通穴22aが形成されており、インサート成形において、ハウジング3を形成する樹脂Rが貫通穴22aに鋳込まれるものである(
図3(c)参照)。
【0082】
上記構成によれば、インサート成形によりハウジング3と端子2とを一体化することができるため、例えば、ハウジングと端子とを夫々別々に作成してから端子をハウジングに後付けするよりもハウジング3に対して端子2を強固に取り付けることができる。さらに、ハウジング3に対して端子2を後付けする手間も省略することができる。
【0083】
なお当例では、ハウジング被保持部22を厚肉に形成し、この厚肉のハウジング被保持部22に貫通穴22aを形成したものである(
図3(c)、
図4参照)。
【0084】
この構成によれば、ハウジング3を厚肉部分であるハウジング被保持部22と一体化されるようにインサート成形することができ、栓刃部21やカシメ部24に負荷が加わることに伴って曲げ応力がハウジング被保持部22に作用しても、該曲げ応力に対する強度を確保することができる。
【0085】
さらに、ハウジング被保持部22を厚肉に形成した分、貫通穴22aの深さを確保することができ、その分、貫通穴22aに多量の樹脂Rを流し込むことができる。よって、貫通穴22aを極力小径化できるため、端子2の強度を確保することができる。さらにインサート成形時に、貫通穴22aに樹脂Rを充填させることで該インサート成形によってハウジング3と端子2との強固な一体性を確保できるという効果をより顕著に奏することができる。
【0086】
この発明の態様として、栓刃部21、ハウジング被保持部22、方向転換部23およびカシメ部24を軸方向において一体に形成した端子2における、方向転換部23およびカシメ部24を、栓刃板厚相当面21bよりも薄い板厚になるように切削加工し(
図5(a)(b)参照)、方向転換部23を、カシメ面24cと栓刃面21aとの各指向方向が互いに異なるように曲げ加工したものである(
図4参照)。
【0087】
上記構成によれば、カシメ部24は、切削加工により薄い板厚で形成することで曲げ変形し易くなるため、電線4の外周に巻き付くように加締め変形して該電線4にしっかりと加締めることができる。同様に方向転換部23についても、切削加工により薄い板厚で形成することで曲げ加工し易くなるため、該方向転換部23を、曲げ加工することで、カシメ面24cと、栓刃面21aとの各指向方向が互いに異なるように形成することがきる。
【0088】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
例えば、電気コネクタは、ACインレット1のように、3極インレットに限らず、2極又はそれ以外の多極インレットで構成することができる。
【0089】
電気コネクタは、電気機器の筐体に実装したものに限らず、ケーブルの一端に備えた差込プラグの一部として構成してもよい。
【0090】
また、
図7は他の実施形態の端子2’を
図4に対応させて示した斜視図であり、
図7に示すように、他の実施形態の端子2’は、上述した端子2(
図4参照)に対して背面視で左右対称形状で形成している。
【0091】
すなわち、本発明の電気コネクタに備えた複数の端子は、背面視でカシメ面が互いにオーバーラップしないように栓刃面の指向方向と異なる指向方向に配設されたものであれば、上述したように、各カシメ面24cの指向方向がYu方向となる構成(
図1、
図2(b)(c)、
図3(a)(c)、
図4参照)に限定せず、例えば、
図7に示すように、3本の端子2’…における各カシメ面24cの指向方向がYd方向となるように配設してもよい。
【0092】
また、上述した実施形態のACインレット1においては、3本の端子2…のうち一対の入力端子2a,2aの各カシメ部24が、背面視で栓刃面21aの指向方向の直交方向において、互いにオーバーラップするレイアウトで配設された構成を前提とたが、これに限らず、例えば、アース端子2bと入力端子2aとの各カシメ部24が、或いは3本の端子2a,2a,2bの全てが背面視で栓刃面21aの指向方向の直交方向において、互いにオーバーラップするレイアウトで配設された構成を前提としてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…ACインレット(電気コネクタ)
2(2a,2b)…複数の端子
2a,2a…一対の入力端子(一対の端子)
3…ハウジング
4…電線
21…栓刃部
21a…栓刃面
21b…板厚相当面(栓刃板厚相当面)
22…ハウジング被保持部
22a…貫通穴
23…方向転換部
24…カシメ部
24c…カシメ面
31…保持壁部(ハウジングの基部)
X…各栓刃面同士が互いに対向する指向方向、保持壁部の長手方向
Y…背面視で前記栓刃面の指向方向の直交方向
Yu…カシメ面の指向方向
Z…軸方向
Zf…前方(ハウジングの基部に対して一方側)
Zr…後方(ハウジングの基部に対して他方側)