(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】非侵襲性血糖測定器
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20220421BHJP
【FI】
A61B5/1455
(21)【出願番号】P 2018092920
(22)【出願日】2018-05-14
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】596163264
【氏名又は名称】株式会社カスタム
(74)【代理人】
【識別番号】100062225
【氏名又は名称】秋元 輝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 有功
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-024698(JP,A)
【文献】国際公開第2007/007459(WO,A1)
【文献】特開2007-105329(JP,A)
【文献】特開2017-047176(JP,A)
【文献】特表2002-529174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/145 - 5/1455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上蓋(2)とこの上蓋(2)を上方に配した台座(3)とが両者の端部同士で連結されていて、前記上蓋(2)と台座(3)との間に差し入れられた指先などの人体測定部位を挟み込み可能にしたクリップ形状体(4)が、血糖測定探知手段(5)とこの血糖測定探知手段(5)からの出力信号を処理するデータ処理表示手段(6)とを有していて、
前記血糖測定探知手段(5)は、赤外線センサー(7)と近位サーミスタ(8)と遠位サーミスタ(9)と湿度センサー(10)と発光ダイオード(11)と光波受信機(12)と導熱体(13)と圧力センサー(14)とを備えていて、
前記クリップ形状体(4)における上蓋(2)には、台座(3)の人体測定部位挟み込み面(16)側に向けて互いに波長が異なる光を出射する少なくとも四個の発光ダイオード(11)が組み込まれて、前記発光ダイオード(11)から出射する光の前記波長は、660nm、760nm、850nm、940nmとされ、
前記クリップ形状体(4)における台座(3)には、該台座(3)の人体測定部位挟み込み面(16)に表出するようにして、前記光波受信機(12)が位置し、
前記発光ダイオード(11)から光を出射し、上蓋(2)と台座(3)との間に挟み込んだときの人体測定部位を透過した前記光が前記光波受信機(12)に入射されるように、発光ダイオード(11)と光波受信機(12)とを対向配置していて、
前記光波受信機(12)は、上蓋(2)と台座(3)との間に挟み込んだときの人体測定部位を透過して入射する光に基づいて光度信号(A1~A4)を出力可能に設けられており、
前記導熱体(13)は、該導熱体(13)の一端を、前記台座(3)の人体測定部位挟み込み面(16)に表出する位置にしているとともに、該導熱体(13)の他端を、台座(3)の人体測定部位挟み込み面(16)から離間した位置にしていて、
上蓋(2)と台座(3)との間に挟み込んだときの人体測定部位に導熱体(13)の前記一端が接して、人体測定部位から導熱体(13)の前記一端に伝わる熱にてこの一端が温度変化可能に設けられているとともに、導熱体(13)の一端から他端に伝わる熱にてこの他端が温度変化可能に設けられ、
前記導熱体(13)の前記一端側に前記近位サーミスタ(8)が取り付けられ、前記他端側に前記遠位サーミスタ(9)が取り付けられていて、
前記近位サーミスタ(8)は、上蓋(2)と台座(3)との間に挟み込んだ人体測定部位が前記導熱体(13)に接するときの前記一端の温度に基づいて抵抗信号(R1)を出力可能に設けられ、前記遠位サーミスタ(9)は、前記一端から伝わった熱による前記他端の温度に基づいて抵抗信号(R2)を出力可能に設けられており、
前記クリップ形状体(4)は、上蓋(2)と台座(3)との連結部分に、上蓋(2)と台座(3)との両者を押してこの上蓋(2)の人体測定部位挟み込み面(15)と台座(3)の人体測定部位挟み込み面(16)との間を閉じる方向に上蓋(2)と台座(3)とを付勢するスプリング(17)を有するとともに、前記圧力センサー(14)が、前記スプリング(17)が上蓋(2)と台座(3)とを押す力を受けるように配されていて、
前記圧力センサー(14)は、人体測定部位を上蓋(2)と台座(3)との間に挟み込んだときの前記スプリング(17)が上蓋(2)と台座(3)とを押す力に基づいて圧力信号(P)を出力可能に設けられており、
前記赤外線センサー(7)と導熱体(13)と光波受信機(12)とが、上蓋(2)と台座(3)との間に前記人体測定部位を差し入れる方向に沿った方向に順にして配置されていて、
前記台座(3)には、該台座(3)の人体測定部位挟み込み面(16)の下方に形成されている内部空間(21)と台座(3)の周囲の外部空間とを連通させる複数の通気孔(22)が開口されており、
前記データ処理表示手段(6)は、マイクロプロセッサ(23)とこのマイクロプロセッサ(23)に接続する表示ユニット(24)と前記マイクロプロセッサ(23)に接続する記憶素子(25)とを有していて、
前記マイクロプロセッサ(23)は、
前記光波受信機(12)が検出した光度信号(A1~A4)を一次拡大フィルタ回路(29)と積分回路(30)と二次拡大フィルタ回路(31)とを介して受けるものとされ、
かつ、前記近位サーミスタ(8)と遠位サーミスタ(9)が検出した抵抗信号(R1、R2)を温度検出回路(26)と拡大フィルタ回路(27)とA/D変換回路(28)とを介して受けるものとされ、
かつ、前記赤外線センサー(7)が検出した人体測定部位の輻射温度信号(T1)と環境輻射温度信号(T2)と、湿度センサー(10)が検出した環境湿度信号(D2)と人体測定部位の周囲湿度信号(D1)と、圧力センサー(14)が検出した圧力信号(P)とを、拡大フィルタ回路(27)とA/D変換回路(28)とを介して受けるものとされていて、
前記二次拡大フィルタ回路(31)とA/D変換回路(28)とから受けた信号に基づく処理をするマイクロプロセッサ(23)の制御信号の出力先として、
このマイクロプロセッサ(23)の制御信号出力部分側に配した第一制御回線(33)に接続され、前記発光ダイオード(11)を制御する発射装置制御回路(32)と、
かつ、マイクロプロセッサ(23)の制御信号出力部分側に配した第二制御回線(34)に接続された電位差計スイッチ回路(35)を介する前記一次拡大フィルタ回路(29)と、
かつ、マイクロプロセッサ(23)の制御信号出力部分側に配した第三制御回線(36)に接続された前記二次拡大フィルタ回路(31)と
が設けられていることを特徴とする非侵襲性血糖測定器。
【請求項2】
上蓋(2)と台座(3)の間には上ゴム接触板(18)と下ゴム接触板(19)が嵌め込まれている請求項1に記載の非侵襲性血糖測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人体に対して非侵襲式の血糖値測定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は一種の内分泌の障害による疾患であり、今のところまだ糖尿病を根治する方法はなく、糖尿病の治療は頻繁に検査を行い、血糖レベルをコントロールするのが主流になっている。
【0003】
従来の侵襲的に血液を採集して血糖値を測定する方法には欠陥が明らかに存在しており、測定中患者を傷つけ痛みを伴うため、連続して測定するのは困難である。
【0004】
非侵襲性血糖測定技術は従来の測定方法に存在する欠陥を克服し、糖尿病患者が適宜、頻繁に血糖濃度を測定するニーズを有効に満たすことができ、血糖測定技術の発展すべき方向である。
【0005】
例えば、非侵襲性血糖測定に利用できるとする光学的手法としては、特許文献1~3中に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4754931号公報
【文献】特表2009-520548号公報
【文献】特開2015-142664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、知られている非侵襲性血糖測定法は主に光学検査の技術を多く利用しているが、光学測定での障害となる要素が多く、また、個体差が大きいため、ほとんどの測定方法は実験室での研究段階にある。
【0008】
一方、人体のエネルギー代謝で発生する熱の測定と上記光学的手法での測定を組み合わせて非侵襲性血糖測定を行なうようにすることが提案されている。人体でのエネルギー代謝の主なエネルギー物質は糖類であり、大多数の細胞組織はブドウ糖の好気的酸化過程によってエネルギーを発生させてそのエネルギーを得ている。
【0009】
そして、バランスのとれた状態で、静的な(筋肉運動によるものではない)熱量の産生と熱量の放散は数値的に等しい場合、血中酸素量と熱量の放散で血糖値を推測することが試みられてきた。
【0010】
しかしながら、上記試みでは、放熱量を測定する際に、対流と熱伝導及び輻射放熱だけしか考慮していないものであった。具体的には、物体の温度を一定に保つためには、物体に加えた熱(内部で発生した熱)から物体が放出した熱や仕事を差し引いたものがゼロでなければならない。人体で言えば、
【0011】
貯熱量=熱生産量-(伝導性放熱量+対流性放熱量+放射性放熱量+蒸発性放熱量+外部への仕事)=0
【0012】
という関係式が成り立っているとき、体温は一定である。しかし、上述したように対流(対流性放熱量)と熱伝導(伝導性放熱量)と輻射放熱(放射性放熱量)だけを考慮したものであった。そして、人体の蒸発熱は人体の総熱放散量に占める割合が大きいため、上記試みでは人体の蒸発熱を考慮していないことから、人体のエネルギー代謝で発生する熱の測定と上記光学的手法での測定を組み合わせた上記非侵襲性血糖測定でも、血糖値測定の精度に対して大きな制約になっている。
【0013】
本発明は上記事情に鑑み、従来の人体のエネルギー代謝により得られる熱の測定に基づく血糖の測定方法を改良することを課題とし、人体のエネルギー代謝で発生する熱の測定と光学的手法での測定を組み合わせて、血糖の測定精度を高めた非侵襲性血糖測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(請求項1の発明)
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、上蓋(2)とこの上蓋(2)を上方に配した台座(3)とが両者の端部同士で連結されていて、前記上蓋(2)と台座(3)との間に差し入れられた指先などの人体測定部位を挟み込み可能にしたクリップ形状体(4)が、血糖測定探知手段(5)とこの血糖測定探知手段(5)からの出力信号を処理するデータ処理表示手段(6)とを有していて、
前記血糖測定探知手段(5)は、赤外線センサー(7)と近位サーミスタ(8)と遠位サーミスタ(9)と湿度センサー(10)と発光ダイオード(11)と光波受信機(12)と導熱体(13)と圧力センサー(14)とを備えていて、
前記クリップ形状体(4)における上蓋(2)には、台座(3)の人体測定部位挟み込み面(16)側に向けて互いに波長が異なる光を出射する少なくとも四個の発光ダイオード(11)が組み込まれて、前記発光ダイオード(11)から出射する光の前記波長は、660nm、760nm、850nm、940nmとされ、
前記クリップ形状体(4)における台座(3)には、該台座(3)の人体測定部位挟み込み面(16)に表出するようにして、前記光波受信機(12)が位置し、
前記発光ダイオード(11)から光を出射し、上蓋(2)と台座(3)との間に挟み込んだときの人体測定部位を透過した前記光が前記光波受信機(12)に入射されるように、発光ダイオード(11)と光波受信機(12)とを対向配置していて、
前記光波受信機(12)は、上蓋(2)と台座(3)との間に挟み込んだときの人体測定部位を透過して入射する光に基づいて光度信号(A1~A4)を出力可能に設けられており、
前記導熱体(13)は、該導熱体(13)の一端を、前記台座(3)の人体測定部位挟み込み面(16)に表出する位置にしているとともに、該導熱体(13)の他端を、台座(3)の人体測定部位挟み込み面(16)から離間した位置にしていて、
上蓋(2)と台座(3)との間に挟み込んだときの人体測定部位に導熱体(13)の前記一端が接して、人体測定部位から導熱体(13)の前記一端に伝わる熱にてこの一端が温度変化可能に設けられているとともに、導熱体(13)の一端から他端に伝わる熱にてこの他端が温度変化可能に設けられ、
前記導熱体(13)の前記一端側に前記近位サーミスタ(8)が取り付けられ、前記他端側に前記遠位サーミスタ(9)が取り付けられていて、
前記近位サーミスタ(8)は、上蓋(2)と台座(3)との間に挟み込んだ人体測定部位が前記導熱体(13)に接するときの前記一端の温度に基づいて抵抗信号(R1)を出力可能に設けられ、前記遠位サーミスタ(9)は、前記一端から伝わった熱による前記他端の温度に基づいて抵抗信号(R2)を出力可能に設けられており、
前記クリップ形状体(4)は、上蓋(2)と台座(3)との連結部分に、上蓋(2)と台座(3)との両者を押してこの上蓋(2)の人体測定部位挟み込み面(15)と台座(3)の人体測定部位挟み込み面(16)との間を閉じる方向に上蓋(2)と台座(3)とを付勢するスプリング(17)を有するとともに、前記圧力センサー(14)が、前記スプリング(17)が上蓋(2)と台座(3)とを押す力を受けるように配されていて、
前記圧力センサー(14)は、人体測定部位を上蓋(2)と台座(3)との間に挟み込んだときの前記スプリング(17)が上蓋(2)と台座(3)とを押す力に基づいて圧力信号(P)を出力可能に設けられており、
前記赤外線センサー(7)と導熱体(13)と光波受信機(12)とが、上蓋(2)と台座(3)との間に前記人体測定部位を差し入れる方向に沿った方向に順にして配置されていて、
前記台座(3)には、該台座(3)の人体測定部位挟み込み面(16)の下方に形成されている内部空間(21)と台座(3)の周囲の外部空間とを連通させる複数の通気孔(22)が開口されており、
前記データ処理表示手段(6)は、マイクロプロセッサ(23)とこのマイクロプロセッサ(23)に接続する表示ユニット(24)と前記マイクロプロセッサ(23)に接続する記憶素子(25)とを有していて、
前記マイクロプロセッサ(23)は、
前記光波受信機(12)が検出した光度信号(A1~A4)を一次拡大フィルタ回路(29)と積分回路(30)と二次拡大フィルタ回路(31)とを介して受けるものとされ、
かつ、前記近位サーミスタ(8)と遠位サーミスタ(9)が検出した抵抗信号(R1、R2)を温度検出回路(26)と拡大フィルタ回路(27)とA/D変換回路(28)とを介して受けるものとされ、
かつ、前記赤外線センサー(7)が検出した人体測定部位の輻射温度信号(T1)と環境輻射温度信号(T2)と、湿度センサー(10)が検出した環境湿度信号(D2)と人体測定部位の周囲湿度信号(D1)と、圧力センサー(14)が検出した圧力信号(P)とを、拡大フィルタ回路(27)とA/D変換回路(28)とを介して受けるものとされていて、
前記二次拡大フィルタ回路(31)とA/D変換回路(28)とから受けた信号に基づく処理をするマイクロプロセッサ(23)の制御信号の出力先として、
このマイクロプロセッサ(23)の制御信号出力部分側に配した第一制御回線(33)に接続され、前記発光ダイオード(11)を制御する発射装置制御回路(32)と、
かつ、マイクロプロセッサ(23)の制御信号出力部分側に配した第二制御回線(34)に接続された電位差計スイッチ回路(35)を介する前記一次拡大フィルタ回路(29)と、
かつ、マイクロプロセッサ(23)の制御信号出力部分側に配した第三制御回線(36)に接続された前記二次拡大フィルタ回路(31)と
が設けられていることを特徴とする非侵襲性血糖測定器を提供して、上記課題を解消するものである。
【0015】
(請求項2の発明)
そして、本発明において、上蓋(2)と台座(3)の間には上ゴム接触板(18)と下ゴム接触板(19)が嵌め込まれていることが良好である。
【発明の効果】
【0016】
本発明を従来の技術と比べると、次の利点と際立った効果がある。
【0017】
(1)本発明は発光ダイオードを直接利用して測定部位の光度信号を介して血糖の測定を行うため、測定方法は便利で、取扱いが簡単である。
【0018】
(2)本発明は対流放熱、伝導放熱、輻射放熱を考慮している以外に、蒸発放熱量も考慮している。このようにすればより正確に代謝率を計算することができ、従来の人体代謝率に基づく非侵襲性血糖測定法の不足を克服することができる。
【0019】
(3)本発明は圧力センサーを利用しており、血液の流速と血流量の関係を修正することができるようになる。クリップ形状体による圧力作用で人体測定部位の血管が変形するが、血流量の測定に影響が極力出ないように修正することができ、最終的には血糖測定結果がより正確になる。
【0020】
(4)本発明は光学原理を直接利用する血糖測定で必要なマイクロプロセッサと、エネルギー代謝による熱量の測定原理に利用するマイクロプロセッサとが同じであるため、一つのマイクロプロセッサが同時に二つの独立した原理による測定を実現可能としており、ハードウエアでの素子の利用率が高く、構造もコンパクトにすることができる。
【0021】
(5)最終的な血糖測定値は二つの独立した原理で得た血糖値の総合的な結果とすればよく、この結果は確率的に実際の状況とかなり合致し、精度と参考値をより高めることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明における非侵襲性血糖測定器の一例における垂直断面を概略的に示す説明図である。
【
図2】一例を
図1のA-A線に沿った断面で概略的に示す説明図である。
【
図3】非侵襲性血糖測定器の回路原理ブロックを概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
つぎに本発明を
図1から
図3に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図中1は本発明に係る非侵襲性血糖測定器であり、該非侵襲性血糖測定器1は、上蓋2とこの上蓋2を上方に配した台座3とを両者の端部同士で連結して、上蓋2と台座3との間に差し入れられた指先などの人体測定部位を挟み込み可能にしたクリップ形状体4としている。そして、クリップ形状体4とされた前記非侵襲性血糖測定器1は、血糖測定探知手段5とこの血糖測定探知手段5からの出力信号を処理するデータ処理表示手段6とを有している。
【0025】
(血糖測定探知手段)
図1と
図2はそれぞれが各種センサー部材から構成されている血糖測定探知手段5各々を組み入れた構造を概略的に示した図である。
【0026】
上記血糖測定探知手段5は、赤外線センサー7、近位サーミスタ8、遠位サーミスタ9、湿度センサー10、発光ダイオード11、光波受信機12、人体の熱を伝える棒状や板状とされた導熱体13、圧力センサー14が含まれる。
【0027】
(発光ダイオード、光波受信機)
光波受信機12と発光ダイオード11は、上蓋2と台座3との間に差し入れて挟み込まれた人体測定部位の両側(上下)に位置すると共に、相対するように配置されている。
【0028】
具体的にクリップ形状体4における上蓋2にはこの上蓋2での人体測定部位挟み込み面15の一部分を開口し、台座3の人体測定部位挟み込み面16側に向けて互いに波長が異なる光を出射する四個の前記発光ダイオード11が組み込まれている。また、光波受信機12は、台座3の人体測定部位挟み込み面16の位置で表出するようにしてこの台座3に組み込まれている。
【0029】
図示されているように発光ダイオード11と光波受信機12とを対向配置していて、発光ダイオード11から光を出射し、上蓋2と台座3との間に挟み込んだときの人体測定部位を透過した光が光波受信機12に入射されるようにしている。前記光波受信機12にあっては、上蓋2と台座3との間に挟み込んだときの人体測定部位を透過して入射する光に基づいて光度信号を出力可能に設けられている。
【0030】
(導熱体、近位サーミスタ、遠位サーミスタ)
上記近位サーミスタ8は導熱体13での人体測定部位に近くて接触する一端に設置している。また上記遠位サーミスタ9は導熱体13での人体測定部位に対して離れている他端に設置している。
【0031】
具体的に、導熱体13は、該導熱体13の一端を、台座3の人体測定部位挟み込み面16に表出する位置にしているとともに、該導熱体13の他端を、台座3の人体測定部位挟み込み面16から離間した位置にしている。
【0032】
そして、上蓋2と台座3との間に挟み込んだときの人体測定部位に導熱体13の上記一端が接して、人体測定部位から導熱体13の前記一端に伝わる熱にてこの一端が温度変化可能に設けられているとともに、導熱体13の前記一端から上記他端に伝わる熱にてこの他端が温度変化可能に設けられている。
【0033】
さらに、導熱体13の一端側に上記近位サーミスタ8が取り付けられ、他端側に上記遠位サーミスタ9が取り付けられている。近位サーミスタ8は、上蓋2と台座3との間に挟み込んだ人体測定部位が導熱体13に接するときの前記一端の温度に基づいて抵抗信号(R1)を出力可能に設けられ、前記遠位サーミスタ9は、前記一端から伝わった熱による前記他端の温度に基づいて抵抗信号(R2)を出力可能に設けられている。
【0034】
(圧力センサー、スプリング)
上述したように、実施の形態の非侵襲性血糖測定器1は、上蓋2と台座3とを両者の端部同士で連結して指先などの人体測定部位を挟み込み可能にしたクリップ形状体4としているので、取扱いが便利であり構造がコンパクトなものとされている。そして、
図1に示されているように上蓋2と台座3との連結部分となる位置にスプリング17が配置されている。
【0035】
具体的には、上記クリップ形状体4において、上蓋2と台座3との連結部分にスプリング17が取り付けられていて、このスプリング17が、上蓋2と台座3との両者を押して、上蓋2の人体測定部位挟み込み面15と台座3の人体測定部位挟み込み面16との間を閉じる方向に上蓋2と台座3とを付勢するものである。そして、上記圧力センサー14が、スプリング17による上蓋2と台座3とを押す力を受けるように配されている。
【0036】
圧力センサー14自体は、人体測定部位を上蓋2と台座3との間に挟み込んだときのスプリング17が上蓋2と台座3とを押す力に基づいて圧力信号(P)を出力可能に設けられている。圧力信号は、測定結果を修正する一つのパラメータである(後述)。
【0037】
(上下ゴム接触板)
上述したように人体測定部位を差し入れて挟み込みする部分は、上蓋2と台座3との間であり、本非侵襲性血糖測定器1の使用をより快適にするため、上蓋2には上ゴム接触板18が取り付けられて、その上ゴム接触板18の下面の部分を上記人体測定部位挟み込み面15としているとともに、代打3には下ゴム接触板19が取り付けられて、その下ゴム接触板19の上面の部分を上記人体測定部位挟み込み面16としている。
【0038】
(赤外線センサーと導熱体と光波受信機の並び)
さらに血糖測定探知手段5の一つである上記赤外線センサー7は、台座3での人体測定部位の差し入れ方向での前縁に偏った側(上蓋2と台座3との連結部分とは反対側)に配置されていて、台座ケース20の天板で開かれた開口と上記下ゴム接触板19で開かれた開口とに対応するようにして台座ケース20の内部に配置され、例えば差し入れた人体測定部位が発する赤外線を受信できるように設けられている。
【0039】
そして台座3にあっては、上記赤外線センサー7と導熱体13と光波受信機12とが、人体測定部位を差し入れる方向に沿った方向に順にして配置されている。
図1参照
【0040】
(通気孔)
また、台座3では、台座ケース20の側板や底板に、台座3の人体測定部位挟み込み面16の下方となるようにして形成されている内部空間21と台座3の周囲の外部空間とを連通させる複数の通気孔22が開口され、血糖測定探知手段5自体の放熱がスムーズに行われるようにしている。
【0041】
(発光ダイオードの波長)
本実施の形態では発光ダイオード11は四つにして取り付けられており、その発光ダイオード11から出射する光の波長は、660nm、760nm、850nm、940nmとされている。なお、発光ダイオード11は四つに限定されるものではない。
【0042】
(上蓋と台座の成形素材)
上蓋2と台座3は絶縁材料(例:PVC材)を採用して製作することができる。
【0043】
(データ処理表示手段)
図3は本発明で述べるデータ処理表示手段6の回路原理を示す説明図である。データ処理表示手段6は、マイクロプロセッサ23とこのマイクロプロセッサ23に接続する表示ユニット24と前記マイクロプロセッサ23に接続する記憶素子25と以下に示す処理回路とを有してなるものである。そして、前記マイクロプロセッサ23は上述した各血糖測定探知手段5それぞれが出力して処理回路を経て処理された情報を受けるものとされている。
【0044】
まず、近位サーミスタ8と遠位サーミスタ9が検出した抵抗信号R1(近位サーミスタ側から出力)と抵抗信号R2(遠位サーミスタ側から出力)は、先ず温度検出回路26に入り、そして拡大フィルタ回路27とA/D変換回路28を通ってデジタルデータ形態でマイクロプロセッサ23に入力される。
【0045】
また、赤外線センサー7が検出した人体測定部位の輻射温度信号T1と環境輻射温度信号T2は、拡大フィルタ回路27とA/D変換回路28を通ってデジタルデータ形態でマイクロプロセッサ23に入力される。
【0046】
また、湿度センサー10が検出した人体測定部位の周囲湿度信号D1と環境湿度信号D2は、拡大フィルタ回路27とA/D変換回路28を通ってデジタルデータ形態でマイクロプロセッサ23に入力される。
【0047】
一方、光波受信機12が検出した光度信号A1~A4は順番に一次拡大フィルタ回路29、積分回路30、二次拡大フィルタ回路31を通ってアナログデータ形態でマイクロプロセッサ23に入力される。
【0048】
上記発光ダイオード11はその発光動作が発射装置制御回路32で制御される。そしてマイクロプロセッサ23の出力端子側(制御信号出力側)が、第一制御回線33を介して前記発射装置制御回路32の入力端子側と接続している。
【0049】
さらにマイクロプロセッサ23は、制御信号出力側において、第二制御回線34を介して電位差計スイッチ回路35で一次拡大フィルタ回路29と接続するとともに、第三制御回線36を介して二次拡大フィルタ回路31と接続する。
【0050】
人体のエネルギー代謝による熱の発生の原理において、血糖が人体代謝の主なエネルギー物質と考えられており、人体の血中酸素量とエネルギー代謝で発生した総熱量は血糖レベルで推定できる。
【0051】
熱平衡の前提で、人体のエネルギー代謝による熱産生レベルは人体の放熱レベルと基本的に等しく、前記代謝で生じた熱量は主に輻射、対流、伝導、蒸発の四つの経路で環境に放散される。
【0052】
この四つの経路による放熱を測定すればエネルギー代謝で生じた総熱量が得られる。つまり、人体のエネルギー代謝による総熱産生量と考えられ、赤外線センサー7が検出した人体測定部位の輻射温度信号T1と環境輻射温度信号T2、及び湿度センサー10が検出した人体測定部位の周囲湿度信号D1と環境湿度信号D2で総熱産生量を計算する。
【0053】
血中酸素量は血流量、ヘモグロビン濃度と血中酸素飽和度で推定できる。赤外線センサー7が検出した人体測定部位の輻射温度信号T1と環境輻射温度信号T2、近位サーミスタ8が検出した導熱体13の人体測定部位に近い(接する)一端の温度(温度検出回路26を経た温度信号)T1′、遠位サーミスタ9が検出した導熱体13の人体測定部位から離れた側の一端の温度(温度検出回路26を経た温度信号)T2′、及び光波受信機12が検出した人体測定部位の光度信号A1~A4で血中酸素量を推定する。
【0054】
光度信号A1~A4は、発光ダイオード11が発射した光波が人体測定部位を通って発生し、圧力センサー14が検出した圧力信号Pは、人体測定部位の血管体積変化に対応し、測定結果を修正するパラメータとしてマイクロプロセッサ23において修正算出式に代入する。
【0055】
光学による血糖測定原理は、特定波長の光波が人体組織を透過する際にエネルギーの一部が人体組織に吸収され、波長ごとの異なる吸収特性によって人体血糖濃度に反応する。透過する光の光度を測定すれば、該当する血糖値が得られる。この透過する異なる波長ごとの光の光度は光波受信機12で測定できる。
【0056】
本実施の形態の非侵襲性血糖測定器1の動作過程は次の通りである。
【0057】
非侵襲性血糖測定器1が、フリー状態(つまり、人体の測定部位が差し入れられていない状態)である場合、赤外線センサー7と湿度センサー10がそれぞれ測定するのが、環境輻射温度(環境輻射温度信号T2)と環境湿度(環境湿度信号D2)である。
【0058】
非侵襲性血糖測定器1を人体の測定部位(例えば指や耳など)に挟む場合、赤外線センサー7と湿度センサー10がそれぞれ測定するのが、人体測定部位の輻射温度(輻射温度信号T1)と周囲湿度(周囲湿度信号D1)である。
【0059】
これと同時に、導熱体13は人体測定部位(例えば指や耳など)と接触していて、直ちに熱伝達現象が発生する。温度に変化が生じたため、近位サーミスタ8と遠位サーミスタ9の抵抗値に変化が生じ、この変化後の抵抗信号R1とR2とは温度検出回路26に出力(送信)される。
【0060】
発光ダイオード11が発射した光波は人体測定部位(例えば指や耳など)を通った後、光度信号(透過スペクトル信号)A1~A4として光波受信機12で受信する。
【0061】
スプリング17で発生する圧力は、圧力信号Pとして圧力センサー14で検出する。
【0062】
そして、これらの測定素子で測定された量の値は三つの経路で、データ処理と表示システムに送信される。
【0063】
即ち、人体測定部位の輻射温度信号T1、環境輻射温度信号T2、人体測定部位の周囲湿度信号D1、環境湿度信号D2、圧力信号Pは送信回線を通して順番に拡大フィルタ回路27とA/D変換回路28を経由してマイクロプロセッサ23に入る。
【0064】
また、近位サーミスタ8と遠位サーミスタ9の抵抗信号R1とR2は送信回線を通して温度検出回路26に入り、抵抗信号R1とR2は温度信号T1′、T2′に変換し、そして、温度信号T1′、T2′は拡大フィルタ回路27とA/D変換回路28を経由してマイクロプロセッサ23に入る。
【0065】
また、光度信号A1~A4は送信回線を通して一次拡大フィルタ回路29に送られ、順番にこの一次拡大フィルタ回路29、積分回路30、二次拡大フィルタ回路31を通ってマイクロプロセッサ23に入る。
【0066】
発光ダイオード11の動作は発射装置制御回路32で制御し、この発射装置制御回路32は第一制御回線33を通してマイクロプロセッサ23と接続し、マイクロプロセッサ23からの制御信号を受ける。一次拡大フィルタ回路29は電位差計スイッチ回路35で制御し、該電位差計スイッチ回路35は第二制御回線34を通してマイクロプロセッサ23と接続し、マイクロプロセッサ23からの制御信号を受ける。二次拡大フィルタ回路31は第三制御回線36を通してマイクロプロセッサ23と接続し、マイクロプロセッサ23からの制御信号を受ける。このようにすれば、発射装置制御回路32、一次拡大フィルタ回路29、二次拡大フィルタ回路31は全てマイクロプロセッサ23が制御することができる。
【0067】
マイクロプロセッサ23の関与と制御下で、全ての信号はマイクロプロセッサ23に送信され、これらの信号は本発明の非侵襲性血糖測定器の原理に基づいてデータ処理を行い、これより非侵襲性血糖測定器1が測定した血糖値が得られる。
【0068】
血糖値及びキーとなる中間データは送信回線を通してそれぞれ表示ユニット24と記憶素子25に入力され、データの表示とメモリ機能を実現している。マイクロプロセッサ23はデータ処理の核心的な素子であり、次の三つの作用がある。
【0069】
(1)全てのデータを収集すると共に、演算処理を行う。(2)制御信号を発生させ、発射装置制御回路32、二次拡大フィルタ回路31、電位差計スイッチ回路35を制御する。(3)データを表示ユニット24と記憶素子25に送信し、表示とメモリをそれぞれ完成させる。
【符号の説明】
【0070】
1…非侵襲性血糖測定器
2…上蓋
3…台座
4…クリップ形状体
5…血糖測定探知手段
6…データ処理表示手段
7…赤外線センサー
8…近位サーミスタ
9…遠位サーミスタ
10…湿度センサー
11…発光ダイオード
12…光波受信機
13…導熱体
14…圧力センサー
15…人体測定部位挟み込み面(上蓋)
16…人体測定部位挟み込み面(台座)
17…スプリング
18…上ゴム接触板
19…下ゴム接触板
22…通気孔
23…マイクロプロセッサ
24…表示ユニット
25…記憶素子
26…温度検出回路
27…拡大フィルタ回路
28…A/D変換回路
29…一次拡大フィルタ回路
30…積分回路
31…二次拡大フィルタ回路
32…発射装置制御回路
33…第一制御回線
34…第二制御回線
35…電位差計スイッチ回路
36…第三制御回線