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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】シール装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 51/10 20060101AFI20220421BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
B65B51/10 210
H05B3/00 310D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019016357
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020121798
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2020-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000236964
【氏名又は名称】富士インパルス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神山 和宏
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-76019(JP,A)
【文献】特開2005-112374(JP,A)
【文献】特開2013-154913(JP,A)
【文献】特開平11-287459(JP,A)
【文献】特開2003-341626(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0168162(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 51/10
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被シール物のシール部を挟持する圧着部および受け部と、
前記圧着部および/または前記受け部に設けられる加熱部と、
前記加熱部と接触しないように、前記圧着部および/または前記受け部に設けられる温度検知部と、
前記加熱部の今回の目標加熱温度(B)を設定するためにユーザによってパラメータが入力されるパラメータ入力部と、
前記加熱部と前記温度検知部が、受け部または圧着部のうちいずれか一方に設置されている場合において、
過去の加熱処理のインターバルを示す加熱休止時間(a)と、前回の加熱処理の際の前回の目標加熱温度(Bn-1)を少なくとも記憶している記憶部と、
少なくとも、前記温度検知部で検知されるフレーム温度(x)、前記加熱休止時間(a)、前記前回の設定加熱温度(Bn-1)に基づいて、予測初期温度(Ts)を求める初期温度予測部と、
少なくとも、前記今回の目標加熱温度(B)、予め設定されているオーバーシュート温度(To)、前記予測初期温度(Ts)、予め設定されているシール面の温度上昇値を示す加熱テーブルに基づいて、加熱時間(Th)を求める加熱時間決定部と、
前記加熱部に所定電圧を前記加熱時間(Th)あたり印加する電圧制御部と、を備え
前記初期温度予測部は、前記前回の目標加熱温度(B n-1 )を前記加熱休止時間(a)で除算した値に、前記フレーム温度(x)を加算することで、予測初期温度(Ts)を求める、
シール装置。
【請求項2】
被シール物のシール部を挟持する圧着部および受け部と、
前記圧着部および/または前記受け部に設けられる加熱部と、
前記加熱部と接触しないように、前記圧着部および/または前記受け部に設けられる温度検知部と、
前記加熱部の今回の目標加熱温度(B)を設定するためにユーザによってパラメータが入力されるパラメータ入力部と、
前記加熱部と前記温度検知部が、受け部または圧着部のうちいずれか一方に設置されている場合において、
過去の加熱処理のインターバルを示す加熱休止時間(a)と、前回の加熱処理の際の前回の目標加熱温度(Bn-1)を少なくとも記憶している記憶部と、
少なくとも、前記温度検知部で検知されるフレーム温度(x)、前記加熱休止時間(a)、前記前回の設定加熱温度(Bn-1)に基づいて、予測初期温度(Ts)を求める初期温度予測部と、
少なくとも、前記今回の目標加熱温度(B)、予め設定されているオーバーシュート温度(To)、前記予測初期温度(Ts)、予め設定されているシール面の温度上昇値を示す加熱テーブルに基づいて、加熱時間(Th)を求める加熱時間決定部と、
前記加熱部に所定電圧を前記加熱時間(Th)あたり印加する電圧制御部と、を備え
前記初期温度予測部は、前記前回の目標加熱温度(B n-1 )を前記加熱休止時間(a)で除算した値に、前記フレーム温度(x)を加算し、予め設定されるオフセット(S)を減算することで、予測初期温度(Ts)を求める、
シール装置。
【請求項3】
前記加熱休止時間(a)は、前回の加熱休止時間のみでなく、前回よりも前の1または複数の加熱休止時間を用い、直前の加熱休止時間であるほど重みづけを高く設定する、請求項1または2に記載のシール装置。
【請求項4】
前記前回の目標加熱温度(Bn-1)に代替して、前記初期温度予測部は、前記前回の目標加熱温度(Bn-1)に予め設定された第一係数(h)を乗算し、予め設定された第二係数(k)を加算した値である、修正された目標加熱温度(TBn-1)を用いて予測初期温度(Ts)を求める、請求項1または2に記載のシール装置。
【請求項5】
前記加熱時間決定部は、求められた必要な加熱時間(Th)よりも所定値分大きく決定する、請求項に記載のシール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材をシールするシール装置、例えば、ヒートシール装置、インパルスシーラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシール装置は、ユーザによって設定された入力値(加熱時間または加熱温度を決定する入力パラメータ)に応じて、加熱部(「ヒータ」とも称する。)を発熱させ(加熱させ)て包装材などをシールしている。
しかし、加熱部が設置されているフレーム全体の温度上昇(蓄熱)の応答性は、加熱部周辺のフレーム領域よりも遅く、さらに、加熱部から離れるほど遅くなる。連続シール動作において、加熱部の加熱温度(または加熱時間)の調整が有効になるまでにある程度の時間がかかり、その間にシール動作を行うと、シール面の到達温度は入力された設定温度よりも非常に高く上昇してしまう。
【0003】
また、加熱部に温度センサー(例えば、熱電対など)を設置し、温度センサーの測定温度に応じて加熱を終了させる技術もある(特許文献1参照)。温度センサーを加熱部に接するように設置してある場合には、温度センサーを定期的に交換する必要がある。
【0004】
また、ヒータが発熱する前における対象物、ヒータ、及び放熱部のうち少なくとも一つの温度である加熱前温度を演算する技術がある(特許文献2参照)。特許文献2では、ヒータから離間してある温度検知部でヒータが設置された支持部の温度を検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-203983号公報
【文献】特許5837972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シール面の到達温度を安定させて、シール仕上がり品質を向上できるシール装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、シール面の到達温度を安定化できる加熱制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシール装置は、
被シール物のシール部を挟持する圧着部および受け部と、
前記圧着部および/または前記受け部に設けられる加熱部と、
前記加熱部と接触しないように、(前記加熱部が設けられた)前記圧着部および/または(前記加熱部が設けられた)前記受け部に設けられる温度検知部と、
前記加熱部の今回の目標加熱温度(Bn、nは1、2、3・・であり、第n回目の加熱処理を示す。)を設定するためにユーザによってパラメータが入力されるパラメータ入力部と、
前記加熱部と前記温度検知部が、受け部または圧着部のうちいずれか一方に設置されている場合において、
過去の(あるいは予め設定されている)加熱処理(工程)のインターバルを示す加熱休止時間(a)と、前回の加熱処理(工程)の際の前回の目標加熱温度(Bn-1)を少なくとも記憶している記憶部と、
少なくとも、前記温度検知部で検知されるフレーム温度(x)、前記加熱休止時間(a)、前記前回の目標加熱温度(Bn-1)に基づいて、予測初期温度(Ts)を求める初期温度予測部と、
少なくとも、前記今回の目標加熱温度(B)、予め設定されているオーバーシュート温度(To)、前記予測初期温度(Ts)、予め設定されているシール面の温度上昇値を示す加熱テーブルに基づいて、加熱時間(Th)を求める加熱時間決定部と、
前記加熱部に所定電圧を前記加熱時間(Th)あたり印加する電圧制御部と、を備える。
【0008】
上記発明において、
前記加熱部と前記温度検知部が、受け部および圧着部の両方に設置されている場合において、受け部に第一加熱部と第一温度検知部が設置され、圧着部に第二加熱部と第二温度検知部が設置され、
前記第一加熱部および前記第一温度検知部において、
過去の(あるいは予め設定されている)加熱処理(工程)のインターバルを示す加熱休止時間(a)と、前回の加熱処理(工程)の際の前回の目標加熱温度(Bn-1)を少なくとも記憶している第一記憶部と、
少なくとも、前記第一温度検知部で検知されるフレーム温度(x)、前記加熱休止時間(a)、前記前回の目標加熱温度(Bn-1)に基づいて、予測初期温度(Ts)を求める第一初期温度予測部と、
少なくとも、前記今回の目標加熱温度(B)、予め設定されているオーバーシュート温度(To)、前記予測初期温度(Ts)、予め設定されているシール面の温度上昇値を示す第一加熱テーブルに基づいて、加熱時間(Th)を求める第一加熱時間決定部と、
前記第一加熱部に所定電圧を前記加熱時間(Th)あたり印加する第一電圧制御部と、を備え、
前記第二加熱部および前記第二温度検知部において、
過去の(あるいは予め設定されている)加熱処理(工程)のインターバルを示す加熱休止時間(a)と、前回の加熱処理(工程)の際の前回の目標加熱温度(Bn-1)を少なくとも記憶している第二記憶部と、
少なくとも、前記第二温度検知部で検知されるフレーム温度(x)、前記加熱休止時間(a)、前記前回の目標加熱温度(Bn-1)に基づいて、予測初期温度(Ts)を求める第二初期温度予測部と、
少なくとも、前記今回の目標加熱温度(B)、予め設定されているオーバーシュート温度(To)、前記予測初期温度(Ts)、予め設定されているシール面の温度上昇値を示す第二加熱テーブルに基づいて、加熱時間(Th)を求める第二加熱時間決定部と、
前記第二加熱部に所定電圧を前記加熱時間(Th)あたり印加する第二電圧制御部と、を備えていてもよい。
また、第一加熱部と第二加熱部が同じ条件である場合に、第一加熱テーブルと第二加熱テーブルが同じ構成であってもよい。
また、第二温度検知部を備えず、第一温度検知部のみが設置されている場合に、第二加熱部は、第一加熱部と同様に第一電圧制御部によって制御されてもよい。
以下の説明において、第一加熱部と第一温度検知部を例に説明する(「第一」を省略している)が、第二加熱部と第二温度検知部についても同様である。
【0009】
「シール面」は、被シール物の直接接触する加熱部の領域または、被シール物と直接接触する加熱部を被覆するカバー部材の領域である。
温度検知部は、加熱部が設置された圧着部または受け部のフレーム面とは異なるフレーム面に配置されていてもよい。板状のフレームを間に介在させて温度検知部と加熱部とが対向するように配置されることが好ましい。フレームの厚みが例えば0.8mmから3mmである。
今回の目標加熱温度(B)は、ユーザが加熱処理開始前に入力したパラメータに紐づいており、例えば待機中に、ユーザがパラメータの入力値を変更しない限りは同じ値を維持している。例えば、Bは第1回目の加熱処理における目標加熱温度を示し、Bは第2回目の加熱処理における目標加熱温度を示す。
「オーバーシュート温度(To)」は、予め設定されているものであって、目標加熱温度の値に応じて例えば実測値や温度シミュレーションなどから決定される。
【0010】
前記加熱休止時間(a)は、例えば、前回加熱処理の加熱終了から今回加熱処理の加熱開始までの時間(「前回加熱処理と今回加熱処理とのインターバル」ともいう。)、前々回加熱処理と前回加熱処理のインターバル、これらよりも過去のインターバルであってもよい。このインターバルには、例えば、冷却(放熱)処理の時間、圧着部と受け部による挟持動作の時間、被シール物を交換するための時間なども含まれている。
加熱休止時間演算部は、加熱終了時点から次の加熱開始時点までの差から加熱休止時間(a)を求めてもよい。加熱開始時点は、例えばシール装置に接続されるスイッチ(例えば、ハンドスイッチ、フットスイッチ)の入力から求められる。また一定時間ごとに自動で連続シール処理をするモードの時には、その一定時間が加熱休止時間(a)に相当する。ここで「シール処理」には、加熱処理と冷却(放熱)処理が含まれており、「一定時間」には冷却(放熱)時間も含まれる。
【0011】
予測初期温度(Ts)は、加熱処理する前の「シール面」の予測値である。初めての加熱処理である初回加熱では、予測初期温度(Ts)は、温度検知部で検知されるフレーム温度(x)になる。
(数1)
Ts=x
【0012】
前記初期温度予測部は、前記前回の目標加熱温度(Bn-1)を前記加熱休止時間(a)で除算した値に、前記フレーム温度(x)を加算することで、予測初期温度(Ts)を求めてもよい。
(数2-1)
Ts=x+[Bn-1/a]
【0013】
前記初期温度予測部は、前記前回の目標加熱温度(Bn-1)を前記加熱休止時間(a)で除算した値に、前記フレーム温度(x)を加算し、予め設定されるオフセット(S)を減算することで、予測初期温度(Ts)を求めてもよい。オフセット(S)は、例えば、第1回目加熱時の到達温度に対して、第2回目加熱以降の到達温度をあまり下げたくない場合、またはシール時に被シール物(例えば、包材)を挟んだときにシール面の温度下降を考慮して設定される。
(数3-1)
Ts=x+[Bn-1/a]-S
【0014】
前記加熱休止時間(a)は、前回の加熱休止時間のみでなく、前回よりも前の1または複数の加熱休止時間も反映させてもよい。直前の加熱休止時間であるほど重みづけを高い値にしてもよい。
(数4)
=f×a+f×Wm-1+f×Wm-2+・・
mは、加熱回数、m≧2
[f×a]は、前回と今回との加熱休止時間の項
[f×Wm-1]は、2回前の加熱休止時間の項
[f×Wm-2]は、3回前の加熱休止時間の項
fは、重みづけであり、f>f>fの関係である。すべてのfを加算して1になってもよく、1以上、1以下でもよい。
4回前の加熱休止時間も同様に加算することができる。

(数2-2)
Ts=x+[Bn-1/W
(数3-2)
Ts=x+[Bn-1/W]-S
【0015】
前記初期温度予測部は、前記前回の目標加熱温度(Bn-1)に予め設定された第一係数(h)を乗算し、予め設定された第二係数(k)を加算した値である、修正された目標加熱温度(TBn-1)を用いて予測初期温度(Ts)を求めてもよい。
第一係数(h)、第二係数(k)は、予め設定され、例えば、連続シール処理を行う実験結果から求めることができる。加熱休止時間(a)またはWの値が大きいほど、[TBn-1/W]が小さくなるように第一係数(h)、第二係数(k)を設定することができる。
(数5)
TBn-1=(Bn-1)×h+k
(数2-3)
Ts=x+[TBn-1/a]
(数3-3)
Ts=x+[TBn-1/a]-S
(数2-4)
Ts=x+[TBn-1/W
(数3-4)
Ts=x+[TBn-1/W]-S
【0016】
前記加熱時間決定部は、少なくとも、今回の目標加熱温度(B)、オーバーシュート温度(To)、前記予測初期温度(Ts)に基づいて、必要な温度上昇値(Tu)を求め、前記必要な温度上昇値(Tu)分の温度を上昇させるために必要な加熱時間(Th)を前記加熱テーブルから求めてもよい。
(数6)
Tu=B-To-Ts

前記加熱テーブルは、例えば、時間当たりあるいは交流1サイクル当たりのシール面の温度上昇値を示すデータである。加熱テーブルは、例えば、シール面の温度変化(上昇)の実測値や温度シミュレーションなどにより作成できる。
前記オーバーシュート温度(To)は、例えば、加熱終了時のシール面の温度とシール面の到達温度(Tpeak)との差である。オーバーシュート温度(To)は、温度応答性の遅れが要因で生じるものである。
【0017】
前記初期温度予測部は、さらに設定冷却時間も考慮するために第三係数(u)を、[Bn-1/a]、[Bn-1/W]または[TBn-1/W]に乗算して予測初期温度(Ts)を求めてもよい。
これにより、冷却中と冷却終了後の圧着部および受け部が開いている場合に、シール面の温度の下がり方が異なる場合に、加熱時間の調整が可能になる。
シール装置は、さらに、前記加熱部の設定冷却温度および/または冷却時間を入力するための冷却パラメータ入力部を備えていてもよい。また、設定冷却温度および/または冷却時間を予め設定してあってもよく、目標加熱温度や加熱時間に対応して設定冷却温度および/または冷却時間を設定してあってもよい。
【0018】
前記加熱時間決定部は、前記フレーム温度(x)と前記予測初期温度(Ts)との差が、所定の閾値を超えた場合に(差が大きい場合に)、求められた必要な加熱時間(Th)よりも所定値分大きく決定してもよい。
フレーム温度(x)と予測初期温度(Ts)との差が大きい場合、つまり、シール面と加熱部周辺部分の温度差が大きいと、加熱時のシール面の温度上昇(加熱)の立ち上がりが遅くなる。そのため、このような場合には加熱時間をより長く設定することが好ましい。
【0019】
前記加熱時間決定部は、今回の目標加熱温度(B)と前記予測初期温度(Ts)との差が、所定の閾値より小さい場合に、求められた必要な加熱時間(Th)よりも所定値分大きく決定してもよい。
【0020】
前記初期温度予測部が、オフセット(S)の減算を無くして予測初期温度(Ts)を求めた場合に、前記加熱時間決定部は、求められた必要な加熱時間(Th)よりも所定値分大きく決定してもよい。
これにより、オフセット(S)に替わり、加熱時間を長くすることに対応している。第1回目加熱処理の到達温度(Tpeak)に対して、第2回目以降の到達温度(Tpeak)の低下を改善できる。また、加熱処理時に被シール物を挟んだときに、シール面の温度が下がることを補償できる。
【0021】
前記温度検知部は、例えば、サーミスタ、熱電対などの温度センサーである。
【0022】
被シール物は、例えば、ポリエチレン(PE)製フィルム、ポリプロピレン(PP)製フィルム、ナイロン(登録商標)製フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)製フィルム、塩化ビニル(PVC)フィルム、環状ポリオレフィン(COC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの単層体、それらから選択される積層体が例示される。それぞれのフィルムには、アルミ蒸着、シリカ蒸着などの各種蒸着処理が施されていてもよく、アルミ箔、紙が積層されていてもよい。また、被シール物として、例えば、滅菌バッグ、三方包装袋である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、シール面の到達温度を安定させて、シール仕上がり品質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】実施形態1のヒートシール装置を説明するための図
図1B】温度検知部とヒータの配置を説明するための図
図2】シール面の温度分布を説明するための図
図3A】加熱テーブルを説明するための図
図3B】温度上昇値のデータを加算したイメージ図
図4A】実施例1および比較例1のシール回数に対する到達温度の推移グラフ
図4B】実施例2および比較例2のシール回数に対する到達温度の推移グラフ
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係るシール装置の一例として、インパルス式ヒートシーラー(以下、単に「ヒートシーラー」という。)を用いて説明する。図1Aは、ヒートシーラー1の側断面図である。
【0026】
図1Aに示すように、本実施形態に係るヒートシーラー1は、装置本体2と、装置本体2に対して可動する可動体3と、互いに接離することで、包材(例えば、ポリエチレンの包材等)100を挟んでシールする一対の圧着部5、受け部4とを備えている。
【0027】
ヒートシーラー1は、可動体3を可動させる駆動部6と、装置本体2に固定され、包材100を載置するための載置台7と、一対の圧着部5、受け部4が包材100を押圧する圧力を変更させる圧力変更部8とを備えている。
【0028】
また、ヒートシーラー1は、シール処理を行う指示が入力される指示入力部9と、包材100をシール処理するための設定(例えば、目標加熱温度、設定冷却時間、包材100の種類等)が入力されるパラメータ入力部10とを備えている。
【0029】
ヒートシーラー1は、受け部4を固定している。また、可動体3は、長尺に形成されている。そして、可動体3の基端部は、装置本体2に回動可能に取り付けられていると共に、可動体3の先端部は、圧着部5を固定している。したがって、駆動部6により、可動体3が基端部3aを中心にして回動することで、一対の圧着部5、受け部4が接離する。
【0030】
図1Bに示すように、受け部4は、包材100を加熱して溶融すべく、通電されることにより発熱するヒータ45と、ヒータ45を支持する支持部41とを備えている。また、受け部4は、ヒータ45と支持部41とを電気的に絶縁すべく、ヒータ45と支持部41との間に配置される絶縁部43と、ヒータ45を外側から被覆する被覆部44とを備えている。
【0031】
ヒータ45は、帯状に形成されている。そして、ヒータ45は、インパルス通電される(瞬間的に大電流を流す)ことにより発熱する導電性発熱材で構成されている。本実施形態においては、ヒータ45は、ニクロムで形成されている。例えば、ヒータ45の厚み寸法(図1Bの上下方向の寸法)は、0.1~0.3mmである。ヒータ45は、鉄クロムまたはインバー合金などで構成されていてもよい。
【0032】
支持部41は、ヒータ45の熱が絶縁部43を経由して伝導され、該熱を外部に放出するように構成されている。本実施形態においては、支持部41は、金属(例えばアルミ)で構成されている。例えば、支持部41の厚み寸法(図1Bの上下方向の寸法、金属厚み)は、例えば、0.8~2.6mmである。
【0033】
なお、ヒートシーラー1は、ヒータ45の熱が伝導されて且つ該熱を放出する放熱部14を備えている。そして、支持部41は、放熱部14の少なくとも一部を構成している。本実施形態においては、放熱部14は、支持部41及び装置本体2で構成されている。
【0034】
絶縁部43は、ヒータ45と支持部41とを電気的に絶縁すると共に、ヒータ45の熱を支持部41に伝導するように、構成されている。本実施形態においては、絶縁部43は、ガラステープとしている。例えば、絶縁部43の厚み寸法(図1Bの上下方向の寸法)は、0.1~0.2mmである。
別実施形態として、絶縁部43は、例えば、サーコンシート、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、またはフッ素樹脂含浸ガラスクロスであってもよい。絶縁部43は、1種または複数種の上記材料層が積層されて受け部4の支持部41に設置されていてもよい。
【0035】
被覆部44は、ヒータ45を保護し且つ受け部4と被シール物100とを容易に剥離できるように、構成されている。本実施形態においては、被覆部44は、フッ素樹脂テープとしている。例えば、被覆部44の厚み寸法(図1Bの上下方向の寸法)は、0.1~0.2mmである。
別実施形態として、被覆部44は、例えば、ポリイミドフィルムまたはフッ素樹脂含浸ガラスクロスであってもよい。被覆部44は、1種または複数種の上記材料層が積層されてヒータ45を保護するように設置されていてもよい。
【0036】
圧着部5は、受け部4と対面するように配置される弾性部51と、弾性部51を支持する本体部52とを備えている。本実施形態においては、弾性部51は、シリコーンゴムであり、本体部52は、金属(例えば、アルミ)である。例えば、弾性部51の厚み寸法(図1Bの上下方向の寸法)は、3~6mmであり、本体部52の厚み寸法(図1Bの左右方向の寸法)は、25~35mmである。
別実施形態として、弾性部51は、例えば、ゴム状弾性体、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素系ゴムなどが挙げられ、シリコーンゴムが好ましい。
【0037】
温度検知部11は、温度を測定するサーミスタで構成される。温度検知部11は、支持部41に接して配置され、ヒータ45とは支持部41の厚み分で離間して配置される。
また、温度検知部11は、支持部41の内部に設けられる収容部41aに収容される。本実施形態において、支持部41がアルミダイカスト品で構成され、その内部に収容部41aを形成している。
別実施形態として温度検知部11は、例えば、熱電対などその他の温度センサーであってもよい。温度検知部11で測定されたフレーム温度(x)は、制御部12へ送られ、記憶部121に時刻と紐づけて記憶される。
【0038】
図1Bに示すように、制御部12は、各種データを記憶する記憶部121を備える。
記憶部121は、過去のあるいは予め設定されている加熱処理のインターバルを示す加熱休止時間(a)と、前回のあるいは過去の全ての加熱処理の際の前回の目標加熱温度(Bn-1)を記憶している。また、記憶部121は、加熱テーブルも記憶している。また、記憶部121は、パラメータ入力部10で入力された各種入力値(例えば、今回の目標加熱温度(B)を記憶している。
【0039】
初期温度予測部122は、温度検知部11で検知されるフレーム温度(x)、加熱休止時間(a)、前回の目標加熱温度(Bn-1)に基づいて、予測初期温度(Ts)を求める。
【0040】
加熱時間決定部123は、今回の目標加熱温度(B)、予め設定されているオーバーシュート温度(To)、予測初期温度(Ts)、予め設定されているシール面の温度上昇値を示す加熱テーブルに基づいて、加熱時間(Th)を求める。
【0041】
電圧制御部124は、ヒータ45に所定電圧(電圧源は不図示)を加熱時間(Th)あたり印加する。
また、制御部12は、駆動部6の動作を制御することで、可動体3が基端部3aを中心にして回動し一対の圧着部5、受け部4が接離する。
【0042】
(1回目のシール処理)
図2は、第1回と第2回のシール処理に応じたシール面の温度分布を示す。第1回の加熱処理では、シール面の温度は略室温(例えば20℃)である。ヒータ45に所定電圧を印加することで室温から温度上昇が起こる。温度上昇および温度下降は、例えば、いずれも略非線形である。
加熱終了時点のシール面の温度は、必要な温度上昇値(Tu)と予測初期温度(Ts)を加算した値(つまり今回の目標加熱温度(B)からオーバーシュート温度(To)を減算した値)である。加熱終了しても温度はさらに上昇し、到達温度(Tpeak)に達してから下降する。加熱終了時のシール面の温度とシール面の到達温度(Tpeak)との差がオーバーシュート温度(To)である。オーバーシュート温度は、熱伝送、放熱特性、装置個体差によって変わるため、実験や温度シミュレーションなどで予め求めてられていてもよい。
予測初期温度(Ts)は、加熱処理する前の「シール面」の予測値である。
第1回の加熱処理では、予測初期温度(Ts)は、温度検知部11で検知されたフレーム温度(x)になる。
(数1)
Ts=x
【0043】
加熱時間決定部123は、今回の目標加熱温度(B)、オーバーシュート温度(To)、予測初期温度(Ts)に基づいて、必要な温度上昇値(Tu)を求める。
(数6)
Tu=B-To-Ts=B-To-x
図3Aに示す加熱テーブルは、交流1サイクル当たりのシール面の温度上昇値を示すデータ配列である。図3Bは、例えば、加熱テーブルの温度上昇値のデータを加算したイメージ図である。
加熱時間決定部124は、必要な温度上昇値(Tu)分の温度を上昇させるために必要な加熱時間(Th)を加熱テーブルから求める。
求められた加熱時間(Th)に対応して、電圧制御部124は、ヒータ45に所定電圧(電圧源は不図示)を印加する。
【0044】
(2回目のシール処理)
図2に示す通り、シール面の温度は、到達温度から略非線形に下降していく。
第2回目のシール処理が開始された際に、加熱休止時間a1が算出される。
加熱休止時間演算部125は、記憶部121に記憶された前回の加熱終了時刻と次の加熱開始時点の時刻との差から加熱休止時間(a)を求める。加熱開始時点は、ヒートシーラー1に接続されたシール開始スイッチ(例えば、ハンドスイッチ、フットスイッチ(9))の入力された時刻またはその時刻から所定時間遅延した時刻から求められてもよい。また加熱休止時間を、前回の加熱終了時からタイマカウントを開始し、今回の加熱開始直前までの経過時間から求めてもよい。
【0045】
初期温度予測部122は、前回(第1回目)の目標加熱温度(Bn-1)を加熱休止時間(a)で除算した値に、温度検知部11で検知されたフレーム温度(x)を加算することで、予測初期温度(Ts)を求める。
(数2-1)
Ts=x+[Bn-1/a]
【0046】
また、別実施形態として、初期温度予測部122は、オフセット(S)を考慮してもよい。
(数3-1)
Ts=x+[Bn-1/a]-S
【0047】
また、別実施形態として、初期温度予測部122は、前回の目標加熱温度(Bn-1)に予め設定された第一係数(h)を乗算し、予め設定された第二係数(k)を加算した値である、修正された目標加熱温度(TBn-1)を用いて予測初期温度(Ts)を求めてもよい。
第一係数(h)、第二係数(k)は、予め設定され、例えば、連続加熱処理を行う実験結果から求めることができる。加熱休止時間(a)またはWの値が大きいほど、[TBn-1/W]が小さくなるように第一係数(h)、第二係数(k)を設定することができる。
(数5)
TBn-1=(Bn-1)×h+k
(数2-3)
Ts=x+[TBn-1/a]
(数3-3)
Ts=x+[TBn-1/a]-S
【0048】
加熱時間決定部123は、今回の目標加熱温度(B)、オーバーシュート温度(To)、上記いずれかの予測初期温度(Ts)に基づいて、必要な温度上昇値(Tu)を求める。
(数6)
Tu=B-To-Ts
【0049】
加熱時間決定部123は、必要な温度上昇値(Tu)分の温度を上昇させるために必要な加熱時間(Th)を加熱テーブルから求める。
求められた加熱時間(Th)に対応して、電圧制御部124は、ヒータ45に所定電圧(電圧源は不図示)を印加する。
【0050】
(3回目のシール処理)
3回目のシール処理において、加熱休止時間(a)の項を、過去の加熱休止時間の重みづけで補償する。
(数4)
=f×a+f×Wm-1
mは、加熱回数、m≧2
[f×a]は、前回と今回との加熱休止時間の項
[f×Wm-1]は、2回前の加熱休止時間の項
>f、f+f=1
(数2-2)
Ts=x+[Bn-1/W
(数3-2)
Ts=x+[Bn-1/W]-S
(数2-4)
Ts=x+[TBn-1/W
(数3-4)
Ts=x+[TBn-1/W]-S
【0051】
加熱時間決定部123は、今回の目標加熱温度(B)、オーバーシュート温度(To)、上記いずれかの予測初期温度(Ts)に基づいて、必要な温度上昇値(Tu)を求める。
(数6)
Tu=B-To-Ts
【0052】
加熱時間決定部124は、必要な温度上昇値(Tu)分の温度を上昇させるために必要な加熱時間(Th)を加熱テーブルから求める。
求められた加熱時間(Th)に対応して、電圧制御部124は、ヒータ45に所定電圧(電圧源は不図示)を印加する。
【0053】
(4回目のシール処理)
4回目のシール処理において、加熱休止時間(a)の項を、過去の加熱休止時間の重みづけで補償する。
(数4)
=f×a+f×Wm-1+f×Wm-2
mは、加熱回数、m≧2
[f×a]は、前回と今回との加熱休止時間の項
[f×Wm-1]は、2回前の加熱休止時間の項
[f×Wm-2]は、3回前の加熱休止時間の項
>f>f、f+f+f=1
(数2-2)
Ts=x+[Bn-1/W
(数3-2)
Ts=x+[Bn-1/W]-S
(数2-4)
Ts=x+[TBn-1/W
(数3-4)
Ts=x+[TBn-1/W]-S
【0054】
加熱時間決定部123は、今回の目標加熱温度(B)、オーバーシュート温度(To)、上記いずれかの予測初期温度(Ts)に基づいて、必要な温度上昇値(Tu)を求める。
(数6)
Tu=B-To-Ts
【0055】
加熱時間決定部124は、必要な温度上昇値(Tu)分の温度を上昇させるために必要な加熱時間(Th)を加熱テーブルから求める。
求められた加熱時間(Th)に対応して、電圧制御部124は、ヒータ45に所定電圧(電圧源は不図示)を印加する。
【0056】
5回目以降の加熱処理についても、上記と同様に加熱時間(Th)を求めることができる。
【0057】
制御部12およびその構成要素は、専用回路、ファームウエア、メモリとCPU(MPU)との協働作用で構成されていてもよい。制御部12およびその構成要素が実行する手順はソフトウエアプログラムとしてメモリに記憶されていてもよく、別情報処理装置から送られたプログラムでもよい。
【0058】
(実施例)
実施例に用いたシール装置は、受け部4側にヒータと温度検知部を設置し、さらに圧着部5側に、フレームに弾性部、ガラステープ、ヒータ、ガラステープを、この順序に設置した。圧着部5には温度検知部を設置していない。すなわち、受け部と圧着部の両方のフレームにヒータが設置された上下加熱タイプである。圧着部側のヒータに対する加熱制御は、受け部側の温度検知部に基づいて上記で求められた加熱時間(Th)分加熱する制御である。つまり、上下ヒータ共に同じ加熱時間で制御される。
図4A、4Bに、実施例1、2と比較例1、2におけるシール回数と到達温度およびシール周期の関係を示す。グラフの左縦軸に到達温度、右縦軸に周期を示し、横軸はシール回数である。到達温度は受け部側のシール面の到達温度を示す。
実施例1、2は、本実施形態1における(数3-4)(数6)を用いて予測初期温度(Ts)および必要な温度上昇値(Tu)を求め、必要な加熱時間(Th)を加熱テーブルから求め、制御を行った。
比較例1、2は、温度検知部のフレームの測定温度に応じて加熱終了時を決定される制御を行った。
周期は、加熱時間、冷却時間、待機時間のトータルである。冷却時間と待機時間が加熱休止時間に相当する。
実施例1、比較例1は、目標加熱温度の時間と冷却する時間がともに0.8秒であり、アルミ包材を2枚重ねてシール処理をした。
実施例2、比較例2は、目標加熱温度の時間と冷却する時間がともに1.2秒であり、ナイロン製包材を2枚重ねてシール処理をした。
結果として、図4A、4Bに示す通り、実施例1、2は、いずれも到達温度のばらつきを低下することができ、シールの仕上がり品質が向上した。
また、周期が短いほどその効果が顕著であることが分かった。これは周期が長くなるほど、フレームのシール面の温度が低下するため、比較例の制御方法でも仕上がり品質を維持できていると考えらえる。
上記実施例および比較例では、各包材を2枚重ねてシール処理したが、1枚でのシール処理でも同様に到達温度のばらつきを低下することができ、シールの仕上がり品質が向上した。
以上では上下加熱方式のシール装置であったが、受け部のみあるいは圧着部のみに配置した下加熱または上加熱方式のシール装置でも、同様に到達温度のばらつきを低下することができ、シールの仕上がり品質が向上した。
【0059】
(別実施形態)
(1)初期温度予測部は、さらに設定冷却時間も考慮するために第三係数(u)を、[Bn-1/a]、[Bn-1/W]または[TBn-1/W]に乗算して予測初期温度(Ts)を求めてもよい。
(2)加熱時間決定部は、フレーム温度(x)と予測初期温度(Ts)との差が、所定の閾値を超えた場合に(差が大きい場合に)、求められた必要な加熱時間(Th)よりも所定値分大きく決定してもよい。
(3)加熱時間決定部は、今回の目標加熱温度(B)と予測初期温度(Ts)との差が、所定の閾値より小さい場合に、求められた必要な加熱時間(Th)よりも所定値分大きく決定してもよい。
(4)初期温度予測部が、オフセット(S)の減算を無くして予測初期温度(Ts)を求めた場合に、加熱時間決定部は、求められた必要な加熱時間(Th)よりも所定値分大きく決定してもよい。
(5)上記実施形態では、受け部4にヒータ45(加熱部)と温度検知部11が設置されてたが、圧着部5の方にヒータおよび温度検知部が設けられたヒータ装置でも本発明は適用できる。
また、圧着部および受け部の両方にヒータ(加熱部)を設け、受け部に温度検知部が設けられたヒータ装置でも本発明は適用できる。
また、圧着部にヒータ(加熱部)、受け部に温度検知部が設けられたヒータ装置でも本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 ヒートシーラー
2 装置本体
3 可動体
4 受け部
41 支持部
45 ヒータ
5 圧着部
51 弾性部
10 パラメータ入力部
11 温度検知部
12 制御部
121 記憶部
122 初期温度予測部
123 加熱時間決定部
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B