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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】電気粘性流体
(51)【国際特許分類】
   C10M 125/04 20060101AFI20220421BHJP
   C10M 125/02 20060101ALI20220421BHJP
   C10M 125/00 20060101ALI20220421BHJP
   C10M 143/00 20060101ALI20220421BHJP
   C10M 149/00 20060101ALI20220421BHJP
   C10M 151/00 20060101ALI20220421BHJP
   C10M 169/04 20060101ALI20220421BHJP
   C10M 125/10 20060101ALN20220421BHJP
   C10M 107/50 20060101ALN20220421BHJP
   C10M 101/02 20060101ALN20220421BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20220421BHJP
   C10N 10/06 20060101ALN20220421BHJP
   C10N 10/08 20060101ALN20220421BHJP
   C10N 10/16 20060101ALN20220421BHJP
   C10N 10/10 20060101ALN20220421BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20220421BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20220421BHJP
   C10N 40/06 20060101ALN20220421BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20220421BHJP
   C10N 40/14 20060101ALN20220421BHJP
   C10N 70/00 20060101ALN20220421BHJP
【FI】
C10M125/04
C10M125/02
C10M125/00
C10M143/00
C10M149/00
C10M151/00
C10M169/04
C10M125/10
C10M107/50
C10M101/02
C10N10:04
C10N10:06
C10N10:08
C10N10:16
C10N10:10
C10N30:00 Z
C10N30:08
C10N40:06
C10N40:04
C10N40:14
C10N70:00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020571617
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 CN2019094359
(87)【国際公開番号】W WO2020015522
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2020-12-22
(31)【優先権主張番号】201810796573.8
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810796959.9
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503168289
【氏名又は名称】中山大学
【氏名又は名称原語表記】SUN YAT-SEN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】135 Xingang Xi Road, Haizhu District, Guangzhou, Guangdong 510275, China
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】チウ チャオホイ
(72)【発明者】
【氏名】シオン シアオミン
【審査官】越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0115462(US,A1)
【文献】特開2000-343414(JP,A)
【文献】特開平04-045196(JP,A)
【文献】特開平03-139598(JP,A)
【文献】特開平07-224292(JP,A)
【文献】特開昭64-006093(JP,A)
【文献】国際公開第98/008235(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105733766(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C10N 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体粒子、導体粒子及び絶縁油を含み、前記誘電体粒子が絶縁油に均一に分散している電気粘性流体であって、
前記誘電体粒子は、誘電定数が10よりも大きく、抵抗率が10オーム/メートルよりも大きく、
前記導体粒子は、20℃より小さい温度で、抵抗率が10 -3 オーム/メートルより小さい固体であり、金属、炭素、導電性有機物から選ばれる1種又は複数種であり、
前記誘電体粒子が絶縁油に均一に分散しており、該誘電体粒子の半径は50nm~5μmであり、
複数の前記導体粒子が前記誘電体粒子の内部及び表面に分散して嵌め込まれており、前記導体粒子の半径が0.2nm~100nmである、ことを特徴とする電気粘性流体。
【請求項2】
前記誘電体粒子はTiO2、CaTiO3、BaTiO3、SrTiO3、LaTiO3から選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項に記載の電気粘性流体。
【請求項3】
前記金属は、Ag、Al、Au、Cu、Fe、Hf、In、Nd、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、Sm、Sn、Ti、V、Y、Zrのうちの1種又は複数種であり、
前記炭素は、無定形炭素、グラファイト、グラフェン、還元酸化グラフェンのうちの1種又は複数種であり、
前記導電性有機物は、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリジアセチレンのうちの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項に記載の電気粘性流体。
【請求項4】
前記絶縁油はシリコンオイル、鉱油、エンジンオイル、炭化水素油のうちの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載の電気粘性流体。
【請求項5】
前記誘電体粒子形状は、球形、直方体、四面体、不規則な多面体は任意の形状である、ことを特徴とする請求項1に記載の電気粘性流体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートマテリアルの技術分野に属し、具体的には、電気粘性流体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気粘性流体(Electrorheological Fluids、略語ERF)は、重要なスマートマテリアルの1つであり、通常、高誘電定数、低導電率の誘電体粒子を低誘電定数の絶縁油に分散させてなる懸濁系である。外部電界による作用がない場合、電気粘性流体は液体状態を呈し、外部電界が電気粘性流体に作用する場合、電気粘性流体のせん断応力が電界の増加に伴い大きくなる。電界が十分に大きい場合、電気粘性流体は固体に類似した物質になる。さらに、このようなせん断応力の変換は可逆的で、連続的に調整可能であり、応答時間がミリ秒スケールであり、したがって、電気粘性流体は、ダンピングシステム、ショックアブソーバー、無段変速器、バルブ、電気機械制御結合などに用いられ得る。
【0003】
現在、電気粘性流体は、従来の電気粘性流体である誘電体型電気粘性流体と、巨大電気粘性流体である極性分子型電気粘性流体との2種類に分けられる。前者は、理論的にも実験的にも、得られたせん断応力が低すぎ(<10kPa)、実用化に適していない。後者は、せん断応力が非常に高く(>100kPa)、電界で高せん断応力を発生させるキーとが極性分子の作用であるが、極性分子が機械摩擦や高温などの作用により脱着、分解、揮発などをするため、極性分子型巨大電気粘性流体は、使用寿命も温度安定性も悪く、また実用化が実現できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の欠陥を解決するために、本発明は、せん断応力が高く、漏れ電流が小さく、使用寿命が長く、温度安定性に優れるという特性を有する、導体粒子含有電気粘性流体を提供する。また、本発明は、該電気粘性流体の調製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成させるために、本発明は以下の技術案を採用する。
【0006】
誘電体粒子、導体粒子及び絶縁油を含み、前記誘電体粒子が絶縁油に均一に分散している電気粘性流体であって、
前記導体粒子が絶縁油に均一に分散しているか、前記誘電体粒子の内部及び表面に嵌め込まれている。
【0007】
さらに、前記誘電体粒子は、誘電定数が10よりも大きく、抵抗率が10オーム/メートルよりも大きい。
【0008】
さらに、前記誘電体粒子はTiO、CaTiO、BaTiO、SrTiO、LaTiOから選ばれる1種又は複数種である。
【0009】
さらに、前記導体粒子は、20℃より小さい温度で、抵抗率が10-3オーム/メートルより小さい固体であり、金属、炭素、導電性有機物から選ばれる1種又は複数種である。
【0010】
さらに、前記金属は、Ag、Al、Au、Cu、Fe、Hf、In、Nd、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、Sm、Sn、Ti、V、Y、Zrのうちの1種又は複数種であり、
前記炭素は、無定形炭素、グラファイト、グラフェン、還元酸化グラフェンのうちの1種又は複数種であり、
前記導電性有機物は、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリジアセチレンのうちの1種又は複数種である。
【0011】
さらに、前記絶縁油はシリコンオイル、鉱油、エンジンオイル、炭化水素油のうちの1種又は複数種である。
【0012】
さらに、前記誘電体粒子形状又は導体粒子は、球形、直方体、四面体、不規則な多面体は任意の形状である。
【0013】
一実施形態として、前記誘電体粒子と前記導体粒子は絶縁油に均一に分散しており、前記誘電体粒子の直径が0.1μm~10μmであり、前記誘電体粒子の直径が0.2μm~100nmである。
【0014】
本発明は、
1~10部の導体粒子と50~200部の絶縁油を混合し、10~100分間粉砕又は超音波分散させ、導体粒子/絶縁油懸濁液を得るステップS1と、
50~500部の誘電体粒子を前記導体粒子/絶縁油懸濁液に加え、粉砕して微量の水分を含有する電気粘性流体を得るステップS2と、
ステップS2で得られた前記微量の水分を含有する電気粘性流体を、120~200℃で1時間熱処理して水分を除去し、電気粘性流体を得るステップS3と、を含む上記電気粘性流体の調製方法をさらに調製する。
【0015】
別の実施形態として、前記導体粒子は、前記誘電体粒子の内部及び表面に嵌め込まれており、誘電体粒子の半径が50nm~5μmであり、前記誘電体粒子の半径が0.2nm~100nmである。
【0016】
本発明は、
蒸留水20~30gと無水エタノール40~400gを炭素源有機物1~10gに溶解して、A液を調製し、チタン酸ブチル10~100gを無水エタノール80~800gに溶解して、B液を調製するステップS1と、
持続的に激しく撹拌されたB液にA液を緩やかに滴下し、滴下終了後、混合液を遠心分離して沈殿物を得るステップS2と、
沈殿物を洗浄した後、ベークして、乾燥させた粉末を得るステップS3と、
乾燥させた粉末を管状炉に投入して、真空又は窒素雰囲気下、500~600℃で処理するステップS4と、
得た粉末と絶縁油を混合して、電気粘性流体を調製するステップS5と、
電気粘性流体を150~170℃で熱処理し、水分を除去するステップS6と、を含む上記電気粘性流体の調製方法をさらに提供する。
【0017】
さらに、前記炭素源有機物はグルコース又はスクロースである。
【発明の効果】
【0018】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
1)本発明では、誘電体粒子と絶縁油にナノスケールの導体粒子を加えることにより、電気粘性流体のせん断応力を明らかに上昇させる。導体粒子が絶縁油に均一に分布しているか、又は誘電体粒子の内部及び表面に嵌め込まれていることによって、電気粘性流体は、せん断応力が高く、使用寿命が長く、温度安定性に優れ、漏れ電流が小さいという利点を有する。
2)電気粘性流体の成分はすべて機械摩擦に低感度であるので、優れた耐摩耗性を有し、使用寿命が長い。本発明の電気粘性流体は、高温にも低温にも耐えられるので、温度の適用範囲が広い。
3)本発明の前記電気粘性流体の調製方法が簡単であり、各原料について成熟した生産プロセスがあり、量産に適している。
4)本発明の前記電気粘性流体は、ダンパー、ショックアブソーバー、マイクロ流体制御、メカトロニクスなどの分野に幅広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】誘電体粒子が絶縁油に均一に分散しており、導体粒子が絶縁油に均一に分散している電気粘性流体の組成の模式図である。
図2】本発明の実施例1における電気粘性流体のせん断応力と電界強度との関係図である。
図3】本発明の実施例2における電気粘性流体のせん断応力と電界強度との関係図である。
図4】本発明の実施例3における電気粘性流体のせん断応力と電界強度との関係図である。
図5】導体粒子が嵌め込まれている誘電体粒子の構造模式図である。
図6】実施例6における黒色粉末の透過型電子顕微鏡写真である。
図7】実施例6における黒色粉末のラマンスペクトルである。
図8】実施例6における黒色粉末の減量曲線(雰囲気:空気)である。
図9】実施例6における電気粘性流体の、せん断応力及び電界強度の関係図である。
図10】実施例6における電気粘性流体の、各温度でのせん断応力と電界強度との関係図である。
図11】実施例6における電気粘性流体の摩損前後のせん断応力と電界強度との関係図である。
図12】実施例7における電気粘性流体のせん断応力と電界強度との関係図である。
図13】実施例8における電気粘性流体のせん断応力と電界強度との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の好適実施例を説明するが、なお、ここで説明する好適実施例は本発明を説明して解釈するために過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0021】
以下の前記実施例で使用される方法及び装置については、特に断らない限り、すべて一般的な方法及び装置である。
【0022】
以下の前記実施例で使用される原料、試薬などは、特に断らない限り、いずれも市販品として入手できる。
【0023】
以下の前記実施例の電気粘性流体は、誘電体粒子、導体粒子及び絶縁油を含み、誘電体粒子が絶縁油に均一に分散しており、導体粒子が絶縁油に均一に分散しているか(図1)、又は誘電体粒子の内部及び表面に嵌め込まれている(図5)。
【0024】
前記誘電体粒子は、誘電定数が10よりも大きく、抵抗率が10オーム/メートルよりも大きい。
【0025】
前記誘電体粒子は、TiO、CaTiO、BaTiO、SrTiO、LaTiOから選ばれる1種又は複数種である。
【0026】
前記導体粒子は、20℃より小さい温度で、抵抗率が10-3オーム/メートルより小さい固体であり、金属、炭素、導電性有機物から選ばれる1種又は複数種である。
【0027】
前記金属は、Ag、Al、Au、Cu、Fe、Hf、In、Nd、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、Sm、Sn、Ti、V、Y、Zrのうちの1種又は複数種であり、
前記炭素は、無定形炭素、グラファイト、グラフェン、還元酸化グラフェンのうちの1種又は複数種であり、
前記導電性有機物は、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリジアセチレンのうちの1種又は複数種であり、前記絶縁油は、シリコンオイル、鉱油、エンジンオイル、炭化水素油のうちの1種又は複数種である。
【0028】
前記誘電体粒子形状は、球形、直方体、四面体、不規則な多面体は任意の形状である。
【0029】
以下の実施例1~5は、前記誘電体粒子と導体粒子が絶縁油に均一に分散しているものであり、誘電体粒子の直径が0.1μm~10μmであり、導体粒子の直径が0.2nm~50nmである。
【0030】
実施例1
電気粘性流体の調製方法は以下のとおりである。
炭素粒子1gとジメチルシリコンオイル200gを混合し、30min超音波分散させ、炭素-シリコンオイル懸濁液を得て、二酸化チタン粒子50gを炭素-シリコンオイル懸濁液に加え、十分に粉砕して、水分を含有する電気粘性流体を得て、最後に、水分を含有する電気粘性流体を150℃で2時間熱処理して水分を除去し、電気粘性流体を得て、本実施例の電気粘性流体は、導体分散型電気粘性流体であり、図1に示される。
ここで、炭素粒子は、密度0.05g/cm、直径20nmであり、ジメチルシリコンオイルは、粘度20cst、密度0.97g/cmであり、二酸化チタン粒子は、密度4.2g/cm、直径1.5μmである。
そのせん断応力と電界強度との関係を図2に示し、上側の曲線は本実施例で得られた導体分散型電気粘性流体のせん断応力と電界強度との関係であり、下側の曲線は炭素粒子非添加の電気粘性流体のせん断応力と電界強度との関係であり、この図から、炭素粒子を加えると、せん断応力が大幅に上昇することを示した。
【0031】
実施例2
電気粘性流体の調製方法は以下のとおりである。
まず、銀粒子10gとシリコンオイル200gを混合し、粉砕して銀-シリコンオイル懸濁液を得て、二酸化チタン粒子50gを銀-シリコンオイル懸濁液に加え、十分に粉砕して、電気粘性流体を得て、最後に、水分を含有する電気粘性流体を200℃で1時間熱処理して水分を除去した。
銀粒子は直径50nmであり、シリコンオイルは、粘度300cst、密度0.97g/cmであり、二酸化チタン粒子は直径が1.5μmである。
そのせん断応力と電界強度との関係を図3に示し、上側の曲線は本実施例で得られた導体分散型電気粘性流体のせん断応力と電界強度との関係であり、下側の曲線は、炭素粒子非添加の電気粘性流体のせん断応力と電界強度との関係であり、この図から、銀粒子を加えると、せん断応力が上昇することを示した。
【0032】
実施例3
電気粘性流体の調製方法は以下のとおりである。
炭素粒子5gとジメチルシリコンオイル150gを混合し、粉砕して炭素-シリコンオイル懸濁液を得て、二酸化チタン粒子100gを炭素-シリコンオイル懸濁液に加え、十分に粉砕して、電気粘性流体を得て、最後に、水分を含有する電気粘性流体を170℃で1時間熱処理して水分を除去した。
炭素粒子は、密度0.05g/cm、直径20nmであり、ジメチルシリコンオイルは、粘度300cst、密度0.97g/cmであり、二酸化チタン粒子は、密度4.2g/cm、直径1.5μmである。
そのせん断応力と電界強度との関係を図4に示し、上側の曲線は本実施例で得られた導体分散型電気粘性流体のせん断応力と電界強度との関係であり、下側の曲線は、炭素粒子非添加の電気粘性流体のせん断応力と電界強度との関係であり、この図から、銀粒子を加えると、せん断応力が大幅に上昇することを示した。
【0033】
実施例4
電気粘性流体の調製方法は以下のとおりである。
炭素粒子1gとジメチルシリコンオイル50gを混合し、炭素-シリコンオイル懸濁液を得て、二酸化チタン粒子100gを炭素-シリコンオイル懸濁液に加え、十分に粉砕して、電気粘性流体を得て、最後に、水分を含有する電気粘性流体を150℃で1時間熱処理して水分を除去した。
炭素粒子は、密度0.05g/cm、直径20nmであり、ジメチルシリコンオイルは、粘度300cst、密度0.97g/cmであり、二酸化チタン粒子は、密度4.2g/cm、直径1.5μmである。
【0034】
実施例5
電気粘性流体の調製方法は以下のとおりである。
金粒子1gとジメチルシリコンオイル150gを混合し、金-シリコンオイル懸濁液を得て、二酸化チタン粒子100gを金-シリコンオイル懸濁液に加え、十分に粉砕して、電気粘性流体を得て、最後に、水分を含有する電気粘性流体を150℃で2時間熱処理して水分を除去した。
金粒子は直径20nmであり、ジメチルシリコンオイルは、粘度20cst、密度0.97g/cmであり、二酸化チタン粒子は、密度3.8g/cm、直径1.2μmである。
以下の実施例6~10は、前記導体粒子が前記誘電体粒子の内部及び表面に嵌め込まれているものであり、誘電体粒子の半径が50nm~5μmであり、導体粒子の半径が0.2nm~100nmである。
【0035】
実施例6
電気粘性流体の調製方法は以下のとおりである。
まず、蒸留水30gと無水エタノール160gをグルコース1gに溶解して、A液を調製し、チタン酸ブチル30gを無水エタノール240gに溶解して、B液を調製し、持続的に激しく撹拌されたB液にA液を緩やかに滴下し、滴下してから半時間後、混合液を遠心分離して白色沈殿を得て、沈殿を水と無水エタノールでそれぞれ2回洗浄した後、ベークして乾燥粉末を得た。乾燥させた粉末を管状炉に投入し、600℃、窒素雰囲気で3h処理し、黒色粉末を得て、黒色粉末は導体粒子が嵌め込まれた誘電体粒子であり、その構造模式図が図5に示され、黒色粉末の透過型電子顕微鏡写真は、図6に示され、暗い部分が炭素粒子であり、ラマンスペクトルは図7に示され、二酸化チタン(誘電体)がアナターゼ相であり、炭素が不定形炭素(導体)である。図6及び図7は、図5に示す構造が既に製造されたことを示す。
熱重量減量曲線は図8に示され、190℃では、物理的に吸着させた水の減量であり、290℃以降では、炭素の減量である。黒色粉末2gと粘度300cstのシリコンオイル1gを混合し、十分に粉砕して、電気粘性流体を得て、最後に、電気粘性流体を170℃で2時間熱処理して水分を除去した。
電気粘性流体のせん断応力と電界強度との関係を図9に示し、図9では、下側の曲線は炭素非添加の場合であり、この図から、炭素を加えると、せん断応力が大幅に上昇することを示し、図10は、各温度でのせん断応力と電界強度との関係図(質量百分数は図9に記載のものよりもわずかに低い)であり、この図から、この電気粘性流体が25~170℃の温度で優れた安定性を有することを示し、図11は、摩損前後のせん断応力と電界強度との関係図であり、この図から、電気粘性流体の使用寿命が長いことを示した。
【0036】
実施例7
電気粘性流体の調製方法は以下のとおりである。
まず、蒸留水30gと無水エタノール160gをスクロース1gに溶解して、A液を調製し、チタン酸ブチル30gを無水エタノール240gに溶解して、B液を調製し、持続的に激しく撹拌されたB液にA液を緩やかに滴下し、滴下してから半時間後、混合液を遠心分離して白色沈殿を得て、沈殿物を水と無水エタノールでそれぞれ2回洗浄した後、ベークして乾燥粉末を得た。乾燥させた粉末を管状炉に投入し、500℃、窒素雰囲気で3h処理し、灰色粉末を得た。灰色粉末2gと粘度50cstのシリコンオイル1gを混合し、十分に粉砕して、電気粘性流体を得て、最後に、電気粘性流体を150℃で2時間熱処理して水分を除去した。
そのせん断応力と電界強度との関係を図12に示し、この図から、炭素を加えると、せん断応力は炭素非添加の場合(図9の下側の曲線は炭素非添加の場合である)よりも大幅に上昇することを示した。
【0037】
実施例8
電気粘性流体の調製方法は以下のとおりである。
まず、蒸留水20gと無水エタノール160gをスクロース1gに溶解して、A液を調製し、チタン酸ブチル30gを無水エタノール240gに溶解して、B液を調製し、持続的に激しく撹拌されたB液にA液を緩やかに滴下し、滴下してから半時間後、混合液を遠心分離して白色沈殿を得て、沈殿物を水と無水エタノールでそれぞれ2回洗浄した後、ベークして乾燥粉末を得た。乾燥させた粉末を管状炉に投入し、500℃、真空雰囲気で3h処理し、灰色粉末を得た。灰色粉末1gと粘度20cstのシリコンオイル1gを混合し、十分に粉砕して、電気粘性流体を得て、最後に、電気粘性流体を150℃で2時間熱処理して水分を除去した。
そのせん断応力と電界強度との関係を図13に示し、この図から、炭素を加えると、せん断応力は炭素非添加の場合(図9の下側の曲線は炭素非添加の場合である)よりも大幅に上昇することを示す。
【0038】
実施例9
電気粘性流体の調製方法は以下のとおりである。
まず、蒸留水22gと無水エタノール40gをスクロース2gに溶解して、A液を調製し、チタン酸ブチル10gを無水エタノール80gに溶解して、B液を調製し、持続的に激しく撹拌されたB液にA液を緩やかに滴下し、滴下してから半時間後、混合液を遠心分離して白色沈殿を得て、沈殿物を水と無水エタノールでそれぞれ2回洗浄した後、ベークして乾燥粉末を得た。乾燥させた粉末を管状炉に投入し、500℃、真空雰囲気で3h処理し、灰色粉末を得た。灰色粉末1gと粘度100cstのシリコンオイル1gを混合し、十分に粉砕して、電気粘性流体を得て、最後に、電気粘性流体を170℃で1時間熱処理して水分を除去した。
【0039】
実施例10
電気粘性流体の調製方法は以下のとおりである。
まず、蒸留水28gと無水エタノール400gをスクロース10gに溶解して、A液を調製し、チタン酸ブチル100gを無水エタノール800gに溶解して、B液を調製し、持続的に激しく撹拌されたB液にA液を緩やかに滴下し、滴下してから半時間後、混合液を遠心分離して白色沈殿を得て、沈殿物を水と無水エタノールでそれぞれ2回洗浄した後、ベークして乾燥粉末を得た。乾燥させた粉末を管状炉に投入し、500℃、真空雰囲気で3h処理し、灰色粉末を得た。灰色粉末1gと粘度200cstのシリコンオイル1gを混合し、十分に粉砕して、電気粘性流体を得て、最後に、電気粘性流体を170℃で3時間熱処理して水分を除去した。
【0040】
もちろん、本発明の上記実施例は、本発明を明確に説明するための例示に過ぎず、本発明の実施形態を限定するものではない。当業者であれば、上記説明に基づいて他の様々な形態の変化又は変更を加えることができる。ここではすべての実施形態を一々挙げる必要がなく、また不可能なことである。本発明の趣旨及び原則を逸脱することなく行われるすべての修正、等同置換や改良などは、本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
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