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特許7061412誘電体粒子推定装置及び誘電体粒子種類推定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】誘電体粒子推定装置及び誘電体粒子種類推定システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20220421BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20220421BHJP
   G01N 15/14 20060101ALI20220421BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20220421BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
G01N21/17 A
G01N27/00 Z
G01N15/14 K
G01N15/14 C
G01N33/483 C
C12M1/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021098598
(22)【出願日】2021-06-14
【審査請求日】2021-10-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515279762
【氏名又は名称】株式会社AFIテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】森田 智士
(72)【発明者】
【氏名】岡本 義行
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 弘暉
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 嘉一
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/131162(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/061496(WO,A1)
【文献】特開2010-252785(JP,A)
【文献】国際公開第2007/105578(WO,A1)
【文献】特開2008-029332(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0304824(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-G01N 27/10
G01N 27/14-G01N 27/24
G01N 21/00-G01N 21/83
G01N 15/00-G01N 15/14
G01N 33/48-G01N 33/98
C12M 1/00-C12M 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液に含まれる誘電体粒子について誘電泳動を起こさせて捕獲した前記誘電体粒子を撮像した画像を取得し、前記誘電体粒子の種類を推定する誘電体粒子推定部を有する誘電体粒子推定装置であって、
前記誘電体粒子推定部は、
像部によって撮像された画像についてノイズを除去し、誘電体粒子該当部を認識・抽出する画像処理を行う画像処理部と、
前記画像処理が行われた前記画像に含まれる前記誘電体粒子の形状に基づいて、前記誘電体粒子を大別する第1カテゴリに分類する形状分類部と、
前記形状分類部で分類された後、生育環境に基づいて、前記誘電体粒子をさらに第2カテゴリに分類する生育環境分析部と、
前記生育環境分析部で分類された後、前記第2カテゴリ内における略同一形状の前記誘電体粒子の画像解析を行って特徴量の差異を抽出し、該差異に基づいて前記第2カテゴリの下位概念の第3カテゴリに分類する同形状内分類部と、
前記同形状内分類部で分類されたデータに基づいて、前記誘電体粒子の種類を推定する推定部と、
を備えることを特徴とする誘電体粒子推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の誘電体粒子推定装置において、
前記第3カテゴリ内に分類されたデータに基づいて、前記推定部が推定できない場合に、前記第3カテゴリ内において類似する菌種のみを画像解析して特徴量の差異を抽出し、該差異に基づいて前記第3カテゴリの下位概念の第4カテゴリに分類する特殊分類部を備え、
前記推定部は、前記特殊分類部で分類されたデータに基づいて、前記誘電体粒子の種類を推定することを特徴とする誘電体粒子推定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の誘電体粒子推定装置において、
少なくとも一対の電極と、該一対の電極上に所定方向に延在する流路と、前記一対の電極の間で前記所定方向に並びつつ互いに分離している複数のスリット領域とを有する誘電体捕集部と、
前記流路を前記所定方向に進むように、前記試料液を送液するポンプ部と、
前記送液される前記試料液中の前記誘電体粒子が誘電泳動を起こすように、所定周波数の交流電圧を前記一対の電極に供給する交流電圧供給部と、
前記誘電体捕集部において、前記複数のスリット領域が並んだ所定領域を撮像する撮像部と、
を備えることを特徴とする誘電体粒子推定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の誘電体粒子推定装置において、
前記撮像部は、
前記複数のスリット領域に設けられる前記誘電体粒子に向けて照明光を出力する光源部と、
前記光源部から出力された前記照明光をリング状の前記照明光にするためのリングスリット部と、
前記リングスリット部により形成された前記リング状の前記照明光を集光させるための集光筒部と、
前記集光筒部により集光された直進光と回折光とを集約し、前記誘電体粒子を含んで構成されるレンズ体部と、
前記レンズ体部により集約された前記直進光と前記回折光とを通過させて像を形成するための対物レンズ部と、
を有することを特徴とする誘電体粒子推定装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の誘電体粒子推定装置において、
前記一対の電極の間で前記複数のスリット領域を連結する領域は、前記流路の外部に配置されていることを特徴とする誘電体粒子推定装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の誘電体粒子推定装置において、
前記誘電体粒子は、細菌、細胞、微生物、真菌、芽胞、及びウイルスの内の少なくとも一つを含むことを特徴とする誘電体粒子推定装置。
【請求項7】
請求項3から請求項6のいずれか1項の複数の誘電体粒子推定装置を備え、
前記複数の誘電体粒子推定装置は、複数のクライアント側の誘電体粒子推定装置と、該複数のクライアント側の誘電体粒子推定装置とネットワークを介して接続されるサーバ側の誘電体粒子推定装置とを含み、
前記サーバ側の誘電体粒子推定装置は、
前記画像処理部によって画像処理が行われた画像から前記誘電体粒子の特徴量を抽出する前記誘電体粒子推定部に基づいて抽出された複数の前記誘電体粒子の特徴量に基づいて深層学習を行う学習部を有し、
前記各クライアント側の誘電体粒子推定装置は、予め特定された菌種の中から誘電体粒子の種類を推定し、
前記サーバ側の誘電体粒子推定装置は、前記特定された菌種以外の菌種を含めた中から誘電体粒子の種類を推定することを特徴とする誘電体粒子推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体粒子推定装置及び誘電体粒子種類推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料液中に含まれる細菌や細胞等の誘電体粒子に対して誘電泳動を利用して検査する検査方法が知られている。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、試料液中に含まれる誘電体粒子を検査する検査装置であって、少なくとも一対の電極と、一対の電極上に所定方向に延在する流路と、一対の電極の間で所定方向に並びつつ互いに分離している複数のスリット領域とを有する誘電体捕集部と、流路を所定方向に進むように、試料液を送液するポンプ部と、送液される試料液中の誘電体粒子が誘電泳動を起すように、所定周波数の交流電圧を一対の電極に供給する交流電圧供給部とを備える検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2017/061496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
誘電泳動を利用した検査装置などを用いて細菌を検査する際に検査対象の細菌の種類を推定できることが望ましい。
【0006】
本発明の目的は、検査対象の細菌の種類を推定できる誘電体粒子推定装置及び誘電体粒子種類推定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る誘電体粒子推定装置は、試料液に含まれる誘電体粒子について誘電泳動を起させて捕獲した前記誘電体粒子を撮像した画像を取得し、前記誘電体粒子の種類を推定する誘電体粒子推定部を有する誘電体粒子推定装置であって、前記誘電体粒子推定部は、 前記撮像部によって撮像された画像についてノイズを除去し、誘電体粒子該当部を認識・抽出する画像処理を行う画像処理部と、前記画像処理が行われた前記画像に含まれる前記誘電体粒子の形状に基づいて、前記誘電体粒子を大別する第1カテゴリに分類する形状分類部と、前記形状分類部で分類された後、生育環境に基づいて、前記誘電体粒子を前記第1カテゴリの下位概念である第2カテゴリに分類する生育環境分析部と、前記生育環境分析部で分類された後、前記第2カテゴリ内における略同一形状の前記誘電体粒子の画像解析を行って特徴量の差異を抽出し、該差異に基づいて前記第2カテゴリの下位概念の第3カテゴリに分類する同形状内分類部と、前記同形状内分類部で分類されたデータに基づいて、前記誘電体粒子の種類を推定する推定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る誘電体粒子推定装置において、前記第3カテゴリ内に分類されたデータに基づいて、前記推定部が推定できない場合に、前記第3カテゴリ内において類似する菌種のみを画像解析して特徴量の差異を抽出し、該差異に基づいて前記第3カテゴリの下位概念の第4カテゴリに分類する特殊分類部を備え、前記推定部は、前記特殊分類部で分類されたデータに基づいて、前記誘電体粒子の種類を推定することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る誘電体粒子推定装置において、少なくとも一対の電極と、該一対の電極上に所定方向に延在する流路と、前記一対の電極の間で前記所定方向に並びつつ互いに分離している複数のスリット領域とを有する誘電体捕集部と、前記流路を前記所定方向に進むように、前記試料液を送液するポンプ部と、前記送液される前記試料液中の前記誘電体粒子が誘電泳動を起すように、所定周波数の交流電圧を前記一対の電極に供給する交流電圧供給部と、前記誘電体捕集部において、前記複数のスリット領域が並んだ所定領域を撮像する撮像部と、を備えることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る誘電体粒子推定装置において、前記撮像部は、前記複数のスリット領域に設けられる前記誘電体粒子に向けて照明光を出力する光源部と、前記光源部から出力された前記照明光をリング状の前記照明光にするためのリングスリット部と、前記リングスリット部により形成された前記リング状の前記照明光を集光させるための集光筒部と、前記集光筒部により集光された前記直進光と前記回折光とを集約し、前記誘電体粒子を含んで構成されるレンズ体部と、前記レンズ体部により集約された前記直進光と前記回折光とを通過させて像を形成するための対物レンズ部と、を有することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る誘電体粒子推定装置において、前記一対の電極の間で前記複数のスリット領域を連結する領域は、前記流路の外部に配置されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る誘電体粒子推定装置において、前記誘電体粒子は、細菌、細胞、微生物、真菌、芽胞、及びウイルスの内の少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0013】
本発明に係る誘電体粒子推定システムは、前記複数の誘電体粒子推定装置は、複数のクライアント側の誘電体粒子推定装置と、該複数のクライアント側の誘電体粒子推定装置とネットワークを介して接続されるサーバ側の誘電体粒子推定装置とを含み、前記サーバ側の誘電体粒子推定装置は、前記画像処理部によって画像処理が行われた画像から前記誘電体粒子の特徴量を抽出する前記誘電体粒子推定部に基づいて抽出された複数の前記誘電体粒子の特徴量に基づいて深層学習を行う学習部を有し、前記各クライアント側の誘電体粒子推定装置は、予め特定された菌種の中から誘電体粒子の種類を推定し、前記サーバ側の誘電体粒子推定装置は、前記特定された菌種以外の菌種を含めた中から誘電体粒子の種類を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検査対象の細菌の種類を推定することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る実施形態の誘電体粒子推定装置を有する誘電体粒子種類推定システムを示す図である。
図2】本発明に係る実施形態の誘電体粒子種類推定システムの検査装置を示す図である。
図3】本発明に係る実施形態において、誘電体粒子種類推定システムの検査装置の撮像部を示す図である。
図4】本発明に係る実施形態において、捕集ユニットを説明するための図である。
図5】本発明に係る実施形態において、図4(e)の電極フィルムにおける配線領域の拡大図である。
図6】本発明に係る実施形態において、流路の端部近傍の領域におけるマイクロ電極部の拡大図である。
図7】本発明に係る実施形態において、検査方法の原理を示す図である。
図8】本発明に係る実施形態において、画像処理部によりノイズを除去している様子を示す図である。
図9】本発明に係る実施形態において、特徴量抽出部により特徴量を抽出している様子を示す図である。
図10】本発明に係る実施形態において、誘電体粒子推定装置を用いて推定する手順を示す図である。
図11】本発明に係る実施形態において、誘電体粒子推定装置の特殊分類部により分類している様子を示す図である。
図12】本発明に係る実施形態において、誘電体粒子推定装置の簡易テストによりテストしている様子を示す図である。
図13】本発明に係る実施形態において、誘電体粒子推定装置の簡易テストによりテストしている様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0017】
図1は、本発明に係る実施形態の誘電体粒子種類推定システム1を示す図である。図2は、本発明に係る実施形態の誘電体粒子種類推定システム1の検査装置2を示す図である。図3は、本発明に係る実施形態において、誘電体粒子種類推定システム1の検査装置2の撮像部12を示す図である。
【0018】
誘電体粒子種類推定システム1は、複数のクライアント側の誘電体粒子推定装置7と、各クライアント側の誘電体粒子推定装置7とネットワーク9を介して接続されるサーバ側の誘電体粒子推定装置8とを備えた複数の誘電体粒子推定部を含んで構成されている。各クライアント側の誘電体粒子推定装置7は、検査装置2に接続されている。各検査装置2は、検査部2a、制御装置4、情報処理装置5及び廃液チャンバ6を備えている。
【0019】
誘電体粒子種類推定システム1は、試料液(サンプル)中の細菌や細胞の誘電泳動を利用して細菌等の検査を行う各検査装置2で得られた細菌等の誘電体粒子についての画像を蓄積して学習することで、検査装置2で撮影された細菌等の種類を推定する機能を有する。
【0020】
各検査部2aは、制御装置4で制御され、細菌等の検査対象が捕集された状態は情報処理装置5において表示される。
【0021】
検査部2aは、ポンプ部10と、交流電圧供給部11と、撮像部12と、捕集ユニット3とを備える。
【0022】
ポンプ部10は、例えば、シリンジポンプで構成され、駆動部10aと、サンプルシリンジ10bとを備える。駆動部10aは、モータなどを備えて構成され、制御装置4により駆動制御される。
【0023】
サンプルシリンジ10bは、試料液を保持するシリンジである。サンプルシリンジ10bにおける送液部分には、捕集ユニット3が接続されている。ポンプ部10では、駆動部10aの駆動制御によってサンプルシリンジ10bから試料液が、流速や流量を適宜設定されて、捕集ユニット3に送液される。なお、ここでは、シリンジ側から廃液側にむけてサンプルを流すものとして説明したが、例えば、サンプルを廃液側にセットしてシリンジを吸い上げる方向で動作させてサンプルを廃液側からシリンジの向きで流し、目的とする誘電体粒子を捕捉してもよい。
【0024】
図4は、本発明に係る実施形態において、捕集ユニット3を説明するための図である。捕集ユニット3は、試料液が所定方向(液流方向)に流れる流路13と、流路13中に設けられたマイクロ電極部30とを有する。ポンプ部10から送液された試料液は、捕集ユニット3内の流路13を貫流して、廃液チャンバ6に廃液される。マイクロ電極部30は、マイクロオーダで形成された電極群で構成される。
【0025】
捕集ユニット3では、流路13中のマイクロ電極部30上に試料液が流れている際に、交流電圧供給部11からマイクロ電極部30に所定の交流電圧が供給される。これにより、試料液中における検査対象の細菌などが、誘電泳動を起こしてマイクロ電極部30に捕集される。捕集ユニット3は、マイクロ電極部30において細菌等の誘電体粒子を捕集する誘電体捕集部の一例である。捕集ユニット3の構成の詳細については後述する。
【0026】
交流電圧供給部11は、例えば、ファンクションジェネレータで構成される。交流電圧供給部11は、制御装置4の制御により、所望の周波数及び電圧振幅を有する交流電圧を発生して、捕集ユニット3のマイクロ電極部30に供給する。
【0027】
撮像部12は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどの撮像素子を備える。撮像部12を用いた観察法は、ここでは、「レンズ体集光観察法」と呼ぶ。
【0028】
撮像部12は、図3に示されるように、光源部50と、リングスリット部52と、集光筒部54と、レンズ体部56と、対物レンズ部58とを備えている。
【0029】
光源部50は、後述するスリット領域Rsの誘電体粒子に向けて照明光を放つ。
【0030】
リングスリット部52は、光源部50と、スリット領域Rsの誘電体粒子との間に設けられ、照明光をリング状の照明光にする。
【0031】
集光筒部54は、リングスリット部52とスリット領域Rsの誘電体粒子との間に設けられ、リング状の照明光を集光させてレンズ体部56に照明光を放つ。
【0032】
レンズ体部56は、捕集ユニット3のスリット領域Rsの誘電体粒子であり、直進光と回折光とを集約する。レンズ体部56は、詳細については後述する。
【0033】
対物レンズ部58は、レンズ体部56からの直進光と回折光とを通過させて像59を形成する。
【0034】
ここで、「レンズ体集光観察法」を説明するために比較例として、「変調コントラスト観察法」を説明する。変調コントラスト観察法は、無色透明な培養細胞をコントラスト良く観察するのに適した観察方法である。変調コントラスト観察法は、スリットを通過した斜めの照明光が標本を照射し、屈折率勾配の光線を結像側に設けた「変調板」を通過させることで、像にコントラストを付ける手法である。位相差物体であれば、標本がレンズ体でなくても像にコントラストが付くため観察が可能となる。
【0035】
これに対し、「レンズ体集光観察法」は、変調板を使用しない。ここでは、レンズ体部56は、位相物体の中でもレンズのように光を屈折させるような立体的な球状のものを指している。例えば、微生物や細胞、血小板等がそれにあたり、スリット領域Rsの誘電体粒子がレンズ体部56として機能する。
【0036】
図3に示されるように、リングスリット部52を通過した斜めの照明光(回折光)は集光筒部54により増幅される。集光筒部54により集約された回折光は様々な角度から標本を通過するが、標本がレンズ体部56ではない位相物体の場合は、明視野観察時のように透き通るだけで可視化しない。
【0037】
また、位相物体でない場合は光が通過しないため、像としては黒く映る。位相物体がレンズ体部56であるときのみ、集約された回折光は、そのレンズ体部56を通過する際に集光され、周辺よりも明るくなるため像としては白く映る。
【0038】
レンズは、その中心に最も光が集まるため、例えば、微生物の場合は単一細胞の中心が周囲よりも明るくなり、外側の細胞壁付近は周囲よりも暗くなる。これにより、微生物のようなレンズ体部56に特化した位相物体の可視化が可能となる。
【0039】
このように、撮像部12によれば、直接光と回折光がレンズ体部56により集約され強められることで、位相物体の中でもレンズ体部56であるサンプルが背景よりも特に明るくなる。また、その周囲は特に暗く見えるため、微生物等の単細胞を観察するのに適しており、さらには、画像処理部60によりノイズが処理され、学習部72等により特徴量を抽出学習させるのに適している。
【0040】
撮像部12は、捕集ユニット3におけるマイクロ電極部30中の所定の領域を撮像し、撮像画像を情報処理装置5に出力する。撮像部12の撮像動作は、制御装置4によって制御されてもよいし、情報処理装置5によって制御されてもよい。
【0041】
制御装置4は、ポンプ部10による試料液の送液や交流電圧供給部11による交流電圧の供給などの検査部2aの動作を制御する。制御装置4は、フラッシュメモリなどの内部メモリを備え、内部メモリに格納されたプログラムに基づいて種々のデータ等を利用して演算処理を行うことにより、各種の機能を実現する。
【0042】
制御装置4は、専用に設計された電子回路や再構成可能な電子回路などのハードウェア回路(ASIC,FPGA等)で構成されてもよい。制御装置4の機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
【0043】
情報処理装置5は、例えば、パーソナルコンピュータで構成される。情報処理装置5は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ(表示部)を備え、撮像部12の撮像画像を表示する。
【0044】
情報処理装置5は、フラッシュメモリなどの内部メモリを備え、内部メモリに格納されたプログラムに基づいて、各種の機能を実現する。例えば、情報処理装置5は、撮像部12の撮像画像の画像解析を行い、撮像画像中で所定の条件に該当する領域(スリット)の対象物数を計測等の機能を有する。
【0045】
情報処理装置5は、撮像部12の撮像動作を制御してもよい。また、情報処理装置5と制御装置4とは、情報処理装置5において、制御装置4の各種機能を実現することで、一体的に構成されてもよい。情報処理装置5は、本実施形態における表示部の一例であり、且つ、撮像部12の撮像結果を解析する画像解析部の一例である。
【0046】
廃液チャンバ6は、検査部2aの捕集ユニット3を貫流した試料液を溜めるチャンバである。廃液チャンバ6は、検査装置2aの内部に組み込まれてもよい。
【0047】
捕集ユニット3の構成について、図4~6を参照して説明する。図4(a)は、本発明に係る実施形態において、捕集ユニット3の平面図を示す。図4(b)は、図4(a)に示す捕集ユニット3のA-A線断面図を示す。捕集ユニット3は、図4(a)に示すように略矩形の平板形状を有する。
【0048】
また、図4(b)に示すように、捕集ユニット3は、カバー板31と、スペーサ32と、電極フィルム33とを備え、これらが厚み方向に順次、重ね合わせられた構造である。
【0049】
図4(c)は、捕集ユニット3におけるカバー板31の平面図を示す。図4(d)は、スペーサ32の平面図を示す。図4(e)は、電極フィルム33の平面図を示す。
【0050】
カバー板31は、例えば、透明のアクリル板などで形成される平板状の部材である。図4(c)に示すように、カバー板31には、2つの挿通孔31a,31b及び切り欠き部31cが設けられている。
【0051】
各挿通孔31a,31bは、それぞれ捕集ユニット3内の流路13の始点及び終点に対応している(図4(a)参照)。切り欠き部31cは、カバー板31において、電極フィルム33上の電極パッド33aに対応した位置に形成される。
【0052】
スペーサ32は、例えば、透明のPET(ポリエステル)テープで形成される部材である。スペーサ32には、流路13に対応する矩形穴32aと、カバー板31の切り欠き部31cと同形状の切り欠き部32bとが形成されている。
【0053】
スペーサ32は、3M(登録商標)9969等の粘着剤により、各主面においてそれぞれカバー板31と電極フィルム33とに接着し、カバー板31と電極フィルム33との間隔(すなわち流路13の高さ)を所定幅(例えば0.1mm)に固定する。
【0054】
電極フィルム33は、PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムなどの透明のフィルム基材に、マイクロ電極部30が設けられた部材である。マイクロ電極部30は、電極フィルム33の主面上の配線領域において、電極パッド33aに電気的に連結している。マイクロ電極部30や電極パッド33aは、例えば、蒸着法やスパッタリング法によってクロム等の金属材料で形成される。
【0055】
捕集ユニット3は、電極パッド33aにおいて、交流電圧供給部11に電気接続する(図2参照)。図4(a)に示すように、電極パッド33aは、カバー板31とスペーサ32と電極フィルム33とが重ね合わさった状態において、切り欠き部31c,32bによって露出する。このため、捕集ユニット3は、簡単に交流電圧供給部11に電気接続させることができる。
【0056】
また、捕集ユニット3の流路13は、矩形穴32aの周囲においてスペーサ32がカバー板31と電極フィルム33とを所定間隔で密着させることにより形成される。流路13の両端に位置する2つの挿通孔31a,31bに、それぞれサンプルシリンジ10b及び廃液チャンバ6を挿抜可能に連結させることで、試料液を流路13に簡単に貫流させることができる。以上のように、捕集ユニット3は、電機接続や流路の接続が簡単に行え、検査部2aにおいて細菌などの捕集後、使い捨てしたり、使い回ししたりすることが容易に行える。
【0057】
図5は、本発明に係る実施形態において、図4(e)の電極フィルム33における配線領域の拡大図である。本実施形態において、電極フィルム33におけるマイクロ電極部30は、二組の電極対CH1,CH2を有する。交流電圧供給部11からの交流電圧は、第1及び第2の電極対CH1,CH2の電極毎に、電極パッド33aを介して供給される。第1及び第2の電極対CH1,CH2は、中央線L1において線対称に形成されている。以下、第1の電極対CH1について説明する。
【0058】
第1の電極対CH1は、2つの電極41,42からなる。電極41,42は、それぞれ等間隔に並んだ櫛歯形状を有する。2つの電極41,42の櫛歯形状における複数の凸部は、流路13の液流方向において、交互に所定間隔をあけて配列される。電極41,42の各凸部は、液流方向と交差(直交)する方向に延在している。第2の電極対CH2の電極41,42についても、同様の配置である。
【0059】
図6は、本発明に係る実施形態において、流路13の端部近傍の領域Riにおけるマイクロ電極部30の拡大図である。マイクロ電極部30では、流路13上で電極41,42の各凸部の間のスリットにより、所定幅W2を有するスリット状の領域Rsが形成される。
【0060】
複数のスリット領域Rsは、図6に示すように、一対の電極41,42の間で液流方向に並んでいる。各スリット領域Rsの幅W2は、例えば10μm~20μmにおける所定値に設定される。これに対して、電極41,42の凸部の幅W1は、例えば、100μmである。スリット領域Rsの幅W2は、0.1μm~100μmの範囲内で設定されてもよい。
【0061】
また、本実施形態において、マイクロ電極部30と流路13とは、電極41,42の各凸部がそれぞれ所定の長さΔdだけ流路13からはみ出すように設定されている。換言すると、電極フィルム33上で一対の電極41,42の間で複数のスリット領域Rsを連結する領域は、流路13の外部に配置されている。
【0062】
これにより、流路13が延在する所定方向(液流方向)に並んだ複数のスリット領域Rsは、流路13中においては連結せずに、互いに分離する。例えば、流路13の幅W3(図5参照)が3mmに対して、電極41,42の両端がはみ出す長さΔdは、0.3mmに設定される。また、各電極41,42の凸部の厚みは、例えば、100nm程度である。
【0063】
また、検査部2aにおいて細菌などの誘電泳動を行う際、図5に示すように、マイクロ電極部30内で電極41,42の凸部が流路13の上流から順次並んだ領域Rcを、撮像部12により撮像する。
【0064】
ここで、スリット領域Rs同士が流路13中で連結している場合、例えば、上流側のスリット領域Rsにおいて捕集された細菌等が、電極41,42間の誘電泳動力を維持しながら下流側のスリット領域Rsに移動するような事態が想定される。これに対して、上記のように流路13中で各スリットRs領域を分離させることにより、複数のスリット領域Rs間で捕集済みの細菌等が移動することを抑制できる。
【0065】
図7は、本発明に係る実施形態において、検査方法の原理を示す図である。検査部2aでは、誘電泳動を利用して、試料液に含まれる検査対象の細菌等を捕集する。図7(a)に示すように、電極41,42間に周波数ωの交流電圧を供給した場合に、流路13を流れる試料液中の生菌や死菌などの細菌に作用する誘電泳動力FDEPは、次式で表される。
DEP=2πrεRe[K(ω)]∇E …(1)
【0066】
上式(1)において、rは検査対象の生菌や死菌などの誘電体粒子の半径であり、εは試料液の媒質の誘電率であり、Eは電場の強度である。また、Re[X]は複素数Xの実部を表す。K(ω)は、Clausius-Mossotti因子であり、次式で表される。
K(ω)=(ε -ε )/(ε +2ε ) …(2)
【0067】
上式(2)において、ε (=ε+ρ/(jω))は、誘電体粒子の複素誘電率である(εは誘電体粒子の誘電率で、ρはその導電率)。また、ε (=ε+ρ/(jω))は、媒質の複素誘電率である(ρは媒質の導電率)。
【0068】
上式(1)において、Re[K(ω)]>0であるとき、電極41,42の設置方向に対して正の誘電泳動力FDEPが誘電体粒子に作用し、誘電体粒子は電極41,42近傍に引きつけられてスリットRsに吸着される。
【0069】
一方、Re[K(ω)]<0であるとき、負の誘電泳動力FDEPが誘電体粒子に作用し、誘電体粒子は電極41,42に対して反発する。このため、周波数ωを適宜、設定することにより、検査対象外の夾雑物等を排除しながら、検査対象を選択的にスリット領域Rsに吸着させることができる。
【0070】
次に、複数の検査装置2と接続されるクライアント側の誘電体粒子推定装置7について説明する。クライアント側の誘電体粒子推定装置7は、画像処理部60と、形状分類部62と、生育環境分析部64と、同形状内分類部66と、特殊分類部68と、推定部70とを備える。
【0071】
画像処理部60は、撮像部12によって撮像された画像についてノイズを除去するための画像処理を行う機能を有する。画像処理部60は、電極41,42により捕集された誘電体粒子を含む画像のうち、様々な要因で発生する大量のノイズを画像処理によって除去し、より正確な抽出(単体抽出)を可能とする。
【0072】
ノイズであるか否かを判断するパラメータとして、例えば、輝度で判断することができ、図8の左図に示された画像にノイズが除去された画像(図8の右図)が形成される。
【0073】
形状分類部62は、画像処理部60により画像処理が行われた画像に含まれる誘電体粒子の形状に基づいて、誘電体粒子を大まかな菌の種類に分けられた第1カテゴリに分類し、1つの種類に絞り込む。大まかな菌の種類である第1カテゴリは、短桿菌形、長桿菌形、真菌形、小球菌形の4つの種類で構成されている。例えば、図10に示される例では、A~Fの菌からAの菌種を特定する手順を示しており、最初に、A,B,Cを含む短桿菌形に絞り込まれる。
【0074】
生育環境分析部64は、形状分類部62で分類された後、生育環境に基づいて、誘電体粒子を第1カテゴリの下位概念である第2カテゴリに分類して、さらに、詳細に絞り込む。生育環境で分けられる第2カテゴリは、好気性、微好気性、通性嫌気性、嫌気性、偏嫌気性で構成される。例えば、図10に示される例では、A~Cの短桿菌形のうち、好気性の生育環境であるA,Bに絞り込まれる。
【0075】
同形状内分類部66は、生育環境分析部64で分類された後、第2カテゴリ内における略同一形状の誘電体粒子の画像解析を行って特徴量の差異を抽出し、該差異に基づいて第2カテゴリの下位概念の第3カテゴリに分類し、さらに、詳細に絞り込む。例えば、図10に示される例では、好気性の短桿菌形(A,B)のうち、判別結果として、Aが90%で、Bが20%のようにAである確率が高い場合には、このままAに絞り込んだ結果を出力する。
【0076】
特殊分類部68は、第3カテゴリ内に分類されたデータに基づいて、推定部70が推定できない場合に、第3カテゴリ内において類似する菌種のみを画像解析して特徴量の差異を抽出し、該差異に基づいて第3カテゴリの下位概念の第4カテゴリに分類する。例えば、図10に示される例では、同形状内分類部66における比較結果が、例えば、Aが50%で、Bが50%と区別がつきにくい場合に、特殊分類部68が実行される。例えば、図11に示されるように、付着パターンによる分類や連鎖ケースによる分類などを行うことで判別することができる。
【0077】
推定部70は、同形状内分類部66又は特殊分類部68で分類されて比較された結果に基づいて、誘電体粒子の種類を推定する。推定部70は、予め特定された誘電体粒子群の中から菌種を推定する。
【0078】
サーバ側の誘電体粒子推定装置8は、画像処理部60と、形状分類部62と、生育環境分析部64と、同形状内分類部66と、特殊分類部68と、推定部71と、学習部72と、簡易テスト部74とを備える。ここで、画像処理部60、形状分類部62、生育環境分析部64、同形状内分類部66、及び特殊分類部68は、クライアント側の誘電体粒子推定装置7と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0079】
学習部72は、複数の検査装置2から取得した誘電体粒子の画像を学習し、細菌の種類の推定精度を向上させる機能を有している。
【0080】
学習部72は、画像処理部60によって画像処理が行われた画像から誘電体粒子の特徴量を抽出する。菌特徴量として「面積」「平均輝度」「長軸/短軸」「真円度」等の必要な情報を出力し、特徴量の統計・傾向を計測可能とする。例えば、図9の左図に示された画像についての特徴量を抽出して、図9の右図に示された統計を求めることが出来る。
【0081】
学習部72は、複数の誘電体粒子の特徴量に基づいて深層学習を行う。具体的には、画像処理部72で撮影された大量の画像についてノイズ処理をするとともに、特徴量が抽出された大量の情報を用いて、学習・解析を行うことで判別対象の菌の種類を推定できるようになる。
【0082】
推定部71は、同形状内分類部66又は特殊分類部68で分類されて比較された結果に基づいて、誘電体粒子の種類を推定する。推定部71は、クライアント側の誘電体粒子推装置7の推定部70とは異なり、不特定の誘電体粒子群の中から菌種を推定する。すなわち、学習部72により、深層学習が行われた最新のデータの中から推定を行う。
【0083】
ここで、学習部72は、人工知能(AI)のCNN(Convolutional Neral Network)を用いて実現することができ、例えば、畳み込みとプーリングにより、入力画像に対してそれぞれの位置情報や位置関係を失うことなく特徴量を抽出し、データ化して分類して出力する。
【0084】
ここで、「畳み込み」とは、フィルタ(カーネルフィルタ)を使い、位置情報を損なうことなく画像データを特徴マップに変換することを意味する。「プーリング」とは、特徴量を粗く整理することを意味する。すなわち、CNNを用いることで入力された画像について、畳み込みにより特徴を見つけ、プーリングによって特徴を粗く整理し、蜜結合によって特徴をまとめて評価する。
【0085】
上記のように、人工知能(AI)を用いて、検査した菌の画像と、検査したサンプルの特徴(対象物(例えば、うどん、レトルトカレー、化粧水など)、pH(例えば、6~7,3~4など)、水分活性値(例えば、80%以上、40%未満など)、保管温度(例えば、10℃以下、35℃前後、50℃前後))とに基づいて解析を行いつつ学習することで、より正確な菌の推定を実現する。
【0086】
簡易テスト部74は、クライアント側の誘電体粒子推定装置7及びサーバ側の誘電体粒子推定装置8の誘電体粒子の推定機能をテストする。例えば、図12(a)のように、学習用画像とテスト用画像を同条件にて撮影して採取する。
【0087】
図12(b)のように、学習用画像をバッチサイズ及びエポック数を調整して学習モデルを生成し、ここで作成された学習モデルをそれぞれのテスト用画像で適合率を図13(a)に示されるようにテストする。上記適合率テストによって自他判別ができているかどうか、テスト画像ごとに何%と算出される。この自他判別の結果が図13(b)のような明確に差異が出ているものが合格となるようなテストを実施している。
【0088】
続いて、上記構成の誘電体粒子種類推定システム1の作用について説明する。最初に、クライアント側の誘電体粒子推定装置7とネットワーク9を介して接続される各検査装置2の動作について説明し、その後にクライアント側の誘電体粒子推定装置7を含む誘電体粒子種類推定システム1について説明する。
【0089】
各検査装置2では、検査部2aが制御装置4によって制御され、ポンプ部10から試料液を捕集ユニット3の流路13に流しながら、交流電圧供給部11から流路13中のマイクロ電極部30に所定周波数の交流電圧を供給し、検査対象に正の誘電泳動力を作用させる。
【0090】
次に、マイクロ電極部30においてスリット領域Rsが並んだ領域Rcを撮像する。この際、検査対象に応じて、正の誘電泳動力が作用するように交流電圧の周波数ωを設定し、交流電圧の電圧振幅や流路13中の流速も適宜、制御する。これにより、種々の検査対象を選択的に捕集することもできる。
【0091】
例えば、周波数制御により、細菌における生菌(活性菌)と死菌(損傷菌)を区別するか否かを切り替えることができる。図7(a)は、生菌と死菌とを共に捕集する場合の例を示す。例えば、周波数ω=100MHzで電極41,42に交流電圧を供給することにより、生菌と死菌との双方に正の誘電泳動力を作用させて、生菌と死菌との双方を他のものと区別して捕集することができる。
【0092】
図7(b)は、生菌を選択的に捕集する場合の例を示す。図7(b)に示す例では、図7(a)に示すように周波数ω=100MHzでの動作後、周波数ωを3MHzにまで上げている。すると、生菌には正の誘電泳動力が作用する一方、死菌には作用しなくなる。これにより、死菌を除いた生菌のみをスリット領域Rsに吸着させることができる。
【0093】
検査装置2では、一般的な手法である位相差観察法とは異なり、「レンズ体集光観察法」を用いている。レンズ体集光観察法は、コンデンサレンズを無くし、位相物体がレンズ体である場合にのみ照明光の「回折光」と「直進光」が集約され、背景よりも明るく見えることを利用し、位相物体の中でもレンズ体部56のみ明暗のコントラストをつけて観察する方法である。
【0094】
また、検査装置2では、集光筒部54と光源部50との間にリングスリット部52があり、照明光をリング状にした光をサンプルに当てている。直進光と回折光がレンズ体部56により集約され強められることで、位相物体の中でもレンズ体部56であるサンプルが背景よりも特に明るくなる。また、その周囲は特に暗く見えるため、微生物などの単細胞の観察に適しており、大量の画像を蓄積して学習させるのに好適である。
【0095】
クライアント側の誘電体粒子推定装置7は、画像処理部60で撮影された大量の画像について画像処理を行って判別対象の菌が判別できるようになる。これにより、より高い精度で菌の推定を行うことができるという顕著な効果を奏する。また、クライアント側の誘電体粒子推定装置7では、予め特定された菌種の中から推測するというように限定されているが、サーバ側の誘電体粒子推定装置8も用いることで、より広い範囲で菌種の推定を行うことができるという顕著な効果を奏する。
【符号の説明】
【0096】
1 誘電体粒子種類推定システム、2 検査装置、2a 検査部、3 捕集ユニット、4 制御装置、5 情報処理装置、6 廃液チャンバ、7 クライアント側の誘電体粒子推定装置、8 サーバ側の誘電体粒子推定装置、9 ネットワーク、10 ポンプ部、10a 駆動部、10b サンプルシリンジ、11 交流電圧供給部、12 撮像部、13 流路、30 マイクロ電極部、31 カバー板、31a,31b 挿通孔、31c 切り欠き部、32 スペーサ、32a 矩形穴、32b 切り欠き部、33 電極フィルム、33a 電極パッド、41,42 電極、50 光源部、52 リングスリット部、54 集光筒部、56 レンズ体部、58 対物レンズ部、59 像、60 画像処理部、62 形状分類部、64 生育環境分析部、66 同形状内分類部、66 誘電体粒子推定部、68 特殊分類部、70 推定部、71 推定部、72 学習部、74 簡易テスト部。

【要約】      (修正有)
【課題】検査対象の細菌の種類を推定できる誘電体粒子種類推定装置を提供する。
【解決手段】誘電体粒子推定装置7は、試料液に含まれる誘電体粒子について誘電泳動を起させて捕獲した誘電体粒子を撮像した画像を取得し、誘電体粒子の種類を推定する誘電体粒子推定部し、撮像された画像についてノイズを除去するための画像処理を行う画像処理部60と、画像処理が行われた画像に含まれる誘電体粒子の形状に基づいて、第1カテゴリに分類する形状分類部62と、生育環境に基づいて、誘電体粒子を第2カテゴリに分類する生育環境分析部64と、第2カテゴリ内における略同一形状の誘電体粒子の画像解析を行って特徴量の差異を抽出し、該差異に基づいて第3カテゴリに分類する同形状内分類部66と、同形状内分類部66で分類されたデータに基づいて、誘電体粒子の種類を推定する推定部70と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13