(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/01 20060101AFI20220421BHJP
B23Q 1/56 20060101ALI20220421BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20220421BHJP
B23Q 1/48 20060101ALN20220421BHJP
【FI】
B23Q1/01 H
B23Q1/01 T
B23Q1/56 B
B23Q1/01 W
B23Q11/08 B
B23Q1/48 C
(21)【出願番号】P 2017013741
(22)【出願日】2017-01-30
【審査請求日】2019-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】大木 稔
(72)【発明者】
【氏名】小川 史樹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 光洋
【審査官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-261880(JP,A)
【文献】特開2004-098230(JP,A)
【文献】特開2016-124037(JP,A)
【文献】実開昭52-009893(JP,U)
【文献】特開2000-079528(JP,A)
【文献】実開昭52-157585(JP,U)
【文献】特開平06-297286(JP,A)
【文献】特開2006-021271(JP,A)
【文献】特開昭59-047130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/01
B23Q 1/56
B23Q 1/48
B23Q 11/00
B23Q 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドと、
前記ベッドにそれぞれ鉛直方向に立設され、かつ間隔を空けて配置される第一支柱及び第二支柱を備える門型コラムと、
工作物を支持し、前記第一支柱及び前記第二支柱に前記鉛直方向に移動可能に設けられる第一移動体と、
前記工作物を加工する回転工具を支持し、前記門型コラムに対して前記鉛直方向に直交する水平2軸方向に移動可能に設けられる第二移動体と、
を備える工作機械であって、
前記第一支柱及び前記第二支柱は、
前記第一支柱と前記第二支柱とが対向する対向面と、
前記対向面の背面側に位置する背向面と、
前記第一支柱及び前記第二支柱の周方向において前記対向面に隣り合う面であって、前記第二移動体から遠い側の面である第一面と、
前記第一支柱及び前記第二支柱の周方向において前記対向面に隣り合う面であって、前記第一面の背面側に位置し、前記第二移動体側の面である第二面と、
を備え、
前記第一支柱及び前記第二支柱における前記背向面に設けられ、前記第一移動体を前記鉛直方向に案内する一対の鉛直方向案内機構を備え、
前記第一移動体は、
前記第一支柱及び前記第二支柱と係合し前記鉛直方向に移動可能なサドルと、
前記サドルと別体で形成され前記サドルに取り付けられ、前記工作物が支持される工作物支持装置と、
を備え、
前記回転工具が前記工作物を加工する領域を加工領域と定義すると、
前記工作物支持装置に支持される前記工作物は、前記第一支柱及び前記第二支柱における前記第一面に対し前記第一支柱側及び前記第二支柱側と反対側に設けられる前記加工領域である第一領域に配置され、
前記第一支柱及び前記第二支柱は、前記第一領域の全領域と前記鉛直方向案内機構との間を遮るよう前記第一領域と前記鉛直方向案内機構との間に配置される、工作機械。
【請求項2】
前記工作機械は、さらに、前記第一支柱及び前記第二支柱における前記背向面側にて、前記第一移動体との間に設けられ、前記第一移動体を前記鉛直方向に移動させる第一移動体駆動機構を備え、
前記第一移動体駆動機構は、前記第一支柱及び前記第二支柱における前記背向面に前記鉛直方向に形成された凹部に収容される、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記工作機械は、さらに、前記第一支柱及び前記第二支柱における前記第二面に設けられ、前記第一移動体を前記鉛直方向に案内する一対の第二面鉛直方向案内機構を備え、
前記第一支柱及び前記第二支柱は、さらに、前記第一領域の全領域と前記第二面鉛直方向案内機構との間を遮るよう前記第一領域と前記第二
面鉛直方向案内機構との間に配置される、請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記第一領域と前記第一領域の外側領域とを区切るカバーを備える、請求項1-3の何れか1項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記サドルは、
前記第一支柱及び前記第二支柱における前記背向面側に位置し、L字形状の一方の辺である外側辺と、
前記第一支柱及び前記第二支柱における前記第一面側に位置し、前記L字形状の他方の辺である延在部と、
を備え、
前記工作物支持装置は、前記延在部に固定される、請求項1-4の何れか1項に記載の工作機械。
【請求項6】
前記一対の鉛直方向案内機構は、
それぞれ前記第一移動体及び前記門型コラムの一方に設けられるレールと、
前記第一移動体及び前記門型コラムの他方に設けられる前記レールに嵌合し前記レールを案内するガイドブロックと、
を備え、
前記ガイドブロックは、1本の前記レールに対して2個以上設けられる、請求項1-5の何れか1項に記載の工作機械。
【請求項7】
前記第二移動体は、前記第一支柱及び前記第二支柱の間を通って、前記第一領域に移動可能であり、
前記一対の鉛直方向案内機構は、
前記第一支柱及び前記第二支柱における前記背向面側において、
前記第二移動体が移動する前記水平2軸方向のうち、前記第一支柱及び前記第二支柱の間を通り移動する方向であり、且つ前記第二面との間の距離が変化する方向における前記第一支柱及び前記第二支柱の幅の中央より前記第一面側に設けられる、請求項1-6の何れか1項に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、門型コラムを備えた工作機械(例えば、マシニングセンタ)がある。この工作機械は、通常、ワークテーブル又は主軸台が固定されたサドルを備え、このサドルが門型コラムの一対の支柱に鉛直方向に移動可能に支持されている。詳細には、サドルは、サドルと支柱との間に設けられた鉛直方向案内機構によって鉛直方向の移動が制御されている。鉛直方向案内機構は、レールと、レールが嵌合するブロックガイドとを備える。レールは、例えば、一対の支柱側の面に設けられ、ブロックガイドは、レールと対向するサドル側の面に設けられている。特許文献1の
図23に記載の工作機械では、鉛直方向案内機構が、門型コラムの一対の支柱の対向面に設けられている。また、特許文献2に記載の工作機械では、鉛直方向案内機構が、門型コラムの一対の支柱の前側の面に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第7150706号明細書
【文献】特許第5084605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に記載の工作機械では、回転工具によって工作物が加工される領域である加工領域と鉛直方向案内機構との間には、介在物がない。このため、加工領域内において工作物の加工が行なわれると、クーラント及び切粉が直接、鉛直方向案内機構に当たることとなる。これにより、鉛直方向案内機構が破損し、鉛直方向案内機構の寿命が短くなる虞がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高寿命の鉛直方向案内機構を備えた工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の工作機械は、ベッドと、前記ベッドにそれぞれ鉛直方向に立設され、かつ間隔を空けて配置される第一支柱及び第二支柱を備える門型コラムと、工作物を支持し、前記第一支柱及び前記第二支柱に前記鉛直方向に移動可能に設けられる第一移動体と、前記工作物を加工する回転工具を支持し、前記門型コラムに対して前記鉛直方向に直交する水平2軸方向に移動可能に設けられる第二移動体と、を備える工作機械であって、前記第一支柱及び前記第二支柱は、前記第一支柱と前記第二支柱とが対向する対向面と、前記対向面の背面側に位置する背向面と、前記第一支柱及び前記第二支柱の周方向において前記対向面に隣り合う面であって、前記第二移動体から遠い側の面である第一面と、前記第一支柱及び前記第二支柱の周方向において前記対向面に隣り合う面であって、前記第一面の背面側に位置し、前記第二移動体側の面である第二面と、を備え、前記第一支柱及び前記第二支柱における前記背向面に設けられ、前記第一移動体を前記鉛直方向に案内する一対の鉛直方向案内機構を備え、前記第一移動体は、前記第一支柱及び前記第二支柱と係合し前記鉛直方向に移動可能なサドルと、前記サドルと別体で形成され前記サドルに取り付けられ、前記工作物が支持される工作物支持装置と、を備え、前記回転工具が前記工作物を加工する領域を加工領域と定義すると、前記工作物支持装置に支持される前記工作物は、前記第一支柱及び前記第二支柱における前記第一面に対し前記第一支柱側及び前記第二支柱側と反対側に設けられる前記加工領域である第一領域に配置され、前記第一支柱及び前記第二支柱は、前記第一領域の全領域と前記鉛直方向案内機構との間を遮るよう前記第一領域と前記鉛直方向案内機構との間に配置される、工作機械。
【0007】
これにより、加工領域において、回転工具が工作物を加工しても、加工領域から飛散する切粉は、第一支柱及び第二支柱に遮られて、鉛直方向案内機構に直接かかりにくくできる。これにより、鉛直方向案内機構が破損する虞は抑制され、鉛直方向案内機構の寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態である工作機械を前面側から見たときの全体構成図である。
【
図2】
図1の工作機械を側面側から見たときの全体構成図である。
【
図3】
図2の工作機械を上面側から見たときの全体構成図である。
【
図7】第二実施形態における第一実施形態の
図4に相当する図である。
【
図8】第三実施形態における第一実施形態の
図4に相当する図である。
【
図9】第四実施形態を説明するための第一実施形態の
図4に相当する図である。
【
図10】変形例1を説明する第一実施形態の
図4に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1.工作機械の構成)
<第一実施形態>
工作機械の一例として、4軸横形マシニングセンタを例に挙げ、第一実施形態について
図1~
図5を参照して説明する。つまり、本実施形態において工作機械1は、駆動軸として、相互に直交する3つの直進軸(X軸(水平方向),Y軸(鉛直方向),Z軸(水平方向))及び1つの揺動回転軸(A軸(X軸に平行))を有する。具体的には、X軸線方向は、工作機械1の左右方向(幅方向)、Z軸方向は、工作機械1の前後方向(
図2において左方を前、右方を後とする)、Y軸線方向は、工作機械1の上下方向(高さ方向)とする。なお、工作機械1で加工される工作物Wは、どのようなものでもよく限定はしない。
【0010】
図1、
図2、
図3に示すように、工作機械1は、ベッド2,主軸移動体3(第二移動体を構成),主軸台4(第二移動体を構成),主軸40,門型コラム5,支柱サドル45(第一移動体を構成)、工作物支持装置8(第一移動体を構成)及び制御装置10等を備える。なお、図示省略するが、工作機械1は、主軸40に装着可能な回転工具を複数備え、主軸40に対し自動的に工具交換可能な自動工具交換装置をベッド2上に備える。
【0011】
ベッド2は、直方体状であり、床上に配置される。ベッド2上の門型コラム5の後方(
図2の右方)側には、主軸移動体3(第二移動体を構成)がX軸線方向(
図2の紙面奥行き方向)に移動可能に設けられる。なお、このとき、移動可能なX軸線方向とは、主軸台4(第二移動体を構成)が、門型コラム5に対して移動可能な鉛直方向に直交する水平2軸方向のうちの1軸方向に相当する。主軸移動体3は、直方体状であり、ベッド2上に設けられるX軸線方向に延びる一対のガイド部材31,31に沿ってX軸線方向に移動可能に設けられる。一対のガイド部材31,31の間には、主軸移動体3をX軸線方向に移動させるボールネジ機構32を有するX軸モータ33が備えられる。
【0012】
主軸移動体3上には、主軸台4が設けられる。主軸台4は、主軸移動体3上に設けられるZ軸線方向に延びる一対のガイド部材41,41に沿ってZ軸線方向に移動可能に設けられる。なお、このとき、Z軸線方向とは、主軸台4が、門型コラム5に対して移動可能な鉛直方向に直交する水平2軸方向のうちの残りの1軸方向に相当する。つまり、前述した主軸移動体3(第二移動体)と主軸台4(第二移動体)とによって、主軸台4が、門型コラム5に対して、鉛直方向に直交する水平2軸方向に移動可能とされる。
【0013】
一対のガイド部材41,41の間には、ボールネジ機構42を有するZ軸モータ43が備えられる。ボールネジ機構42は、主軸台4をZ軸線方向に移動させる。主軸台4には、回転可能に支持される主軸40及び主軸40をZ軸線回りで回転させるギヤ機構を有する主軸モータ44が内蔵される。主軸40の先端には、工作物Wを加工する回転工具T(他方に相当)が着脱可能に装着される。つまり、回転工具Tは、主軸40を介して主軸台4にZ軸線回りに回転可能に支持される。
【0014】
門型コラム5は、脚部材51,51及び脚部材51,51間に架け渡される架橋部材52を備える。脚部材51,51は、ベッド2上にそれぞれ鉛直方向に立設され、かつ左右方向(ベッド2の幅方向)に間隔を空けて配置される。脚部材51,51は、本発明の第一支柱及び第二支柱に相当する。脚部材51,51は、断面が四角状に形成される。脚部材51,51と架橋部材52とは、一体で形成してもよいし、別体の部材を連結して形成してもよい。また、架橋部材52はなくてもよい。
【0015】
また、
図4、及び
図4の部分拡大図である
図5に示すように、脚部材51,51は、脚部材51,51同士の対向面51c,51cの背面側に係合する本発明のサドルに相当する支柱サドル45(第一移動体を構成)を鉛直方向に案内する一対の鉛直方向案内機構50を備える。支柱サドル45は、L字形状の一方の辺である外側辺45a,45aと、他方の辺である前側延在部45c、45c(延在部に相当)と、一方の辺である外側辺45a,45aのZ軸方向のほぼ中央から、対向する脚部材51側に向かって突出し、ボールネジ62aと螺合するナット部45bを備える。ナット部45bは、後述するボールネジ機構62,62のナットを構成する。よって、ナット部45bには、メネジ45b1が形成され鉛直方向に貫通している。
【0016】
なお、支柱サドル45のナット部45bは、支柱サドル45のL字形状の部材(外側辺45a、前側延在部45c)と一体で形成されても、別体で形成されたのち固定されてもよい。
図1,
図2に示すように前側延在部45c、45c(延在部)は、工作物W(一方)が配置される側の脚部材51,51(第一支柱及び第二支柱)の対向面51c,51cに隣り合う面であり第二移動体から遠い側の面である第一面51e,51e側において、外側辺45a,45aの前側端部からそれぞれ対向する方向に向かって延在し形成される。
【0017】
工作物支持装置8は、テーブル6、チルト装置7及び一対のクレードル72,72を備える。工作物支持装置8は、工作物W(工作物Wと回転工具Tのうちの一方に相当する)をテーブル6上で支持しY軸線方向に移動可能とする装置である。テーブル6は、チルト装置7及び一対のクレードル72,72を介して一対の支柱サドル45,45の前側延在部45c、45cに間接的に取り付けられる(
図1,
図3参照)。チルト装置7は、
図1に示すようにチルト装置7a、7bの2体で形成される。一対のクレードル72,72は、チルト装置7a、7bの間でチルト装置7a、7bにA軸線回りに揺動可能に連結され、所定間隔をあけて対向配置される。
【0018】
また、チルト装置7a、7bは、それぞれ支柱サドル45,45の前側延在部45c、45cの前面45c1,45c1に固定される。そして、テーブル6が、対向配置されるクレードル72,72の各上面に亘って載置され、溶接やボルト連結等の所定の手段によりクレードル72,72に固定される(
図1参照)。このように、支柱サドル45,45とテーブル6とは別体で形成される。また、チルト装置7a、7bのいずれか一方には、クレードル72,72をA軸線回りで揺動させるギヤ機構を有するA軸モータ73が設けられる。これにより、工作物支持装置8(テーブル6等)は、支柱サドル45,45とともに、第一移動体を構成し、上述した一対の鉛直方向案内機構50によってY軸線方向(鉛直方向)への移動時に鉛直方向へ良好に案内される。
【0019】
また、
図1,
図2、
図4に示すように、脚部材51,51の対向面51c,51cの背面側には、工作物支持装置8(テーブル6等)、及び支柱サドル45,45をY軸線方向に移動させる前述した一対のボールネジ機構62,62がそれぞれ設けられる。一対のボールネジ機構62,62は、工作物支持装置8(テーブル6等)及び支柱サドル45,45を鉛直方向に移動させる第一移動体駆動機構である。門型コラム5の脚部材51,51の上端に対応する架橋部材52上の位置には、一対のボールネジ機構62,62を駆動させるY軸モータ63,63がそれぞれ備えられる。
【0020】
図4、
図5に示すように、一対のボールネジ機構62,62は、それぞれ支柱サドル45を構成するナット部45bと、ボールネジ62aと、を備え、支柱サドル45(第一移動体)と脚部材51との間に配置される。具体的には、一対のボールネジ機構62,62は、脚部材51,51の対向面51c,51cの背面側の各側面51a,51aに鉛直方向に形成される凹部51dに収容される。凹部51dは、脚部材51,51の各側面51a,51aにおいて、Z軸線方向(第一及び第二支柱の幅方向に相当)のほぼ中央部に鉛直方向に延設される凹溝である。そして、凹部51dに収容されたナット部45bのメネジ45b1にY軸モータ63,63に回転駆動されるボールネジ62aが図略のボールを介して螺合されることで構成される。
【0021】
図1、
図2の二点鎖線に示すように、制御装置10は、工作機械1の後方に設置される。制御装置10は、主軸モータ44の駆動を制御して、回転工具Tを回転させる。また、制御装置10は、X軸モータ33、Z軸モータ43、Y軸モータ63,63、及びA軸モータ73の各駆動を制御して、工作物Wと回転工具TとをX軸方向、Z軸方向、Y軸方向及びA軸回りに相対移動させる。制御装置10は、これらの制御により、加工領域P(
図4参照)に位置する工作物Wの切削加工を行なう。なお、加工領域Pとは、工作物Wの設置される領域と回転工具Tの移動する領域が重なる部分である。言い換えると、回転工具Tによって、工作物Wを加工する領域である。工作物Wの設置される領域は、設計上、想定する工作物Wの最大の大きさや形状であってもよいし、実際に設置する工作物Wの大きさ、形状であってもよい。また、回転工具Tの移動する領域は、回転工具Tの移動可能な設計上の最大の領域であってもよいし、実際の加工時に用いる移動範囲であってもよい。
【0022】
以降に説明する他の実施形態及び変形例も含めて、
図4、及び
図7~
図10に示す二点鎖線の範囲を加工領域(P,P1,P2)とする。なお、
図4、及び
図7~
図10では、工作物Wの位置は図示しない。第一実施形態の加工領域Pは、
図4に示すように、脚部材51,51(第一及び第二支柱)の間の範囲Ar1(斜線部)含み、さらに範囲Ar1からZ軸線方向両側に向かって所定量B、Cだけ拡張した部分を含む領域とする。なお、この加工領域Pは、任意に設定する。
【0023】
(2.鉛直方向案内機構50の詳細)
図4、
図5に基づき、一対の鉛直方向案内機構50について詳細に説明する。鉛直方向案内機構50は、通常、リニアガイドとも称される案内機構であり、機械の直線運動部を「ころがり」を用いてガイドする公知の機械要素機構である。鉛直方向案内機構50は、リニアガイドとして一般的に使用されるものであればどのようなものでもよく、特定のものには限定されない。また、鉛直方向案内機構として機能すれば、リニアガイド以外の案内機構を用いてもよい。本実施形態において、鉛直方向案内機構50は、脚部材51,51(第一支柱及び第二支柱)の対向面51c,51cの背面側の面である側面51a,51aと、支柱サドル45(第一移動体を構成)との間に設けられる。
【0024】
前述したように、脚部材51,51の側面51a,51aのZ軸線方向中央部には、ボールネジ機構62(第一移動体駆動機構)を収容する凹部51dが形成される。このため、側面51a,51aはそれぞれ前後二つの面に分割される。そして、鉛直方向案内機構50は、凹部51dの前後に形成される平面のうち前方の平面51a1側に設けられる。つまり、鉛直方向案内機構50は、主軸台4(第二移動体)が移動する水平2軸方向のうち、工作物支持装置8(第一移動体)によって支持される工作物W(一方)が配置される各脚部材51,51(第一及び第二支柱)の対向面51c,51cに隣り合う第一面51e,51e側の背面(第二面51f,51f)との間の距離が変化する方向(Z軸線方向)において、各脚部材51,51の幅Wdの中央より前方側(主軸台4(第二移動体)側の反対側)に設けられる。
【0025】
各鉛直方向案内機構50は、それぞれレール53と、レール53に嵌合する2個のガイドブロック54とを備える(
図1、
図2、
図6参照)。鉛直方向案内機構50は、レール53上をガイドブロック54がスライドすることで直線運動をガイドする。
図1、
図2、
図5に示すように、本実施形態では、レール53は、脚部材51,51の側面51a,51aのうち、前方の平面51a1,51a1に鉛直方向に延在して設けられる。
【0026】
2個のガイドブロック54は、支柱サドル45側に設けられる。2個のガイドブロック54は、脚部材51,51の平面51a1,51a1に対向する支柱サドル45の対向面45d,45dに設けられる。また、2個のガイドブロック54は、対向面45d,45dにおいて、レール53がY軸線(鉛直)方向で嵌合できるよう設けられる(
図4参照)。これにより、一対のレール53と一対の2個のガイドブロック54とが嵌合されると、支柱サドル45の2個のガイドブロック54がレール53に案内され、鉛直方向に移動可能となる。このとき、前述した加工領域Pと鉛直方向案内機構50との間には、脚部材51,51(第一及び第二支柱)が配置されている。即ち、鉛直方向案内機構50の任意の点と加工領域Pの任意の点との間を仮想の直線L1,L2でつなぐと、直線間には、脚部材51,51の一部が存在する(
図4、J部参照)。
【0027】
(3.作動)
次に、工作機械1の作動について簡単に説明する。前述したように、制御装置10は、主軸モータ44の駆動を制御して、回転工具Tを回転させる。また、X軸モータ33、Z軸モータ43、Y軸モータ63,63、及びA軸モータ73の各駆動を制御して、工作物Wの位置及び姿勢を制御する。これにより、制御装置10は、工作物Wと回転工具TとをX軸方向、Z軸方向、Y軸方向及びA軸回りに相対移動させ、工作物Wにクーラントをかけながら加工領域P(
図4参照)に位置する工作物Wの切削加工を行なう。
【0028】
従って、回転工具Tと工作物Wとが接触する加工点、及び回転工具T自身からはクーラント及び切粉が四方に飛散する。しかし、
図4に示すように本実施形態では、加工領域Pと鉛直方向案内機構50との間には、脚部材51,51(第一支柱及び第二支柱)が必ず配置される。これにより、加工領域Pから四方に飛散するクーラント及び切粉等は、脚部材51,51によって確実に遮られ、直接、鉛直方向案内機構50に到達することはない。よって、従来技術のように、クーラント及び切粉等が加工領域Pから鉛直方向案内機構に直接当たるよう飛散し、例えばレール53とガイドブロック54との間に入り込んで、両者の間の摺動面に傷をつけるような虞もない。
【0029】
(4.本実施形態による効果)
上記実施形態によれば、工作機械1は、ベッド2と、ベッド2にそれぞれ鉛直方向に立設され、かつ間隔を空けて配置される脚部材51,51(第一及び第二支柱)を備える門型コラム5と、工作物Wを支持し、脚部材51,51に鉛直方向に移動可能に設けられる支柱サドル45(第一移動体)と、回転工具Tを支持し、門型コラム5に対して鉛直方向に直交する水平2軸方向に移動可能に設けられる主軸台4(第二移動体)と、を備える。そして、脚部材51,51の対向面の背面側に、支柱サドル45を鉛直方向に案内する一対の鉛直方向案内機構50を備え、回転工具Tが工作物Wを加工する領域を加工領域Pと定義すると、鉛直方向案内機構50と加工領域Pとの間には、脚部材51,51(第一支柱及び第二支柱)が配置される。
【0030】
これにより、加工領域Pにおいて、回転工具Tが工作物Wを加工しても、加工領域Pから飛散するクーラントや切粉は、脚部材51,51(第一支柱及び第二支柱)に遮られて、鉛直方向案内機構50に直接かかることはない。従って、鉛直方向案内機構50の破損の虞は抑制され、鉛直方向案内機構50の寿命を向上させることができる。また、鉛直方向案内機構50が、門型コラム5の脚部材51,51の外側面に設けられる。これにより、鉛直方向案内機構50に外から近づく際に、作業者の手がコラムやテーブルに遮られないため、鉛直方向案内機構50に手が届きやすくなり、メンテナンス性が向上する。
【0031】
また、上記工作機械1では、第一移動体を構成するテーブル6(工作物支持装置8)によって工作物Wを支持し、第二移動体を構成する主軸40によって、回転工具Tを支持する。そして、テーブル6(工作物支持装置8)が支持する工作物Wは、脚部材51,51の対向面に隣り合う第一面51e、51eよりも第二移動体から遠い側の第一領域PA(
図3参照)に配置される。また、主軸40(第二移動体)は、脚部材51,51の間を通って、第一領域PA(
図3参照)に移動可能であり、第一領域PAで、回転工具Tにより工作物Wの加工を行なう。このような構成であるので、工作機械1では、第一領域PAにおいて、回転工具Tが工作物Wを加工しても、第一領域PAから飛散するクーラントや切粉が、脚部材51,51(第一支柱及び第二支柱)に遮られて、鉛直方向案内機構50に直接かかることを防止するのに適している。なお、工作物Wは、脚部材51,51(第一及び第二支柱)の間の第二領域PB(
図3参照)に配置されてもよい。これによっても同様の効果が得られる。
【0032】
また、上記実施形態によれば、工作機械1は、脚部材51,51(第一支柱及び第二支柱)の対向面51c,51cの背面側にて、支柱サドル45(第一移動体)との間に設けられ、支柱サドル45(第一移動体)を鉛直方向に移動させる一対のボールネジ機構62,62(第一移動体駆動機構)を備える。このため、ボールネジ機構62,62の設置スペースを小さくでき、省スペース化が図れる。
【0033】
また、テーブル6(第一移動体、工作物支持装置8)が工作物Wを支持する態様の上記実施形態によれば、工作物支持装置8によって支持される工作物Wは、脚部材51,51(第一支柱及び第二支柱)の対向面51c,51cに隣り合う第一面51e側に配置される。また、支柱サドル45(サドル)は、脚部材51,51(第一支柱及び第二支柱)の対向面の背面側に位置しL字形状の一方の辺である外側辺45a,45aと、脚部材51,51(第一支柱及び第二支柱)の第一面51e側に位置し、L字形状の他方の辺である前側延在部45c(延在部)を備える。そして、工作物支持装置8は、支柱サドル45の前側延在部45cに固定される。これにより、支柱サドル45と工作物支持装置8とが、別体で簡易、且つ低コストに製作できる。
【0034】
また、上記実施形態によれば、一対の鉛直方向案内機構50は、それぞれ門型コラム5の脚部材51,51(第一及び第二支柱)に設けられるレール53と、一対の支柱サドル45(第一移動体)に設けられるレール53に嵌合しレール53を案内するガイドブロック54と、を備え、ガイドブロック54は、1本のレール53に対して2個以上設けられる。これにより、一対の支柱サドル45(第一移動体)の鉛直方向の移動が安定して案内される。
【0035】
また、上記実施形態によれば、一対の鉛直方向案内機構50は、脚部材51,51(第一支柱及び第二支柱)の対向面51c,51cの背面側に設けられる。詳細には、主軸台4(第二移動体)が移動する水平2軸方向のうち、工作物W(一方)が配置される脚部材51,51(第一支柱及び第二支柱)の対向面51c,51cに隣り合う第一面51eの背面(第二面51f)との間の距離が変化する方向において、脚部材51,51の幅の中央より主軸台4(第二移動体)側の反対側に設けられる。これにより、工作物Wに対して、回転工具Tにより加工領域Pで加工が行なわれる際、工作物Wを支持する支柱サドル45(第一移動体)は、加工によって力を受ける点から、より近い位置で鉛直方向案内機構50により支持されるので、工作物Wの加工時に支柱サドル45に加わるモーメントは小さくなり、支柱サドル45の信頼性が向上するとともに工作物Wの加工精度が向上する。
【0036】
(5.他の実施形態)
<参考例1>
なお、上記実施形態では、鉛直方向案内機構50を、横型の工作機械(マシニングセンタ)に適用するものとして説明した。しかし、この態様には限らない。参考例1(図略)として、鉛直方向案内機構50を、縦型の工作機械に適用してもよい。この場合、第一実施形態の工作機械1との相違点は、第一移動体である主軸台用の主軸サドル145が、主軸台を介して回転工具Tを支持することである。このとき、回転工具Tは、回転工具T及び工作物Wのうちの一方に相当する。また、その他の相違点としては、テーブルが第二移動体として、工作物Wを支持することである。このとき、工作物Wが他方に相当する。
【0037】
そして、第一実施形態と同様に、脚部材51,51の対向面の背面側に、主軸台用の主軸サドル145(第一移動体)を鉛直方向に案内する一対の鉛直方向案内機構50を備える。回転工具Tが工作物Wを加工する領域を加工領域P1と定義すると、鉛直方向案内機構50と加工領域P1との間には、脚部材51,51(第一及び第二支柱)が配置される(
図7のL3,L4参照)。なお、
参考例1では、主軸台Sが門型コラム5に主軸サドル145を介して設けられるため、加工領域P1は
図7に示す範囲となる。そして、
参考例1によっても、上記第一実施形態と同様の効果が期待できる。なお、
図7は、第一実施形態における
図4に相当する図である。
【0038】
<第三実施形態>
また、第一
実施形態、及び参考例1では、鉛直方向案内機構50が、脚部材51,51(第一及び第二支柱)の対向面51c,51cの背面側のみに設けられた。しかし、この態様には限らない。第三実施形態として、第一実施形態
、及び参考例1に対し、第一移動体によって支持される工作物W及び回転工具Tの一方が配置される脚部材51,51(第一支柱及び第二支柱)の対向面51c,51cに隣り合う第一面51e側の背面(第二面51f)にも鉛直方向案内機構50を設けてもよい(
図8参照)。つまり、第三実施形態では、鉛直方向案内機構50は、第一支柱(脚部材51)と第二支柱(脚部材51)との対向面51c,51cの背面側に設けられるのに加え、第一支柱(脚部材51)及び第二支柱(脚部材51)における第一面51eの背面にさらに設けられている。
【0039】
なお、
図8では、代表として、第一実施形態を基礎とした態様について説明し、第二実施形態を基礎とした態様についての説明は省略する。そして、支柱サドル45のL字形状の一方の辺である外側辺45aの主軸台4側の端部に、
図8に示すような延在部である後側延在部45eを設け、この後側延在部45eと、脚部材51,51(第一及び第二支柱)の第二面51fとの間に鉛直方向案内機構50を設ければよい。なお、このとき、第一実施形態に対応する態様での加工領域は
図8に示す加工領域P2となる。これにより、より安定した鉛直方向への案内が鉛直方向案内機構50により得られる。
【0040】
<第四実施形態>
また、第四実施形態として、第一実施形態に対し、
図9に示すように、工作機械1に、加工領域Pと加工領域Pの外側領域とを区切るカバー47を備えてもよい。これにより、鉛直方向案内機構50は、加工領域Pから飛散するクーラント及び切粉等から更に効果的に保護される。なお、
図9には図示しないが、
参考例1、第三実施形態についても同様に適用できる。
【0041】
(6.実施形態の変形例)
また、上記第一
実施形態、参考例1、第三実施形態、及び第四実施形態の変形例1として、
図10に示すように、鉛直方向案内機構50を、凹部51dの前方の平面51a1だけでなく、後方の平面51a2に設けてもよい。これにより、鉛直方向案内機構50による、より安定した案内状態が得られる。なお、
図10では、第一実施形態に対する変形例のみ代表として示している。
【0042】
また、上記第一、第三、第四実施形態では、工作物支持装置8を構成するテーブル6と、支柱サドル45とが、別体で形成された。しかし、この態様には限らない。変形例2として、支柱サドル45とテーブル6とは一体で形成されてもよい(図略)。このとき、工作物支持装置8を構成するチルト装置7は設けない。これによっても、支柱サドル45とテーブル6とが低コストで形成されない以外には、上記第一、第三、第四実施形態と同様の効果が得られる。
【0043】
また、上記第一実施形態、参考例1、第三実施形態、及び第四実施形態では、2個のガイドブロック54が、支柱サドル45の対向面45d,45dに設けられ、レール53が、脚部材51,51の対向面の背面である側面51a,51aに設けられた。しかし、この態様には限らない。変形例3として、2個のガイドブロック54が、脚部材51,51の側面51a,51aに設けられ、レール53が、支柱サドル45の対向面45d,45dに設けられてもよい。ただし、この場合、レール53側の部材(支柱サドル45)が鉛直方向に移動するので、レール53がガイドブロック54から離脱しないよう注意が必要である。これによっても同様の効果が得られる。
【0044】
また、上記第一実施形態、参考例1、第三実施形態、及び第四実施形態では、ガイドブロック54が、1本のレール53に対して2個設けられた。しかし、ガイドブロック54は、1個でもよいし、2個を超えて設けられてもよい。
【0045】
また、上記第一実施形態、参考例1、第三実施形態、及び第四実施形態では、支柱サドル45、主軸サドル145(ともに第一移動体)を鉛直方向に移動させる第一移動体駆動機構は、一対のボールネジ機構62,62であるとして説明した。しかし、この態様には限らない。支柱サドル45を鉛直方向に移動させることができれば、第一移動体駆動機構は、リニアモータを利用した機構でもよい。また、その他のどのような機構のものでもよい。
【0046】
また、上記第一実施形態、参考例1、第三実施形態、及び第四実施形態では、脚部材51,51は、軸線方向と直交する断面形状が、4角状である態様を示した。しかし、この態様には限らない。加工領域Pにおいて、回転工具Tが工作物Wを加工しても、加工領域Pから飛散するクーラントや切粉が、脚部材によって遮られ、鉛直方向案内機構50に直接かかることを防止可能であれば、脚部材はどのような形状でもよい。例えば、脚部材の対向面の背面側が段差または傾斜を有し、当該段差または傾斜に鉛直方向案内機構50を設けてもよい。これによっても、相応の効果が得られる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・工作機械、 2・・・ベッド、 3・・・主軸移動体(第二移動体)、 4・・・主軸台(第二移動体)、 5・・・門型コラム、 6・・・テーブル(第一移動体、工作物支持装置)、 8・・・工作物支持装置、 44・・・主軸モータ、 45・・・支柱サドル(第一移動体)、 45b・・・ナット部、 45c・・・前側延在部(延在部)、 45d・・・対向面、 45c1・・・前面、 45e・・後側延在部、 47・・・カバー、 50・・・鉛直方向案内機構、 51・・・脚部材(第一支柱、第二支柱)、 51a・・・側面、 51a1,51a2・・・平面、 51c・・・対向面、 51d・・・凹部、 51e・・・第一面、 51f・・・第二面(背面)、 53・・・レール、 54・・・ガイドブロック、 62・・・ボールネジ機構(第一移動体駆動機構)、 145・・・主軸サドル(第一移動体)、 P、P1、P2・・・加工領域、 PA・・・第一領域、 PB・・・第二領域、 T・・・回転工具、 W・・・工作物。