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特許7061435地盤変動観測装置及び地盤変動観測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】地盤変動観測装置及び地盤変動観測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/90 20060101AFI20220421BHJP
   G01D 21/00 20060101ALI20220421BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20220421BHJP
   E21D 9/00 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
G01S13/90 191
G01S13/90 127
G01D21/00 D
G01C15/00 104Z
E21D9/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017107445
(22)【出願日】2017-05-31
(65)【公開番号】P2018205006
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【弁理士】
【氏名又は名称】在原 元司
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 善一
(72)【発明者】
【氏名】矢尾板 啓
(72)【発明者】
【氏名】石岡 義則
(72)【発明者】
【氏名】草野 駿一
(72)【発明者】
【氏名】三五 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宮田 岩往
(72)【発明者】
【氏名】村中 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】橘高 豊明
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-533744(JP,A)
【文献】特開2008-164481(JP,A)
【文献】特開平07-199804(JP,A)
【文献】特開2007-284903(JP,A)
【文献】国際公開第2008/016153(WO,A1)
【文献】特開2016-161286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S13/00-13/95
G01C15/00
E21D 9/00- 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星により観測したデータを取得する衛星データ取得手段と、
前記観測したデータに基づき地盤変位量を計算する地盤変位量計算手段と、
前記地盤変位量を取得時刻とともに格納する地盤変位量格納手段と、
地盤に対する人為的作用に関する情報を取得する作用取得手段と、
前記人為的作用が行われた場所において、前記人為的作用が行われた時刻を含む任意の時間範囲における前記地盤変位量の経時変化を、前記地盤変位量の大きさや前記人為的作用の種類に基づき地盤変位を表すメッシュ図またはコンター図のいずれか一方または両方により出力する変化出力手段と、
前記変化出力手段が出力した前記地盤変位量の経時変化を2次元地図または航空写真に重畳して表示する表示制御手段と、
を備える地盤変動観測装置。
【請求項2】
前記地盤変位量は、予め決定した、ノイズに起因する変位量が除去されている、請求項1に記載の地盤変動観測装置。
【請求項3】
衛星により観測したデータを取得する衛星データ取得手段と、
前記観測したデータに基づき地盤変位量を計算する地盤変位量計算手段と、
前記地盤変位量から人為的作用によっては生じえない方向への変位量を除去するノイズ除去手段と、
前記ノイズ除去した地盤変位量を取得時刻とともに格納する地盤変位量格納手段と、
地盤に対する人為的作用に関する情報を取得する作用取得手段と、
前記人為的作用が行われた場所において、前記人為的作用が行われた時刻を含む任意の 時間範囲における前記地盤変位量の経時変化を出力する変化出力手段と、
前記変化出力手段が出力した前記地盤変位量の経時変化を2次元地図または航空写真に 重畳して表示する表示制御手段と、
を備える地盤変動観測装置。
【請求項4】
前記観測したデータは、合成開口レーダー(SAR)を用いた干渉SAR解析により取得した情報である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の地盤変動観測装置。
【請求項5】
前記人為的作用に関する情報は、前記人為的作用が行われる時刻及び場所に関する情報である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の地盤変動観測装置。
【請求項6】
前記変化出力手段は、地盤変位を表すメッシュ図またはコンター図のいずれか一方または両方を出力する、請求項3または請求項4に記載の地盤変動観測装置。
【請求項7】
コンピュータを、
衛星により観測したデータを取得する衛星データ取得手段、
前記観測したデータに基づき地盤変位量を計算する地盤変位量計算手段、
前記地盤変位量を取得時刻とともに格納する地盤変位量格納手段、
地盤に対する人為的作用に関する情報を取得する作用取得手段、
前記人為的作用が行われた場所において、前記人為的作用が行われた時刻を含む任意の時間範囲における前記地盤変位量の経時変化を、前記地盤変位量の大きさや前記人為的作用の種類に基づき地盤変位を表すメッシュ図またはコンター図のいずれか一方または両方により出力する変化出力手段、
前記変化出力手段が出力した前記地盤変位量の経時変化を2次元地図または航空写真に重畳して表示する表示制御手段、
として機能させることを特徴とする地盤変動観測プログラム。
【請求項8】
コンピュータを、
衛星により観測したデータを取得する衛星データ取得手段、
前記観測したデータに基づき地盤変位量を計算する地盤変位量計算手段、
前記地盤変位量から人為的作用によっては生じえない方向への変位量を除去するノイズ除去手段、
前記ノイズ除去した地盤変位量を取得時刻とともに格納する地盤変位量格納手段、
地盤に対する人為的作用に関する情報を取得する作用取得手段、
前記人為的作用が行われた場所において、前記人為的作用が行われた時刻を含む任意の 時間範囲における前記地盤変位量の経時変化を出力する変化出力手段、
前記変化出力手段が出力した前記地盤変位量の経時変化を2次元地図または航空写真に 重畳して表示する表示制御手段、
として機能させることを特徴とする地盤変動観測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤変動観測装置及び地盤変動観測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事、地盤の沈降対策として行われるジャッキアップ等、地盤に対して何らかの人為的作用を及ぼした場合、地盤沈下または地盤隆起等の地盤変動が生じることが多い。このような地盤変動を観測することは、工事管理上等の要請において重要である。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、シールド機による施工において、施工地点の地上での地盤沈下が予想される地点を正確に把握するために、地上にいる作業員が、リアルタイムで、自身と地中のシールド機や切羽との位置関係を容易かつ明確に把握することが可能な地上作業員へのシールド機の切羽位置可視化システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-77297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、地盤沈下の計測を、地上作業員が行っているので、計測地点の数、計測回数等に限界がある。また、例えば私人の敷地等では、このような計測ができない可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、地盤に対して何らかの人為的作用を及ぼす場合に、衛星により比較的広い範囲を観測し、人為的作用の地盤への影響を経時的に把握でき、人間による計測を補完できる地盤変動観測装置及び地盤変動観測プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、地盤変動観測装置であって、衛星により観測したデータを取得する衛星データ取得手段と、前記観測したデータに基づき地盤変位量を計算する地盤変位量計算手段と、前記地盤変位量を取得時刻とともに格納する地盤変位量格納手段と、地盤に対する人為的作用に関する情報を取得する作用取得手段と、前記人為的作用が行われた場所において、前記人為的作用が行われた時刻を含む任意の時間範囲における前記地盤変位量の経時変化を出力する変化出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記観測したデータは、合成開口レーダー(SAR)を用いた干渉SAR解析により取得した情報であるのが好適である。
【0009】
また、上記地盤変位量は、予め決定した、ノイズに起因する変位量が除去されているのが好適である。
【0010】
また、上記人為的作用に関する情報は、前記人為的作用が行われる時刻及び場所に関する情報であるのが好適である。
【0011】
また、上記変化出力手段は、地盤変位を表すメッシュ図またはコンター図のいずれか一方または両方を出力するのが好適である。
【0012】
また、本発明の他の実施形態は、地盤変動観測プログラムであって、コンピュータを、衛星により観測したデータを取得する衛星データ取得手段と前記観測したデータに基づき地盤変位量を計算する地盤変位量計算手段、前記地盤変位量を取得時刻とともに格納する地盤変位量格納手段、地盤に対する人為的作用に関する情報を取得する作用取得手段、前記人為的作用が行われた場所において、前記人為的作用が行われた時刻を含む任意の時間範囲における前記地盤変位量の経時変化を出力する変化出力手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地盤に対して何らかの人為的作用を及ぼす場合に、衛星により比較的広い範囲を観測し、人為的作用の地盤への影響を経時的に把握でき、人間による計測を補完できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態にかかる地盤変動観測装置を含んだ地盤変動の観測システムの構成例を示す図である。
図2】実施形態にかかる地盤変動観測装置の構成例のブロック図である。
図3】実施形態にかかる表示制御部が表示したメッシュ図の例を示す図である。
図4】実施形態にかかる表示制御部が表示したコンター図の例を示す図である。
図5】実施形態にかかる地盤変動観測装置の動作例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0016】
図1には、実施形態にかかる地盤変動観測装置を含んだ地盤変動の観測システムの構成例が示される。図1では、トンネル工事が地盤に対する人為的作用として例示されているが、本発明はこれに限定されず、地盤沈下または地盤隆起等の地盤変動を生じさせる人為的作用であれば、いずれも適用できる。
【0017】
図1の例では、トンネル工事に使用されるシールド掘進機100の切羽の位置に対応する地上の位置及びその周辺の地盤の高さを衛星等に備えられた合成開口レーダー(synthetic aperture radar:SAR)102により計測し、干渉SAR解析により地盤変位量(地表面の高さの変動)を求める。なお、上記切羽の位置は、例えば予め決定された工事計画から決定してもよいし、上記特許文献1に記載された方法等で決定してもよい。
【0018】
図1において、SAR102による計測を開始するタイミングとしては、例えば周回周期が11日の衛星の場合、上記工事前(約15回以上計測できる期間で、計画で当該地域が工事対象となる約半年前)とする。この工事開始前の計測により、あらかじめ合成開口レーダー102にて、正確に計測することができる位置からのデータを特定する。工事開始後、衛星の周回周期(例えば11日)毎に当該位置のデータを用いて計測する。当該位置のデータを用いることにより、データの精度の高い計測が可能となる。
【0019】
SAR102により計測された地表面の高さの情報は、地盤変動観測システムに含まれる地盤変動観測装置104に送信される。地盤変動観測装置104では、工事の進捗等の人為的作用に基づく地盤変動の経時変化等を求め、出力する。
【0020】
図2には、地盤変動観測装置104の構成例のブロック図が示される。図2において、地盤変動観測装置104は、衛星データ取得部10、地盤変位量計算部11、ノイズ除去部12、地盤変位量格納部14、作用取得部16、変化出力部18、表示制御部20、通信部22、記憶部24及びCPU26を含んで構成されている。なお、CPU26以外にGPUを用いてもよい。この地盤変動観測装置104は、CPU26、ROM、RAM、不揮発性メモリ、I/O、通信インターフェース等を備え、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されており、上記各機能は、例えばCPU26とCPU26の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
【0021】
衛星データ取得部10は、衛星に搭載したSAR102等が計測したデータを図示しない地上局を経由し、通信部22から受信することにより、取得する。
【0022】
地盤変位量計算部11は、衛星データ取得部10にて取得したデータから地盤の変位量を計算する。地盤変位量計算部11は、例えば衛星データ取得部10から取得したデータの前回計測したデータと今回計測したデータを比較計算することで、地盤変位量を算出する。なお、SAR102等が計測したデータおよび地盤変位量計算部11が算出した変位量は、計測した地表面上の位置の座標情報を有している。このため、算出した変位量と地表面上の位置の座標情報から、変位量が増大または減少している方向を求めることもできる。
【0023】
ノイズ除去部12は、予め決定した、ノイズに起因する変位量を地盤変位量計算部11が算出した地盤変位量から除去する。ここで、ノイズに起因する変位量とは、天候、測定装置の誤差、SAR102等を搭載した衛星の軌道のずれ等に基づく計測誤差である。このような計測誤差は可能な限り低減しておく。低減しきれないノイズについて、次に示すしきい値処理および表示する際の中央値や平均値計算を用いることで、除去する。上記しきい値処理としては、例えば以下のような処理である。すなわち、ノイズ除去部12が、予め記憶部24に記憶された、上記決定されたノイズに起因する変位量を読み出し、地盤変位量計算部11が算出した地盤変位量がノイズに起因する変位量より小さい場合あるいは大きい場合には、地盤変位量をデータ無し(NoData)とする。ノイズに起因する変位量αより小さい場合(<α)にデータ無しとするか、大きい場合(>α)にデータ無しとするかは、ノイズの種類等により適宜決定する。また、ノイズに起因する変位量を二つ(α、β(α<β))決定し、αより小さいか、βより大きい場合(<α、β<)、あるいはαとβとの間(α≦、≦β)の場合にデータ無しとすることもできる。更に、人為的作用によっては生じえない方向への変位量の増大または減少がみられた場合には、これをノイズに起因する変位と判断し、データ無しとしてもよい。
【0024】
地盤変位量格納部14は、衛星データ取得部10が取得したデータと地盤変位量計算部11が算出した地盤変位量を取得時刻とともに(取得時刻と関連付けて)記憶部24に記憶して格納する。この場合の取得時刻は、SAR102等が地表面を観測したときの観測時刻である。また、地盤変位量は、ノイズ除去部12が上記ノイズに起因する変位量を除去した後の地盤変位量とするのが好適である。
【0025】
作用取得部16は、地盤に対する人為的作用に関する情報を取得する。地盤に対する人為的作用とは、上述したように、地盤沈下または地盤隆起等の地盤変動を生じさせる原因となる人為的行為であるが、例えばトンネル工事等の地下の掘削工事、地盤の沈下対策として行われるジャッキアップ、埋め立て工事、大規模施設の建設工事等が例示される。また、地盤に対する人為的作用に関する情報とは、上記人為的作用の種類及び人為的作用が行われる時刻及び場所に関する情報である。地盤に対する人為的作用の種類及び人為的作用が行われる時刻及び場所に関する情報は、工事計画等から取得することができる。具体的には、工事計画に基づき、使用者がキーボードその他の適宜な入力装置から地盤変動観測装置104に入力してもよいし、他のコンピュータ等から送信し、通信部22によって受信させ、作用取得部16に渡す構成としてもよい。取得した地盤に対する人為的作用に関する情報は、記憶部24に記憶させる。
【0026】
変化出力部18は、作用取得部16が取得した地盤に対する人為的作用に関する情報を記憶部24から読み出し、人為的作用の種類(工事の内容等)及びこれが行われる時刻及び場所に関する情報を抽出する。また、変化出力部18は、地盤変位量格納部14が記憶部24に記憶させた、取得時刻と関連付けられた地盤変位量を記憶部24から読み出す。次に、変化出力部18は、上記人為的作用が行われた場所を含む予め定めた範囲の領域における上記地盤変位量を抽出する。上述した通り、地盤変位量には、これを計測した地表面上の位置の座標情報も含まれているので、この座標情報を使用して人為的作用が行われた場所を含む予め定めた範囲の領域における上記地盤変位量を抽出することができる。変化出力部18は、上記人為的作用が行われた時刻を含む任意の時間範囲における上記抽出した地盤変位量の経時変化を出力する。上述したとおり、地盤変位量は取得時刻と関連付けられているので、この取得時刻を使用して経時変化を求めることができる。
【0027】
変化出力部18が地盤変位量の経時変化を出力する形式としては、例えば地盤変位を表すメッシュ図またはコンター図等が挙げられる。メッシュ図は、地表面上をメッシュに区分し、各メッシュ内で計測した地盤変位量の中央値を当該メッシュにおける地盤変位量とし、当該地盤変位量(中央値)に基づきメッシュを着色すること等により地盤変位量を表すものである。なお、中央値の代わりに平均値を用いることもできる。また、コンター図は、地盤変位量に応じて等高線(地盤変位量が同じ地点を結んだ等高線)を発生し、この等高線で地盤変位量を表すものである。メッシュ図、コンター図等は、観測対象となっている地域の2次元地図や航空写真等に重畳して表示するのが好適である。
【0028】
変化出力部18は、地盤変位を表すメッシュ図またはコンター図のいずれか一方または両方を出力する。どの形式で出力するかは、予め使用者が指定してもよいし、記憶部24から読み出した地盤変位量の大きさや人為的作用の種類により変化出力部18が決定する構成としてもよい。
【0029】
表示制御部20は、液晶表示素子その他の適宜な表示装置を制御して、上記変化出力部18が出力したメッシュ図またはコンター図等を表示する。上述した通り、メッシュ図またはコンター図は、2次元地図や航空写真等に重畳して表示するのが好適である。
【0030】
通信部22は、適宜なインターフェースにより構成され、無線または有線の通信回線を介してCPU26が外部のサーバー等とデータをやり取りするために使用する。例えば、上記SAR102等を搭載した衛星からの観測値の受信も通信部22が行う。
【0031】
記憶部24は、ハードディスク装置、ソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリで構成され、上記各種情報等、及びCPU26の動作プログラム等の、地盤変動観測装置104が行う各処理に必要な情報を記憶させる。これらの情報には、上記地盤変位量格納部14が取得時刻と関連付けて記憶させる地盤変位量も含まれる。なお、記憶部24としては、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書き換え可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。また、記憶部24には、主としてCPU26の作業領域として機能するランダムアクセスメモリ(RAM)、及びBIOS等の制御プログラムその他のCPU26が使用するデータが格納される読み出し専用メモリ(ROM)を含めるのが好適である。
【0032】
図3(a)~(d)には、表示制御部20が表示したメッシュ図の例が示される。図3(a)~(d)の例は、人為的作用として地下でトンネル工事が行われている場合に、工事の切羽(先頭部分)Tの進行に伴って、地盤沈下が一定の値(例えば1mm)を超えたメッシュを黒色で示したものである。なお、地盤沈下の値は、各メッシュ内の計測値の中央値である。
【0033】
トンネル工事は、図3(a)、図3(b)、図3(c)、図3(d)の順に進行しており、図3(a)~(d)には、工事の進行と共に、1mmを超える地盤沈下が生じたメッシュの状況の経時変化が示されている。
【0034】
なお、図3(a)~(d)の例では、地盤沈下(の中央値)が1mmを超えたメッシュが示されているが、これには限定されず、地盤沈下の値は任意の数値とすることができる。また、メッシュの表示を複数の色で行えば、複数の地盤沈下の値について表現することができる。
【0035】
図4(a)~(d)には、表示制御部20が表示したコンター図の例が示される。図4(a)~(d)では、人為的作用として地下でトンネル工事が行われている場合の地盤沈下が等高線で示されている。等高線は、工事の切羽(先頭部分)Tの進行に伴って、地盤沈下が一定の値(例えば5mm)となった地点を結んだものである。
【0036】
図4(a)~(d)の例でも、トンネル工事は図4(a)、図4(b)、図4(c)、図4(d)の順に進行しており、図4(a)~(d)には、工事の進行と共に、5mmの地盤沈下が生じた等高線の状況の経時変化が示されている。なお、図4(c)及び図4(d)では、等高線が2本描かれているが、内部の等高線の方が地盤沈下の値が大きい(例えば10mm)ことを意味している。また、等高線の数は任意に設定でき、目的に応じて等高線のきざみ(高さの間隔)を適宜設定することができる。また、等高線の表示を複数の色で行えば、複数の地盤沈下の値について表現することができる。
【0037】
なお、図3(a)~(d)ではメッシュ図のみが、図4(a)~(d)ではコンター図のみが表示されているが、対応する地域の2次元地図や航空写真等に重畳して表示することもできる。
【0038】
図5には、実施形態にかかる地盤変動観測装置104の動作例のフロー図が示される。図5において、衛星により観測したデータを、SAR102等を搭載した衛星から通信部22が受信し、地盤変位量計算部11がこのデータから地盤変位量を算出することにより取得する(S1)。なお、SAR102等が計測した複数時期のデータから地盤変位量計算部11が異なる2時点におけるデータを抽出し、地盤変位量を算出する。
【0039】
ノイズ除去部12は、上述したノイズに起因する変位量を地盤変位量計算部11が算出した地盤変位量から除去する(S2)。
【0040】
地盤変位量格納部14は、上記S2でノイズが除去された地盤変位量を、当該地盤変位量の取得時刻(SAR102等による計測時刻)と関連づけて記憶部24に格納する(S3)。
【0041】
変化出力部18は、上記作用取得部16が取得した人為的作用に関する情報及び取得時刻と関連付けられた地盤変位量を記憶部24から読み出し、人為的作用が行われた場所を含む予め定めた範囲の領域において、上記人為的作用が行われた時刻を含む任意の時間範囲における上記地盤変位量の経時変化をメッシュ図またはコンター図として出力する(S4)。
【0042】
表示制御部20は、変化出力部18が出力したメッシュ図またはコンター図を適宜な表示画面に表示する(S5)。この場合、メッシュ図またはコンター図は、2次元地図や航空写真等に重畳して表示するのが好適である。
【0043】
上述した、図5の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供しても良い。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明として捉えても良い。
【符号の説明】
【0044】
10 衛星データ取得部、11 地盤変位量計算部、12 ノイズ除去部、14 地盤変位量格納部、16 作用取得部、18 変化出力部、20 表示制御部、22 通信部、24 記憶部、26 CPU、100 シールド掘進機、102 SAR、104 地盤変動観測装置。

図1
図2
図3
図4
図5