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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】油圧シリンダ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/28 20060101AFI20220421BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
F15B15/28 J
F15B15/28 F
F15B15/28 L
G01B7/00 101M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017154638
(22)【出願日】2017-08-09
(65)【公開番号】P2019032066
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-02-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 佳介
(72)【発明者】
【氏名】磯部 大策
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】窪田 治彦
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-507456(JP,A)
【文献】国際公開第2014/049751(WO,A1)
【文献】特開2006-220621(JP,A)
【文献】実開平4-58604(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B15/28
G01B7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブと、
前記シリンダチューブの内部空間において前記シリンダチューブの中心軸と平行な軸方向に移動可能であり、前記内部空間をボトム室とヘッド室とに区画するピストンと、
前記ピストンに連結され、前記ボトム室に面する先端面を有するロッドと、
前記軸方向において前記ピストンよりも前記ボトム室側に配置され、前記ピストンに固定され、前記ボトム室側を向く端面を有する磁石と、
前記シリンダチューブの外側に配置され、前記ピストンの移動により変化する磁界を検出する磁気センサと、
前記軸方向における原点からの前記ピストンの移動量を検出するストロークセンサと、を備え、
前記磁石は、前記ピストンの端面から突出する前記ロッドの側面の周囲の少なくとも一部に配置され、前記ロッドの先端面は、前記磁石の端面よりも前記ボトム室側に突出
前記磁気センサの出力信号に基づいて前記原点が初期化される、
油圧シリンダ。
【請求項2】
前記ボトム室に面する前記ロッドの先端面は、前記ボトム室側を向く前記ピストンの端面よりも前記ボトム室側に突出する、
請求項1に記載の油圧シリンダ。
【請求項3】
前記ボトム室と接続される作動油ポートを備え、
前記ボトム室に面する前記作動油ポートの開口は、前記シリンダチューブの中心軸の径方向において前記ロッドの先端面とは異なる位置に配置される、
請求項1又は請求項2に記載の油圧シリンダ。
【請求項4】
前記磁石の磁極は、前記軸方向に配置され、
前記軸方向において前記磁石よりも前記ボトム室側に配置され、前記磁石を固定する第1磁性部材を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の油圧シリンダ。
【請求項5】
前記軸方向において前記磁石よりも前記ヘッド室側に配置され、前記磁石を固定する第2磁性部材を備える、
請求項4に記載の油圧シリンダ。
【請求項6】
前記第2磁性部材は、前記ピストンを含む、
請求項5に記載の油圧シリンダ。
【請求項7】
前記第2磁性部材は、前記軸方向において前記ピストンと前記磁石との間に配置される、
請求項5に記載の油圧シリンダ。
【請求項8】
前記第2磁性部材は、前記ピストンよりも強磁性である、
請求項7に記載の油圧シリンダ。
【請求項9】
前記磁石の磁極は、前記中心軸の径方向に配置され、
前記磁気センサは、前記軸方向に2つ配置される、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の油圧シリンダ。
【請求項10】
前記シリンダチューブの外部空間において、前記中心軸の径方向において前記磁気センサよりも外側に配置される第1部分と前記軸方向において前記磁気センサよりも前記ボトム室側に延在する第2部分とを含む第3磁性部材を備える、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の油圧シリンダ。
【請求項11】
前記第3磁性部材は、前記軸方向において前記磁気センサよりも前記ボトム室側に配置される第1端部と前記磁気センサよりも前記ヘッド室側に配置される第2端部とを有し、
前記軸方向において、前記磁気センサと前記第2端部との距離は前記磁気センサと前記第1端部との距離よりも短い、
請求項10に記載の油圧シリンダ。
【請求項12】
前記第3磁性部材は、前記磁気センサを保持し、前記シリンダチューブに固定される、
請求項11に記載の油圧シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械は、作業機と、作業機を作動させるために伸縮する油圧シリンダとを備える。情報化施工を実施するICT(Information and Communication Technology)建設機械においては、特許文献1に開示されているような伸縮量の検出機能を有する油圧シリンダが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-074691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
伸縮量の検出機能を有する油圧シリンダは、ピストンに固定される磁石と、原点からのピストンの移動量を検出するストロークセンサと、ピストンの移動により変化する磁界を検出する磁気センサとを備える。磁気センサの出力信号に基づいて、ストロークセンサの原点が初期化される。一般に、磁石は脆いため、高負荷が作用すると破損する可能性がある。そのため、高負荷が作用する場面で磁石を使用する場合、伸縮量の検出機能の低下を抑制するためには、磁石が配置される位置を配慮する必要がある。
【0005】
本発明の態様は、伸縮量の検出性能の低下を抑制できる油圧シリンダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、シリンダチューブと、前記シリンダチューブの内部空間において前記シリンダチューブの軸方向に移動可能であり、前記内部空間をボトム室とヘッド室とに区画するピストンと、前記ピストンに連結されるロッドと、前記軸方向において前記ピストンよりも前記ボトム室側に配置され、前記ピストンに固定される磁石と、前記シリンダチューブの外側に配置され、前記ピストンの移動により変化する磁界を検出する磁気センサと、を備える油圧シリンダが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、伸縮量の検出性能の低下を抑制できる油圧シリンダが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る油圧シリンダの一例を示す側断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る油圧シリンダの一部を示す分解斜視図である。
図3図3は、第1実施形態に係る油圧シリンダの動作の一例を示す図である。
図4図4は、第1実施形態に係る油圧シリンダの動作の一例を示す図である。
図5図5は、第1実施形態に係る磁気センサの作用の一例を説明するための模式図である。
図6図6は、第1実施形態に係る磁気センサの出力信号の一例を示す図である。
図7図7は、第2実施形態に係る油圧シリンダの一例を示す側断面図である。
図8図8は、第2実施形態に係る磁気センサの作用の一例を説明するための模式図である。
図9図9は、第2実施形態に係る磁気センサの作用の一例を説明するための模式図である。
図10図10は、第3実施形態に係る油圧シリンダの一例を示す側断面図である。
図11図11は、第3実施形態に係る磁気センサの出力信号の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
第1実施形態.
[油圧シリンダの構造]
図1は、本実施形態に係る油圧シリンダ1の一例を示す側断面図である。図2は、本実施形態に係る油圧シリンダ1の一部を示す分解斜視図である。図1及び図2に示すように、油圧シリンダ1は、ボトム2を有するシリンダチューブ4と、シリンダチューブ4の軸方向においてシリンダチューブ4のボトム2とは反対側の端面に配置されるシリンダヘッド3と、シリンダチューブ4の内部空間において軸方向に移動可能であり、シリンダチューブ4の内部空間をボトム室5とヘッド室6とに区画するピストン7と、ピストン7に連結されるロッド8と、軸方向においてピストン7よりもボトム室5側に配置され、ピストン7に固定される磁石9と、シリンダチューブ4の外側に配置され、ピストン7の移動により変化する磁界を検出する磁気センサ10と、を備える。
【0011】
また、油圧シリンダ1は、磁石9の磁極が軸方向に配置されるように磁石9を保持する磁石ホルダ部材12と、軸方向において磁石9よりもボトム室5側に配置され、磁石9を固定するリテーナ部材11と、シリンダチューブ4の外部空間において、磁気センサ10を保持するセンサホルダ部材13と、を備える。
【0012】
シリンダチューブ4、ピストン7、ロッド8、リテーナ部材11、及びセンサホルダ部材13のそれぞれは、磁性部材である。磁性部材とは、磁気を帯びることができる材料によって形成された部材をいう。本実施形態において、シリンダチューブ4、ピストン7、ロッド8、リテーナ部材11、及びセンサホルダ部材13のそれぞれは、例えば炭素鋼製である。
【0013】
本実施形態において、リテーナ部材11は、軸方向において磁石9よりもボトム室5側に配置され、磁石9を固定する第1磁性部材として機能する。ピストン7は、軸方向において磁石9よりもヘッド室6側に配置され、磁石9を固定する第2磁性部材として機能する。センサホルダ部材13は、シリンダチューブ4の外部空間において、シリンダチューブ4の中心軸AXの径方向において磁気センサ10よりも外側に配置される第1部分13Aと軸方向において磁気センサ10よりもボトム室5側に延在する第2部分13Bとを含む第3磁性部材として機能する。なお、軸方向とは、シリンダチューブ4の中心軸AXと平行な方向をいう。径方向とは、シリンダチューブ4の中心軸AXの放射方向をいう。
【0014】
シリンダチューブ4は、円筒状部材である。軸方向において、シリンダチューブ4の一端部にボトム2が設けられ、シリンダチューブ4の他端部にシリンダヘッド3が設けられる。シリンダヘッド3は、シリンダチューブ4に固定される。シリンダチューブ4は、ピストン7を移動可能に支持する。シリンダヘッド3は、ロッド8を移動可能に支持する。
【0015】
ピストン7は、シリンダチューブ4の内部空間において軸方向に移動可能である。ピストン7は、ロッド8の周囲に配置される円環状部材である。ピストン7は、ロッド8に固定される。ピストン7は、シリンダチューブ4の内面に摺動可能に支持される。ピストン7は、ボトム室5側を向き、中心軸AXと直交する端面7Aと、ヘッド室6側を向き、中心軸AXと直交する端面7Bとを有する。
【0016】
ロッド8は、シリンダチューブ4の内部空間において軸方向に移動可能である。ロッド8は、ピストン7に固定される。ロッド8は、シリンダヘッド3の内面に摺動可能に支持される。ロッド8は、ボトム室5側を向き、中心軸AXと直交する先端面8Sと、中心軸AXの周囲に配置される側面8Tとを有する。本実施形態において、ピストン7の内周面にねじ溝が形成され、ロッド8の側面8Tの一部にねじ山が形成されている。ロッド8にピストン7をねじ込むことによって、ピストン7とロッド8とが固定される。
【0017】
ロッド8の先端面8Sは、ボトム室5に面する。軸方向においてピストン7よりもヘッド室6側のロッド8の側面8Tは、ヘッド室6に面する。ボトム室5に面するロッド8の先端面8Sは、ボトム室5側を向くピストン7の端面7Aよりもボトム室5側に突出する。
【0018】
磁石9は、永久磁石である。本実施形態において、磁石9は、例えばネオジウム磁石である。磁石9は、中心軸AXを中心とする周方向において、シリンダチューブ4を介して磁気センサ10と隣接可能な位置に設けられる。磁石9は、ボトム室5側を向き、中心軸AXと直交する端面9Aと、ヘッド室6側を向き、中心軸AXと直交する端面9Bとを有する。
【0019】
磁石9は、ピストン7の端面7Aから突出するロッド8の側面8Tの周囲の少なくとも一部に配置される。すなわち、磁石9は、軸方向においてピストン7よりもボトム室5側のロッド8の側面8Tの周囲の少なくとも一部に配置される。換言すれば、磁石9は、ピストン7の端面7Aとロッド8の側面8Tとによって形成される段差に配置される。
【0020】
図2に示すように、中心軸AXと直交する面内において、磁石9は円板状である。また、磁石9は、中心軸AXの周囲において複数隣接するように配置される。本実施形態において、磁石9は、3つ設けられる。なお、磁石9の形状は、円板状でなくてもよく、例えば矩形状でもよい。また、磁石9は、3つでなくてもよく、2つ又は4つ以上の任意の複数でもよいし、1つでもよい。
【0021】
本実施形態において、磁石9の磁極は、軸方向に配置される。端面9Aは、磁石9の第1磁極を含む。端面9Bは、磁石9の第2磁極を含む。第1磁極及び第2磁極の一方は、N極であり、他方は、S極である。
【0022】
リテーナ部材11は、ロッド8の周囲に配置される円環状部材である。リテーナ部材11は、ボトム室5側を向き、中心軸AXと直交する端面11Aと、ヘッド室6側を向き、中心軸AXと直交する端面11Bとを有する。
【0023】
リテーナ部材11は、磁石9を固定する。軸方向において、リテーナ部材11は、磁石9よりもボトム室5側に配置される。リテーナ部材11は、ピストン7の端面7Aとロッド8の側面8Tとによって形成される段差に配置される。軸方向において、ピストン7は、磁石9よりもヘッド室6側に配置される。軸方向において、磁石9は、ピストン7の端面7Aとリテーナ部材11の端面11Bとの間に配置される。
【0024】
磁石ホルダ部材12は、ロッド8の周囲に配置される円環状部材である。磁石ホルダ部材12は、非磁性部材である。本実施形態において、磁石ホルダ部材12は、例えばステンレス鋼製である。
【0025】
磁石ホルダ部材12は、ピストン7の端面7Aとロッド8の側面8Tとによって形成される段差に配置される。軸方向において、磁石ホルダ部材12は、ピストン7とリテーナ部材11との間に配置される。磁石ホルダ部材12は、ボトム室5側を向き、中心軸AXと直交する端面12Aと、ヘッド室6側を向き、中心軸AXと直交する端面12Bとを有する。磁石ホルダ部材12は、ピストン7に固定される。リテーナ部材11は、磁石ホルダ部材12に固定される。
【0026】
磁石ホルダ部材12は、磁石9を保持する。磁石ホルダ部材12は、磁石9が配置される凹部12Uを有する。凹部12Uは、端面12Aの一部に形成される。凹部12Uに配置された磁石9は、中心軸AXを中心とする周方向において、シリンダチューブ4を介して磁気センサ10と隣接可能である。
【0027】
凹部12Uは、磁石9の端面9Bと対向する端面12Uaと、中心軸AXの径方向において磁石9の内端面9Cと対向する支持面12Ucとを有する。磁石9が凹部12Uに配置された状態で、磁石9の端面9Aとリテーナ部材11の端面11Bとが対向する。磁石9が凹部12Uに配置された状態で、磁石9の端面9Bとピストン7の端面7Aとの間に磁石ホルダ部材12の一部が配置される。
【0028】
ロッド8にピストン7がねじ込まれ、ピストン7とロッド8とが固定された後、ピストン7の端面7Aとリテーナ部材11の端面11Bとの間に磁石9及び磁石ホルダ部材12が配置された状態で、リテーナ部材11とピストン7とが固定部材16で固定される。本実施形態において、固定部材16は、ボルトを含む。図2に示すように、リテーナ部材11は、ボルト16の一部が配置される開口11Kを有し、磁石ホルダ部材12は、ボルト16の一部が配置される開口12Kを有する。また、ピストン7の端面7Aには、ボルト16のねじ山と結合されるねじ孔7Kが形成されている。ボルト16は、リテーナ部材11の端面11A側から開口11K及び開口12Kに挿入される。ボルト16の一部が開口11K及び開口12Kに配置された状態で、ボルト16がねじ孔7Kにねじ込まれることにより、ピストン7と磁石ホルダ部材12と磁石9とリテーナ部材11とが固定される。磁石9は、リテーナ部材11の端面11Bと磁石ホルダ部材12の端面12Uaとに挟まれることによって固定される。磁石9及び磁石ホルダ部材12は、ピストン7の端面7Aとリテーナ部材11の端面11Bとに挟まれることによって、ピストン7及びリテーナ部材11のそれぞれと固定される。
【0029】
なお、本実施形態においては、ロッド8にピストン7がねじ込まれることによってピストン7とロッド8とが固定されることとするが、ピストン7とロッド8との固定方法は、本実施形態の固定方法に限定されない。また、本実施形態においては、固定部材であるボルト16によってピストン7と磁石ホルダ部材12と磁石9とリテーナ部材11とが固定されることとするが、ピストン7と磁石ホルダ部材12と磁石9とリテーナ部材11との固定方法は、本実施形態の固定方法に限定されない。
【0030】
ボトム室5は、ピストン7よりもボトム2側の空間である。ボトム室5は、シリンダチューブ4の内面と、ボトム2の内面と、ロッド8の先端面8Sと、リテーナ部材11の端面11Aとによって規定される。ピストン7及びロッド8がボトム2に近付くように軸方向に移動したとき、ロッド8の先端面8Sがリテーナ部材11の端面11Aよりも先にボトム2に接触するように、ロッド8とリテーナ部材11との相対位置が規定されている。本実施形態において、ロッド8の先端面8Sは、リテーナ部材11の端面11Aよりもボトム室5側に配置される。換言すれば、先端面8Sを含むロッド8の先端部は、リテーナ部材11からボトム室5側に突出する。なお、先端面8Sの少なくとも一部が端面11Aよりもボトム室5側に配置されていればよい。ピストン7及びロッド8がボトム2に近付くように軸方向に移動したとき、先端面8Sの一部が端面11Aよりも先にボトム2に接触すればよく、先端面8Sの少なくとも一部に凹部が形成されていてもよい。
【0031】
ヘッド室6は、ピストン7よりもシリンダヘッド3側の空間である。ヘッド室6は、シリンダチューブ4の内面と、シリンダヘッド3の表面と、ロッド8の側面8Tと、ピストン7の端面7Bとによって規定される。
【0032】
ボトム室5は、作動油ポート5Hと接続される。作動油ポート5Hは、ボトム2に設けられ、ボトム室5に面する開口5HKを含む。作動油ポート5Hを介して、ボトム室5に作動油が供給される。また、作動油ポート5Hを介して、ボトム室5から作動油が排出される。
【0033】
ボトム室5に面する作動油ポート5Hの開口5HKは、中心軸AXの径方向においてロッド8の先端面8Sとは異なる位置に配置される。本実施形態において、開口5HKは、中心軸AXの径方向において先端面8Sよりも外側に配置される。中心軸AXの径方向において開口5HKが先端面8Sとは異なる位置に配置されることにより、ロッド8がボトム2に近付くように軸方向に移動したとき、ロッド8の先端面8Sが開口5HKを塞いでしまうことが抑制される。
【0034】
ヘッド室6は、作動油ポート6Hと接続される。作動油ポート6Hを介して、ヘッド室6に作動油が供給される。また、作動油ポート6Hを介して、ヘッド室6から作動油が排出される。
【0035】
ボトム室5に作動油が供給され、ヘッド室6から作動油が排出されることによって、ピストン7がシリンダヘッド3に近付くように軸方向に移動する。これにより、ロッド8がシリンダチューブ4の内部空間から出て、油圧シリンダ1が伸びる。ヘッド室6に作動油が供給され、ボトム室5から作動油が排出されることによって、ピストン7がボトム2に近付くように軸方向に移動する。これにより、ロッド8がシリンダチューブ4の内部空間に入り、油圧シリンダ1が縮む。
【0036】
磁気センサ10は、シリンダチューブ4の外部空間に配置される。磁気センサ10は、例えばホール素子を含む。磁気センサ10は、磁石9と一緒に移動するピストン7の移動により変化する磁界を検出する。
【0037】
センサホルダ部材13は、シリンダチューブ4の外部空間に配置され、磁気センサ10を保持する。センサホルダ部材13は、磁気センサ10とシリンダチューブ4の外面とが対向するように、磁気センサ10を保持する。センサホルダ部材13は、シリンダチューブ4に固定される。
【0038】
本実施形態において、センサホルダ部材13は、磁気センサ10の周囲に配置される。センサホルダ部材13は、磁気センサ10を包囲する。センサホルダ部材13は、中心軸AXの径方向において磁気センサ10よりも外側に配置される第1部分13Aと、軸方向において磁気センサ10よりもボトム室5側に延在する第2部分13Bと、軸方向において磁気センサ10よりもヘッド室6側に延在する第3部分13Cとを含む。
【0039】
センサホルダ部材13は、保持バンド14に装着される。保持バンド14は、シリンダチューブ4の外面に固定される。保持バンド14は、磁性部材である。本実施形態において、保持バンド14は、例えば炭素鋼製である。
【0040】
また、油圧シリンダ1は、軸方向における原点からのピストン7の移動量を検出するストロークセンサ20を備える。ストロークセンサ20は、ロッド8の側面8Tと接触する回転ローラ21と、回転軸BXを中心に回転ローラ21を回転可能に支持するハウジング22と、回転ローラ21の回転量を検出する回転センサ23とを備える。
【0041】
また、油圧シリンダ1は、ハウジング22とロッド8との間に設けられるシール部材24と、シリンダヘッド3とロッド8との間に設けられるシール部材25と、シリンダヘッド3とロッド8との間に設けられるシール部材26とを有する。シール部材24及びシール部材25により、回転ローラ21とロッド8との間に異物が侵入することが抑制される。シール部材26により、ヘッド室6に異物が侵入することが抑制される。
【0042】
回転ローラ21は、ロッド8の側面8Tと接触した状態で回転軸BXを中心に回転可能である。回転軸BXは、中心軸AXと平行な軸と直交する。ロッド8が軸方向に移動することにより、回転ローラ21が回転する。回転センサ23は、ロッド8の移動により回転する回転ローラ21の回転量を検出する。ストロークセンサ20は、回転センサ23で検出された回転ローラ21の回転量を、ストロークセンサ20の検出値として演算処理装置30に出力する。演算処理装置30は、ストロークセンサ20の検出値に基づいて、軸方向におけるロッド8の移動量を算出する。すなわち、演算処理装置30は、回転センサ23で検出された回転ローラ21の回転量を軸方向におけるロッド8の移動量に変換する。ロッド8とピストン7とは固定されている。軸方向におけるロッド8の移動量とピストン7の移動量とは等しい。演算処理装置30は、軸方向におけるロッド8の移動量を算出して、軸方向におけるピストン7の移動量を算出する。
【0043】
本実施形態において、磁気センサ10の出力信号に基づいて、ストロークセンサ20の原点が初期化(リセット)される。磁気センサ10の出力信号は、演算処理装置30に出力される。演算処理装置30は、磁気センサ10の出力信号に基づいて、ストロークセンサ20の原点を初期化する。
【0044】
回転ローラ21とロッド8との間において滑りが発生する可能性がある。滑りの発生により、ストロークセンサ20の検出値に基づいて算出されるピストン7の移動量と、実際のピストン7の移動量との間に誤差が生じる可能性がある。滑りの発生により、ストロークセンサ20の検出値に基づいてピストン7の移動量を算出するときの原点が変動し、その結果、ストロークセンサ20の検出値に基づいて算出される軸方向における原点からのピストン7の移動量と、実際のピストン7の移動量との間に誤差が生じる可能性がある。
【0045】
本実施形態において、演算処理装置30は、磁気センサ10の出力信号に基づいて、軸方向におけるピストン7の移動量を算出するときの原点を初期化する。
【0046】
磁石9により磁界が生成され、磁力線が磁気センサ10を透過すると、磁気センサ10は、磁力に基づいて出力信号を出力する。軸方向において、磁気センサ10が設けられている位置は、既知である。演算処理装置30は、磁気センサ10の出力信号に基づいて、ストロークセンサ20の検出値に基づいてピストン7の移動量を算出するときの原点を初期化する。
【0047】
[油圧シリンダの動作]
図3及び図4は、本実施形態に係る油圧シリンダ1の動作の一例を示す図である。ボトム室5に作動油が供給され、ヘッド室6から作動油が排出されることによって、図3に示すように、ピストン7がシリンダヘッド3に近付くように軸方向に移動する。これにより、ロッド8がシリンダチューブ4の内部空間から出て、油圧シリンダ1が伸びる。図3に示すように、油圧シリンダ1が最も伸びた状態においては、シリンダヘッド3とピストン7の端面7Bとが接触する。本実施形態においては、磁石9が軸方向においてピストン7よりもボトム室5側に配置されている。これにより、磁石9とシリンダヘッド3とが接触することが抑制される。また、磁石9が軸方向においてピストン7よりもボトム室5側に配置されているので、油圧シリンダ1が最も伸びた状態で作業機による掘削動作等が実施され、油圧シリンダ1に外力が作用しても、磁石9に過度な圧縮力が作用することが抑制される。そのため、磁石9の破損が抑制される。
【0048】
ヘッド室6に作動油が供給され、ボトム室5から作動油が排出されることによって、図4に示すように、ピストン7がボトム2に近付くように軸方向に移動する。これにより、ロッド8がシリンダチューブ4の内部空間に入り、油圧シリンダ1が縮む。ボトム室5に面するロッド8の先端面8Sは、ボトム室5側を向くピストン7の端面7Aよりもボトム室5側に突出し、本実施形態においては、磁石9及びリテーナ部材11よりもボトム室5側に突出する。そのため、図4に示すように、油圧シリンダ1が最も縮んだ状態においては、磁石9を固定するリテーナ部材11よりも先にロッド8の先端面8Sがボトム2に接触する。これにより、油圧シリンダ1が最も縮んだ状態で油圧シリンダ1に外力が作用しても、ロッド8の先端面8Sとボトム2との接触により、磁石9がピストン7とボトム2との間に挟まれた状態で磁石9に過度な圧縮力が作用することが抑制される。そのため、油圧シリンダ1の作動において、磁石9に過度な圧縮力が作用することが抑制される。そのため、磁石9の破損が抑制される。
【0049】
[磁気センサの作用]
図5は、本実施形態に係る磁気センサ10の作用の一例を説明するための模式図である。図5に示すように、磁石9は、第1磁極であるN極と、第2磁極であるS極とを有する。N極とS極とは、軸方向に配置される。磁石9によって生成される磁力線は、N極からS極に向かう。磁石9のN極から射出された磁力線は、中心軸AXの径方向の外側に進行する。中心軸AXの径方向の外側に進行した磁力線は、シリンダチューブ4を通過した後、センサホルダ部材13に保持されている磁気センサ10に入射する。磁気センサ10に入射し、磁気センサ10を通過した磁力線は、センサホルダ部材13を通過した後、中心軸AXの径方向の内側に進行する。中心軸AXの径方向の内側に進行した磁力線は、シリンダチューブ4を通過した後、リテーナ部材11に入射する。リテーナ部材11に入射し、リテーナ部材11を通過した磁力線は、磁石9のS極に到達する。
【0050】
このように、磁石9によって生成される磁力線は、中心軸AXの径方向の外側に向かって進行する磁力線と、中心軸AXの径方向の内側に向かって進行する磁力線とを含む。以下の説明においては、中心軸AXの径方向の外側に向かって進行する磁力線を適宜、第1磁力線MF1、と称し、中心軸AXの径方向の内側に向かって進行する磁力線を適宜、第2磁力線MF2、と称する。
【0051】
磁気センサ10は、ピストン7の移動により変化する磁界を検出する。ピストン7が軸方向に移動することにより、第1磁力線MF1が磁気センサ10を通過する第1状態と、第2磁力線MF2が磁気センサ10を通過する第2状態とが発生する。第1磁力線MF1が磁気センサ10を通過したとき、磁気センサ10は、第1磁力線MF1の磁力に応じた出力信号を出力する。第2磁力線MF2が磁気センサ10を通過したとき、磁気センサ10は、第2磁力線MF2の磁力に応じた出力信号を出力する。
【0052】
[原点の初期化]
図6は、本実施形態に係る磁気センサ10の出力信号の一例を示す図である。図6において、横軸は軸方向における磁石9の位置を示し、縦軸は磁気センサ10の出力信号を示す。図6は、磁石9のN極がシリンダチューブ4を介して磁気センサ10と隣接する位置を通過した後、磁石9のS極がシリンダチューブ4を介して磁気センサ10と隣接する位置を通過したときの磁気センサ10の出力信号を示す。
【0053】
磁石9が固定されているピストン7が軸方向に移動することにより、第1磁力線MF1が磁気センサ10を通過する第1状態と、第2磁力線MF2が磁気センサ10を通過する第2状態とが発生する。第1磁力線MF1が磁気センサ10を通過する第1状態は、磁石9が軸方向の第1位置P1に位置するときに発生する。第2磁力線MF2が磁気センサ10を通過する第2状態は、磁石9が軸方向の第2位置P2に位置するときに発生する。
【0054】
磁石9が第1位置P1に位置し、第1磁力線MF1が磁気センサ10を通過したとき、磁気センサ10は、第1磁力線MF1の磁力に応じた第1ピーク信号S1を出力する。磁石9が第2位置P2に位置し、第2磁力線MF2が磁気センサ10を通過したとき、磁気センサ10は、第2磁力線MF2の磁力に応じた第2ピーク信号S2を出力する。第1ピーク信号S1は、磁気センサ10から出力される出力信号のうち最も低い値を示す。第2ピーク信号S2は、磁気センサ10から出力される出力信号のうち最も高い値を示す。
【0055】
本実施形態において、演算処理装置30は、磁気センサ10から出力される出力信号に基づいて、軸方向における第1位置P1及び第2位置P2を検出し、第1位置P1と第2位置P2との間の出力信号の波形と予め記憶されている元波形(基準波形)とに基づいて演算処理を実施して、ピストン7の移動量の誤差を補正して、ストロークセンサ20の検出値に基づいてピストン7の移動量を算出するときの原点を初期化する。
【0056】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、原点をリセットするために設けられる磁石9が、軸方向においてピストン7よりもボトム室5側に配置され、ピストン7に固定される。これにより、図3を参照して説明したように、油圧シリンダ1が最も伸びた状態で作業機による掘削動作等が実施され、油圧シリンダ1に外力が作用しても、磁石9に過度な圧縮力が作用することが抑制される。そのため、磁石9の破損が抑制される。これにより、ストロークセンサ20の原点のリセット機能が維持され、ストロークセンサ20による伸縮量の検出機能が維持される。したがって、油圧シリンダ1の伸縮量の検出性能の低下が抑制される。
【0057】
また、本実施形態によれば、ボトム室5に面するロッド8の先端面8Sは、ボトム室5側を向くピストン7の端面7Aよりもボトム室5側に突出し、磁石9は、ピストン7の端面7Aから突出するロッド8の側面8Tの周囲の少なくとも一部に配置される。これにより、図4を参照して説明したように、ピストン7及びロッド8がボトム2に近付くように軸方向に移動したとき、ロッド8の先端面8Sが磁石9よりも先にボトム2に接触する。そのため、油圧シリンダ1が最も縮んだ状態で油圧シリンダ1に外力が作用しても、ロッド8の先端面8Sとボトム2との接触により、磁石9がピストン7とボトム2との間に挟まれた状態で磁石9に過度な圧縮力が作用することが抑制される。これにより、油圧シリンダ1の作動において、磁石9に過度な圧縮力が作用することが抑制される。そのため、磁石9の破損が抑制される。これにより、ストロークセンサ20の原点のリセット機能の毀損が抑制され、ストロークセンサ20による伸縮量の検出機能の毀損が抑制される。したがって、油圧シリンダ1の性能の低下が抑制される。
【0058】
また、本実施形態によれば、磁石9をピストン7のボトム室5側に配置するだけで、油圧シリンダ1の作動において磁石9の破損が抑制される。そのため、例えば磁石9の破損を抑制するための強固な構造物の設置をしなくて済む。したがって、油圧シリンダ1が長大化したり、油圧シリンダ1の伸縮量が小さくなったりすることが抑制される。
【0059】
また、本実施形態によれば、磁石9とピストン7との固定は、ピストン7とロッド8との固定後に実施可能である。ピストン7がロッド8にねじ込まれることによってロッド8と固定されるねじ込み式ピストンである場合において、磁石9をピストン7のヘッド室6側に配置する場合、磁石9とピストン7とを固定した後、ピストン7とロッド8とを固定する必要が生じる可能性がある。磁石9は、中心軸AXを中心とする周方向において、シリンダチューブ4を介して磁気センサ10と隣接可能な位置に設けられる必要がある。そのため、磁石9をピストン7のヘッド室6側に配置する場合、まず、ピストン7とロッド8とを固定して、中心軸AXを中心とする周方向において磁石9を配置すべき位置を確認した後、ピストン7とロッド8との固定を解除し、ピストン7において確認された位置に磁石9を固定した後、再びピストン7とロッド8とを固定する作業を必要とする可能性が高くなる。この場合、油圧シリンダ1の組立に要する工数が増えることとなる。本実施形態によれば、磁石9とピストン7との固定は、ピストン7とロッド8との固定後に実施可能である。そのため、油圧シリンダ1の組立に要する工数が増えることが抑制される。
【0060】
また、本実施形態によれば、ボトム室5に面する作動油ポート5Hの開口5HKは、中心軸AXの径方向においてロッド8の先端面8Sとは異なる位置に配置される。これにより、ロッド8がボトム2に近付くように軸方向に移動したとき、ロッド8の先端面8Sが開口5HKを塞いでしまうことが抑制される。
【0061】
また、本実施形態よれば、磁石9の磁極は、軸方向に配置される。磁石9の磁極が軸方向に配置される状態において、軸方向において磁石9よりもボトム2側に磁石9に固定される第1磁性部材であるリテーナ部材11が設けられる。リテーナ部材11が設けられることにより、磁石9で生成される磁力線が整えられる。磁力線が整えられることにより、図6を参照して説明した第1ピーク信号S1及び第2ピーク信号S2が十分に得られる。そのため、第1ピーク信号S1と第2ピーク信号S2とを使って原点の位置を精度良く算出することができる。これにより、ストロークセンサ20の原点をリセットすることができる。
【0062】
第1磁性部材が省略される場合、磁石9で生成される磁力が拡散してしまい、第1ピーク信号S1及び第2ピーク信号S2の少なくとも一方が十分に得られない可能性がある。その結果、原点の位置を精度良く算出することが困難となる。本実施形態によれば、第1磁性部材であるリテーナ部材11が設けられる。これにより、第1ピーク信号S1及び第2ピーク信号S2が十分に得られ、第1ピーク信号S1と第2ピーク信号S2とを使って原点の位置を精度良く算出することができる。したがって、ストロークセンサ20の原点をリセットすることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、磁石9の磁極が軸方向に配置される状態において、軸方向において磁石9よりもヘッド室6側に磁石9に固定される第2磁性部材であるピストン7が設けられる。第1磁性部材のみならず第2磁性部材が設けられることにより、磁石9で生成される磁力線は十分に整えられる。これにより、第1ピーク信号S1及び第2ピーク信号S2が十分に得られ、第1ピーク信号S1と第2ピーク信号S2とを使って原点の位置をより精度良く算出することができる。したがって、ストロークセンサ20の原点をリセットすることができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、シリンダチューブ4の外部空間において、中心軸AXの径方向において磁気センサ10よりも外側に配置される第1部分13Aと軸方向において磁気センサ10よりもボトム2側に延在する第2部分13Bとを含む第3磁性部材であるセンサホルダ部材13が設けられる。第3磁性部材が設けられることにより、磁石9で生成される磁力線は良好に整えられる。これにより、第1ピーク信号S1及び第2ピーク信号S2が十分に得られ、第1ピーク信号S1と第2ピーク信号S2とを使って原点の位置をより精度良く算出することができる。したがって、ストロークセンサ20の原点をリセットすることができる。
【0065】
第2実施形態.
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0066】
図7は、本実施形態に係る油圧シリンダ1の一例を示す側断面図である。図7に示すように、油圧シリンダ1は、シリンダチューブ4と、シリンダチューブ4の内部空間においてシリンダチューブ4の中心軸AXと平行な軸方向に移動可能であり、シリンダチューブ4の内部空間をボトム室5とヘッド室6とに区画するピストン7と、ピストン7に連結されるロッド8と、軸方向においてピストン7よりもボトム室5側に配置され、ピストン7に固定される磁石9と、シリンダチューブ4の外側に配置され、ピストン7の移動により変化する磁界を検出する磁気センサ10と、を備える。
【0067】
また、油圧シリンダ1は、磁石9の磁極が軸方向に配置されるように磁石9を保持する磁石ホルダ部材12と、軸方向において磁石9よりもヘッド室6側に配置され、磁石9を固定するリテーナ部材15と、シリンダチューブ4の外部空間において、磁気センサ10を保持するセンサホルダ部材13と、を備える。
【0068】
シリンダチューブ4、ピストン7、ロッド8、リテーナ部材15、及びセンサホルダ部材13のそれぞれは、磁性部材である。本実施形態において、シリンダチューブ4、ピストン7、ロッド8、リテーナ部材15、及びセンサホルダ部材13のそれぞれは、例えば炭素鋼製である。
【0069】
本実施形態において、リテーナ部材15は、軸方向において磁石9よりもヘッド室6側に配置され、磁石9を固定する第2磁性部材として機能する。本実施形態において、リテーナ部材15は、軸方向においてピストン7と磁石9との間に配置される。
【0070】
リテーナ部材15は、ピストン7とは別の部材である。本実施形態において、リテーナ部材15は、ピストン7と同等の材料によって形成される。なお、リテーナ部材15は、ピストン7と異なる材料で形成されてもよい。リテーナ部材15は、ピストン7よりも強磁性でもよい。
【0071】
本実施形態において、軸方向において磁石9よりもボトム室5側に第1磁性部材は設けられていない。
【0072】
上述の実施形態と同様、磁石9の磁極は、軸方向に配置される。端面9Aは、磁石9の第1磁極を含む。端面9Bは、磁石9の第2磁極を含む。第1磁極及び第2磁極の一方は、N極であり、他方は、S極である。
【0073】
リテーナ部材15は、ロッド8の周囲に配置される円環状部材である。リテーナ部材15は、ボトム2側を向き、中心軸AXと直交する端面15Aと、ヘッド室6側を向き、中心軸AXと直交する端面15Bとを有する。
【0074】
リテーナ部材15は、磁石9を固定する。軸方向において、リテーナ部材15は、磁石9よりもヘッド室6側に配置される。軸方向において、リテーナ部材15は、ピストン7の端面7Aと磁石ホルダ部材12の端面12B及び磁石9の端面9Bとの間に配置される。
【0075】
磁石ホルダ部材12は、ロッド8の周囲に配置される円環状部材である。磁石ホルダ部材12は、非磁性部材である。本実施形態において、磁石ホルダ部材12は、例えばステンレス鋼製である。
【0076】
磁石ホルダ部材12は、磁石9を保持する。磁石ホルダ部材12は、磁石9が配置される凹部12Uを有する。凹部12Uは、端面12Bの一部に形成される。凹部12Uに配置された磁石9は、中心軸AXを中心とする周方向において、シリンダチューブ4を介して磁気センサ10と隣接可能である。
【0077】
凹部12Uは、磁石9の端面9Aと対向する端面12Ubと、中心軸AXの径方向において磁石9の内端面9Cと対向する支持面12Ucとを有する。磁石9が凹部12Uに配置された状態で、磁石9の端面9B及び磁石ホルダ部材12の端面12Bとリテーナ部材15の端面15Aとが対向する。ピストン7の端面7Aとリテーナ部材15の端面15Bとが対向する。
【0078】
ピストン7の端面7Aと磁石9の端面9B及び磁石ホルダ部材12の端面12Bとの間にリテーナ部材15が配置された状態で、磁石ホルダ部材12とピストン7とがボルトのような固定部材16で固定される。これにより、ピストン7とリテーナ部材15と磁石9と磁石ホルダ部材12とが固定される。リテーナ部材15は、磁石9の端面9B及び磁石ホルダ部材12の端面12Bとピストン7の端面7Aとに挟まれることによって、ピストン7、磁石ホルダ部材12、及び磁石9のそれぞれと固定される。
【0079】
ボトム室5は、ピストン7よりもボトム2側の空間である。ボトム室5は、シリンダチューブ4の内面と、ボトム2の内面と、ロッド8の先端面8Sと、磁石ホルダ部材12の端面12Aとによって規定される。磁石ホルダ部材12の端面12Aは、ロッド8の先端面8Sよりもヘッド室6側に配置される。換言すれば、先端面8Sを含むロッド8の先端部は、磁石ホルダ部材12からボトム室5側に突出する。
【0080】
ヘッド室6は、ピストン7よりもシリンダヘッド3側の空間である。ヘッド室6は、シリンダチューブ4の内面と、シリンダヘッド3の表面と、ロッド8の側面8Tと、ピストン7の端面7Bとによって規定される。
【0081】
センサホルダ部材13は、シリンダチューブ4の外部空間に配置され、磁気センサ10を保持する。センサホルダ部材13は、磁気センサ10とシリンダチューブ4の外面とが対向するように、磁気センサ10を保持する。センサホルダ部材13は、シリンダチューブ4に固定される。
【0082】
本実施形態において、センサホルダ部材13は、磁気センサ10の周囲に配置される。センサホルダ部材13は、磁気センサ10を包囲する。センサホルダ部材13は、中心軸AXの径方向において磁気センサ10よりも外側に配置される第1部分13Aと、軸方向において磁気センサ10よりもボトム室5側に延在する第2部分13Bと、軸方向において磁気センサ10よりもヘッド室6側に延在する第3部分13Cとを含む。
【0083】
センサホルダ部材13は、軸方向において磁気センサ10よりもボトム室5側に配置される第1端部13E1と、磁気センサ10よりもヘッド室6側に配置される第2端部13E2とを有する。軸方向において、磁気センサ10と第2端部13E2との距離L2は、磁気センサ10と第1端部13E1との距離L1よりも短い。
【0084】
図8は、本実施形態に係る磁気センサ10の作用の一例を説明するための模式図である。図8に示すように、磁石9は、第1磁極であるN極と、第2磁極であるS極とを有する。N極とS極とは、軸方向に配置される。磁石9によって生成される磁力線は、N極からS極に向かう。磁石9のN極から射出された磁力線は、リテーナ部材15を通過した後、中心軸AXの径方向の外側に進行する。中心軸AXの径方向の外側に進行した磁力線は、シリンダチューブ4を通過した後、センサホルダ部材13に保持されている磁気センサ10に入射する。磁気センサ10に入射し、磁気センサ10を通過した磁力線は、センサホルダ部材13を通過した後、中心軸AXの径方向の内側に進行する。中心軸AXの径方向の内側に進行した磁力線は、シリンダチューブ4を通過した後、磁石9のS極に到達する。
【0085】
本実施形態においても、磁石9によって生成される磁力線は、中心軸AXの径方向の外側に向かって進行する第1磁力線MF1と、中心軸AXの径方向の内側に向かって進行する第2磁力線MF2とを含む。第1磁力線MF1が磁気センサ10を通過したとき、磁気センサ10は、第1磁力線MF1の磁力に応じた出力信号を出力する。第2磁力線MF2が磁気センサ10を通過したとき、磁気センサ10は、第2磁力線MF2の磁力に応じた出力信号を出力する。
【0086】
本実施形態によれば、第3磁性部材として機能するセンサホルダ部材13は、軸方向において磁気センサ10よりもボトム室5側に配置される第1端部13E1と、磁気センサ10よりもヘッド室6側に配置される第2端部13E2とを有する。軸方向において、磁気センサ10と第2端部13E2との距離L2は、磁気センサ10と第1端部13E1との距離L1よりも短い。これにより、磁石9のボトム室5側に第1磁性部材が無くても、磁石9で生成される磁力線が整えられる。磁力線が整えられることにより、図6を参照して説明した第1ピーク信号S1及び第2ピーク信号S2が十分に得られる。そのため、第1ピーク信号S1と第2ピーク信号S2とを使って原点の位置を精度良く算出することができる。これにより、ストロークセンサ20の原点をリセットすることができる。
【0087】
第1磁性部材が無い状態において、距離L1が距離L2よりも短い場合、磁石9で生成される磁力が拡散してしまい、第1ピーク信号S1及び第2ピーク信号S2の少なくとも一方が十分に得られない可能性がある。その結果、原点の位置を精度良く算出することが困難となる可能性がある。本実施形態によれば、第3磁性部材であるセンサホルダ部材13において、距離L2は距離L1よりも短い。これにより、センサホルダ部材13において磁力線が通過する経路が確保され、第1ピーク信号S1及び第2ピーク信号S2が十分に得られる。そのため、第1ピーク信号S1と第2ピーク信号S2とを使って原点の位置を精度良く算出することができる。したがって、ストロークセンサ20の原点をリセットすることができる。
【0088】
また、本実施形態によれば、磁石9の磁極が軸方向に配置される状態において、軸方向において磁石9よりもヘッド室6側に磁石9に固定される第2磁性部材であるリテーナ部材15が設けられる。第2磁性部材であるリテーナ部材15が設けられることにより、磁石9で生成される磁力線は十分に整えられる。これにより、第1ピーク信号S1及び第2ピーク信号S2が十分に得られ、第1ピーク信号S1と第2ピーク信号S2とを使って原点の位置をより精度良く算出することができる。したがって、ストロークセンサ20の原点をリセットすることができる。
【0089】
また、リテーナ部材15がピストン7よりも強磁性な材料で形成されることにより、磁石9で生成される磁力線は更に良好に整えられる。また、リテーナ部材15を形成する材料を選択して、リテーナ部材15の磁性を調整することにより、磁石9で生成される磁力線が通過する経路を調整することができる。
【0090】
なお、本実施形態において、リテーナ部材15が省略されてもよい。上述の実施形態と同様、ピストン7が第2磁性部材として機能してもよい。
【0091】
図9は、本実施形態に係る磁気センサ10の作用の一例を説明するための模式図である。図9に示すように、センサホルダ部材13の第3部分13Cは省略されてもよい。センサホルダ部材13が第1部分13A及び第2部分13Bを有することにより、磁石9で生成される磁力線が通過する経路は確保される。
【0092】
第3実施形態.
第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0093】
図10は、本実施形態に係る油圧シリンダ1の一例を示す側断面図である。図10に示すように、油圧シリンダ1は、シリンダチューブ4と、シリンダチューブ4の内部空間においてシリンダチューブ4の中心軸AXと平行な軸方向に移動可能であり、シリンダチューブ4の内部空間をボトム室5とヘッド室6とに区画するピストン7と、ピストン7に連結されるロッド8と、軸方向においてピストン7よりもボトム室5側に配置され、ピストン7に固定される磁石9と、シリンダチューブ4の外側に配置され、ピストン7の移動により変化する磁界を検出する磁気センサ10と、シリンダチューブ4の外部空間において、磁気センサ10を保持するセンサホルダ部材13と、を備える。
【0094】
本実施形態において、軸方向において磁石9よりもボトム室5側に第1磁性部材は設けられていない。
【0095】
本実施形態において、磁石9の磁極は、中心軸AXの径方向に配置される。磁石9において、中心軸AXの径方向の外側に第1磁極であるN極が設けられ、中心軸AXの径方向の内側に第2磁極であるS極が設けられる。なお、磁石9において、中心軸AXの径方向の外側にS極が設けられ、中心軸AXの径方向の内側にN極が設けられてもよい。
【0096】
図10に示すように、磁気センサ10は、軸方向に2つ配置される。以下の説明においては、軸方向に配置される2つの磁気センサ10のうち、ボトム室5側に配置される磁気センサ10を適宜、磁気センサ10A、と称し、ヘッド室6側に配置される磁気センサ10を適宜、磁気センサ10B、と称する。磁気センサ10Aと磁気センサ10Bとは、磁石9の磁力線に対して逆の出力信号を出力するように較正されている。
【0097】
本実施形態において、磁石9のN極から中心軸AXの径方向の外側に向かって磁力線MFが射出される。磁気センサ10は、ピストン7の移動により変化する磁界を検出する。ピストン7が軸方向に移動することにより、磁石9のN極から射出された磁力線MFが磁気センサ10Aを通過する第3状態と、磁石9のN極から射出された磁力線MFが磁気センサ10Bを通過する第4状態とが発生する。磁力線MFが磁気センサ10Aを通過したとき、磁気センサ10Aは、磁力線MFの磁力に応じた出力信号を出力する。磁力線MFが磁気センサ10Bを通過したとき、磁気センサ10Bは、磁力線MFの磁力に応じた出力信号を出力する。
【0098】
図11は、本実施形態に係る磁気センサ10の出力信号の一例を示す図である。図11において、横軸は軸方向における磁石9の位置を示し、縦軸は磁気センサ10の出力信号を示す。図11は、磁石9のN極がシリンダチューブ4を介して磁気センサ10Aと隣接する位置を通過した後、磁石9のN極がシリンダチューブ4を介して磁気センサ10Bと隣接する位置を通過したときの磁気センサ10(10A,10B)の出力信号を示す。
【0099】
磁石9が固定されているピストン7が軸方向に移動することにより、磁力線MFが磁気センサ10Aを通過する第3状態と、磁力線MFが磁気センサ10Bを通過する第4状態とが発生する。磁力線MFが磁気センサ10Aを通過する第3状態は、磁石9が軸方向の第3位置P3に位置するときに発生する。磁力線MFが磁気センサ10Bを通過する第4状態は、磁石9が軸方向の第4位置P4に位置するときに発生する。
【0100】
磁石9が軸方向の第3位置P3に位置し、磁力線MFが磁気センサ10Aを通過したとき、磁気センサ10Aは、磁力線MFの磁力に応じた第3ピーク信号S3を出力する。磁石9が第4位置P4に位置し、磁力線MFが磁気センサ10Bを通過したとき、磁気センサ10Bは、磁力線MFの磁力に応じた第4ピーク信号S4を出力する。第3ピーク信号S3は、磁気センサ10Aから出力される出力信号のうち最も低い値を示す。第4ピーク信号S4は、磁気センサ10Bから出力される出力信号のうち最も高い値を示す。
【0101】
本実施形態において、演算処理装置30は、磁気センサ10から出力される出力信号に基づいて、軸方向における第3位置P3及び第4位置P4を検出し、第3位置P3と第4位置P4との間の出力信号の波形と予め記憶されている元波形(基準波形)とに基づいて演算処理を実施して、ピストン7の移動量の誤差を補正して、ストロークセンサ20の検出値に基づいてピストン7の移動量を算出するときの原点を初期化する。
【0102】
以上説明したように、本実施形態によれば、磁石9は、第1磁極と第2磁極とが中心軸AXの径方向に配置されるように、ピストン7に固定される。本実施形態によれば、第1磁性部材が省略されても、第3ピーク信号S3及び第4ピーク信号S4を十分に取得することができる。また、本実施形態によれば、第3磁性部材13の形状が任意に定められても、第3ピーク信号S3及び第4ピーク信号S4を十分に取得することができる。
【0103】
なお、上述の各実施形態において、第3磁性部材13は、磁気センサ10を保持し、シリンダチューブ4に固定されるセンサホルダ部材であることとした。第3磁性部材13は、磁気センサ10を保持しなくてもよいし、シリンダチューブ4に固定されなくてもよい。すなわち、磁気センサ10は、第3磁性部材13とは異なるセンサホルダ部材によって保持されてもよい。この場合、センサホルダ部材は、磁性部材でなくてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1…油圧シリンダ、2…ボトム、3…シリンダヘッド、4…シリンダチューブ、5…ボトム室、5H…作動油ポート、5HK…開口、6…ヘッド室、6H…作動油ポート、7…ピストン(第2磁性部材)、7A…端面、7B…端面、7K…ねじ孔、8…ロッド、8S…先端面、8T…側面、9…磁石、9A…端面、9B…端面、9C…内端面、10…磁気センサ、10A…磁気センサ、10B…磁気センサ、11…リテーナ部材(第1磁性部材)、11A…端面、11B…端面、11K…開口、12…磁石ホルダ部材、12A…端面、12B…端面、12K…開口、12U…凹部、12Ua…端面、12Ub…端面、12Uc…支持面、13…センサホルダ部材(第3磁性部材)、13A…第1部分、13B…第2部分、13C…第3部分、13E1…第1端部、13E2…第2端部、14…保持バンド、15…リテーナ部材(第2磁性部材)、15A…端面、15B…端面、16…固定部材、20…ストロークセンサ、21…回転ローラ、22…ハウジング、23…回転センサ、24…シール部材、25…シール部材、26…シール部材、30…演算処理装置、AX…中心軸、BX…回転軸、MF1…第1磁力線、MF2…第2磁力線。
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