(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】ケースコンベア
(51)【国際特許分類】
B65G 47/76 20060101AFI20220421BHJP
【FI】
B65G47/76 B
(21)【出願番号】P 2017238901
(22)【出願日】2017-12-13
【審査請求日】2020-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093388
【氏名又は名称】鈴木 喜三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕
(72)【発明者】
【氏名】高野 勇人
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-160281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/64
B65G 47/68-47/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ケース(2)と、コンベアベルト(4)と、ケーシング(5)とを有するケースコンベア(1)において、
前記ケーシング(5)内であって、該ケーシング(5)の左右の側壁(5a、5b)間に同じ高さ又は高さを変えて掛け渡された複数本の線条部材で構成された均し部(8)を、搬送方向にケーシング(5)内に一定間隔
で高さを変えて複数個設けられていることを特徴するケースコンベア。
【請求項2】
前記均し部(8)が、3本の線条部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のケースコンベア。
【請求項3】
前記線条部材の表面が滑らかであることを特徴とする請求項1又は2に記載のケースコンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として下水処理施設において汚水浄化装置等で汚水を処理した際に発生する汚泥等からなる脱水ケーキ(一般的には、水分率が75~80%の汚泥等の塊)を搬送するケースコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
ケースコンベアは、被搬送物がコンベアベルト(以下、ベルトという。)からこぼれ落ちないように方形の断面を有するケーシング内にベルトを走らせ、被搬送物を運搬するコンベアである。
ケースコンベアは、水平搬送だけでなく、垂直あるいは傾斜搬送も可能であり、大麦、大豆等の食用穀類や、養殖や飼育の飼料用の穀物類等の粉粒体、汚泥のような泥状のものの輸送や搬送に使われている。
【0003】
また、下水処理施設において汚水浄化装置や脱水機で汚水を処理した際に発生する汚泥等からなる脱水ケーキの搬送にも、ケースコンベアが使われている。
脱水ケーキから生ずる臭気を散逸させないよう脱臭設備に送るためにも、ケースコンベアを選定する場合がある。
脱水ケーキの処理工程において、ケースコンベアで次工程の焼却設備等に脱水ケーキを搬送する際、一度に多量の脱水ケーキがケーシング内に投入されると、該脱水ケーキがケーシング壁に接触し、ケーシング内で脱水ケーキの詰まり(閉塞)が発生しケースコンベアの運転に支障が生じる。
特に、設備の状況によりケースコンベアに一度に多量の脱水ケーキが投入された場合や、ケースコンベアの設置スペースが狭く使用されるケースコンベアの搬送容量が制限される場合に、ケーシング内で脱水ケーキの詰まり(閉塞)が頻繁に発生してしまう。
また、
図6に示すようなケースコンベアの設置例の場合、ケースコンベアの搬出箇所に設けた後段のシュート(10)部分においても脱水ケーキ(9)の詰まり(閉塞)が発生しやすい。
【0004】
上記のような問題に関連して、発明の目的及び作用効果は異なるが、コンベア上に載せられた例えば含水ゲル状重合体、ケーキ状物質、顆粒状物質及び不定型固形物等の粘着性粉粒状物群を押し拡げて均す粘着性粉粒状物群用ならし装置が公開されている(特許文献1)。
図7は、従来の均し装置を表す図である。
図7に示すように、前記粘着性粉粒状物群用ならし装置(11)は、ベルトコンベア(13)上に交差するように架設された回転軸(14)の周りに突出して形成された支持棒(15)に支持固定された帯状螺旋羽根(16)が、ベルトコンベア(13)上に載せられた含水ゲル状重合体を押し拡げて均すように設けられたもので、ベルトコンベア(13)上の部分的箇所に載せられた粘着性粉粒状物群は、粘着性粉粒状物群用ならし装置(11)の通過時に、回転する螺旋状羽根(16)に当接することにより案内されてベルトコンベア(13)上で回転軸(14)に沿う方向に移動させられる。
この結果、特定の単位操作の前処理としてベルトコンベア(13)に載せられた粘着性粉粒状物群を均すに際して、粘着性粉粒状物群を圧密状態にすることなく均すことができる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ケースコンベアによる搬送において、ケーシング内で脱水ケーキの詰まり(閉塞)や、ベルトへの脱水ケーキの付着は、ケースコンベアの運転に支障が生じるため定期的な清掃が必要になる。
また、特許文献1に記載の粘着性粉粒状物群用ならし装置は、ベルトコンベア上に交差するように架設された回転軸に、ベルトコンベア上に載せられた含水ゲル状重合体を押し拡げて均す帯状螺旋羽根を設けたもので、複雑な形状の帯状螺旋羽根等が必要であり、また帯状螺旋羽根を回転させるための動力源を必要とするという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を下記の手段により解決した。
(1)搬送ケースと、コンベアベルトと、ケーシングとを有するケースコンベアにおいて、
前記ケーシング内であって、該ケーシングの左右の側壁間に同じ高さ又は高さを変えて掛け渡された複数本の線条部材で構成された均し部を設けたことを特徴とするケースコンベア。
(2)前記均し部が、ケーシング内に一定間隔で同じ高さ又は高さを変えて複数個設けられていることを特徴とする前記(1)に記載のケースコンベア。
(3)前記均し部が、3本の線条部材で構成されていることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のケースコンベア。
(4)前記線条部材の表面が滑らかであることを特徴とする前記(1)から(3)の何れか1に記載のケースコンベア。
【発明の効果】
【0008】
本発明のケースコンベアにおいて、ベルトの両側のケース板間に複数本の線条部材を同じ高さ又は少し高さを変えて1組として構成された均し部を設けているので、ケースコンベアで搬送される脱水ケーキをそれぞれの線条部材で順番に切断及びベルトによる搬送で押し出することができ、切断面から上部の脱水ケーキが下部の脱水ケーキと再結合することなく分離されベルト上に落ちて行くので、脱水ケーキの塊を小さくすることができる。
また、脱水ケーキを水平方向に切断するので、上方から切断する場合と比べてベルト面への抵抗が軽減できベルト駆動動力の負荷を低減できる。
また、均し部をケースコンベアの長さに応じて一定間隔で同じ高さ又は高さを変えて複数個設置しているので脱水ケーキの塊を少しずつ小さくしていくことができケーシング内で脱水ケーキの詰まり(閉塞)をより確実に回避することができる。
さらに、前記均し部を特許文献1に記載されているならし装置よりも簡易的な構造とすることができる。
さらにまた、脱水ケーキが閉塞しないような大容量のケースコンベアを設置するスペースに余裕が無い場合、本発明の脱水ケーキを閉塞させない線条部材からなる均し部を設けた小容量のケースコンベアを狭い場所にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のケースコンベアの一部省略側面図である。
【
図2】本発明のケースコンベアの一部省略正面図である。
【
図4】本発明のケースコンベアの作用を表す図である。
【
図5】本発明のケースコンベアの作用を表す図である
【
図6】従来のケースコンベアの設置例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明のケースコンベアの一部省略側面図、
図2は本発明のケースコンベアの一部省略正面図、
図3は本発明のケースコンベアの平面図、
図4・
図5は本発明のケースコンベアの作用を表す図である。
図1~
図5に示すように、ケースコンベア1は、搬送ケース2と、コンベアローラ3と、ベルト4と、ケーシング5とを有し、ベルト4は、搬送ケース2の長手方向に配置されているプーリ6、6’に無端状に張設され掛け渡されている。
そして、前記ベルト4上に投下された輸送物を上流端側から下流端側(投入方向から出口方向)へ輸送する構成となっている。
以下に、ケースコンベア1の各部材について詳しく説明する。
搬送ケース2は、鉄板等の板材からなり、その断面をほぼU字状に加工し、両端部は閉鎖し、上面を開放している。 プーリ6、6’は水平軸7、7’を介して搬送ケース2の端部にそれぞれ回転自在に取り付けられている。
なお、プーリ6’は駆動モーター(図示しない)を備えている。
前記搬送ケース2上に設けられたケーシング5には、左右の側壁5a、5bが設けられている。
前記ケーシング5の左右の側壁5a、5b間には、脱水ケーキの均し部8が掛け渡されている。該脱水ケーキの均し部は、同じ高さ又は少し高さを変えて掛け渡された複数本の線条部材から構成される。
図1において均し部は、同じ高さで掛け渡された3本の線条部材、8a、8b、8cで構成されている。
なお、本実施の形態においては、3本の線条部材8a、8b、8cで均し部8を構成しているが、配置本数は、複数本であることが好ましく、3本に限定されるものではなく2本や4本で構成しても良い。
【0011】
また、線条部材としては、鉄線、銅線、鋼線の針金等の金属製の線材、あるいは化学繊維製の線材のような、引っ張り強度の大きい線材などが利用できる。
本発明にかかる前記線条部材は、その表面が滑らかであることが好ましい。
これは、線条部材をより線(ワイヤ)とした場合、脱水ケーキに含まれる繊維分がからまりやすく、線条部材の表面に脱水ケーキがまとわりついて団子状になってしまい、脱水ケーキの切断が困難になってしまう恐れがあるからである。
また、本実施の形態においては、均し部8を構成する線条部材として、鉄線を利用し、ベルト4に掛かる負荷や脱水ケーキ9の鉄線への付着を考慮し12番線(線径2.6mm)を用いている。なお、線条部材の太さは、これに限定されるものではなくケースコンベア1の大きさ(横幅)に応じて例えば8番線(線径4.0mm)から16番線(線径1.6mm)の間で選択することが好ましい。
そして、前記線条部材(鉄線8a、8b、8c)の配置間隔は、一度にケーシング5内に投入される脱水ケーキの塊を考慮して決められる。
本実施の形態においては、それぞれの間隔を20~30cmとしているが、これに限定されるものではない。
また、脱水ケーキの均し部8は、前記搬送ケース2上に設けられたケーシング5に一定間隔(10m間隔)で同じ高さ又は高さを変えて設けられる。
図5に示すように、本実施の形態において、脱水ケーキの均し部8は前記搬送ケース2上に設けられたケーシング5に10m間隔で高さを変えて3個(上流端側から順番に8A、8B、8Cとする)設け、確実に脱水ケーキを均すことができるよう構成されているが、均し部8の個数や設置間隔は、これに限定されるものではなく、ケースコンベア1の長さに応じて個数や設置間隔を決めれば良い。
【0012】
〈作用説明〉
次に、
図4及び
図5により、上記のように構成された本発明の実施態様に係るケースコンベアにおける(脱水ケーキ)均し部の作用について説明する。
上記のように構成した本発明のケースコンベア1は、駆動モーターに連結したプーリ6’の回転によってベルト4がコンベアローラ3に送られて矢印方向に回転移動する。この状態において、ケーシング5の上面から搬送ケース2に脱水ケーキ9が投入されると、投下された脱水ケーキ9はベルト4上に堆積され上流端側から下流端側へ移動される。
そしてベルト4上に堆積され脱水ケーキ9は、上流端側から下流端側へ移動される過程において、最初の均し部8Aの鉄線8aによって水平方向に切断される。
鉄線8aで切断された切断面から上部の脱水ケーキ9aは、鉄線が1本の場合には鉄線で切断された上部の脱水ケーキ9aが下部の脱水ケーキ9b上で再結合して脱水ケーキ9の塊が小さくならない場合が有る。しかし、本発明にかかるケースコンベア1においては、鉄線は複数本配置されているので、前記上部の脱水ケーキ9aが次の鉄線8bにあたったり、切断面に入り込んで、上部の脱水ケーキ9aが鉄線8bに引っ掛かったりすることにより搬送方向と逆方向に押され切断面から下部の脱水ケーキ9bと再結合することなく分離され、ベルト4上に転げ落ちる。
また、鉄線8bによっても下部の脱水ケーキ9bから分離されなかった上部の脱水ケーキ9aは、鉄線8cにより搬送方向と逆方向に押され、ベルト4上に転げ落ちる(
図4)。このように鉄線が1組8a、8b、8cの3本があると脱水ケーキの切断効果が確実となる。
このように最初の均し部8Aにより、均された脱水ケーキ9a、9bは、次に設けられ均し部8Bの鉄線8a~8cによって上記と同様の作用によりさらに小さい脱水ケーキに切断される。
同様に均し部8Bにより、均された脱水ケーキは、次に設けられた均し部8Cの鉄線8a~8cによって上記と同様の作用によりさらに小さい脱水ケーキに切断されベルト4上から排出される(
図5)。
本発明にかかるケースコンベア1は、上記作用により、特別な動力源を必要とすることなく、脱水ケーキ9の塊を少しずつ小さくしていくことができ、ケーシング5内での脱水ケーキ9による詰まり(閉塞)をより確実に回避することができる構成となっている。
【符号の説明】
【0013】
1 ケースコンベア
2 搬送ケース
3 コンベアローラ
4 ベルト(コンベアベルト)
5 ケーシング
6、6’ プーリ
7、7’ 水平軸
8 均し部
8a、8b、8c 鉄線
9 脱水ケーキ
11 粘着性粉粒状物群用ならし装置
13 ベルトコンベア
14 回転軸
15 支持棒
16 帯状螺旋羽根