(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】磁気センサ、半導体装置及び電気機器
(51)【国際特許分類】
G01R 33/07 20060101AFI20220421BHJP
H01L 43/06 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
G01R33/07
H01L43/06 Z
(21)【出願番号】P 2017246325
(22)【出願日】2017-12-22
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞野 竜哉
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-156699(JP,A)
【文献】特開2011-027529(JP,A)
【文献】特開2013-074415(JP,A)
【文献】特開2008-032424(JP,A)
【文献】特開2009-002851(JP,A)
【文献】特開2004-180286(JP,A)
【文献】特開2011-117811(JP,A)
【文献】特開2017-054353(JP,A)
【文献】特開2010-156543(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0204888(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 33/00-33/26、
H01H 36/00-36/02、
H03K 17/74-17/98、
H01L 27/22、
29/82、
43/00-43/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加される磁界に応じた信号を出力する磁電変換素子と、
前記磁電変換素子の出力信号を用いて第1極性の磁界及び前記第1極性とは逆の第2極性の磁界を区別して検出可能な検出回路、及び、前記検出回路による前記第1極性の磁界を検出するための第1検出動作及び前記第2極性の磁界を検出するための第2検出動作の実行を制御する制御回路を有する信号処理回路と、を備え、
前記信号処理回路は、前記第1検出動作及び前記第2検出動作の少なくとも一方を含む単位動作を間隔をおいて繰り返し実行し、
前記信号処理回路は、
第i回目の単位動作にて前記第1極性の磁界が検出された場合、第(i+1)回目の単位動作において前記第2検出動作を介さずに前記第1検出動作を実行し、第(i+1)回目の単位動作での前記第1検出動作において前記第1極性の磁界が検出されなかったときには第(i+1)回目の単位動作において前記第1検出動作の後に前記第2検出動作を実行し、且つ、
第i回目の単位動作にて前記第2極性の磁界が検出された場合、第(i+1)回目の単位動作において前記第1検出動作を介さずに前記第2検出動作を実行し、第(i+1)回目の単位動作での前記第2検出動作において前記第2極性の磁界が検出されなかったときには第(i+1)回目の単位動作において前記第2検出動作の後に前記第1検出動作を実行する(iは自然数)
、磁気センサ。
【請求項2】
前記信号処理回路は、第i回目の単位動作にて前記第1極性の磁界が検出され
、且つ、第(i+1)回目の単位動作での前記第1検出動作において前記第1極性の磁界が検出されたとき、第(i+1)回目の単位動作において前記第2検出動作を非実行とする
、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記信号処理回路は、第i回目の単位動作にて前記第2極性の磁界が検出され、且つ、第(i+1)回目の単位動作での前記第2検出動作において前記第2極性の磁界が検出されたとき、第(i+1)回目の単位動作において前記第1検出動作を非実行とする
、請求項1又は2に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記信号処理回路は、第i回目の単位動作にて前記第1極性の磁界及び前記第2極性の磁界の何れもが検出されなかった場合、
第(i+1)回目の単位動作において、前記第1検出動作及び前記第2検出動作の内、一方の検出動作を、他方の検出動作を介さずに実行し、前記一方の検出動作に対応する極性の磁界が検出されたときには、第(i+1)回目の単位動作において前記他方の検出動作を非実行とする
、請求項1~3の何れかに記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記信号処理回路は、第i回目の単位動作にて前記第1極性の磁界及び前記第2極性の磁界の何れもが検出されなかった場合、
第(i+1)回目の単位動作において、前記第1検出動作及び前記第2検出動作の内、一方の検出動作を、他方の検出動作を介さずに実行し、前記一方の検出動作に対応する極性の磁界が検出されたときには、第(i+1)回目の単位動作において前記他方の検出動作を非実行とする一方で、そうでないときには第(i+1)回目の単位動作において前記一方の検出動作の後に前記他方の検出動作を実行する
、請求項4に記載の磁気センサ。
【請求項6】
印加される磁界に応じた信号を出力する磁電変換素子と、
前記磁電変換素子の出力信号を用いて第1極性の磁界及び前記第1極性とは逆の第2極性の磁界を区別して検出可能な検出回路、及び、前記検出回路による前記第1極性の磁界を検出するための第1検出動作及び前記第2極性の磁界を検出するための第2検出動作の実行を制御する制御回路を有する信号処理回路と、を備え、
前記信号処理回路は、前記第1検出動作及び前記第2検出動作の少なくとも一方を含む単位動作を間隔をおいて繰り返し実行し、
前記信号処理回路は、
各単位動作において、前記第2検出動作を介さずに前記第1検出動作を実行することにより、前記第1極性の磁界が検出された場合には当該単位動作において前記第2検出動作を非実行とする一方で前記第1極性の磁界が検出されなかった場合には当該単位動作において前記第1検出動作の後に前記第2検出動作を実行し、
各単位動作において、前記第1検出動作を介さずに前記第2検出動作を実行することにより、前記第2極性の磁界が検出された場合には当該単位動作において前記第1検出動作を非実行とする一方で前記第2極性の磁界が検出されなかった場合には当該単位動作において前記第2検出動作の後に前記第1検出動作を実行する
、磁気センサ。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の磁気センサを形成する半導体装置であって、
前記磁気センサは集積回路を用いて形成される
、半導体装置。
【請求項8】
請求項1~5の何れかに記載の磁気センサを形成する半導体装置と、
前記半導体装置に接続される後段装置と、を備えた電気機器であって、
前記磁気センサは集積回路を用いて形成され、
前記半導体装置は、各単位動作による磁界の検出結果に基づく検出結果信号を前記後段装置に出力し、
前記後段装置は、前記検出結果信号に基づいて所定の処理を実行し、
前記半導体装置における前記信号処理回路は、前記後段装置からの制御に依ることなく、第i回目の単位動作による磁界の検出結果に応じて第(i+1)回目の単位動作の内容を制御する
、電気機器。
【請求項9】
請求項6に記載の磁気センサを形成する半導体装置と、
前記半導体装置に接続される後段装置と、を備えた電気機器であって、
前記磁気センサは集積回路を用いて形成され、
前記半導体装置は、各単位動作による磁界の検出結果に基づく検出結果信号を前記後段装置に出力し、
前記後段装置は、前記検出結果信号に基づいて所定の処理を実行し、
前記半導体装置における前記信号処理回路は、前記後段装置からの制御に依ることなく、各単位動作の内容を制御する
、電気機器。
【請求項10】
請求項1~6の何れかに記載の磁気センサを形成する半導体装置が設けられた本体部と、
前記本体部に対して閉状態、第1開状態及び第2開状態の何れかの状態をとるように前記本体部に対して開閉自在に取り付けられたカバー部と、
前記半導体装置に接続される後段装置と、を備えた電気機器であって、
前記磁気センサは集積回路を用いて形成され、
前記半導体装置は、各単位動作による磁界の検出結果に基づく検出結果信号を前記後段装置に出力し、
前記後段装置は、前記検出結果信号に基づいて所定の処理を実行し、
前記本体部には互いに対向する第1面及び第2面が設けられ、
前記閉状態においては前記本体部の前記第1面に対向する位置に前記カバー部が配され、前記第2開状態においては前記本体部の前記第2面に対向する位置に前記カバー部が配され、前記カバー部が前記閉状態と前記第2開状態との間で遷移する過程において前記カバー部は前記第1開状態となり、
前記閉状態において前記磁気センサにより前記第1極性の磁界が検出されるように、且つ、前記第2開状態において前記磁気センサにより前記第2極性の磁界が検出されるように、前記カバー部に磁石が設けられ、
前記第1開状態において前記磁気センサにより前記第1極性の磁界及び前記第2極性の磁界が非検出となるよう、前記第1開状態における前記磁気センサ及び前記磁石間の距離は、前記閉状態における前記磁気センサ及び前記磁石間の距離、並びに、前記第2開状態における前記磁気センサ及び前記磁石間の距離よりも長い
、電気機器。
【請求項11】
磁気センサを形成する半導体装置が設けられた本体部と、
前記本体部に対して閉状態、第1開状態及び第2開状態の何れかの状態をとるように前記本体部に対して開閉自在に取り付けられたカバー部と、
前記半導体装置に接続される後段装置と、を備えた電気機器であって、
前記磁気センサは、
印加される磁界に応じた信号を出力する磁電変換素子と、
前記磁電変換素子の出力信号を用いて第1極性の磁界及び前記第1極性とは逆の第2極性の磁界を区別して検出可能な検出回路、及び、前記検出回路による前記第1極性の磁界を検出するための第1検出動作及び前記第2極性の磁界を検出するための第2検出動作の実行を制御する制御回路を有する信号処理回路と、を備え、
前記信号処理回路は、前記第1検出動作及び前記第2検出動作の少なくとも一方を含む単位動作を間隔をおいて繰り返し実行し、第i回目の単位動作による磁界の検出結果に応じて第(i+1)回目の単位動作の内容を制御し(iは自然数)、
前記磁気センサは集積回路を用いて形成され、
前記半導体装置は、各単位動作による磁界の検出結果に基づく検出結果信号を前記後段装置に出力し、
前記後段装置は、前記検出結果信号に基づいて所定の処理を実行し、
前記本体部には互いに対向する第1面及び第2面が設けられ、
前記閉状態においては前記本体部の前記第1面に対向する位置に前記カバー部が配され、前記第2開状態においては前記本体部の前記第2面に対向する位置に前記カバー部が配され、前記カバー部が前記閉状態と前記第2開状態との間で遷移する過程において前記カバー部は前記第1開状態となり、
前記閉状態において前記磁気センサにより前記第1極性の磁界が検出されるように、且つ、前記第2開状態において前記磁気センサにより前記第2極性の磁界が検出されるように、前記カバー部に磁石が設けられ、
前記第1開状態において前記磁気センサにより前記第1極性の磁界及び前記第2極性の磁界が非検出となるよう、前記第1開状態における前記磁気センサ及び前記磁石間の距離は、前記閉状態における前記磁気センサ及び前記磁石間の距離、並びに、前記第2開状態における前記磁気センサ及び前記磁石間の距離よりも長い
、電気機器。
【請求項12】
磁気センサを形成する半導体装置が設けられた本体部と、
前記本体部に対して閉状態、第1開状態及び第2開状態の何れかの状態をとるように前記本体部に対して開閉自在に取り付けられたカバー部と、
前記半導体装置に接続される後段装置と、を備えた電気機器であって、
前記磁気センサは、
印加される磁界に応じた信号を出力する磁電変換素子と、
前記磁電変換素子の出力信号を用いて第1極性の磁界及び前記第1極性とは逆の第2極性の磁界を区別して検出可能な検出回路、及び、前記検出回路による前記第1極性の磁界を検出するための第1検出動作及び前記第2極性の磁界を検出するための第2検出動作の実行を制御する制御回路を有する信号処理回路と、を備え、
前記信号処理回路は、前記第1検出動作及び前記第2検出動作の少なくとも一方を含む単位動作を間隔をおいて繰り返し実行し、各単位動作において、前記第1検出動作及び前記第2検出動作の内、一方の検出動作を、他方の検出動作を介さずに実行することにより、対応する極性の磁界が検出された場合には、当該単位動作において前記他方の検出動作を非実行とし、
前記磁気センサは集積回路を用いて形成され、
前記半導体装置は、各単位動作による磁界の検出結果に基づく検出結果信号を前記後段装置に出力し、
前記後段装置は、前記検出結果信号に基づいて所定の処理を実行し、
前記本体部には互いに対向する第1面及び第2面が設けられ、
前記閉状態においては前記本体部の前記第1面に対向する位置に前記カバー部が配され、前記第2開状態においては前記本体部の前記第2面に対向する位置に前記カバー部が配され、前記カバー部が前記閉状態と前記第2開状態との間で遷移する過程において前記カバー部は前記第1開状態となり、
前記閉状態において前記磁気センサにより前記第1極性の磁界が検出されるように、且つ、前記第2開状態において前記磁気センサにより前記第2極性の磁界が検出されるように、前記カバー部に磁石が設けられ、
前記第1開状態において前記磁気センサにより前記第1極性の磁界及び前記第2極性の磁界が非検出となるよう、前記第1開状態における前記磁気センサ及び前記磁石間の距離は、前記閉状態における前記磁気センサ及び前記磁石間の距離、並びに、前記第2開状態における前記磁気センサ及び前記磁石間の距離よりも長い
、電気機器。
【請求項13】
前記磁気センサの磁電変換素子は、前記第1面及び前記第2面間を結ぶ方向の磁界に応じた信号を出力し、
前記閉状態及び前記第2開状態では、前記磁石のN極及びS極間を結ぶ方向が前記第1面及び前記第2面間を結ぶ方向と直交し、且つ、前記磁気センサ及び前記磁石の配置位置が前記第1面及び前記第2面間を結ぶ方向の直交方向において互いにずれている
、請求項10~12の何れかに記載の電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサ、並びに、磁気センサを形成する半導体装置及び磁気センサを備えた電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ホール素子を用いた磁気センサが様々に提案されている(例えば下記特許文献1参照)。磁気センサは、一般に、印加磁界に応じたホール電圧を出力するホール素子と、ホール素子の出力電圧を増幅する増幅器と、増幅器の出力電圧を所定の基準電圧と比較して比較結果を出力する比較器と、を備えて成り、磁気センサが設置された場所の磁界が一定の基準より強いか弱いかに応じた二値化信号を出力するようになっている。
【0003】
この種の磁気センサは、例えば、携帯電話機やタブレット型のコンピュータに設けられたカバーの開閉検出に用いられる。この場合には、例えば、携帯電話機又はコンピュータの本体側に磁気センサが配置され、カバー側の対応する箇所に永久磁石が配置される。本体側の制御系は、カバーの開閉検出結果に基づいてアクティブ状態及びスリープ状態の切り替え等を行うことができる。これを適正に実現すべく、磁気センサは磁界の印加有無を常時監視する必要がある。常時監視による電力消費をなるだけ抑制すべく、この種の磁気センサでは、間欠的に磁界の検出動作を行うようにすることが多い。
【0004】
磁気センサには、磁界の極性を区別不能なタイプと磁界の極性を区別して検出可能なタイプとがあるが、上記の開閉検出に用いられる磁気センサでは、永久磁石の取り付け方向に依らずに開閉検出を正しく実現できるよう、後者のタイプが採用されることも多い。
【0005】
図23に示す如く、磁界の極性を区別して検出可能な磁気センサでは、S極の磁界を検出するためのS極検出動作及びN極の磁界を検出するためのN極検出動作から成る単位動作が周期的に実行され、各単位動作におけるS極検出動作及びN極検出動作の検出結果から検出結果信号が生成及び出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
検出動作の間欠駆動により磁気センサの省電力化が図られるが、磁気センサには、省電力化に関して更なる改善の余地がある。
【0008】
そこで本発明は、省電力化に寄与する磁気センサ、並びに、該磁気センサを形成する半導体装置及び該磁気センサを備えた電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る第1の磁気センサは、印加される磁界に応じた信号を出力する磁電変換素子と、前記磁電変換素子の出力信号を用いて第1極性の磁界及び前記第1極性とは逆の第2極性の磁界を区別して検出可能な検出回路、及び、前記検出回路による前記第1極性の磁界を検出するための第1検出動作及び前記第2極性の磁界を検出するための第2検出動作の実行を制御する制御回路を有する信号処理回路と、を備え、前記信号処理回路は、前記第1検出動作及び前記第2検出動作の少なくとも一方を含む単位動作を間隔をおいて繰り返し実行し、第i回目の単位動作による磁界の検出結果に応じて第(i+1)回目の単位動作の内容を制御する(iは自然数)ことを特徴とする。
【0010】
具体的には例えば、前記第1の磁気センサにおいて、前記信号処理回路は、第i回目の単位動作にて前記第1極性の磁界が検出された場合、第(i+1)回目の単位動作において前記第2検出動作を介さずに前記第1検出動作を実行し、第(i+1)回目の単位動作での前記第1検出動作において前記第1極性の磁界が検出されたとき、第(i+1)回目の単位動作において前記第2検出動作を非実行とすると良い。
【0011】
より具体的には例えば、前記第1の磁気センサにおいて、前記信号処理回路は、第i回目の単位動作にて前記第1極性の磁界が検出された場合、第(i+1)回目の単位動作において前記第2検出動作を介さずに前記第1検出動作を実行し、第(i+1)回目の単位動作での前記第1検出動作において前記第1極性の磁界が検出されたときには第(i+1)回目の単位動作において前記第2検出動作を非実行とする一方で、そうでないときには第(i+1)回目の単位動作において前記第1検出動作の後に前記第2検出動作を実行すると良い。
【0012】
また具体的には例えば、前記第1の磁気センサにおいて、前記信号処理回路は、第i回目の単位動作にて前記第2極性の磁界が検出された場合、第(i+1)回目の単位動作において前記第1検出動作を介さずに前記第2検出動作を実行し、第(i+1)回目の単位動作での前記第2検出動作において前記第2極性の磁界が検出されたとき、第(i+1)回目の単位動作において前記第1検出動作を非実行とすると良い。
【0013】
より具体的には例えば、前記第1の磁気センサにおいて、前記信号処理回路は、第i回目の単位動作にて前記第2極性の磁界が検出された場合、第(i+1)回目の単位動作において前記第1検出動作を介さずに前記第2検出動作を実行し、第(i+1)回目の単位動作での前記第2検出動作において前記第2極性の磁界が検出されたときには第(i+1)回目の単位動作において前記第1検出動作を非実行とする一方で、そうでないときには第(i+1)回目の単位動作において前記第2検出動作の後に前記第1検出動作を実行すると良い。
【0014】
また具体的には例えば、前記第1の磁気センサにおいて、前記信号処理回路は、第i回目の単位動作にて前記第1極性の磁界及び前記第2極性の磁界の何れもが検出されなかった場合、第(i+1)回目の単位動作において、前記第1検出動作及び前記第2検出動作の内、一方の検出動作を、他方の検出動作を介さずに実行し、前記一方の検出動作に対応する極性の磁界が検出されたときには、第(i+1)回目の単位動作において前記他方の検出動作を非実行とすると良い。
【0015】
より具体的には例えば、前記第1の磁気センサにおいて、前記信号処理回路は、第i回目の単位動作にて前記第1極性の磁界及び前記第2極性の磁界の何れもが検出されなかった場合、第(i+1)回目の単位動作において、前記第1検出動作及び前記第2検出動作の内、一方の検出動作を、他方の検出動作を介さずに実行し、前記一方の検出動作に対応する極性の磁界が検出されたときには、第(i+1)回目の単位動作において前記他方の検出動作を非実行とする一方で、そうでないときには第(i+1)回目の単位動作において前記一方の検出動作の後に前記他方の検出動作を実行すると良い。
【0016】
本発明に係る第2の磁気センサは、印加される磁界に応じた信号を出力する磁電変換素子と、前記磁電変換素子の出力信号を用いて第1極性の磁界及び前記第1極性とは逆の第2極性の磁界を区別して検出可能な検出回路、及び、前記検出回路による前記第1極性の磁界を検出するための第1検出動作及び前記第2極性の磁界を検出するための第2検出動作の実行を制御する制御回路を有する信号処理回路と、を備え、前記信号処理回路は、前記第1検出動作及び前記第2検出動作の少なくとも一方を含む単位動作を間隔をおいて繰り返し実行し、各単位動作において、前記第1検出動作及び前記第2検出動作の内、一方の検出動作を、他方の検出動作を介さずに実行することにより、対応する極性の磁界が検出された場合には、当該単位動作において前記他方の検出動作を非実行とすることを特徴とする。
【0017】
具体的には例えば、前記第2の磁気センサに係る前記信号処理回路は、各単位動作において、前記一方の検出動作を、前記他方の検出動作を介さずに実行することにより対応する磁界が検出された場合には、当該単位動作において前記他方の検出動作を非実行とし、前記一方の検出動作を、前記他方の検出動作を介さずに実行することにより対応する磁界が検出されなかった場合には、当該単位動作において前記一方の検出動作の後に前記他方の検出動作を実行すると良い。
【0018】
本発明に係る半導体装置は、上記の何れかに記載の磁気センサを形成する半導体装置であって、前記磁気センサは集積回路を用いて形成されることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る第1の電気機器は、前記第1の磁気センサを形成する半導体装置と、前記半導体装置に接続される後段装置と、を備えた電気機器であって、前記磁気センサは集積回路を用いて形成され、前記半導体装置は、各単位動作による磁界の検出結果に基づく検出結果信号を前記後段装置に出力し、前記後段装置は、前記検出結果信号に基づいて所定の処理を実行し、前記半導体装置における前記信号処理回路は、前記後段装置からの制御に依ることなく、第i回目の単位動作による磁界の検出結果に応じて第(i+1)回目の単位動作の内容を制御することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る第2の電気機器は、前記第2の磁気センサを形成する半導体装置と、前記半導体装置に接続される後段装置と、を備えた電気機器であって、前記磁気センサは集積回路を用いて形成され、前記半導体装置は、各単位動作による磁界の検出結果に基づく検出結果信号を前記後段装置に出力し、前記後段装置は、前記検出結果信号に基づいて所定の処理を実行し、前記半導体装置における前記信号処理回路は、各単位動作において、前記第1検出動作及び前記第2検出動作の内、一方の検出動作を、他方の検出動作を介さずに実行することにより、対応する極性の磁界が検出された場合には、前記後段装置からの制御に依ることなく、当該単位動作において前記他方の検出動作を非実行とすることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る第3の電気機器は、前記第1又は第2の磁気センサを形成する半導体装置が設けられた本体部と、前記本体部に対して閉状態、第1開状態及び第2開状態の何れかの状態をとるように前記本体部に対して開閉自在に取り付けられたカバー部と、前記半導体装置に接続される後段装置と、を備えた電気機器であって、前記磁気センサは集積回路を用いて形成され、前記半導体装置は、各単位動作による磁界の検出結果に基づく検出結果信号を前記後段装置に出力し、前記後段装置は、前記検出結果信号に基づいて所定の処理を実行し、前記本体部には互いに対向する第1面及び第2面が設けられ、前記閉状態においては前記本体部の前記第1面に対向する位置に前記カバー部が配され、前記第2開状態においては前記本体部の前記第2面に対向する位置に前記カバー部が配され、前記カバー部が前記閉状態と前記第2開状態との間で遷移する過程において前記カバー部は前記第1開状態となり、前記閉状態において前記磁気センサにより前記第1極性の磁界が検出されるように、且つ、前記第2開状態において前記磁気センサにより前記第2極性の磁界が検出されるように、前記カバー部に磁石が設けられ、前記第1開状態において前記磁気センサにより前記第1極性の磁界及び前記第2極性の磁界が非検出となるよう、前記第1開状態における前記磁気センサ及び前記磁石間の距離は、前記閉状態における前記磁気センサ及び前記磁石間の距離、並びに、前記第2開状態における前記磁気センサ及び前記磁石間の距離よりも長いことを特徴とする。
【0022】
前記第3の電気機器において、例えば、前記磁気センサの磁電変換素子は、前記第1面及び前記第2面間を結ぶ方向の磁界に応じた信号を出力し、前記閉状態及び前記第2開状態では、前記磁石のN極及びS極間を結ぶ方向が前記第1面及び前記第2面間を結ぶ方向と直交し、且つ、前記磁気センサ及び前記磁石の配置位置が前記第1面及び前記第2面間を結ぶ方向の直交方向において互いにずれていると良い。
【0023】
尚、磁電変換素子に印加される磁界の極性(磁電変換素子の配置位置における磁束の向き)はS極及びN極の何れかである。従って、上記の第1極性、第2極性は、夫々、S極、N極である、或いは、夫々、N極、S極であると解される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、省電力化に寄与する磁気センサ、並びに、該磁気センサを形成する半導体装置及び該磁気センサを備えた電気機器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態にて参照されるX軸、Y軸及びZ軸と磁界の極性との関係を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る磁気センサの基本的な動作概念の説明図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る磁気センサの回路構成図である。
【
図4】
図3に示される増幅回路部の内部回路例を示す図である。
【
図5】
図3に示される基準電圧生成回路の内部回路例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態のS極検出動作に関わる、磁気センサ内の各部の信号波形を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態のN極検出動作に関わる、磁気センサ内の各部の信号波形を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る磁気センサの動作フローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態に係り、磁界に関する状態遷移に伴う動作制御の説明図である。
【
図10】本発明の実施形態に係り、磁界に関する状態遷移に伴う動作制御の説明図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る状態遷移図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る磁気センサ内の信号波形を示す図である(条件:無印加状態、S極先行モード)。
【
図13】本発明の実施形態に係る磁気センサ内の信号波形を示す図である(条件:S極印加状態、S極先行モード)。
【
図14】本発明の実施形態に係る磁気センサ内の信号波形を示す図である(条件:N極印加状態、N極先行モード)。
【
図15】本発明の第1実施例に係る基準電圧生成回路及び周辺回路を示す図である。
【
図16】本発明の第2実施例に係り、単位動作がセンシング間隔をおいて繰り返し実行される様子を示す図である。
【
図17】本発明の第3実施例に係る磁気センサICの外観斜視図である。
【
図18】本発明の第4実施例に係るPC(パーソナルコンピュータ)の外観斜視図及び外観側面図である。
【
図19】本発明の第4実施例に係り、カバーが閉状態、開状態であるときのPCの側面図である。
【
図20】本発明の第4実施例に係るPCの電気的な概略構成図である。
【
図21】本発明の第5実施例に係るPCのカバーが、閉状態、第1開状態及び第2開状態の何れかをとりうることを示す図である。
【
図22】本発明の第6実施例に係り、PCのカバー内の磁石の配置方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。
【0027】
図1(a)を参照する。本実施形態では、説明の具体化及び明確化のため、原点Oにて互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を定義する。本実施形態に係る磁気センサが設けられるホール素子10は、Z軸に直交する面上に配置されると共に、4つの端子A、B、C及びDを有し、ホール素子10の中心(端子A~Dを結んで形成される四角形の中心)は原点Oに位置する。ホール素子10は、4つの端子A、B、C及びDに関して、幾何学的に等価な形状の板状に形成されている。ここで、幾何学的に等価な形状とは、Z軸上の任意の位置(但し原点Oを除く)からZ軸に沿ってホール素子10を観測したとき、任意の初期状態でのホール素子10の形状と、初期状態からZ軸を回転軸としてホール素子10を90度回転させたときのホール素子10の形状とが一致することを意味する。
【0028】
図1(b)及び(c)を参照し、今、Z軸に平行にN極とS極が並んでいて且つZ軸上に位置する磁石MGを想定する。磁石MGは永久磁石であるが、電磁石であっても構わない。本実施形態では、
図1(b)に示す如く、磁石MGがZ軸の正側に配置されていてN極よりもS極がホール素子10に近く、これによってZ軸の負側から原点Oを介して正側に向かう磁力線が生じているとき、ホール素子10にS極の磁界が印加されていると考え、
図1(c)に示す如く、磁石MGがZ軸の正側に配置されていてS極よりもN極がホール素子10に近く、これによってZ軸の正側から原点Oを介して負側に向かう磁力線が生じているとき、ホール素子10にN極の磁界が印加されている、と考えるものとする。本実施形態において、単に磁界と述べた場合、それはホール素子10に印加される磁界を指す。ホール素子10に印加される磁界は、ホール素子10を内包する磁気センサに印加される磁界でもある。
【0029】
図2を参照して、本発明の実施形態に係る磁気センサの基本的な動作概念を説明する。本実施形態に係る磁気センサは、S極検出動作及びN極検出動作の少なくとも一方を含む単位動作を、間隔をおいて繰り返し実行する。この際、単位動作は一定の周期で繰り返し実行される。但し、第i
A回目及び第(i
A+1)回目の単位動作の実行タイミングの間隔と、第i
B回目及び第(i
B+1)回目の単位動作の実行タイミングの間隔とが、互いに異なることがあり得ても良い(i
A及びi
Bは互いに異なる自然数)。
【0030】
S極検出動作は、ホール素子10の出力信号に基づいて、所定の基準強さ以上のS極の磁界がホール素子10に印加されているか否かを判定及び検出する動作である。所定の基準強さ以上のS極の磁界がホール素子10に印加されているとは、ホール素子10の配置位置において、磁束の向きが原点OからZ軸の正側に向かう向きと一致している所定の強さ以上の磁界が存在している状態を指す。S極検出動作において、所定の基準強さ以上のS極の磁界がホール素子10に印加されていると検出することをS極の検出有り又は単にS極の検出と表現し、所定の基準強さ以上のS極の磁界がホール素子10に印加されていると検出されないことをS極の検出無し又はS極の非検出と表現する。
N極検出動作は、ホール素子10の出力信号に基づいて、所定の基準強さ以上のN極の磁界がホール素子10に印加されているか否かを判定及び検出する動作である。所定の基準強さ以上のN極の磁界がホール素子10に印加されているとは、ホール素子10の配置位置において、磁束の向きがZ軸の正側から原点Oに向かう向きと一致している所定の強さ以上の磁界が存在している状態を指す。N極検出動作において、所定の基準強さ以上のN極の磁界がホール素子10に印加されていると検出することをN極の検出有り又は単にN極の検出と表現し、所定の基準強さ以上のN極の磁界がホール素子10に印加されていると検出されないことをN極の検出無し又はN極の非検出と表現する。
S極検出動作における上記所定の基準強さと、N極検出動作における上記所定の基準強さは、互いに一致していても良いし、互いに異なっていても良い。
【0031】
各単位動作は、S極先行モード及びN極先行モードの何れかの動作モードにて実行される。
S極先行モードでの単位動作においては、S極検出動作を実行してからN極検出動作を実行することを予定にしつつも、先に行ったS極検出動作にてS極が検出されたならば(即ちS極の検出有りと判定されたならば)当該単位動作においてN極検出動作を非実行として当該単位動作を終える。これにより、実行が不要と言えるN極検出動作の分だけ電力消費が抑制される。S極先行モードでの単位動作において、先に行ったS極検出動作にてS極が非検出となったならば(即ちS極の検出無しと判定されたならば)当該単位動作においてS極検出動作の後にN極検出動作を実行する。
N極先行モードでの単位動作においては、N極検出動作を実行してからS極検出動作を実行することを予定にしつつも、先に行ったN極検出動作にてN極が検出されたならば(即ちN極の検出有りと判定されたならば)当該単位動作においてS極検出動作を非実行として当該単位動作を終える。これにより、実行が不要と言えるS極検出動作の分だけ電力消費が抑制される。N極先行モードでの単位動作において、先に行ったN極検出動作にてN極が非検出となったならば(即ちN極の検出無しと判定されたならば)当該単位動作においてN極検出動作の後にS極検出動作を実行する。
【0032】
第i回目の単位動作にてS極が検出されたならば第(i+1)回目の単位動作はS極先行モードにて実行される(iは自然数)。第i回目の単位動作にてS極が検出されたならば、第(i+1)回目の単位動作の実行時点でもS極が検出される可能性が高いと考えられるからであり、第(i+1)回目の単位動作をS極検出動作から行うことで、N極検出動作を非実行にできる可能性が高まる(結果、電力消費が抑制される)。
同様に、第i回目の単位動作にてN極が検出されたならば第(i+1)回目の単位動作はN極先行モードにて実行される。第i回目の単位動作にてN極が検出されたならば、第(i+1)回目の単位動作の実行時点でもN極が検出される可能性が高いと考えられるからであり、第(i+1)回目の単位動作をN極検出動作から行うことで、S極検出動作を非実行にできる可能性が高まる(結果、電力消費が抑制される)。
尚、第i回目の単位動作にてS極もN極も未検出ならば、第i回目の単位動作での動作モードが第(i+1)回目の単位動作に対しても適用される、或いは、S極先行モード及びN極先行モードの内、予め定められた一方のモードが第(i+1)回目の単位動作に対して適用される。
【0033】
図3に、上記のような動作を実現する本実施形態の磁気センサ1の回路構成を示す。磁気センサ1は、符号10、20、30、41、42、50、61、62、70、71及び80にて参照される各部位を含む、
図3に示す各構成部品を備える。磁気センサ1には、図示しない電源回路にて生成された正の直流電圧が電源電圧VDDとして供給される。特に記述無き限り、本実施形態において述べる任意の電圧は、0V(ボルト)の基準電位を有するグランドから見た電位であるとする。
【0034】
ホール素子10は、自身に印加される磁界の強さ及び磁界の極性(換言すれば、ホール素子10の配置位置における磁界の強さと磁束の向き)に応じたホール電圧を表す信号を、端子A及びCから成る第1端子対、又は、端子B及びDから成る第2端子対より出力する。
【0035】
切替回路20は、切替信号CTL1及びCTL2に応じ、上記の第1端子対及び第2端子対の内、何れか一方に電源電圧VDDを供給すると共に、他方からホール電圧を取り出す回路である。具体的には、切替回路20は、切替信号CTL1のレベル(論理)に応じてオン/オフ制御されるスイッチ21、23、25及び27と、切替信号CTL2のレベル(論理)に応じてオン/オフ制御されるスイッチ22、24、26及び28とを有していると共に、出力端子E1A及びE2Aを有する。スイッチ21~28を含む本実施形態で述べる各スイッチは、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)等の半導体スイッチング素子にて構成される。
【0036】
切替信号CTL1及びCTL2並びに後述の切替信号CTL3及び電源オン信号POWを含む各二値信号は、ローレベル及びローレベルよりも電位の高いハイレベルの信号電位の何れかをとる。ここでは、スイッチ21、23、25及び27は、切替信号CTL1がローレベルのときにオフとなり且つ切替信号CTL1がハイレベルのときにオンとなるものとし、スイッチ22、24、26及び28は、切替信号CTL2がローレベルのときにオフとなり且つ切替信号CTL2がハイレベルのときにオンとなるものとする。尚、上記の信号レベルとオン/オフの関係は例示に過ぎず、それと逆の関係が採用されても良い。
【0037】
切替回路20は、電源オン信号POWがハイレベルとされるセンシング期間において、切替信号CTL1がハイレベル且つ切替信号CTL2がローレベルとされる第1切替状態、又は、切替信号CTL1がローレベル且つ切替信号CTL2がハイレベルとされる第2切替状態となる。詳細なタイミングは後述されるが、電源オン信号POWは間欠的にオンとされる信号であり、磁気センサ1による磁気検出(換言すれば磁界検出)は、電源オン信号POWがハイレベルである期間のみにおいて実行される。
【0038】
第1切替状態では、端子Aにスイッチ21を介して電源電圧VDDが印加されると共に端子Cがスイッチ25を介してグランドに接続され、且つ、端子Bがスイッチ23を介して出力端子E1Aに接続されると共に端子Dがスイッチ27を介して出力端子E2Aに接続される。故に、第1切替状態では、端子B及びD間に磁界の強さ及び極性に応じたホール電圧が発生し、端子Bの電圧Vbが電圧Vpとして出力端子E1Aに加わると共に端子Dの電圧Vdが電圧Vnとして出力端子E2Aに加わる。
【0039】
第2切替状態では、端子Bにスイッチ24を介して電源電圧VDDが印加されると共に端子Dがスイッチ28を介してグランドに接続され、且つ、端子Aがスイッチ22を介して出力端子E1Aに接続されると共に端子Cがスイッチ26を介して出力端子E2Aに接続される。故に、第2切替状態では、端子A及びC間に磁界の強さ及び極性に応じたホール電圧が発生し、端子Aの電圧Vaが電圧Vpとして出力端子E1Aに加わると共に端子Cの電圧Vcが電圧Vnとして出力端子E2Aに加わる。
【0040】
第1切替状態での端子B及びDの電圧並びに第2切替状態での端子A及びCの電圧は、印加される磁界の強さ及び極性に依存して変化するが、ここでは、
第1切替状態において、ホール素子10にS極の磁界を印加されているとき、端子Dの電圧Vdが端子Bの電圧Vbよりも高くなる一方で、ホール素子10にN極の磁界を印加されているとき、端子Dの電圧Vdが端子Bの電圧Vbよりも低くなるように、且つ、
第2切替状態において、ホール素子10にS極の磁界を印加されているとき、端子Aの電圧Vaが端子Cの電圧Vcよりも高くなる一方で、ホール素子10にN極の磁界を印加されているとき、端子Aの電圧Vaが端子Cの電圧Vcよりも低くなるように、
ホール素子10が形成されているものとする。
【0041】
増幅回路部30は、出力端子E1Aに接続される増幅回路31及び出力端子E2Aに接続される増幅回路32を備えると共に、電源オン信号POWに応じてオン/オフ制御されるスイッチ34及び35を備える。増幅回路31は、出力端子E1Aにおける電圧Vp(Vb又はVa)を所定の増幅度αで増幅し、これにより得られる増幅電圧AOUT1を増幅出力端子E1Bから出力する。増幅回路32は、出力端子E2Aにおける電圧Vn(Vd又はVc)を所定の増幅度αで増幅し、これにより得られる増幅電圧AOUT2を増幅出力端子E2Bから出力する。
【0042】
増幅回路31、32には、夫々、スイッチ34、35を介し電源電圧VDDが駆動電圧として供給される。ここでは、電源オン信号POWがハイレベルであるときにスイッチ34及び35がオンとなって増幅回路31及び32に電源電圧VDDが供給され、電源オン信号POWがローレベルであるときにスイッチ34及び35がオフとなって増幅回路31及び32への電源電圧VDDの供給が遮断されるものとする。尚、上記の信号レベルとオン/オフの関係は例示に過ぎず、それと逆の関係が採用されても良い。
【0043】
コンデンサ41は、増幅回路部30の第1の増幅出力端子E1Bと比較回路70における第1の比較入力端子E1Cとの間に接続され、コンデンサ42は、増幅回路部30の第2の増幅出力端子E2Bと比較回路70における第2の比較入力端子E2Cとの間に接続される。ここでは、比較回路70における第1の比較入力端子E1C、第2の比較入力端子E2Cは、夫々、比較回路70における非反転入力端子(+)、反転入力端子(-)であるとするが、それらの関係が逆になるような変形も可能である。
【0044】
基準電圧生成回路50は、電源オン信号POWがハイレベルであるときに、電源電圧VDDを元に、正の直流電圧である基準電圧VREF1及びVREF2を生成する。但し、基準電圧VREF2は、所定電圧VREFだけ基準電圧VREF1よりも高い(VREF>0)。
【0045】
比較回路70の比較入力端子E1Cとコンデンサ41を接続する配線は、ノードND1にてスイッチ61に接続されていると共にスイッチ61を介して基準電圧生成回路50に接続されており、スイッチ61がオンであるときにのみノードND1及び比較回路70の比較入力端子E1Cに基準電圧VREF1が加わる。比較回路70の比較入力端子E2Cとコンデンサ42を接続する配線は、ノードND2にてスイッチ62に接続されていると共にスイッチ62を介して基準電圧生成回路50に接続されており、スイッチ62がオンであるときにのみノードND2及び比較回路70の比較入力端子E2Cに基準電圧VREF2が加わる。スイッチ61及び62は、切替信号CTL3のレベル(論理)に応じてオン/オフ制御されるスイッチである。ここでは、スイッチ61及び62は、切替信号CTL3がローレベルのときにオフとなり且つ切替信号CTL3がハイレベルのときにオンとなるものとする。尚、上記の信号レベルとオン/オフの関係は例示に過ぎず、それと逆の関係が採用されても良い。
【0046】
比較回路70は、第1の比較入力端子E1C及びノードND1に加わる第1の比較電圧INC1と、第2の比較入力端子E2C及びノードND2に加わる第2の比較電圧INC2とを比較し、比較電圧INC1が比較電圧INC2よりも高いときには、ハイレベルの比較結果信号COUTを出力する一方で、比較電圧INC1が比較電圧INC2よりも低いときには、ローレベルの比較結果信号COUTを出力する。“INC1=INC2”のとき、比較結果信号COUTのレベルはハイレベル及びローレベルの何れかであるが、ここではローレベルであるとする。
【0047】
また、比較回路70には、スイッチ71を介し電源電圧VDDが駆動電圧として供給される。ここでは、電源オン信号POWがハイレベルであるときにスイッチ71がオンとなって比較回路70に電源電圧VDDが供給され、電源オン信号POWがローレベルであるときにスイッチ71がオフとなって比較回路70への電源電圧VDDの供給が遮断されるものとする。尚、上記の信号レベルとオン/オフの関係は例示に過ぎず、それと逆の関係が採用されても良い。
【0048】
制御回路80は、所定周波数のクロック信号を生成する発振回路と、クロック信号を用いて切替回路CTL1~CTL3及び電源オン信号POWを生成すると共に、比較回路70からの比較結果信号COUTに基づいて出力信号LOUT1及びLOUT2を生成及び出力する論理回路と、を備える。詳細は後述されるが、出力信号LOUT1にてS極検出動作の検出結果が表され、出力信号LOUT2にてN極検出動作の検出結果が表される。出力信号LOUT1、LOUT2を、夫々、磁気センサ1の外部出力端子TMOUT1、TMOUT2から磁気センサ1の外部に対して出力することができる。
【0049】
図4に増幅回路部30の具体的な回路例を示す。
図4の増幅回路部30は、増幅器31_1及び32_1と、帰還抵抗31_2、32_2及び33と、を有して構成される。
図4には示していないが、増幅器31_1、32_1は、夫々、スイッチ34、35を介して電源電圧VDDの供給を受けることで駆動する。切替回路20の出力端子E1
A、E2
Aは、夫々、増幅器31_1の非反転入力端子、増幅器32_1の非反転入力端子に接続される。増幅出力端子E1
Bとして機能する増幅器31_1の出力端子は帰還抵抗31_2を介して増幅器31_1の反転入力端子に接続され、増幅出力端子E2
Bとして機能する増幅器32_1の出力端子は帰還抵抗32_2を介して増幅器32_1の反転入力端子に接続される。また、増幅器31_1及び32_1の反転入力端子は帰還抵抗33を介して互いに接続されている。
図3の増幅回路31は増幅器31_1と帰還抵抗31_2及び33にて構成され、
図3の増幅回路32は増幅器32_1と帰還抵抗32_2及び33にて構成されることになる。
図4の回路では、増幅回路31及び32間で帰還抵抗33が共有されているが、該共有が行われない形態で各増幅回路を形成しても良い。
【0050】
図5に基準電圧生成回路50の具体的な回路例を示す。
図4の基準電圧生成回路50は、電源電圧VDDが加わる端子とグランドとの間に直列に接続された分圧抵抗51~53並びにスイッチ57及び58を有し、電源電圧VDDが加わる端子から、グランドに向けて、スイッチ57、分圧抵抗51、52、53、スイッチ58の順に配置されている。電源オン信号POWに応じてオン/オフ制御されるスイッチ57及び58が共にオンのときにのみ、電源電圧VDDが分圧抵抗51~53の直列回路に加わる。ここでは、電源オン信号POWがハイレベルであるときにのみ、スイッチ57及び58がオンとなって分圧抵抗51及び52の接続点に基準電圧VREF2が発生し且つ分圧抵抗52及び53の接続点に基準電圧VREF1が発生するものとする。尚、上記の信号レベルとオン/オフの関係は例示に過ぎず、それと逆の関係が採用されても良い。
【0051】
[S極検出動作]
図6を参照し、磁気センサ1におけるS極検出動作を説明する。尚、
図6では、増幅電圧AOUT1及び比較電圧INC1の信号波形を実線で表す一方で増幅電圧AOUT2及び比較電圧INC2の信号波形を破線で表し、図示の便宜上、増幅電圧AOUT1の実線信号波形と増幅電圧AOUT2の破線信号波形をずらして示すと共に、比較電圧INC1の実線信号波形と比較電圧INC2の破線信号波形をずらして示している(後述の
図7でも同様)。また、磁気センサ1には、回路構成に応じた信号遅延が存在するが、
図6では、信号遅延の存在を無視している(後述の
図7でも同様)。
【0052】
制御回路80では、発振回路にて生成されたクロック信号に基づく、所定の基準周波数の矩形波信号である基準クロック信号CLKが生成される。S極検出動作は、基準クロック信号CLKの2クロック分の区間を用いて実行され、S極検出動作の2クロック分の区間における前半のクロック区間、後半のクロック区間を、夫々、PS1、PS2にて表す。前半クロック区間PS1では、切替信号CTL1及びCTL3がハイレベル且つ切替信号CTL2がローレベルとされる。後半クロック区間PS2では、切替信号CTL1及びCTL3がローレベル且つ切替信号CTL2がハイレベルとされる。電源オン信号POWは、S極検出動作の実行中において(即ち区間PS1及びPS2において)ハイレベルとされる。尚、切替信号CTL1~CTL3及び電源オン信号POWは、S極検出動作及びN極検出動作の何れも実行されていない区間では、ローレベルに保持される。
【0053】
S極検出動作の前半クロック期間PS1の開始時における基準クロック信号CLKの立ち上がりエッジに同期して、切替信号CLT1及びCTL3のレベルがローレベルからハイレベルに切り替わる。
【0054】
切替信号CLT1がハイレベルとなることで切替回路20が第1切替状態となる。切替回路20が第1切替状態とされたことで、切替回路20の出力端子E1A、E2Aにホール素子10の端子B、Dの電圧Vb、Vdが加わるので、増幅電圧AOUT1、AOUT2は、
AOUT1=α(Vb-Voffa1)、
AOUT2=α(Vd-Voffa2)、
となる。Voffa1及びVoffa2は、夫々、増幅回路31、32の入力オフセット電圧を表す。
【0055】
一方で、S極検出動作の前半クロック期間PS1では、切替信号CLT3がハイレベルとなることを通じて切替信号スイッチ61及び62がオンとなるため、比較回路70の入力端子E1C、E2Cには、夫々、基準電圧VREF1、VREF2が比較電圧INC1、INC2として供給された状態となる。
【0056】
これにより、コンデンサ41には、基準電圧VREF1と増幅電圧AOUT1の差電圧“VREF1-α(Vb-Voffa1)”が充電され、コンデンサ42には、基準電圧VREF2と増幅電圧AOUT2の差電圧“VREF2-α(Vd-Voffa2)”が充電される。
【0057】
これらの充電が行われた後、次に到来する基準クロック信号CLKの立ち上がりエッジに同期して、切替信号CLT1及びCTL3のレベルがハイレベルからローレベルに切り替わる一方で切替信号CLT2のレベルがローレベルからハイレベルに切り替わる。
【0058】
切替信号CLT2がハイレベルとなることで切替回路20が第2切替状態となる。切替回路20が第2切替状態とされたことで、切替回路20の出力端子E1A、E2Aにホール素子10の端子A、Cの電圧Va、Vcが加わるので、増幅電圧AOUT1、AOUT2は、“AOUT1=α(Va-Voffa1)”、“AOUT2=α(Vc-Voffa2)”にて表される。
【0059】
一方、S極検出動作の後半クロック期間PS2では、切替信号CLT3がローレベルとなることを通じてスイッチ61及び62がオフとされるが、コンデンサ41及び42の充電電荷は保持されるので、後半クロック期間PS2での比較電圧INC1、INC2は、夫々、下記式(1)及び(2)にて表される。これらの比較電圧INC1及びINC2には、増幅回路31及び32の入力オフセット電圧Voffa1及びVoffa2が相殺されて含まれないこととなる。
INC1=VREF1-α(Vb-Voffa1)+α(Va-Voffa1) =VREF1-α(Vb-Va) ・・・(1)
INC2=VREF2-α(Vd-Voffa2)+α(Vc-Voffa2) =VREF2-α(Vd-Vc) ・・・(2)
【0060】
図6の左側半分には、所定の基準強さ以上のS極の磁界がホール素子10に印加されているときの信号波形が示されており、その時には、S極検出動作の後半クロック期間PS2において“INC1>INC2”となってハイレベルの比較結果信号COUTが出力される。所定の基準強さ以上のS極の磁界がホール素子10に印加されていないときには、S極検出動作の後半クロック期間PS2において“INC1>INC2”が非成立となってローレベルの比較結果信号COUTが出力される。例として、
図6の右側半分には、N極の磁界がホール素子10に印加されているときの信号波形が示されている。
【0061】
ホール素子10の出力電圧には、ホール素子10がパッケージから受ける応力等により生じるオフセット信号成分(これを素子オフセット電圧と称する)が含まれる。第1切替状態で端子B及びD間に生じる電圧と、第2切替状態で端子A及びC間に生じる電圧とでは、磁界に応じた有効信号成分の電圧は同相となる一方で、素子オフセット電圧は逆相となる。つまり、電圧Vb、Vd、Va、Vcに含まれる素子オフセット電圧を、夫々、Vboffe、Vdoffe、Vaoffe、Vcoffeで表すと、関係式“Vboffe-Vdoffe=Vaoffe-Vcoffe”が成立する。この関係式は、比較電圧INC1及びINC2の差分電圧において(即ち比較電圧INC1及びINC2を比較する段階において)素子オフセット電圧がキャンセルされていることを示している。
【0062】
制御回路80は、出力信号LOUT1を原則としてハイレベルとし、S極検出動作の後半クロック期間PS2での比較結果信号COUTがハイレベルであればS極検出動作においてS極が検出されたと判断して、出力信号LOUT1をローレベルとする。出力信号LOUT1をローレベルとした後には、以下の第1条件又は第2条件が成立するまで出力信号LOUT1のローレベルを維持し、第1条件及び第2条件の少なくとも一方が成立すると出力信号LOUT1をハイレベルに戻す。第1条件は、以降に実行されるS極検出動作においてS極が非検出となるという条件である。第2条件は、以降に実行されるN極検出動作にてN極が検出されるという条件である。
【0063】
[N極検出動作]
図7を参照し、磁気センサ1におけるN極検出動作を説明する。
【0064】
N極検出動作は、基準クロック信号CLKの2クロック分の区間を用いて実行され、N極検出動作の2クロック分の区間における前半のクロック区間、後半のクロック区間を、夫々、PN1、PN2にて表す。N極検出動作では、S極検出動作とは異なり、前半クロック区間PN1において、切替信号CTL2及びCTL3がハイレベル且つ切替信号CTL1がローレベルとされ、後半クロック区間PN2において、切替信号CTL2及びCTL3がローレベル且つ切替信号CTL1がハイレベルとされる。電源オン信号POWは、N極検出動作の実行中において(即ち区間PN1及びPN2において)ハイレベルとされる。
【0065】
N極検出動作の前半クロック期間PN1の開始時における基準クロック信号CLKの立ち上がりエッジに同期して、切替信号CLT2及びCTL3のレベルがローレベルからハイレベルに切り替わる。
【0066】
切替信号CLT2がハイレベルとなることで切替回路20が第2切替状態となる。切替回路20が第2切替状態とされたことで、切替回路20の出力端子E1A、E2Aにホール素子10の端子A、Cの電圧Va、Vcが加わるので、増幅電圧AOUT1、AOUT2は、
AOUT1=α(Va-Voffa1)、
AOUT2=α(Vc-Voffa2)、
となる。
【0067】
一方で、N極検出動作の前半クロック期間PN1では、切替信号CLT3がハイレベルとなることを通じて切替信号スイッチ61及び62がオンとなるため、比較回路70の入力端子E1C、E2Cには、夫々、基準電圧VREF1、VREF2が比較電圧INC1、INC2として供給された状態となる。
【0068】
これにより、コンデンサ41には、基準電圧VREF1と増幅電圧AOUT1の差電圧“VREF1-α(Va-Voffa1)”が充電され、コンデンサ42には、基準電圧VREF2と増幅電圧AOUT2の差電圧“VREF2-α(Vc-Voffa2)”が充電される。
【0069】
これらの充電が行われた後、次に到来する基準クロック信号CLKの立ち上がりエッジに同期して、切替信号CLT2及びCTL3のレベルがハイレベルからローレベルに切り替わる一方で切替信号CLT1のレベルがローレベルからハイレベルに切り替わる。
【0070】
切替信号CLT1がハイレベルとなることで切替回路20が第1切替状態となる。切替回路20が第1切替状態とされたことで、切替回路20の出力端子E1A、E2Aにホール素子10の端子B、Dの電圧Vb、Vdが加わるので、増幅電圧AOUT1、AOUT2は、
AOUT1=α(Vb-Voffa1)、
AOUT2=α(Vd-Voffa2)、
となる。
【0071】
一方、N極検出動作の後半クロック期間PN2では、切替信号CLT3がローレベルとなることを通じてスイッチ61及び62がオフとされるが、コンデンサ41及び42の充電電荷は保持されるので、後半クロック期間PN2での比較電圧INC1、INC2は、夫々、下記式(3)及び(4)にて表される。これらの比較電圧INC1及びINC2には、増幅回路31及び32のオフセット電圧Voffa1及びVoffa2が相殺されて含まれないこととなる。
INC1=VREF1-α(Va-Voffa1)+α(Vb-Voffa1) =VREF1-α(Va-Vb) ・・・(1)
INC2=VREF2-α(Vc-Voffa2)+α(Vd-Voffa2) =VREF2-α(Vc-Vd) ・・・(2)
【0072】
図7の左側半分には、所定の基準強さ以上のN極の磁界がホール素子10に印加されているときの信号波形が示されており、その時には、N極検出動作の後半クロック期間PN2において“INC1>INC2”となってハイレベルの比較結果信号COUTが出力される。所定の基準強さ以上のN極の磁界がホール素子10に印加されていないときには、N極検出動作の後半クロック期間PN2において“INC1>INC2”が非成立となってローレベルの比較結果信号COUTが出力される。例として、
図7の右側半分には、S極の磁界がホール素子10に印加されているときの信号波形が示されている。
【0073】
比較電圧INC1及びINC2の差分電圧において(即ち比較電圧INC1及びINC2を比較する段階において)素子オフセット電圧がキャンセルされていることは、S極検出動作の説明で述べた通りである。
【0074】
制御回路80は、出力信号LOUT2を原則としてハイレベルとし、N極検出動作の後半クロック期間PN2での比較結果信号COUTがハイレベルであればN極検出動作においてN極が検出されたと判断して、出力信号LOUT2をローレベルとする。出力信号LOUT2をローレベルとした後には、以下の第3条件又は第4条件が成立するまで出力信号LOUT2のローレベルを維持し、第3条件及び第4条件の少なくとも一方が成立すると出力信号LOUT2をハイレベルに戻す。第3条件は、以降に実行されるN極検出動作においてN極が非検出となるという条件である。第4条件は、以降に実行されるS極検出動作にてS極が検出されるという条件である。
【0075】
[動作フローチャート]
図8を参照し、磁気センサ1の動作の流れを説明する。磁気センサ1への電源電圧VDDの供給が開始されると、まず、ステップS10において磁気センサ1は初期状態となる。磁気センサ1の初期状態において、出力信号LOUT1及びLOUT2はハイレベルであり、磁気センサ1の動作モードは、S極先行モード及びN極先行モードの内、予め定められた一方のモードとなる。ステップS10に続くステップS20以降の各動作は、制御回路80の制御の下で実行される。磁気センサ1の動作モードがS極先行モード及びN極先行モードの何れに設定されるのかは、制御回路80に含まれる論理回路の状態にて決定される。故に、制御回路80が磁気センサ1の動作モードの設定を行っていると考えて良い。
【0076】
ステップS20では、磁気センサ1の動作モードが確認される。磁気センサ1の動作モードがS極先行モードに設定されておればステップS21に進む一方、磁気センサ1の動作モードがN極先行モードに設定されておればステップS31に進む。
【0077】
ステップS21において、制御回路80は、S極検出動作を実現するための信号CTL1~CTL3及びPOWを検出ブロック(検出回路)に供給することで、検出ブロックにS極検出動作を行わせる。
【0078】
ここで、検出ブロックとは、磁気センサ1の内、比較結果信号COUTを導出するまでの回路ブロックを指し、
図3の回路例では、切替回路20、増幅回路部30、コンデンサ41及び42、基準電圧生成回路50、スイッチ61及び62、比較回路70、並びに、スイッチ71が、検出ブロックの構成要素に含まれる。ここでは、検出ブロックの構成要素にホール素子10が含まれないと考えるが、ホール素子10も含まれると考えることも可能である。何れにせよ、検出ブロックは、制御回路80の制御の下、ホール素子10の出力信号(Va、Vb、Vc、Vd)を用いてS極検出動作及びN極検出動作を行うことができる。つまり、検出ブロックは、制御回路80の制御の下、ホール素子10の出力信号(Va、Vb、Vc、Vd)を用いて、S極の磁界及びN極の磁界を区別して検出することが可能である。検出ブロック(検出回路)と制御回路80とで信号処理回路が形成されると考えることが可能である。
【0079】
ステップS21のS極検出動作にてS極が検出された場合(即ちS極の検出有りと判断された場合には)、S極先行モードを維持したまま(ステップS22のY、S23)、N極検出動作を行うことなくステップS40に進む。一方、ステップS21のS極検出動作にてS極が非検出であった場合(即ちS極の検出無しと判断された場合には)、ステップS24に進む。
【0080】
ステップS24において、制御回路80は、N極検出動作を実現するための信号CTL1~CTL3及びPOWを検出ブロックに供給することで、検出ブロックにN極検出動作を行わせる。ステップS24のN極検出動作にてN極が検出された場合(即ちN極の検出有りと判断された場合には)、磁気センサ1の動作モードをS極先行モードからN極先行モードに切り替え設定してから(ステップS25のY、S26)ステップS40に進む。一方、ステップS24のN極検出動作にてN極が非検出であった場合(即ちN極の検出無しと判断された場合には)、ステップS25を経由してステップS27にて、磁気センサ1の動作モードを、S極先行モードに維持したままで、又は、S極先行モード及びN極先行モードの内、予め定められた一方のモードに設定してから、ステップS40に進む。
【0081】
ステップS31において、制御回路80は、N極検出動作を実現するための信号CTL1~CTL3及びPOWを検出ブロックに供給することで、検出ブロックにN極検出動作を行わせる。
【0082】
ステップS31のN極検出動作にてN極が検出された場合(即ちN極の検出有りと判断された場合には)、N極先行モードを維持したまま(ステップS32のY、S33)、S極検出動作を行うことなくステップS40に進む。一方、ステップS31のN極検出動作にてN極が非検出であった場合(即ちN極の検出無しと判断された場合には)、ステップS34に進む。
【0083】
ステップS34において、制御回路80は、S極検出動作を実現するための信号CTL1~CTL3及びPOWを検出ブロックに供給することで、検出ブロックにS極検出動作を行わせる。ステップS34のS極検出動作にてS極が検出された場合(即ちS極の検出有りと判断された場合には)、磁気センサ1の動作モードをN極先行モードからS極先行モードに切り替え設定してから(ステップS35のY、S36)ステップS40に進む。一方、ステップS34のS極検出動作にてS極が非検出であった場合(即ちS極の検出無しと判断された場合には)、ステップS35を経由してステップS37にて、磁気センサ1の動作モードを、N極先行モードに維持したままで、又は、S極先行モード及びN極先行モードの内、予め定められた一方のモードに設定してから、ステップS40に進む。
【0084】
ステップS20から始まってステップS40に至る直前までの処理は、単位処理として、ステップS41の待機処理に基づく間隔をおいて、繰り返し実行されることになる。ステップS40では、最新の単位処理におけるS極検出動作及びN極検出動作の結果に応じた出力信号LOUT1及びLOUT2が出力される。最新の単位処理には、S極検出動作及びN極検出動作の内の一方しか含まれないこともある。具体的には、
ステップS21のS極検出動作にてS極が検出された場合には、ステップS40にて出力信号LOUT1をローレベルとし且つ出力信号LOUT2をハイレベルとし、
ステップS21のS極検出動作にてS極が非検出であって且つステップS24のN極検出動作にてN極が検出された場合には、ステップS40にて出力信号LOUT1をハイレベルとし且つ出力信号LOUT2をローレベルとし、
ステップS21のS極検出動作にてS極が非検出であって且つステップS24のN極検出動作にてN極が非検出であった場合には、ステップS40にて出力信号LOUT1及びLOUT2を共にハイレベルとする。
ステップS31のN極検出動作にてN極が検出された場合には、ステップS40にて出力信号LOUT1をハイレベルとし且つ出力信号LOUT2をローレベルとし、
ステップS31のN極検出動作にてN極が非検出であって且つステップS34のS極検出動作にてS極が検出された場合には、ステップS40にて出力信号LOUT1をローレベルとし且つ出力信号LOUT2をハイレベルとし、
ステップS31のN極検出動作にてN極が非検出であって且つステップS34のS極検出動作にてS極が非検出であった場合には、ステップS40にて出力信号LOUT1及びLOUT2を共にハイレベルとする。
【0085】
ステップS40に続くステップS41において、所定時間TCYCが経過するのを待機してからステップS20に戻る。この待機は、例えば、所定クロック数分の基準クロック信号CLKをカウントすることで実現される。所定時間TCYCは、第i回目及び第(i+1)回目の単位動作の実行タイミングの間隔に相当する(iは自然数)。
【0086】
尚、説明の都合上、動作モードの維持又は切り替え設定の処理の後にステップS40の処理が実行されるフローチャートを説明したが、前者の処理と後者の処理の前後関係は任意であり、基本的には、それらの処理を並列実行して良い。また、ステップS21のS極検出動作にてS極が非検出であったならば(ステップS22のN)ステップS24のN極検出動作を待たずに出力信号LOUT1がハイレベルとされて良い。同様に、ステップS31のN極検出動作にてN極が非検出であったならば(ステップS32のN)ステップS34のS極検出動作を待たずに出力信号LOUT2がハイレベルとされて良い。
【0087】
[状態遷移]
図9及び
図10を参照し、磁界に関する状態遷移に伴う各単位動作の内容制御を説明する。
図11は磁界に関する状態遷移図である。各単位動作では、第1検出動作を行ってから第2検出動作を行うときと、第1検出動作のみを行うときがある。各単位動作において、第2検出動作のみが行われる場合や、第1検出動作より先に第2検出動作が行われる場合は無い。上述の説明から理解されるように、第1検出動作、第2検出動作は、S極先行モードにおいては、夫々、S極検出動作、N極検出動作であり、N極先行モードにおいては、夫々、N極検出動作、S極検出動作である。
【0088】
所定の基準強さ以上のS極の磁界がホール素子10に印加されている状態をS極印加状態と称し、所定の基準強さ以上のN極の磁界がホール素子10に印加されている状態をN極印加状態と称する。磁気センサ1にてS極が検出されている状態(S極の検出有りと判断されている状態)をS極検出状態と称し、磁気センサ1にてN極が検出されている状態(N極の検出有りと判断されている状態)をN極検出状態と称する。S極印加状態で単位動作が行われるとS極検出状態となり、N極印加状態で単位動作が行われるとN極検出状態となる。所定の基準強さ以上のS極の磁界も所定の基準強さ以上のN極の磁界もホール素子10に印加されていない状態を、無印加状態と称する。S極印加状態で単位動作が行われるとS極もN極も非検出となる無検出状態となる。
【0089】
磁界に関する状態遷移の種類として、状態遷移F1~F9がある。
F1は無印加状態、無検出状態からS極印加状態、S極検出状態への状態遷移を、
F2はS極印加状態、S極検出状態から無印加状態、無検出状態への状態遷移を、
F3は無印加状態、無検出状態からN極印加状態、N極検出状態への状態遷移を、
F4はN極印加状態、N極検出状態から無印加状態、無検出状態への状態遷移を、
F5はN極印加状態、N極検出状態からS極印加状態、S極検出状態への状態遷移を、
F6はS極印加状態、S極検出状態からN極印加状態、N極検出状態への状態遷移を表す。
状態遷移F7は、無印加状態、無検出状態が維持される状況に相当するが、無印加状態、無検出状態から無印加状態、無検出状態への遷移と考えることもできる。
状態遷移F8は、S極印加状態、S極検出状態が維持される状況に相当するが、S極印加状態、S極検出状態からS極印加状態、S極検出状態への遷移と考えることもできる。
状態遷移F9は、N極印加状態、N極検出状態が維持される状況に相当するが、N極印加状態、N極検出状態からN極印加状態、N極検出状態への遷移と考えることもできる。
【0090】
図9の左端に示される無印加状態及び無検出状態を起点にして考える。無検出状態において磁気センサ1の動作モードはN極先行モードで有り得ても良いが、ここでは、該動作モードがS極先行モードであるとする。そうすると、無印加状態での単位動作においてS極検出動作が実行された後にN極検出動作が実行されるが、S極もN極も非検出となる。その後、次回の単位動作が行われるときにも無印加状態が維持されている場合には(状態遷移F7)、次回の単位動作においてもS極検出動作が実行された後にN極検出動作が実行され、S極及びN極の夫々は再度非検出となる。結果、無検出状態が維持される。
【0091】
起点となる無印加状態からS極印加状態に移行する状況を考える。無印加状態からS極印加状態に移行すると、状態遷移F1が発生することになる。無印加状態からS極印加状態へ移行した直後の単位動作では第1検出動作としてのS極検出動作にてS極が検出されるので第2検出動作としてのN極検出動作は実行されない。状態遷移F1により磁気センサ1の動作モードはS極先行モードに設定される。
【0092】
状態遷移F1の後、S極印加状態が維持されると状態遷移F8が発生する。S極印加状態が維持されているときの単位動作では第1検出動作としてのS極検出動作にてS極が検出されるので第2検出動作としてのN極検出動作は実行されず、且つ、S極の検出が維持されたことに基づきS極先行モードが維持される。
【0093】
状態遷移F8の後、無印加状態となると状態遷移F2が発生する。S極印加状態から無印加状態へ移行した直後の単位動作では、第1検出動作としてのS極検出動作にてS極が非検出となるので、続いて第2検出動作としてN極検出動作が実行されるがN極も非検出となる。結果、磁気センサ1の状態は無検出状態となる。状態遷移F2を経て無検出状態となった後の磁気センサ1の動作モードは、状態遷移F2前の動作モードであるS極先行モードであっても良いし、S極先行モード及びN極先行モードの内、予め定められた一方の動作モードであっても良い。
【0094】
状態遷移F8の後、N極印加状態となると状態遷移F6が発生する。S極印加状態からN極印加状態へ移行した直後の単位動作では、第1検出動作としてのS極検出動作にてS極が非検出となるので、続いて第2検出動作としてN極検出動作が実行されてN極が検出される。結果、磁気センサ1の状態はN極検出状態となり、磁気センサ1の動作モードはN極先行モードに設定される。
【0095】
次に、起点(
図9の左端に対応)となる無印加状態からN極印加状態に移行する状況を考える。無印加状態からN極印加状態に移行すると、状態遷移F3が発生することになる。無印加状態からN極印加状態へ移行した直後の単位動作では第1検出動作としてのS極検出動作にてS極が非検出となるので、続いて第2検出動作としてN極検出動作が実行されてN極が検出される。結果、磁気センサ1の状態はN極検出状態となり、磁気センサ1の動作モードはN極先行モードに設定される。
【0096】
状態遷移F3の後、N極印加状態が維持されると状態遷移F9が発生する。N極印加状態が維持されているときの単位動作では第1検出動作としてのN極検出動作にてN極が検出されるので第2検出動作としてのS極検出動作は実行されず、且つ、N極の検出が維持されたことに基づきN極先行モードが維持される。
【0097】
状態遷移F9の後、無印加状態となると状態遷移F4が発生する。N極印加状態から無印加状態へ移行した直後の単位動作では、第1検出動作としてのN極検出動作にてN極が非検出となるので、続いて第2検出動作としてS極検出動作が実行されるがS極も非検出となる。結果、磁気センサ1の状態は無検出状態となる。状態遷移F4を経て無検出状態となった後の磁気センサ1の動作モードは、状態遷移F4前の動作モードであるN極先行モードであっても良いし、S極先行モード及びN極先行モードの内、予め定められた一方の動作モードであっても良い。
【0098】
状態遷移F9の後、S極印加状態となると状態遷移F5が発生する。N極印加状態からS極印加状態へ移行した直後の単位動作では、第1検出動作としてのN極検出動作にてN極が非検出となるので、続いて第2検出動作としてS極検出動作が実行されてS極が検出される。結果、磁気センサ1の状態はS極検出状態となり、磁気センサ1の動作モードはS極先行モードに設定される。
【0099】
[信号波形例]
S極、N極検出動作における各信号の挙動は
図6及び
図7を参照して上述した通りであるが、単位動作における磁気センサ1の各信号波形の例を幾つか説明する。
【0100】
図12には、無印加状態においてS極先行モードにて行われた単位動作210での、磁気センサ1の各信号波形が示されている。単位動作210では、第1検出動作としてS極検出動作がクロック区間PS1及びPS2にて実行されるがS極が非検出となるので(後半クロック区間PS2において比較結果信号COUTがローレベルとなるので)、続けて第2検出動作としてN極検出動作がクロック区間PN1及びPN2にて実行され、N極も非検出となる(後半クロック区間PN2において比較結果信号COUTがローレベルとなる)。単位動作210は、連続する4つのクロック区間PS1、PS2、PN1及びPN2から成り、当該4つのクロック区間において電源オン信号POWがハイレベルとされる。
【0101】
図13には、S極印加状態においてS極先行モードにて行われた単位動作220での、磁気センサ1の各信号波形が示されている。単位動作220では、第1検出動作としてクロック区間PS1及びPS2にて実行されたS極検出動作によりS極が検出されるので(後半クロック区間PS2において比較結果信号COUTがハイレベルとなるので)、第2検出動作としてのN極検出動作が実行されることなく単位動作220が終了する。単位動作220は、連続する2つのクロック区間PS1及びPS2から成り、当該2つのクロック区間において電源オン信号POWがハイレベルとされる。
【0102】
図14には、N極印加状態においてN極先行モードにて行われた単位動作230での、磁気センサ1の各信号波形が示されている。単位動作230では、第1検出動作としてクロック区間PN1及びPN2にて実行されたN極検出動作によりN極が検出されるので(後半クロック区間PN2において比較結果信号COUTがハイレベルとなるので)、第2検出動作としてのS極検出動作が実行されることなく単位動作230が終了する。単位動作230は、連続する2つのクロック区間PN1及びPN2から成り、当該2つのクロック区間において電源オン信号POWがハイレベルとされる。
【0103】
本実施形態の上述の構成及び動作による実施例を、便宜上、基本実施例と称する。基本実施例を元にした変形技術や応用技術を以下の複数の実施例の中で説明する。特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、基本実施例に記載の事項が後述の各実施例に適用され、各実施例において基本実施例と矛盾する事項については、各実施例での記載が優先される。また矛盾無き限り、以下に述べる複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0104】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。上述の基準強さは基準電圧VREF1及びVREF2の差分電圧VREF(=VREF2-VREF1)にて定まる。S極検出動作にて用いられる差分電圧VREFと、N極検出動作にて用いられる差分電圧VREFとは、具体的な電圧値において、互いに一致していても良いし、互いに異なっていても良い。また、VREFにヒステリシス特性を持たせるようにしても良い。
【0105】
図15に、上記ヒステリシス特性を実現すると共に、差分電圧VREFをS極検出動作及びN極検出動作間で異ならせることを可能とする回路例を示す。
【0106】
図3に示すスイッチ61及び62は、ノードND1及びND2に基準電圧VREF1及びVREF2を供給するか否かを切り替える基準電圧供給切替回路を構成するが、
図15の回路の採用時には、スイッチ61及び62の代わりに、スイッチ61S、62Sa、62Sb、61N、62Na及び62Nbから成る基準電圧供給切替回路が磁気センサ1に設けられ、また、基準電圧生成回路50の構成要素として、分圧抵抗51S、52Sa、52Sb、51N、52Na、52Nb及び53並びにスイッチ57S、57N及び58が磁気センサ1に設けられる。
【0107】
図15の回路には、電源電圧VDDが加わる端子とグランドとの間に、第1及び第2分圧回路が設けられている。第1分圧回路では、電源電圧VDDが加わる端子からグランドに向けて、スイッチ57S、分圧抵抗51S、52Sa、52Sb及び53、スイッチ58が、この順番で直列接続されている。第2分圧回路では、電源電圧VDDが加わる端子からグランドに向けて、スイッチ57N、分圧抵抗51N、52Na、52Nb及び53、スイッチ58が、この順番で直列接続されている。ここでは、第1及び第2分圧回路間で分圧抵抗53及びスイッチ58が共用されているが、第1及び第2分圧回路間で部品の共用は必須ではない。
【0108】
分圧抵抗51S及び52Sa間の接続点、分圧抵抗52Sa及び52Sb間の接続点を、夫々、ノード300S1、300S2と称する。分圧抵抗51N及び52Na間の接続点、分圧抵抗52Na及び52Nb間の接続点を、夫々、ノード300N1、300N2と称する。分圧抵抗52Sb、52Nb及び53間の接続点をノード300と称する。
【0109】
電源オン信号POWに応じてオン/オフ制御されるスイッチ57S及び58が共にオンのときにのみ、第1分圧回路を構成する4つの分圧抵抗の直列回路に電源電圧VDDが加わる。これにより、ノード300S1、300S2、300に、夫々、電源電圧VDDに応じた第1、第2、第3直流電圧が発生する(当然、“第1直流電圧>第2直流電圧>第3直流電圧”となる)。電源オン信号POWに応じてオン/オフ制御されるスイッチ57N及び58が共にオンのときにのみ、第1分圧回路を構成する4つの分圧抵抗の直列回路に電源電圧VDDが加わる。これにより、ノード300N1、300N2、300に、夫々、電源電圧VDDに応じた第4、第5、第6直流電圧が発生する(当然、“第4直流電圧>第5直流電圧>第6直流電圧”となる)。
【0110】
スイッチ61S及び61Nの夫々は、ノードND1及び300間の接続及び遮断を切り替えるスイッチである。スイッチ62Sa及び62Sbは、ノードND2及び300S1が接続される状態と、ノードND2及び300S2が接続される状態と、ノードND2とノード300S1及び300S2とが非接続とされる状態と、を切り替えるスイッチである。スイッチ62Na及び62Nbは、ノードND2及び300N1が接続される状態と、ノードND2及び300N2が接続される状態と、ノードND2とノード300N1及び300N2とが非接続される状態と、を切り替えるスイッチである。
【0111】
図15の回路の採用時には、切替信号CTL3の代わりに、切替信号CTL3_S、CTL3_S_HYS、CTL3_N及びCTL3_N_HYSが制御回路80から出力される。スイッチ61S及び62Saは切替信号CTL3_Sに応じてオン/オフ制御され、スイッチ61N及び62Naは切替信号CTL3_Nに応じてオン/オフ制御される。スイッチ62Sbは、スイッチ62Sa及びノード300S1間に挿入されたスイッチとスイッチ62Sa及びノード300S2間に挿入されたスイッチとから成り、それら2つのスイッチは切替信号CTL3_S及びCTL3_S_HYSに応じてオン/オフ制御される。スイッチ62Nbは、スイッチ62Na及びノード300N1間に挿入されたスイッチとスイッチ62Na及びノード300N2間に挿入されたスイッチとから成り、それら2つのスイッチは切替信号CTL3_N及びCTL3_N_HYSに応じてオン/オフ制御される。
【0112】
そして、以下の動作が実現されるように、制御回路80は、
図15に示す各スイッチを制御する。まず基本的な動作として、S極検出動作又はN極検出動作を行う際には、ハイレベルの電源オン信号POWをスイッチ57S、57N及び58に供給することで、スイッチ57S、57N及び58をオンとする。S極検出動作においては、スイッチ61N及び62Na並びにスイッチ62Nb内の各スイッチをオフとし、N極検出動作においては、スイッチ61S及び62Sa並びにスイッチ62Sb内の各スイッチをオフとする。また、前回の単位動作の検出結果に依存せず、S極検出動作を行う際には、前半クロック区間PS1においてノード300の電圧が基準電圧VREF1としてノードND1に加わるようにスイッチ61Sをオンとする。同様に、前回の単位動作の検出結果に依存せず、N極検出動作を行う際には、前半クロック区間PN1においてノード300の電圧が基準電圧VREF1としてノードND1に加わるようにスイッチ61Nをオンとする。
【0113】
そして、S極検出動作に関してヒステリシス特性を実現すべく、
前回の単位動作にてS極が非検出であるときにおいて又は前回の単位動作にてN極が検出されたときにおいて、今回の単位動作にてS極検出動作を行う際には、前半クロック区間PS1においてノード300S1の電圧が基準電圧VREF2としてノードND2に加わるようにスイッチ62Sa及び62Sbを制御し、
前回の単位動作にてS極が検出されたときにおいて、今回の単位動作にてS極検出動作を行う際には、前半クロック区間PS1においてノード300S2の電圧が基準電圧VREF2としてノードND2に加わるようにスイッチ62Sa及び62Sbを制御する。
【0114】
同様に、N極検出動作に関してヒステリシス特性を実現すべく、
前回の単位動作にてN極が非検出であるときにおいて又は前回の単位動作にてS極が検出されたときにおいて、今回の単位動作にてN極検出動作を行う際には、前半クロック区間PN1においてノード300N1の電圧が基準電圧VREF2としてノードND2に加わるようにスイッチ62Na及び62Nbを制御し、
前回の単位動作にてN極が検出されたときにおいて、今回の単位動作にてN極検出動作を行う際には、前半クロック区間PN1においてノード300N2の電圧が基準電圧VREF2としてノードND2に加わるようにスイッチ62Na及び62Nbを制御する。
【0115】
後半クロック区間PS2及びPN2においては、ノードND1及びND2が
図15の回路から切り離され、従って、ノードND1に対してノード300の電圧は加わらず、且つ、ノードND2に対してノード300S1、300S2、300N1及び300N2の何れの電圧も加わらない。
【0116】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。単位動作は間隔をおいて繰り返し実行されるが、或る単位動作の実行開始タイミングから次の単位動作の実行開始タイミングまでの時間差、即ち、隣接する単位動作の実行間隔を、センシング間隔と称する(
図16参照)。センシング間隔は、予め定められた間隔で固定されていて良いが、状況に応じて可変されるものであっても良い。
【0117】
具体的には例えば、原則として、センシング間隔は所定の基準センシング間隔INTREFとされるが、S極もN極も非検出となる単位動作が所定回数以上継続して繰り返される(即ち所定回数分の単位動作にて無検出状態が維持される)という第1延長条件、S極が検出される単位動作が所定回数以上継続して繰り返される(即ち所定回数分の単位動作にてS極検出状態が維持される)という第2延長条件、又は、N極が検出される単位動作が所定回数以上継続して繰り返される(即ち所定回数分の単位動作にてN極検出状態が維持される)という第3延長条件が満たされる場合、制御回路80は、センシング間隔を、基準センシング間隔INTREFよりも長い延長センシング間隔INTLに変更して良い。或る検出状態が継続している場合、その検出状態が以後も継続する可能性が高いと考えられるため、センシング間隔を延長しても弊害は少なく、センシング間隔の延長により更なる低消費電力化が図られる。
【0118】
第1延長条件の成立に基づきセンシング間隔を延長センシング間隔INTLとした後、或る単位動作にてS極又はN極が検出された場合、制御回路80は、センシング間隔を基準センシング間隔INTREFに戻すと良い。同様に、第2延長条件の成立に基づきセンシング間隔を延長センシング間隔INTLとした後、或る単位動作にてS極が非検出となった場合、制御回路80は、センシング間隔を基準センシング間隔INTREFに戻すと良い。同様に、第3延長条件の成立に基づきセンシング間隔を延長センシング間隔INTLとした後、或る単位動作にてN極が非検出となった場合、制御回路80は、センシング間隔を基準センシング間隔INTREFに戻すと良い。
【0119】
ここでは、第1、第2又は第3延長条件の成立に基づき、センシング間隔を基準センシング間隔INTREFから見て1段階だけ延長する方法を説明したが、1段階の延長後、改めて、第1、第2又は第3延長条件の成立/不成立を判断し、更に第1、第2又は第3延長条件の成立が認められる場合には、センシング間隔を延長センシング間隔INTLから更に延長するようにしても良い(即ち、2段階の延長を行っても良い)。3段階以上の延長も同様に可能である。
【0120】
また例えば、制御回路80に、状態遷移F1の発生回数、状態遷移F2の発生回数、状態遷移F3の発生回数、状態遷移F4の発生回数、状態遷移F5の発生回数及び状態遷移F6の発生回数の、単位時間当たりの合計値をカウントする機能を持たせても良い。そして、カウントした合計値が所定値以上であるという短縮条件が成立する場合には、状態遷移F1~F6の頻度が高く、挟間隔でセンシングした方が良いと考えられるため、制御回路80は、センシング間隔を、基準センシング間隔INTREFよりも短い短縮センシング間隔INTSに変更して良い。
【0121】
短縮条件の成立に基づきセンシング間隔を短縮センシング間隔INTSとした後も、短縮条件の成立/不成立を監視し、短縮条件が不成立となった場合には、制御回路80は、センシング間隔を基準センシング間隔INTREFに戻しても良い。
【0122】
ここでは、短縮条件の成立に基づき、センシング間隔を基準センシング間隔INTREFから見て1段階だけ短縮する方法を説明したが、2段階以上でセンシング間隔を短縮するようにしても良い。即ち例えば、制御回路80は、上記合計値が第1所定値以上であるが第1所定値よりも大きな第2所定値未満であるという第1短縮条件が成立する場合には、センシング間隔を、基準センシング間隔INTREFよりも短い短縮センシング間隔INTS1に変更し、上記合計値が第2所定値以上であるという第2短縮条件が成立する場合には、センシング間隔を、短縮センシング間隔INTS1よりも更に短い短縮センシング間隔INTS2に変更しても良い。3段階以上の短縮も同様に可能である。
【0123】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。磁気センサ1を半導体集積回路にて形成し(即ち磁気センサ1の各構成要素を半導体集積回路の形態で形成し)、当該半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体CS(パッケージ)内に封入した半導体装置を構成することができる。
図17(a)及び(b)に、この半導体装置である磁気センサIC1の外観斜視図を示す。磁気センサIC1の筐体CSは概略直方体形状を有しており、その直方体形状の筐体CSの一面が表面として機能し、その一面に対向する面が裏面として機能する。
図17(a)は表面側から見た磁気センサIC1の外観斜視図であり、
図17(b)は裏面側から見た磁気センサIC1の外観斜視図である。
【0124】
磁気センサIC1の筐体CSの裏面には、外部出力端子TMOUT1及びTMOUT2に加えて、電源電圧VDDの供給を受けるべき電源入力端子TMVDD及び0V(ボルト)の基準電位を有するグランドが接続されるべきグランド端子TMGNDが、露出して設けられている。筐体CSから突出する4つの金属端子を、端子TMOUT1、TMOUT2、TMVDD及びTMGNDとして筐体CSに設けておくようにしても良い。
【0125】
図1(a)等に示したZ軸は、筐体CSの表面と裏面とを結ぶ方向に平行である。但し、筐体CSとZ軸との関係は任意であって良い。
【0126】
尚、筐体CSに、外部出力端子TMOUT1及びTMOUT2の代わりに、単一の外部出力端子TMOUTのみを設けるようにしても良い。この場合、制御回路80は、信号LOUT1及びLOUT2に基づく信号LOUTを外部出力端子TMOUTから出力することができる。信号LOUTは、無検出状態においてのみハイレベルとなり、S極検出状態又はN極検出状態においてローレベルとなる。
【0127】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。本発明に係る磁気センサを、折り畳み型の携帯電話機の開閉検出センサ、カバーや扉の開閉検出センサ、モータの回転位置検出センサ、ダイヤルの回転操作検出センサなど、幅広い広い用途に使用でき、これらの用途に対応して、様々な電気機器に搭載できる。即ち例えば、折り畳み型の携帯電話機の開閉検出センサとして磁気センサを利用する場合には該携帯電話機に本発明に係る磁気センサを搭載すれば良く、タブレット型又はノート型のパーソナルコンピュータのカバーの開閉検出センサに磁気センサを利用する場合には該パーソナルコンピュータに本発明に係る磁気センサを搭載すれば良い。
【0128】
第4実施例では、具体的な一例として、タブレット型のパーソナルコンピュータ(以下、PCと略記する)に磁気センサ1を搭載する構成を説明する。
【0129】
図18(a)及び(b)は、夫々、第4実施例に係るタブレット型のPC400の外観斜視図及び外観側面図である。PC400は、本体部410と、ヒンジ部405を介して本体部410に対し開閉自在に取り付けられたカバー部420と、を備える。本体部410は、概ね直方体状の筐体を有し、該筐体の表面には液晶ディスプレイパネル等の表示画面を備えた表示部431が配置されている。また、本体部410の筐体内に磁気センサ1が配置されている。磁気センサ1を、
図17(a)及び(b)に示すような磁気センサIC1の形態で本体部410に搭載することができる。カバー部420は概ね板状の蓋である。PC400のユーザはヒンジ部405を支点にしてカバー部420を旋回させることができ、これによって、カバー部420の状態を、閉状態及び開状態の何れかとすることができる。
【0130】
カバー部420が閉状態であるとき、表示画面がカバー部420で覆われて、ユーザは表示画面を視認不能となると共に表示画面を触れることによるタッチパネル操作の入力が不能となる。一方、カバー部420が開状態であるとき、ユーザは表示画面の視認が可能となると共にタッチパネル操作が可能となる。
【0131】
図19(a)、(b)は、夫々、カバー部420が閉状態、開状態となっているときのPC400の側面図である。尚、
図18(a)及び(b)の状態も開状態に属する。カバー部420には1以上の永久磁石から成る磁石MGが埋め込まれている。磁石MGは、カバー部420が閉状態であるときにのみ、磁石MGによる磁界に基づき磁気センサ1の単位動作にてS極又はN極が検出されるように、カバー部420内に設置されている。そうすると、カバー部420が閉状態であるとき、磁気センサ1は単位動作にてS極検出動作及びN極検出動作の何れか一方だけを行うことになり、
図23に示すような従来方法と比べて磁気センサ1の消費電力を半分近くにまで低減することが可能となる。
【0132】
図20は、PC400の電気的な概略構成図である。PC400には、磁気センサ1と、表示部431を有する機能ブロック430と、マイクロコンピュータ等から成るシステム制御部440と、磁気センサ1、機能ブロック430及びシステム制御部440に対して電源電圧(磁気センサ1に対しては電源電圧VDD)を供給する電源回路450と、が設けられている。機能ブロック430は、システム制御部440の制御の下、表示部431に表示画面に画像を表示したり、表示部431のバックライトを点灯させたりすることができるほか、様々な機能を実現できる。
【0133】
システム制御部440は、磁気センサ1の外部出力端子TMOUT1及びTMOUT2に接続され、それらの端子を介して磁気センサ1から磁気センサ1による磁界の検出結果信号を受ける。検出結果信号は信号LOUT1及びLOUT2から成る。但し、第3実施例で述べたように、磁気センサ1に外部出力端子TMOUT1及びTMOUT2の代わりに単一の外部出力端子TMOUTが設けられている場合には、システム制御部440は磁気センサ1の外部出力端子TMOUTに接続されて、外部出力端子TMOUTを介し、磁界の検出結果信号として、信号LOUT1及びLOUT2に基づく信号LOUTを受ける。
【0134】
システム制御部440は、上記検出結果信号に基づき、機能ブロック430の動作制御を含む所定の処理を実行することができる。つまり例えば、システム制御部440は、磁気センサ1からS極又はN極が検出されていることを示す検出結果信号を受けている磁界検出期間には、カバー部420が閉状態にあると判断してPC400をスリープ状態とする一方、磁気センサ1からS極及びN極が非検出であることを示す検出結果信号を受けている磁界非検出期間には、カバー部420が開状態にあると判断してPC400をアクティブ状態とする。アクティブ状態では機能ブロック430又はシステム制御部440にて特定の動作が実行されるが、スリープ状態では該特定の動作が非実行とされ、結果、スリープ状態における機能ブロック430、システム制御部440又はPC400の消費電力は、アクティブ状態におけるそれよりも小さい。表示部431に関して言えば、システム制御部440は、磁界検出期間において表示部431のバックライトを消灯させると共に表示部431における画像表示動作を停止させ、磁界非検出期間において表示部431のバックライトを点灯させると共に表示部431における画像表示動作を実行させる。
【0135】
基本実施例で述べた事項から明らかであるが、磁気センサ1は、システム制御部440の制御に依ることなく、基本実施例等で上述した方法に従い、磁気センサ1で行うべき各単位動作の内容を制御する。従って、システム制御部440に何ら負担をかけることなく、磁気センサ1単体にて自身の低消費電力化を実現できる。
【0136】
<<第5実施例>>
第5実施例を説明する。第4実施例において、
図21に示す如く、カバー部420が開状態として第1開状態又は第2開状態をとりえるようにPC400が構成されていても良い。カバー部420の閉状態を起点にとして、ヒンジ部405を支点にカバー部420を約360°旋回させると第2開状態となり、閉状態と第2開状態との間の状態を第1開状態と考えることができる。第2開状態では、カバー部420が本体部410の裏面と接する位置に配置され、この際、カバー部420の磁石MGと本体部410の磁気センサ1が対向する。結果、カバー部420が閉状態であるときだけでなく第2開状態であるときにも、磁石MGによる磁界に基づき磁気センサ1の単位動作にてS極又はN極が検出されるよう、PC400を構成することができる。
【0137】
閉状態においてS極及びN極の内の一方の極が検出され、第2開状態においてS極及びN極の内の他方の極が検出されるよう、磁石MGが構成されていると良く、これにより、システム制御部440は、磁気センサ1の出力信号LOUT1及びLOUT2から閉状態と第2開状態とを区別することができる。カバー部420が第1開状態であるときには、閉状態及び第2開状態と比べて、磁石MG及び磁気センサ1のホール素子10間の距離が大きくなるため、磁気センサ1の単位動作にてS極もN極も非検出となる。システム制御部440は、上記一方の極が検出されているときには、カバー部420が閉状態にあると判断してPC400をスリープ状態とし、そうでない時にはPC400をアクティブ状態とすれば良い。
【0138】
ユーザがカバー部420を第2開状態にしてPC400を使用することを想定すると、単位動作にてS極検出動作及びN極検出動作の双方が行われるのは閉状態及び第2開状態間の遷移期間のみとなることが期待される。1日において、その遷移期間の合計は多くても数分程度と考えられるので、殆どの期間において、磁気センサ1の消費電力を、
図23の従来方法の半分近くに抑えることが可能となる。
【0139】
<<第6実施例>>
第6実施例を説明する。第4実施例に記載したPC400が、第5実施例の如く(
図21参照)、閉状態、第1開状態及び第2開状態の何れかの状態をとりうる場合には、以下のようにしても良い。
【0140】
図22(a)及び(b)は、第6実施例に係るPC400の部分的な透過図である。但し、
図22(a)は閉状態における透過図であり、
図22(a)は第2開状態における透過図である。
【0141】
第6実施例に係るPC400では、以下のように磁気センサ1及び磁石MGが配置される。即ち、閉状態においては磁気センサ1にてS極及びN極の内の一方の極(
図22(a)の例ではS極)が検出され、第2開状態においては磁気センサ1にてS極及びN極の内の他方の極(
図22(b)の例ではN極)が検出されるよう、PC400の閉状態において且つ第2開状態において、磁気センサ1と磁石MGの配置位置がZ軸に直交するX軸の方向に沿って互いにずれていると共に磁石MGのN極及びS極間を結ぶ方向がX軸に平行とされる。
【0142】
図22(a)及び(b)に示す例では、X軸方向の位置関係に注目した場合、PC400の閉状態及び第2開状態において、磁石MGが磁気センサ1から見てX軸の正側に位置しており且つ磁石MGのN極がS極よりもX軸の正側に位置している。また、Z軸方向の位置関係に注目した場合、PC400の閉状態においては、磁石MGが磁気センサ1から見てZ軸の正側に位置している一方で、PC400の第2開状態においては、磁石MGが磁気センサ1から見てZ軸の負側に位置している。
【0143】
そうすると、
図22(a)に示す如く、PC400の閉状態において、磁石MGのN極から出た磁力線の内、磁気センサ1のホール素子10を鎖交して磁石MGのS極に戻る磁力線は、Z軸の負側からZ軸の正側に向けてホール素子10を鎖交する(
図22(a)においてホール素子10は図示せず)。このため、PC400の閉状態において、磁気センサ1はS極の検出有りと判断する(
図1(b)の状態と等価となる)。
逆に、
図22(b)に示す如く、PC400の第2開状態において、磁石MGのN極から出た磁力線の内、磁気センサ1のホール素子10を鎖交して磁石MGのS極に戻る磁力線は、Z軸の正側からZ軸の負側に向けてホール素子10を鎖交する(
図22(b)においてホール素子10は図示せず)。このため、PC400の第2開状態において、磁気センサ1はN極の検出有りと判断する(
図1(c)の状態と等価となる)。
【0144】
第6実施例にて上述した技術は以下のように表現できる。
カバー部420は、本体部410に対して閉状態、第1開状態、第2開状態の何れかの状態をとるように本体部410に対して開閉自在に取り付けられている。本体部410及びカバー部420間の位置関係を規定するカバー部420の閉状態、第1開状態及び第2開状態は、PC400の閉状態、第1開状態及び第2開状態であると解しても良い。
概略直方体状又は板状の筐体を備える本体部410は、当該筐体において、互いに対向する第1面及び第2面を有する。第1面は本体部410の表面として機能し、第2面は本体部410の裏面として機能する。本体部410の第1面及び第2面間を結ぶ方向はZ軸に平行である。本体部410の第1面には表示画面を備えた表示部431が配置されている。カバー部420が閉状態であるとき、表示画面がカバー部420で覆われて、ユーザは表示画面を視認不能となると共に表示画面を触れることによるタッチパネル操作の入力が不能となる。一方、カバー部420が第1開状態又は第2開状態であるとき、ユーザは表示画面の視認が可能となると共にタッチパネル操作が可能となる。
【0145】
閉状態においては本体部410の第1面に対向する位置にカバー部420が配され、第2開状態においては本体部410の第2面に対向する位置にカバー部420が配される。このため、閉状態においては、本体部410の第1面とカバー部420との距離が、本体部410の第2面とカバー部420との距離よりも短くなり、第2開状態においては、本体部410の第2面とカバー部420との距離が、本体部410の第1面とカバー部420との距離よりも短くなる。
【0146】
PC400における磁気センサ1のホール素子10とZ軸との関係から理解されるように、ホール素子10は、本体部410の第1面及び第2面間を結ぶ方向の磁界に応じた信号を出力する(即ちホール素子10に加わるZ軸に平行な磁界成分に応じた信号を出力する)。そして、上述の如く、カバー部420の閉状態において磁気センサ1により一方の極性の磁界が検出されるように、且つ、カバー部420の第2開状態において磁気センサ1により他方の極性の磁界が検出されるように、カバー部420に磁石MGが設けられている(一方の極性及び他方の極性は、ここでは夫々S極及びN極であるが、それらは逆であっても良い)。これを実現するために、カバー部420の閉状態及び第2開状態において、磁石MGのN極及びS極間を結ぶ方向が第1面及び第2面間を結ぶ方向と直交し(即ちX軸と平行となり)、且つ、磁気センサ1及び磁石MGの配置位置が第1面及び第2面間を結ぶ方向の直交方向において(即ちX軸方向において)互いにずれるよう、磁石MGの配置位置及び配置の向きが決定されている。
【0147】
また、第1開状態における磁気センサ1及び磁石MG間の距離は、閉状態における磁気センサ1及び磁石MG間の距離、並びに、第2開状態における磁気センサ1及び磁石MG間の距離よりも長く、これによって、第1開状態においては磁気センサ1にて磁石MGの発生磁界に基づくS極の磁界及びN極の磁界が何れも非検出となる。磁気センサ1及び磁石MG間の距離は、厳密には、ホール素子10及び磁石MG間の距離を指すと解して良い。第1開状態は閉状態にも第2開状態にも分類されない状態であり、カバー部420が閉状態と第2開状態との間で遷移する過程においてカバー部420は第1開状態となる。閉状態とも第2開状態とも異なる状態であって、磁気センサ1にて磁石MGの発生磁界に基づくS極の磁界及びN極の磁界が何れも非検出となる状態が第1開状態に相当すると解して良い。
【0148】
第4実施例で述べたように、システム制御部440(
図20参照)は、磁気センサ1からの検出結果信号に基づき、機能ブロック430の動作制御を含む所定の処理を実行することができる。つまり例えば、システム制御部440は、磁気センサ1から一方の磁界(ここではS極)が検出されていることを示す検出結果信号を受けている第1磁界検出期間にはカバー部420が閉状態にあると判断してPC400をスリープ状態とする一方、磁気センサ1からS極及びN極が非検出であることを示す検出結果信号を受けている磁界非検出期間にはカバー部420が第1開状態にあると判断してPC400をアクティブ状態とし、且つ、磁気センサ1から他方の磁界(ここではN極)が検出されていることを示す検出結果信号を受けている第2磁界検出期間にはカバー部420が第2開状態にあると判断してPC400をアクティブ状態とすると良い。スリープ状態及びアクティブ状態については第4実施例で述べた通りである。
【0149】
尚、PC400が第2開状態を取り得るように構成され、且つ、磁石MGのN極及びS極間を結ぶ方向がZ軸と平行となるように単一の磁石MGがカバー部420内に設けられる場合においては、閉状態及び第2開状態の内、閉状態においてのみ磁石MGによるN極又はS極が磁気センサ1にて検出されるようにするための手当てを施しておいても良い。例えば、第2開状態において磁石MGからの磁界が磁気センサ1(ホール素子10)を鎖交することを抑制する磁気シールド材をカバー部420に設けても良い。或いは例えば、第2開状態での磁石MG及び磁気センサ1間の距離が閉状態での磁石MG及び磁気センサ1間の距離よりも大きくなるように、カバー部420内の磁石MGの配置位置を決定し、これにより、第2開状態において磁石MGによるN極又はS極が磁気センサ1にて検出されることが無いようにしても良い。
【0150】
<<第7実施例>>
第7実施例を説明する。印加磁界を電気信号に変換する磁電変換素子としてのホール素子10と、制御回路80との間には、ホール素子10の出力信号を用いてS極の磁界及びN極の磁界を区別して検出可能な検出ブロック(検出回路)が設けられる。そして、基本実施例においては、単位動作が行われていない期間において、磁電変換素子及び検出ブロックへの電力供給が全部遮断されているが、磁電変換素子及び検出ブロックへの電力供給の一部のみが遮断されるようにしても構わない。
【0151】
例えば、単位動作が行われていない期間の一部又は全部において、基準電圧生成回路における分圧抵抗の直列回路に電源電圧VDDが供給されて基準電圧VREF1及びVREF2の生成が行われることが有り得ても良い。
【0152】
<<第8実施例>>
第8実施例を説明する。ホール素子における素子オフセット電圧及び増幅回路における入力オフセット電圧をキャンセルできる磁気センサの回路構成及び動作の例を上述したが、本発明に係る磁気センサの回路構成及び動作は、S極とN極の磁界を区別して検出可能なものでれば任意であり、S極とN極の磁界を区別して検出可能な公知の他の回路構成及び動作を本発明に適用しても良い。
【0153】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0154】
1 磁気センサ
10 ホール素子
20 切替回路
30 増幅回路部
41、42 コンデンサ
50 基準電圧生成回路
70 比較回路
80 制御回路