(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】原料肉塊の成型方法
(51)【国際特許分類】
A22C 7/00 20060101AFI20220421BHJP
A22C 9/00 20060101ALI20220421BHJP
A22C 17/00 20060101ALI20220421BHJP
A23L 13/70 20160101ALI20220421BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20220421BHJP
【FI】
A22C7/00 Z
A22C9/00
A22C17/00
A23L13/70
A23L13/00 Z
(21)【出願番号】P 2018011014
(22)【出願日】2018-01-25
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】397010859
【氏名又は名称】四国日清食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154276
【氏名又は名称】乾 利之
(72)【発明者】
【氏名】川口 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】矢野 文一
【審査官】比嘉 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-322702(JP,A)
【文献】実開昭48-013590(JP,U)
【文献】国際公開第1998/031265(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 7/00
A22C 9/00
A22C 17/00
A23L 13/70
A23L 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料肉塊にピックル液を注入する工程と、
ピックル液を前記原料肉塊に浸透させる工程と、
ピックル液が浸透した前記原料肉塊をケーシング袋に充填する工程と、
前記ケーシング袋
に充填された前記原料肉塊を凍結する工程と、
前記ケーシング袋
に充填された前記原料肉塊を半解凍する工程と、
前記ケーシング袋から
半凍結された原料肉塊を取り出して下方型枠上に載置し、さらに上方押圧部材により当該原料肉塊を上方からプレス成型する工程と、
を含み、
前記下方型枠は
V字型であり、開口部を上方に向けて設置され
、
前記下方型枠は、長手方向に沿って隣接し、V字型を形成する第一の側面および第二の側面と、前記第一の側面の上方に第三の側面と、前記第二の側面の上方に第四の側面とを備える、
ことを特徴とする原料肉塊成型方法。
【請求項2】
前記原料肉塊をケーシング袋に充填した後、ケーシング袋に充填した原料肉塊を予備成型する工程を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の原料肉塊成型方法。
【請求項3】
前記予備成型する工程は、
(1)コンテナボックス内に複数のケーシング袋を載置する工程であって、各ケーシング袋を互い接触し、かつ平行となるように載置する、工程と、
(2)複数のケーシング袋を上方から押圧する工程と、
を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の原料肉塊の成型方法。
【請求項4】
前記原料肉塊にピックル液を注入する工程の前に、
長さ方向に対して斜め直線状に、かつ、垂直角度90度で前記原料肉塊の筋切りを行う工程、
を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の原料肉塊の成型方法。
【請求項5】
前記第三の側面および前記第四の側面は、前記下方型枠の中心線に対して外側方向へ傾斜している、
ことを特徴とする請求項1に記載の原料肉塊の成型方法。
【請求項6】
プレス成型された前記原料肉塊の断面は四角形であることを特徴とする請求項1乃至5に記載の原料肉塊の成型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面が四角い畜肉類のロース部分肉等の原料肉塊成型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
豚肉、牛肉等の畜肉類は、豚・牛等を、解体業者が屠殺し、枝肉に分け、更に、必要に応じて、かた、ロース、ばら、もも、ヒレ等の部分肉に分割した後、これらを原料肉塊として、肉類加工品製造業者が加工し、その後加工品とされて販売されることとなる。
【0003】
これらのうち、豚肉、牛肉等の畜肉のロース部分肉は、カツレツ、ステーキ等の原料として重要である。このようなロース部分肉は、通常、原料肉塊を、ピックル液注入、マッサージ、ケーシング充填、凍結、プレス成型等の加工工程によって処理した後、肉厚を一定に設定された切断機にてスライスし、スライス品として販売されることが多い。このようなスライス品は、加工前の製品として使用するにしても、均一な形状、均一な重量を有していることが必要となる。
【0004】
豚肉、牛肉等のロース部分肉は、リブ側とサーロイン側とで太さ形状が異なることが多く、通常サーロイン側は、リブ側に比べて幅が広く、厚さが薄い形状を有する。従って、スライス品を均一な形状、均一な重量とするためには、切断前の原料肉塊を予め均一な形状にプレス成型する必要がある。
【0005】
特許文献1には、生肉、肉の切り身、ひざ肉等をプレス成型するにあたって、冷凍又は半冷凍状態にてプレス成型する技術が開示されている。しかしながら、冷凍又は半冷凍状態の原料肉塊をそのままの状態でプレス成型するだけでは、肉塊の部位によって肉質の硬さ及び弾力性が相違するため、充分均一に成型することは困難であった。従って、均一な成型のためには、肉塊の肉質を均一に柔らかくする必要がある。
【0006】
肉塊の肉質を均一に柔らかくする方法として、筋切りを行った後、加工する方法が提案されている。特許文献2には、ロースハム等の原料肉塊のテンダー加工方法として、肉塊の硬い部分のみに筋切刃を突き刺して筋切りし、全体として均一な柔らかさに加工する技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、原料肉塊を、長さ方向に対して斜め直線状に、かつ、垂直角度90度で筋切りし、プレス成型するにあたって、原料肉塊を凍結後半解凍し、半解凍状態にてプレス成型する肉塊の成型方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭48―23981号公報
【文献】特開平3―164130号公報
【文献】特開平9―322702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
原料肉塊の形状については、ロース部分肉であれば本来備えている形状に近い型枠を使用してプレス成型するのが一般的であるが、近年、カツサンド用に四角いロース部分肉に対するニーズが高まっている。しかしながら、単に矩形の型枠を使用するだけでは、原料肉塊の角に圧力が十分に伝わらず、角のエッジが崩れたり、プレス成型時における型枠からの肉のはみ出しによって歩留まりが低下(5%程度の廃棄ロスが発生)するという課題があった。本発明は、上記に鑑み、断面が四角い形状を有し、かつ角のエッジが明りょうな原料肉塊のスライス品を得ることができる、原料肉塊の成型方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らによる鋭意研究の結果、ピックル液を浸透させた原料肉塊をケーシング袋に充填した後、これを凍結、および半解凍し、ケーシング袋から取り出した原料肉塊を、V字型の形状を有し、開口部を上方に向けて設置された下方型枠上に載置し、これを上方押圧部材によりプレス成型することで、断面が四角い形状を有し、かつ角のエッジが明りょうな原料肉塊が得られることを見出した。すなわち、本願第一の発明は、
「原料肉塊にピックル液を注入する工程と、
ピックル液を前記原料肉塊に浸透させる工程と、
ピックル液が浸透した前記原料肉塊をケーシング袋に充填する工程と、
前記ケーシング袋に充填された前記原料肉塊を凍結する工程と、
前記ケーシング袋に充填された前記原料肉塊を半解凍する工程と、
前記ケーシング袋から半凍結された原料肉塊を取り出して下方型枠上に載置し、さらに上方押圧部材により当該原料肉塊を上方からプレス成型する工程と、
を含み、
前記下方型枠はV字型であり、開口部を上方に向けて設置される、
前記下方型枠は、長手方向に沿って隣接し、V字型を形成する第一の側面および第二の側面と、前記第一の側面の上方に第三の側面と、前記第二の側面の上方に第四の側面とを備える、
ことを特徴とする原料肉塊成型方法。」
である。
【0011】
また、原料肉塊をケーシング袋に充填した後、当該ケーシング袋を凍結する前に、原料肉塊の断面を楕円状から四角い形状へ近づける予備成型を行うことで、プレス成型時の下方型枠と上方押圧部材の間からの肉のはみ出しによる廃棄ロスを低減しつつ、角のエッジが明りょうな四角い断面形状を備えた原料肉塊が得られることを見出した。すなわち、本願第二の発明は、
「前記原料肉塊をケーシング袋に充填した後、ケーシング袋に充填された原料肉塊を予備成型する工程を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の原料肉塊成型方法。」
である。
【0012】
また、本願第二の発明における予備成型は、コンテナボックス内に複数のケーシング袋を互い接触し、かつ平行となるように載置し、複数のケーシング袋を上方から押圧することにより行う。すなわち、本願第三の発明は、
「前記予備成型する工程は、
(1)コンテナボックス内に複数のケーシング袋を載置する工程であって、各ケーシング袋を互い接触し、かつ平行となるように載置する、工程と、
(2)複数のケーシング袋を上方から押圧する工程と、
を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の原料肉塊の成型方法。」
である。
【0013】
さらに、原料肉塊を筋切りするに際して、長さ方向に対して斜め直線状に、かつ、垂直角度90度で原料肉塊筋切りすることで、プレス成型時に、筋切り面において水平方向と垂直方向の2つの方向にスライドし一定の幅と厚さに成型することができる。すなわち、本願第四の発明は、
「前記原料肉塊にピックル液を注入する工程の前に、
長さ方向に対して斜め直線状に、かつ、垂直角度90度で前記原料肉塊の筋切りを行う工程、を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の原料肉塊の成型方法。」
である。
【0014】
また、本願第一の発明におけるV字型の下方型枠の第三の側面および第四の側面は、下方型枠の中心線に対して外側方向へ傾斜している。V字型の下方型枠は、コの字型の下方型枠と比べてプレス成型時の肉のはみ出しによる廃棄ロスが少なく、角のエッジがより明りょうな四角い断面形状を備えた原料肉塊を得ることができる。すなわち、本願第五の発明は、
「前記第三の側面および前記第四の側面は、前記下方型枠の中心線に対して外側方向へ傾斜している、ことを特徴とする請求項1に記載の原料肉塊の成型方法。」である。
【0015】
本願第一の発明ないし第五の発明によりプレス加工した原料肉塊は、最終的にその断面が略四角い形状を備える。すなわち、本願第六の発明は、
「プレス成型された前記原料肉塊の断面は四角形であることを特徴とする請求項1乃至5に記載の原料肉塊の成型方法。」である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の原料肉塊の成型方法によれば、プレス成型時の肉のはみ出しによる廃棄ロスを低減しつつ、断面が四角い形状を有し、かつ角のエッジが明りょうな原料肉塊を得ることができ、例えばサンドイッチ用の四角いロース部分肉を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】コンテナボックス内に収納されたケーシング袋の横断面図
【
図3】本発明の原料肉塊の成型方法において使用するプレス成型用型枠の横断面図(コの字型下方型枠及びこれに対応する上方押圧部材)
【
図4】コの字型下方型枠に対応する上方押圧部材及び横方向押圧部材の斜視図
【
図5】本発明の原料肉塊の成型方法において使用するプレス成型用型枠の横断面図(V字型下方型枠及びこれに対応する上方押圧部材)
【
図6】プレス成型後、横方向押圧部材によりV字型下方型枠から押し出される原料肉塊
【
図7】実施例1により得られたロース原料肉塊の写真((a)原料肉塊の外観、(b)横断面)
【
図8】実施例2により得られたロース原料肉塊の写真((a)原料肉塊の外観、(b)横断面)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施態様について説明する。但し、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではない。
【0019】
本発明は、ピックル液が浸透した原料肉塊をケーシング袋に充填し、必要に応じて予備成型した後、これを凍結、半解凍し、ケーシング袋から取り出した原料肉塊をコの字型またはV字型の下方型枠に載置し、プレス成型する工程を含むことを特徴とする、断面が四角い形状を備えた原料肉塊の成型方法である。以下に本発明を詳述する。
【0020】
原料肉塊としては特に限定されず、豚、牛の部分肉であって、部位により形状及び重量の異なるものであれば、かた、ロース、ばら、もも、ヒレ等の部分肉のいずれも本発明の成型方法の対象となる。特にロース部分肉は、カツレツ、ステーキ等の原料となることから、本発明の成型方法の対象として好適である。
【0021】
原料肉塊は通常冷凍保管されるため、原料肉塊を解凍した後、必要に応じて原料肉塊の筋切りを行う。原料肉塊の筋切りにあたって、筋切りをする部位は、原料肉塊のうち、プレスにより均一形状に成型するため変形させたい部位である。上記部位としては、例えば、肉塊の肉質が硬い部分、形状的に幅が細いか又は厚さが薄い部分等が挙げられる。
【0022】
例えば、豚ロース部分肉にあっては、その肉質は、リブ側は、筋繊維が軟らかく伸び縮みし易く、成型後の復元力が弱い性質を有し、またサーロイン側は、筋繊維が硬くその弾力性のため伸び縮みし難く、成型後の復元力が強い性質を有する。従って、例えば、形状が均一な場合には、肉質が硬いサーロイン側のみに筋切りを行い、リブ側が太くてサーロイン側が細い場合には、全体に筋切りを行うことが好ましい。
【0023】
原料肉塊を筋切りする工程は、原料肉塊を、長さ方向に対して斜め直線状に、かつ、垂直角度90度で筋切りする。通常、上記筋切り工程の後に行う原料肉塊をプレス成型する工程においては、原料肉塊の長さ方向(水平方向)と、厚さ方向(垂直方向)との2つの方向から力を加えてプレスする。
【0024】
筋切りを、長さ方向に対して斜め直線状に行うことにより、プレス成型時に、筋切り面において水平方向と垂直方向の2つの方向にスライドし一定の幅と厚さに成型されるようになる。上記筋切りは、曲線状に行っても得られる効果に差異がないことから、直線状に行う。上記筋切りの肉塊の長さ方向に対する角度は、通常30~45度とするのが好ましく、約45度とするのが成型効率上、より好適である。
【0025】
上記筋切りの垂直角度は、90度である。90度より大きくても小さくても、斜めに切り込むこととなり、斜めに切り込んだ場合、プレス時の圧力により原料肉塊が不均一に変形し、最終スライス品とした場合、加熱調理時に松かさ状に反って商品価値を著しく損なうこととなる。
【0026】
上記筋切りの切り幅は、幅を狭くするほど成型が容易になるが、狭すぎると後工程でくずれや割れが生じ易くなるので、通常10~40mmにするのが好ましい。より好ましくは20~30mmである。上記筋切りの深さは、深いほど成型は容易になるが、後行程でくずれや割れが生じ易くなるので、通常15mmから原料肉塊の厚さの3分の2以内とするのが好ましい。
【0027】
上記筋切りされた原料肉塊は、ピックル液を注入し、真空マッサージにより原料肉塊にピックル液を浸透させる。ピックル液は原料肉塊に対して20%~40%注入するのが好ましい。また、真空マッサージの工程では、原料肉塊を真空タンブラーに投入し、1~2時間回転させることで、ピックル液を原料肉塊に浸透させる。
【0028】
ピックル液を浸透させた原料肉塊をケーシング袋に充填し、複数のケーシング袋をコンテナボックスに敷き詰める。この際、コンテナボックス内に複数のケーシング袋を互いに接触し、かつ平行に載置するとともに、上方から押圧することで、後工程において行うプレス成型の型枠に合うように予備成型することができる。予備成型において複数のケーシング袋を上方から押圧するに際しては、コンテナボックスの枠に接触しない大きさの板による機械的な押圧や、人手による押圧など、いかなる手段によっても構わない。これにより、ケーシング袋を概ね直方体に近づけ、プレス加工に使用するコの字型またはV字型の下方型枠にフィットさせることが可能となる。
【0029】
予備成型処理を行ったケーシング袋を凍結し、半解凍した後、ケーシング袋から原料肉塊を取り出してプレス成型処理を施す。一般には、低温保存の分類としては、冷蔵2~10℃、氷温貯蔵(チルド)-2~2℃、冷凍(凍結)-18℃以下との分類があるが、半解凍とは、品温が概ね-14℃~-3℃程度の範囲内にある状態をいう。プレス成型にあたって半解凍することによって、プレス枠内に投入された原料肉塊をプレスにより変形可能にすることができる。また、半解凍状態でプレス成型することにより、凍結状態のままプレスすることによる圧力損失を防止することができ、更に、プレス圧力を開放した後においても、形が復元することをも防止することができる。
【0030】
プレス成型処理は、断面がコの字型またはV字型の下方型枠内に予備成型後に凍結、半解凍された原料肉塊を載置し、下方型枠に対応する上方押圧部材により原料肉塊を厚さ方向(垂直方向)にプレスし、互いに勘合した下方型枠と上方押圧部材により形成された空間に横方向押圧部材を押し込むことで原料肉塊を長さ方向(水平方向)にプレスすることにより行う。
【0031】
上記のようにプレス成型された原料肉塊は、適宜必要な付加加工をした後、再度凍結され、その後の加工工程を経て製品とすることができる。例えば、豚カツを製造する場合には、上記プレス成型された豚肉の原料肉塊を半解凍状態にて所望とする厚さにスライスした後、バッター及び衣を付着後、再度凍結処理を経て冷凍豚カツとされる。
【0032】
以下に本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す原料肉塊成型方法の工程図である。
図1において、まず、原料肉塊は、必要な形状、必要な大きさに整形される。整形された原料肉塊は筋切り処理され、ピックル液が注入される。ピックル液を注入した後、真空マッサージ、ケーシング充填、予備成型、凍結、半解凍の工程を経た後、プレス成型される。プレス成型後においては、通常通り、スライスし、衣付けして凍結し、製品となす。
【0033】
予備成型は、後工程において行うプレス成型の型枠に形状を合わせるため、
図2に示すように、原料肉塊100を充填した複数のケーシング袋101をコンテナボックス102に敷き詰め、互いに接触し、かつ平行となるように載置された状態で、上方から押圧することにより行う。ケーシング袋101の上方から押圧手段には、コンテナボックス102の枠に接触しない大きさの板による機械的な押圧や、人手による押圧が含まれる。この際、原料肉塊100がロース肉である場合、背脂側を上方向に向けることが望ましい。背脂側を上方向に向けることで、予備成型がより容易となる。なお、原料肉塊の種類によっては、予備成型を省略することも可能である。
【0034】
プレス成型の態様としては、(1)
図3に示す断面がコの字型の下方型枠201内に、予備成型後に凍結、半解凍された原料肉塊を載置し、凸型突起部203を備えた上方押圧部材202により原料肉塊を厚さ方向(垂直方向)にプレスし、さらに、勘合した下方型枠201と上方押圧部材202により形成された空間204に
図4に示す横方向押圧部材205を押し込むことで原料肉塊を長さ方向(水平方向)にプレスする態様、(2)
図5に示す断面がV字型の下方型枠301に、予備成型後に凍結、半解凍された原料肉塊を載置し、突起部がV字に切り欠かれた凸型突起部303を備えた上方押圧部材302により原料肉塊を厚さ方向(垂直方向)にプレスし、さらに、互いに勘合した下方型枠と上方押圧部材により形成された空間304に横方向押圧部材305を押し込むことで原料肉塊を長さ方向(水平方向)にプレスする態様が含まれる。
【0035】
コの字型の下方型枠201は、
図3に示すように開口部を上方に向けて設置され、凸型突起部203を備えた上方押圧部材202と嵌合可能なように構成される。下方型枠201の材質としてはアルミニウム、上方押圧部材202の材質としては樹脂を選択することができるが、これらの材質に限定されるものではない。
【0036】
下方型枠201と上方押圧部材202により形成される空間204には、厚さ方向(垂直方向)にプレスされた原料肉塊が含まれ、空間204に
図4に示す横方向押圧部材205を押し込むことで、長さ方向(水平方向)に原料肉塊がさらにプレスされ、プレス成型された断面が四角い原料肉塊を得ることができる。予備成型処理とプレス成型とを組み合わせることで、プレス成型時の肉のはみ出しによる廃棄ロスを低減しつつ、断面が四角い形状を有し、かつ角のエッジが明りょうな原料肉塊を得ることが可能となる。
【0037】
V字型の下方型枠301は、
図5に示すように長手方向に沿って隣接する第一の側面301a、第二の側面301bと、第一の側面301aの上方に第三の側面301c、第二の側面の上方に第四の側面301dを備える。V字型を形成する第一の側面301aと第二の側面301bの成す角度は、85度~95度、より好ましくは90度とすることが好適である。また、第三の側面301cおよび第四の側面301dは、V字型下方型枠の外側方向へ
図5に示す型枠の中心線310に対して5度~20度、より好ましくは8度~13度傾斜していることが望ましい。これにより、V字型の下方型枠301の第三の側面301cおよび第四の側面301dと、上方押圧部材302の凸型突起部303の外部側面303a、303bの間に、それぞれ空隙306a、306bが形成され、上方押圧部材302の凸型突起部303の下方端部がV字型の下方型枠301の頂上部307a、307bに引っ掛かるのを防止するとともに、肉のはみ出しによる廃棄ロスをさらに低減することが可能となる。下方型枠301の材質としてはアルミニウム、上方押圧部材302の材質としては樹脂を選択することができるが、これらの材質に限定されるものではない。
【0038】
V字型の下方型枠301に対応する上方押圧部材302は、その凸型突起部303がV字型に切り欠かれており、上方押圧部材302を下方型枠の開口部に嵌合させることで、断面が四角形またはひし形である空間304が上方押圧部材302と下方型枠301によって形成され、当該空間が成型された原料肉塊の形状と一致する。上方押圧部材302において、凸型突起部303のV字型切り欠き面は、第一の側面303cと第二の側面303dより構成され、第一の側面303cと第二の側面303dの成す角度は、V字型の下方型枠301と同様に、85度~95度、より好ましくは90度とすることが好適である。
【0039】
また、V字型下方型枠の内面底部308と上方押圧部材302のV字型内面底部309を結ぶ型枠の中心線310は、地平面に対して垂直となることが好ましい。V字型の下方型枠301は、コの字型の下方型枠と比べて原料肉塊の角に圧力をより加えやすいため、角のエッジが明りょうな断面が四角い原料肉塊を得ることができるという利点がある。
【0040】
上記のようにプレス成型された原料肉塊は
図6に示すように押し出され、適宜必要な付加加工をした後、再度凍結され、その後の加工工程を経て製品とすることができる。例えば、豚カツを製造する場合には、上記プレス成型された豚肉の原料肉塊を半解凍状態にて所望とする厚さにスライスした後、バッター及び衣を付着後、再度凍結処理を経て冷凍豚カツとされる。
【0041】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではない。
[実施例1]
豚肉のロース部分背脂側に、切り幅30mm、切り込み深さ15mm、切り込み角度45度で筋切り処理を行った後、常法に従って、ピックル液を注入し、真空マッサージ、ケーシング充填した。ロース原料肉塊を充填したケーシング袋をコンテナボックス内に背脂側を上にして平行に複数並べ、上方から押圧することで、ケーシング袋を直方体に近づける予備成型を行った。そして、予備成型されたロース原料肉塊をケーシング袋に入れたまま庫内温度-30度で12時間凍結し、その後半解凍した。半解凍されたロース原料肉塊をケーシング袋から取り出し、
図3に示すコの字型の下方型枠201に載置し、凸型突起部203を備えた上方押圧部材202により上方から14MPaの圧力で厚さ方向(垂直方向)にプレスした。さらに、下方型枠201と上方押圧部材202により形成された空間204に
図4に示す横方向押圧部材205を7MPaの圧力で押し込むことで、原料肉塊を長さ方向(水平方向)にプレスした。プレス成型後のロース原料肉塊を9mm厚にスライスして、再び凍結した。
図7(a)、(b)は、実施例1により製造したロース原料肉塊の外観及び横断面の写真であり、角のエッジが概ね明りょうな、断面が四角い原料肉塊を得ることができた。実施例1により断面が四角いロース原料肉塊を製造した場合の原料の廃棄ロス率は2.03%であった(原料3246.2kg使用時における原料肉廃棄量66kg)。
【0042】
[実施例2]
図5に示すV字型の下方型枠301に、予備成型された半解凍のロース原料肉塊をその長手方向の角部がV字型下方型枠の内面底部308と一致するように載置し、対応する上方押圧部材302により上方から厚さ方向(垂直方向)プレスし、上方押圧部材302と下方型枠301によって形成された空間304に、当該空間に対応する横方向押圧部材305を押し込むことで原料肉塊を長さ方向(水平方向)にプレスする以外は、実施例1と同じ方法で行った。
図8(a)、(b)は、実施例2により製造したロース原料肉塊の外観及び横断面の写真であり、角のエッジが明りょうな断面が四角い原料肉塊を得ることができた。実施例2により断面が四角いロース原料肉塊を製造した場合の原料のロス率は1.05%であり(原料3246.2kg使用時における原料肉廃棄量34.16kg)、実施例1と比べて原料ロス率は概ね半分であった。
図7(a)、
図8(a)の原料肉塊の底部を比較すると、
図8(a)に示す原料肉塊は
図7(a)と比べてエッジのがたつきが小さく、角のエッジがより明瞭な断面が四角い原料肉塊を得ることができた。
【符号の説明】
【0043】
100・・・原料肉塊
101・・・ケーシング袋
102・・・コンテナボックス
201・・・コの字型の下方型枠
202・・・コの字型の下方型枠に対応する上方押圧部材
203・・・上方押圧部材202の凸型突起部
204・・・コの字型の下方型枠と対応する上方押圧部材より形成される空間
205・・・コの字型の下方型枠に対応する横方向押圧部材
301・・・V字型の下方型枠
301a・・・V字型の下方型枠の第一の側面
301b・・・V字型の下方型枠の第二の側面
301c・・・V字型の下方型枠の第三の側面
301d・・・V字型の下方型枠の第四の側面
302・・・V字型の下方型枠に対応する上方押圧部材
303・・・上方押圧部材302のV字に切り欠かれた凸型突起部
303a、303b・・・凸型突起部303の外部側面
303c、303d・・・凸型突起部303のV字型切り欠き面を構成する第一の側面と第二の側面
304・・・V字型の下方型枠と対応する上方押圧部材より形成される空間
305・・・V字型の下方型枠に対応する横方向押圧部材
306a、306b・・・V字型の下方型枠301の第三の側面301cおよび第四の側面301dと、上方押圧部材302の凸型突起部303の外部側面303a、303bの間にそれぞれ形成される空隙
307a、307b・・・V字型の下方型枠301の頂上部
308・・・V字型下方型枠の内面底部
309・・・凸型突起部303のV字型切り欠き面底部
310・・・V字型の下方型枠の内面底部308と凸型突起部303のV字型切り欠き面底部309を結ぶ型枠中心線