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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】走行装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220421BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018025454
(22)【出願日】2018-02-15
(65)【公開番号】P2019144612
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】北島 武
(72)【発明者】
【氏名】川崎 栄嗣
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-123348(JP,A)
【文献】特開2009-110495(JP,A)
【文献】特開2012-208782(JP,A)
【文献】特開2011-054082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された目的地まで移動する走行装置であって、
取得した自己の周辺環境データに基づいて、自己の周辺に存在する移動体により形成される領域について動く方向を示す領域方向ベクトルを解析する流れ解析部と、
前記流れ解析部での解析結果に基づいて、前記領域の動きにより形成される流れに沿った走行を選択可能とする走行方向選択部と
を備える走行装置。
【請求項2】
前記走行方向選択部は、目的地に近づく方向への走行が選択不能である場合に、目的地から遠ざかる方向への走行を選択する遠回り選択処理を行う、請求項1に記載の走行装置。
【請求項3】
前記走行方向選択部は、前記領域に存在する移動体と自己との間での空きスペースの有無に応じて移動する方向を選択する、請求項1及び2のいずれか一項に記載の走行装置。
【請求項4】
前記走行方向選択部は、周囲環境についての地図データに基づいて選択すべき走行方向を判断する、請求項1~3のいずれか一項に記載の走行装置。
【請求項5】
前記走行方向選択部は、時間帯ごとの前記領域の動きにより形成される流れの傾向に関する傾向データに基づいて選択すべき走行方向を判断する、請求項1~4のいずれか一項に記載の走行装置。
【請求項6】
前記走行方向選択部は、前記領域の動きにより形成される流れの境界側へ移動する方向を選択する、請求項1~5のいずれか一項に記載の走行装置。
【請求項7】
前記流れ解析部は、前記領域の動きにより形成される流れの解析に際して、自己の周囲にいる歩行者の流れを検出する人移動検出部を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の走行装置。
【請求項8】
前記流れ解析部と前記走行方向選択部とを備える走行方向制御部と、
前記周辺環境データとしての画像データまたは測距データを取得して前記走行方向制御部へ送信する環境データ取得部と、
前記走行方向制御部での解析結果に応じた走行をする走行駆動部と
を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の走行装置。
【請求項9】
周囲環境に応じた案内を行う案内装置を備え、前記環境データ取得部は、前記案内装置に設けられたセンサー部である、請求項8に記載の走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば駅の構内等において、走行するロボット等の走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
目的地まで移動をするロボット等として、障害物を回避するために、飛び出しや動きの予測を行うもの等、種々のものが知られている(例えば、特許文献1、2等参照)。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1、2では、個々の障害物については対応可能であるとしても、例えば駅の構内等において多数の歩行者が走行の障害となり得る、といった環境下においては、回避手段の予測が出来ずに走行の継続が困難になり走行を停止してしまう可能性が高くなると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-055498号公報
【文献】特開2016-209991号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、例えば移動する障害物が多数存在するといった環境下においても、走行停止をする可能性を抑制して、目的地への走行を可能にする走行装置を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するため走行装置は、設定された目的地まで移動する走行装置であって、取得した自己の周辺環境データに基づいて、自己の周辺として設定された領域での移動体により形成される流れの領域方向ベクトルを解析する流れ解析部と、流れ解析部での解析結果に基づいて、領域での移動体の流れに沿った走行を選択可能とする走行方向選択部とを備える。
【0007】
上記走行装置では、走行に際して自己の周辺の領域に存在する移動体が形成する流れを示す領域方向ベクトルについての解析結果に基づいて、移動体の流れに沿った走行を選択可能とすることで、例えば多数の移動体が周りに存在するといった環境下においても、これらの移動体が形成する流れに沿って移動をすることで、走行停止をする可能性を抑制して、目的地への走行を可能にする。
【0008】
本発明の具体的な側面では、走行方向選択部は、目的地に近づく方向への走行が選択不能である場合に、遠回りとなる方向への走行を選択する遠回り選択処理を行う。この場合、流れに逆らわず、遠回りをする場合も選択肢として有することができる。
【0009】
本発明の別の側面では、走行方向選択部は、領域での移動体と自己との間での空きスペースの有無に応じて移動する方向を選択する。この場合、空きスペースへの移動を選択肢として含むことができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、走行方向選択部は、周囲環境についての地図データに基づいて選択すべき走行方向を判断する。この場合、予め有している地図データを利用した走行の選択ができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、走行方向選択部は、時間帯ごとの領域での移動体の流れの傾向に関する傾向データに基づいて選択すべき走行方向を判断する。この場合、傾向データを利用して時間帯に応じてより効率的な走行の選択ができる。さらに、装置が設置される施設の状況変化を考慮するようにしてもよい。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、走行方向選択部は、領域での移動体により形成される流れの境界側へ移動する方向を選択する。この場合、移動体の流れの境界側へ移動することで、当該流れに沿った動きをしつつも、目的地へ到達するために他の流れに移行しやすくなる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、流れ解析部は、領域での移動体の流れとして、自己の周囲にいる歩行者の流れを検出する人移動検出部を有する。この場合、移動体の流れとしての人(歩行者)の流れを捉えることで、人の歩行の流れに合わせて走行することができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、流れ解析部と走行方向選択部とを備える走行方向制御部と、周辺環境データとしての画像データまたは測距データを取得して走行方向制御部へ送信する環境データ取得部と、走行方向制御部での解析結果に応じた走行をする走行駆動部とを備える。この場合、各部での動作を特化させることで、全体としての処理能力を高めることができ、円滑な走行が可能になる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、周囲環境に応じた案内を行う案内装置を備え、環境データ取得部は、案内装置に設けられたセンサー部である。この場合、案内装置に設けられたセンサー部からの情報を走行方向制御部において解析した結果に基づき、走行駆動部による走行がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る走行装置の一例としての走行ロボットの一構成例を概念的に説明する斜視図である。
図2】走行ロボットに組み込まれる接客部としてのコミュニケーションロボットの一構成例について説明するための正面図である。
図3】走行装置としての走行ロボットの構造について説明するためのブロック図である。
図4】走行ロボットの検知範囲についての一例を説明するための概念的な平面図である。
図5】(A)~(H)は、走行ロボットの動き方のパターンについて説明するための概念的な平面図である。
図6】走行装置としての走行ロボットの動作についての一例を説明するためのフローチャートである。
図7】走行ロボットの動作のうち移動方向の選択処理に関しての一例を説明するためのフローチャートである。
図8】走行ロボットの出発地から最終目的地までの設定についての一変形例を説明するための概念図である。
図9】走行ロボットの構造の一変形例について説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1等を参照して、本発明の一実施形態に係る走行装置としての走行ロボットの一例について概要を説明する。
【0018】
本実施形態に係る走行装置としての走行ロボット100は、駅等の各種施設において利用者に対する各種案内といったコミュニケーションを行うコミュニケーションロボットCRとして機能する接客部10と、走行のための駆動機構を有する走行部20と、接客部10と走行部20とを接続する接続部CNとを備える。すなわち、走行ロボット100は、3部構成となっており、装置上部側に位置する接客部10において、人に対して案内を行う等の各種接客対応を行うととともに、装置下部側に位置する走行部20によって自律走行を可能とすることで、利用者の近くまで移動したり、利用者を誘導したりする、といった設定された目的地まで移動する装置となっている。
【0019】
また、本実施形態では、走行ロボット100のうち、中間に位置する接続部CNは、接客部10から外部環境に関する各種データを受け付けるとともに受け付けた情報に基づいて走行部20による走行の方向を判断し、判断結果を走行部20に送信する役割を担っている。つまり、各部について、役割分担がなされている。これにより、例えば、走行ロボット100が案内等を求める人がいるところまで移動することや、案内を行いつつ目的地まで人を誘導する、といった人とのコミュニケーションを行いつつ、目的地への移動が可能となっている。
【0020】
本実施形態では、上記のように、走行装置としての走行ロボット100が、自律的に目的地への移動を行えるようにすべく、接続部CNにおいて走行方向の制御を可能とする走行方向制御部として機能するために各部が設けられているが、走行方向制御部としての接続部CNの構成について詳しくは、図3を参照して後述する。
【0021】
図1に戻って、まず、走行ロボット100のうち、接客部10は、図示のように、人体の一部を模した形状の頭状部HDやこれを支持する胴体状部TRを有する。また、接客部10は、人の音声や支持等を理解可能とすべく情報入手手段としてのマイクや各種センサー等を有するとともに、画像表示部であるモニターやスピーカーといった情報出力手段を有することで、情報案内の提供等の人に対する接客対応を可能としている。なお、接客部10の詳しい構成に関しては、図2及び図3を参照して一例を後述する。
【0022】
接続部CNは、既述のように、接客部10と走行部20との間に配置されており、接客部10を載置させる円形平板状の載置台TAと、載置台TAを支持するとともに走行部20と接続する載置台支持部TSとを有するほか、例えば、載置台支持部TSの側方から放射状に延びる複数の棒状部BBとそれぞれ接続して固定されるリング状の手摺部HBを有している。手摺部HBは、例えば案内される人が走行装置である走行ロボット100による誘導に従って走行ロボット100とともに移動する際に掴まることができるようになっている。
【0023】
走行部20は、上記接客部10を上部側に載置させた状態にある接続部CNをさらに下側から支持しつつ走行する、すなわち走行ロボット100全体を移動させることを可能とする搬送機能を担う部分である。このため、接客部10やこれと接続される接続部CNを支持するための台座部150と、タイヤ等を備えた移動機構MMとを有している。なお、図1では、図示を省略するが、走行部20は、移動に際して自己の周辺に現れる壁や突起物、あるいは歩行者のカバン等の各種障害物を検知可能とすべく赤外線センサー等の各種センサー類を有しており、これらに基づき各種障害物に対する回避が可能となっている。なお、走行部20の動作に関する各部についての概要は、図3を参照して一例を後述する。
【0024】
以下、図2を参照して、走行装置としての走行ロボット100のうち、接客部10を構成するコミュニケーションロボットCRについて一例を説明する。なお、ここでは、一例として、重力方向(垂直方向)をZ方向とし、Z方向に対して垂直な面(水平面)内において互いに直交する方向をX方向及びY方向とする。すなわち、Z方向に垂直な面をXY面とする。また、これらのX方向、Y方向及びZ方向を基準方向とする。
【0025】
図2に示すコミュニケーションロボットCRは、例えば、駅等の各種施設において、利用者に対して各種案内を行う案内型のロボットであり、利用者の声を認識し、認識した音声情報に基づいて、利用者とのコミュニケーションを可能としている案内装置である。このため、コミュニケーションロボットCRは、例えばマイクやスピーカー、人感センサーとしての赤外線カメラ等を有する。さらに、ここでは、コミュニケーションロボットCRは、コミュニケーションの動作の一環として、各部が動作可能となっているものとする。すなわち、コミュニケーションロボットCRは、コミュニケーションの補助や円滑化等のために、例えば、発声とともに、前かがみになったり腰を振ったり、頷いたり、首を横に振ったり等の各種アクションをする、といったことが可能になっている。
【0026】
以下、コミュニケーションロボットCRにおける可動部分の機構について、すなわちコミュニケーションロボットCRのうち動きを担う箇所について説明する。
【0027】
図2に例示するように、コミュニケーションロボットCRは、最上部に設けられ球形に近い形状を有する頭状部HDと、頭状部HDの下側に設けられて頭状部HDを支持する胴体状部TRとを有して、人の上半身を模した形状、すなわち人型の立体構造物となっている。さらに、胴体状部TRについては、上方側に位置する胸部TR1と、下方側に位置する座部TR2と、胸部TR1と座部TR2と間を繋ぐ可変部CHとで構成されている。胸部TR1や座部TR2は、例えば樹脂等で構成され、ある程度の強度を有する部材である。一方、可変部CHは、例えばゴムや布等で構成され変形可能な素材で構成されている。また、可変部CHは、蛇腹のような構造であってもよい。
【0028】
以下、コミュニケーションロボットCRにおける情報発信及び情報収集のための各部の機構について、説明する。
【0029】
まず、情報発信のための1つの手段として、頭状部HDのうち、顔に相当する箇所である正面側には、例えば液晶パネルや有機ELパネル等で構成されるパネル部PLや各種点灯表示等を行う点灯部LU1~LU3が設けられている。例えば、パネル部PLに目鼻口等の画像を表示させることで、頭状部HDに顔のような画像を設けることで、最上部にある頭状部HDが人型のロボットの頭部であることを利用者に認識させることができる。図示の例では、大きな目玉のようなものを表示させている。なお、パネル部PL等において、各種案内を行うために必要な画像表示を行うものとしてもよい。
【0030】
また、情報発信のための別の1つの手段として、頭状部HDの内部には、利用者に対して、音声による発信を行うためのスピーカーSKが、内蔵されている。
【0031】
また、情報収集のための1つの手段として、頭状部HDの前方側にマイクMCが設けられている。
【0032】
さらに、情報収集のための別の1つの手段として、コミュニケーションロボットCRの各部に、周囲にいる利用者を検知する、すなわち人を検知するための人検知センサー部CMが設けられている。人検知センサー部CMについては、周囲の人の位置や動きを捉えるための種々のものが採用可能であり、例えば周囲の状況を画像データとして取得するカメラ装置や、赤外線センサー、さらには、周囲の人の位置や動きを捉えるためにレーザー照射を利用するライダー装置等が考えられる。また、図示の例では、座部TR2に沿って複数の人検知センサー部CMを配置しているが、周囲環境を捉えることができれば、これ以外にも種々の設置箇所が考えられる。
【0033】
以上のような動作をすることで、コミュニケーションロボットCRは、会話等のコミュニケーション動作を行い、この際に併せて胴体部を動かす、といったことができる。
【0034】
また、コミュニケーションロボットCRは、上記した人検知センサー部CMのような各種センサー部を有することで、外部環境についての情報が取得可能となっている。本実施形態では、この点に着目し、走行ロボット100において、構成要素の1つであるコミュニケーションロボットCRすなわち接客部10を、周囲に関する情報である環境データ取得を行うための環境データ取得部として利用するものとなっている。
【0035】
ここで、一般に、ロボットの自律走行を行うに際して、例えば人通りがあまり多くないようなところでは、従来の技術における個々の障害物についての対応をすれば、走行の維持において十分足りるものとなるかもしれない。すなわち、上述した例示のうち、走行部20において障害物検知用の各種センサーを配置してこれにより取得されるデータに基づいて障害物を検知しつつ、例えば必要に応じて検知対象物の動きの予想等をすることで、自己の走行を維持する、といったことが可能かもしれない。しかしながら、例えば都市部の主要な駅の構内や大きなイベント会場のように、多数の歩行者が障害となり得る場所での走行、といった場合においては、上述のような従来の回避手段だけでは、走行の継続が困難になって走行を停止してしまう可能性が高くなる、と考えられる。
【0036】
このような事態に対応すべく、本実施形態では、環境データ取得部として機能する接客部10により各種情報を取得するとともに、走行方向制御部としての接続部CNにおいて走行方向の制御に関する各種処理を行った上で、走行部20によって走行することで、例えば移動する障害物が多数存在するといった環境下においても、走行停止をする可能性を抑制して、目的地への走行を可能にしている。上記のようにたくさんの人が一斉に移動しているといような環境下では、多数の人がある決まった方向に移動して、いわば人の塊が群れとなって流れを形成して移動していく状態となることが多い。そこで、本実施形態では、特に、走行方向制御部における走行方向の選択において、人によって形成される流れを解析し、流れに逆らわず、これに沿って移動することで、移動の停滞を回避するようにしている。
【0037】
以下、図3のブロック図を参照して、走行装置としての動作を行うための走行ロボット100の内部構造について、一例を説明する。
【0038】
図示のように、また、既述のように、本実施形態に係る走行装置としての走行ロボット100は、コミュニケーションロボットCRである接客部10と、走行部20と、接続部CNである走行方向制御部50とを備える。
【0039】
これらのうち、まず、接客部10は、接客用駆動部11と、表示部12と、スピーカーSKと、マイクMCと、人検知センサー部CMとを備える。ここで、接客用駆動部11とは、図2の例で言えば、頭状部HDや胴体状部TRを動かすための駆動装置等を意味する。また、表示部12とは、図2の例で言えば、パネル部PLや点灯部LU1~LU3といった表示動作を行う部分を意味する。
【0040】
ここで、接客部10を、走行に関する機能部として捉えた場合、接客部10は、走行ロボット100の周辺環境データとしての画像データまたは測距データを取得して走行方向制御部50へ送信する環境データ取得部として機能する。具体的には、接客部10における上記各部のうち、マイクMCや、カメラ、ライダー装置、あるいは赤外線センサー、距離画像装置等で構成される人検知センサー部CMは、走行ロボット100の周囲の状況についての画像データまたは測距データ等の情報を取得する環境データ取得部13として機能する。言い換えると、環境データ取得部13は、案内装置である接客部10に設けられたセンサー部で構成されている。
【0041】
次に、走行部20は、走行指令受信部21と、走行駆動部22と、障害物検知センサー部23とを備える。走行指令受信部21は、走行方向制御部50に接続され、走行方向制御部50からの走行指令を受信して、走行駆動部22へ送信する。走行駆動部22は、図2の例で言えば、タイヤ等を備えた移動機構MM等で構成され、走行指令受信部21で受信した信号に従って、タイヤ等を動かし、目的の方向への移動を行う。ただし、走行部20は、障害物検知センサー部23をさらに有しており、走行駆動部22は、障害物検知センサー部23による信号にも応じた走行を行っている。障害物検知センサー部23は、例えば赤外線センサー等の各種センサー類で構成され、移動に際して自己の直近に現れる壁や突起物、あるいは歩行者のカバン等の各種障害物を検知可能としており、これらに基づき各種障害物に対する回避を行うべく走行駆動部22に対して検知結果を送信する。したがって、走行駆動部22は、環境データ取得部としての接客部10で取得した比較的広い範囲の周囲環境の情報に基づく走行と、障害物検知センサー部23で取得した比較的狭い範囲の情報に基づく走行とを併せて行っている。すなわち、走行部20は、原則、走行方向制御部50からの支持に基づく走行を行いつつ、直近に突発的な障害物等がある場合には、これを回避するように走行する。
【0042】
次に、走行方向制御部50の構成について説明する。走行方向制御部50は、既述のように、環境データ取得部として機能するあるいは、環境データ取得部13を有する接客部10から取得した周辺環境データに基づいて、走行ロボット100の走行方向を決定するための装置であり、例えばCPUやストレージデバイス等を有するPC等によって構成されていることで、図示の各機能部を有するものとなっている。すなわち、走行方向制御部50は、外部情報受付部51と、目的地設定部52と、解析対象領域設定部53と、流れ解析部54と、スペース探索部55と、走行方向選択部56と、記憶部60と、タイマー70とを備える。なお、これらのうち、例えば記憶部60は、走行ロボット100が移動可能な範囲についての地図データを格納する地図データ格納領域61や、走行ロボット100が移動する場所(具体的には駅やイベント会場等)の属性に応じた傾向データを格納する傾向データ格納領域62を含み、これらのデータが各部での判断等に際して、必要に応じて読み出される。なお、傾向データについての一例としては、図示のように、時間別傾向データ62aといったものが考えられる。すなわち、時間帯による混み具合の変化等の傾向データが、時間別傾向データ62aとして格納されており、タイマー70とともに適宜読み出されて、時間に応じた移動パターンの選択が可能となっている。
【0043】
まず、上記各部のうち、外部情報受付部51は、接客部10の環境データ取得部13に接続され、環境データ取得部13から各種情報を受信して、各部へ送信する。
【0044】
次に、目的地設定部52は、地図データ格納領域61に格納された地図データを適宜読み出して、外部情報受付部51から受け取った情報に基づいて、走行ロボット100が向かうべき目的地を設定する、すなわち走行ロボット100が向かうべき方向を設定する。
【0045】
次に、解析対象領域設定部53は、現時点での走行ロボット100の周囲の状況を判断するための解析対象領域を設定する。具体的には、例えば、目的地設定部52において設定された目的の方向ベクトルについて正の成分を示す範囲であって、かつ、走行ロボット100の周囲数メートル内の範囲を進むべき方向を選択するための解析対象として設定する。
【0046】
次に、流れ解析部54は、取得したデータの画像処理等を行うことで、解析対象領域設定部53において設定された範囲における人の流れを解析して、集団すなわち一塊の群れとしてみた場合の全体としての移動方向を捉えている。このため、流れ解析部54は、外部情報受付部51を介して取得した画像デーや測距データから個々の人との流れを解析する人移動検出部54aと、人移動検出部54aで抽出された個々の人の流れを集めて一塊の領域をなすものの移動と見た場合のその領域の動く方向を示す領域方向ベクトルについて判定する領域方向ベクトル判定部54bとを備える。流れ解析部54は、人移動検出部54aと領域方向ベクトル判定部54bとでの解析結果に基づき、周囲における移動体としての人の移動状況を把握する。
【0047】
次に、スペース探索部55は、解析対象領域設定部53において設定された範囲において走行ロボット100が移動できる空きスペースであるスペース(空間)が存在するか否かを探索する。すなわち、スペース探索部55は、外部情報受付部51を介して取得した画像デーや測距データから、人のいない箇所であって、かつ、現在地と接続しており移動可能となっている箇所の有無を解析する。
【0048】
最後に、走行方向選択部56は、流れ解析部54やスペース探索部55での結果を利用して、走行ロボット100の走行方向の選択を行っている。すなわち、流れ解析部54での解析結果に基づいて、例えば移動体としての人の移動のうち、目的地の方向に沿ったものがあれば、これに沿って走行ロボット100を走行させることで、走行ロボット100は、人ごみの中であっても、停滞することなく目的地に向かうことができる。また、人の流れが少なくスペースがたくさんあるような場合には、目的地に近づく最もよいスペースを選んでこの方向に進んでいくことで、より迅速に目的地に向かうことができる。したがって、走行方向選択部56では、周囲における人の移動やスペースに対する最良の選択を決定するための選択基準を予め定めておき、流れ解析部54やスペース探索部55での解析結果あるいは探索結果のうちから一の移動方法を選択することで、走行ロボット100の走行方向の決定を行っている。走行方向選択部56は、走行方向の決定を行うと、決定結果を走行部20の走行指令受信部21に送信する。
【0049】
また、詳しい一例は後述するが、本実施形態では、走行方向選択部56において、さらに遠回り選択処理部56aが設けられている。遠回り選択処理部56aは、上記のような解析の結果、目的地へ近づく方向の選択肢が存在しない場合、すなわち目的地に近づく方向への走行が選択不能である場合に利用する回路となっている。
【0050】
以上のように、走行方向制御部50の各部が動作することで、走行方向の選択制御が行われ、さらに、走行部20において選択に従った走行動作がなされることで、走行ロボット100の目的地までの自立走行が達成される。ここで、上記のように、走行ロボット100を3部構成とし、走行方向の制御に関しては、走行方向制御部50が担い、走行そのものや接客あるいは走行方向の選択のためのデータ取得については他の構成が担うように役割分担をしていることにより、各部での演算処理負担が分配され、迅速な処理が可能となっている。
【0051】
なお、図4に一例を示すように、走行ロボット100における検知範囲については、例えば進行方向である前方方向A1を基準とするある程度の角度範囲RG1を有することを必須として、さらに、後方や左右方向についての範囲RG2についても検知可能となっている。例えば、上記した解析対象領域設定部53において設定された範囲としての第1候補の範囲を、角度範囲RG1とすることが考えられる。さらに、目的地へ近づく方向の選択肢が存在しない場合に、第2候補の範囲を、範囲RG2とすることが考えられる。
【0052】
以下、図5(A)~5(H)を参照して、上述した構成の走行ロボット100における動き方のパターンについて代表的なものを説明する。
【0053】
まず、前提として、上記各図は、いずれも、外部情報受付部51を介して取得した画像データや測距データについて解析した様子を概念的に示している。ここでは、説明の簡略化のため、データを解析した結果、走行ロボット100とその周囲の状況が俯瞰的に捉えられた平面図となっているものとし、この平面内、すなわち2次元的な空間内での走行ロボット100の最適な移動方向を走行方向選択部56で選択するものと考える。なお、例えば図5(A)においては、走行ロボット100の位置は、位置Pで示されており、走行ロボット100の向かうべき方向である目的地の方向は、矢印PD1で示されている。これに対して、選択された走行ロボット100の進行方向は、矢印CD1で示されている。他の図も同様である。
【0054】
一方、例えば図5(A)において、周囲の物体の移動、すなわち移動体たる人(歩行者)に関しての動きのうち、個々の動きに関しては、まず、各移動体たる人の位置が位置Hで示されており、その移動の方向や速さは矢印aの向きや大きさで示されている。また、図中破線の囲みで示される人の流れを集めた一塊の群を示す領域DH1について、領域DH1としての移動の方向や速さは矢印DD1で示されている。つまり、矢印DD1は、領域DH1での移動体たる人の流れについての方向ベクトルである領域方向ベクトルを示すものとなっている。他の図も同様である。
【0055】
以上を踏まえて、まず、図5(A)に例示する場合では、壁WAの存在により、位置Pの後方側すなわち目的方向を示す矢印PD1の方向へは進むことができないようになっており、目的方向を示す矢印PD1に対して、位置Pの前方側に存在する領域DH1が、矢印PD1の方向について正の成分を多く含む方向に移動している状態となっている。すなわち、矢印DD1が矢印PD1の方向に沿った成分を含んでいる。以上のような状況であることが、流れ解析部54によって解析されると、矢印DD1に沿って移動する図示の矢印CD1により示される方向(あるいは方向ベクトル)が、走行ロボット100の進行方向として選択されるべきものの候補の1つとして抽出されることになる。つまり、走行ロボット100が領域DH1及びその進行方向に示される人の流れに沿って移動することが選択肢の1つとなる。走行方向選択部56は、他の解析結果との比較から、図示の方向への移動が最適と判断した場合、当該方向へ移動することが決定され、実行される。
【0056】
次に、図5(B)に例示する場合では、一塊の群を示す領域が複数存在しているものとなっている。具体的には、矢印PD1に対して、位置Pの前方側に存在し、矢印PD1の方向について正の成分を多く含む方向に移動する領域DH1と、位置Pの後方側に存在し、矢印PD1の方向について負の成分を多く含む方向に移動する領域DH2とが存在している。この場合、領域DH1の進行方向を示す矢印DD1に沿って移動する矢印CD1の方向、さらにはその後の方向として矢印CD2の方向が選択され、領域DH2の進行方向を示す矢印DD2の方向については選択されないことになる。ただし、この場合に、領域DH2が形成する流れの影響を受けない範囲で移動を行うように移動方向の選択がなされることが望ましい。なお、上記の場合において、走行方向選択部56における矢印DD1と矢印DD2との選択に関しては、例えば、目的方向を示す矢印PD1のベクトル成分を予め抽出しておき、矢印DD1のうち矢印PD1の方向に沿う成分と、矢印DD2のうち矢印PD1の方向に沿う成分とを比較することで、判定ができる。
【0057】
次に、図5(C)に例示する場合では、複数の領域DH1,DH2ともに矢印PD1の方向について負の成分を含む方向に移動している様子を示している。つまり、この場合、どちらの群に沿って移動しても目的地に近づけない、すなわち、遠回りになるものしか選択肢が無い。このような場合であっても、例えば、矢印DD1のうち矢印PD1の方向に沿う成分と、矢印DD2のうち矢印PD1の方向に沿う成分とを比較して、負の成分の絶対値が小さい方を選択するようにする、といった方法を取ることが考えられる。なお、上記のような選択処理については、走行方向選択部56のうち、特に、遠回り選択処理部56aにおいて行う。
【0058】
次に、図5(D)に例示する場合のように、まず、領域DH1の進行方向を示す矢印DD1に沿って移動する矢印CD1が選択されて移動しつつ、目的方向を示す矢印PD1の方向に一点鎖線の囲みで示す空きスペースであるスペースSP1、つまり領域DH1での移動体たる人と自己との間での空間を見つけた場合には、さらにスペースSP1の方向への成分を含む方向である矢印CD2の方向への移動を選択するように選択変更をする、あるいは補正をするものとしてもよい。また、このような動きを繰り返し選択することで、領域DH1により形成される流れの境界側へ移動することができる。境界側へ移動することで、別の流れを形成する領域へ乗り換えることがしやすくなる。例えば図5(C)に例示したように、目的地に近づけない遠回りの選択を行っても、このような動きをしつつ、図5(B)に例示したような他の流れを持つ領域を見つけることで、目的地に近づく移動へ変更していくことが可能になる。
【0059】
次に、図5(E)に例示する場合のように、人の位置Hがまばらで一塊の群を示す領域が存在せず、目的方向を示す矢印PD1の方向にスペースSP2を見つけた場合には、矢印PD1に沿った矢印CD1の方向が選択されてもよい。
【0060】
次に、図5(F)に例示する場合において、破線で示すように、それまで沿って進んでいた1つの領域DH1の中から新たな一塊の群を示す領域DH3が出現し、かつ、その領域DH3の進行方向が矢印DD3として示すように、より矢印PD1の方向に沿う成分が多いものである場合には、そちらの領域DH3に沿った移動を選択するように選択変更をしてもよい。
【0061】
次に、図5(G)に例示する場合のように、人の位置Hの移動を示す矢印aがバラバラで一塊の群を示す領域が存在しない場合には、図示のように、目的方向を示す矢印PD1の方向に一点鎖線の囲みで示すスペースSP1を見つけるようにし、スペースSP1のような方向への移動を優先的に選択するようにしてもよい。
【0062】
最後に、図5(H)に例示する場合のように、ある地点で突如、一塊の群を示す領域DH1の進行方向が領域DH2の進行方向へと変化する、すなわち矢印DD1の方向が矢印DD2へと変化する場合も考えられる。典型例としては、交差点になっているような箇所が考えられる。このような場所では、例えば変化の前後で目的方向を示す矢印PD1のベクトル成分について大差が無い、といった場合には変化に合わせる移動方法を選択肢とすることも考えられる。
【0063】
以上の例示のように、移動体としての人が一塊となって形成する群の領域としての移動に沿った動きをする、すなわち人によって形成される流れに逆らわない移動や、人の間にできるスペースの探索をし、そのスペースへの移動をすることで、走行ロボット100は、人ごみの中であっても、自己の移動の停滞発生を抑制して、確実に目的地に向かうことができるようになっている。
【0064】
以下、図6及び図7のフローチャートを参照して、走行装置としての走行ロボット100の動作についての一例を説明する。
【0065】
図6に示すように、まず、走行方向制御部50の目的地設定部52において、走行ロボット100が到達すべき目的地(最終目的地)の設定がなされると(ステップS101)、解析対象領域設定部53が解析対象領域の範囲を設定するとともに、流れ解析部54及びスペース探索部55において設定された解析対象領域の範囲における移動体たる人の流れやスペースの有無の確認がなされ、走行方向選択部56により、進行方向の選択肢に関する判定が行われる(ステップS102)。なお、ステップS102における判定処理について詳しい一例は、図7を参照して後述する。
【0066】
ステップS102における判定処理の結果、一の選択肢が選ばれた場合(ステップS103:Yes)、その方向への移動が行われる(ステップS104)。ステップS104での移動後、走行方向制御部50あるいは目的地設定部52は、地図データ格納領域61に格納された地図データを適宜読み出して、周囲状況の探索を行い(ステップS105)、目的地に到達したか否かを判断する(ステップS106)。
【0067】
ステップS106において、目的地に達したと判定された場合(ステップS106:Yes)、走行方向制御部50は、一連の処理を終えて、動作を終了し、結果的に走行ロボット100は、その場所で移動を止める、すなわち、走行を停止し、例えば案内に必要な各種動作の開始等、必要な他の処理を開始する。
【0068】
一方、ステップS106において、目的地に達していないと判定された場合(ステップS106:No)、走行方向制御部50の走行方向選択部56は、選択されているステップS104での移動方法と、ステップS105での周囲状況の探索結果との比較検討を行い、より好条件の移動方法があるか否かを判定する(ステップS107)。典型的には、図5(D)~5(F)を参照して例示したような周囲の変化に伴ってより目的方向について好適に進むことができる選択肢が新たに生じているかを判定する。
【0069】
ステップS107において新たな選択肢があると判定された場合には(ステップS107:Yes)、走行方向選択部56は、移動方法の変更を行った上で変更した移動をし(ステップS108)、変更した移動方法の継続が可能であるか否かを判定する(ステップS109)。ステップS107において新たな選択肢が無いと判定された場合には(ステップS107:No)、走行方向選択部56は、現状の移動方法を維持したまま、さらにその移動方法の継続が可能であるか否かを判定する(ステップS109)。
【0070】
ステップS109において、継続が可能であると走行方向選択部56によって判定された場合には(ステップS109:Yes)、その方向への移動が行われ、ステップS104からの動作が繰り返される(ステップS104~S109)。
【0071】
一方、ステップS109において、継続が不可能であると走行方向選択部56によって判定された場合には(ステップS109:No)、走行方向制御部50は、ステップS102に戻って、再度、可能な進行方向についての解析処理と進行方向の選択肢に関する判定処理とを行う。
【0072】
以下、図7を参照して、ステップS102における一連の処理について一例を説明する。ステップS102においては、まず、前提としての解析対象領域設定部53により設定された解析対象領域の範囲について流れ解析部54による流れ解析が行われる(ステップS401)。すなわち、図5を参照して例示した解析対象領域の範囲における移動体たる人の流れの解析とともに複数の人が形成する一塊の群を示す領域の動きについての解析(ベクトル群解析)の処理がなされる。ここで、解析対象領域の範囲についての一例として、図4に例示した前方方向A1を目的地の方向とする前方側の角度範囲RG1とすることが考えられる。すなわち、目的地の方向に対して負となる後方側の範囲を含まないようにすることが考えられる。
【0073】
さらに、ステップS401と並行して、走行方向制御部50は、スペース探索部55によるスペースの有無の探索が行われる。すなわち、図5を参照して例示した複数の人の間にできるスペースについての探索がなされる(ステップS402)。
【0074】
ステップS401及びステップS402における処理がなされると、走行方向選択部56は、目的地へ近づく方向の選択肢が存在するか否かを判定する(ステップS403)。すなわち、走行ロボット100の進行方向として選択されるべき候補が少なくとも1つは存在しているか否かを判定する。
【0075】
ステップS403において、1つ以上の選択肢が存在する場合には(ステップS403:Yes)、走行方向選択部56において予め定められている選択基準に従って、最良の移動選択肢を判定し(ステップS404)、一連の処理を終える。一方、ステップS403において、選択肢が1つも存在しない場合には(ステップS403:No)、選択肢が無い旨を判定し(ステップS405)、一連の処理を終える。
【0076】
上記したステップS102における一連の処理の結果、最良の移動選択肢が判定されている場合には、図6におけるステップS103において、選択肢有り(ステップS103:Yes)と判定される。一方、ステップS102における一連の処理の結果、移動選択肢が無いと判定されている場合には、ステップS103において、選択肢無し(ステップS103:No)と判定される。
【0077】
ここで、ステップS103において、目的地へ近づく方向の選択肢が無いと判定された場合(ステップS103:No)、走行方向制御部50は、遠回り処理を行う(ステップS201)。すなわち、目的地から遠ざかる方向までも選択肢に含んで処理を行う。典型的には、図5(C)に例示した状況のようなものまでを選択しに含むような処理を行う。このため、例えば、図4に例示した前方側の角度範囲RG1のみならず、後方側の範囲RG2についても検知範囲とし、さらに、目的の方向に対して負の成分となる方向への移動も選択肢の候補とする。以上のような前提のもと、図7に例示したステップS102と同様のスペースやベクトル群に関する一連の処理を行う(ステップS202)。ステップS202において、最良の移動選択肢が判定されている場合には、選択肢有りと判定し(ステップS203:Yes)、その選択肢による移動が行われ(ステップS104)、前述と同様に以後の動作が繰り返される。
【0078】
一方、ステップS202においてもなお、選択肢が1つも存在しない場合には(ステップS203:No)、目的の方向に対して正負を問わず移動できない状態となっていることになる。この場合、移動できない状態であることを周囲に示すべく、発報動作を行う(ステップS301)。具体的には、スピーカーSK等の音声手段といった情報発信機能を利用して、「道を開けてください。」等の周囲の歩行者に対する意思表示の動作を行う。ステップS301での発報動作後、周囲の状況が変化したか否かを確認し(ステップS302)、変化があれば(ステップS302:Yes)、再度、ステップS102からの動作を繰り返す。一方、変化が無ければ(ステップS302:No)、ステップS301の発報動作を所定回数(A回:A>1)繰り返し(ステップS303)、ステップS303において所定回数に達して(ステップS303:Yes)もなお、周囲の状況が変化しなければ(ステップS304:No)、例えば通信機能等を利用して管理室等に向けて通報(報告)を行い(ステップS305)、その場に待機したまま動作を終了する。なお、ステップS304において、状況の変化があった場合には、(ステップS304:Yes)、再度、ステップS102からの動作を繰り返す。
【0079】
以上のように、本実施形態に係る走行装置としての走行ロボット100では、走行に際して自己の周辺の領域に存在する移動体たる人が形成する流れを示す領域DH1の領域方向ベクトルすなわち図中の矢印DD1についての解析結果に基づいて、移動体たる人の流れに沿った走行を選択可能としている。これにより、例えば多数の人(歩行者)が周りに存在するといった環境下においても、これらの人が形成する流れに沿って移動をすることで、走行停止をする可能性を抑制して、目的地への走行が可能になる。
【0080】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0081】
まず、上記実施形態において、目的地を最終到達点として記載しているが、例えば図8に示すように、出発地SS1から最終目的地までについて、第1目的地PP1、第2目的地PP2…としていき、n番目の目的地を最終目的地(第n目的地)PPnとするようにして、中途の目的地に向かって順次走行を行っていくものとしてもよい。つまり、目的地を小刻みに設定してもよい。また、この際に、例えば、目的地設定部52は、地図データ格納領域61に格納された地図データとともに傾向データ格納領域62に格納された時間別傾向データ62aを適宜読み出して、上記した中途の目的地として最適なものを時間帯に応じて設定するものとしてもよい。
【0082】
また、上記では、コミュニケーションロボットCRで構成される接客部10を、走行ロボット100の自己の周囲の状況についての画像データまたは測距データ等の情報を自ら取得する環境データ取得部としているが、環境データ取得部は、これに限らず、種々の態様が考えられ、例えば走行部20の一部において補助的なデータの取得を行うものとしてもよい。さらに、上記のように自ら自己の周囲のデータを取得することを前提としつつ、さらに付加的に、走行ロボット100を配置する駅等の構内において別途用意しておいたカメラ等からの情報を、通信回線等により利用可能としてもよい。具体的には、例えば図3の変形例として例示する図9のように、走行方向制御部50が、施設内(例えば駅等の天井部分)において監視用に設けた定点カメラFCのデータ送信部FCdから無線通信により情報を受け付けるような構成となっていてもよい。
【0083】
また、走行方向選択部56において予め定めておく選択基準についても種々のことが想定でき、例えば、時間別傾向データ62aを反映させて時間別に基準を変更してもよい。例えば、駅のホーム付近であれば、人の流れが多くなりやすい列車の到着直後や直前における流の特徴を重視した設定変更を行うといったことが考えられる。
【0084】
また、コミュニケーションロボットCRは、例えば管理用装置等とネットワーク接続されているものとしてもよい。この場合、ソフト的に対処できる事項については、ネットワークの接続先である管理用装置等が担うものとしてもよい。また、例えばより多くの人への案内を可能とすべく多様な言語に対応可能なものとしてもよいが、この際、言語認知機能を持たせることの他、言語を選択させるためのタッチパネル等を設置してもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、コミュニケーションロボットとしての案内用のロボットに組み込む場合を例示したが、これに限らず、種々のロボットについて、本願発明のロボット機構を適用することが可能である。例えば、歩行困難者等を載置して走行する車椅子型の走行装置に、本願発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0086】
10…接客部、11…接客用駆動部、12…表示部、13…環境データ取得部、20…走行部、21…走行指令受信部、22…走行駆動部、23…障害物検知センサー部、50…走行方向制御部、51…外部情報受付部、52…目的地設定部、53…解析対象領域設定部、54…流れ解析部、54a…人移動検出部、54b…領域方向ベクトル判定部、55…スペース探索部、56…走行方向選択部、56a…選択処理部、60…記憶部、61…地図データ格納領域、62…傾向データ格納領域、62a…時間別傾向データ、70…タイマー、100…走行ロボット、150…台座部、a…矢印、A1…前方方向、BB…棒状部、CD1…矢印、CD2…矢印、CH…可変部、CM…人検知センサー部、CN…接続部、CR…コミュニケーションロボット、DD1,DD2,DD3…矢印、DH1,DH2,DH3…領域、H…位置、HB…手摺部、HD…頭状部、LU1-LU3…点灯部、MC…マイク、MM…移動機構、P…位置、PD1…矢印、PL…パネル部、PP1,PP2…目的地、RG1…角度範囲、RG2…範囲、SK…スピーカー、SP1,SP2…スペース、SS1…出発地、TA…載置台、TR…胴体状部、TR1…胸部、TR2…座部、TS…載置台支持部、WA…壁
図1
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