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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】ヘアトリートメント剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/42 20060101AFI20220421BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220421BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220421BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20220421BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
A61K8/42
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/86
A61Q5/12
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018041566
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019156728
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-08-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】尾嶋 満里子
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-124173(JP,A)
【文献】Henkel, China,Mask,Mintel GNPD [online],2016年07月,https://portal.mintel.com,ID#4125557
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(C)及びジイソステアリン酸ポリグリセリル-10を含有するヘアトリートメント剤。
(A)脂肪酸アミドアミン 0.5~5質量%
(B)ベヘニルアルコール 1~20質量%
(C)テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 1~15質量%
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアトリートメント剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーマやヘアカラー、ブリーチなどの利用が一般化する反面、これらの化学処理に伴う毛髪のダメージも問題となっている。従来から、毛髪のダメージを軽減し、シャンプー後の毛髪の感触を向上させるために、リンス、コンディショナー、トリートメントなどの各種ヘアトリートメント剤が使用されている。
【0003】
このような毛髪のダメージを改善するために、高級アルコールと脂肪酸アミドアミンを併用した毛髪化粧料が種々提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-160838号公報
【文献】特開20115-124173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘアトリートメント剤に高級アルコールと脂肪酸アミドアミンを併用することによって、高い毛髪トリートメント効果を得ることができた。しかしながら、高級アルコールとしてベヘニルアルコールを用いた場合、併用する油剤によっては低温保管又は高温保管において、経時で粘度が上昇する、という経時安定性上の課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、下記の(A)~(C)を含有するヘアトリートメント剤を提供する。
(A)脂肪酸アミドアミン
(B)ベヘニルアルコール
(C)テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、髪とのなじみ、すすぎ時の指通り、乾燥後の髪のしっとり感が良好な使用感でありかつ、経時安定性の良好なヘアトリートメント剤が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いられる成分(A)脂肪酸アミドアミンは、化学式がRCONH(CHNRで表される化合物をいい、Rは、置換されていてもよい直鎖又は分岐した炭素数8~24の飽和又は不飽和脂肪酸残基を、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、置換されていてもよい直鎖又は分岐した炭素数1~10のアルキル基を、またnは1~10を示す化合物である。本発明で用いられる脂肪酸アミドアミンは、この化学式で表されるものであれば、いずれも使用できるが、これらの中でも、ステアラミドプロピルジメチルアミン(化粧品表示名称)、ベヘナミドプロピルジメチルアミン(化粧品表示名称)を用いることが好ましい。
【0009】
成分(A)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよく、本発明のヘアトリートメント剤全量に対し、0.5~5質量%の配合量が好ましい。配合量が0.5質量%未満又は5質量%を超えると、安定性が悪くなる場合がある。
【0010】
本発明で用いられる成分(B)ベヘニルアルコールは、通常ヘアトリートメント剤に配合し得るものであれば、特に制限されずに使用することができる。
【0011】
成分(B)は、本発明のヘアトリートメント剤全量に対し、1~20質量%の配合量が好ましい。配合量が1質量%未満又は20質量%を超えると、安定性が悪くなる場合がある。
【0012】
本発明で用いられる成分(C)テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルは、エチルヘキサン酸とペンタエリスリトールとのテトラエステルであり、特に制限されずに使用することができる。
【0013】
成分(C)は、本発明のヘアトリートメント剤全量に対し、1~15質量%の配合量が好ましい。配合量が1質量%未満であると、使用感及び安定性に影響を及ぼす場合があり、15質量%を超えると、安定性が悪くなる場合がある。
【0014】
[その他の任意成分]
本発明のヘアトリートメント剤は、ヘアトリートメント剤に使用できる、成分(A)~(C)以外の種々の成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。例えば、シリコーン化合物(成分(D)とする)、ノニオン界面活性剤(成分(E)とする)、カチオン性高分子(成分(F)とする)、中和剤(成分(G)とする)、溶媒となる水(成分(H)とする)等を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0015】
<成分(D)>
成分(D)は、シリコーン化合物である。具体的には、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、脂肪酸変性ポリシロキサン、脂肪族アルコール変性ポリシロキサン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、などを含み、例えば以下の(a)~(h)等が挙げられる。
【0016】
(a)ジメチルポリシロキサン:メチルシロキサン構造を持ち、25℃における粘度が1~50,000mPa・sである重合度のものが挙げられる。
(b)環状シリコーン:環状のメチルポリシロキサン構造を持つシリコーン油であり、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、環状シリコン樹脂等が挙げられる。
(c)高重合ジメチルポリシロキサン:メチルシロキサン構造を持ち、25℃における粘度が50,000~20,000,000mPa・sであるものが挙げられ、高重合ジメチルポリシロキサンを本発明のヘアトリートメント剤に配合する場合、液状油に溶解して配合するか、更にカチオン性界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの非イオン性界面活性剤水溶液中で調製した水性乳濁液を配合することが好ましい。液状油としてはジメチルポリシロキサンや、環状シリコーン又はイソパラフィン系炭化水素等を挙げることができる。
(d)アミノ変性シリコーン:N-(2-アミノエチル)アミノプロピル基又はN-(2-アミノエチル)アミノイソブチル基を持つシリコーン油であり、アミノ変性シリコーンを本発明のヘアトリートメント剤中に配合する場合、液状油に溶解して配合するか、更にカチオン性界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの非イオン性界面活性剤水溶液中で調製した水性乳濁液を配合することが好ましい。また水性乳濁液として用いる場合、該水性乳濁液中に含まれるアミノ変性シリコーンの量は20~60%が好ましく、30~50%が更に好ましい。また液状油としてはジメチルポリシロキサンや、環状シリコーン又はイソパラフィン系炭化水素等を挙げることができる。
(e)ポリエーテル変性シリコーン:ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキプロピレン)シロキサン共重合体等が挙げられる。
(f)アルコール変性シリコーン:ジメチルポリシロキサンのメチル基の一部をアルコキシ基に置き換えた構造を有し、ステアロキシメチルポリシロキサン、セトキシメチルポリシロキサン等が挙げられる。
(g)アルキル変性シリコーン: ジメチルポリシロキサンのメチル基の一部を長鎖アルキル基に置き換えた構造を有し、アルキル基の置換率及び大きさにより、液体からワックス状の性状を有するものが挙げられる。
(h)アミノフェニル変性シリコーン:N-(2-アミノエチル)アミノプロピル基又はN-(2-アミノエチル)アミノイソブチル基とフェニル基を持つシリコーン油であり、アミノフェニル変性シリコーンを本発明の毛髪化粧料中に配合する場合、液状油に溶解して配合するか、更にカチオン性界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの非イオン性界面活性剤水溶液中で調製した水性乳濁液を配合することが好ましい。また液状油としてはジメチルポリシロキサンや、環状シリコーン又はイソパラフィン系炭化水素等を挙げることができる。
【0017】
これらシリコーン誘導体の中では、(a)ジメチルポリシロキサン、(c)高重合ジメチルポリシロキサン、(d)アミノ変性シリコーン及び(h)アミノフェニル変性シリコーンが特に好ましく、更には高重合ジメチルポリシロキサンをジメチルポリシロキサンに溶解したものを用いることが最も好ましい。これらのシリコーン誘導体は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
シリコーン化合物をヘアトリートメント剤に配合する場合、その配合量は、シリコーン化合物総量として0.01~25質量%、0.05~10重量%が好ましい。
【0019】
<成分(E)>
成分(E)は、ノニオン界面活性剤である。ノニオン界面活性剤としては、ヘアトリートメント剤に配合し得るものであれば特に限定されないが、使用感の観点からHLB値が8以上の親水性ノニオン界面活性剤を用いることが好ましい。かかる親水性ノニオン界面活性剤として具体的には、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン等が挙げられ、中でもポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
【0020】
<成分(F)>
成分(F)は、カチオン性高分子である。カチオン性高分子としては、ヘアトリートメント剤に配合し得るものであれば特に限定されず、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化ローカストビーンガム、塩化ジメチルジアリル・アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体を例として挙げることができる。これらの中でも、カチオン化ヒドロキシエチルセルロースのポリクオタニウム-10(化粧品表示名称)を用いることが好ましい。
【0021】
<成分(G)>
成分(G)は、中和剤である。中和剤としては、ヘアトリートメント剤に配合し得るものであれば特に限定されず、有機酸及び/又はその塩、無機酸及び/又はその塩を例として挙げることができる。これらの中でも、クエン酸及び/又はその塩、乳酸及び/又はその塩が好ましく用いられる。
【0022】
<成分(H)>
成分(H)は溶媒となる水であり、成分(H)としては、イオン交換水、蒸留水、脱イオン水、精製水、温泉水、海洋深層水等を使用することができる。成分(H)の配合量は、本発明のヘアトリートメント剤の全量に対して、例えば5~90質量%であり、使用時に所望の感触が得られるのに適した配合量となるように調整することが好ましい。
【0023】
本発明のヘアトリートメント剤は、上述の成分の他に、通常のヘアトリートメント剤に用いられる任意成分を、本発明の効果を阻害しない程度に配合することができる。具体的には、油剤、増粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤等を挙げることができる。
【0024】
本発明のヘアトリートメント剤は、常法により製造することができる。剤型としては、液状、クリーム状、ワックス状等の剤型とすることができ、シャンプー等で毛髪を洗浄した後に用いることが好ましい。また、塗布した後、毛髪に残存する余分なヘアトリートメント剤をすすいで用いることが好ましい。
【実施例
【0025】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、これにより、本発明の範囲が限定されるものではない。なお、配合量は、特に断りのない限り質量%である。
【0026】
表1の実施例及び比較例のヘアトリートメント剤を、定法により調製した。
【0027】
そして、各実施例及び比較例のヘアトリートメント剤について、下記の方法で、物性、使用感及び安定性の評価を行った。その結果を表に示す。
【0028】
(a)粘度測定方法
B型粘度計
ルーターNo.4
6rpm60秒
温度:室温
【0029】
(b)pH測定方法
濃度:直接
温度 室温
【0030】
(c)使用感(髪とのなじみ、すすぎ時の指通り、乾燥後の髪のしっとり感)
専門パネラー5名による使用テストを行った。まず、各パネラーが日常使用しているシャンプーで十分洗髪を行ってから、表のヘアトリートメント剤の使用テストを行い、下記の評価基準に従って、髪とのなじみ、すすぎ時の指通り、乾燥後の髪のしっとり感について、絶対評価をし、更にその5人の評点の平均点を下記判定基準により判定した。評価基準及び判定基準は、髪とのなじみ、すすぎ時の指通り、乾燥後の髪のしっとり感で共通のものとした。
<評価基準>
3点:非常に良い
2点:良い
1点:やや悪い
0点:悪い

<判定基準>
◎:2.5点以上
○:1.8点以上2.5点未満
△:1.0点以上1.8点未満
×:1.0点未満
【0031】
(d)粘度安定性
表のヘアトリートメント剤の粘度を5℃及び40℃で1カ月保管した際の粘度を測定し、翌日の粘度を100%とした際の粘度保持率を算出し下記の基準で評価した。
<判定基準>
◎:80%以上120%未満
○:60%以上80%未満又は120%以上140%未満
△:30%以上60%未満又は140%以上170%未満
×:30%未満又は170%以上
【0032】
表に示された結果から明らかなように、各実施例のヘアトリートメント剤は、使用感及び安定性すべての面で優れていた。一方、各比較例1~3のヘアトリートメント剤は、使用感及び安定性の面で劣っていた。また、脂肪酸アミドアミンを4級カチオンに代替した比較例4と実施例1は同程度の使用感であった。このことより本発明のヘアトリートメント剤は、安全性に優れるにもかかわらず、使用感が良好であることが示された。
【0033】
【表1】