(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
B01D 39/20 20060101AFI20220421BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20220421BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20220421BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20220421BHJP
C04B 35/577 20060101ALN20220421BHJP
C04B 37/00 20060101ALN20220421BHJP
C04B 38/00 20060101ALN20220421BHJP
【FI】
B01D39/20 D
B01D46/00 302
F01N3/022 C
B01J35/04 301J
C04B35/577
C04B37/00 Z
C04B38/00 303Z
(21)【出願番号】P 2018059933
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】石岡 知大
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-069123(JP,A)
【文献】特開2002-060279(JP,A)
【文献】国際公開第2007/083711(WO,A1)
【文献】特開2019-162577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D46/00-46/54
B01D39/00-39/20
F01N3/02-3/038
C04B37/00-38/10
C04B35/56-35/599
B01J21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の角柱状のハニカムセグメントと、
複数個の前記ハニカムセグメントの側面同士を互いに接合する接合層と、
前記接合層によって格子状に配列した状態で接合された複数個の前記ハニカムセグメントを囲繞するように配設された外周壁と、を備え、
前記ハニカムセグメントは、流入端面から流出端面まで軸方向に延びる複数のセルを取り囲むように配設された多孔質の隔壁、及び前記隔壁を取り囲むように配設されたセグメント外壁を有し、
それぞれの前記ハニカムセグメントにおける前記セルは、前記流入端面側又は前記流出端面側のいずれか一方の端部が、目封止部によって目封止されており、
前記接合層には、前記ハニカムセグメントを格子状に接合する交点部分の少なくとも1つに、前記流入端面側又は前記流出端面側から前記軸方向の内部側に向かって延びる有底中空の空隙部が形成されており、
前記ハニカムセグメントの前記軸方向の長さに対する、前記空隙部の前記軸方向の空隙深さの比率が5%以上であ
り、
前記ハニカム構造体の前記流入端面側又は前記流出端面側における前記接合層の幅に対する、前記空隙部の開口径の比率が、10~140%である、ハニカム構造体。
【請求項2】
前記空隙部が形成された前記交点部分において、前記空隙部が形成されていない部分の前記軸方向の長さが1.5mm以上である、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記空隙部は
、前記ハニカム構造体の前記流入端面側又は前記流出端面側において、その径方向
における一の径方向上の存在する前記交点部分の
うち、最外周に位置する前記交点部分の少なくとも1つに形成されている、請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記空隙部は、
前記径方向における一の径方向上の存在する前記交点部分のうちの最外周に位置する前記交点部分のうち、前記ハニカム構造体の前記流入端面又は前記流出端面の重心に最も近い位置に存在する前記交点部分から
当該交点部分から周方向に延びる前記接合層に沿って直線状に延長した延長
線上の前記交点部分の全てに形成されている、請求項3に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記ハニカム構造体の前記流入端面側又は前記流出端面側における前記接合層の幅が0.5~2.0mmである、請求項1~
4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、複数個のハニカムセグメントを接合層によって接合したセグメント構造のハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の各種内燃機関から排出される排ガスの中には、塵、スス、及びカーボン微粒子等の多くの粒子状物質(パティキュレートマター:Particulate Matter)が含まれている。このため、例えば、ディーゼルエンジンを動力源とする自動車から排出される排ガスを浄化する浄化装置として、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)が用いられている。以下、粒子状物質を「PM」ということがある。また、ディーゼルパティキュレートフィルタを「DPF」ということがある。
【0003】
上記DPFは、通常、多孔質の隔壁によって流体の流路となる複数のセルが区画されたものであり、複数のセルの開口部を交互に目封止することで、セルを形成する多孔質の隔壁がフィルタの役目を果たす構造である。
【0004】
DPFによって排ガス中のPMの除去を継続して行うと、DPFの内部にPMが堆積し、浄化効率が低下するとともに、DPFの圧力損失が大きくなる。そこで、DPFを用いた浄化装置においては、ディーゼル機関から発生する高温の排ガスにより、堆積したPMを燃焼させる「再生処理」を行う必要がある。
【0005】
上述した再生処理の際には、PMの燃焼熱によってDPFに高い熱応力が発生するため、DPFの破損を防止するための対策が必要である。特に、乗用車等は、再生処理の頻度が多くなる傾向があり、DPFの破損を防止するための対策が特に重要視されている。
【0006】
従来、こうしたDPFの破損を防止するための技術として、DPFを一つのハニカム構造体によって製造するのではなく、ハニカム構造を有するセグメントの複数個を、接合材を介して接合する技術が提案されている(特許文献1参照)。以下、「ハニカム構造を有するセグメント」を、「ハニカムセグメント」ということがある。また、「複数個のハニカムセグメントが接合層によって接合されたハニカム構造体」を、「セグメント構造のハニカム構造体」ということがある。なお、このようなセグメント構造のハニカム構造体と対比されるハニカム構造体として、ハニカム構造体を構成する隔壁の全てが連続した1つの構造物となっているハニカム構造体がある。このような「隔壁の全てが連続した1つの構造物となっているハニカム構造体」を、「一体構造のハニカム構造体」ということがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
セグメント構造のハニカム構造体は、ハニカム構造体全体の熱応力を緩和することができるものの、ハニカム構造体の外周部の接合層に、クラック(crack)等が発生し易いという問題があった。例えば、DPF用のハニカム構造体は、再生処理時のPMの酸化・燃焼を促進するために、酸化触媒が担持されることがある。酸化触媒を担持する際には、ハニカム構造体に、酸化触媒を含むスラリーをコートした後、高温で熱処理して焼き付ける操作が行われるが、この熱処理時に、外周部の接合層にクラック等が発生することがある。また、車両走行時に発生する排ガスの急昇温や急降温においても、接合層にクラック等が発生することがある。
【0009】
昨今、大型トラック等においては、DPFのダウンサイジング等の要求により、コージェライト製のDPFからSiC製のDPFへ切り替える傾向があり、大型サイズのSiC製のDPFの採用が高まっている。大型サイズのDPFでは、触媒を担持する際に、DPFの内外温度差がよりつきやすく、クラックが入りやすいという問題があった。
【0010】
また、SiC化においても、SCRとDPFを一体化したDPFにおいては、担持する触媒量も多く、DPFの材料として高気孔率で熱伝導の低い材料を使う傾向がある。ここで、「SCR」とは、「Selective Catalitic Reduction:選択還元型NOx触媒」の略である。高気孔率の材料は、特性的に低熱伝導となるため、DPFの材料として使用した場合に、触媒を担持する際に、DPFの内外温度差がつきやすく、クラックが入りやすいという問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明によれば、複数個のハニカムセグメントを接合する接合層に生じるクラックの伸展を有効に抑制することが可能なハニカム構造体が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、以下に示す、ハニカム構造体が提供される。
【0013】
[1] 複数個の角柱状のハニカムセグメントと、
複数個の前記ハニカムセグメントの側面同士を互いに接合する接合層と、
前記接合層によって格子状に配列した状態で接合された複数個の前記ハニカムセグメントを囲繞するように配設された外周壁と、を備え、
前記ハニカムセグメントは、流入端面から流出端面まで軸方向に延びる複数のセルを取り囲むように配設された多孔質の隔壁、及び前記隔壁を取り囲むように配設されたセグメント外壁を有し、
それぞれの前記ハニカムセグメントにおける前記セルは、前記流入端面側又は前記流出端面側のいずれか一方の端部が、目封止部によって目封止されており、
前記接合層には、前記ハニカムセグメントを格子状に接合する交点部分の少なくとも1つに、前記流入端面側又は前記流出端面側から前記軸方向の内部側に向かって延びる有底中空の空隙部が形成されており、
前記ハニカムセグメントの前記軸方向の長さに対する、前記空隙部の前記軸方向の空隙深さの比率が5%以上であり、
前記ハニカム構造体の前記流入端面側又は前記流出端面側における前記接合層の幅に対する、前記空隙部の開口径の比率が、10~140%である、ハニカム構造体。
【0014】
[2] 前記空隙部が形成された前記交点部分において、前記空隙部が形成されていない部分の前記軸方向の長さが1.5mm以上である、前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0015】
[3] 前記空隙部は、前記ハニカム構造体の前記流入端面側又は前記流出端面側において、その径方向における一の径方向上の存在する前記交点部分のうち、最外周に位置する前記交点部分の少なくとも1つに形成されている、前記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
【0016】
[4] 前記空隙部は、前記径方向における一の径方向上の存在する前記交点部分のうちの最外周に位置する前記交点部分のうち、前記ハニカム構造体の前記流入端面又は前記流出端面の重心に最も近い位置に存在する前記交点部分から当該交点部分から周方向に延びる前記接合層に沿って直線状に延長した延長線上の前記交点部分の全てに形成されている、前記[3]に記載のハニカム構造体。
【0018】
[5] 前記ハニカム構造体の前記流入端面側又は前記流出端面側における前記接合層の幅が0.5~2.0mmである、前記[1]~[4]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0019】
本発明のハニカム構造体は、複数個のハニカムセグメントを接合する接合層に生じるクラックの伸展を有効に抑制することができる。即ち、ハニカムセグメントを格子状に接合する接合層の交点部分の少なくとも1つに、有底中空の空隙部が形成されているため、接合層にクラックが生じた際に、空隙部によりクラックの伸展を有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すハニカム構造体の流入端面側を示す平面図である。
【
図3】
図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図2のB-B’断面を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す平面図である。
【
図7】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す平面図である。
【
図8】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す平面図である。
【
図9】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す平面図である。
【
図10】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す平面図である。
【
図11】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す平面図である。
【
図12】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0022】
(1)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、
図1~
図4に示すように、複数個のハニカムセグメント4と、接合層14と、外周壁13と、を備えた、ハニカム構造体100である。本実施形態のハニカム構造体100は、所謂、セグメント構造のハニカム構造体100である。本実施形態のハニカム構造体100は、排ガス中に含まれる粒子状物質を除去するための捕集フィルタとして好適に利用することができる。
【0023】
ここで、
図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示すハニカム構造体の流入端面側を示す平面図である。
図3は、
図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
図4は、
図2のB-B’断面を模式的に示す断面図である。
【0024】
ハニカムセグメント4は、流入端面11から流出端面12まで延びる複数のセル2を取り囲むように配設された多孔質の隔壁1を有するものである。ハニカムセグメント4は、隔壁1の外周部分に、セグメント外壁を更に有することにより、その全体形状が、例えば、角柱状となるように構成されている。なお、本発明において、セル2とは、隔壁1によって取り囲まれた空間のことを意味する。
【0025】
ハニカム構造体100は、複数個のハニカムセグメント4を備え、この複数個のハニカムセグメント4の側面同士が接合層14を介して接合されている。複数個のハニカムセグメント4のうち、ハニカム構造体100の中央部分に配置されたハニカムセグメント4は、流入端面11から流出端面12に向かう方向を軸方向とする「角柱状」となるものとなっている。一方で、複数個のハニカムセグメント4のうち、外周壁13と接している外周部分に配置されたハニカムセグメント4は、角柱状に形成されたハニカムセグメント4の一部が、外周壁13の形状に沿って研削された柱状のものとなっている。以下、本明細書において、「軸方向」とは、特に断りのない限り、ハニカムセグメント4の流入端面11側から流出端面12側に向かう方向に平行な方向のことを意味する。
【0026】
接合層14は、複数個のハニカムセグメント4の側面同士を互いに接合する接合材によって構成されたものである。複数個のハニカムセグメント4が接合層14を介して接合された接合体を、以下、「ハニカムセグメント接合体」ということがある。本実施形態のハニカム構造体100においては、複数個のハニカムセグメント4が、接合層14によって格子状に配列した状態で接合されることにより、ハニカムセグメント接合体が形成されている。外周壁13は、このようなハニカムセグメント接合体の外周を囲繞するように配設されている。
【0027】
それぞれのハニカムセグメント4におけるセル2は、流入端面11側又は流出端面12側のいずれか一方の端部が、目封止部5によって目封止されている。即ち、目封止部5は、それぞれのハニカムセグメント4の流入端面11における所定のセル2の開口部、及び流出端面12における所定のセル2以外の残余のセル2の開口部に配設されている。
【0028】
以下、ハニカムセグメント4の流入端面11におけるセル2の開口部に目封止部5が配設されたセル2(即ち、上述した所定のセル2)を、「流出セル」ということがある。ハニカムセグメント4の流出端面12におけるセル2の開口部に目封止部5が配設されたセル2(即ち、上述した残余のセル2)を、「流入セル」ということがある。
【0029】
ハニカム構造体100は、特に、ハニカムセグメント4を接合する接合層14の構成に関して、主要な特徴を有している。即ち、接合層14には、ハニカムセグメント4を格子状に接合する交点部分の少なくとも1つに、流入端面11側又は流出端面12側から軸方向の内部側に向かって延びる有底中空の空隙部15が形成されている。ここで、接合層14の「交点部分」とは、
図2に示すように、接合層14によって複数個のハニカムセグメント4が格子状に接合されている場合において、例えば、流入端面11において縦横に延びる接合層14が交差する交点のことを意味する。そして、本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカムセグメント4の軸方向の長さに対する、空隙部15の軸方向の空隙深さの比率が5%以上である。以下、空隙部15の軸方向の空隙深さのことを、単に、空隙部15の「空隙深さ」ということがある。また、ハニカムセグメント4の軸方向の長さに対する、空隙部15の軸方向の空隙深さの比率を、単に、空隙部15の「空隙深さの比率」ということがある。
【0030】
本実施形態のハニカム構造体100は、接合層14に生じるクラックの伸展を有効に抑制することができる。即ち、接合層14の交点部分の少なくとも1つに、所定の空隙深さの空隙部15が形成されているため、接合層14にクラックが生じた際に、空隙部15にてクラックの伸展を堰き止めて、これ以降のクラックの伸展を有効に抑制することができる。また、空隙部15は、接合層14の交点部分に形成されているため、ハニカムセグメント4を接合している接合層14の接合強度を有効に確保することができる。空隙部15の空隙深さの比率が5%未満であると、クラックが空隙部15まで伸展した場合に、空隙部15にてクラックを堰き止める効果が十分に得られない。また、接合層14の交点部分以外の部分、例えば、2つのハニカムセグメント4の側面同士を接合している部分には、所定の空隙深さの空隙部15が形成されていないことが好ましい。
【0031】
図1~
図4に示すハニカム構造体100において、空隙部15は、流入端面11側から軸方向の内部側に向かって延びるように形成されている。但し、空隙部15は、流入端面11側又は流出端面12側のいずれか一方から軸方向の内部側に向かって延びるように形成されていればよい。例えば、
図5に示すハニカム構造体200においては、空隙部15Aは、流出端面12側から軸方向の内部側に向かって延びるように形成されている。ここで、
図5は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図5に示すハニカム構造体200において、
図1~
図4に示すハニカム構造体100と同様の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
図5に示す断面は、
図2のA-A’断面(別言すれば、
図3に示す断面)に対応する断面を示している。また、図示は省略するが、接合層の1つの交点部分において、流入端面側及び流出端面側の双方から、軸方向の内部側に向かって延びるような空隙部が形成されていてもよい。
【0032】
図1~
図4に示すハニカム構造体100において、空隙部15は、流入端面11側の接合層14の交点部分のうち、流入端面11側において、その径方向の最外周に位置する交点部分に形成されている。このように、空隙部15は、ハニカム構造体100の流入端面11側又は流出端面12側において、その径方向の最外周に位置する交点部分の少なくとも1つに形成されていることが好ましい。ハニカム構造体100の接合層14にクラックが生じる場合には、ハニカム構造体100の外周壁13側にクラックが発生し易く、外周壁13側に発生したクラックは、接合層14に沿ってハニカム構造体100の各端面の内側に向かって進展する。このため、ハニカム構造体100の流入端面11側又は流出端面12側において、その径方向の最外周に位置する交点部分の少なくとも1つに空隙部15を形成することで、外周壁13側に発生したクラックの進展を有効に抑制することができる。勿論、空隙部15は、径方向の最外周に位置する交点部分以外に形成されていてもよい。
【0033】
空隙部15は、上述したような「径方向の最外周に位置する交点部分」のうち、ハニカム構造体100の流入端面11の重心に最も近い位置に存在する交点部分から接合層14に沿って直線状に延長した延長線分上の交点部分の全てに形成されている。このように構成することで、ハニカム構造体100の流入端面11側において、クラックの進展をより有効に抑制することができる。このように、空隙部15は、ハニカム構造体100の流入端面11又は流出端面12の重心に最も近い位置に存在する交点部分から接合層14に沿って直線状に延長した延長線分上の交点部分の全て形成されていることが好ましい。そして、空隙部15は、「径方向の最外周に位置する交点部分」で、且つ「重心に最も近い位置に存在する交点部分から接合層14に沿って直線状に延長した延長線分上の交点部分」に対して優先的に形成されていることがより好ましい。なお、ハニカム構造体100の流入端面11又は流出端面12の「重心」とは、幾何学的な意味での重心のことをいう。
【0034】
ここで、
図6~
図12を参照しつつ、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。
図6~
図12のそれぞれは、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す平面図である。なお、
図6~
図12においては、各ハニカムセグメント4の隔壁1(
図2参照)及びセル2(
図2参照)を捨象した状態で作図している。
図6~
図12に示すハニカム構造体300,400,500,600,700,800,900において、
図1~
図4に示すハニカム構造体100と同様の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0035】
図6に示すハニカム構造体300は、紙面の縦横方向に、最大6個のハニカムセグメント4が接合層14によって接合されたものである。接合層14によって接合されたハニカムセグメント4は、その外周部分が円形状に研削加工され、研削加工されたハニカムセグメント4を囲繞するように外周壁13が配設されている。
図6に示すハニカム構造体300においては、流入端面11側の交点部分の2カ所に、空隙部15が形成されている。1つの空隙部15は、径方向の最外周に位置する交点部分に形成され、もう1つの空隙部15は、径方向の最外周に位置する交点部分から1つ内側に位置する交点部分に形成されている。
【0036】
図7に示すハニカム構造体400は、紙面の縦横方向に、最大6個のハニカムセグメント4が接合層14によって接合されたものである。
図7に示すハニカム構造体400においては、流入端面11側の交点部分の4カ所に、空隙部15が形成されている。4つの空隙部15は、径方向の最外周に位置する交点部分のうち、流入端面11の重心に存在する交点部分から接合層14に沿って直線状に延長した延長線分上の交点部分の全てに形成されている。
【0037】
図8に示すハニカム構造体500は、紙面の縦横方向に、最大7個のハニカムセグメント4が接合層14によって接合されたものである。
図8に示すハニカム構造体500においては、流入端面11側の交点部分の8カ所に、空隙部15が形成されている。8つの空隙部15は、径方向の最外周に位置する交点部分のうち、流入端面11の重心に最も近い位置に存在する4つの交点部分から接合層14に沿って直線状に延長した延長線分上の交点部分の全てに形成されている。
【0038】
図9に示すハニカム構造体600は、紙面の縦横方向に、最大6個のハニカムセグメント4が接合層14によって接合されたものである。
図9に示すハニカム構造体600においては、流入端面11側の全ての交点部分に、空隙部15が形成されている。
【0039】
図10に示すハニカム構造体700は、紙面の縦横方向に、最大6個のハニカムセグメント4が接合層14によって接合されたものである。
図10に示すハニカム構造体700においては、流入端面11側の交点部分の12カ所に、空隙部15が形成されている。12つの空隙部15は、径方向の最外周に位置する交点部分に形成されている。
【0040】
図11に示すハニカム構造体800は、紙面の縦横方向に、最大6個のハニカムセグメント4が接合層14によって接合されたものである。
図11に示すハニカム構造体800においては、流入端面11側の交点部分の3カ所に、空隙部15が形成されている。1つの空隙部15は、径方向の最外周に位置する交点部分に形成され、もう1つの空隙部15は、径方向の最外周に位置する交点部分から1つ内側に位置する交点部分に形成されている。そして、更にもう1つの空隙部15は、流入端面11の中央(重心)に位置する交点部分に形成されている。
【0041】
図12に示すハニカム構造体900は、紙面の縦横方向に、最大7個のハニカムセグメント4が接合層14によって接合されたものである。
図12に示すハニカム構造体900においては、流入端面11側の交点部分の16カ所に、空隙部15が形成されている。16個の空隙部のうち、8つの空隙部15は、径方向の最外周に位置する交点部分のうち、流入端面11の重心に最も近い位置に存在する4つの交点部分から接合層14に沿って直線状に延長した延長線分上の交点部分の全てに形成されている。残りの8つの空隙部15は、径方向の最外周に位置する交点部分から、上記延長線分上に重心側に1つ内側に位置する交点部分に形成されている。
【0042】
ハニカム構造体100の流入端面11側又は流出端面12側における、空隙部15の開口径については、特に制限はない。例えば、ハニカム構造体100の流入端面11側又は流出端面12側における接合層14の幅に対する、空隙部15の開口径の比率が、10~140%であり、50~140%であることが好ましく、100~140%であることが特に好ましい。このように構成することによって、接合層14にクラックが生じた際に、空隙部15にてクラックの伸展を有効に堰き止めることができる。上述した空隙部15の開口径の比率が、10%未満であると、空隙部15の開口径の大きさが、接合層14に生じるクラックの幅よりも小さくなり、クラックを抑制することが得られ難くなることがある。上述した空隙部15の開口径の比率が、140%を超えると、接合層14の接合強度が低下することがある。なお、「接合層14の幅」とは、接合層14によって接合されるハニカムセグメント4の側面相互間の距離のことである。また、「空隙部15の開口径」とは、空隙部15の開口の外径のうちの最大径とする。なお、空隙部15の開口径が大きくなりすぎると、ハニカムセグメント4相互間の接合層14の接合面積が減ることになり好ましくない。
【0043】
ハニカム構造体100の流入端面11側又は流出端面12側における接合層14の幅が0.5~2.0mmであることが好ましく、0.5~1.5mmであることが更に好ましい。接合層14の幅が0.5mm未満であると、ハニカム構造体100の接合強度が低下し易くなることがある。また、応力緩和機能が低下し易くなることもある。接合層14の幅が2.0mmを超えると、ハニカム構造体100の圧力損失が増大することがある。
【0044】
接合層14の材料については、特に制限はなく、従来公知のハニカム構造体における接合層の材料を用いることができる。
【0045】
ハニカムセグメント4に形成されているセル2の形状については特に制限はない。例えば、セル2の延びる方向に直交する断面における、セル2の形状としては、多角形、円形、楕円形等を挙げることができる。多角形としては、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等を挙げることができる。なお、セル2の形状は、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形であることが好ましい。また、セル2の形状については、全てのセル2の形状が同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、図示は省略するが、四角形のセルと、八角形のセルと混在したものであってもよい。また、セル2の大きさについては、全てのセル2の大きさが同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、図示は省略するが、複数のセルのうち、一部のセルの大きさを大きくし、他のセルの大きさを相対的に小さくしてもよい。
【0046】
隔壁1によって区画されるセル2のセル密度が、15~90個/cm2であることが好ましく、30~60個/cm2であることが更に好ましい。このように構成することによって、本実施形態のハニカム構造体100を、自動車のエンジンから排出される排ガスを浄化するためのフィルタとして好適に利用することができる。
【0047】
隔壁1の気孔率が、30~80%であることが好ましく、35~75%であることが更に好ましく、35~70%であることが特に好ましい。隔壁1の気孔率は、水銀圧入法によって測定された値である。隔壁1の気孔率の測定は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて行うことができる。気孔率の測定は、各ハニカムセグメント4の隔壁1の一部を切り出して試験片とし、その試験片を用いて行うことができる。隔壁1の気孔率が、30%未満であると、ハニカム構造体100自体の圧力損失が増大することや、触媒の担持後における圧力損失のばらつきが大きくなることがある。隔壁1の気孔率が、80%を超えると、ハニカム構造体100の、フィルタとしての強度、捕集性能が低下してしまうことがある。
【0048】
ハニカムセグメント4の形状については、特に制限はない。例えば、ハニカムセグメント4の形状として、当該ハニカムセグメント4の軸方向に直交する断面形状が四角形や六角形等の多角形の角柱状を挙げることができる。なお、ハニカム構造体100の最外周に配設されるハニカムセグメント4は、ハニカム構造体100の全体形状に応じて、角柱状の一部が研削等により加工されたものであってもよい。
【0049】
ハニカム構造体100の全体形状については、特に制限はない。例えば、
図1に示すハニカム構造体100の全体形状は、流入端面11及び流出端面12が円形の円柱状である。その他、図示は省略するが、ハニカム構造体の全体形状としては、流入端面及び流出端面が、楕円形やレーストラック(Racetrack)形や長円形等の略円形の柱状であってもよい。また、ハニカム構造体の全体形状としては、流入端面及び流出端面が、四角形や六角形等の多角形の角柱状であってもよい。
【0050】
ハニカムセグメント4を構成する材料に特に制限はないが、強度、耐熱性、耐久性等の観点から、下記材料群から選択される少なくとも1種の材質が好ましい。材料群とは、炭化珪素、珪素-炭化珪素系複合材料、窒化珪素、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素-コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、及びFe-Cr-Al系金属の材料群である。これらの中でも、炭化珪素、又は珪素-炭化珪素系複合材料が更に好ましい。珪素-炭化珪素系複合材料は、炭化珪素(SiC)を骨材とし、且つ珪素(Si)を結合材とする複合材料である。
【0051】
目封止部5の材料については特に制限はない。目封止部5の材料は、例えば、ハニカムセグメント4を構成する材料として例示した材料と同様な材料が好ましい。
【0052】
ハニカム構造体100の大きさ、例えば、流入端面11から流出端面12までの長さや、ハニカム構造体100のセル2の延びる方向に直交する断面の大きさについては、特に制限はない。本実施形態のハニカム構造体100を、排ガス浄化用のフィルタとして用いた際に、最適な浄化性能を得るように、各大きさを適宜選択すればよい。例えば、ハニカム構造体100の流入端面11から流出端面12までの長さは、150~305mmであることが好ましく、200~305mmであることが特に好ましい。また、ハニカム構造体100のセル2の延びる方向に直交する断面の面積は、160~860cm2であることが好ましく、300~560cm2であることが特に好ましい。
【0053】
本実施形態のハニカム構造体100においては、所定のセル2の流入端面11側の開口部、及び残余のセルの流出端面12側の開口部に、目封止部5が配設されている。ここで、流出端面12側の開口部に目封止部5が配設され、流入端面11側が開口したセル2を、流入セルとする。また、流入端面11側の開口部に目封止部5が配設され、流出端面12側が開口したセル2を、流出セルとする。流入セルと流出セルとは、隔壁1を隔てて交互に配設されていることが好ましい。そして、それによって、ハニカム構造体100の両端面に、目封止部5と「セル2の開口部」とにより、市松模様が形成されていることが好ましい。
【0054】
本実施形態のハニカム構造体100においては、複数のセル2を形成する隔壁1に触媒が担持されていてもよい。隔壁1に触媒を担持するとは、隔壁1の表面及び隔壁に形成された細孔の内壁に、触媒がコーティングされることをいう。このように構成することによって、排ガス中のCOやNOxやHCなどを触媒反応によって無害な物質にすることができる。また、捕集した煤等のPMの酸化を促進させることができる。
【0055】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
実施形態のハニカム構造体の製造方法については、特に制限はなく、例えば、以下のような方法により製造することができる。まず、ハニカムセグメントを作製するための可塑性の坏土を調製する。ハニカムセグメントを作製するための坏土は、原料粉末として、前述のハニカムセグメントの好適な材料の中から選ばれた材料に、適宜、バインダ等の添加剤、及び水を添加することによって調製することができる。
【0056】
次に、このようにして得られた坏土を押出成形することにより、複数のセルを取り囲むように配設された隔壁、及び最外周に配設されたセグメント外壁を有する、角柱状のハニカム成形体を作製する。ハニカム成形体は、複数個作製する。
【0057】
得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥し、ハニカム成形体の作製に用いた材料と同様の材料で、セルの開口部を目封止することで目封止部を作製する。目封止部を作製した後に、ハニカム成形体を更に乾燥してもよい。
【0058】
次に、目封止部を作製したハニカム成形体を焼成することにより、ハニカムセグメントを得る。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。
【0059】
次に、複数のハニカムセグメントを、接合材を用いて互いに接合し、乾燥硬化させた後、所望の形状となるよう外周を加工することによって、セグメント構造のハニカム構造体を得ることができる。接合材としては、セラミックス材料に、水等の溶媒を加えてペースト状又はスラリー状にしたものを用いることができる。
【0060】
本発明のハニカム構造体を製造する際には、以下の方法で、接合層の所望の交点部分に対して、有底中空の空隙部を形成する。まず、複数のハニカムセグメントを接合材によって、互いの側面同士が向かい合うように組み上げる際に、空隙部を形成する交点部に、空隙部の形状を模した円筒形部材を配設する。円筒形部材としては、400℃程度以上の加熱により焼失する物質のもの(例えば、円筒形の木材)を用いることができる。このようにして、交点部に円筒形部材を配設したハニカムセグメント接合体を作製、その後、接合材の乾燥硬化後、熱処理工程にて、円筒形部材を消失させる。このようにして、接合材が乾燥固化した接合層の所望の交点部に対して、有底中空の空隙部を形成することができる。また、空隙部を形成する別の方法としては、例えば、上記方法と同様にして、空隙部を形成する交点部に円筒形部材を配設し、接合材の乾燥硬化の後、交点部に配設した円筒形部材を取り除くことにより、空隙部を形成することもできる。このような方法によって空隙部を形成する場合には、円筒形部材の材質については特に制限はない。
【0061】
ハニカムセグメント接合体の外周を加工した後の加工面は、セルが露出した状態となっているため、ハニカムセグメント接合体の加工面に外周コート材を塗工して、外周壁を形成してもよい。外周コート材の材料としては、例えば、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、セラミック粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加剤と水とを加えて混練し、スラリー状としたものを挙げることができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
セラミックス原料として、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合した混合原料を準備した。この混合原料に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加するとともに、水を添加して成形原料を作製した。得られた成形原料を、ニーダー(kneader)を用いて混練し、坏土を得た。
【0064】
次に、得られた坏土を、真空押出成形機を用いて成形し、四角柱状のハニカム成形体を32個作製した。この四角柱状のハニカム成形体の1個ずつが、ハニカムセグメントとなる。
【0065】
次に、得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥した。
【0066】
次に、乾燥後のハニカム成形体に、目封止部を形成した。まず、乾燥後のハニカム成形体の流入端面にマスクを施した。次に、マスクの施された端部(流入端面側の端部)を目封止スラリーに浸漬し、マスクが施されていないセル(流出セル)の開口部に目封止スラリーを充填した。このようにして、乾燥後のハニカム成形体の流入端面側に、目封止部を形成した。そして、乾燥後のハニカム成形体の流出端面についても同様にして、流入セルにも目封止部を形成した。
【0067】
そして、目封止部の形成されたハニカム成形体を脱脂し、焼成し、ハニカムセグメントを得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とし、焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。
【0068】
以上のようにして、実施例1のハニカム構造体の製造に使用するハニカムセグメントを作製した。作製したハニカムセグメントは、軸方向に直交する断面が正方形で、その正方形の一辺の長さ(セグメントサイズ)が39mmであった。結果を、表1の「ハニカムセグメント」の「一辺の長さ(mm)」の欄に示す。また、ハニカムセグメントは、その軸方向の長さが203mmであった。
【0069】
ハニカムセグメントは、隔壁の厚さが0.305mmであり、セル密度が46.5個/cm2であった。また、隔壁の気孔率は、41%であった。隔壁の気孔率は、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)によって測定した。
【0070】
次に、ハニカムセグメントを接合するための接合材を調製した。接合材としては、無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤を加え、更に、水を加えてスラリー状となるまで混練したものを用いた。
【0071】
次に、得られたハニカムセグメントを、互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で、接合材によって接合し、400℃にて熱処理を行って、ハニカムセグメント接合体を作製した。なお、複数のハニカムセグメントを接合材によって組み上げる際に、空隙部を形成する交点部に、空隙部の形状を模した円筒形の木製部材を配設し、上記熱処理時に木製部材を消失させ、接合層の所望の交点部分に、有底中空の空隙部を形成した。木製部材は、端面の直径が1.0mmのものを用いた。
【0072】
ハニカムセグメント接合体は、その端面において、
図9に示すように、縦方向に最大6個、横方向に最大6個の合計32個のハニカムセグメント4が配列するように接合して作製した。表1の「ハニカムセグメント」における「個数(個)」及び「配置(個数×個数)」の欄には、各実施例に用いたハニカムセグメントの個数、及びその配置を示す。例えば、「配置(個数×個数)」の欄に、「6×6」と記載されている場合には、
図9に示すように、縦方向に最大6個、横方向に最大6個の合計32個のハニカムセグメント4を用いたことを意味する。なお、縦方向に最大6個、横方向に最大6個のハニカムセグメント4の個数が、合計32個となるのは、縦方向及び横方向の四隅の4箇所には、ハニカムセグメント4を配置しないためである。
【0073】
次に、ハニカムセグメント接合体の外周を円柱状に研削加工し、その外周面にコート材を塗布して、実施例1のハニカム構造体を得た。実施例1のハニカム構造体は、端面の直径が229mmであり、軸方向の長さが203mmであった。また、実施例1のハニカム構造体は、接合層の幅が1.0mmであった。表1に各結果を示す。
【0074】
実施例1のハニカム構造体は、流入端面側に、接合層の交点部分が21個あり、その21個の交点部分の全てに、空隙部が形成されていた。それぞれの空隙部の空隙深さは20.3mmであり、ハニカムセグメントの軸方向の長さに対する、空隙部の空隙深さの比率は、10%であった。また、空隙部の開口径(即ち、空隙部の直径)は1.0mmであり、接合層の幅に対する空隙部の開口径の比率は100%であった。表1の「接合層の空隙部」の「空隙部が形成された交点部分の数(個)」、「空隙部の空隙深さの比率(%)」、及び「接合層の幅に対する空隙部の開口径の比率(%)」の欄に、それぞれの値を示す。表1の「空隙部の形成位置」の「端面」の欄には、空隙部が形成されているハニカム構造体の端面を示す。即ち、空隙部がハニカム構造体の流入端面側に形成されている場合には、上記欄に「流入端面」と記す。なお、空隙部がハニカム構造体の流入端
面及び流出端面の双方に形成されている場合には、上記欄に「両端面」と記す。また、表1の「空隙部の形成位置」の「参照図」の欄には、空隙部の形成されている交点部分の位置を参照する図面を示す。即ち、実施例1のハニカム構造体は、
図9に示すような、流入端面11側の全ての交点部分に、空隙部15が形成されたものである。
【0075】
実施例1のハニカム構造体については、以下の方法で、冷熱振動耐久試験を行い、接合部に生じたクラックの長さを測定した。接合部に生じたクラックのうち、最大のクラックの長さを「最大クラック長さ」とし、接合部の全長に対する、最大クラック長さの割合(%)を求めた。更に、下記に示す判定基準に基づいて判定を行った。各結果を表2に示す。
【0076】
(冷熱振動耐久試験)
ハニカム構造体に、下記の条件にて、熱変動及び物理振動を同時に負荷した。その後、ハニカム構造体の流入端面側及び流出端面の接合層に生じたクラックの長さを計測した。
熱変動条件:ハニカム構造体の流入端面側から、まず、150℃のガスを流し、10分間で、ガスの温度を700℃まで上昇させる。その後、10分間で、ガスの温度を150℃まで下降させる。この20分間のガスの通気を1サイクルとして、合計25時間、ハニカム構造体に150~700℃のガスを通気させる。
物理振動条件:周波数が100Hz、加速度が30Gの振動を、25時間、ハニカム構造体に負荷する。
【0077】
(判定)
接合部の全長に対する、最大クラック長さの割合(%)が、50%以下の場合を「合格」とする。接合部の全長に対する、最大クラック長さの割合(%)が、50%を超える場合を「不合格」とする。
【0078】
【0079】
【0080】
(実施例2~12)
ハニカム構造体の構成を、表1に示すように変更し、且つ、接合層の交点部分に形成する空隙部の構成を、表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハニカム構造体を製造した。
【0081】
(比較例1)
ハニカム構造体の構成を、表1に示すように変更し、且つ、接合層の交点部分に形成する空隙部の構成を、表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハニカム構造体を製造した。
【0082】
(比較例2)
ハニカム構造体の構成を、表1に示すように変更し、且つ、接合層の交点部分に空隙部を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハニカム構造体を製造した。
【0083】
実施例2~12及び比較例1,2のハニカム構造体についても、実施例1と同様の方法で、冷熱振動耐久試験を行い、接合部に生じたクラックの長さを測定した。そして、上記に示す評価基準に基づいて評価を行った。各結果を表2に示す。
【0084】
(結果)
実施例1~12のハニカム構造体は、比較例1,2のハニカム構造体に比して、冷熱振動耐久試験においてクラックの進展が抑制されていることが確認できた。比較例1のハニカム構造体は、空隙部の空隙深さの比率が3%であり、クラックの進展を抑制する効果が殆ど得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のハニカム構造体は、直噴ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等から排出される排ガスに含まれる微粒子等を除去するための捕集フィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1:隔壁、2:セル、4:ハニカムセグメント、5:目封止部、11:流入端面、12:流出端面、13:外周壁、14:接合層、15,15A:空隙部、100,200,300,400,500,600,700,800,900:ハニカム構造体。