(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】航空機用ガスタービン
(51)【国際特許分類】
F01D 9/02 20060101AFI20220421BHJP
F01D 11/12 20060101ALI20220421BHJP
F01D 5/20 20060101ALI20220421BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20220421BHJP
F02C 7/28 20060101ALI20220421BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
F01D9/02 104
F01D11/12
F01D5/20
F02C7/00 E
F02C7/28 A
F01D25/00 M
(21)【出願番号】P 2018067827
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】514275772
【氏名又は名称】三菱重工航空エンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】藤村 大悟
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 浩史
(72)【発明者】
【氏名】花田 忠之
(72)【発明者】
【氏名】長谷 貴昭
【審査官】大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-240066(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0010758(US,A1)
【文献】国際公開第2017/195782(WO,A1)
【文献】特開2013-221512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/02
F01D 11/12
F01D 5/20
F02C 7/00
F02C 7/28
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転するロータと、
前記ロータから径方向外側に向かって延びる動翼本体、前記動翼本体の先端に設けられた動翼シュラウド、及び、前記動翼シュラウドの外周面から突出するフィン、を有する動翼と、
前記ロータ及び前記動翼を外周側から覆い、前記フィンとの間に隙間を形成するケーシングと、
前記動翼の軸線方向下流側で前記ケーシングに固定されて前記軸線を中心とした径方向で前記ケーシングの内周面の延長線よりも外側に少なくとも軸線方向上流側の前端部が位置する静翼シュラウドと、前記静翼シュラウドから径方向内側に向かって延びる静翼本体と、を有した静翼と、
を備え
、
前記静翼本体の軸線方向上流側の前縁は、
後退起点と、
前記静翼シュラウドに繋がると共に、前記後退起点よりも軸方向下流側に向けて後退した径方向外側端部と、
前記後退起点と前記径方向外側端部との間を、軸線方向上流側に凸となるように結ぶ前縁湾曲部と、を備え、
前記後退起点は、
前記径方向で前記動翼シュラウドの内側面後端よりも外側に配置されている航空機用ガスタービン。
【請求項2】
前記静翼シュラウドは、
前記ケーシングに固定されたシュラウド本体部と、
前記静翼本体の径方向外側端部と前記シュラウド本体部との間に形成されて、前記シュラウド本体部に近づくにつれて少なくとも前記軸線方向上流側に向かって漸次広がるように形成された前縁フィレット部と、を備え、
前記径方向における前記動翼シュラウドと前記シュラウド本体部との距離は、
前記径方向における前記前縁フィレット部の長さと、前記径方向における前記動翼シュラウドと前記ケーシングとの距離との和よりも大きい請求項
1に記載の航空機用ガスタービン。
【請求項3】
前記動翼シュラウドは、前記軸線方向下流側ほど前記軸線から離れるフレア角を有し、
前記ケーシングは、前記隙間よりも前記軸線方向下流側に前記フレア角に対応した角度を有する傾斜面を有し、
前記静翼シュラウドの前記軸線方向上流側の前端部は、前記傾斜面の延長線よりも前記径方向外側に配置されている請求項1
又は2に記載の航空機用ガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、航空機用ガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機用ガスタービンにおいては、燃焼ガスの主流の一部が動翼を通過せずに、動翼チップとハウジングとの隙間を通過してしまう。この隙間を通過する燃焼ガスは、動翼の下流側に配置された静翼の背面側に流れ込み、静翼の背面において主流とは異なる方向に向かう二次流れを生じさせる場合がある。この二次流れは、静翼における圧力損失を増加させてしまう。
特許文献1には、静翼の前縁のチップ側に、軸方向下流側に向けて後退するとともに軸方向上流側に向けて凸状を成す前縁湾曲部を形成することで、静翼の背面に沿って流れる二次流れの発生に伴う二次流れ損失を低減する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1における損失低減は、チップ側にシュラウドの無いタービン動翼が前提となっている。チップ側にシュラウドを有したシュラウド動翼の場合、シュラウド動翼の下流側の静翼における二次流れ損失は、特許文献1の二次流れ損失とは異なるメカニズムとなる。
シュラウド動翼は、シュラウドとケーシングとの間を通過するクリアランス流れを低減するフィンを備えている場合が多い。しかし、フィンとケーシングとの間には隙間が形成されている。そのため、この隙間を通過したクリアランス流れが、ケーシングの内周面に沿って下流側に流れてしまう。このクリアランス流れは、下流側に配置されている静翼のシュラウドに衝突してから主流に合流する。このクリアランス流れが主流に合流することで、主流の流れの向きが乱されて、静翼における圧力損失を生じさせてしまう場合がある。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、圧力損失を低減可能な航空機用ガスタービンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
この発明の第一態様によれば、航空機用ガスタービンは、軸線回りに回転するロータと、前記ロータから径方向外側に向かって延びる動翼本体、前記動翼本体の先端に設けられた動翼シュラウド、及び、前記動翼シュラウドの外周面から突出するフィン、を有する動翼と、前記ロータ及び前記動翼を外周側から覆い、前記フィンとの間に隙間を形成するケーシングと、前記動翼の軸線方向下流側で前記ケーシングに固定されて前記軸線を中心とした径方向で前記ケーシングの内周面の延長線よりも外側に少なくとも軸線方向上流側の前端部が位置する静翼シュラウドと、前記静翼シュラウドから径方向内側に向かって延びる静翼本体と、を有した静翼と、を備える。
この第一態様では、静翼シュラウドの前端部がケーシングの内周面の延長線よりも径方向外側に位置する。そのため、フィンとケーシングとの隙間から軸線方向下流側に向かって流れたクリアランス流れは、静翼シュラウドの前端部に衝突することなく主流に合流する。そのため、静翼における圧力損失を低減することができる。
【0007】
さらに、前記静翼本体の軸線方向上流側の前縁は、後退起点と、前記静翼シュラウドに繋がると共に、前記後退起点よりも軸方向下流側に向けて後退した径方向外側端部と、前記後退起点と前記径方向外側端部との間を、軸線方向上流側に凸となるように結ぶ前縁湾曲部と、を備えている。
このように構成することで、フィンとケーシングとの間を流れるクリアランス流れは、軸線方向に流れて、静翼の前縁の前縁湾曲部に衝突する。この前縁湾曲部の静翼シュラウドに近い側は、径方向外側端部に向かうにつれて軸線方向下流側に向けて後退しているので、クリアランス流れが衝突する位置を、静翼本体部の腹面側にずらすことができる。そのため、静翼本体部の背面側に二次流れが生じることを抑制できる。
【0008】
さらに、前記後退起点は、前記径方向で前記動翼シュラウドの内側面後端よりも外側に配置されている。
このように構成することで、後退起点よりも径方向の外側に前縁湾曲部を配置させることができる。そのため、主流の一部が前縁湾曲部の形成されている部分に流れて損失が生じることを抑制できる。
【0009】
この発明の第二態様によれば、第一態様に係る静翼シュラウドは、前記ケーシングに固定されたシュラウド本体部と、前記静翼本体の径方向外側端部と前記シュラウド本体部との間に形成されて、前記シュラウド本体部に近づくにつれて少なくとも前記軸線方向上流側に向かって漸次広がるように形成された前縁フィレット部と、を備え、前記径方向における前記動翼シュラウドと前記シュラウド本体部との距離は、前記径方向における前記前縁フィレット部の長さと、前記径方向における前記動翼シュラウドと前記ケーシングとの距離との和よりも大きいようにしてもよい。
この第二態様では、静翼シュラウドの前縁フィレット部が、クリアランス流れよりも径方向外側に位置するため、軸線方向上流側に広がる前縁フィレット部にクリアランス流れが衝突することを抑制できる。これにより、クリアランス流れが前縁フィレット部に衝突して、クリアランス流れが衝突する位置が静翼の背面側にずれることを抑制できる。したがって、二次流れが発生することを抑制できる。
【0010】
この発明の第三態様によれば、第一又は第二態様に係る動翼シュラウドは、前記軸線方向下流側ほど前記軸線から離れるフレア角を有し、前記ケーシングは、前記隙間よりも前記軸線方向下流側に前記フレア角に対応した角度を有する傾斜面を有し、前記静翼シュラウドの前記軸線方向上流側の前端部は、前記傾斜面の延長線よりも前記径方向外側に配置されているようにしてもよい。
このようにすることで、クリアランス流れを、動翼シュラウドのフレア角に対応した角度を有する傾斜面に沿って流すことができる。これにより、クリアランス流れをより静翼のチップ側に寄せることができる。そして、動翼シュラウドに沿って流れる主流の角度に、クリアランス流れが流れる角度を近づけることができる。そのため、クリアランス流れが主流と衝突する角度を緩めることができる。その結果、クリアランス流れと主流の衝突に起因する圧力損失を低減できる。
【発明の効果】
【0011】
上記航空機用ガスタービンによれば、圧力損失を低減可能できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の実施形態の航空機用ガスタービンの概略構成を示す構成図である。
【
図2】この発明の第一実施形態における動翼の端部付近を拡大した部分断面図である。
【
図3】この発明の第二実施形態における
図2に相当する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第一実施形態)
次に、この発明の第一実施形態における航空機用ガスタービンを図面に基づき説明する。
図1は、この発明の実施形態の航空機用ガスタービンの概略構成を示す構成図である。
この第一実施形態に係る航空機用のガスタービン100は、航空機の推力を得るためのものである。
図1に示すように、このガスタービン100は、主に、圧縮機1と、燃焼室2と、タービン3と、を備えている。
【0014】
圧縮機1は、吸気ダクト10から取り込まれた空気を圧縮することで高圧空気を生成する。この圧縮機1は、圧縮機ロータ11と、圧縮機ケーシング12と、を備えている。圧縮機ケーシング12は、圧縮機ロータ11を外周側から覆っており、軸線Amの延びる方向(以下、軸線方向Daと称する)に延びている。
【0015】
圧縮機ロータ11の外周面には、軸線方向Daに間隔をあけて配列された複数の圧縮機動翼段13が設けられている。これら圧縮機動翼段13は、複数の圧縮機動翼14をそれぞれ備えている。各圧縮機動翼段13の圧縮機動翼14は、圧縮機ロータ11の外周面上で軸線Amの周方向Dcに間隔をあけて配列されている。
【0016】
圧縮機ケーシング12の内周面には、軸線方向Daに間隔をあけて配列された複数の圧縮機静翼段15が設けられている。これら圧縮機静翼段15は、軸線方向Daで上記圧縮機動翼段13と交互に配置されている。これら圧縮機静翼段15は、複数の圧縮機静翼16をそれぞれ備えている。各圧縮機静翼段15の圧縮機静翼16は、圧縮機ケーシング12の内周面上で軸線Amの周方向Dcに間隔をあけて配列されている。
【0017】
燃焼室2は、圧縮機1で生成された高圧空気に燃料Fを混合して燃焼させることで、燃焼ガスGを生成する。燃焼室2は、圧縮機ケーシング12とタービン3のタービンケーシング(ケーシング)22との間に設けられている。この燃焼室2によって生成された燃焼ガスGは、タービン3に供給される。
【0018】
タービン3は、燃焼室2で生成された高温高圧の燃焼ガスGによって駆動する。より具体的には、タービン3は、高温高圧の燃焼ガスGを膨張させて、燃焼ガスGの熱エネルギーを、回転エネルギーに変換する。このタービン3は、タービンロータ21と、タービンケーシング22と、を備えている。
【0019】
タービンロータ21は、軸線方向Daに延びている。このタービンロータ21の外周面には、軸線方向Daに間隔をあけて配列された複数のタービン動翼段23が設けられている。これらタービン動翼段23は、複数のタービン動翼24をそれぞれ備えている。各タービン動翼段23のタービン動翼24は、タービンロータ21の外周面上で軸線Amの周方向Dcに間隔をあけて配列されている。
【0020】
タービンケーシング22は、タービンロータ21を外周側から覆っている。このタービンケーシング22の内周面には、軸線Am方向に間隔をあけて配列された複数のタービン静翼段25が設けられている。タービン静翼段25は、軸線Am方向で上記タービン動翼段23と交互に配置されている。これらタービン静翼段25は、複数のタービン静翼26をそれぞれ備えている。各タービン静翼段25のタービン静翼26は、タービンケーシング22の内周面上で軸線Amの周方向Dcに間隔をあけて配列されている。
【0021】
圧縮機ロータ11とタービンロータ21とは、軸線方向Daに一体に接続されている。これら圧縮機ロータ11とタービンロータ21とによって、ガスタービンロータ91が構成されている。同様に、圧縮機ケーシング12とタービンケーシング22とは、軸線Amに沿って一体に接続されている。これら圧縮機ケーシング12とタービンケーシング22とによってガスタービンケーシング92が構成されている。
ガスタービンロータ91は、ガスタービンケーシング92の内部で軸線Am回りに一体に回転可能とされている。
【0022】
上述した構成の航空機用のガスタービン100を運転するに当たっては、まず外部の駆動源によって圧縮機ロータ11(ガスタービンロータ91)を回転駆動する。圧縮機ロータ11の回転に伴って外部の空気が順次圧縮され、高圧空気が生成される。この高圧空気は、圧縮機ケーシング12を通じて燃焼室2内に供給される。燃焼室2内では、この高圧空気に燃料が混合されたのち燃焼され、高温高圧の燃焼ガスが生成される。燃焼ガスは、タービンケーシング22を通じてタービン3内に供給される。
【0023】
タービン3内では、タービン動翼段23、及びタービン静翼段25に燃焼ガスが順次衝突することで、タービンロータ21(ガスタービンロータ91)に対して回転駆動力が与えられる。この回転エネルギーは、主に、圧縮機1の駆動に利用される。タービン3を駆動した燃焼ガスGは、排気ノズル4により流速が増加されて推力を生む噴流となり、噴射口27から外部に排出される。なお、この実施形態においては、航空機用ガスタービンとして1軸のターボジェットエンジンを一例にして説明した。しかし、1軸のターボジェットエンジンに限られず、航空機用ガスタービンであれば如何なる形態であっても良い。
【0024】
図2は、この発明の第一実施形態における動翼の端部付近を拡大した部分断面図である。
図2に示すように、タービン3のタービン動翼24は、動翼本体41と、動翼シュラウド42と、フィン43と、を有している。動翼本体41は、タービンロータ21(
図1参照)から径方向外側に向かって延びている。動翼シュラウド42は、動翼本体41の先端41a、より具体的には、軸線Amを中心とした径方向Drの外側(以下、単に径方向外側Droと称する)の動翼本体41の先端41aに設けられている。動翼シュラウド42は、軸線Amを中心とした周方向Dc(
図1参照)に並んで配置されたタービン動翼24の全ての先端41aに形成されている。これら動翼シュラウド42は、周方向Dcで隣り合うタービン動翼24の動翼シュラウド42同士が隣接して配置されることで環状を成している。なお、動翼シュラウド42は、周方向Dcで一体に形成されていても良い。
【0025】
図2に示す動翼シュラウド42は、軸線Amに対して主流Mの下流側(以下、単に軸線方向下流側Dadと称する)に向かうにつれて径方向Drの外側に配置されるように、所定のフレア角θで傾斜している。フレア角θは、軸線Amに対する角度である。この動翼シュラウド42の近くを流れる主流Mは、この動翼シュラウド42に沿って流れる。すなわち、主流Mは、軸線方向下流側Dadに向かうにつれて軸線Amから離れるように(言い換えれば、径方向Drの外側に向かって)流れる。
【0026】
フィン43は、動翼シュラウド42の外周面42aから突出している。この実施形態で例示するフィン43は、軸線方向Daに間隔をあけて2つ設けられている。なお、以下の説明では、二つのフィン43を、それぞれフィン43A、フィン43Bと称する。
【0027】
フィン43A、フィン43Bは、タービン動翼24と、このタービン動翼24の径方向Dr外側のタービンケーシング22との隙間を塞ぐように延びている。また、これらフィン43A、フィン43Bは、動翼シュラウド42と同様に、タービン動翼24毎に設けられ、周方向Dcで隣り合うタービン動翼24のフィン43A同士及びフィン43B同士が隣接して配置されることで、周方向Dcに連続する環状を成している。
【0028】
フィン43A、フィン43Bのそれぞれの先端43aは、タービンケーシング22の内周面(より具体的には、ダンパシール22cの内周面22ca,22cb)に対して僅かなクリアランスC1を介して配置されている。これらクリアランスC1は、例えば、熱変形や振動等によりタービンケーシング22の内周面に接触しない範囲で、できるだけ小さく形成されている。この実施形態で例示するフィン43A、フィン43Bは、軸線Amに対して、実質的に垂直な方向に延びているが、軸線Amに対するフィン43A、フィン43Bの傾斜角度は垂直に限られない。また、フィン43の数は、二つに限られない。例えば、フィン43の数は、一つや、三つ以上であってもよい。
【0029】
タービンケーシング22は、ケーシング本体(図示せず)と、翼環(図示せず)と、遮熱環(図示せず)と、分割環22bと、ダンパシール22cと、を備えている。ケーシング本体(図示せず)は、上述したタービンロータ21及びタービン動翼24を外周側から覆う筒状に形成され、その内周側で翼環(図示せず)を支持している。翼環(図示せず)は、軸線Amを中心とした環状に形成され、複数の分割環22b及びタービン静翼26の径方向外側Droに配置されている。遮熱環(図示せず)は、径方向Drで翼環(図示せず)と分割環22bとの間、及び翼環(図示せず)とタービン静翼26との間にそれぞれ配置され、翼環(図示せず)と分割環22b、及び翼環(図示せず)とタービン静翼26とを接続している。
【0030】
ダンパシール22cは、主流Mの一部がフィン43Aとタービンケーシング22との間、及びフィン43Bとタービンケーシング22との間にそれぞれの形成された隙間Crを通過することを抑制する。この実施形態におけるダンパシール22cは、フィン43A及びフィン43Bと共に非接触のシール構造を構成する。このダンパシール22cは、分割環22bの内周面22biに固定されている。ダンパシール22cとしては、例えば、軸線Amを中心とした径方向Drの内側(以下、単に径方向内側Driと称する)に開口するハニカム構造の部材を用いることができる。また、ダンパシール22cは、アブレイダブルシール等を用いることもできる。
【0031】
この実施形態で例示するダンパシール22cは、フィン43A、フィン43Bのそれぞれの先端43aに対向する二つの内周面22ca,22cbを有している。これら内周面22ca,22cbは、ダンパシール22cが配置される箇所においてタービンケーシング22の内周面を構成している。
図2において、ダンパシール22cの内周面22caとフィン43Aとの隙間Crと、内周面22cbとフィン43との隙間Crは、同一のクリアランスC1とされている場合を例示している。
【0032】
この実施形態におけるダンパシール22cの内周面22ca,22cbは、それぞれ軸線Amと平行に形成され、径方向Drの位置がそれぞれ異なっている。これにより、ダンパシール22cの内周面は、階段状に形成されている。なお、ダンパシール22cの形状は、この実施形態の形状に限られない。このダンパシール22cは、必要に応じて設ければ良く、例えば、タービンケーシング22においてダンパシール22cを省略し、フィン43A,43Bの先端43aを分割環22bの内周面22biと対向配置するようにしても良い。
【0033】
タービン静翼26は、タービン動翼24の軸線方向下流側Dadでタービンケーシング22に固定されている。タービン静翼26は、静翼シュラウド51と、静翼本体52と、を少なくとも備えている。
【0034】
静翼シュラウド51は、タービン動翼24よりも軸線方向下流側Dadに配置され、タービンケーシング22に固定されている。静翼シュラウド51は、シュラウド本体部53と、フィレット部54と、を備えている。
【0035】
シュラウド本体部53は、軸線Amを中心とした筒状に配置され、主流Mの流れる方向に延びている。シュラウド本体部53は、主流Mの流れる軸線方向の上流側(以下、単に軸線方向上流側Dauと称する)の端部に、フック部51aを備えている。静翼シュラウド51は、フック部51aにより分割環22bの下流側の端部22baに固定されている。上述した主流Mの流路は、筒状に配置されたシュラウド本体部53の径方向内側Driに形成されている。
【0036】
フィレット部54は、シュラウド本体部53と、静翼本体52の径方向外側Droの端部との間に形成されている。フィレット部54は、静翼本体52とシュラウド本体部53とが交差する隅部を、凹状の曲面により滑らかに繋いでいる。静翼本体52の翼高さ方向と交差する断面において、フィレット部54の断面輪郭は、シュラウド本体部53に近づくにつれて漸次広がるように形成されている。
【0037】
上記フィレット部54は、軸線方向上流側に前縁フィレット部54aを備えている。前縁フィレット部54aの上記断面輪郭は、少なくともシュラウド本体部53に近づくにつれて軸線方向上流側Dauに向かって漸次拡大するように形成されている。静翼本体52の翼高さ方向における前縁フィレット部54aの長さL1は、前縁フィレット部54aに必要な強度等に応じて設定されている。なお、前縁フィレット部54aの長さL1は、静翼本体52の径方向外側Droの端部とシュラウド本体部53の内周面との距離と言い換えることもできる。前縁フィレット部54aの上記断面輪郭がシュラウド本体部53に近づくにつれて漸次広がる場合について説明したが、この断面輪郭の拡大率も、前縁フィレット部54aに必要な強度等に応じて設定される。
【0038】
静翼シュラウド51は、少なくとも軸線方向上流側Dauの前端部51Fがタービンケーシング22の内周面であるダンパシール22cの内周面22cbの延長線Exよりも径方向外側Droに位置する。この実施形態において、静翼シュラウド51を構成するシュラウド本体部53及びフィレット部54のうち軸線方向上流側Dauの端部に配置される部分が、ダンパシール22cの内周面22cbの延長線Exよりも径方向外側Droに位置している。径方向Drにおける動翼シュラウド42と静翼シュラウド51のシュラウド本体部53との距離L2は、径方向Drにおける前縁フィレット部54aの長さL1と、径方向Drにおける動翼シュラウド42とタービンケーシング22との距離L3との和(L1+L3)よりも大きくなっている。
【0039】
静翼本体52は、静翼シュラウド51から径方向内側Driに向かって延びている。静翼本体52は、軸線方向上流側Dauの前縁55に、後退起点56と、径方向外側端部57と、前縁湾曲部58と、を少なくとも備えている。後退起点56は、径方向Drで動翼シュラウド42の内周面42bの下流端(内側面後端)42tよりも外側に配置されている。径方向外側端部57は、静翼シュラウド51に繋がると共に、後退起点56よりも軸方向下流側に向けて後退している。前縁湾曲部58は、後退起点56と径方向外側端部57との間を、軸線方向上流側に凸となるように曲線状に結んでいる。
【0040】
上述した第一実施形態の航空機用ガスタービンでは、静翼シュラウド51の内周面がタービンケーシング22の内周面であるダンパシール22cの内周面22cbの延長線Exよりも径方向外側Droに位置する。そのため、フィン43Bとタービンケーシング22との隙間Crから軸線方向下流側Dadに向かって流れたクリアランス流れCFは、静翼シュラウド51のシュラウド本体部53の前端部53aに衝突することなく主流Mに合流する。そのため、主流Mの流れの向きがクリアランス流れCFに乱されて、タービン静翼26の背面側に流れ込むことを抑制できる。その結果、タービン静翼26の背面に二次流れが発生することを抑制して、圧力損失を低減することができる。
【0041】
また、第一実施形態では、静翼本体52の前縁55が、後退起点56と、径方向外側端部57と、前縁湾曲部58と、を備えている。フィン43Bとタービンケーシング22との間を流れるクリアランス流れCFは、軸線方向下流側に流れて、タービン静翼26の前縁湾曲部58に衝突する。この前縁湾曲部58は、径方向外側端部57に向かうにつれて軸線方向下流側に向けて後退している。そのため、クリアランス流れCFが衝突する位置を、静翼シュラウド51に近い側において、静翼本体52の腹面側にずらすことができる。その結果、静翼本体52の背面側に二次流れが生じることを抑制できる。
【0042】
さらに、第一実施形態では、静翼シュラウド51の前縁フィレット部54aが、クリアランス流れCFよりも径方向外側Droに位置するため、軸線方向上流側Druに広がる前縁フィレット部54aにクリアランス流れCFが衝突することを抑制できる。これにより、クリアランス流れCFが前縁フィレット部54aに衝突して、クリアランス流れCFのタービン静翼26に衝突する位置がタービン静翼26の背面側にずれることを抑制できる。したがって、二次流れが発生することを抑制できる。
【0043】
(第二実施形態)
次に、この発明の第二実施形態を図面に基づき説明する。この第二実施形態の航空機用ガスタービンは、上述した第一実施形態のタービンケーシング22に対して、傾斜面を設けた点でのみ相違する。そのため、上述した第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
【0044】
図3は、この発明の第二実施形態における
図2に相当する部分断面図である。
図3に示すように、タービン3のタービン動翼24は、動翼本体41と、動翼シュラウド42と、フィン43と、を有している。
【0045】
動翼シュラウド42は、第一実施形態と同様に、軸線Amに対して主流Mの下流側に向かうにつれて径方向Drの外側に配置されるように、所定のフレア角θで傾斜している。そのため、この動翼シュラウド42の近くを流れる主流Mは、この動翼シュラウド42に沿って流れる。すなわち、主流Mは、下流側に向かうにつれて径方向外側Droに向かって流れる。
【0046】
タービンケーシング22は、ケーシング本体(図示せず)と、翼環(図示せず)と、遮熱環(図示せず)と、分割環22bと、ダンパシール122cと、を備えている。
【0047】
ダンパシール122cは、主流Mの一部がフィン43Aとタービンケーシング22との間、及びフィン43Bとタービンケーシング22との間にそれぞれ形成された隙間Crを通過することを抑制する。この第二実施形態におけるダンパシール122cも、第一実施形態のダンパシール22cと同様に、フィン43A及びフィン43Bと共に非接触のシール構造を構成する。このダンパシール122cは、分割環22bの内周面22biに固定されている。ダンパシール122cとしては、例えば、径方向内側Driに開口するハニカム構造の部材を用いることができる。また、ダンパシール122cは、アブレイダブルシール等を用いることもできる。
【0048】
ダンパシール122cは、フィン43A、フィン43Bのそれぞれの先端43aに対向する二つの内周面122ca,122cbと、傾斜面122ccと、を有している。
内周面122ca,122cb、傾斜面122ccは、第一実施形態の内周面22ca,22cbと同様に、ダンパシール122cが配置される箇所においてタービンケーシング22の内周面を構成している。ダンパシール122cの内周面122caとフィン43Aとの隙間Crと、内周面122cbとフィン43との隙間Crは、同一のクリアランスC1とされている。
【0049】
傾斜面122ccは、フィン43Bとダンパシール122cとの隙間Crよりも軸線方向下流側Dadに形成されている。傾斜面122ccは、軸線方向下流側Dadほど軸線Amから離れるように傾斜している。傾斜面122ccは、ダンパシール122cの軸線方向下流側Dadの端縁122tに至っている。傾斜面122ccは、動翼シュラウド42のフレア角θに対応した傾斜角度θcを有している。ここで、「フレア角θに対応」とは、フレア角θと同一な角度に加えて、フレア角θを基準とした僅かな角度範囲内にあることを意味している。傾斜面122ccは、周方向Dc(
図1参照)に連続するように形成されて環状を成している。この第二実施形態における傾斜面122ccは、ダンパシール122cの軸線方向下流側Dadに形成される角部を面取りしたような形状となっている。
【0050】
タービン静翼26は、タービン動翼24の軸線方向下流側Dadでタービンケーシング22に固定されている。タービン静翼26は、静翼シュラウド51と、静翼本体52と、を少なくとも備えている。静翼シュラウド51は、シュラウド本体部53と、フィレット部54と、を備えている。
【0051】
静翼シュラウド51の軸線方向上流側Dauの前端部51Fは、軸線Amを含む断面において、傾斜面122ccの延長線Exよりも径方向外側Droに配置されている。この第二実施形態においては、シュラウド本体部53とフィレット部54との両方が、延長線Exよりも径方向外側Droに配置されている。径方向Drにおける動翼シュラウド42と静翼シュラウド51のシュラウド本体部53との距離L2は、径方向Drにおける前縁フィレット部54aの長さL1と、径方向Drにおける動翼シュラウド42とタービンケーシング22との距離L3との和(L1+L3)よりも大きくなっている。
【0052】
静翼本体52は、第一実施形態と同様に、軸線方向上流側Dauの前縁55に、後退起点56と、径方向外側端部57と、前縁湾曲部58と、を少なくとも備えている。前縁湾曲部58は、後退起点56と径方向外側端部57との間を、軸線方向上流側Dauに凸となるように曲線状に結んでいる。
【0053】
上述した第二実施形態の航空機用ガスタービンによれば、フィン43Bとタービンケーシング22との間を流れるクリアランス流れCFを、傾斜面122ccに沿って流すことができる。そして、傾斜面122ccが、動翼シュラウド42のフレア角θに対応した傾斜角度θcを有するので、動翼シュラウド42に沿って流れる主流Mの角度に、クリアランス流れCFが流れる角度を近づけることができる。そのため、クリアランス流れCFが主流Mと衝突する角度を緩める(言い換えれば、小さくする)ことができる。その結果、クリアランス流れCFと主流Mの衝突に起因する圧力損失を低減できる。
【0054】
さらに、傾斜面122ccによって、クリアランス流れCFをよりタービン静翼26の径方向外側Droに寄せることができる。タービン静翼26が前縁湾曲部58を備えている場合、径方向外側Droほど、静翼本体52の前縁55が軸線方向下流側Dadに位置するので、クリアランス流れCFが静翼本体52に衝突する位置を、静翼本体52の腹面側にずらすことができる。その結果、静翼本体52の背面側に二次流れが生じることを抑制できる。
【0055】
この発明は上述した各実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した第一、第二実施形態では、軸線方向上流側Dauの静翼本体52の前縁55に、後退起点56と、径方向外側端部57と、前縁湾曲部58と、を備えている場合について説明した。しかし、これら後退起点56と、径方向外側端部57と、前縁湾曲部58とは、省略しても良い。
さらに、第一、第二実施形態において、フィレット部54が延長線Exよりも径方向外側Droに配置されている場合について説明した。しかし、フィレット部54が小さい場合等において、フィレット部54は、延長線Exよりも径方向内側Driに配置されていても良い。
【0056】
第一実施形態において、静翼シュラウド51が延長線Exよりも径方向外側Droに位置する場合について説明した。しかし、少なくとも軸線方向上流側Dauの静翼シュラウド51の前端部51Fが延長線Exよりも径方向外側に配置されていればよく、例えば、軸線方向Daにおける静翼シュラウド51の中間部や後端部が延長線Exよりも径方向内側Driに配置されていても良い。
【0057】
第二実施形態では、
図3の断面視における傾斜面122ccの形状が、直線状に形成される場合について説明した。しかし、この断面視における傾斜面122ccの形状は、クリアランス流れCFがフレア角θに近い角度で流れることが可能な形状であればよく、直線状に限られない。例えば、傾斜面122ccは、上記断面において僅かに曲線状に形成されていても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 圧縮機
2 燃焼室
3 タービン
4 排気ノズル
10 吸気ダクト
11 圧縮機ロータ
12 圧縮機ケーシング
13 圧縮機動翼段
14 圧縮機動翼
15 圧縮機静翼段
16 圧縮機静翼
21 タービンロータ
22 タービンケーシング(ケーシング)
22b 分割環
22ba 端部
22bi 内周面
22c,122c ダンパシール
22ca 内周面
22cb 内周面
23 タービン動翼段
24 タービン動翼
25 タービン静翼段
26 タービン静翼
27 噴射口
41 動翼本体
41a 先端
42 動翼シュラウド
42a 外周面
43 フィン
43a 先端
43A フィン
43B フィン
51 静翼シュラウド
51a フック部
51F 前端部
52 静翼本体
53 シュラウド本体部
53a 前端部
54 フィレット部
54a 前縁フィレット部
55 前縁
56 後退起点
57 径方向外側端部
58 前縁湾曲部
91 ガスタービンロータ
92 ガスタービンケーシング
100 ガスタービン
122c ダンパシール
122ca 内周面
122cb 内周面
122cc 傾斜面
122t 端縁