(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】検知用部材、碍子及び検知方法
(51)【国際特許分類】
H01B 17/06 20060101AFI20220421BHJP
H01B 7/36 20060101ALI20220421BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20220421BHJP
H02G 7/00 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
H01B17/06 A
H01B7/36 Z
H02G1/02
H02G7/00
(21)【出願番号】P 2018074993
(22)【出願日】2018-04-09
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 優
(72)【発明者】
【氏名】本田 誠彦
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 知彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 雅人
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0087287(KR,A)
【文献】国際公開第2009/070975(WO,A1)
【文献】特開2000-276957(JP,A)
【文献】特開平07-272560(JP,A)
【文献】特開2014-096284(JP,A)
【文献】特開平04-087113(JP,A)
【文献】米国特許第04291193(US,A)
【文献】特開平04-301579(JP,A)
【文献】特開2002-216559(JP,A)
【文献】実開昭48-099499(JP,U)
【文献】特開平07-262844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 17/06
H01B 7/36
H02G 1/02
H02G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
碍子のピンの細径化を検知する検知用部材であって、
前記ピンに当接する当接部と、
前記当接部を介して前記ピンの周囲の少なくとも一部に設けられる外周部と、
前記外周部の少なくとも一部に設けられた反射蛍光部と、
を備え
、
前記反射蛍光部は、前記ピンのメッキ金属の電食による細径化に伴い前記ピンに対して移動する、
検知用部材。
【請求項2】
前記当接部の少なくとも一部は、前記ピンのメッキ金属のイオン化傾向以上のイオン化傾向を有する金属を含む、
請求項
1に記載の検知用部材。
【請求項3】
前記反射蛍光部は、再帰性反射材を含む、
請求項1
又は2に記載の検知用部材。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の検知用部材が取り付けられた碍子。
【請求項5】
高所に取り付けられた碍子のピンの細径化を検知する検知方法であって、
前記高所よりも低所の光源から前記碍子に光を照射する工程と、
前記ピンの腐食に伴って前記ピンから移動した反射蛍光部による前記光の照射に伴う前記反射蛍光部からの光を検出することにより、前記ピンの細径化を検知する工程と、
を備える、
検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、検知用部材、碍子及び検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄塔に送電線を支持するときに使用される懸垂碍子が記載されている。懸垂碍子は、筒状部及び笠部を有する碍子本体と、碍子本体の筒状部の外側にセメントを介して固定されるキャップ金具とを備える。笠部の下面には複数のリブが形成されており、笠部の上面には円環状の凹所が設けられている。凹所には、内部に着色材が充填されたガラスパイプが入り込むと共に、当該ガラスパイプが接着剤によって固定されている。笠部にクラックが発生すると、ガラスパイプが破損して着色材が漏れ出すことにより、クラックの検知を可能としている。
【0003】
笠部の下面は円形状とされており、笠部の下面の中央には、他の碍子を連結するためのピン金具が入り込む。ピン金具は碍子本体の筒状部の内側にセメントを介して固定されており、ピン金具の下部は笠部から下方に突出している。また、キャップ金具の頂部には、他の碍子のピン金具を係合するための係合凹部が設けられており、この係合凹部に下方に突出するピン金具を係合することによって複数の碍子を連結することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述したピン金具等、他の碍子の連結のために設けられるピンには、防錆等の目的でメッキが施される。メッキの材料としては、種々のものが挙げられるが、例えば亜鉛等、イオン化傾向が比較的高い金属材料が用いられることがある。碍子のピンにイオン化傾向が高い金属材料によってメッキが施された場合、ピンが碍子本体にセメントで固定されるときに、ピンとセメントの間にイオン化傾向が高いメッキ金属が介在する。
【0006】
イオン化傾向が高いメッキ金属は、電気分解が生じやすく電食を引き起こしやすい。すなわち、メッキ金属とピンとの間に電解質を含む液体が介在して電流が生じると、メッキ金属がイオン化して溶出することによってピン(メッキ金属の内側の金属)の錆を引き起こす可能性がある。また、電食に加えて又は電食とは独立して、酸性雨又は海風(塩分を含んでいる)等によってもメッキ金属の溶出又は錆が引き起こされる可能性がある。これらの電食又は酸性雨等による金属の溶出及び錆の発生を本開示では腐食と呼ぶ。ピンの腐食自体、又はその後の錆の進行(金属が脆性化し、部分的に剥がれ落ちる等)によって、ピンが細径化して碍子本体から移動してピンが碍子本体から外れる可能性がある。このため、ピンの細径化を予め検知することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る検知用部材は、碍子のピンの細径化を検知する検知用部材であって、ピンに当接する当接部と、当接部を介してピンの周囲の少なくとも一部に設けられる外周部と、外周部の少なくとも一部に設けられた反射蛍光部と、を備える。
【0008】
前述した一側面に係る検知用部材は、外周部が当接部を介して碍子のピンに支持されると共に、反射蛍光部が外周部の少なくとも一部に設けられる。よって、入射光に対応して反射又は蛍光によって光を発する反射蛍光部が設けられることにより、ピンに対する反射蛍光部の位置を容易に把握することができる。従って、反射蛍光部の位置を遠方からでも容易に把握することができるので、反射蛍光部を確認することによってピンの細径化を予め検知することができる。
【0009】
反射蛍光部は、ピンのメッキ金属の電食による細径化に伴いピンに対して移動してもよい。これにより、ピンの細径化に伴って反射蛍光部が移動するので、反射蛍光部の位置を遠方から一層把握しやすくすることができる。
【0010】
当接部の少なくとも一部は、ピンのメッキ金属のイオン化傾向以上のイオン化傾向を有する金属を含んでもよい。これにより、当接部の材料のイオン化傾向がピンのメッキ金属のイオン化傾向以上であることによって、当接部の少なくとも一部を敢えて電食させてピンが腐食する前に反射蛍光部をピンに対して移動させることができる。従って、ピンが腐食する前にピンの細径化(その予兆も含む)を検知することができる。
【0011】
反射蛍光部は、再帰性反射材を含んでもよい。これにより、反射蛍光(再帰性反射)部は、光が入射した方向に沿って光を反射する。従って、光源から反射蛍光部への光の照射に伴って反射蛍光部が再帰性反射を行い、反射蛍光部から光源に向かう光の成分をより強くすることができる。その結果、反射蛍光部の位置の把握を一層容易に行うことができる。
【0012】
本開示の一側面に係る碍子は、前述した検知用部材が取り付けられる。この碍子は、前述した検知用部材を備えるので、前述の検知用部材と同様の効果が得られる。
【0013】
本開示の一側面に係る検知方法は、高所に取り付けられた碍子のピンの細径化を検知する検知方法であって、高所よりも低所の光源から碍子に光を照射する工程と、ピンの腐食に伴ってピンから移動した反射蛍光部による光の照射に伴う反射蛍光部からの光を検出することにより、ピンの細径化を検知する工程と、を備える。
【0014】
前述した一側面に係る検知方法では、ピンの細径化に伴ってピンから移動した反射蛍光部に光が照射されて反射蛍光部が光を発することにより、ピンが細径化したときには遠方からでも反射蛍光部を容易に把握することができる。従って、反射蛍光部を遠方からでも容易に把握することができるので、反射蛍光部を確認することによってピンの細径化を予め検知することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の検知用部材、碍子及び検知方法によれば、例えば碍子のピンの細径化を予め検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る検知用部材及び碍子を含む架線設備の一例を示す図である。
【
図3】
図3(a)は、碍子のピンが正常である状態を模式的に示す図である。
図3(b)は、碍子のピンの異常を模式的に示す図である。
【
図4】
図4(a)は、ピンに取り付けられた検知用部材を模式的に示す図である。
図4(b)は、
図4(a)の検知用部材の平面図である。
図4(c)は、検知用部材の当接部の別の例を示す図である。
【
図5】
図5(a)は、検知用部材の反射蛍光部を示す側面図である。
図5(b)は、反射蛍光部の光の偏光状態を模式的に示す図である。
図5(c)は、反射蛍光部に光を照射する光源及びカメラの例を示す図である。
【
図6】
図6(a)は、第2実施形態に係る検知用部材の当接部を示す横断面図である。
図6(b)は、第2実施形態に係る検知用部材の外周部を示す平面図である。
図6(c)は、第2実施形態に係る検知用部材が碍子のピンに取り付けられた状態を示す縦断面図である。
図6(d)は、第2実施形態に係る検知用部材が碍子のピンに取り付けられた状態を示す側面図である。
【
図7】
図7(a)は、第3実施形態に係る検知用部材を模式的に示す図である。
図7(b)は、
図7(a)の検知用部材の当接部とピンを示す横断面図である。
【
図8】
図8(a)は、第4実施形態に係る検知用部材の当接部を模式的に示す図である。
図8(b)は、
図8(a)の検知用部材を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、第5実施形態に係る検知用部材の当接部を模式的に示す図である。
【
図10】
図10(a)は、第6実施形態に係る検知用部材を示す縦断面図である。
図10(b)は、
図10(a)の検知用部材を示す横断面図である。
図10(c)は、
図10(a)の検知用部材を示す斜視図である。
【
図11】
図11(a)は、碍子のピンが正常であるときの検知用部材を模式的に示す図である。
図11(b)は、碍子のピンが異常であるときの検知用部材を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る検知用部材、碍子及び検知方法の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解を容易にするため一部を簡略化又は誇張して描いており、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0018】
まず、本明細書における用語「碍子」は、電線を支持対象物(鉄塔又は電柱等)に絶縁するためのものであって、典型的には、懸垂碍子、長幹碍子及びピン碍子等を含んでいる。「碍子のピン」とは、碍子において突出する部分を示しており、他の碍子に挿入されることによって他の碍子と連結されるピンを含んでいる。「ピンの異常」とは、ピンのメッキ金属が溶出してピンが腐食又は細径化する予兆又は事象を示している。
【0019】
「メッキ金属」とは、メッキの対象物に表面処理された金属材料を示している。「細径化を検知する検知用部材」とは、細径化を検知するための部材、及び細径化を予測するための部材を含んでいる。「当接部」はピンのいずれかの部位に直接的に又は間接的に取り付けられる部位を示している。「外周部」は、ピンの少なくとも一部を囲むと共に当接部に支持される部位を示している。「反射蛍光部」は、光の反射、及び蛍光の少なくともいずれかを行う部位を示している。
【0020】
「電食」とは、互いにイオン化傾向が異なる複数種類の金属材料の間に電解質溶液(純水又は塩水等)が介在して生じた電池作用によってイオン化傾向が高い金属材料が溶け出すことを示している。「細径化」とは、丸棒状又は一部球状のものの直径が小さくなることを含むと共に、断面が多角形状又は長円形状の棒状物が細くなることを含んでいる。「再帰性反射材」とは、光が入射されたときに入射された方向に沿って光を反射させる材料を示している。「高所」とは、地面からは届かない高い箇所であって、例えば、鉄塔又は電柱の上側の部分を含んでいる。「低所」とは、高所よりも相対的に低い箇所を示しており、例えば、地面から届く箇所を含んでいる。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る検知用部材及び碍子が設けられた架線設備の例を示す図である。架線設備1は、例えば、鉄道の架線設備であって、軌道に沿って設けられる複数の架線柱2と、複数の架線柱2の間において吊り下げられる電線3と、電線3及び架線柱2の間を絶縁する碍子5とを備える。本実施形態では、地上に位置する光源Sから光L1を碍子5に照射して、碍子5に設けられる検知用部材10(
図3等参照)からの光L2をカメラCが受けることにより、碍子5の劣化が碍子5の遠方から検知される。
【0022】
図2は、架線柱2の上部に取り付けられた碍子5を示す縦断面図である。
図2に示されるように、碍子5は、例えば、笠状を成す碍子本体6と、碍子本体6の上部に位置するキャップ7と、碍子本体6からキャップ7の反対側に突出するピン8とを備える。碍子本体6は、磁器によって構成されており、これにより、碍子5の電気絶縁性、耐候性及び機械的強度が高められている。
【0023】
碍子本体6は、例えば、円盤状の笠部6aと、笠部6aの中央において突出する突出部6bとを有する。笠部6aには、突出部6bの反対側に突出する環状の複数のひだ6cが設けられている。互いに直径が異なる複数のひだ6cが同心円状に配置されることにより、笠部6aの表面を通る電流に対する絶縁距離が長くなっている。碍子本体6の突出部6bの内側には、ピン8が挿入される凹部6dが形成されている。
【0024】
キャップ7及びピン8は、例えば、鉄製であり、キャップ7及びピン8のそれぞれには、メッキ金属Mが施されている。
図2ではピン8のメッキ金属Mを図示しているが、
図2以外では簡略化のためメッキ金属Mの図示を省略している。メッキ金属Mは、例えば、亜鉛メッキである。メッキ金属Mの材料が亜鉛である場合、鉄等の金属に対する密着性を高めて鉄等の防錆等することができると共に、耐候性が高いピン8とすることができる。ピン8は、凹部6dに入り込む小径部8aと、小径部8aから拡張すると共に孔8cが形成された拡径部8bとを有する。なお、ピン8の形状は、小径部8aと、孔8cが形成された拡径部8bとを有する形状に限られず、適宜変更可能である。
【0025】
ピン8は、例えば、碍子本体6の凹部6dに充填されたセメント9を介して碍子本体6に固定されている。前述したように、ピン8にはメッキ加工が施されているので、ピン8とセメント9の間にはメッキ金属Mが介在する。例えば、メッキ金属Mの材料が亜鉛であってピン8の材料が鉄である場合、メッキ金属Mのイオン化傾向はピン8のイオン化傾向よりも高い。
【0026】
よって、メッキ金属Mとピン8との間に電解質を含む液体が介在して電流が生じると、メッキ金属Mがイオン化して溶け出し、ピン8のメッキ金属Mの内側の金属が露出し、その金属が錆びる等して細径化する可能性がある。この細径化が生じると、碍子本体6からピン8が移動してピン8が碍子本体6から外れる可能性がある。これに対し、本実施形態に係る碍子5は、前述したようなピン8の異常を予め検知する検知用部材10を備える。
【0027】
図3(a)及び
図3(b)は、碍子5に取り付けられた検知用部材10を模式的に示す図である。
図3(a)及び
図3(b)に示されるように、検知用部材10は、外面に反射蛍光部11を備えており、碍子本体6からの反射蛍光部11の移動を検知することによってピン8の細径化に伴う異常を検知する。例えば、
図3(a)は、ピン8が正常である状態を示しており、ピン8が正常である場合、反射蛍光部11は碍子5の内側(例えば碍子本体6のひだ6cの内側)に入り込んでいる。
【0028】
図3(b)は、ピン8が異常である状態の例を示している。前述したように、ピン8とメッキ金属Mとの間に電解質を含む液体が介在して電流が生じると、メッキ金属Mがイオン化して電食を引き起こす。すなわち、メッキ金属Mが電食を引き起こすとメッキ金属Mが溶け出す。これにより、ピン8が錆びる等して細径化する。検知用部材10は、ピン8に支持される部材であるが、ピン8が細径化するとピン8に対する検知用部材10の支持力が低下する。そして、ピン8の細径化に伴って検知用部材10が移動して碍子5から検知用部材10の反射蛍光部11が露出する。この露出した反射蛍光部11を検知することによってピン8の異常が検知される。
【0029】
図4(a)は、検知用部材10及びピン8を模式的に示す側面図である。
図4(a)に示されるように、検知用部材10は、前述した反射蛍光部11の他に、ピン8に取り付けられる当接部12と、ピン8の周囲の少なくとも一部に設けられると共に当接部12を介してピン8に支持される外周部13とを備える。
【0030】
当接部12は、例えば、ピン8のメッキ金属Mのイオン化傾向以上のイオン化傾向を有する金属を含んでいる。この場合、当接部12の少なくとも一部を、メッキ金属Mと共に、又はメッキ金属Mよりも早期に電食させて早期に外周部13及び反射蛍光部11を移動させることができる。当接部12は、亜鉛を含んでいてもよいし、アルミニウムを含んでいてもよい。当接部12が亜鉛を含む場合には、ピン8のメッキ金属Mと同程度の電食進行が期待されるので、ピン8の電食を比較的同時進行で検知できる利点がある。当接部12がアルミニウムを含む場合には、アルミニウムは亜鉛よりもイオン化傾向が高いので比較的早期段階でピン8の電食を検知できる利点がある。
【0031】
当接部12の形状は、例えば、丸棒状、角棒状又は球状であってもよい。当接部12は、ピン8に接触する部分がピン8に接触しない部分に比べて厚み方向が薄い又は細い、すなわち、例えばピン8に接触する部分の先端が錘状又は丸みを帯びた形状であってもよい。これにより、ピン8に接触する当接部12の面積が少ないため、ピン8又は当接部12の電食の早期検知に寄与する。
【0032】
図4(b)に示されるように、当接部12は、例えば、ピン8の外周面8dにおいて周方向に沿った複数の箇所に配置されていてもよい。当接部12の個数は、例えば、2個以上且つ100個以下であり、より好ましくは3個又は4個である。一例として、当接部12は外周面8dにおいて周方向に沿った3箇所に配置されていてもよく、各当接部12が120度の位相角度をもって略等間隔に配置されていてもよい。この場合、当接部12による支持を一層安定させることが可能となる。
【0033】
また、
図4(c)に示されるように、当接部12は、他の部位に比べて脆弱とされた脆弱部12aを有していてもよい。脆弱部12aは、その周囲の部位よりも脆弱とされた部位を示している。脆弱部12aは、その周囲の部分より脆くて弱く、破断しやすい形状又は材質である部分を示しており、例えば、周囲よりも肉薄となっている部分を示している。当接部12における脆弱部12aの位置、形状及び数は適宜変更可能である。また、脆弱部12aを省略することも可能である。
【0034】
脆弱部12aは、周囲の材料とは異なる脆い材料によって構成されていてもよい。例えば、脆弱部12aは、周囲の材料のイオン化傾向よりも高いイオン化傾向を有する材料によって構成されてもよい。この場合、ピン8より早期に脆弱部12aを脆弱とすることが可能となる。また、当接部12は、ピン8側の端部(外周部13の径方向内側の端部)に脆弱部12aを有していてもよく、この場合、ピン8の細径化に伴って直接的に脆弱部12aを脆弱化させることができる。このように脆弱化させる脆弱部12aを有することにより、検知用部材10を早期にピン8から移動させることができる。
【0035】
外周部13は、ピン8の周囲の少なくとも一部に設けられる部位であって、例えば、ピン8の外周面8dを囲むように配置される。外周部13は、当接部12を介してピン8に支持される部位である。外周部13は、例えば、ピン8のメッキ金属Mの電食による細径化に伴いピン8に対して移動する。一例として、外周部13は、ピン8の細径化に伴って下方に移動する。なお、本明細書において「下方」は、鉛直下方だけでなく、僅かに下に向いている方向等、斜め下方を含んでいる。また、外周部がピンに対して移動する方向は、下方に限られず、例えば、上方又は横方向(水平方向)であってもよい。
【0036】
換言すれば、ピン8の異常検知時における外周部13の位置は、ピン8の正常時における外周部13の位置とは異なってもよく、例えば、ピン8の異常検知時における外周部13の位置は、ピン8の正常時における外周部13の位置よりも下方であってもよい。この場合、ピン8の異常検知時に一層確実に反射蛍光部11が露出するので、ピン8の異常検知を一層容易に行うことが可能となる。
【0037】
外周部13の材料は、例えば、樹脂であるが、適宜変更可能である。外周部13はプラスチック製であってもよい。外周部13の形状は、一例として、ピン8の先端側(下方)に向かうに従って拡径する截頭円錐筒状(笠状)であってもよい。しかしながら、外周部13の形状は、適宜変更可能であり、例えば、円筒状、又はピン8の先端側(下方)に向かうに従って縮径する截頭円錐筒状であってもよい。すなわち、ピン8の長手方向(鉛直方向)に対する外周部13の傾斜角度は適宜変更可能である。
【0038】
図5(a)、
図5(b)及び
図5(c)は、それぞれ反射蛍光部11について説明を行うための図である。
図5(a)及び
図5(b)に示されるように、外周部13の少なくとも一部には反射蛍光部11が設けられており、例えば、反射蛍光部11は外周部13の外面に貼り付けられている。しかしながら、外周部13に対する反射蛍光部11の配置手段は、貼り付けに限られず、例えば塗装等であってもよく、適宜変更可能である。
【0039】
反射蛍光部11の少なくとも一部は外周部13から露出している。前述したように、反射蛍光部11は、ピン8が正常であるときには碍子5の内部に隠れており、ピン8の細径化に伴う外周部13の移動と共に移動して碍子5の外部に露出する。例えば、反射蛍光部11は、再帰性反射材を含んでいる。よって、反射蛍光部11は、光が入射された方向に沿って光を反射し、すなわち、光が入射された方向の逆方向に光を反射する。一例として、反射蛍光部11は、プリズム型再帰性反射材、すなわちキューブコーナー素子を有する再帰性反射シートであってもよい。
【0040】
図5(b)及び
図5(c)に示されるように、反射蛍光部11がプリズム型再帰性反射材である場合、例えば、偏光方向が第1方向D1の光L1を透過する偏光フィルタF1を介して光源Sから光L1を反射蛍光部11に照射すると、反射蛍光部11は偏光方向が第1方向D1に交差する第2方向D2である光L2を反射する。カメラCは、偏光方向が第2方向D2の光L2を透過する偏光フィルタF2を介して反射蛍光部11からの光L2を受光する。これにより、カメラCに対する光L2以外の光の影響を低減することができるので、カメラCは光L2を一層確実に受光することができる。一例として、第1方向D1は光L1に対する縦方向(垂直方向)であり、第2方向D2は第1方向D1に直交する横方向(水平方向)である。
【0041】
なお、反射蛍光部11は、再帰性反射材以外のものであってもよく、例えば、紫外線を可視光線に変換する蛍光剤が塗布された素材を含んでもよい。この場合、反射蛍光部11は、紫外線以外の放射線が照射されても発光せず、紫外線が照射されたときに発光する。
【0042】
次に、本実施形態に係る検知方法について説明する。以下では、例えば
図1に示されるように、人が手で届かず且つ目視では見えづらい高所に取り付けられた碍子5に設けられたピン8の異常を検知する例について説明する。一例として、碍子5は、鉄道の架線設備1の架線柱2の上側に設けられている。例えば、ピン8の異常の検知は、光源S付きのカメラCを作業員Pが手で持つことによって行われる。
【0043】
まず、光源Sから碍子5に光L1を照射する(光を照射する工程)。このとき、
図3(a)及び
図3(b)に示されるように、ピン8が正常である場合には、反射蛍光部11が碍子本体6の内部に隠れているので光L1を照射しても反射光は得られない。これに対し、ピン8に異常が生じている場合には、反射蛍光部11が碍子本体6から移動して反射蛍光部11が露出しているので光L1の照射に伴って反射蛍光部11が光L2を発する。
【0044】
よって、光L1を碍子5に照射して光L2の有無から反射蛍光部11の位置を確認することにより、光L2が得られない場合にはピン8が正常であると判断することができると共に、光L2が得られる場合にはピン8が異常であると判断することができる。このように、光L2がカメラCに入射してカメラCが光L2を検出することによってピン8の異常を検知する(ピンの異常を検知する工程)。ピン8の異常発生時には、遠方から光L1を照射しても確実に光L2がカメラCに入射するので、ピン8の異常を確実且つ容易に検知することができる。
【0045】
次に、本実施形態に係る検知用部材10及び検知方法の作用効果について詳細に説明する。
【0046】
本実施形態に係る検知用部材10は、外周部13が当接部12を介して碍子5のピン8に支持されると共に、反射蛍光部11が外周部13の少なくとも一部に設けられる。よって、入射光である光L1に対応して反射又は蛍光によって光L2を発する反射蛍光部11が設けられることにより、ピン8に対する反射蛍光部11の位置を容易に把握することができる。従って、反射蛍光部11の位置を遠方からでも容易に把握することができるので、反射蛍光部11を確認することによってピン8の細径化を予め検知することができる。
【0047】
反射蛍光部11は、ピン8のメッキ金属Mの電食による細径化に伴いピン8に対して移動してもよい。これにより、ピン8の細径化の異常に伴って反射蛍光部11が移動するので、反射蛍光部11の位置を遠方から一層把握しやすくすることができる。
【0048】
当接部12の少なくとも一部は、ピン8のメッキ金属Mのイオン化傾向以上のイオン化傾向を有する金属(例えば亜鉛又はアルミニウム等)を含んでいてもよい。これにより、当接部12のイオン化傾向がピン8のメッキ金属Mのイオン化傾向以上であることによって、当接部12の少なくとも一部を敢えて電食させてピン8が腐食する前に外周部13及び反射蛍光部11をピン8に対して移動させることができる。従って、ピン8が腐食する前にピン8の細径化を検知することができる。
【0049】
反射蛍光部11は、再帰性反射材を含んでもよい。これにより、反射蛍光部11(再帰性反射部)は、光L1が入射した方向に沿って光L2を反射する。従って、光源Sから反射蛍光部11への光L1の照射に伴って反射蛍光部11が再帰性反射を行い、反射蛍光部11から光源Sに向かう光L2の成分をより強くすることができる。その結果、反射蛍光部11の位置の把握を一層容易に行うことができる。
【0050】
本実施形態に係る碍子5は、前述した検知用部材10が取り付けられる。すなわち、碍子5は、検知用部材10を備えるので、検知用部材10と同様の効果が得られる。
【0051】
本実施形態に係る検知方法では、ピン8の細径化に伴ってピン8から移動した反射蛍光部11に光L1が照射されて反射蛍光部11が光L2を発することにより、ピン8が細径化したときには遠方からでも反射蛍光部11を容易に把握することができる。従って、反射蛍光部11を遠方からでも容易に把握することができるので、反射蛍光部11を確認することによってピン8の細径化を予め検知することができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る検知用部材20について
図6(a)~
図6(d)を参照しながら説明する。
図6(a)~
図6(d)に示されるように、検知用部材20は、前述した当接部12及び外周部13とは異なる当接部22及び外周部23を備える点において第1実施形態と相違する。以降の説明では、第1実施形態と重複する説明を適宜省略する。
【0053】
例えば、当接部22は互いに分割された2個の分割部材22aを含んでおり、外周部23は互いに分割された2個の分割部材23aを含んでいる。分割部材22a及び分割部材23aの少なくともいずれかは、例えば、半円状とされた半割部材であってもよい。この場合、分割部材22a,23aを接合して当接部22又は外周部23を組み立てる作業を容易に行うことができる。一例として、2つの分割部材22aが合体して得られた当接部22の形状、及び2つの分割部材23aが合体して得られた外周部23の形状は、ピン8の外周面8dに沿って延びる円環状(円筒状)とされている。但し、当接部22及び外周部23の形状は適宜変更可能である。
【0054】
なお、当接部22の材料、及び外周部23の材料は、樹脂であってもよいし、金属であってもよく、適宜変更可能である。但し、当接部22(より具体的にはピン8に接触する止めネジN3)が、ピン8のメッキ金属Mのイオン化傾向よりも高いイオン化傾向を有する材料を含む場合、ピン8の腐食よりも早く当接部22を電食させることができるので、外周部23及び反射蛍光部11を早期に移動させてピン8の一層早い異常検知が可能となる。
【0055】
ピン8への検知用部材20の取り付け方法について説明する。まず、
図6(a)に示されるように、ピン8の外周面8dを囲むように2つの分割部材22aを配置すると共に、2つの分割部材22aをネジN1及びナットN2によって合体して当接部22をピン8(小径部8a)の所定位置にずらし、止めネジN3を締めて当接部22をピン8に固定する。次に、
図6(b)、
図6(c)及び
図6(d)に示されるように、2つの分割部材23aのそれぞれを各分割部材22aの外側に取り付け、各分割部材23aの外周に、例えば再帰性反射シートである反射蛍光部11を貼り付けて検知用部材20の取り付けが完了する。
【0056】
以上、第2実施形態に係る検知用部材20は、外周部23が当接部22を介して碍子5のピン8に支持されると共に、反射蛍光部11が外周部23の少なくとも一部に設けられる。よって、光L2を発する反射蛍光部11が設けられることにより、ピン8に対する反射蛍光部11の位置を容易に把握することができる。具体的には、外周部23と反射蛍光部11は、ピン8のメッキ金属Mの電食による細径化に伴いピン8に対して移動するので、反射蛍光部11の位置を遠方から把握しやすくすることができる。従って、第1実施形態に係る検知用部材10と同様の作用効果が得られる。
【0057】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係る検知用部材30について
図7を参照しながら説明する。第3実施形態では、当接部32の構成が前述した各実施形態とは異なっている。当接部32は、ピン8の外周面8dに接するように取り付けられる取付部材32aと、取付部材32aを締め付ける締付部材32bとを備える。取付部材32aは、例えば複数設けられており、締付部材32bは、複数の取付部材32aを共に締め付ける。一例として、一対の取付部材32aがピン8を挟み込んだ状態で締付部材32bが一対の取付部材32aを締め付ける。
【0058】
取付部材32aの材料、及び締付部材32bの材料は、樹脂であってもよいし、金属であってもよく、適宜変更可能である。但し、取付部材32a(特にピン8に接触する部分)がピン8のメッキ金属Mよりもイオン化傾向が高いイオン化傾向を有する材料を含む場合、外周部13及び反射蛍光部11をより早期に移動させることができる。その結果、ピン8の一層早い異常検知が可能となる。各取付部材32aは、例えば、ピン8の外周面8dに接触する山形部32cと、山形部32cの両端のそれぞれからピン8の径方向外側に延びる一対の平板部32dとを有する。
【0059】
締付部材32bは、例えば、ネジ32eと、ネジ32eに螺合するナット(不図示)とを含む。各平板部32dには、ネジ32eが挿通されるネジ穴32fが形成される。2枚の取付部材32aのネジ穴32fに挿通されたネジ32eがナットにねじ込まれることによって、2枚の取付部材32aが接合される。なお、当接部32の外側には、前述した各実施形態と同様、外周部13及び反射蛍光部11が設けられる。
【0060】
以上、第3実施形態に係る検知用部材30は、外周部13が当接部32を介して碍子5のピン8に支持されると共に、反射蛍光部11が外周部13の少なくとも一部に設けられる。よって、光L2を発する反射蛍光部11が設けられることにより、ピン8に対する反射蛍光部11の位置を容易に把握することができる。従って、前述した各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0061】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る検知用部材40について
図8を参照しながら説明する。第4実施形態では、当接部42の構成が前述した各実施形態とは異なっている。当接部42は、ピン8の外周面8dに接触する板状部材42aと、板状部材42aのピン8との反対側(ピン8の径方向外側)に取り付けられる取付部材42bと、取付部材42bを締め付ける締付部材42cとを備える。
【0062】
例えば、当接部42は、複数の板状部材42a、複数の取付部材42b、及び複数の締付部材42cを備える。各板状部材42aはピン8の外周面8dを囲むように配置され、各取付部材42bは各板状部材42aの外側に配置される。一例として、板状部材42aは取付部材42bとピン8との間に挟み込まれ、一対の取付部材42bが一対の板状部材42aとピン8とを挟み込んだ状態で締付部材42cが一対の取付部材42bを締め付ける。
【0063】
各取付部材42bは、例えば、板状部材42aの外周面に接触する曲面部42dと、曲面部42dの両端のそれぞれからピン8の径方向外側に延びる一対の平板部42eとを有する。締付部材42cは、例えば、ネジ42fと、ネジ42fに螺合するナット(不図示)とを含む。各平板部42eには、ネジ42fが挿通されるネジ穴42gが形成される。ネジ42f及びネジ穴42gの構成は、前述したネジ32e及びネジ穴32fの構成と同様であってもよい。また、当接部42の外側には、前述した各実施形態と同様、外周部13及び反射蛍光部11が設けられる。
【0064】
板状部材42aは、例えば、ピン8のメッキ金属Mよりもイオン化傾向が高いイオン化傾向を有する材料を含んでいる。この場合、ピン8よりも早期に板状部材42aを電食させることによって外周部13及び反射蛍光部11をより早期に移動させることができるので、ピン8の一層早い異常検知が可能となる。また、取付部材42b及び締付部材42cの材料は、例えば、樹脂又は金属であるが、特に限定されない。
【0065】
以上、第4実施形態に係る検知用部材40は、外周部13が当接部42を介して碍子5のピン8に支持され、反射蛍光部11が外周部13の少なくとも一部に設けられるので、ピン8に対する反射蛍光部11の位置を容易に把握することができる。従って、前述した各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0066】
(第5実施形態)
続いて、第5実施形態に係る検知用部材50について
図9を参照しながら説明する。第5実施形態に係る検知用部材50は、当接部52と反射蛍光部11と外周部13とを備えており、当接部52の構成が前述した各実施形態とは異なっている。一方、反射蛍光部11及び外周部13は、前述した各実施形態の外周部13及び反射蛍光部11と同様であるため、
図9では外周部13及び反射蛍光部11の図示を省略している。
【0067】
当接部52は、ピン8の外周面8dに取り付けられる取付部材52aと、取付部材52aをピン8に固定する接着剤52bとを備える。例えば、当接部52は、複数の取付部材52aを備え、各取付部材52aは接着剤52bによってピン8の外周面8dに接着される。このように接着剤52bが各取付部材52aをピン8の外周面8dに接着固定するため、第5実施形態ではネジ等の締付部材が不要である。また、メッキ金属Mが酸性雨又は塩水によって溶出するときに発生する物質(例えば塩化亜鉛)によって分解する樹脂(ポリアミド又はポリアセタール等)を接着剤52bに含有させることで、ピン8のメッキ金属Mが溶出するときに接着剤52bの接着力の低下を促すこともできる。
【0068】
各取付部材52aは、前述した取付部材42bと同様、ピン8の外周面8dに沿って延びる曲面部52cと、曲面部52cの両端のそれぞれからピン8の径方向外側に延びる一対の平板部52dとを有する。2枚の取付部材52aが対向する方向に並ぶ一対の平板部52dの間には接着剤52eが介在し、接着剤52eによって2枚の取付部材52aが互いに接着固定される。
【0069】
以上、第5実施形態に係る検知用部材50は、外周部13が当接部52を介してピン8に支持されると共に、反射蛍光部11が外周部13の少なくとも一部に設けられるので、ピン8に対する反射蛍光部11の位置を容易に把握することができる。従って、前述の各実施形態と同様の作用効果が得られる。更に、検知用部材50では、締付部材が不要であるため部品点数を減らすことができると共に、ピン8への取り付けを容易に行うことができる。
【0070】
(第6実施形態)
第1~5実施形態では、例えば
図5(a)に示されるように、反射蛍光部11は外周部13の外側(ピン8を内側とした場合)に配置されている。しかしながら、反射蛍光部11を外周部13の内側に配置することも可能である。この場合、ピン8が細径化したときに、反射蛍光部11の少なくとも一部が外周部13の内側から外部に露出するように、外周部13に対して反射蛍光部11の少なくとも一部が移動する。例えば、当接部12と反射蛍光部11とが接しており、当接部12の一部溶出に伴って、その接した部分が一部欠損等することで反射蛍光部11が一部移動してもよい。反射蛍光部11は、液状又はゲル状の流体であって当接部12によって担持又は貯留されていてもよい。
【0071】
また、例えば
図10(a)、
図10(b)及び
図10(c)に示されるように、検知用部材60は、ピン8の外周面8dに当接する当接部62と、当接部62に対してピン8の径方向外側に位置する中空の外周部63と、外周部63の内部に収容される液状又はゲル状の流体である反射蛍光部61と、外周部63及び外周面8dの間に設けられる接着剤64とを備える。
【0072】
反射蛍光部61は、例えば、反射蛍光塗料である。外周部63は、例えば、ピン8を囲む筒状とされていると共に、ピン8との間に隙間Kを有する。一例として、外周部63は円筒状とされている。隙間Kは、外周部63の内周面63aとピン8の外周面8dとの間に形成される。当接部62は、外周部63の内周面63aからピン8の径方向内側に突出しており、当接部62の先端部62aがピン8の外周面8dに当接している。例えば、内周面63aから複数の当接部62が突出しており、複数の当接部62はピン8の周方向に等間隔に配置されていてもよい。
【0073】
一例として、当接部62は、外周面8dにおいて周方向に沿った2箇所に配置されていてもよく、各当接部62が180度の位相角度をもって略等間隔に配置されていてもよい。接着剤64は、外周部63をピン8に接着固定するために設けられ、例えば、隙間Kのうち当接部62が設けられない部位に充填される。一例として、接着剤64は、周方向に沿って並ぶ複数の当接部62の間のそれぞれに充填されてもよい。
【0074】
外周部63は、例えば、互いに分割された複数の分割部材63bを含んでおり、複数の分割部材63bが接着剤64を介して互いに接合されてもよい。一例として、分割部材63bは、半円筒状とされた半割部材であってもよい。この場合、2つの分割部材63bを接合して外周部63を組み立てる作業を容易に行うことができる。但し、外周部63の形状及び材料は適宜変更可能である。
【0075】
当接部62の少なくとも一部(例えば先端部62a)は、ピン8のメッキ金属Mのイオン化傾向以上のイオン化傾向を有する金属を含んでいてもよい。この場合、ピン8より早期に当接部62を電食させることによって反射蛍光部61を早期に移動させることができる。また、当接部62の少なくとも一部(例えば先端部62a)は、メッキ金属Mが溶出するときに発生する物質(例えば塩化亜鉛)によって分解する樹脂(ポリアミド又はポリアセタール等)を含んでいてもよい。これにより、反射蛍光部61を早期に移動させることができる。
【0076】
具体的には、
図11(a)及び
図11(b)に示されるように、当接部62の溶出に伴って当接部62に孔又は隙間が空くと、その孔又は隙間から反射蛍光部61が漏れ出す形で移動する。すなわち、当接部62及び外周部63が液状又はゲル状の反射蛍光部61を収容するケース状とされており、当接部62の溶出に伴って反射蛍光部61が流れ出ることによって反射蛍光部61が外部に露出する。以上、第6実施形態では、ピン8よりも早期に当接部62を電食させることによって反射蛍光部61をより早期に移動させることができるので、ピン8の一層早い異常検知が可能となる。従って、前述した各実施形態と同様の効果が得られる。
【0077】
以上、本開示の各実施形態について説明したが、本開示は前述した各実施形態に限定されるものではない。本開示は、例えば、鉄塔の上部に取り付けられた碍子等、鉄道の架線設備の架線柱以外に取り付けられた碍子にも適用可能であり、種々の碍子に適用可能である。例えば、ピンの周囲に筒状の亜鉛スリーブが設けられており、当該亜鉛スリーブを介して検知用部材が取り付けられてもよい。この場合、検知用部材の当接部は当該亜鉛スリーブを介してピンに取り付けられてもよい。このように、碍子の構成は適宜変更可能であると共に、亜鉛スリーブ等、耐食性部材と検知用部材とを併用することも可能である。また、検知用部材の各部の形状、大きさ、材料、数及び配置態様は、前述した各実施形態に限られず、適宜変更可能である。
【0078】
(実施例)
次に、検知用部材及び碍子の実施例を説明する。本開示は下記の実施例に限定されるものではない。実施例の碍子は、
図6(a)~(d)に示されるように、ピン8を備え、実施例の検知用部材は、反射蛍光部11、当接部22及び外周部23を備える。ピン8は検知用部材が取り付けられる丸棒状の小径部8aと拡径部8bとを有し、小径部8aの直径は19mmである。当接部22及び外周部23は共に円環状を成しており、当接部22の直径は35mm、外周部23の直径は40mmである。また、当接部22の高さ(厚さ)は8mmであり、外周部23の高さ(厚さ)は12mmである。反射蛍光部11は再帰性反射シートである。
【0079】
実施例の碍子及び検知用部材では、ピン8が電食するとピン8から外周部23及び反射蛍光部11が下方に移動して碍子5から反射蛍光部11が露出するので、露出した反射蛍光部11を検知することによってピン8の異常を検知できることが分かった。
【符号の説明】
【0080】
2…架線柱、5…碍子、8…ピン、10,20,30,40,50…検知用部材、11,61…反射蛍光部、12,22,32,42,52,62…当接部、13,63…外周部、L1,L2…光、S…光源。