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特許7061504作動油の監視システム及び作動油の監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】作動油の監視システム及び作動油の監視方法
(51)【国際特許分類】
   F15B 21/044 20190101AFI20220421BHJP
   B66C 13/00 20060101ALN20220421BHJP
   E02F 9/26 20060101ALN20220421BHJP
【FI】
F15B21/044
B66C13/00 Z
E02F9/26 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018078594
(22)【出願日】2018-04-16
(65)【公開番号】P2019183571
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】筑後 寛之
(72)【発明者】
【氏名】堀 秀司
(72)【発明者】
【氏名】東 春那
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073734(WO,A1)
【文献】特開2013-117169(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198498(WO,A1)
【文献】特開2010-7782(JP,A)
【文献】特開2010-38054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 20/00-21/12
F15B 1/00- 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両の作動油タンクに収容されている作動油の油面の画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データに基づいて前記作動油に含まれている気泡に係る気泡データを出力する画像解析部と、
前記作動油タンクに係る状態量データを取得する状態量データ取得部と、
前記状態量データに基づいて前記気泡の発生の原因を推定する推定部と、を備える
作動油の監視システム。
【請求項2】
前記画像解析部は、前記気泡データとして、前記気泡の量及び前記気泡の大きさの少なくとも一方を出力する、
請求項1に記載の作動油の監視システム。
【請求項3】
前記気泡データに係る閾値データを記憶する閾値記憶部と、
前記画像解析部から出力された前記気泡データと前記閾値データとに基づいて作動油が異常か否かを判定して判定データを出力する判定部と、を備える
請求項1又は請求項2に記載の作動油の監視システム。
【請求項4】
前記画像データ、前記気泡データ、及び前記判定データの少なくとも一つを出力装置に出力させる第1出力制御部を備える、
請求項3に記載の作動油の監視システム。
【請求項5】
前記作動油タンクは、前記作業車両の車体に設けられ、
前記状態量データは、前記作動油タンクに収容されている前記作動油の量を示す油量データ、前記車体の傾斜角度を示す傾斜データ、及び前記車体の加速度を示す加速度データの少なくとも一つを含む、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の作動油の監視システム。
【請求項6】
前記気泡の発生を抑制する処置方法を示す処置データを記憶する処置記憶部と、
前記推定部による推定データに基づいて特定の処置データを選択する選択部と、
前記選択部に選択された前記処置データを出力装置に出力させる第2出力制御部と、を備える
請求項に記載の作動油の監視システム。
【請求項7】
前記作動油タンクに撮像装置が配置され、
前記撮像装置は前記作動油の油面の上方から前記作動油を撮像し、
前記画像データ取得部は、前記撮像装置から前記画像データを取得する、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の作動油の監視システム。
【請求項8】
前記作動油タンクに照明装置が配置され、
前記撮像装置は、前記照明装置で照明された前記作動油を撮像する、
請求項に記載の作動油の監視システム。
【請求項9】
作業車両の作動油タンクに収容されている作動油の油面の画像データを取得することと、
前記画像データに基づいて前記作動油に含まれている気泡に係る気泡データを出力することと、
前記作動油タンクに係る状態量データを取得することと、
前記状態量データに基づいて前記気泡の発生の原因を推定することと、を含む
作動油の監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動油の監視システム及び作動油の監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧アクチュエータを有する作業車両において、油圧アクチュエータは、油圧ポンプから供給される作動油に基づいて作動する。油圧ポンプは、作動油タンクに収容されている作動油を吸引する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-004602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作動油タンクに収容されている作動油に気泡が発生すると、油圧ポンプが故障する可能性がある。そのため、作動油に含まれる気泡を定量的又は定性的に監視して、気泡の発生を抑制する処置を講ずる必要がある。
【0005】
本発明の態様は、作動油に含まれる気泡を定量的又は定性的に監視することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、作業車両の作動油タンクに収容されている作動油の油面の画像データを取得する画像データ取得部と、前記画像データに基づいて前記作動油に含まれている気泡に係る気泡データを出力する画像解析部と、を備える作動油の監視システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、作動油に含まれる気泡を定量的又は定性的に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る作業車両の一例を示す図である。
図2図2は、本実施形態に係る作業車両の駆動システム及び制御システムを示すブロック図である。
図3図3は、本実施形態に係る作動油タンクの一例を示す図である。
図4図4は、本実施形態に係る監視システムの一例を示す機能ブロック図である。
図5図5は、本実施形態に係る判定部の処理を説明するための模式図である。
図6図6は、本実施形態に係る気泡の発生の原因を説明するための模式図である。
図7図7は、本実施形態に係る処置記憶部の一例を示す模式図である。
図8図8は、本実施形態に係る作動油の監視方法の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、本実施形態に係る処置方法の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、コンピュータシステムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[作業車両]
図1は、本実施形態に係る作業車両1の一例を示す図である。作業車両1は、油圧機器を搭載する。作業車両1として、ブルドーザ、油圧ショベル、ホイールローダ、及びダンプトラックの少なくとも一つが例示される。本実施形態においては、作業車両1がブルドーザであることとする。作業車両1は、車体11と、走行装置12と、作業機13とを備える。
【0011】
車体11は、運転室14と、エンジン室15とを有する。運転室14に運転席が配置される。エンジン室15は、運転室14の前方に配置される。
【0012】
走行装置12は、車体11の下部に取り付けられる。走行装置12は、左右一対の履帯16を有する。履帯16が回転することによって、作業車両1が走行する。作業車両1の走行は、有人、無人、遠隔操作、及び自動運転等のいずれでもよい。
【0013】
作業機13は、車体11に取り付けられる。作業機13は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトシリンダ19とを有する。
【0014】
リフトフレーム17は、車幅方向に延在する回転軸AXを中心に上下方向に回転可能に車体11に取り付けられる。リフトフレーム17は、ブレード18を支持する。ブレード18は、車体11の前方に配置される。ブレード18は、リフトフレーム17に連動して上下方向に移動する。
【0015】
リフトシリンダ19は、車体11及びリフトフレーム17のそれぞれに連結される。リフトシリンダ19が伸縮することによって、リフトフレーム17は、回転軸AXを中心に上下方向に回転する。
【0016】
図2は、本実施形態に係る作業車両1の駆動システム2及び制御システム3を示すブロック図である。図2に示すように、駆動システム2は、エンジン22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24とを有する。
【0017】
油圧ポンプ23は、エンジン22によって駆動される。油圧ポンプ23は、作動油タンク4に収容されている作動油を吸引して吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、リフトシリンダ19などに供給される。なお、図2では、1つの油圧ポンプ23が図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0018】
動力伝達装置24は、エンジン22の駆動力を走行装置12に伝達する。動力伝達装置24は、例えばHST(Hydro Static Transmission)でもよい。動力伝達装置24は、例えばトルクコンバータ又は複数の変速ギヤを有するトランスミッションでもよい。
【0019】
制御システム3は、制御装置5と、操作装置25と、バルブ装置26とを有する。操作装置25は、運転室14に配置される。操作装置25として、操作レバー、ペダル、及びスイッチの少なくとも一つが例示される。操作装置25は、作業機13及び走行装置12を駆動するために運転者に操作される。操作装置25が操作されると、操作装置25から制御装置5に操作信号が出力される。
【0020】
バルブ装置26は、比例制御弁を含み、制御装置5からの制御指令によって制御される。バルブ装置26は、リフトシリンダ19と油圧ポンプ23との間に配置される。バルブ装置26は、油圧ポンプ23からリフトシリンダ19に供給される作動油の流量及び方向を制御する。なお、バルブ装置26は、圧力比例制御弁を含んでもよいし、電磁比例制御弁を含んでもよい。
【0021】
制御装置5は、操作装置25からの操作信号に基づいて、作業機13、走行装置12、及びバルブ装置26を制御する制御指令を出力する。制御装置5は、操作装置25からの操作信号に基づいて、ブレード18が作動するようにバルブ装置26に制御指令を出力する。これにより、リフトシリンダ19が、操作装置25の操作量に基づいて作動する。
【0022】
制御システム3は、作動油タンク4に係る状態量を検出する状態量センサを有する。作動油タンク4に係る状態量を示す状態量データは、作動油タンク4に収容されている作動油の量を示す油量データ、作動油タンク4の傾斜角度を示す傾斜データ、及び作動油タンク4の加速度を示す加速度データの少なくとも一つを含む。図1に示すように、作動油タンク4は、車体11に配置される。作動油タンク4は、運転室14の後方に配置される。
【0023】
状態量センサは、作動油タンク4に収容されている作動油の量を検出する油量センサ6、水平面に対する車体11の傾斜角度を検出する傾斜センサ7、及び走行装置12の加速度を検出する加速度センサ8を含む。
【0024】
油量センサ6は、作動油タンク4に設けられ、作動油タンク4に収容されている作動油の量を検出する。油量センサ6によって検出された作動油の量を示す油量データは、制御装置5に出力される。
【0025】
傾斜センサ7は、車体11に設けられた慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を含む。傾斜センサ7は、水平面に対する車体11の傾斜角度を検出する。作動油タンク4は、車体11に設けられる。車体11の傾斜角度は、作動油タンク4の傾斜角度を含む。傾斜センサ7は、水平面に対する作動油タンク4の傾斜角度を検出することができる。傾斜センサ7により検出された作動油タンク4の傾斜角度を示す傾斜データは、制御装置5に出力される。
【0026】
加速度センサ8は、動力伝達装置24に設けられ、走行装置12(車体11)の加速度を検出する。動力伝達装置24が油圧モータを含むHSTの場合、加速度センサ8は、油圧モータの出力回転速度を検出する回転センサでもよい。出力回転速度が微分処理されることにより、出力回転加速度が算出される。出力回転加速度と走行装置12の加速度とは1対1で対応する。そのため、加速度センサ8は、出力回転速度を検出することによって、走行装置12の加速度を検出することができる。作動油タンク4が設けられる車体11は、走行装置12に支持される。走行装置12(車体11)の加速度は、作動油タンク4の加速度を含む。加速度センサ8は、作動油タンク4の加速度を検出することができる。加速度センサ8により検出された作動油タンク4の加速度を示す加速度データは、制御装置5に出力される。なお、IMUが車体11及び作動油タンク4の加速度を検出してもよい。
【0027】
[作動油タンク]
図3は、本実施形態に係る作動油タンク4の一例を示す図である。作動油タンク4の内部空間41に作動油が収容される。作動油タンク4は、内部空間41に配置されるストレーナ42と、内部空間41に配置されるフィルタユニット43とを有する。フィルタユニット43は、フィルタ本体43Aと、フィルタ本体43Aの周囲に配置されるフィルタケース43Bとを含む。内部空間41の作動油は、ストレーナ42を介して油圧ポンプ23に供給される。リフトシリンダ19からの作動油は、フィルタユニット43を介して内部空間41に供給される。
【0028】
本実施形態において、作動油タンク4に可視化センサ30が配置される。可視化センサ30とは、少なくとも撮像装置31を含み、検出対象を可視化して、検出対象を検出するセンサをいう。すなわち、可視化センサ30とは、検出対象の画像データを取得して、検出対象を検出するセンサをいう。可視化センサ30は、作動油タンク4の上板に支持される。可視化センサ30は、作動油タンク4に収容されている作動油の油面の上方から作動油を撮像する。
【0029】
また、可視化センサ30は、照明装置32を有する。照明装置32は、撮像装置31の被写体である作動油を照明する。撮像装置31は、照明装置32で照明された作動油を撮像する。なお、照明装置32は、可視化センサ30とは別体でもよい。照明装置32は、撮像装置31の被写体である作動油を照明するように、作動油タンク4に配置されていればよい。
【0030】
[監視システム]
次に、本実施形態に係る作動油の監視システム100について説明する。監視システム100は、可視化センサ30を介して作動油タンク4に収容されている作動油の状態を監視する。監視システム100は、可視化センサ30の撮像装置31が取得した画像データに基づいて、作動油に含まれている気泡を解析する。
【0031】
図4は、本実施形態に係る監視システム100の一例を示す機能ブロック図である。監視システム100は、作業車両1に搭載されている制御装置5と、可視化センサ30と、油量センサ6と、傾斜センサ7と、加速度センサ8と、作業車両1の運転室14に設けられている出力装置9とを備える。制御装置5は、コンピュータシステムを含む。
【0032】
出力装置9は、制御装置5に接続される。出力装置9は、表示データを出力する表示装置でもよいし、印刷物を出力する印刷装置でもよいし、音声を出力する音声出力装置でもよい。表示装置として、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)又は有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electroluminescence Display)のようなフラットパネルディスプレイが例示される。
【0033】
制御装置5は、可視化センサ30、油量センサ6、傾斜センサ7、及び加速度センサ8のそれぞれと接続される。撮像装置31は、作動油の油面の画像データを制御装置5に出力する。油量センサ6は、作動油タンク4の油量データを制御装置5に出力する。傾斜センサ7は、作動油タンク4の傾斜データを制御装置5に出力する。加速度センサ8は、作動油タンク4の加速度データを制御装置5に出力する。
【0034】
制御装置5は、画像データ取得部51と、画像解析部52と、閾値記憶部53と、判定部54と、状態量データ取得部55と、推定部56と、処置記憶部57と、選択部58と、第1出力制御部61と、第2出力制御部62とを有する。
【0035】
画像データ取得部51は、可視化センサ30の撮像装置31から、作業車両1の作動油タンク4に収容されている作動油の油面の画像データを取得する。
【0036】
画像解析部52は、画像データ取得部51により取得された画像データに基づいて、作動油に含まれている気泡に係る気泡データを出力する。すなわち、画像解析部52は、画像データを画像処理して、作動油に含まれている気泡を抽出する。画像解析部52は、気泡データとして、作動油の油面における気泡の量及び気泡の大きさの少なくとも一方を出力する。なお、画像解析及び診断は、人間が行っても人工知能(AI:Artificial Intelligence)などを用いて自動で行ってもよい。
【0037】
撮像装置31の光学系の視野領域に作動油の油面が配置される。撮像装置31の光学系の視野領域は、作動油タンク4に収容されている作動油の油面よりも小さい。作動油の油面における気泡の量は、画像データにおいて作動油の油面のうち気泡が占める割合によって規定される。気泡の大きさは、画像データにおいて1つの気泡の面積によって規定される。
【0038】
閾値記憶部53は、気泡データに係る気泡閾値を示す閾値データを記憶する。気泡閾値は、気泡の量に係る気泡量閾値及び気泡の大きさに係る気泡寸法閾値を含む。
【0039】
判定部54は、画像解析部52から出力された気泡データと閾値記憶部53に記憶されている閾値データとに基づいて、作動油が異常か否かを判定して判定データを出力する。例えば、気泡の量が気泡量閾値以上である場合、判定部54は、作動油に多量の気泡が発生し、作動油が異常であると判定する。
【0040】
第1出力制御部61は、画像データ取得部51により取得された画像データ、画像解析部52から出力された気泡データ、及び判定部54による判定データの少なくとも一つを出力装置9に出力させる。
【0041】
状態量データ取得部55は、油量センサ6、傾斜センサ7、及び加速度センサ8のそれぞれから、作動油タンク4に係る状態量データを取得する。上述のように、状態量データは、作動油タンク4に収容されている作動油の量を示す油量データ、作動油タンク4の傾斜角度を示す傾斜データ、及び作動油タンク4の加速度を示す加速度データの少なくとも一つを含む。
【0042】
推定部56は、状態量データ取得部55により取得された状態量データに基づいて、気泡の発生の原因を推定する。
【0043】
処置記憶部57は、気泡の発生を抑制する処置方法を示す処置データを複数記憶する。気泡の発生を抑制する処置方法は、パターン化されており、処置記憶部57に事前に登録することができる。
【0044】
選択部58は、推定部56による推定データに基づいて、複数の処置データから特定の処置データを選択する。
【0045】
第2出力制御部62は、選択部58に選択された処置データを出力装置9に出力させる。
【0046】
[判定部の処理]
次に、判定部54の処理について説明する。図5は、本実施形態に係る判定部54の処理を説明するための模式図である。図5に示すように、画像解析部52は、作動油の油面の画像データを解析して、画像データから気泡の画像を抽出する。画像解析部52は、画像データにおいて気泡が占める割合を算出する。
【0047】
図5(A)に示す例では、気泡が10[%]であり、図5(B)に示す例では、気泡が30[%]であり、図5(C)に示す例では、気泡が70[%]であり、図5(D)に示す例では、気泡が90[%]である。本実施形態において、閾値記憶部53に記憶されている気泡に係る気泡閾値は30[%]である。図5(A)に示すように、気泡が10[%]の場合、判定部54は、作動油は正常であると判定する。図5(B)、図5(C)、図5(D)に示すように、気泡が30[%]以上の場合、判定部54は、作動油は異常であると判定する。判定部54は、作動油が正常であると判定した場合、作動油が正常であることを示す判定データを出力する。判定部54は、作動油が異常であると判定した場合、作動油が異常であることを示す異常データを出力する。なお、気泡の量の判断は、気泡が多い又は少ないといったように定性的な判断でもよい。
【0048】
第1出力制御部61は、判定データを出力装置9に出力させる。これにより、作業車両1の運転者又は保守者は、出力装置9に出力された判定データを見て、適切な処置を講ずることができる。
【0049】
本実施形態においては、気泡の量が第1気泡閾値未満(例えば5[%]未満)の場合、第1出力制御部61は、判定データを出力装置9に出力させない。なお、制御装置5は、気泡の量が第1気泡閾値未満であることを代理店又は保守者に通信ネットワークを介して通知してもよい。
【0050】
気泡の量が第1気泡閾値以上第2気泡閾値未満(例えば5[%]以上30[%]未満)の場合、第1出力制御部61は、判定データを出力装置9に出力させる。これにより、運転者は、気泡の量が多くなったことを認識することができる。なお、制御装置5は、気泡の量が第1気泡閾値以上第2気泡閾値未満であることを代理店又は保守者に通信ネットワークを介して通知してもよい。
【0051】
気泡の量が第2気泡閾値以上(例えば30[%]以上)の場合、第1出力制御部61は、判定データを出力装置9に出力させる。これにより、運転者は、気泡の量が非常に多くなったことを認識することができる。また、制御装置5は、不図示のエンジン制御装置に気泡の量が第2気泡閾値以上になったことを通知する。エンジン制御装置は、エンジン22の回転数を制限したり、エンジン22の起動を規制したりすることができる。なお、制御装置5は、気泡の量が第2気泡閾値以上であることを代理店又は保守者に通信ネットワークを介して通知してもよい。作業車両1の製造又は保守点検を行う工場に通知してもよい。
【0052】
[選択部の処理]
次に、選択部58の処理について説明する。図6は、本実施形態に係る気泡の発生の原因を説明するための模式図である。上述のように、リフトシリンダ19から戻ってきた作動油は、フィルタユニット43を介して作動油タンク4に戻される。気泡の発生の原因は、パターン化されている。
【0053】
気泡の発生の原因の第1パターンとして、作動油タンク4における作動油の量の減少が挙げられる。図6(A)に示すように、作動油タンク4における作動油の量が減少し、ストレーナ42の少なくとも一部が空気に触れると、油圧ポンプ23は、作動油を空気と一緒に吸い込んでしまう。
【0054】
気泡の発生の原因の第2パターンとして、作動油タンク4の傾斜が挙げられる。図6(B)に示すように、例えば坂道などに起因して作業車両1の姿勢が傾くことで、作動油タンク4が傾斜すると、作動油の油面も傾き、ストレーナ42の上端部が油面から出て、油圧ポンプ23は、作動油を空気と一緒に吸い込んでしまう。
【0055】
気泡の発生の原因の第3パターンとして、作動油タンク4の急激な加速が挙げられる。図6(C)に示すように、運転者が作業車両1を急加速させ、作動油タンク4が急激に加速すると、作動油の油面が波打ち、空気を巻き込むことで、作動油に気泡が発生する可能性が高くなる。また、油面変動でストレーナ42の上端部が油面から出て作動油を空気と一緒に吸い込んでしまう。
【0056】
図示は省略するが、気泡の発生の原因の第4パターンとして、フィルタケース43Bの破損が挙げられる。フィルタケース43Bが破損すると、破損部分から作動油に空気が侵入し、作動油に気泡が発生する可能性が高くなる。
【0057】
作動油に気泡が発生した場合において、油量センサ6により作動油タンク4の作動油の量が油量閾値以下であることを示す油量データが状態量データ取得部55に取得された場合、推定部56は、油量データに基づいて、気泡の発生の原因が、第1パターンである作動油の量の減少であると推定する。
【0058】
作動油に気泡が発生した場合において、作動油タンク4の傾斜角度が傾斜角度閾値以上であること又は傾斜角度の変化率が変化率閾値以上であることを示す傾斜データが状態量データ取得部55に取得された場合、推定部56は、傾斜データに基づいて、気泡の発生の原因が、第2パターンである作動油タンク4の傾斜であると推定する。なお、傾斜角度の変化率とは、単位時間当たりの傾斜角度の変化量をいい、変化率が大きいほど作動油タンク4は急激に傾斜したことを示す。なお、推定部56は、傾斜角度と傾斜角度の変化率の両方を用いて、気泡の発生の原因を推定することも可能である。
【0059】
作動油に気泡が発生した場合において、作動油タンク4の加速度が加速度閾値以上であることを示す加速度データが状態量データ取得部55に取得された場合、推定部56は、加速度データに基づいて、気泡の発生の原因が、第3パターンである作動油タンク4の加速度であると推定する。
【0060】
作動油に気泡が発生した場合において、作動油の量が油量閾値以下である第1パターン、作動油タンク4の傾斜角度が傾斜角度閾値以上又は傾斜角度の変化率が変化率閾値以上である第2パターン、及び作動油タンク4の加速度が加速度閾値以上である第3パターンのいずれにも該当しない場合、推定部56は、気泡の発生の原因が、第4パターンであるフィルタケース43Bの破損であると推定する。
【0061】
処置記憶部57は、気泡の発生を抑制する処置方法を示す処置データを複数記憶する。気泡の発生を抑制する処置方法は、パターン化されており、処置記憶部57に事前に登録される。
【0062】
[処置記憶部]
図7は、本実施形態に係る処置記憶部57の一例を示す模式図である。図7に示すように、気泡の発生の原因に対応して、処置方法が登録されている。
【0063】
処置記憶部57には、気泡の発生の原因の第1パターンに対応する第1処置データが登録されている。すなわち、作動油タンク4の作動油の量が油量閾値以下であるときの第1処置方法を示す第1処置データとして、処置記憶部57には、「作動油タンクに給油する」が登録されている。
【0064】
また、処置記憶部57には、気泡の発生の原因の第2パターンに対応する第2処置データが登録されている。すなわち、作動油タンク4の傾斜角度が傾斜角度閾値以上又は傾斜角度の変化率が変化率閾値以上であるときの第2処置方法を示す第2処置データとして、処置記憶部57には、「傾斜が大きいところでは作業車両を使用しない」が登録されている。
【0065】
また、処置記憶部57には、気泡の発生の原因の第3パターンに対応する第3処置データが登録されている。すなわち、作動油タンク4の加速度が加速度閾値以上であるときの第3処置方法を示す第3処置データとして、処置記憶部57には、「加速度を小さくする」が登録されている。
【0066】
また、処置記憶部57には、気泡の発生の原因の第4パターンに対応する第4処置データが登録されている。すなわち、作動油タンク4が破損したときの第4処理方法を示す第4処置データとして、処置記憶部57には、「修理又は部品交換する」が登録されている。
【0067】
選択部58は、推定部56による推定データに基づいて、処置記憶部57に記憶されている複数の処置データから特定の処置データを選択する。
【0068】
例えば、推定部56において気泡の発生の原因が作動油の量の減少であると推定された場合、選択部58は、処置データとして、第1処置データである「作動油タンクに給油する」を選択する。
【0069】
推定部56において気泡の発生の原因が作動油タンク4の傾斜であると推定された場合、選択部58は、処置データとして、第2処置データである「傾斜が大きいところでは作業車両を使用しない」を選択する。
【0070】
推定部56において気泡の発生の原因が作動油タンク4の加速度であると推定された場合、選択部58は、処置データとして、第3処置データである「加速度を小さくする」を選択する。
【0071】
推定部56において気泡の発生の原因が作動油タンク4の破損であると推定された場合、選択部58は、処置データとして、第4処置データである「修理又は部品交換する」を選択する。
【0072】
第2出力制御部62は、選択部58に選択された処置データを出力装置9に出力させる。例えば、第1処置データである「作動油タンクに給油する」が出力装置9に出力されることにより、運転者又は保守者は、作動油タンク4に作動油を補給することができる。第2処置データである「傾斜が大きいところでは作業車両を使用しない」が出力装置9に出力されることにより、運転者は、傾斜が小さいところを作業車両1が走行するように操作装置25を操作することができる。第3処置データである「加速度を小さくする」が出力装置9に出力されることにより、運転者は、作業車両1を急加速させないように操作装置25を操作することができる。第4処置データである「修理又は部品交換する」が出力装置9に出力されることにより、作業車両1の運転者又は保守者は、作動油タンク4を修理又は部品交換することができる。
【0073】
[作動油の監視方法]
図8は、本実施形態に係る作動油の監視方法の一例を示すフローチャートである。可視化センサ30は、作動油タンク4の作動油の油面の状態を常時監視する。撮像装置31は、作動油の油面の上方から作動油を撮像する。撮像装置31は、照明装置32で照明された作動油を撮像する。撮像装置31により取得された画像データは、規定の周期で制御装置5に出力される。画像データ取得部51は、撮像装置31から画像データを取得する(ステップSA10)。
【0074】
画像解析部52は、画像データ取得部51に取得された画像データを解析する(ステップSA20)。
【0075】
画像解析部52は、画像データに基づいて、作動油に含まれている気泡に係る気泡データを出力する(ステップSA30)。画像解析部52は、気泡データとして、気泡の量及び気泡の大きさの少なくとも一方を出力する。
【0076】
判定部54は、画像解析部52から出力された気泡データと閾値記憶部53に記憶されている閾値データとに基づいて、気泡が気泡閾値以上か否かを判定する(ステップSA40)。判定部54は、例えば画像データに占める気泡の割合が気泡閾値以上(30[%]以上)か否かを判定する。
【0077】
ステップSA40において、気泡が気泡閾値以上でないと判定された場合(ステップSA40:No)、判定部54は、作動油が正常であると判定し、ステップSA10の処理に戻る。
【0078】
ステップSA40において、気泡が気泡閾値以上であると判定された場合(ステップSA40:Yes)、判定部54は、作動油が異常であると判定する。第1出力制御部61は、作動油が異常であることを示す判定データを出力装置9に出力させる(ステップSA50)。
【0079】
[処置方法]
次に、図8を参照して説明した監視方法において、判定部54により気泡が発生したと判定されたときの気泡の発生を抑制する処置方法について説明する。図9は、本実施形態に係る処置方法の一例を示すフローチャートである。
【0080】
状態量データ取得部55は、作動油タンク4に係る状態量として、油量センサ6から油量データを取得し、傾斜センサ7から傾斜データを取得し、加速度センサ8から加速度データを取得する(ステップSB10)。
【0081】
推定部56は、状態量データに基づいて、気泡の発生の原因を推定する。推定部56は、油量データに基づいて、作動油タンク4の作動油の量が油量閾値以下か否かを判定する(ステップSB20)。
【0082】
ステップSB20において、作動油タンク4の作動油の量が油量閾値以下であると判定した場合(ステップSB20:Yes)、推定部56は、気泡の発生の原因が、第1パターンである作動油の量の減少であると推定する。選択部58は、処置記憶部57に記憶されている複数の処置データから第1処置データを選択する。第2出力制御部62は、選択部58に選択された第1処置データを出力装置9に出力させる(ステップSB30)。
【0083】
ステップSB20において、作動油タンク4の作動油の量が油量閾値以下でないと判定した場合(ステップSB20:No)、推定部56は、傾斜データに基づいて、作動油タンク4の傾斜角度が傾斜角度閾値以上か否かを判定する(ステップSB40)。
【0084】
ステップSB40において、作動油タンク4の傾斜角度が傾斜角度閾値以上であると判定した場合(ステップSB20:Yes)、推定部56は、気泡の発生の原因が、第2パターンである作動油タンク4の傾斜であると推定する。選択部58は、処置記憶部57に記憶されている複数の処置データから第2処置データを選択する。第2出力制御部62は、選択部58に選択された第2処置データを出力装置9に出力させる(ステップSB50)。
【0085】
ステップSB40において、作動油タンク4の傾斜角度が傾斜角度閾値以上でないと判定した場合(ステップSB40:No)、推定部56は、加速度データに基づいて、作動油タンク4の加速度が加速度閾値以上か否かを判定する(ステップSB60)。
【0086】
ステップSB60において、作動油タンク4の加速度が加速度閾値以上であると判定した場合(ステップSB60:Yes)、推定部56は、気泡の発生の原因が、第3パターンである作動油タンク4の加速であると推定する。選択部58は、処置記憶部57に記憶されている複数の処置データから第3処置データを選択する。第2出力制御部62は、選択部58に選択された第3処置データを出力装置9に出力させる(ステップSB70)。
【0087】
ステップSB60において、作動油タンク4の加速度が加速度閾値以上でないと判定した場合(ステップSB60:No)、推定部56は、気泡の発生の原因が、第4パターンである作動油タンク4の破損であると推定する。選択部58は、処置記憶部57に記憶されている複数の処置データから第5処置データを選択する。第2出力制御部62は、選択部58に選択された第5処置データを出力装置9に出力させる(ステップSB80)。
【0088】
[コンピュータシステム]
図10は、コンピュータシステム1000の一例を示すブロック図である。上述の制御装置5は、コンピュータシステム1000を含む。コンピュータシステム1000は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインターフェース1004とを有する。上述の制御装置5の機能は、プログラムとしてストレージ1003に記憶されている。プロセッサ1001は、プログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、プログラムに従って上述の処理を実行する。なお、プログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0089】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、作業車両1の作動油タンク4に収容されている作動油の油面の画像データを取得する画像データ取得部51と、画像データに基づいて作動油に含まれている気泡に係る気泡データを出力する画像解析部52とが設けられる。作動油の画像データが取得されるため、作動油に含まれる気泡を定量的又は定性的に監視することができる。これにより、例えば気泡の発生を抑制する処置を講じることができる。
【0090】
また、画像解析部52は、気泡データとして、気泡の量及び前記気泡の大きさの少なくとも一方を出力することができる。
【0091】
また、気泡データに係る閾値データが予め閾値記憶部53に記憶されることにより、判定部54は、気泡データと閾値データとに基づいて作動油が異常か否かを判定することができる。
【0092】
また、作動油の画像データ、気泡データ、及び判定データの少なくとも一つが出力装置9に出力されることにより、作業車両1の運転者又は保守者は、視覚又は聴覚を通じて作動油の状態を認識することができる。
【0093】
また、作動油タンク4に係る状態量データが取得されることにより、推定部56は、状態量データに基づいて、気泡の発生の原因を推定することができる。
【0094】
気泡の発生の原因は、パターン化されている。そのため、気泡の発生を抑制するための処置方法を示す処置データを予め処置記憶部57に記憶させておくことにより、選択部58は、推定部56による推定データに基づいて、気泡の発生の原因のパターンに対応する処置データを選択することができる。選択部58に選択された処置データが出力装置9に出力されることにより、運転者又は保守者は、出力装置9に出力された処置データを見て、気泡の発生を抑制するための適切な処置を講じることができる。
【0095】
作動油タンク4に配置される撮像装置31は、作動油の油面の上方から作動油を撮像する。気泡は、浮力により作動油の油面に移動する。そのため、撮像装置31が作動油の上面の上方から作動油を撮像することにより、気泡の存在が分かる画像データを取得することができる。
【0096】
作動油タンク4に照明装置32が配置されることにより、作動油タンク4の内部空間41が暗くても、撮像装置31は、気泡の存在が分かる画像データを取得することができる。
【0097】
[他の実施形態]
上述の実施形態において、画像データ取得部51、画像解析部52、閾値記憶部53、判定部54、状態量データ取得部55、推定部56、処置記憶部57、及び選択部58の少なくとも一つの機能を、作業車両1の外部に設けられた外部コンピュータシステムが有してもよい。その場合、撮像装置31で取得された画像データは、通信ネットワークを介して、外部コンピュータシステムに送信されてもよい。また、上述の実施形態において、出力装置9は、作業車両1の外部に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1…作業車両、2…駆動システム、3…制御システム、4…作動油タンク、5…制御装置、6…油量センサ、7…傾斜センサ、8…加速度センサ、9…出力装置、11…車体、12…走行装置、13…作業機、14…運転室、15…エンジン室、16…履帯、17…リフトフレーム、18…ブレード、19…リフトシリンダ、22…エンジン、23…油圧ポンプ、24…動力伝達装置、25…操作装置、26…バルブ装置、30…可視化センサ、31…撮像装置、32…照明装置、33…プラグ、33A…本体部、33B…フランジ部、34…スペーサ部材、34A…端面、34B…端面、41…内部空間、42…ストレーナ、43…フィルタユニット、43A…フィルタ本体、43B…フィルタケース、51…画像データ取得部、52…画像解析部、53…閾値記憶部、54…判定部、55…状態量データ取得部、56…推定部、57…処置記憶部、58…選択部、61…第1出力制御部、62…第2出力制御部、AX…回転軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10