(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】炭化ケイ素半導体装置の製造方法および検査システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20220421BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
H01L21/66 N
G01N21/956 A
(21)【出願番号】P 2018086631
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】三木 浩史
(72)【発明者】
【氏名】佐川 雅一
(72)【発明者】
【氏名】稲田 直美
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-137229(JP,A)
【文献】特開2014-203833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の炭化ケイ素基板と,当該第1の炭化ケイ素基板上に形成されたエピタキシャル層とを有する半導体装置の製造方法であって,
前記エピタキシャル層の欠陥位置情報を取得する第1の工程と,
前記第1の炭化ケイ素基板と同一の結晶から切り出された第2の炭化ケイ素基板のマイクロパイプ位置情報を取得する第2の工程と,
前記エピタキシャル層の欠陥位置情報と前記第2の炭化ケイ素基板のマイクロパイプ位置情報を比較して,前記エピタキシャル層に存在するマイクロパイプ位置を決定する第3の工程を備える,
炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法におい
て,
前記第1の炭化ケイ素基板に複数の前記半導体装置が配置されて製造されてあり,
前記第1の工程では,
前記半導体装置の配置が特定できるマークを少なくとも一つ形成した後に,前記エピタキシャル層の欠陥位置情報を取得する,
ことを特徴とする炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法におい
て,
前記第2の工程では,
前記マイクロパイプ位置情報は,前記第2の炭化ケイ素基板をエッチングしてマイクロパイプをエッチピットとして顕在化させ,前記エッチピットの位置を前記第2の炭化ケイ素基板のマイクロパイプ位置とみなして取得している,
ことを特徴とする炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法におい
て,
前記第1の工程では,
前記エピタキシャル層の欠陥位置情報は,前記複数の半導体装置のひとつを特定できるように定められた識別情報と,その識別情報をもつ半導体装置内での位置情報であるオフセットとで構成される,
ことを特徴とする炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法におい
て,
前記第1の工程では,
前記エピタキシャル層の欠陥位置情報の取得は,前記半導体装置内での特定領域に限定する,
ことを特徴とする炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法におい
て,
決定されたマイクロパイプ位置を前記識別情報で表す欠陥有情報を出力する第4の工程を行うことを特徴とする炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法におい
て,
半導体製造装置を形成するウェハプロセス後に,ウェハテストおよびチップテストを含む検査工程を行い,
当該検査工程では,
当該検査工程で取得した検査結果と,前記エピタキシャル層に存在するマイクロパイプ位置の両者からチップおよびダイの少なくとも一つの合格不合格を判定する,
ことを特徴とする炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法におい
て,
半導体製造装置を形成するウェハプロセス後に,ウェハテストおよびチップテストを含む検査工程を行い,
当該検査工程では,
当該検査工程で取得した検査結果と,前記エピタキシャル層に存在するマイクロパイプ位置の両者からチップおよびダイの少なくとも一つのチップ性能区分を割り付ける,
ことを特徴とする炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法におい
て,
前記第3の工程では,
前記エピタキシャル層の欠陥位置と前記第2の炭化ケイ素基板のマイクロパイプ位置が所定許容範囲内で一致することにより前記エピタキシャル層に存在するマイクロパイプを検出し,前記エピタキシャル層の欠陥位置に従って検出したマイクロパイプ位置を決定する,
ことを特徴とする炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法におい
て,
前記決定したマイクロパイプ位置に基づいて,チップおよびダイの少なくとも一つの合格不合格または性能区分割り付けを行なう,
ことを特徴とする炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法におい
て,
前記所定許容範囲として0.1mm~10mmの位置ずれを許容する,
ことを特徴とする炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項12】
第1の炭化ケイ素基板と,当該第1の炭化ケイ素基板上に形成されたエピタキシャル層とを有する半導体素子の検査システムであって,
位置情報照合演算部を備え,
前記位置情報照合演算部は,
前記エピタキシャル層の欠陥位置情報を含む外観検査結果情報を入力とし,
前記第1の炭化ケイ素基板と同一の結晶から切り出された第2の炭化ケイ素基板のマイクロパイプ位置情報を含むインゴット欠陥位置情報を入力とし,
前記欠陥位置情報と前記マイクロパイプ位置情報の座標を揃えた上で、所定の許容誤差の範囲で前記欠陥位置情報と前記マイクロパイプ位置情報が一致するものがあるかを判定し、一致するものがある場合には、前記欠陥位置情報に基づいて前記エピタキシャル層に存在するマイクロパイプ位置を決定する,
炭化ケイ素半導体装置の検査システム。
【請求項13】
前記外観検査結果情報は,
前記エピタキシャル層の欠陥位置情報として,前記第1の炭化ケイ素基板に形成されたダイまたはチップを特定するチップインデックス情報に対応して,当該ダイまたはチップ中の前記エピタキシャル層の欠陥位置を示すオフセットを含み,
前記位置情報照合演算部は,
前記第1の炭化ケイ素基板に形成されたダイまたはチップを特定するチップインデックス情報に対応して,当該ダイまたはチップのエピタキシャル層に存在するマイクロパイプの有無を示す欠陥有ダイ情報を出力する,
請求項12記載の炭化ケイ素半導体装置の検査システム。
【請求項14】
不良ダイ判定部をさらに含み,
前記不良ダイ判定部は,
前記欠陥有ダイ情報を入力とし,
前記第1の炭化ケイ素基板に形成されたダイまたはチップを特定するチップインデックス情報に対応して,当該ダイまたはチップの検査結果を示す良品インデックス情報を入力とし,
前記良品インデックス情報で前記ダイまたはチップの検査結果が良品であった場合で,かつ,前記欠陥有ダイ情報で当該ダイまたはチップのエピタキシャル層にマイクロパイプ有とされた場合,前記良品インデックス情報の当該ダイまたはチップの検査結果を良品から他の種別に変更したGO/NGO判定結果を出力する,
請求項13記載の炭化ケイ素半導体装置の検査システム。
【請求項15】
前記所定の許容誤差として0.1mm~10mmの位置ずれを許容する,
請求項12記載の炭化ケイ素半導体装置の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭化ケイ素半導体装置の製造技術に関し,特に経時劣化が小さく信頼度に優れた炭化ケイ素半導体装置を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素は,従来のシリコンと比較して破壊電界強度が大きいため,電力制御用半導体装置の耐圧とオン抵抗のトレードオフを大幅に改善できる。特に,従来このトレードオフのためにシリコンでは高耐圧品の性能が大幅に劣化するショットキーバリアダイオード,MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタのようなユニポーラ動作素子において,炭化ケイ素の優位性は明らかであり,近年精力的な開発が進められている。
【0003】
しかしながら,周知のように,炭化ケイ素基板には多種多様な欠陥が存在しており,マイクロパイプもその一つである。マイクロパイプは,炭化ケイ素基板のc軸方向に伸びる中空の筒状構造である。この構造は,PN接合やMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造でリークパスを形成するため,半導体素子の耐圧は著しく劣化して不良品となる。また,基板上にエピタキシャル層を形成した場合も,エピタキシャル層内に引き継がれ,リークパスとして残る。ただし,エピタキシャル成長の条件によっては,中空構造内部にも成長がおきて,マイクロパイプの内径が縮小し,ついには閉塞して,エピタキシャル層の最表面には到達しない。この構造は,閉塞マイクロパイプと呼ばれている。非特許文献1によれば,この閉塞マイクロパイプを含む半導体素子は,初期状態でのリーク電流が正常品とほとんど変わらない一方で,長時間動作で劣化を起こす可能性がある,と指摘されている。
【0004】
この対策には,初期状態のリーク電流以外の方法で閉塞マイクロパイプを含む素子を特定する必要がある。一般的には,マイクロパイプが結晶インゴット内をc軸方向に伝播することを利用し,インゴットから採られた一枚をエッチングにより検査して特定した位置をマイクロパイプとする。また,非特許文献2では,アバランシェ電流をパルスで流し,その前後でリーク電流が増加するものを除去する方法が述べられている。また特許文献1では,半導体素子を形成するのとは反対側の面をエッチングしてマイクロパイプを顕在化させて位置を特定し,マイクロパイプを含む素子を除去する方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Rupp,Rほか,「Influence of Overgrown Micropips in the Active Area of SiC Schottky diodes on long term reliability」,Materials Science Forum,Vols.483-485,p.925 (2005).
【文献】Holz,Mほか,「Reliability considerations for recent Infineon SiC diode releases」,Microelectronics Reliability 47,p.1741 (2007).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の方法を発明者が検討した結果,まず同一インゴット別ウェハのエッチピット位置を用いる方法は,ウェハが異なることに起因して位置精度が十分でなく,閉塞マイクロパイプが半導体素子の無効領域にあるのか有効領域にあるのか,弁別できない課題があった。
【0008】
また,アバランシェ前後のリーク電流変化で検出する方法は,アバランシェ電流が流れる領域内に閉塞マイクロパイプがある場合には有効だが,それ以外の領域に対する感度は相対的に低くなるため,検出漏れの問題がある。また反対側の面をエッチングする方法では,素子特性を劣化させない結晶欠陥もエッチングされてピットになる。すなわち,正常素子領域も影響を受けるため,修復工程が必要になる。
【0009】
そこで,コストの増加やスループットの低下を抑制しながら,閉塞マイクロパイプのある欠陥チップの除去が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の好ましい一側面は,第1の炭化ケイ素基板と,第1の炭化ケイ素基板上に形成されたエピタキシャル層とを有する半導体装置の製造方法である。この製造方法は,エピタキシャル層の欠陥位置情報を取得する第1の工程と,第1の炭化ケイ素基板と同一の結晶から切り出された第2の炭化ケイ素基板のマイクロパイプ位置情報を取得する第2の工程と,エピタキシャル層の欠陥位置情報と第2の炭化ケイ素基板のマイクロパイプ位置情報を比較して,エピタキシャル層に存在するマイクロパイプ位置を決定する第3の工程を備える。
【0011】
本発明の好ましい他の一側面は,第1の炭化ケイ素基板と,第1の炭化ケイ素基板上に形成されたエピタキシャル層とを有する半導体素子の検査システムである。このシステムは,位置情報照合演算部を備え,位置情報照合演算部は,エピタキシャル層の欠陥位置情報を含む外観検査結果情報を入力とし,第1の炭化ケイ素基板と同一の結晶から切り出された第2の炭化ケイ素基板のマイクロパイプ位置情報を含むインゴット欠陥位置情報を入力とする。そして,欠陥位置情報とマイクロパイプ位置情報の座標を揃えた上で、所定の許容誤差の範囲で欠陥位置情報とマイクロパイプ位置情報が一致するものがあるかを判定し、一致するものがある場合には、欠陥位置情報に基づいてエピタキシャル層に存在するマイクロパイプ位置を決定する。
【発明の効果】
【0012】
コストの増加やスループットの低下を抑制しながら,閉塞マイクロパイプのある欠陥チップの除去が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1における処理システムの全体ブロック図。
【
図2】実施例1における工程フローと欠陥情報処理のフローを示すフロー図。
【
図3】本発明の実施形態で利用されるウェハ刻印情報の最小構成を示す表図。
【
図4】本発明の実施形態で利用されるインゴット欠陥位置情報データベーステーブルの一例を示す表図。
【
図5】本発明の実施形態で利用されるインゴット欠陥位置情報構成の一例を示す表図。
【
図6】本発明の実施形態で利用される外観検査欠陥位置情報の構成の一例を示す表図。
【
図7】閉塞マイクロパイプの構造を説明する模式的な透過斜視図。
【
図8】閉塞マイクロパイプの表面を光学式欠陥検査装置で観察した際の画像の一例を示す模式的な透過平面図。
【
図9】本発明の実施形態で利用される欠陥ありダイ番号情報の構成の一例を示す表図。
【
図10】炭化シリコン半導体装置の有効領域の一例を示す上面図。
【
図11】位置情報照合演算部が行なう処理の流れの例を示すフロー図。
【
図12】位置情報照合演算部が行なう処理の概念を説明する概念図。
【
図13】本発明の実施形態で利用される良品位置情報の構成の一例を示す表図。
【
図14】本発明の実施形態で利用される判定結果(GO NO GO)情報の構成の一例を示す表図。
【
図15】実施例2における工程フローと欠陥情報処理のフローを示すフロー図。
【
図16】本発明の実施形態で利用される電気特性の一例を示す散布図。
【
図17】本発明の実施形態で利用される電気特性情報の一例を示す表図。
【
図18】本発明の実施形態で利用されるチップ区分判定結果(GO NO GO)情報の構成の一例を示す表図。
【
図19】実施例3における工程フローと欠陥情報処理のフローを示すフロー図。
【
図20】本発明の実施形態で利用されるダイ-トレー対応情報の構成の一例を示す表図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,本発明の好適な実施形態を説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0015】
以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。
【0016】
同一あるいは同様な機能を有する要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、複数の要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0017】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0018】
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0019】
本実施例の一例では,まず,製造用基板と同一インゴットの基板のエッチピットを用いて,およそのマイクロパイプ座標を決定する。製造用基板は,位置決めマークを予め作製した後に外観検査し,マイクロパイプの候補となる欠陥座標を高精度に決定する。この二つの座標が必要な精度で一致する場合,外観検査で得られた欠陥座標位置に閉塞マイクロパイプが存在すると判断し,そのダイを強制的に不良とする。
【0020】
閉塞マイクロパイプの位置は,製造される半導体素子内の局所的な位置として高精度に決定されるため,ダイシングライン上のような無効領域にあり無視できる場合と,アクティブ領域のような深刻な影響のある場合とを正確に区別できる。また,マイクロパイプの検出はエッチングで顕在化して行うため,検出漏れを防止できる。さらに,追加される工程は上記外観検査だけであり,エッチングや研磨などの追加工程や,特殊な検査工程を必要としない。このため,コストの増加やスループットの低下を最小限にしながら,閉塞マイクロパイプのある欠陥チップの除去が可能になる。
【実施例1】
【0021】
図1は、本実施例の炭化ケイ素半導体装置製造システムの全体構成図である。システムは管理サーバ(1000)、インゴット欠陥情報データベース(116)、製造・検査設備(1100)、およびこれらを接続してデータやコマンドを送受信するためのネットワーク(1200)を含む。
【0022】
管理サーバ(1000)は、処理装置(CPU)(1001)、入出力装置(I/O)(1002)、および記憶装置(MEM)(1003)を備える。ハードウェアとしては公知の一般的なものを用いる。記憶装置(1003)には位置情報照合演算部(117)、不良ダイ判定部(118)を実現するためのソフトウェアが格納される。各部の動作については後述する。
【0023】
本実施例では計算や制御等の機能は、記憶装置(1003)に格納されたプログラムが処理装置(1001)によって実行されることで、定められた処理を他のハードウェアと協働して実現される。計算機などが実行するプログラム、その機能、あるいはその機能を実現する手段を、「機能」、「手段」、「部」、「ユニット」、「モジュール」等と呼ぶ場合がある。
【0024】
インゴット欠陥情報データベース(116)は各種データを格納・管理するためのサーバであり、ハードウェアとしては公知の一般的なものを用いる。
【0025】
製造・検査設備(1200)は、実際に半導体装置のインゴットやウェハを製造、加工、検査するための設備である。この設備も管理サーバ(1000)やインゴット欠陥情報データベース(116)と通信するためのサーバ(1101)を備えるものとする。製造、加工、検査で得られたデータは、必要に応じて管理サーバ(1000)やインゴット欠陥情報データベース(116)に送られるものとし、管理サーバ(1000)やインゴット欠陥情報データベース(116)で作成されたデータは、必要に応じて製造・検査設備(1200)からアクセス可能とする。
【0026】
以上の構成では、ネットワーク(1200)で接続された3つのサーバを使用することにしたが、製造・検査設備(1200)に隣接あるいは包含される、ネットワーク(1200)を介さない単体のサーバで構成してもよい。あるいは、入力装置、出力装置、処理装置、記憶装置の任意の部分が、ネットワーク(1200)で接続された4以上のサーバで構成されてもよい。また、ソフトウェアで構成した機能と同等の機能は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアでも実現できる。
【0027】
インゴット欠陥情報データベース(116)には,対応表(1601),インゴット欠陥情報(1602),インゴット欠陥位置情報(1603),欠陥有ダイ番号情報(1605),GO/NOGO判定結果(1607)が格納される。サーバ(1101)では,外観検査結果情報(1604),良品インデックス情報(1606)が格納される。なお、これらの情報やデータの格納場所は一例であり、作成主体や処理主体となる装置からアクセスできる場所に格納されていれば他の場所でもよい。これらのサーバに格納されている情報については、後に説明する。また、上記のデータ構成も一例であり、上記のデータ(テーブル)のうち複数を結合して一つのデータ(テーブル)としていてもよいし、一つのデータを分割して複数のデータとしてもよい。
【0028】
図2は、本実施例を適用した良品チップ選別処理の流れを示すフロー図である。
図1と
図2を参照し,本実施例を適用した良品チップ選別システムの処理の流れについて説明する。
【0029】
まず,製造・検査設備(1100)では、ウェハロット投入時に,ウェハに刻印されたインゴット記号(刻印情報)を読み取り(S101),ウェハロット番号(201),ウェハ番号(202)と,インゴット記号(203)の対応表(1601)を作成して,インゴット欠陥情報データベース(116)に送る(110)。対応表(1601)は人手により入力装置から入力してもよいし、採取したデータから自動的に生成してもよい。
【0030】
図3は対応表(1601)の一例を示す表図である。インゴット欠陥情報データベース(116)は,対応表(1601)のインゴット記号(203)を検索キーとして,インゴット欠陥情報(1602)からインゴット欠陥位置情報(1603)を生成し,位置情報照合演算部(117)に送る(114)。
【0031】
図4は、インゴット欠陥情報(1602)の一例を示す表図である。インゴット欠陥情報(1602)は,インゴット記号(203),エッチピットの中心座標(301),エッチピットの幅(μm),エッチピットの高さ(μm),エッチピットの面積(μm
2)のデータを含む。
【0032】
ここで,インゴット欠陥情報(1602)は,製造・検査設備(1200)において,投入されたウェハと同一インゴットから切り出された検査専用ウェハを分析した結果から生成する。分析方法としては,まず,検査専用ウェハを公知のKOH(水酸化カリウム)エッチングによりエッチングし,選択的にマイクロパイプを顕在化させる。この方法を用いることで,マイクロパイプは,容易に他の結晶欠陥から弁別できる,たとえば六角形のエッチピットとして拡大されることになる。このエッチピットの位置を,通常の光学顕微鏡観察によって特定し,自動または人手を介してインゴット欠陥情報データベース116に格納する。ここで,中心座標(301)は,厳密には欠陥(マイクロパイプ)そのものの情報ではなく,エッチピットの情報である。中心座標(301)は,たとえば、エッチピットの平面形状の幾何学的重心点で定義できる。中心座標(301)は,検査専用ウェハ上に定義されたx軸とy軸上の座標として規定できる。また幅と高さは同じくx軸とy軸方向の長さとして規定できる。
【0033】
図5は、インゴット欠陥位置情報(1603)の一例を示す表図である。インゴット欠陥位置情報(1603)は,ロット番号(201),ウェハ番号(202),中心座標(301),幅(302),高さ(303),面積(304)のデータを含む。
【0034】
インゴット欠陥位置情報(1603)は,対応表(1601)のインゴット記号(203)とインゴット欠陥情報(1602)のインゴット記号(203)が一致する情報を検索することにより,容易に得られる。インゴット欠陥位置情報(1603)は,各ウェハに対して、検出されたエッチピットの位置情報を対応付けるものである。
【0035】
次に,製造・検査設備(1100)では,公知のフォトリソグラフィー技術とエッチング技術により,チップ外形に対応する位置にマークを形成する(S102)。次に,このマークを基準として,流動ウェハの外観検査を実施し(S103),欠陥の存在するチップのチップインデックス(501)とチップ内欠陥位置オフセット(502)を記録した外観検査結果情報(1604)を生成する。外観検査結果情報(1604)は,位置情報照合演算部(117)に送付する(111)。
【0036】
図6は,外観検査結果情報(1604)の一例を示す表図である。外観検査結果情報(1604)は,ロット番号(201),ウェハ番号(202),チップインデックス(501),チップ内欠陥位置オフセット(502)のデータを含む。チップインデックス(501)はウェハ内におけるチップの位置を指定し、チップ内欠陥位置オフセット(502)はチップの中における欠陥の位置を指定する。
【0037】
図7は,外観検査の対象となるマイクロパイプの形状を説明する透過斜視図である。外観検査は全チップの全有効領域が検査対象となるため,スループットの観点から光学式欠陥検査装置での実施が望ましい。本実施例の対象である閉塞マイクロパイプは,基板内(1701)では中空の柱状構造異常構造(1703)となっているが,エピタキシャル層(7001)形成後は,成長中に中空領域内壁に堆積が起き,コーン形状の空洞(1704)を形成した後,エピタキシャル層表面側では閉塞する(1705)。
【0038】
図8は,光学式欠陥検査装置によりエッチピットを観測した状況を説明する平面図であり,
図7のC’,D’,D,Cで規定される領域をエピタキシャル層(7001)側から見た図である。先に述べたように、中空の柱状構造異常構造(1703)は閉塞しているため,エピタキシャル層の外観検査(S103)時には中空構造から期待される画像は必ずしも得られず,多くの観察像は微細な暗点(8001)だけである。かかる暗点(8001)のチップ内の位置がチップ内欠陥位置オフセット(502)として記録される。
【0039】
また,エピタキシャル層(7001)には,マイクロパイプ以外にエピタキシャル成長の異常や基板表面の形状異常による欠陥が存在し,また通常の工程異物も欠陥として検出される。これら欠陥には,形状によりマイクロパイプとの弁別が容易なものも多いが,寸法が微細なものの判定は困難である。このため,外観検査結果情報(1604)には,閉塞したマイクロパイプ以外の欠陥座標も含まれる可能性がある。
【0040】
図2に戻ると,次に位置情報照合演算部(117)において,インゴット欠陥位置情報(1603)と外観検査結果情報(1604)から,欠陥有ダイ番号情報(1605)が生成される。欠陥有ダイ番号情報(1605)は,例えばインゴット欠陥情報データベース(116)に格納しておく。
【0041】
図9は,欠陥有ダイ番号情報(1605)の一例を示す表図である。マイクロパイプにより欠陥があると判定されたダイは,ロット番号(201)とウェハ番号(202)とチップインデックス(501)で特定される。
【0042】
欠陥有ダイ番号情報(1605)を得るための演算は,基本的にはインゴット欠陥位置情報(1603)の中心座標(301)と,外観検査結果情報(1604)のチップインデックス(501)とチップ内欠陥位置オフセット(502)から計算される欠陥の座標とを照合し,一致した場合にその座標が含まれるチップインデックス(501)を出力するものである。ここで,次の3点を考慮する必要がある。
【0043】
第一に,一致の判定には,0.1mm~10mmの範囲の適切な余裕をもたせる必要がある。インゴット欠陥位置情報(1603)の中心座標(301)は欠陥そのものの位置ではなく,エッチングにより顕在化させた結果としてのエッチピット位置である。また,エッチピット分析は外観検査(S103)を行ったウェハとは別ウェハであるため,ウェハ外径寸法や位置決めフラット部の形状に許容公差内の違いが存在する。これらのため,ふたつの座標が完全に一致することはほとんどなく,適切な余裕を持たせる必要がある。
【0044】
この余裕を大きく採ると,検出感度は上がるが誤検出頻度も上がり,小さく採ると誤検出は減るが感度も下がる関係がある。適切な値は,目的とするチップの初期特性が,閉塞マイクロパイプに影響を受ける程度によって決まる。閉塞マイクロパイプに敏感なチップの場合は誤検出の副作用が大きいので誤検出抑制を優先する。閉塞マイクロパイプに初期特性が鈍感なチップの場合は,見逃しの危険が高いので,検出感度向上が優先される。
【0045】
第二に,インゴット欠陥位置情報(1603)と外観検査結果情報(1604)を比較する際には,(S102)で作製したウェハ上マークを基準にした外観検査結果情報(1604)の位置を,ウェハ外形を基準としたインゴット欠陥位置情報(1603)の座標に換算して行う。前述のように,インゴット欠陥位置情報(1603)の中心座標(301)は,エッチングにより拡大したエッチピットの位置情報であるから,隣接する複数のチップ領域にずれて存在する可能性がある。また,前述のウェハ形状差はここでも座標値のオフセットとなるから,隣接チップの境界付近ではチップインデックスを誤って判定してしまう恐れがある。結果として,インゴット欠陥位置情報(1603)の中心座標(301)を,外観検査結果情報(1604)のチップインデックス(501)とチップ内欠陥位置オフセット(502)に換算して比較を行うと,見逃しが発生する。すなわち,適切な演算処理とはならない。
【0046】
第三に,座標が一致し,チップ有効領域内に閉塞マイクロパイプが存在しても,チップ動作上は問題のない場合には,欠陥有ダイ番号情報(1605)には含めない処理を行う。チップ動作上問題のない領域は,一般的には高電界が印加されない領域である。
【0047】
図10は,1つのチップ(1901)を上から見た場合のイメージを示す平面図である。
図10に示すように,周辺ターミネーション領域最外周(1903)の外側は,チップ裏面と実質的に同一電位となる領域になるから,ここにある閉塞マイクロパイプは欠陥有ダイ番号情報(1605)には含めない。逆に言えば,高電界の可能性のある(1903)の内側の領域だけを欠陥有ダイ番号情報(1605)に出力する。この処理は,位置情報照合演算部にチップ設計に応じて除外領域情報を与えるか,より望ましくは外観検査の対象を高電界になる(1903)の内側領域に限定することで実現できる。
【0048】
図11は,位置情報照合演算部(117)が実行する,欠陥有ダイ番号情報(1605)生成処理の具体的な一例を示すフロー図である。
【0049】
処理(S1101)で,インゴット欠陥位置情報(1603)を読み込み,処理(S1102)で外観検査結果情報(1604)を読み込む。
【0050】
処理(S1103)で,インゴット欠陥位置情報(1603)の中心座標(301)から半径rの円を定義したデータ(便宜的に「データA」という)を作成する。半径rは0.1mm~10mmの範囲であって,これは先に述べたように実際のマイクロパイプの位置は中心座標と一致するとは限らないため,適切な余裕をもたせる必要があるからである。半径rの円を定義する代わりに,インゴット欠陥位置情報(1603)のデータから規定されるエッチピットの形状を用いても良い。
【0051】
処理(S1104)で,外観検査結果情報(1604)の位置情報をインゴット欠陥位置情報(1603)の座標に変換してデータ(便宜的に「データB」という)を作成する。
【0052】
処理(S1105)で,データAとデータBを照合する。
【0053】
図12は,データAとデータBの照合の概念を説明する概念図であり,ウェハの一部を拡大して観察した図である。データAはインゴット欠陥位置情報(1603)から得られた情報であり,半径rの円(2201)内にマイクロパイプが存在することが判定できる。ただし、半径rの円(2201)内のどこにマイクロパイプが存在するかは不確かである。
【0054】
一方データBは外観検査結果情報(1604)から得られた情報であり、欠陥(2202)の位置情報であるチップ内欠陥位置オフセット(502)とその欠陥が属するチップインデックス(501)の情報を含む。概念的には
図12に示すように、欠陥(2202)の位置情報とチップ境界(2203)の情報を含むと考えても良い。欠陥(2202)の位置情報は精度が高いが,その欠陥がマイクロパイプかどうかは判定できない。
【0055】
図11の処理(S1106)による照合判定では,データAの円(2201)内にデータBの欠陥(2202)が重なる場合、その欠陥位置情報を持つチップ(ダイ)をFAILとする。欠陥位置情報を持つチップ(ダイ)とは,外観検査結果情報(1604;
図6)において,欠陥に対応したチップインデックス(501)で指定されるチップである。
【0056】
すなわち、
図12の下の図で、ダイBは,データAの円(2201)内にデータBの欠陥(2202)が重なり,かつ欠陥の位置情報を持つためFAILとなる。また,ダイCは,データAの円内にデータBの欠陥が重なるが,欠陥の位置情報を持たないためFAILとならない。一方,ダイDは,データAの円内にデータBの欠陥が重なり,かつ欠陥の位置情報を持つためFAILとなる。このように,マイクロパイプの存在有無の判定には,インゴット欠陥位置情報(1603)と外観検査結果情報(1604)を用い,位置判定については外観検査結果情報(1604)を用いることにより,高精度にマイクロパイプの位置を判定できる。
【0057】
なお,
図12中ダイAは欠陥の位置情報を持つが,半径rの円(2201)と重ならないので,ダイAの欠陥はマイクロパイプ以外のもの(異物その他)と推定できる。また,逆に欠陥の位置情報を持たないが,インゴット欠陥位置情報(1603)を持つダイについては,再度外観検査などを行なうことが考えられる。
【0058】
図11の処理(S1107)では,FAILとなったチップでも、欠陥位置が周辺ターミネーション領域最外周の外側のチップはPASSとする。そして,処理(S1108)で,欠陥有ダイ番号情報(1605)を出力する。なお,上の例では一度FAILとなったチップをPASSに変更しているが,もともとのインゴット欠陥位置情報(1603)あるいは外観検査結果情報(1604)の取得時に,位置情報の取得をチップの特定領域に限定するようにしてもよい。
【0059】
図2に戻り,その後の処理の説明を続ける。外観検査(S103)の後,公知のプロセスによってウェハ上に半導体デバイスが形成され(S104),所望の特性が得られているかを検査するウェハテスト工程(S105)が実施される。この結果,各ダイについて良品インデックス情報(良品位置)(1606)が生成されて,不良ダイ判定部(118)に送られる(112)。
【0060】
図13は,良品インデックス情報(1606)の一例を示す表図である。良品インデックス情報(1606)は,ロット番号(201),ウェハ番号(202),チップインデックス(501),および検査結果(701)のデータを含む。
【0061】
不良ダイ判定部(118)は,良品インデックス情報(1606)と位置情報照合演算部(117)で生成された欠陥有ダイ番号情報(1605)を参照し,良品インデックス情報(1606)で検査結果(701)が合格(PASS)となっているが,そのチップインデックス(501)が欠陥有ダイ番号情報(1605)に登録されているデータを検索する。そして、良品インデックス情報(1606)で,欠陥有ダイ番号情報(1605)に登録されているチップインデックス(501)に含まれているダイの検査結果(701)を不合格(FAIL)に書き換えて,最終的なGO/NOGO判定結果(1607)を生成する。
【0062】
図14は,GO/NOGO判定結果(1607)の一例である。
図11の良品インデックス情報(1606)の検査結果(701)の項が,欠陥有ダイ番号情報(1605)を参照することで修正され,判定結果(801)となっている。例えば
図13の良品インデックス情報(1606)の一行目「ウェハ番号1のチップインデックス05-06」はPASSになっているが、
図9の欠陥有ダイ番号情報(1605)の一行目に「ウェハ番号1のチップインデックス05-06」があるため,良品インデックス情報(1606)の一行目をPASSからFAILに書き換えてGO/NOGO判定結果(1607)を生成している。
【0063】
GO/NOGO判定結果(1607)は,インゴット欠陥情報データベース(116)に格納され,不良ダイマーク工程(S106)に送られ(113),不良ダイには不良品マークが打たれる。
【0064】
なお,この不良ダイマーク工程(S106)は必須ではない。他の好適な形態として,後続のピックアップ工程(S107)に判定結果を送付し,対象チップから除外する方法がある。さらに他の好適な形態としては,欠陥ありダイ番号を検査実施以前にウェハテスト工程(S105)に送り,検査結果に関わらず強制的に不合格判定をしてもよい。また欠陥ありダイ番号については,ウェハテスト(S105)を省略し,強制的に不合格判定することもまた,本発明の好適な実施形態である。
【0065】
ピックアップされた良品チップは,必要に応じてチップテスト(S108)を実施し,不良チップは除去される(S109)。この結果,最終合格チップが完成する。
【実施例2】
【0066】
図15により,本発明の別の好適な実施例を説明する。本実施例のウェハプロセス(104)までの工程と欠陥ありダイ番号を決定する位置情報照合演算部(117)までは実施例1と共通であるため,ここでは説明を省略する。本実施例では,実施例1(
図2)と比較し,良品位置を不良ダイ判定部(118)に送る(112)代わりに,電気特性データを送る(901)。そして,電気特性データと欠陥有ダイ番号情報(1605)から良品を判定する。
【0067】
そして,チップ区分判定結果を,ダイシング/ピックアップ工程(S107)に送る(902)。よって、本実施例では,チップ区分判定結果は不良ダイマーク工程(S106)には反映されない。すなわち,判定結果のフィードバック先が実施例1より後工程になる。これは不良の割合が小さい場合により適する。
【0068】
閉塞マイクロパイプを有するダイの中には,ウェハテスト(105)で見える劣化の程度がわずかで材料や製造工程によるばらつき範囲に収まり,通常の良品と区別ができないものが存在する。
【0069】
図16は,ウェハテストの検査値Aと検査値Bの散布図の例である。一般に検査値Aと検査値Bは相関があり,
図16の対角線上に分布したサンプルは正常である場合が多く、対角線から外れたサンプルは異常である場合がある。
【0070】
図16では,小さな黒点が閉塞マイクロパイプのないダイ,白抜きの丸が閉塞マイプロパイプを含むダイの結果である。“+”で表示されている点は,検査値Bでの判定の結果不良品となったものである。すなわち,マイクロパイプを含むダイの中には検査値Bに合格するものが含まれている。検査値Bの検査値Aへの依存性を考慮すれば,外れ量の大きなダイ群(1201)の特定は可能だが,外れ量の少ないダイ群(1202)は近傍にマイクロパイプのないダイがあるため,検査値AとBだけでは特定できない。またほとんどマイクロパイプの影響を受けていないダイ群(1203)も存在し,これも特定できない。欠陥有ダイ番号情報(1605)を用いることにより,これら特定不可能なマイクロパイプありダイを容易に特定可能である。
【0071】
本実施例は,ウェハテスト装置は不良ダイ判定部(118)に,合格不合格の判定結果ではなく,電気特性を送る(901)。
【0072】
図17は,電気特性のデータの一例を示す表図である。電気特性データ(1700)は,ロット番号(201),ウェハ番号(202),チップインデックス(501)で特定されるチップに対して、検査結果(1701)(1702)のデータを格納する。
【0073】
不良ダイ判定部(118)は,欠陥有ダイ番号情報(1605;
図9)を参照して,(1001)と(1002)がマイクロパイプを含むダイ,(1003)は含まないダイであることを知る。この結果と,検査値の分布中心からの偏差から,(1001)はダイ群(1201)に含まれるマイクロパイプ有ダイなので性能区分Z(不良品),(1002)はダイ群(1202)に含まれるマイクロパイプ有ダイなので性能区分B(製品出荷はしないが追加詳細検査を要する分類),(1003)はダイ群(1202)に含まれるがマイクロパイプを含まないので性能区分A,と判定される(
図11)。このように,本実施例では良/不良だけでなく検査値を利用した細かな区分けが可能となっている。
【0074】
図18は,判定結果を格納した区分判定結果(1800)の一例を示す表図である。ロット番号(201),ウェハ番号(202),チップインデックス(501)で特定されるチップに対して、判定結果(1801)のデータを格納する。
【0075】
この区分判定結果(1800)は,チップピックアップ工程(S107)に送られ,区分毎のトレーに収納される。このチップには,必要に応じてさらにチップテスト(S108)を実施して不良チップを除去し(S109),最終合格チップが完成する。
【0076】
なお,
図17の例で検査値はAおよびBの二つであるが,これに限るものではなく,一種類以上の任意の個数でも実施可能である。また
図15では検査値はウェハテストが出力したものを例示したが,パターン寸法検査結果などのウェハプロセス(S104)に含まれる工程検査結果,もしくは両方を参照するのも本発明の好適な実施例である。さらに,これらの検査結果は検査されるウェハロットや個別ウェハに固有の情報である必要はない。たとえば同一ロットに含まれる全ウェハの平均情報や,直近に検査した同一品種のロット内平均情報などを参照するのもまた,本発明の好適な実施例となる。
【実施例3】
【0077】
本実施例は,チップテスト(S108)でチップ区分分類(1307)を行う工程フローに対して欠陥有ダイ番号情報(1605)を適用したものである。
【0078】
図19に従って説明する。ここでチップテスト(S108)までの工程と,不良ダイ判定部(1304)までのデータ処理は実施例2(
図15)と同一のため省略する。
【0079】
不良チップ判定部(1306)は,まず,不良ダイ判定部(1304)より欠陥有ダイ番号情報(1605;
図9)とウェハテスト検査値(1700;
図17)を検査履歴情報として受け取る(1305)。この履歴情報は,ウェハ状態でのロット番号(201),ウェハ番号(202),およびチップインデックス(501)で管理されている。
【0080】
一方,チップテスト(S108)の結果は,チップが搭載されていたトレーのID情報(1401)とトレー内のポケット番号(1402)で管理されている。これら2種類の管理情報を照合するために,ピックアップ工程(107)からダイ/トレー対応情報が不良チップ判定部(1306)に送られる(1303)。
【0081】
図20は,ダイ/トレー対応情報(2000)の一例を示す表図である。ダイ/トレー対応情報(2000)は,ウェハ番号(201),チップインデックス(501),トレーID(1401)および,ポケット番号(1402)とが対応付けられている。ダイ/トレー対応情報(2000)は,通常ダイシング/ピックアップのための装置が自動的に生成する。
【0082】
ダイ/トレー対応情報(2000)を元に,欠陥有ダイ番号情報(1605)を含む検査履歴情報(1305)はトレーID(1401)とポケット番号(1402)とに対応付けられる。チップ電気特性(1301)と検査履歴情報(1305)に含まれる欠陥有ダイ番号情報(1605)とからチップ区分を決定する方法は,実施例2と同様である。
【0083】
チップ区分の決定結果は,チップ区分分類工程(S1307)に送られて区分に対応するトレーに格納される。この結果,最終合格チップが完成する。
【0084】
実施例3では,判定結果のフィードバック先が実施例2より後工程になる。これは不良の割合がさらに小さい場合により適する。
【0085】
以上で説明したように、本実施例では炭化ケイ素基板に対し,完成素子に対応する位置マークを形成後に外観検査を実施して得られる高精度の欠陥位置と,この炭化ケイ素基板と同一インゴットの基板のエッチピット観察で得られたインゴット欠陥位置情報とを用いて,閉塞マイクロパイプ位置を決定し,欠陥を含む半導体チップを特定して除去する。
【0086】
これにより,炭化ケイ素エピタキシャルウェハに存在する閉塞したマイクロパイプ欠陥を製造コストやスループットへの影響なく確実にかつ高位置精度で特定し,欠陥を含む半導体チップを除去する製造方法を提供することができる。
【0087】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の実施例の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0088】
管理サーバ(1000)、インゴット欠陥情報データベース(116)、製造・検査設備(1100)、処理装置(1001)、入出力装置(1002)、記憶装置(1003)、位置情報照合演算部(117)、不良ダイ判定部(118)