(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】吐水管の回動規制構造
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20220421BHJP
【FI】
E03C1/042 F
(21)【出願番号】P 2018130661
(22)【出願日】2018-07-10
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【氏名又は名称】岡田 全啓
(74)【代理人】
【識別番号】100167966
【氏名又は名称】扇谷 一
(72)【発明者】
【氏名】冨山 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中島 一彰
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-133096(JP,A)
【文献】特開2014-177807(JP,A)
【文献】特開2017-193923(JP,A)
【文献】特開2007-162284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の側面部を有する吐水管と、
前記吐水管が嵌装される水栓本体部と、
前記水栓本体部の吐出口の内周面に接するように配置される環状の回動規制部材と、
前記吐水管を前記水栓本体部に回動自在に連通接続するための固定ナットと、
を備える吐水管の回動規制構造であって、
前記吐水管において、前記吐水管の一方端側に吐水口が配置され、他方端側に前記吐水管の前記側面部の一部が軸方向に延びるように設けられる吐水管側規制部が配置され、
前記回動規制部材の内周面から、その内側に向かって突出するように形成される本体側規制部
と、
前記固定ナットにより締め付けられることで、前記吐水管に隙間なく当接させて前記吐水管と前記水栓本体部との水密を図るとともに、前記回動規制部材に当接させて前記回動規制部材を固定させるためのシール部材と、
を有し、
前記吐水管の回転運動に伴って前記吐水管側規制部が前記本体側規制部に当接することにより前記吐水管の回転運動が規制されることを特徴とする、吐水管の回動規制構造。
【請求項2】
円筒状の側面部を有する吐水管と、
前記吐水管が嵌装される水栓本体部と、
前記水栓本体部の吐出口の内周面に接するように配置される環状の回動規制部材と、
前記吐水管を前記水栓本体部に回動自在に連通接続するための固定ナットと、
を備える吐水管の回動規制構造であって、
前記吐水管において、前記吐水管の一方端側に吐水口が配置され、他方端側に前記吐水管の前記側面部の一部が軸方向に延びるように設けられる吐水管側規制部が配置され、
前記回動規制部材の内周面から、その内側に向かって突出するように形成される本体側規制部と、
前記固定ナットにより締め付けられることで、
前記水栓本体部に隙間なく当接させて前記水栓本体部と前記固定ナットとの水密を図るための第1のシール部材と、
前記吐水管に隙間なく当接させて前記吐水管と前記固定ナットとの間に水密を図るための第2のシール部材と
、
を有し、
前記回動規制部材が、前記第1のシール部材および前記第2のシール部材とは当接することなく前記水栓本体部に押圧されることで、前記吐水管の回動とともに前記回動規制部材が供回りすることなく前記回動規制部材が固定される供回り防止機構を備え
、
前記吐水管の回転運動に伴って前記吐水管側規制部が前記本体側規制部に当接することにより前記吐水管の回転運動が規制されることを特徴とする
、吐水管の回動規制構造。
【請求項3】
前記回動規制部材の中心部において、前記本体側規制部に接続された筒状部を備える、請求項1
または請求項
2に記載の吐水管の回動規制構造。
【請求項4】
前記回動規制部材は、樹脂により形成される、請求項1ないし請求項
3のいずれかに記載の吐水管の回動規制構造。
【請求項5】
前記吐水管側規制部の円弧の長さで、前記吐水管の回転する角度を規制する、請求項1ないし請求項
4のいずれかに記載の吐水管の回動規制構造。
【請求項6】
前記本体側規制部を複数設けて、前記吐水管の回転する角度を規制する、請求項1ないし請求項
5のいずれかに記載の吐水管の回動規制構造。
【請求項7】
前記本体側規制部の円弧の長さで、前記吐水管の回転する角度を規制する、請求項1ないし請求項
5のいずれかに記載の吐水管の回動規制構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓本体に挿嵌接続される吐水管の回動規制構造であって、特に、自在水栓に用いられる吐水管の回動規制構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自在水栓の用いられる吐水管の回動規制構造として、特許文献1に記載されるような吐水パイプ(吐水管)の回動規制構造が提案されている(特許文献1を参照)。特許文献1に記載の吐水パイプ(吐水管)の回動規制構造では、水栓本体に挿嵌接続される吐水パイプの回動規制構造であって、流体を流通させる流通孔と係止部材が固定される固定用孔とが設けられ該吐水パイプに装着される本体と、該固定用孔に対応する部位に該吐水パイプに設けられた取付用孔と、該固定用孔に固定されるとともに該取付用孔から該吐水パイプ外側に先端が突出される係止部材と、該吐水パイプを挿嵌接続するために該水栓本体に設けられるとともに、該係止部材の先端が係止される溝とを備えたことを特徴とする、吐水パイプの回動規制構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の吐水パイプの回動規制構造では、水栓本体の取付孔奥端側の内周面において、吐水パイプの挿嵌方向に沿ってキー溝を加工する必要がある。また、所定範囲において回動可能となるような回動規制を行うためには、キー溝でなく、吐水パイプの挿嵌接続軸周りに沿って所定範囲に亘って凹部を形成する必要がある。
ところが、既設されている自在水栓の水栓本体に対して、吐水パイプを回動規制するための構造を構築するために上述したようなキー溝や、吐水パイプの挿嵌接続軸周りに沿って所定範囲に亘って凹部を形成することは困難である。そのため、このような回動規制構造を有する自在水栓を設置するためには、回動規制構造が設けられた自在水栓に、水栓本体ごと取り替える必要があった。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、既設の自在水栓について、水栓本体を取り替えたり、水栓本体に対して加工を施したりすることなく、吐水管の回動規制構造を備える自在水栓を設置しうる吐水管の回動規制構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる吐水管の回動規制構造は、円筒状の側面部を有する吐水管と、吐水管が嵌装される水栓本体部と、水栓本体部の吐出口の内周面に接するように配置される環状の回動規制部材と、を備える吐水管の回動規制構造であって、吐水管において、吐水管の一方端側に吐水口が配置され、他方端側に吐水管の側面部の一部が軸方向に延びるように設けられる吐水管側規制部が配置され、回動規制部材の内周面から、その内側に向かって突出するように形成される本体側規制部を有し、吐水管の回転運動に伴って吐水管側規制部が本体側規制部に当接することにより前記吐水管の回転運動が規制されることを特徴とする、吐水管の回動規制構造である。
また、この発明にかかる吐水管の回動規制構造は、吐水管を水栓本体部に回動自在に連通接続するための固定ナットと、固定ナットにより締め付けられることで、吐水管に隙間なく当接させて吐水管と水栓本体部との水密を図るとともに、回動規制部材に当接させて回動規制部材を固定させるためのシール部材とを有することが好ましい。
さらに、この発明にかかる吐水管の回動規制構造は、吐水管を前記水栓本体部に回動自在に連通接続するための固定ナットと、固定ナットにより締め付けられることで、水栓本体部に隙間なく当接させて水栓本体部と固定ナットとの水密を図るための第1のシール部材と、吐水管に隙間なく当接させて吐水管と固定ナットとの間に水密を図るための第2のシール部材とを有し、回動規制部材が、第1のシール部材および第2のシール部材とは当接することなく水栓本体部に押圧されることで、吐水管の回動とともに回動規制部材が供回りすることなく回動規制部材が固定される供回り防止機構を備えることが好ましい。
さらにまた、この発明にかかる吐水管の回動規制構造は、回動規制部材の中心部において、本体側規制部に接続された筒状部を備えることが好ましい。
また、この発明にかかる吐水管の回動規制構造は、回動規制部材が、樹脂により形成されることが好ましい。
さらに、この発明にかかる吐水管の回動規制構造は、吐水管側規制部の円弧の長さで、吐水管の回転する角度を規制することが好ましい。
また、この発明にかかる吐水管の回動規制構造は、本体側規制部を複数設けて、吐水管の回転する角度を規制することが好ましい。
さらに、この発明にかかる吐水管の回動規制構造は、本体側規制部の円弧の長さで、吐水管の回転する角度を規制することが好ましい。
【0007】
この発明にかかる吐水管の回動規制構造によれば、吐水管において、吐水管の一方端側に吐水口が配置され、他方端側に吐水管の側面部の一部が軸方向に延びるように設けられる吐水管側規制部が配置され、回動規制部材の内周面から、その内側に向かって突出するように形成される本体側規制部を有し、吐水管の回転運動に伴って吐水管側規制部が本体側規制部に当接することにより前記吐水管の回転運動が規制されるような構造であるので、
既設の自在水栓について、水栓本体を取り替えたり、水栓本体に対して加工を施したりすることなく、吐水管の回動規制構造を備える自在水栓を設置しうる吐水管の回動規制構造
とすることができる。
また、この発明にかかる吐水管の回動規制構造によれば、吐水管を水栓本体部に回動自在に連通接続するための固定ナットと、固定ナットにより締め付けられることで、吐水管に隙間なく当接させて吐水管と水栓本体部との水密を図るとともに、回動規制部材に当接させて回動規制部材を固定させるためのシール部材とを有すると、吐水管と水栓本体部との水密を図るとともに、回動規制部材に当接させて回動規制部材を固定させることができる。
さらに、この発明にかかる吐水管の回動規制構造によれば、吐水管を前記水栓本体部に回動自在に連通接続するための固定ナットと、固定ナットにより締め付けられることで、水栓本体部に隙間なく当接させて水栓本体部と固定ナットとの水密を図るための第1のシール部材と、吐水管に隙間なく当接させて吐水管と固定ナットとの間に水密を図るための第2のシール部材とを有し、回動規制部材が、第1のシール部材および第2のシール部材とは当接することなく水栓本体部に押圧される供回り防止機構を備えると、吐水管の回動とともに回動規制部材が供回りすることを防止することができる。
また、さらに、この発明にかかる吐水管の回動規制構造によれば、回動規制部材の中心部において、本体側規制部に接続された筒状部を備えると、吐水管の回転運動にともなう吐水管の傾きを防止しうることができる。
さらに、この発明にかかる吐水管の回動規制構造によれば、回動規制部材が、樹脂により形成されると、回動規制部材をより確実に固定することができる。
また、この発明にかかる吐水管の回動規制構造によれば、吐水管側規制部の円弧の長さを変更すると、吐水管の回転する角度を規制することできる。
さらに、この発明にかかる吐水管の回動規制構造によれば、本体側規制部を複数設けると、吐水管の回転する角度を規制することができる。
また、この発明にかかる吐水管の回動規制構造は、本体側規制部の円弧の長さを変更すると、吐水管の回転する角度を規制することができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、既設の自在水栓について、水栓本体を取り替えたり、水栓本体に対して加工を施したりすることなく、吐水管の回動規制構造を備える自在水栓を設置しうる吐水管の回動規制構造を提供することができる。
【0009】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴及び利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は、この発明にかかる吐水管の回動規制構造を備える自在水栓の一例を示す正面図であり、(b)は、この発明にかかる吐水管の回動規制構造を備える自在水栓の一例を示す側面図である。
【
図2】(a)はこの発明の第1の実施の形態にかかる自在水栓の一例を示す分解斜視図であり、(b)はb部の部分拡大図であり、(c)はc部の部分拡大図であり、(d)はd部の部分拡大図であり、(e)はe部の部分拡大図である。
【
図3】この発明の第1の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造を示す自在水栓の部分拡大断面図である。
【
図4】この発明の第1の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造を備える自在水栓を示す
図3の線IV-IVにおける断面図である。
【
図5】(a)はこの発明の第2の実施の形態にかかる自在水栓の一例を示す分解斜視図であり、(b)はb部の部分拡大図であり、(c)はc部の部分拡大図であり、(d)はd部の部分拡大図であり、(e)はe部の部分拡大図である。
【
図6】(a)は、この発明の第2の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造を示す自在水栓の部分拡大正面図であり、(b)は、この発明の第2の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造を示す自在水栓の部分拡大断面図である。
【
図7】(a)はこの発明の第3の実施の形態にかかる自在水栓の一例を示す分解斜視図であり、(b)はb部の部分拡大図であり、(c)はc部の部分拡大図であり、(d)はd部の部分拡大図であり、(e)はe部の部分拡大図である。
【
図8】この発明の第3の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造を示す自在水栓の部分拡大断面図である。
【
図9】この発明の第3の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造を備える自在水栓を示す
図10の線IX-IXにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
図1(a)は、この発明にかかる吐水管の回動規制構造を備える自在水栓の一例を示す正面図であり、
図1(b)は、この発明にかかる吐水管の回動規制構造を備える自在水栓の一例を示す側面図である。
図2(a)はこの発明の第1の実施の形態にかかる自在水栓の一例を示す分解斜視図であり、
図2(b)はb部の部分拡大図であり、
図2(c)はc部の部分拡大図であり、
図2(d)はd部の部分拡大図であり、
図2(e)はe部の部分拡大図である。
図3は、この発明の第1の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造を示す自在水栓の部分拡大断面図である。
図4は、この発明の第1の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造を備える自在水栓を示す
図3の線IV-IVにおける断面図である。
【0013】
なお、以下において、
図1に示すように、水等の流体が吐出する方向を吐出方向と定義する。
【0014】
1.第1の実施の形態
本発明の第1の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Aは、
図1に示すように、たとえば、自在水栓10に用いられるものである。
【0015】
この自在水栓10は、吐水管20と、吐水管20が挿嵌接続される水栓本体部30とを備える。水栓本体部30の下部には、管ねじ12が突設される。管ねじ12は、自在水栓10が取付られる取付板Sに設けられた取付孔に挿通されてナット14が螺着される。これにより、水栓本体部30は、取付板S上に固定される。
また、水栓本体部30の側面には、操作ハンドル16が取り付けられる。そして、操作ハンドル16を回動操作することにより、水栓本体部30の内部に収容される切換弁(図示せず)を開閉駆動して、この吐水管20の先端からの吐水を吐出・停止させることができる。
【0016】
次に、本発明の第1の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Aについて、詳細に説明する。
【0017】
第1の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Aは、吐水管20を備える。
吐水管20は、吐水本体部30から吐水された水をその先端から吐水させるために設けられる。吐水管20は、吐水本体部30の吐出方向側に嵌装される。吐水管20は、円筒状であって、側面部22を有する。そして、吐水管20は、たとえば、略J字状に湾曲して形成される。すなわち、たとえば、
図1に示す吐水管20は、立形自在水栓における単水栓のものである。そして、吐水管20において、吐水管20の一方端側(吐出方向の側の端)に吐水口24が配置され、他方端側(吐出方向とは反対方向の側の端)に吐水管20の側面部22の一部が軸方向に延びるようにして設けられる吐水管側規制部26が配置される。
【0018】
吐水管側規制部26は、後述する水栓本体部30の吐出部32に配置される回動規制部材80Aの内周面に沿って、その軸周りに回動するように配置される。
吐水管側規制部26は、
図2(b)や
図4に示すように、吐水管20の他方端側における側面部22の一部が吐水管20の軸方向に延びるように連設されており、吐出方向に対して直交する断面において円弧形状に形成される。円弧形状に形成される吐水管側規制部26は、その円弧の一方側に第1の端部26aを有し、その円弧の他方側に第2の端部26bを有する。
吐水管20の回動しうる範囲は、吐出方向に直交する断面において円弧形状に形成される吐水管側規制部26の円弧の長さl
1によって調整することができる。すなわち、
図4に示すように、吐水管20の軸中心Cと第1の端部26aとを結ぶ直線と吐水管20の軸中心Cと第2の端部26bとを結ぶ直線のなす角θ
1の大きさによって、調整することができる。なす角θ
1は、180°であることが好ましい。吐水管側規制部26を形成するための加工が容易であるからである。この場合、吐水管側規制部26の吐出方向に対して直交する断面形状は、半円形状となる。
【0019】
また、吐水管20の他方端側には、その外周面に穿設された環状凹部(周溝)28を有している。
【0020】
水栓本体部30は、吐水管20を挿嵌接続させるために設けられる。水栓本体部30は、吐出方向側において、流体を吐出するための吐出部32が設けられる。吐出部32の吐出方向側には、吐出口32aが設けられる。そして、水栓本体部30の吐出部32には、吐水管20が固定ナット40Aおよび係止リング50を介して、回転自在に取り付けられている。
吐出部32の内周面側には、吐出口32aから吐出方向とは反対方向に向かって環状段部34が設けられる。また、吐出部32の外周面側には、雄ねじ部36が設けられる。
【0021】
図3に示すように、吐出部32の環状段部34の吐出方向側には係止リング50が配置される。この係止リング50は、吐水管20が水栓本体部30からその軸方向(吐水方向)への抜けを防止するために設けられる。
図2(d)に示すように、係止リング50は、環状部52を含み、環状部52の一方端側において、その内径方向に突設された環状の内方突部54と、その外径方向に突設された環状の外方突部56と、切欠部58とを有する。係止リング50の断面形状は、T形状である。また、この切欠部58により、この係止リング50は、径方向に拡大および縮小が可能である。内方突部54は、吐出管20の環状凹部28と嵌合しうる形状であり、外方突部56は、平板状に形成される。環状部52の内径は吐出管20の外径と同一である。また、環状部52の外径は、吐出部32の環状段部34の内径と略同一である。
係止リング50の外方突部56は、
図3に示すように、後述される固定ナット40Aの内面と吐出部32の吐出口32aにおける端面との間において圧着狭持される。それにより、吐水管20は水栓本体部30の吐出部32に対して抜け止めがなされる。また、外方突部56の外端縁は、固定ナット40Aの内周面に接するように配置される。
【0022】
図3に示すように、係止リング50が水栓本体部30の吐出部32に配置されたとき、係止リング50の吐出方向とは反対の方向側には、吐出部32の内周面に隙間なく接するように、第1のシール部材60が配置される。さらに、第1のシール部材60は、吐水管20の外周面に対して隙間なく接するように配置される。このように、第1のシール部材60は、吐水管20と水栓本体部30の吐出部32との水密を確保するために設けられる。
第1のシール部材60は、吐出部32の内周面側に設けられた環状段部34と吐水管20の外周面との間に形成される空洞部70に配置される。第1のシール部材60の内径は、吐水管20の外径と同一である。また、第1のシール部材60の外径は、吐出部32の環状段部34の内径と同一である。第1のシール部材60は、たとえば、水密を確保するため、弾性体であるゴム等により形成され、たとえば、Oリングが用いられる。
【0023】
さらに、
図3に示すように、吐出部32の内周面において、第1のシール部材60が配置されたとき、第1のシール部材60の吐出方向とは反対の方向側には、回動規制部材80Aが配置される。また、この回動規制部材80Aは、吐出部32の内周面に形成される環状段部34の吐出方向とは反対の方向側の面に接するように配置される。したがって、回動規制部材80Aは、第1のシール部材60と吐出部32の内周面に形成される環状段部34の吐出方向とは反対の方向の面とにより挟まれるようにして配置される。これにより、回動規制部材80Aは、吐出部32の環状段部34において固定される。
【0024】
回動規制部材80Aは、吐水管20の回動を規制するために設けられる。回動規制部材80Aは、吐出部32の内周面側に設けられた環状段部34と吐水管20の外周面との間に形成される空洞部70に配置される。
回動規制部材80Aは、
図2(e)および
図3に示すように、吐出部32の内周面側に設けられた環状段部34の内周面に接するように配置される環状部82と、環状部82の内周面から、その内側に向かって突出するように設けられる本体側規制部84とを有する。環状部82は、たとえば、金属により形成される。環状部82の外径は、吐出部32の内径と同一である。また、環状部82の内径は、吐出件20の外径よりも略大きい大きさである。
図7に示すように、本体側規制部84は、たとえば、第1の本体側規制部84aと第2の本体側規制部84bの2つ突設されている。第1の本体側規制部84aおよび第2の本体側規制部84bとは、たとえば、金属製のピンにより形成され、環状部82に内周面に対して突設される。
吐水管20の回動しうる範囲は、環状部82の内周面に対して配置される第1の本体側規制部84aおよび第2の本体側規制部84bの位置によって決定される円弧の長さl
2によって調整することができる。すなわち、
図4に示すように、吐水管20の軸中心Cと第1の本体側規制部84aとを結ぶ直線と吐水管20の軸中心Cと第2の本体側規制部84bとを結ぶ直線のなす角θ
2の大きさによって、調整することができる。
【0025】
固定ナット40Aは、吐水管20を水栓本体部30に回動自在に連通接続して固定するために設けられる。固定ナット40Aは、平面視多角形に形成される。より具体的には、固定ナット40Aは、吐水管20を水栓本体部30の吐出部32に、係止リング50を介して回動自在に連通接続して固定するために設けられる。固定ナット40Aは、いわゆる袋ナット状に形成される。そして、固定ナット40Aの内周面には、雌ねじ部42が形成される。また、固定ナット40Aおける吐出方向側には、吐水管20が挿通される開口孔44が設けられる。開口孔44の内径は、吐出管20の外径よりも略大きい大きさである。そして、固定ナット40Aが水栓本体部30の吐出部32に固定する場合は、この雌ねじ部42と水栓本体部30の吐出部32の外周面に形成される雄ねじ部36とが螺合することにより固定される。
【0026】
続いて、この発明の第1の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Aの組み付け方法について説明する。
【0027】
まず、固定ナット40Aを吐水管20に被嵌させる。そして、係止リング50を吐水管20に拡大させて嵌め込み、係止リング50の内方突部54を吐水管20の環状凹部(周溝)28に嵌合係止させる。続いて、係止リング50に当接させるように、第1のシール部材60を吐水管20に被嵌させる。
そして、回動規制部材80Aを水栓本体部30の吐出部32における環状段部34に、所定の吐水管20の回動する角度となるように配置する。
そうして、吐水管20の流入口側を水栓本体部30の吐出部32における流路中に差し込む。
【0028】
最後に、固定ナット40Aを水栓本体部30の吐出部32に螺合させる。
これにより、係止リング50は、固定ナット40Aの内面と吐出部32の吐出口32aにおける端面との間に圧着狭持されることになり、また、吐水管20は係止リング50によって抜け止めがなされる。
また、第1のシール部材60は、吐出部32の内周面側に設けられた環状段部34と吐水管20の外周面との間に形成される空洞部70に配置され、吐水管20と隙間なく密接し、水栓本体部30と隙間なく密接しているので、吐水管20と水栓本体部30との水密が確保される。
さらに、固定ナット40Aを水栓本体部30の吐出部32に螺合されることで、回動規制部材80Aが係止リング50の環状部52により押圧された第1のシール部材60と接して、吐出方向とは反対方向に押圧されるので、回動規制部材80Aが吐出部32の内部において固定される。
【0029】
このように、吐水管側規制部26は、吐水管20の他方端側において、吐出方向に直交する断面が円弧形状に形成され、水栓本体部30の吐出部32に配置され、その結果、吐水管側規制部26が、回動規制部材80Aの環状部82の軸周りに回動するように配置されるので、吐水管20の回転運動に伴って、吐水管側規制部26の第1の端部26aが、回動規制部材80Aの第1の本体側規制部84aに当接し、あるいは吐水管側規制部26の第2の端部26bが、回動規制部材80Aの第2の本体側規制部84bに当接することにより、吐水管20の回転運動(回動)が規制される。
なお、吐水管20の回動可能な範囲θ0は、θ0=360°-(θ1+θ2)の範囲である。
【0030】
第1の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Aによれば、既設の自在水栓について、水栓本体部30を取り替えたり、水栓本体部30に対して加工を施したりすることなく、回動規制部材80Aを水栓本体部30の吐出部32に配置させ、吐水管側規制部26を備えた吐水管20を水栓本体部30の吐出部32に嵌装することで、吐水管の回動規制構造100Aを備える自在水栓を設置することができる。これにより、既設の自在水栓に対して、容易に回動規制を備える自在水栓とすることができる。
【0031】
2.第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Bについて説明する。
図5(a)はこの発明の第2の実施の形態にかかる自在水栓の一例を示す分解斜視図であり、
図5(b)はb部の部分拡大図であり、
図5(c)はc部の部分拡大図であり、
図5(d)はd部の部分拡大図であり、
図5(e)はe部の部分拡大図である。
図6(a)は、この発明の第2の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造を示す自在水栓の部分拡大正面図であり、
図6(b)は、この発明の第2の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造を示す自在水栓の部分拡大断面図である。
【0032】
なお、この第2の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Bを構成する自在水栓10は、第1の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Aを構成する自在水栓10と共通する部分には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
吐水管20は、吐水本体部30から吐水された水をその先端から吐水させるために設けられる。この吐水管20は、第1の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Aにおいて用いられるものと同様の構成を備えるので、その詳細な説明を省略する。
【0034】
水栓本体部30は、吐水管20を挿嵌接続させるために設けられる。水栓本体部30は、吐出方向側において、流体を吐出するための吐出部32が設けられる。すなわち、水栓本体部30の吐出部32には、吐水管20が固定ナット40Bおよび係止リング50を介して、回転自在に取り付けられている。
吐出部32の内周面側には、環状段部34が設けられる。また、吐出部32の外周面側には、雄ねじ部36が設けられる。
【0035】
図6(b)に示すように、吐出部32の環状段部34の吐出方向側には係止リング50’が配置される。係止リング50’は、吐水管20が水栓本体部30から抜けることを防止するために設けられる。この係止リング50’は、
図5(d)に示すように、第1の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Aにおいて用いられるものと、外方突部56の外方に延びる大きさが異なる。また、
図6(b)に示すように、係止リング50’の外方突部56の一方面は、吐出部32の吐出口32aにおける端面に接するように配置されるとともに、外方突部56の他方面は、後述される座金64に接するように配置される。
【0036】
図6(b)に示すように、水栓本体部30の吐出部32における吐出口32aの外周面には、その外周面に隙間なく接するように、第1のシール部材60が配置される。第1のシール部材60は、水栓本体部30の吐出部32と固定ナット40Bとの水密を確保するために設けられる。
第1のシール部材60は、吐出部32の吐出方向側における外周面と、後述する固定ナット40Bの内周面に形成される環状溝部48との間に形成される空洞部72に配置される。第1のシール部材60の内径は、吐出部32の吐出方向側における吐出口32aの外径と同一である。また、第1のシール部材60の外径は、後述する固定ナット40Bの環状溝部48の内径と同一である。第1のシール部材60は、たとえば、弾性体であるゴム等により形成され、たとえば、Oリングが用いられる。
【0037】
さらに、
図6(b)に示すように、吐出部32の内周面において、係止リング50の吐出方向とは反対の方向には、回動規制部材80A’が配置される。また、この回動規制部材80A’は、吐出部32の内周面に形成される環状段部34の吐出方向とは反対の方向の面に接するように配置される。したがって、回動規制部材80A’は、係止リング50と吐出部32の内周面に形成される環状段部34の吐出方向とは反対の方向の面とにより挟まれるようにして配置される。これにより、回動規制部材80A’は、吐出部32の環状段部34において固定される。
【0038】
回動規制部材80A’は、吐水管20の回動を規制するために設けられる。回動規制部材80Aは、吐出部32の内周面側に設けられた環状段部34と吐水管20の外周面との間に形成される空洞部70に配置される。この回動規制部材80A’は、第1の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Aにおいて用いられる回動規制部材80Aと、高さ方向の大きさが異なる以外は、同様の構成を備えるので、その詳細な説明を省略する。
【0039】
固定ナット40Bは、吐水管20を水栓本体部30の吐出部32に、係止リング50を介して固定するために設けられる。固定ナット40Bは、いわゆる袋ナット状に形成される。固定ナット40Bは、平面視多角形に形成される。そして、
図5(c)に示すように、固定ナット40Bおける吐出方向側には、吐水管20が挿通される開口孔44が設けられる。開口孔44の内径は、吐出管20の外径よりも略大きい大きさである。また、固定ナット40Bの内周面には、吐出方向側からその反対方向に向かって、第1の環状段部46a、第2の環状段部46bおよび環状溝部48が形成される。第2の環状段部46bの内径は、第1の環状段部46aの内径よりも大きく形成される。また、環状溝部48の内径は、第2の環状段部46bの内径よりも大きく形成される。
また、固定ナット40Bの環状溝部48が形成される位置から、さらに吐出方向とは反対の方向側の内周面において、雌ねじ部42が形成される。そして、固定ナット40Bが水栓本体部30の吐出部32に固定する場合は、この雌ねじ部42と水栓本体部30の吐出部32の外周面に形成される雄ねじ部36とが螺合することにより固定される。
【0040】
第1の環状段部46aには、
図6(b)に示すように、第2のシール部材62が配置される。また、第2の環状段部46bには、座金64が配置される。さらに、上述したように、環状溝部48には、第1のシール部材60が配置される。
【0041】
第2のシール部材62は、第1の環状段部46aの内周面に隙間なく接するように配置される。さらに、第2のシール部材62は、吐水管20に対して隙間なく接するように配置される。このように、第2のシール部材62は、吐水管20と固定ナット40Bとの水密を確保するために設けられる。
第2のシール部材62は、固定ナット40Bの内周面側に設けられた第1の環状段部46aと吐水管20の外周面との間に形成される空洞部74に配置される。第2のシール部材62の内径は、吐出管20の外径と同一である。また、第2のシール部材62の外径は、固定ナット40Bの第1の環状段部46aの内径と同一である。第2のシール部材62は、たとえば、弾性体であるゴム等により形成され、たとえば、Uパッキンが用いられる。第2のシール部材62としてUパッキンが用いられる場合、そのUパッキンの開いている方向は、吐出方向とは反対方向となるように空洞部74に配置される。
【0042】
座金64は、環状に形成される。座金64は、
図6(b)に示すように、第2の環状段部46bの内周面に配置される。そして、座金64の一方面は、その全面が係止リング50’に接するように配置される。したがって、座金64は、第2の環状段部46bと係止リング50’との間に介在するように配置される。座金64の外径は、後述する固定ナット40Bの第2の環状段部46bの内径よりも略小さい大きさであり、座金64の内径は、吐水管20の外径よりも略大きい大きさである。
【0043】
続いて、この発明の第2の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Bの組み付け方法について説明する。
【0044】
まず、固定ナット40Bを吐水管20に被嵌させる。そして、吐水管20の流入側から固定ナット40Bの第1の環状段部46aに第2のシール部材62を嵌め込み、続いて、固定ナット40Bの第2の環状段部46bに座金64の吐水管20に嵌め込む。さらに、係止リング50を吐水管20に拡大させて吐水管20に嵌め込み、係止リング50の内方突部54を吐水管20の環状凹部(周溝)28に嵌合係止させる。
【0045】
続いて、第1のシール部材60を水栓本体部30の吐出部32の吐出側における外周面に被嵌させる。そして、さらに、回動規制部材80A’を水栓本体部30の吐出部32における環状段部34に、所定の吐水管20の回動する角度となるように配置する。
そうして、吐水管20の他方端側を水栓本体部30の吐出部32の流路中に差し込む。
【0046】
最後に、固定ナット40Bを水栓本体部30の吐出部32に螺合させる。
これにより、係止リング50は、固定ナット40Bの第2の環状段部46bに配置される座金64と吐出部32の吐出口32aにおける端面との間に圧着狭持されることになり、吐水管20は係止リング50によって抜け止めがなされる。
また、第1のシール部材60は、吐出部32の外周面と、固定ナット40Bの内周面に形成される環状溝部48との間に形成される空洞部72に配置され、水栓本体部30と隙間なく密接し、固定ナット40Bと隙間なく密接しているので、水栓本体部30と固定ナット40Bとの水密が確保される。
さらに、第2のシール部材62は、吐水管20の外周面と固定ナット40Bの第1の環状段部46aとの間に形成される空洞部74に配置され、吐水管20と隙間なく密接し、固定ナット40Bと隙間なく密接しているので、吐水管20と固定ナット40Bとの水密が確保される。
また、固定ナット40Bを水栓本体部30の吐出部32に螺合されることで、回動規制部材80Aが座金64を介してその一方面の全面により押圧された係止リング50の環状部52により、吐出方向とは反対方向に押圧されて、回動規制部材80A’が吐出部32の内部において固定される。
【0047】
第2の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Bについても、吐水管20の他方端側において、吐出方向に直交する断面において円弧形状に吐水管側規制部26が形成され、軸周りに回動するように水栓本体部30の吐出部32に配置され、その吐水管側規制部26が、回動規制部材80A’の環状部82の内部に嵌装さるように配置されるので、吐水管20の回転運動に伴って、吐水管側規制部26の第1の端部26aが、回動規制部材80A’の第1の本体側規制部84aに当接し、あるいは吐水管側規制部26の第2の端部26bが、回動規制部材80A’の第2の本体側規制部84bに当接することにより、吐水管20の回転運動(回動)が規制される。
なお、吐水管20の回動可能な範囲θ0は、θ0=360°-(θ1+θ2)の範囲である。
【0048】
また、第2の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Bは、回動規制部材80A’が吐水管20の回転運動に伴って、供回りすることを防止するとも回り防止機構を備える。すなわち、吐水管の回動規制構造100Bにおいて、固定ナット40Bにより螺合されたとき、回動規制部材80A’は、第1のシール部材60および第2のシール部材62とは当接することなく水栓本体部30の吐出部32に押圧されることで、第1のシール部材60および第2のシール部材62の動きが、回動規制部材80A’には伝わらない機構となっており、吐水管20の回動とともに回動規制部材80A’が供回りすることなく回動規制部材80A’が固定される。
【0049】
この吐水管の回動規制構造100Bは、第1の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Aと同様の効果を奏するとともに、次の効果も奏する。
すなわち、吐水管の回動規制構造100Bによれば、吐水管20の回転運動が規制されるとともに、回動規制部材80A’が第1のシール部材60および第2のシール部材62とは当接することなく吐出部32に配置され、そして、固定ナット40Bにより締め付けられた座金64を介して係止リング50が吐出方向とは反対方向に押圧され、それにより回動規制部材80A’が、係止リング50が押圧されることで固定されるような構成を有することにより、吐水管20の軸周りの回転運動にともなう回動規制部材80A’の供回りを防止することができる。
【0050】
3.第3の実施の形態
次に、本発明の第3の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Cについて説明する。
図7(a)はこの発明の第3の実施の形態にかかる自在水栓の一例を示す分解斜視図であり、
図7(b)はb部の部分拡大図であり、
図7(c)はc部の部分拡大図であり、
図7(d)はd部の部分拡大図であり、
図7(e)はe部の部分拡大図である。
図8この発明の第3の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造を示す自在水栓の部分拡大断面図である。
図9は、この発明の第3の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造を備える自在水栓を示す
図10の線IX-IXにおける断面図である。
【0051】
なお、この第3の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Cは、第2の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Bと比較して、回動規制部材80Bの構造が異なることを除いて、共通である。したがって、
図5および
図6に示した吐水管の回動規制構造100Bと同一部分には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
第3の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Cが備える回動規制部材80Bは、吐水管20の回動を規制するために設けられる。回動規制部材80Bは、たとえば、樹脂により一体に形成される。回動規制部材80Bは、
図8に示すように、吐出部32の内周面側に設けられた環状段部34と吐水管20の外周面との間に形成される空洞部70に配置される。
回動規制部材80Bは、
図7(e)および
図8に示すように、吐出部32の内周面側に設けられた環状段部34の内周面に接するように配置される環状部82と、環状部82の内周面から、その内側に向かって突出するように形成される本体側規制部84とを有する。また、環状部82の中心部において、筒状部86が本体側規制部84に接続して配置される。環状部82の外径は、吐出部32の内径と同一である。また、環状部82の内径は、吐出件20の外径よりも略大きい大きさである。さらに、本体側規制部84が配置される範囲を除く環状部82の内周面と筒状部86の外周面との間の空間に回動用開口部88が形成される。したがって、回動用開口部88の幅は、環状部82の内径と筒状部86の外径の大きさにより決定される。このように、吐水管20は、係止リング50’により保持されるとともに、吐水管20の他方端側に設けられる吐水管側規制部26が、回動規制部材80Bの回動用開口部88に沿って回動可能に配置されている。
また、筒状部86の吐出方向における高さは、環状部82の高さよりも大きいことが好ましい。
【0053】
本体側規制部84は、環状部82の内周面において、その円周方向に沿って所定の長さの円弧形状に形成される。そして、円弧形状に形成される本体側規制部84の一方端側に第1の当接部85aが形成され、本体側規制部84の他方端側に第2の当接部85bが形成される。
吐水管20の回動しうる範囲は、本体側規制部84の第1の当接部85aと第2の当接部85bの位置によって決定される円弧の長さl
3によっても調整することができる。すなわち、
図9に示すように、吐水管20の軸中心Cと第1の当接部85aとを結ぶ直線と吐水管20の軸中心Cと第2の当接部85bとを結ぶ直線のなす角θ
3の大きさによって、調整することができる。したがって、第1の当接部85aは、第1の本体側規制部84aと同等の機能を有し、第2の当接部85bは、第2の本体側規制部84bと同等の機能を有する。
【0054】
なお、この発明の第3の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Cの組み付け方法は、第2の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Bと、組み付けられる回動規制部材80A’が回動規制部材80Bであることを除き同様であるので、その説明を省略する。
【0055】
第3の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Cについても、吐水管20の他方端側において、吐出方向に直交する断面において円弧形状に吐水管側規制部26が形成され、軸周りに回動するように水栓本体部30の吐出部32に配置され、その吐水管側規制部26が、回動規制部材80Bの環状部82の内部に嵌装さるように配置されるので、吐水管20の回転運動に伴って、吐水管側規制部26の第1の端部26aが、回動規制部材80Bの第1の当接部85aに当接し、あるいは吐水管側規制部26の第2の端部26bが、回動規制部材80Bの第2の当接部85bに当接することにより、吐水管20の回転運動(回動)が規制される。
なお、吐水管20の回動可能な範囲θ0は、θ0=360°-(θ1+θ3)の範囲である。
【0056】
この吐水管の回動規制構造100Cは、第1の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Aおよび第2の実施の形態にかかる吐水管の回動規制構造100Bと同様の効果を奏するとともに、次の効果も奏する。
すなわち、この吐水管の回動規制構造100Cによれば、吐水管20が、係止リング50’で保持されるだけでなく、吐水管側規制部26が回動規制部材80Bの環状部82の内周面と筒状部86の外周面との間の空間に形成される回動用開口部88に配置され、吐水管20は、回動用開口部88に沿って回動するので、その吐水管20の回転運動により吐水管20が傾いても吐水管側規制部26が筒状部86に接することで、吐水管20の傾きが抑制される。
【0057】
また、この吐水管の回動規制構造100Cによれば、回動規制部材80Bが樹脂で形成されると、係止リング50と回動規制部材80Bとが当接したとき、その当接面の摩擦力がより増加するので、回動規制部材80Bをより確実に固定することができる。
【0058】
以上のように、本発明の実施の形態は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施の形態に対し、機序、形状、材質、数量、位置又は配置等に関して、様々の変更を加えることができるものであり、それらは、本発明に含まれるものである。
【0059】
すなわち、たとえば、第1の実施の形態かかる吐水管の回動規制構造100Aに、回動規制部材80Bと同様の構造の回動規制部材が配置されるようにしてもよい。
【0060】
また、吐水管の回動規制構造100A、100Bおよび100Cを備える自在水栓10に用いられる吐水管20の形状は、立形自在水栓に対応するものであるが、これに限られず、横形自在水栓等、他の吐水管20の形状を備える自在水栓にも適用しうる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
この発明にかかる吐水管の回動規制構造は、たとえば、既設の自在水栓に対する回動規制をさせうる構造として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 自在水栓
12 管ねじ
14 ナット
16 操作ハンドル
20 吐水管
22 側面部
24 吐水口
26 吐水管側規制部
26a 第1の端部
26b 第2の端部
28 環状凹部
30 水栓本体部
32 吐出部
34 環状段部
36 雄ねじ部
40A、40B 固定ナット
42 雌ねじ部
44 開口孔
46a 第1の環状段部
46b 第2の環状段部
48 環状溝部
50、50’ 係止リング
52 環状部
54 内方突部
56 外方突部
58 切欠部
60 第1のシール部材
62 第2のシール部材
64 座金
70、72、74 空洞部
80A、80A’、80B 回動規制部材
82 環状部
84 本体側規制部
84a 第1の本体側規制部
84b 第2の本体側規制部
85a 第1の当接部
85b 第2の当接部
86 筒状部
88 回動用開口部
100A、100B、100C 吐水管の回動規制構造
S 取付板
C 吐水管の軸中心
l1 吐水管側規制部の円弧の長さ
l2 第1の本体側規制部および第2の本体側規制部の位置によって決定される円弧の長さ
l3 第1の当接部と第2の当接部の位置によって決定される円弧の長さ
θ1 吐水管の軸中心と第1の端部とを結ぶ直線と吐水管の軸中心と第2の端部とを結ぶ直線のなす角
θ2 吐水管の軸中心と第1の本体側規制部とを結ぶ直線と吐水管の軸中心と第2の本体側規制部とを結ぶ直線のなす角
θ3 吐水管の軸中心と第1の当接部とを結ぶ直線と吐水管の軸中心と第2の当接部とを結ぶ直線のなす角