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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】消防ホース
(51)【国際特許分類】
   A62C 33/00 20060101AFI20220421BHJP
   F16L 11/12 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
A62C33/00 C
F16L11/12 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018167124
(22)【出願日】2018-09-06
(65)【公開番号】P2020039422
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】桝谷 徹
(72)【発明者】
【氏名】水谷 誠惇輝
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02234042(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0184619(US,A1)
【文献】特開2014-214841(JP,A)
【文献】特開平08-071172(JP,A)
【文献】特表2016-538486(JP,A)
【文献】特開2017-049650(JP,A)
【文献】特開2005-143997(JP,A)
【文献】特表2007-511383(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0199700(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 27/00 - 99/00
F16L 9/00 - 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース本体と、該ホース本体の両端部にそれぞれ取り付けられた一対の雄継手と雌継手からなる連結金具とを有し、前記雌継手の外周上に円環状の保護バンドが付設された消防ホースにおいて、前記保護バンドの内部にRFID用のIDタグが設置されていることを特徴とする消防ホース。
【請求項2】
前記IDタグが電源を持たないパッシブ型タグであることを特徴とする請求項1に記載の消防ホース。
【請求項3】
前記IDタグが前記保護バンドの内周面に形成された段差部に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の消防ホース。
【請求項4】
前記IDタグが樹脂により被覆された状態で前記段差部に固定されていることを特徴とする請求項3に記載の消防ホース。
【請求項5】
前記IDタグが前記保護バンドの内部に埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の消防ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防ホースに関し、更に詳しくは、効率的なホース管理を行うと共に、ホースの使用時におけるIDタグの損傷を防止することを可能にした消防ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
消防ホースは使用の有無にかかわらず経時的に劣化するため、所定の耐用年数が設定されている。保守点検者は、ホース上に印字された製造年月を確認する必要があるため、その確認作業には手間と時間が掛かる。また、ホース上に印字された製造年月はホースの使用に伴って消滅してしまう場合がある。そのため、印字された情報に基づいてホース管理を効率良く行うことは困難である。
【0003】
これに対して、効率的なホース管理を行うために、ホース本体の両端部にそれぞれ連結金具を取り付け、ホース本体の端部の外周側に筒状の袴を設けた消防ホースにおいて、ホース本体と袴との間の部位にRFID用のIDタグが配置されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。上述した特許文献1に記載の消防ホースによれば、IDタグを利用してホース管理を効果的に行うことができる。しかしながら、消防ホースの使用時にはホース本体が伸び縮みするため、そうしたホース本体の変形によりIDタグが損傷するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4175471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、効率的なホース管理を行うと共に、ホースの使用時におけるIDタグの損傷を防止することを可能にした消防ホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の消防ホースは、ホース本体と、該ホース本体の両端部にそれぞれ取り付けられた一対の雄継手と雌継手からなる連結金具とを有し、前記雌継手の外周上に円環状の保護バンドが付設された消防ホースにおいて、前記保護バンドの内部にRFID用のIDタグが設置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、ホース本体と、そのホース本体の両端部にそれぞれ取り付けられた一対の雄継手と雌継手からなる連結金具とを有し、雌継手の外周上に円環状の保護バンドが付設された消防ホースにおいて、保護バンドの内部にRFID用のIDタグが設置されているので、リーダライタで読み取るだけの簡単な操作により、効率的なホース管理を行うことができる。また、保護バンドは雌継手の外周に密着して雌継手を保護する機能を有しており、ホースの使用時においても耐久性に優れているため、その保護バンドの内部に配置されたIDタグの損傷を防止することができる。
【0008】
本発明では、IDタグは電源を持たないパッシブ型タグであることが好ましい。パッシブ型タグの場合、電源を内蔵するアクティブ型タグに比べてIDタグの寸法を小さくすることができるので、保護バンドの耐久性を過度に低下させることがない。また、電源(電池)を必要としないため、長期間にわたって効率的なホース管理を行うことができる。
【0009】
本発明では、IDタグは保護バンドの内周面に形成された段差部に配置されていることが好ましい。これにより、IDタグを保護バンドに固定する作業が容易になり、ホースの生産性を向上させることができる。
【0010】
本発明では、IDタグが樹脂により被覆された状態で段差部に固定されていることが好ましい。IDタグを樹脂により被覆することで、IDタグに防水性を付加することができると共に、IDタグの周辺に配置された金属製部品との電波干渉を回避することができる。
【0011】
本発明では、IDタグは保護バンドの内部に埋設されていることが好ましい。IDタグを保護バンドの内部に埋設することで、IDタグを水から保護することができると共に、Dタグの周辺に配置された金属製部品との電波干渉を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態からなる消防ホースの両端部を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態からなる消防ホースの連結金具を一部断面にして示す正面図である。
図3】本発明の実施形態からなる消防ホースの保護バンドの一例を示す斜視図である。
図4図2の保護バンドの一部を切り欠いて示す断面図である。
図5】本発明の実施形態からなる消防ホースの保護バンドの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。 図1は本発明の実施形態からなる消防ホースを示すものである。図2は本発明の実施形態からなる消防ホースの連結金具を示すものである。図3及び図4は本発明の実施形態からなる消防ホースの保護バンドを示すものである。なお、図1は、本実施形態の消防ホースにおいてホース本体の長手方向の中間部分を省略して示している。
【0014】
図1及び図2に示すように、本実施形態の消防ホース10において、ホース本体1の両端部にそれぞれ差込式の連結金具2が取り付けられている。この連結金具2は一対の金属製の雄継手3と雌継手4から構成される。これら雄継手3と雌継手4は、それぞれ複数の構成部品を含んでいる。雄継手3及び雌継手4には、それぞれ段状のホース装着部3a,4aが設けられており、ホース装着部3a,4aにホース本体1の両端部がそれぞれ外挿されている。ホース装着部3a,4aに対してホース本体1を固定する方法として、例えば、ホース本体1の外側にワイヤを連続的に巻き付ける方法や、金属製リングにより外側から圧着する方法、ホース本体1の内側に金属製リングを挿入し、この金属製リングを機械的に押し広げる方法を適宜用いることができる。
【0015】
一方の消防ホースの雄継手3を他方の消防ホースの雌継手4に差し込むことによって、雄継手3の先端部3bと雌継手4のつめ4bとが嵌合し、一方の消防ホースと他方の消防ホースとを連結することができる。その際に、雌継手4のゴムパッキン4cが雄継手3の外周面を押すことによって、雄継手3と雌継手4の連結部における気密性が確保される。このような連結作業を繰り返し行なうことで複数本の消防ホースを1本の連続したホースとして使用することができる。一方、雄継手3と雌継手4とが連結された状態において、雄継手3の先端部3bに向かって押し輪3cをスライドさせることによって、押し輪3cが雌継手4のつめ4bを押し上げるので、雄継手3を引き抜くことで雄継手3と雌継手4との結合を解除することができる。このように消防ホース10は結合及び解除を容易に行うことできる。
【0016】
上記消防ホースにおいて、雌継手4の外周上には円環状の保護バンド5が付設されている。保護バンド5は、雌継手4の保護のためのゴム製の部材であり、ホースの使用時において耐久性に優れた特性を有している。この保護バンド5の内部には、ホースの情報(データ)を入力することができるRFID用のIDタグ6が貼り付けられている。IDタグ6が保護バンド5の内部に配置されることで、IDタグ6が外部障害物に直接に接触しないように保護することができる。
【0017】
本発明において、RFID(Radio Frequency-Identification:電波方式認識)とは、アンテナとコントローラとを有するリーダライタと、データを記憶するICチップとデータを非接触で送受信するアンテナとを回路基板上に有するIDタグとから構成され、無線方式によりデータを交信可能な自動認識技術をいう。RFID用のIDタグには、タグ自身が電源を内蔵して自ら電波を飛ばすアクティブ型タグと、タグ自身が電源を内蔵せずに、リーダライタ側が接近したときの電磁波により誘電して電波を飛ばすようにしたパッシブ型タグとがある。本発明に使用するIDタグ6には、アクティブ型タグ又はパッシブ型タグのいずれかを適宜使用することができる。
【0018】
IDタグ6は、円環状の保護バンド5の内部に配置されることから、保護バンド5の形状に沿うように、硬質な材料ではなく柔軟性に優れた軟質な材料により覆われていることが好ましい。具体的には、IDタグ6を被覆する材料として紙、合成樹脂、合成ゴムを用いることができる。合成樹脂としてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)を例示することができ、合成ゴムとしてはウレタンゴム、シリコーンゴムを例示することができる。
【0019】
IDタグ6に入力するホースの情報として、ホースの品名、口径、使用圧力、届出番号、製造年月、購入年月、所属消防署、積載消防車番号を例示することができる。
【0020】
図3及び図4に示すように、保護バンド5の内周面5aには凹部となる段差部50が形成され、この段差部50にIDタグ6が配置されている。図3及び図4において、段差部50は保護バンド5の周方向に沿って湾曲した形状を有している。段差部50は、保護バンド5の耐久性を過度に低下させないために、保護バンド5の寸法に対して、内周面5a上の周方向長さを1/9~1/3とし、幅(保護バンド5の軸方向に対する長さ)を1/6~1/2とし、深さ(保護バンド5の径方向に対する長さ)を1/5~1/2とすると良い。また、IDタグ6は、雌継手4の金属部分との電波干渉を防ぐため、雌継手4の外周面から2mm以上離間して配置されていることが望ましい。また、IDタグ6は、その全ての側面が樹脂7により被覆されている。この場合、IDタグ6に対して高い防水性を付加することができる。
【0021】
なお、段差部50を有する保護バンド5は、段差部50に対応する凸部を有する金型を用いて成形する、或いは保護バンド5を製造した後にその内周面5aの一部を除去することにより得ることができる。また、IDタグ6は、接着剤を介して保護バンド5に固定しても良く、或いは加硫接着により保護バンド5に固定しても良い。更に、IDタグ6を樹脂7で被覆して段差部50と同等の形状にしたIDタグ6を用いて、段差部50に嵌合させて配置しても良い。この場合、接着剤を用いる必要がないため、生産性を向上させることができる。上述したいずれの場合であっても、IDタグ6が配置された保護バンド5の内周面5aは平滑に形成される。
【0022】
上述した消防ホースでは、ホース本体1と、ホース本体1の両端部にそれぞれ取り付けられた一対の雄継手3と雌継手4からなる連結金具2とを有し、雌継手4の外周上に円環状の保護バンド5が付設された消防ホースにおいて、保護バンド5の内部にRFID用のIDタグ6が設置されているので、リーダライタで読み取るだけの簡単な操作により、効率的なホース管理を行うことができる。また、保護バンド5は雌継手4の外周に密着して雌継手4を保護する機能を有しており、ホースの使用時においても耐久性に優れているため、その保護バンド5に配置されたIDタグ6の損傷を防止することができる。
【0023】
更に、大規模な火災現場には複数の消防署のポンプ車が集まることが多く、消火作業を行うにあたって他の消防署のホースと組み合わせ、ホースを延長して使用する場合があり、その際にはホースの取り違えが生じることがある。これに対して、本発明に係る消防ホースを用いれば、上述のような一度に多数のホースが存在する場合であっても正確かつ迅速にホースの情報を読み取ることができるため、ホースの取り違えを効果的に防止することができる。
【0024】
上記消防ホースにおいて、IDタグ6は電源を持たないパッシブ型タグであることが好ましい。パッシブ型タグの場合、電源を持たないためアクティブ型タグに比べてIDタグ6の寸法を小さくすることができるので、保護バンド5の耐久性を過度に低下させることがない。また、電源(電池)を必要としないため、長期間にわたって効率的なホース管理を行うことができる。
【0025】
また、IDタグ6は保護バンド5の内周面5aに形成された段差部50に配置されていると良い。このようにIDタグ6を段差部50に配置することで、IDタグ6を保護バンド5に固定する作業が容易になり、ホースの生産性を向上させることができる。
【0026】
更に、IDタグ6は樹脂7により被覆された状態で段差部50に固定されていると良い。IDタグ6を樹脂7により被覆することで、IDタグ6に防水性を付加することができると共に、IDタグ6の周辺に配置された金属製部品との電波干渉を回避することができる。
【0027】
図5は本発明の実施形態からなる消防ホースの保護バンドの変形例を示すものである。図5に示すように、IDタグ6は保護バンド5の内部に埋設されている。即ち、IDタグ6は、保護バンド5の内周面5a及び外周面5bと離間して配置されている。特に、保護バンド5の耐久性を十分に確保するため、IDタグ6は保護バンド5の径方向の略中央部に配置されていると良い。上述した保護バンド5は、保護バンド5用の未加硫ゴム材にIDタグ6を埋設した後、その未加硫ゴム材を加硫することによって得ることができる。この場合、保護バンド5用の未加硫ゴム材を加硫する際に高温になるため、それに埋設されるIDタグ6は耐熱性と柔軟性に優れた材料から構成される。
【0028】
上述した消防ホースでは、IDタグ6を保護バンド5の内部に埋設しているので、IDタグ6を水から保護することができると共に、IDタグ6の周辺に配置された金属製部品との電波干渉を回避することができる。
【0029】
図3及び図4の実施形態では、段差部50が保護バンド5の周方向に沿って湾曲した形状を有する例を示したが、これに限定されるものではなく、段差部50はIDタグ6を収容することができる寸法や形状を適宜用いることができる。
【0030】
また、図4の実施形態では、IDタグ6の全ての側面が樹脂7により被覆されている例を示したが、これに限定されるものではなく、IDタグ6の少なくとも径方向内側の側面(図4の側面6a)が樹脂7により覆われていれば良い。例えば、IDタグ6の径方向内側の側面のみを樹脂7で被覆した場合、樹脂7で被覆する側面を減らすことができるので、生産性の向上を図ることができる。また、図4の場合と同様に、IDタグ6に防水性を付加することができると共に、IDタグ6の周辺に配置された金属製部品との電波干渉を回避することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 ホース本体
2 連結金具
3 雄継手
4 雌継手
5 保護バンド
6 IDタグ
10 消防ホース
図1
図2
図3
図4
図5