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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】光学素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20220421BHJP
   G02B 6/124 20060101ALI20220421BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20220421BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B6/124
H01S5/022
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2018553685
(86)(22)【出願日】2017-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2017035625
(87)【国際公開番号】W WO2018100868
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2016235394
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 孝介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 順悟
(72)【発明者】
【氏名】山口 省一郎
(72)【発明者】
【氏名】浅井 圭一郎
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/133161(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/079974(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/079939(WO,A1)
【文献】特開2008-299084(JP,A)
【文献】特開2005-099099(JP,A)
【文献】特開2008-070867(JP,A)
【文献】特開2015-135931(JP,A)
【文献】特表2015-535143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18、5/30-5/32
G02B 6/124
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝の周期構造が設けられた光導波層を備える光学素子であって、
前記光導波層が、1.5μm以上の層厚を有し、また、Ta25、Al23、LiNbO3、LiTaO3、AlN、GaN、SiC、及びイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)から成る群から選択される材料から成り、
前記溝の深さをDとし、前記周期構造における前記溝の配列ピッチをΛとし、Dの単位とΛの単位が同一の時、D/0.5Λ≧2.5を満足し、
前記周期構造の有効長をLとする時、L≦100μmを満足し、
当該光学素子が、26%を超える反射率を有し、
前記周期構造の溝は、実質的に平行に対面した一対の側面と、前記側面の間に設けられる底面により画定され、
前記周期構造の各溝においてその底面とその側面のなす角をθとする時、
θ≧80°、又はθ≧82°、又はθ≧84°、又はθ≧86°、又はθ≧88°を満足する、光学素子。
【請求項2】
前記周期構造における前記溝の配列ピッチΛが、150nm以上である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記周期構造における前記溝の配列ピッチΛが、480nm以下である、請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記周期構造における前記溝の配列ピッチΛが、150nm以上470nm以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記周期構造における前記溝の配列ピッチΛが、167nm以上435nm以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記周期構造における前記溝の配列ピッチΛが、175nm以上380nm以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記周期構造における前記溝の深さDが、200nm以上である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項8】
前記周期構造における前記溝の深さDが、250nm以上である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項9】
前記周期構造における前記溝の深さDが、300nm以上である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項10】
前記周期構造における前記溝の深さDが、600nm以下である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項11】
前記周期構造における前記溝の深さDが、550nm以下である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項12】
前記周期構造における前記溝の深さDが、500nm以下である、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項13】
当該光学素子の反射率が40%以上である、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項14】
前記周期構造の有効長をLとする時、4.5≦L≦70.5μmを満足する、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項15】
前記周期構造の有効長をLとする時、5.01≦L≦65.25μmを満足する、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項16】
前記周期構造の有効長をLとする時、5.25≦L≦57μmを満足する、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項17】
前記周期構造の溝の個数は、200個以下である、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項18】
前記周期構造における溝の平均ピッチ誤差が±0.5nm以下である、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項19】
前記周期構造の溝の配列方向に延びる前記周期構造が設けられた前記光導波層の部分がリッジ状である、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の光学素子と、
前記光学素子の前記光導波層に光学的に結合した活性層を有するレーザー素子を備えるレーザーアセンブリ。
【請求項21】
光学素子の製造方法であって、
Ta25、Al23、LiNbO3、LiTaO3、AlN、GaN、SiC、及びイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)から成る群から選択される材料から成り、1.5μm以上の層厚を有する光導波層上に第1マスク層を形成し、
前記第1マスク層上に樹脂材料から成る第2マスク層を形成し、
第1方向に長い壁が前記第1方向に直交する第2方向に一定の配列ピッチで並んだ壁の周期構造が押圧面に設けられた型を前記第2マスク層に押圧してエネルギー線を照射することに基づいて前記第2マスク層に第1開口部の配列を形成し、
前記第2マスク層の第1開口部を介したドライエッチングにより前記第1マスク層に第2開口部の配列を形成し、
前記第1マスク層の第2開口部を介したドライエッチングにより前記光導波層に溝の周期構造を形成することを含み、
前記周期構造の溝の深さをDとし、前記周期構造における前記溝の配列ピッチをΛとし、Dの単位とΛの単位が同一の時、D/0.5Λ≧2.5を満足し、
前記周期構造の有効長をLとする時、L≦100μmを満足し、
前記光学素子が、26%を超える反射率を有し、
前記周期構造の溝は、実質的に平行に対面した一対の側面と、前記側面の間に設けられる底面により画定され、
前記溝の底面と側面のなす角をθとする時、
θ≧80°、又はθ≧82°、又はθ≧84°、又はθ≧86°、又はθ≧88°を満足する、光学素子の製造方法。
【請求項22】
前記周期構造における溝の平均ピッチ誤差が±0.5nm以下である、請求項21に記載の光学素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、難加工性の光学材料層をエッチングするため、樹脂層と光学材料層の間に下地層を設け、ナノインプリント技術を用いて樹脂層に開口を設け、樹脂層の開口を介して下地層をエッチングし、エッチングにより形成された下地層の開口を介して光学材料層をエッチングし、これにより、光学材料層により深い凹部を形成することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/133161号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光導波層が難エッチング材料から成る場合、光導波層に深溝を形成することはそもそも困難である。特許文献1では、薄層の光導波層に浅溝の周期構造を形成することが行われているが、その実施例において、Ta25から成る光学材料層に100nmの深さまでしか溝が形成できていない。なお、特許文献1の段落0041は、光学材料層が0.5~3μmの層厚を有することを記述するが、同文献の段落0039に列挙した広範囲な金属酸化物を対象としており、必ずしも高度の難エッチング材料を対象としていない。
【0005】
難エッチング材料から成る薄層の光導波層に浅溝を形成する場合、ある個数の溝から得られる光学特性、例えば、回折効率が低く、結果として所望の光学特性を達成するために溝の個数が増加し、光学素子のサイズの大型化に帰結してしまう問題がある。
【0006】
本願発明者は、上述の非限定の一例の課題に関して、光学素子の光導波層の周期構造に基づく光学特性の達成と、光導波層の周期構造に含まれる溝の個数の低減の両方を同時に達成することの意義を新たに見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る光学素子は、溝の周期構造が設けられた光導波層を備える光学素子であって、
前記光導波層が、1.5μm以上の層厚を有し、また、Ta25、Al23、LiNbO3、LiTaO3、AlN、GaN、SiC、及びイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)から成る群から選択される材料から成り、
前記周期構造の溝の深さをDとし、前記周期構造における前記溝の配列ピッチをΛとし、Dの単位とΛの単位が同一の時、D/0.5Λ≧2.5を満足する。
【0008】
本願明細書においては、D/0.5Λを「アスペクト比」と呼ぶ。従来の手法に反し、本開示の一態様に係る光学素子では、光導波層が1.5μm以上の厚みを有し、また、2.5以上のアスペクト比及び/又は200nm以上の深さの溝の周期構造を光導波層に形成する。光導波層の層厚の増加により溝のアスペクト比及び/又は深さの増加が許容され、ある個数の溝から得られる光学特性、例えば、回折効率が高められ、これにより、溝の個数の低減が許容され、光学素子の小型化が可能となる。
【0009】
特許文献1の実施例1に記載の場合、凹部の配置間隔に一致するピッチΛが200nmであり、凹部の深さDが100nmである。この場合、D/0.5Λ=1を満足する。
【0010】
本明細書に提示される光導波層を含む様々な層の層厚は、層の断面を走査電子顕微鏡で観察することにより求めるものとする。具体的には、ある製品の特定の層の厚みの測定に際しては、原則として、JEOL社製の商品名FE-SEM、型番JSM-7401Fの走査電子顕微鏡を用いるものとする。但し、この走査電子顕微鏡が如何なる方法を尽くしても商業的に入手不可能であれば、これと同等の他の走査電子顕微鏡の使用が許容されるものとする。
【0011】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造における前記溝の配列ピッチΛが、150nm以上である。
【0012】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造における前記溝の配列ピッチΛが、480nm以下である。
【0013】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造における前記溝の配列ピッチΛが、150nm以上470nm以下である。
【0014】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造における前記溝の配列ピッチΛが、167nm以上435nm以下である。
【0015】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造における前記溝の配列ピッチΛが、175nm以上380nm以下である。
【0016】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造における前記溝の深さDが、200nm以上である。
【0017】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造における前記溝の深さDが、250nm以上である。
【0018】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造における前記溝の深さDが、300nm以上である。
【0019】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造における前記溝の深さDが、600nm以下である。
【0020】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造における前記溝の深さDが、550nm以下である。
【0021】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造における前記溝の深さDが、500nm以下である。
【0022】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造の有効長をLとする時、L≦100μmを満足する。実施形態によっては、周期構造の有効長は、L≦90μm、L≦80μm、L≦70μm、L≦60μm、L≦50μm、L≦40μm、L≦30μm、L≦20μm、L≦15μm、L≦10μmである。
【0023】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造の有効長をLとする時、4.5≦L≦70.5μmを満足する。
【0024】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造の有効長をLとする時、5.01≦L≦65.25μmを満足する。
【0025】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造の有効長をLとする時、5.25≦L≦57μmを満足する。
【0026】
溝の周期構造の有効長は、周期構造に基づく光学特性の発揮という観点から理解される。例えば、溝の配列方向に沿って溝の周期構造の中間部に非溝配置領域が設けられる場合、この非溝配置領域は溝の周期構造の有効長にカウントされない。溝の周期構造の有効長は、非溝配置領域のサイズを除いて測定される。
【0027】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造の溝の個数は、200個以下である。
【0028】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造の溝は、実質的に平行に対面した一対の側面と、前記側面の間に設けられる底面により画定される。
【0029】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造の溝の底面と側面のなす角をθとする時、
θ≧80°、又はθ≧82°、又はθ≧84°、又はθ≧86°、又はθ≧88°を満足する。
【0030】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造における溝の平均ピッチ誤差が±0.5nm以下である。
【0031】
幾つかの実施形態においては、前記溝の配列方向に延びる周期構造が設けられた前記光導波層の部分がリッジ状である。
【0032】
本開示の別態様に係るレーザーアセンブリは、上述のいずれか一つ又は上述の特徴の任意の組み合わせの光学素子と、
前記光学素子の前記光導波層に光学的に結合した活性層を有するレーザー素子を備える。
【0033】
本開示の一態様に係る光学素子の製造方法は、Ta25、Al23、LiNbO3、LiTaO3、AlN、GaN、SiC、及びイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)から成る群から選択される材料から成り、1.5μm以上の層厚を有する光導波層上に第1マスク層を形成し、
前記第1マスク層上に樹脂材料から成る第2マスク層を形成し、
第1方向に長い壁が前記第1方向に直交する第2方向に一定の配列ピッチで並んだ壁の周期構造が押圧面に設けられた型を前記第2マスク層に押圧してエネルギー線を照射することに基づいて前記第2マスク層に第1開口部の配列を形成し、
前記第2マスク層の第1開口部を介したドライエッチングにより前記第1マスク層に第2開口部の配列を形成し、
前記第1マスク層の第2開口部を介したドライエッチングにより前記光導波層に溝の周期構造を形成することを含み、
前記溝の深さをDとし、前記周期構造における前記溝の配列ピッチをΛとし、Dの単位とΛの単位が同一の時、D/0.5Λ≧2.5を満足する。
【0034】
第1開口部は、主として第2マスク層を型で押すことに基づいて形成される。従って、第1開口部の底部に第2マスク層の残膜が形成され、第1開口部が第2マスク層を完全に貫通しない態様も想定される。幾つかの場合、酸素プラズマ等によるアッシングプロセスにより残膜が除去される。幾つかの場合、第1開口部に残膜が存在するまま第1開口部を介したドライエッチングが行われる。
【0035】
幾つかの実施形態においては、上述に例示したものと同様の前記配列ピッチΛと前記溝深さDが採用される。
【0036】
幾つかの実施形態においては、前記周期構造の溝は、実質的に平行に対面した一対の側面と、前記側面の間に設けられる底面により画定され、
前記溝の底面と側面のなす角をθとする時、
θ≧80°、又はθ≧82°、又はθ≧84°、又はθ≧86°、又はθ≧88°を満足する。
【0037】
幾つかの実施形態においては、周期構造における溝の平均ピッチ誤差が±0.5nm以下である。
【発明の効果】
【0038】
本開示の一態様によれば、光学素子の光導波層の周期構造に基づく光学特性の達成と、光導波層の周期構造に含まれる溝の個数の低減の両方を同時に達成することを促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本開示の一態様に係るレーザーアセンブリの概略斜視図であり、シリコン基板上に半導体レーザー素子と光学素子が実装された状態を示す。図1は、シリコン基板や各素子の厚みを正確に図示するものではない。
図2】本開示の一態様に係る光学素子の一端面を示す概略側面図である。
図3】本開示の一態様に係る光学素子の概略斜視図であり、溝の周期構造が光導波層の主面に設けられることを示す。図3は、光学素子の上部クラッド層の図示を省略している。
図4図3に示した溝の周期構造の部分拡大模式図であり、配列ピッチΛ、溝の深さD、溝の底面と側面のなす角θが模式的に示される。
図5】本開示の一態様に係る光学素子の製造工程図であり、支持基板上に下部クラッド層を形成した状態を示す。
図6】本開示の一態様に係る光学素子の製造工程図であり、支持基板上に下部クラッド層を介して光導波層を形成した状態を示す。
図7】本開示の一態様に係る光学素子の製造工程図であり、支持基板上に下部クラッド層及び光導波層を介して第1マスク層を形成した状態を示す。
図8】本開示の一態様に係る光学素子の製造工程図であり、支持基板上に下部クラッド層、光導波層、及び第1マスク層を介して樹脂材料から成る第2マスク層を形成した状態を示す。
図9】本開示の一態様に係る光学素子の製造工程図であり、第1方向に長い壁が第1方向に直交する第2方向に一定の配列ピッチで並んだ壁の周期構造が押圧面に設けられた型で第2マスク層を押圧する直前の状態を示す。
図10】本開示の一態様に係る光学素子の製造工程図であり、型で第2マスク層を押圧した後の状態を示す。
図11】本開示の一態様に係る光学素子の製造工程図であり、第2マスク層の第1開口部を介したドライエッチングにより第1マスク層に第2開口部の配列を形成した状態を示す。
図12】本開示の一態様に係る光学素子の製造工程図であり、第1マスク層の第2開口部を介したドライエッチングにより光導波層に溝の周期構造を形成した状態を示す。
図13】本開示の一態様に係る光学素子の製造工程図であり、第1マスク層を除去した状態を示す。
図14】実施例1に係る光学素子の光導波層のSEM断面写真である。
図15】比較例1に係る光学素子の光導波層のSEM断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図1乃至図15を参照しつつ、本発明の非限定の実施形態例及び実施例について説明する。開示の1以上の実施形態例及び実施形態例に包含される各特徴は、個々に独立したものではない。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態例及び/又は各特徴を組み合わせることができ、また、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態例間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている場合がある。
【0041】
図1は、レーザーアセンブリの概略斜視図であり、シリコン基板上に半導体レーザー素子と光学素子が実装された状態を示す。図1は、シリコン基板や各素子の厚みを正確に図示するものではない。図2は、光学素子の一端面を示す概略側面図である。図3は、光学素子の概略斜視図であり、溝の周期構造が光導波層の主面に設けられることを示す。図3は、光学素子の上部クラッド層の図示を省略している。図4は、図3に示した溝の周期構造の部分拡大模式図であり、配列ピッチΛ、溝の深さD、溝の底面と側面のなす角θが模式的に示される。図5は、光学素子の製造工程図であり、支持基板上に下部クラッド層を形成した状態を示す。図6は、光学素子の製造工程図であり、支持基板上に下部クラッド層を介して光導波層を形成した状態を示す。図7は、光学素子の製造工程図であり、支持基板上に下部クラッド層及び光導波層を介して第1マスク層を形成した状態を示す。図8は、光学素子の製造工程図であり、支持基板上に下部クラッド層、光導波層、及び第1マスク層を介して樹脂材料から成る第2マスク層を形成した状態を示す。図9は、光学素子の製造工程図であり、第1方向に長い壁が第1方向に直交する第2方向に一定の配列ピッチで並んだ壁の周期構造が押圧面に設けられた型で第2マスク層を押圧する直前の状態を示す。図10は、光学素子の製造工程図であり、型で第2マスク層を押圧した後の状態を示す。図11は、光学素子の製造工程図であり、第2マスク層の第1開口部を介したドライエッチングにより第1マスク層に第2開口部の配列を形成した状態を示す。図12は、光学素子の製造工程図であり、第1マスク層の第2開口部を介したドライエッチングにより光導波層に溝の周期構造を形成した状態を示す。図13は、光学素子の製造工程図であり、第1マスク層を除去した状態を示す。図14は、実施例1に係る光学素子の光導波層のSEM断面写真である。図15は、比較例1に係る光学素子の光導波層のSEM断面写真である。
【0042】
図1は、本願に開示の光学素子5の非限定の一つの用途のレーザーアセンブリ9を示す。レーザーアセンブリ9は、シリコン(Si)などの実装基板1、実装基板1上に実装された半導体レーザー素子2、実装基板1上に実装された光学素子5を有する。後述の説明から分かるように、光学素子5は、溝の周期構造が設けられた光導波層を含む。一例のレーザーアセンブリ9において、この光導波層の周期構造が半導体レーザー素子2からの出射光を半導体レーザー素子2に帰還させる回折格子として用いられ、半導体レーザー素子2の出射光波長の安定性が促進される。
【0043】
半導体レーザー素子2の種類は様々であり得る。例として、ファブリペロー型レーザー素子が用いられる。幾つかの場合、半導体レーザー素子2は、その出射端面に無反射コート(ARコート)を有し、単独ではレーザー発振しない。この種類の半導体レーザー素子2と回折格子により単独の共振器が構築され、出力波長安定性及び出力パワー安定性が高められ得る。
【0044】
回折格子がレーザー素子に組み込まれていない半導体レーザー素子が用いられる場合も想定される。この半導体レーザー素子と本開示に係る光学素子の組み合わせにより半導体レーザー素子への回折格子の組み込みを回避し、安定化された単一波長光源をより安価に構築することが可能となる。
【0045】
複数のピーク波長のレーザー光を出射する半導体レーザー素子が用いられる場合も想定される。この半導体レーザー素子と本開示に係る光学素子の組み合わせによりレーザー発振の縦モードを単一モードとすることができ、ピーク波長の安定性又は選択性が向上する。
【0046】
留意すべきは、1つの半導体レーザー素子2に組み合わされる光学素子5の個数に制限はないことである。つまり、1つの半導体レーザー素子2に対して2以上の光学素子5を光学的に結合させてもよい。共通の半導体レーザー素子2に光学的に結合される複数の光学素子5は、各々、同一又は異なる構成を有し得る。
【0047】
更に留意すべきは、レーザー素子2が複数の光出射点を有するレーザー素子アレイである場合、一つのレーザー素子アレイに対応して一つの光学素子5が用いられ、若しくは複数の光出射点に対応して複数の光学素子5が用いられ得る。
【0048】
1つの半導体レーザー素子2に組み合わされる光学素子5の中に、複数の回折格子6を形成してもよい。つまり、1つの半導体レーザー素子2に対して2以上の回折格子6を光学的に結合させてもよい。共通の半導体レーザー素子2に光学的に結合される複数の回折格子6は、周期、溝深さ、等、各々、同一又は異なる構成を有し得る。
【0049】
レーザー素子2が複数の光出射点を有するレーザー素子アレイである場合、複数のレーザー素子に対応して一つの光学素子5が用いられ、この光学素子5で複数の回折格子6がそれぞれ光学的に結合し得る。
【0050】
半導体レーザー素子2は、一対の電極間に電流を流すことによりレーザー光を出射可能な固体光源である。半導体レーザー素子2は、活性層と、この活性層を挟むように設けられる上部及び下部クラッド層と、上部クラッド層に電気的に接続した、例えば、オーミック接触した第1電極と、下部クラッド層に電気的に接続した第2電極を有する。半導体レーザー素子2は、光出射端面21と光反射端面22を有する。半導体レーザー素子2内のレーザー共振器は、半導体レーザー素子2の活性層において光出射端面21と光反射端面22の間で規定される。幾つかの場合、光反射端面22上には高反射層が形成され、光出射端面21には低反射層が形成される。
【0051】
半導体レーザー素子2から出射されるレーザー光の波長は、様々であり得るが、例えば、赤外帯域に属し、又は、近赤外線に属する。幾つかの場合、レーザー光の波長は、750nm~1500nmの範囲、750nm~1000nmの範囲、又は750nm~900nmの範囲に属する。ある特定の場合、レーザー光の波長は、800nmである。半導体レーザー素子2から出射されるレーザー光の波長が近赤外帯域に属する時、半導体レーザー素子2は、半導体レーザー素子2を構成する半導体材料のバンドギャップの温度依存性により半導体レーザー素子2の発振波長が変化する。必ずしもこの限りではないが、本開示の光学素子5は、かかる半導体レーザー素子2との組み合わせに特に有益である。なお、図1は、参考までに、半導体レーザー素子2の活性層25を模式的に示す。
【0052】
半導体レーザー素子2と光学素子5を光学的に結合する既知の様々な手法を採用することができる。幾つかの場合、半導体レーザー素子2の活性層25と光学素子5の光導波層が直付け(バットジョイント)される。オプションとして、半導体レーザー素子2の光出射端面21に対面する光学素子5の端面にはARコート層(反射防止コート層)が形成される。半導体レーザー素子2の光出射端面21と、これに対向する光学素子5の端面にARコート層が形成され、半導体レーザー素子2の共振器が光学素子5まで延長される形態も想定される。
【0053】
図2に示す非限定の一例の光学素子5は、支持基板51、支持基板51上に積層された下部クラッド層52、下部クラッド層52を介して支持基板51上に積層された光導波層53、下部クラッド層52及び光導波層53を介して支持基板51上に積層された上部クラッド層54を有する。
【0054】
支持基板51は、例えば、シリコン基板であるが、必ずしもこの限りではなく、他の様々な種類の基板を利用可能である。支持基板は、例えば、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、AlN、SiC、ZnO、石英ガラスなどのガラス、合成石英、水晶であり得る。石英ガラスなどのガラス、合成石英、水晶、シリコンの場合、加工性が良好である。
【0055】
下部クラッド層52は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)であるが、必ずしもこの限りではなく、光導波層53よりも低屈折率の様々な材料を利用可能である。上部クラッド層54は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)であるが、必ずしもこの限りではなく、光導波層53よりも低屈折率の様々な材料を利用可能である。クラッド層の材料例としては、二酸化シリコンの他、酸化タンタル、酸化亜鉛が例示できる。クラッド層にドーパントを添加し、クラッド層の屈折率を調整することもできる。例えば、ドーパントとして、P、B、Al、Gaが例示できる。
【0056】
光導波層53は、Ta25、Al23、LiNbO3、LiTaO3、AlN、GaN、SiC、及びイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)から成る群から選択される材料から成る。光導波層53の屈折率は、幾つかの場合、1.7以上であり、好ましくは2.0以上である。
Λ=λ/(2n×p)が成立し、ここで、Λが溝の配列ピッチであり、λがレーザー光の波長であり、nが屈折率であり、pが回折次数である
光導波層53がTa25の時、光導波層53の屈折率nは、n=2.105である。レーザー光の波長が800nmであり、p=1の時、光導波層53に形成される溝の配列ピッチΛ=約190nmとなる。光導波層53は、1.5μm以上の厚みを有する。光導波層53の最大層厚は、幾つかの場合、5μmである。
【0057】
光導波層53に、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、スカンジウム(Sc)、及びインジウム(In)から成る群より選択される1以上の金属元素を添加しても良く、これにより、光導波層53の耐光損傷性が高められる。
【0058】
現時点又は将来利用可能な様々な薄膜形成技術を用いることで、下部クラッド層52、光導波層53、及び上部クラッド層54が形成される。物理的気相成長法(PVD)や、化学的気相成長法(CVD)を利用できる。多くの場合、スパッタリングが採用される。
【0059】
光導波層53は基材を薄厚化して形成することも可能である。この場合、薄厚化した光導波層の一面に下部クラッド層52を薄膜形成技術により形成した後に支持基板51に接合し、さらに薄厚化した光導波層の反対面に上部クラッド54を薄膜形成技術により形成できる。下部クラッド層52と支持基板51の接合方法は、樹脂や低融点ガラス接合であってよく、常温直接接合を利用してもよい。
【0060】
図3及び図4に模式的に示すように、光導波層53は、溝61の周期構造6を有する。光導波層53の主面535には、溝61の配列から成る周期構造6が設けられる。主面は、光学素子5における各層の積層方向D1に直交する平面を意味する。周期構造6において、溝61が溝配列方向D2に沿って配列ピッチΛで配列される。各溝61は、積層方向D1に沿う深さDを有する。各溝61は、積層方向D1及び溝配列方向D2に直交する横方向D3に延びる。
【0061】
各溝61は、実質的に平行に対面した一対の側面611、613と、一対の側面611、613の間に設けられる底面612により画定される。ある溝61において、第1の側面611は、光学素子5の光入射側に位置し、換言すれば、半導体レーザー素子2に近い側に位置する。第2の側面613は、光学素子5の光出射側に位置し、換言すれば、半導体レーザー素子2から遠い側に位置する。底面612は、積層方向D1に実質的に直交する。各側面611、613は、溝配列方向D2に実質的に直交する。なお、側面611、613及び底面612も横方向D3に延びる。第1の側面611と底面612のなす角θや第2の側面613と底面612のなす角θが図示される。
【0062】
溝配列方向D2において隣り合う溝61の間には壁62が形成される。壁62は、溝61の深さと同一又は近傍の高さを有する。壁62は、横方向D3に延び、溝配列方向D2に実質的に直交する。
【0063】
配列ピッチΛは、溝配列方向D2における溝の配置間隔に等しい。配列ピッチΛは、溝配列方向D2において隣り合う第1の溝の第1の側面611と第2の溝の第1の側面611の間隔、及び/又は、溝配列方向D2において隣り合う第1の溝の第2の側面613と第2の溝の第2の側面613の間隔に等しい。
【0064】
周期構造6が回折格子として用いられ、周期構造6の溝の配列ピッチΛが回折作用を受けるべきレーザー光の波長に応じて設定される。上述のように、光導波層53の屈折率は、幾つかの場合、1.7以上であり、好ましくは2.0以上である。光導波層53がTa25の時、光導波層53の屈折率nは、n=2.105である。溝配列方向D2における溝の狭ピッチ配置により溝の必要数を短距離で確保できる。
【0065】
幾つかの実施形態において、周期構造6の溝の配列ピッチΛが、150nm以上であり、及び/又は、480nm以下である。幾つかの場合、周期構造6の溝の配列ピッチΛが、150nm以上470nm以下、又は、167nm以上435nm以下、又は、175nm以上380nm以下である。実施形態によっては、配列ピッチΛが、150nm以上、160nm以上、170nm以上、180nm以上、190nm以上、200nm以上、210nm以上、220nm以上、230nm以上、240nm以上、250nm以上、260nm以上、270nm以上、280nm以上、290nm以上、300nm以上、310nm以上、320nm以上、330nm以上、340nm以上、350nm以上、400nm以上、450nm以上であり得る。実施形態によっては、配列ピッチΛが、470nm以下、460nm以下、450nm以下、400nm、350nm以下、300nm以下、250nm以下、200nm以下である。
【0066】
上記した配列ピッチの下限値と上限値の任意の組み合わせが本明細書に明確に開示される。配列ピッチΛの範囲として、150nm~480nm、150nm~470nm、160nm~460nm、180nm~250nm等の様々な組み合わせが理解できる。配列ピッチの下限値と上限値の全ての組み合わせは列挙しないが、実質的に開示されている。ある特定の実施形態では、配列ピッチΛは、185nm±0.5nm、又は239nm±0.5nmである。
【0067】
様々な要因から周期構造における溝の配列ピッチが変動を受け、つまり、配列ピッチに公差或いはばらつきが生じる。ピッチ誤差は、目標とする一定値のピッチと計測されたピッチの差分を表す。幾つかの場合、ピッチ誤差の平均値である平均ピッチ誤差が、±0.5nm以下である。
【0068】
本実施形態においては、Ta25、Al23、LiNbO3、LiTaO3、AlN、GaN、SiC、及びイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)から成る群から選択される材料から成る光導波層53が、1.5μm以上の層厚を有する。更には、周期構造の溝の深さをDとし、配列ピッチをΛとし、Dの単位とΛの単位が同一の時、D/0.5Λ≧2.5を満足する。
【0069】
本実施形態においては、光導波層53を1.5μm以上の厚みとし、2.5以上のアスペクト比及び/又は200nm以上の深さの溝の周期構造を光導波層53に形成する。光導波層53の層厚の増加により溝61のアスペクト比及び/又は深さの増加が許容され、ある個数の溝61から得られる光学特性、例えば、回折効率が高められ、これにより、溝61の個数の低減が許容され、光学素子の小型化が可能となる。
【0070】
実施形態によっては、アスペクト比は、3以上、又は3.5以上、4以上、又は5以上、又は5.5以上である。実施形態によっては、2.5以下のアスペクト比においても溝の深さを200nmとすることで同様の効果が得られる。
【0071】
同一の配列ピッチΛにおいて溝61の深さDが増加すればアスペクト比も増加する。しかしながら、Ta25、Al23、LiNbO3、LiTaO3、AlN、GaN、SiC、及びイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)から成る群から選択される材料から成る光導波層53に深溝を形成すること自体に困難が伴い、従って、アスペクト比に上限が存在し得る。幾つかの実施形態においては、2.5≦D/0.5Λ≦6が満足される。
【0072】
光導波層53がTa25、Al23、LiNbO3、LiTaO3、AlN、GaN、SiC、及びイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)から成る群から選択される材料から成る場合、光導波層53にドライエッチング、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)で溝61を形成すること自体が容易ではなく、特に溝の深掘りは容易ではない。溝が狭ピッチで配列される時、溝の深掘りはより困難になる。溝を深く掘れば掘るほど、溝を規定する側面と底面のなす角が80°、75°といったように90°よりも小さくなる。つまり、断面において上方に開口した矩形溝ではなく上方に開口したV字溝となってしまう。V字溝によりアスペクト比又は溝最大深さに上限が課されるため回折効率の点では矩形溝となっているほうが好ましい。
【0073】
幾つかの実施形態では、周期構造6の溝の深さDが、200nm以上であり、及び/又は、600nm以下である。幾つかの場合、周期構造6の溝の深さDが、250nm又は300nm以上である。幾つかの場合、周期構造6の溝の深さDが、550nm又は500nm以下である。
【0074】
幾つかの実施形態においては、溝61の側面611、613は、底面612に関して実質的には垂直面であり、若しくは、90°に近い傾斜面である。幾つかの場合、側面611、613と底面612のなす角θは、θ≧80°、又はθ≧82°、又はθ≧84°、又はθ≧86°、又はθ≧88°を満足する。かかる場合、ある個数の溝から得られる回折効率が高められ、結果として、溝の個数の低減及び光学素子の小型化が促進される。
【0075】
幾つかの場合、周期構造の有効長をLとする時、L≦100μmを満足する。幾つかの場合、周期構造の有効長をLとする時、4.5≦L≦70.5μmを満足する。幾つかの場合、周期構造の有効長をLとする時、5.01≦L≦65.25μmを満足する。幾つかの場合、周期構造の有効長をLとする時、5.25≦L≦57μmを満足する。
【0076】
周期構造6の有効長Lは、溝配列方向D2に沿う溝の配列部分の長さである。有効長Lの短縮により溝配列方向D2に沿う光学素子5の長さKを短くすることができる。なお、周期構造6が非溝形成部分により2分割される場合、周期構造6の有効長Lは、分割された各溝形成部分の合計長に等しく、非溝形成部分の長さは含まない。周期構造6の有効長Lは、溝配列方向D2に沿う光学素子5の長さK未満である。別例においては、周期構造6の有効長Lが、溝配列方向D2に沿う光学素子5の長さKに等しい。図1に模式的に示す特定の場合、溝配列方向D2において半導体レーザー素子2よりも光学素子5が小さい。
【0077】
幾つかの場合、溝の個数は、200個以下である。溝の個数が小さいことは、周期構造6の有効長Lの短縮を意味し、光学素子5の小型化が可能になる。幾つかの場合、溝の個数は、30~150個である。
【0078】
必ずしもこの限りではないが、周期構造6を挟むように溝配列方向D2に沿って延びる一対のサイド溝56が形成され、横方向D3における光導波層53での光の閉じ込めが促進される。この一対のサイド溝56により、溝配列方向D2に延びる周期構造6が設けられた光導波層53の部分がリッジ状になる。幾つかの場合、この光導波層53のリッジ部に横方向D3で隣接する光導波層53の部分が除去される。
【0079】
以下、図5乃至図13を参照して光学素子5の非限定の一例の製造方法について説明する。まず、支持基板51上に下部クラッド層52をスパッタリング等で形成する(図5参照)。次に、下部クラッド層52上に光導波層53をスパッタリング等で形成する(図6参照)。光導波層53上に第1マスク層71をスパッタリング等で形成する(図7参照)。次に、第1マスク層71上に樹脂材料から成る第2マスク層72をスピンコート等のコーティング法に即して形成する(図8参照)。次に、型73を用意し(図9参照)、型73を第2マスク層72に押圧してエネルギー線を照射することに基づいて第2マスク層72に第1開口部75jの配列を形成する(図10参照)。必要ならば、型73の押圧面に離型層を形成し、第2マスク層72からの離型が促進される。幾つかの場合、第1開口部の底部に第2マスク層の残膜が形成され、第1開口部が第2マスク層を完全に貫通しない。残膜は、例えば、5nm~100nmの厚みを有する。
【0080】
図9に示す型73の押圧面には、最終的に光導波層53に転写される第1周期構造74が形成されている。第1周期構造74では、第1方向に長い壁74kが、第1方向に直交する第2方向に一定の配列ピッチで並んでいる。隣り合う壁74kの間には溝74jが形成される。第1方向は、上述の横方向D3に一致し、第2方向は、上述の溝配列方向D2に一致する。第2マスク層72の樹脂材料が軟化する条件で第2マスク層72に型73を押圧すると、型73の壁74kが第2マスク層72の樹脂材料を排除し、壁74kに隣接する溝74jに第2マスク層72の樹脂材料が流入する。この状態で第2マスク層72の樹脂材料を硬化させるエネルギー線を照射する。エネルギー線は、例えば、紫外線であるが、必ずしもこの限りではない。このようにして第2マスク層72には第1周期構造74が転写された第2周期構造75が形成される。第2マスク層72には、第1周期構造74の壁74kに対応する第1開口部75jが形成され、第1周期構造74の溝74jに対応する第1壁75kが形成される。
【0081】
次に、第2マスク層72の第1開口部75jを介してドライエッチングにより第1マスク層71に第2開口部76jの配列を形成する(図11参照)。このようにして第1マスク層71には第1周期構造74が転写された第3周期構造76が形成される。第1マスク層71には、第2周期構造75の壁75kの間の溝75jの直下に第2開口部76jが形成され、第2周期構造75の壁75kの直下に第2壁76kが形成される。ドライエッチングと同時、又はドライエッチングの後、第2マスク層72を除去する。ドライエッチングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)である。
【0082】
次に、第1マスク層71の第2開口部76jを介したドライエッチングにより光導波層53に溝61の配列を形成する(図12参照)。このようにして光導波層53には第1周期構造74が転写された上述の周期構造6が形成される。光導波層53には、第3周期構造76の壁76kの間の溝76jの直下に溝61が形成され、第3周期構造76の壁76kの直下に壁62が形成される。ドライエッチングと同時、又はドライエッチングの後、第1マスク層71を除去する(図13参照)。ドライエッチングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)である。
【0083】
その後、光導波層53にサイド溝56を形成し、スパッタリング等で光導波層53上に上部クラッド層54を形成する。サイド溝56は、サイド溝56が形成されるべき領域を除いてTi等の第3マスク層を形成し、第3マスク層の開口を介して反応性イオンエッチングでサイド溝56を形成する。上部クラッド層54の形成により、光導波層53の溝61やサイド溝56が上部クラッド層54の材料で埋まる。ダイシング装置により光学素子5の端面を形成する。続いて、光学素子5の端面を光学研磨し、ARコートを形成する。ARコートは、例えば、0.1%の反射率を有する。一枚の支持基板51上に多数の光学素子5を製作する場合、ダイシングにより積層体が切断され、チップ状の複数の光学素子5が得られる。
【0084】
第1マスク層71は、幾つかの場合、金属又は金属シリサイドである。例えば、第1マスク層71は、Ti、Cr、Mo、W、Ta、Si、Ni、Al、V、Fe、Nb、Re、Co、Pd、Pt又はこれらの合金である。例えば、第1マスク層71は、タングステンシリサイド、バナジウムシリサイド、鉄シリサイド、ニオブシリサイド、モリブデンシリサイド、レニウムシリサイド、クロムシリサイド、コバルトシリサイド、ニッケルシリサイド、パラジウムシリサイド、白金シリサイドである。第1マスク層71は、典型的には単層であり、必ずしもこの限りではない。
【0085】
第2マスク層72は、ナノインプリント法により利用できる市販の樹脂である(UV硬化型ナノインプリント樹脂:ダイセル化学工業、東洋合成工業等)。第2マスク層72の樹脂の粘度や、型の周期構造の転写時の温度等は当業者により適切に決定される。
【0086】
第2マスク層72の第1開口部75jを介して行う第1マスク層71のドライエッチングに際して、ハロゲン系の第1エッチングガスが用いられる。第1マスク層71の第2開口部76jを介して行う光導波層53のドライエッチングに際して、ハロゲン系の第2エッチングガスが用いられる。幾つかの場合、第1エッチングガスと第2エッチングガスが同一であり、別の場合、異なる。ある場合、第1エッチングガスが塩素系であり、第2エッチングガスがフッ素系である。別の場合、第1エッチングガスがフッ素系であり、第2エッチングガスが塩素系である。
【0087】
光導波層53がTa25から成り、第1マスク層71がAl膜の時、1.5μm以上の光導波層53の層厚において2.5以上のアスペクト比の溝61を形成できることが確認できている。第1エッチングガスが塩素系であり、第2エッチングガスがフッ素系である。塩素系のエッチングガスは、例えば、BCl3である。フッ素系エッチングガスは、例えば、CHF3である。第1エッチングガスによりAl膜がエッチングされ、AlCl3の副生成物が生じる。第2エッチングガスにより光導波層53がエッチングされ、TaF5の副生成物が生じる。副生成物は、幾つかの場合、光学素子5の溝に残留する。
【0088】
光導波層53がAl23から成り、第1マスク層71がW膜の時、1.5μm以上の光導波層53の層厚において200nm以上の深さの溝61を形成できることが確認できている。第1エッチングガスがフッ素系であり、第2エッチングガスが塩素系である。塩素系のエッチングガスは、例えば、BCl3である。フッ素系エッチングガスは、例えば、CHF3である。第1エッチングガスによりW膜がエッチングされ、WF6の副生成物が生じる。第2エッチングガスにより光導波層53がエッチングされ、AlCl3の副生成物が生じる。
【0089】
光導波層53がLiTaO3から成り、第1マスク層71がAl膜の時、1.5μm以上の光導波層53の層厚において2.5以上のアスペクト比の溝61を形成できることが確認できている。第1エッチングガスが塩素系であり、第2エッチングガスがフッ素系である。塩素系のエッチングガスは、例えば、BCl3である。フッ素系エッチングガスは、例えば、CHF3である。第1エッチングガスによりAl膜がエッチングされ、AlCl3の副生成物が生じる。第2エッチングガスにより光導波層53がエッチングされ、TaF5の副生成物が生じる。副生成物は、幾つかの場合、光学素子5の溝に残留する。
【0090】
光導波層53がLiNbO3から成り、第1マスク層71がW膜の時、1.5μm以上の光導波層53の層厚において200nm以上の深さの溝61を形成できることが確認できている。第1エッチングガスがフッ素系であり、第2エッチングガスが塩素系である。塩素系のエッチングガスは、例えば、BCl3である。フッ素系エッチングガスは、例えば、CHF3である。第1エッチングガスによりW膜がエッチングされ、WF6の副生成物が生じる。第2エッチングガスにより光導波層53がエッチングされ、AlCl3の副生成物が生じる。
【0091】
光導波層53が、AlN、GaN、SiC、又はイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)から成る場合にも、第1マスク層71の材料、並びに第1及び第2エッチングガスのガス種を適切に選定することにより、1.5μm以上の光導波層53の層厚において2.5以上のアスペクト比及び/又は200nm以上の深さの溝61を形成できる。
【0092】
上述の記述から分かるように、本開示の一態様に係る光学素子5の製造方法は、
Ta25、Al23、LiNbO3、LiTaO3、AlN、GaN、SiC、及びイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)から成る群から選択される材料から成り、1.5μm以上の層厚を有する光導波層上に第1マスク層を形成し、
第1マスク層上に樹脂材料から成る第2マスク層を形成し、
第1方向に長い壁が第1方向に直交する第2方向に一定の配列ピッチで並んだ壁の周期構造が押圧面に設けられた型を第2マスク層に押圧してエネルギー線を照射することに基づいて第2マスク層に第1開口部の配列を形成し、
第2マスク層の第1開口部を介したドライエッチングにより第1マスク層に第2開口部の配列を形成し、
第1マスク層の第2開口部を介したドライエッチングにより光導波層に溝の周期構造を形成することを含み、
周期構造の溝の深さをDとし、配列ピッチをΛとし、Dの単位とΛの単位が同一の時、D/0.5Λ≧2.5を満足する。
換言すれば、型は、このアスペクト比の条件を満足するように構成され、ドライエッチングは、このアスペクト比の条件を満足するように行われる。
【0093】
ある条件例としては、第1マスクがAlであり、第2マスク層の第1開口部を介したドライエッチングに際して、塩素系エッチングガスが用いられ、第1マスク層の第2開口部を介したドライエッチングに際してフッ素系エッチングガスが用いられる。より詳細な条件が実施例1に開示される。
【0094】
別の条件例としては、第1マスクがWであり、第2マスク層の第1開口部を介したドライエッチングに際して、フッ素系エッチングガスが用いられ、第1マスク層の第2開口部を介したドライエッチングに際して塩素系エッチングガスが用いられる。より詳細な条件が実施例2に開示される。
【0095】
配列ピッチΛからなる光学素子については、この周期構造の平均ピッチ誤差が±0.5nm以下を満足することが好ましい。以下のいずれかの方法により平均ピッチ誤差を求めるものとする。
【0096】
まず、0.04nmの不確かさでの校正を実現することができるDUV光回折式ピッチ校正が用いられる。
【0097】
後述の実施例1において、溝深さ500nm、配列ピッチ185nmからなる光学素子についてDUV光回折式ピッチ校正により、周期構造の平均ピッチ誤差を調べたところ、±0.03nmの誤差精度となっていることが確認できた。
【0098】
光学素子の周期構造の有効長を溝の個数で除算して得られる値と計測された配列ピッチΛの差を求めることで誤差の値が得られる。この誤差の平均値を求め、平均ピッチ誤差が求められる。
【実施例
【0099】
実施例1
Siからなる支持基板上に、スパッタリングで、SiO2からなる下部クラッド層を1.0μm成膜した。次に、スパッタリングで、下部クラッド層の上面にTa25からなる光導波層を2.0μm成膜した。次に、スパッタリングで、光導波層の上面にAlからなる第1マスク層を50nm成膜した。次に、第1マスク層上に第2マスク層80nmを塗布した。次いで、第2マスク層に型を押圧し、第2マスク層の樹脂材料を紫外線硬化させた。そこから型を離し、第2マスク層に開口列を形成した。次に、塩素系ガス(BCl3)で第2マスク層の開口を介して第1マスク層をドライエッチングし、光導波層に到達する開口を形成する。このドライエッチングと同時に第2マスク層が除去される。次に、第1マスク層の開口を介して光導波層をフッ素系ガス(CHF3)で所定時間だけドライエッチングし、光導波層53に深さ350nmの溝を形成した。溝の配列ピッチΛは、185nmである。溝の側面と底面のなす角はほぼ90°である。続いて第1マスク層を除去した。この実施例に係るサンプルの一つのSEM写真を図14に示す(倍率100,000倍)。アスペクト比が約3.8である。実施例1において上方に開口した矩形溝が得られた。
【0100】
続いて、光導波層に、幅2μm、深さ1.6μmのサイド溝を形成し、光導波層53をリッジ状とした。次に、スパッタリングでSiO2からなる上部クラッド層を0.5μm成膜した。次に、ダイシング装置にて積層体をバー状に切断し、切断により形成された両端面を光学研磨した。次に、角端面に0.1%の反射率のARコートを形成した。バー状の積層体を切断し、チップ状の光学素子を得た。光学素子のサイズは、幅1mm、長さは500μmである。
【0101】
実施例1では、光導波層の周期構造の有効長、換言すれば、溝61の個数を変数とした幾つかのサンプルを製造し、その光学特性を評価した。評価に際しては、広帯域波長光源であるスーパ・ルミネッセンス・ダイオード(SLD)を使用した。光学素子にSLDの出射光を入力し、光学素子からの出力光を光スペクトルアナライザで分析した。光学素子の透過特性から反射特性を評価した。ある特定波長、ここでは800μmについて光学素子の反射率を測定した。この結果は、次の表1の通りである。
【表1】
光学素子の40%程度の反射率を実現するため、光導波層の周期構造の有効長は13μm程度あれば足りることが分かる。顕著に周期構造6の有効長を低減し、光学素子の小型化を顕著に促進可能であることが確認できた。
【0102】
-実施例1の変形例-
第1マスク層の開口を介した光導波層のエッチング時間を上述の実施例1よりも短くすることによりアスペクト比=2.5が得られ、また、溝の側面と底面のなす角がほぼ90°になることが確認できた。
第1マスク層の開口を介した光導波層のエッチング時間を上述の実施例1よりも長くすることによりアスペクト比=5.7が得られ、また、溝の側面と底面のなす角がほぼ90°になることが確認できた。
【0103】
実施例2
実施例2では、実施例1とは異なり、光導波層53に形成されるべき溝の配列ピッチΛが239nmであり、光導波層としてAl23を用い、第1マスク層としてWを用い、第2マスク層の開口を介した第1マスク層のエッチング用のガスとしてフッ素系エッチングガス(CHF3)を用い、第1マスク層の開口を介した光導波層のエッチング用のガスとして塩素系エッチングガス(BCl3)を用いた。光導波層の層厚は、2.0μmであり、実施例1と同様である。光導波層の溝の配列ピッチΛは、239nmであり、溝の深さは、300nmであり、溝の側面と底面のなす角は、80°である。アスペクト比は、約2.5である。実施例2の場合、実施例1のものよりは劣るものの、それと同等の上方に開口した矩形溝が得られた。
実施例2についても実施例1と同様、光導波層の周期構造の有効長、換言すれば、溝61の個数を変数とした幾つかのサンプルを製造し、その光学特性を評価した(表2参照)。
【表2】

実施例2の場合、光学素子の40%程度の反射率を実現するため、光導波層の周期構造の有効長は55μm程度必要であることが分かる。
【0104】
実施例2の場合、アスペクト比>2.5であり、比較例1と比較しても実施例1と同様、光導波層の周期構造の有効長を有利に低減することが確認できる。
【0105】
実施例3
Siからなる支持基板上に、スパッタリングで、SiO2からなる下部クラッド層を1.0μm成膜した。次に、スパッタリングで、下部クラッド層の上面にLiTaO3からなる光導波層を2.0μm成膜した。次に、スパッタリングで、光導波層の上面にAlからなる第1マスク層を50nm成膜した。次に、第1マスク層上に第2マスク層80nmを塗布した。次いで、第2マスク層に型を押圧し、第2マスク層の樹脂材料を紫外線硬化させた。そこから型を離し、第2マスク層に開口列を形成した。次に、塩素系ガス(BCl3)で第2マスク層の開口を介して第1マスク層をドライエッチングし、光導波層に到達する開口を形成する。このドライエッチングと同時に第2マスク層が除去される。次に、第1マスク層の開口を介して光導波層をフッ素系ガス(CHF3)で所定時間だけドライエッチングし、光導波層53に深さ290nmの溝を形成した。溝の配列ピッチΛは、185nmである。溝の側面と底面のなす角はほぼ90°である。続いて第1マスク層を除去した。アスペクト比が約3.1であった。実施例3において上方に開口した矩形溝が得られた。
【0106】
実施例4
Siからなる支持基板上に、スパッタリングで、SiO2からなる下部クラッド層を1.0μm成膜した。次に、スパッタリングで、下部クラッド層の上面にLiNbO3からなる光導波層を2.0μm成膜した。次に、スパッタリングで、光導波層の上面にAlからなる第1マスク層を50nm成膜した。次に、第1マスク層上に第2マスク層80nmを塗布した。次いで、第2マスク層に型を押圧し、第2マスク層の樹脂材料を紫外線硬化させた。そこから型を離し、第2マスク層に開口列を形成した。次に、塩素系ガス(BCl3)で第2マスク層の開口を介して第1マスク層をドライエッチングし、光導波層に到達する開口を形成する。このドライエッチングと同時に第2マスク層が除去される。次に、第1マスク層の開口を介して光導波層をフッ素系ガス(CHF3)で所定時間だけドライエッチングし、光導波層53に深さ260nmの溝を形成した。溝の配列ピッチΛは、185nmである。溝の側面と底面のなす角はほぼ90°である。続いて第1マスク層を除去した。アスペクト比が約2.8であった。実施例4において上方に開口した矩形溝が得られた。
【0107】
比較例1
比較例1では、実施例1とは異なり、第1マスク層としてTiを用い、第2マスク層の開口を介した第1マスク層のエッチング用のガスとしてフッ素系エッチングガス(CHF3)を用いた。光導波層の層厚は、2.0μmであり、実施例1と同様である。実施例1と同様、第1マスク層の開口を介した光導波層のエッチング用のガスとしてフッ素系エッチングガス(CHF3)を用いた。光導波層の溝の配列ピッチΛは、185nmであり、溝の深さは、150nmであり、溝の側面と底面のなす角は、75°である。アスペクト比は、約1.6である。この比較例に係るサンプルの一つのSEM写真を図15に示す(倍率100,000倍)。比較例1の場合、実施例1のような上方に開口した矩形溝が得られず、上方に開口したV字溝が形成されてしまった。
比較例1についても実施例1と同様、光導波層の周期構造の有効長、換言すれば、溝61の個数を変数とした幾つかのサンプルを製造し、その光学特性を評価した(表3参照)。
【表3】
比較例1の場合、光学素子の40%程度の反射率を実現するため、周期構造の有効長は140μm程度必要であることが分かる。
【0108】
比較例2
比較例2では、実施例2とは異なり、第1マスク層としてTiを用いた。実施例2と同様、光導波層53に形成されるべき溝の配列ピッチΛが239nmである。実施例2と同様、第2マスク層の開口を介した第1マスク層のエッチング用のガスとしてフッ素系エッチングガス(CHF3)を用い、第1マスク層の開口を介した光導波層のエッチング用のガスとして塩素系エッチングガス(BCl3)を用いた。光導波層の層厚は、2.0μmであり、実施例2と同様である。光導波層の溝の深さは、190nmであり、溝の側面と底面のなす角は、60°である。アスペクト比は、約1.6である。比較例2の場合、実施例2のような上方に開口した矩形溝が得られず、上方に開口したV字溝が形成されてしまった。
比較例2についても実施例1と同様、光導波層の周期構造の有効長、換言すれば、溝61の個数を変数とした幾つかのサンプルを製造し、その光学特性を評価した(表4参照)。
【表4】
比較例2の場合、光学素子の40%程度の反射率を実現するため、光導波層の周期構造の有効長は140μm程度必要であることが分かる。
【0109】
上述の教示を踏まえると、当業者をすれば、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。
【符号の説明】
【0110】
51 支持基板
52 下部クラッド層
53 光導波層
54 上部クラッド層
56 サイド溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15