(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】熱交換器および人工肺
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20220421BHJP
A61M 1/18 20060101ALI20220421BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
A61M1/16 120
A61M1/18 525
B01D63/02
(21)【出願番号】P 2018564524
(86)(22)【出願日】2018-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2018001374
(87)【国際公開番号】W WO2018139334
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2017012543
(32)【優先日】2017-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】行天 章
(72)【発明者】
【氏名】松本 航
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-263375(JP,A)
【文献】特開平2-86817(JP,A)
【文献】特表2010-523784(JP,A)
【文献】特開2010-46587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
B01D 63/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の中空糸膜を有し、該複数本の中空糸膜が集積された中空糸膜層を備える熱交換器であって、
前記中空糸膜は、過酸化水素バリア性を有するバリア層を有し、
前記バリア層は、25℃における酸素透過係数が、6cc・cm/m
2・24h/atm以下のものであることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記バリア層は、結晶性樹脂材料を主材料とするものである請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記結晶性樹脂材料は、脂肪族ポリアミドを含む請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記脂肪族ポリアミドは、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド10-10およびポリアミド10-12のうちの少なくとも1種である請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記脂肪族ポリアミドの分子中に含まれるアミド基の炭素数をNとし、メチレン基の炭素数をnとしたとき、
n/Nは、9以上である請求項3または4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記中空糸膜は、前記バリア層よりも熱伝導率が高い熱伝導層をさらに有し、前記バリア層と前記熱伝導層とが積層された積層体で構成されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記熱伝導層は、熱伝導率が0.2W/m・K以上、0.60W/m・K以下のものである請求項6に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記中空糸膜層は、筒体の形状をなし、前記中空糸膜が、前記筒体の中心軸に対して傾斜して、前記筒体の中心軸回りに巻回されてなるものである請求項1ないし7のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記中空糸膜層は、前記複数本の中空糸膜が編み込まれて形成されたシート材を成形してなるものである請求項1ないし8のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記中空糸膜の内側に
、過酸化水素水を含む熱媒体を通過させて用いるものである請求項1ないし9のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項11】
請求項1ないし
10のいずれか1項に記載の熱交換器を備えることを特徴とする人工肺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器および人工肺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、多数本の中空糸膜で構成され、全体形状が円筒体形状をなす中空糸膜束を有する熱交換器や人工肺が知られている。この円筒体形状をなす中空糸膜束には、特許文献1に記載の中空糸膜シートを適用することができる。特許文献1に記載の中空糸膜シートは、多数本の中空糸膜をほぼ平行に配置して横糸とし、これらを縦糸でつなぎ合わせて簾状にしたものである。そして、このような簾状の中空糸膜シートを折りたたんで、外形形状が角柱状の中空糸膜束としたり、その他、円柱状の中空糸膜束としたりすることもできる。
【0003】
上記のような中空糸膜束を熱交換器として用いる場合には、中空糸膜の内側に熱媒体を循環させ、中空糸膜の外側に血液を循環させる。これにより、中空糸膜を介して血液の温度を調節することができる。
【0004】
ここで、近年では、熱媒体として、過酸化水素水を含む液体を中空糸膜の内側に循環させている。これにより、熱媒体の温度を調節する冷温水槽の殺菌を行うことができる。しかしながら、中空糸膜の構成材料によっては、過酸化水素水中の過酸化水素を透過してしまい、結果的に血液中の過酸化水素濃度が高まる可能性が有る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、過酸化水素水を含む液体を熱媒体として用いた場合であっても、血液中に過酸化水素が透過するのを防止することができる熱交換器および人工肺を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)~(12)の本発明により達成される。
(1) 複数本の中空糸膜を有し、該複数本の中空糸膜が集積された中空糸膜層を備える熱交換器であって、
前記中空糸膜は、過酸化水素バリア性を有するバリア層を有し、
前記バリア層は、25℃における酸素透過係数が、6cc・cm/m2・24h/atm以下のものであることを特徴とする熱交換器。
【0008】
(2) 前記バリア層は、結晶性樹脂材料を主材料とするものである上記(1)に記載の熱交換器。
【0009】
(3) 前記結晶性樹脂材料は、脂肪族ポリアミドを含む上記(2)に記載の熱交換器。
【0010】
(4) 前記脂肪族ポリアミドは、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド10-10およびポリアミド10-12のうちの少なくとも1種である上記(3)に記載の熱交換器。
【0011】
(5) 前記脂肪族ポリアミドの分子中に含まれるアミド基の炭素数をNとし、メチレン基の炭素数をnとしたとき、
n/Nは、9以上である上記(3)または(4)に記載の熱交換器。
【0012】
(6) 前記中空糸膜は、前記バリア層よりも熱伝導率が高い熱伝導層をさらに有し、前記バリア層と前記熱伝導層とが積層された積層体で構成されている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の熱交換器。
【0013】
(7) 前記熱伝導層は、熱伝導率が0.2W/m・K以上、0.60W/m・K以下のものである上記(6)に記載の熱交換器。
【0014】
(8) 前記中空糸膜層は、筒体の形状をなし、前記中空糸膜が、前記筒体の中心軸に対して傾斜して、前記筒体の中心軸回りに巻回されてなるものである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の熱交換器。
【0015】
(9) 前記中空糸膜層は、前記複数本の中空糸膜が編み込まれて形成されたシート材を成形してなるものである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の熱交換器。
【0016】
(10) 前記中空糸膜の内側に、過酸化水素水を含む熱媒体を通過させて用いるものである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の熱交換器。
【0018】
(11) 上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の熱交換器を備えることを特徴とする人工肺。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、中空糸膜が備えるバリア層が、25℃における酸素透過係数が、6cc・cm/m2・24h/atm以下のものであるため、過酸化水素水を含む液体を熱媒体として用いた場合であっても、過酸化水素が中空糸膜を透過するのを防止することができる。よって、血液中の過酸化水素濃度が高まるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の熱交換器(第1実施形態)を備える人工肺の平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す人工肺を矢印A方向から見た図である。
【
図7】
図7は、
図1に示す人工肺が備える中空糸膜層を製造する過程を示す図((a)が斜視図、(b)が展開図)である。
【
図8】
図8は、
図1に示す人工肺が備える中空糸膜層を製造する過程を示す図((a)が斜視図、(b)が展開図)である。
【
図9】
図9は、
図1に示す中空糸膜層が備える中空糸膜の横断面図である。
【
図10】
図10は、
図1に示す熱交換器が備える中空糸膜における過酸化水素透過係数を求めるための実験を行っている状態を示す概略図である。
【
図11】
図11は、本発明の熱交換器(第2実施形態)が備える中空糸膜層となる以前の中空糸膜シートを示す平面図である。
【
図12】
図12は、
図11に示す中空糸膜シートを折りたたんで形成された中空糸膜層を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、本発明の熱交換器(第3実施形態)が備える中空糸膜層を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の熱交換器および人工肺を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
<第1実施形態>
図1は、本発明の熱交換器(第1実施形態)を備える人工肺の平面図である。
図2は、
図1に示す人工肺を矢印A方向から見た図である。
図3は、
図2中のB-B線断面図である。
図4は、
図2中の矢印C方向から見た図である。
図5は、
図1中のD-D線断面図である。
図6は、
図5中のE-E線断面図である。
図7は、
図1に示す人工肺が備える中空糸膜層を製造する過程を示す図((a)が斜視図、(b)が展開図)である。
図8は、
図1に示す人工肺が備える中空糸膜層を製造する過程を示す図((a)が斜視図、(b)が展開図)である。
図9は、
図1に示す中空糸膜層が備える中空糸膜の横断面図である。
【0023】
なお、
図1、
図3、
図4、
図7~
図9中の左側を「左」または「左方(一方)」、右側を「右」または「右方(他方)」という。また、
図1~
図6中、人工肺の内側を「血液流入側」または「上流側」、外側を「血液流出側」または「下流側」として説明する。
【0024】
図1~
図5に示す人工肺10は、全体形状がほぼ円柱状をなしている。この人工肺10は、内側に設けられ、血液に対し熱交換を行う熱交換部10Bと、熱交換部10Bの外周側に設けられ、血液に対しガス交換を行うガス交換部としての人工肺部10Aとを備える熱交換器付き人工肺である。人工肺10は、例えば血液体外循環回路中に設置して用いられる。
【0025】
人工肺10は、ハウジング2Aを有しており、このハウジング2A内に人工肺部10Aと熱交換部10B(熱交換器)とが収納されている。
【0026】
ハウジング2Aは、円筒状ハウジング本体21Aと、円筒状ハウジング本体21Aの左端開口を封止する皿状の第1の蓋体22Aと、円筒状ハウジング本体21Aの右端開口を封止する皿状の第2の蓋体23Aとで構成されている。
【0027】
円筒状ハウジング本体21A、第1の蓋体22Aおよび第2の蓋体23Aは、樹脂材料で構成されている。円筒状ハウジング本体21Aに対し、第1の蓋体22Aおよび第2の蓋体23Aは、融着や接着剤による接着等の方法により固着されている。
【0028】
円筒状ハウジング本体21Aの外周部には、管状の血液流出ポート28が形成されている。この血液流出ポート28は、円筒状ハウジング本体21Aの外周面のほぼ接線方向に向かって突出している(
図5参照)。
【0029】
円筒状ハウジング本体21Aの外周部には、管状のパージポート205が突出形成されている。パージポート205は、その中心軸が円筒状ハウジング本体21Aの中心軸と交差するように、円筒状ハウジング本体21Aの外周部に形成されている。
【0030】
第1の蓋体22Aには、管状のガス流出ポート27が突出形成されている。ガス流出ポート27は、その中心軸が第1の蓋体22Aの中心と交差するように、第1の蓋体22Aの外周部に形成されている(
図2参照)。
【0031】
また、血液流入ポート201は、その中心軸が第1の蓋体22Aの中心に対し偏心するように、第1の蓋体22Aの端面から突出している。
【0032】
第2の蓋体23Aには、管状のガス流入ポート26、熱媒体流入ポート202および熱媒体流出ポート203が突出形成されている。ガス流入ポート26は、第2の蓋体23Aの端面の縁部に形成されている。熱媒体流入ポート202および熱媒体流出ポート203は、それぞれ、第2の蓋体23Aの端面のほぼ中央部に形成されている。また、熱媒体流入ポート202および熱媒体流出ポート203の中心線は、それぞれ、第2の蓋体23Aの中心線に対してやや傾斜している。
【0033】
なお、本発明において、ハウジング2Aの全体形状は、必ずしも完全な円柱状をなしている必要はなく、例えば一部が欠損している形状、異形部分が付加された形状などでもよい。
【0034】
図3および
図5に示すように、ハウジング2Aの内部には、その内周面に沿った円筒状をなす人工肺部10Aが収納されている。人工肺部10Aは、円筒状の中空糸膜層3Aと、中空糸膜層3Aの外周側に設けられた気泡除去手段4Aとしてのフィルタ部材41Aとで構成されている。中空糸膜層3Aとフィルタ部材41Aとは、血液流入側から、中空糸膜層3A、フィルタ部材41Aの順に配置されている。
【0035】
また、人工肺部10Aの内側には、その内周面に沿った円筒状をなす熱交換部10Bが設置されている。熱交換部10Bは、中空糸膜層3Bを有している。
【0036】
図6に示すように、中空糸膜層3Aおよび3Bは、それぞれ、複数本の中空糸膜31で構成され、これらの中空糸膜31を層状に集積して積層させてなるものである。積層数は、特に限定されないが、例えば、3~40層が好ましい。なお、中空糸膜層3Aの各中空糸膜31は、それぞれ、ガス交換機能を有するものである。一方、中空糸膜層3Bの各中空糸膜31は、それぞれ、熱交換を行なう機能を有するものである。
【0037】
図3に示すように、中空糸膜層3Aおよび3Bは、それぞれ、その両端部が隔壁8および9により円筒状ハウジング本体21Aの内面に対し一括して固定されている。隔壁8、9は、例えば、ポリウレタン、シリコーンゴム等のポッティング材や接着剤等により構成されている。さらに、中空糸膜層3Bは、その内周部が、第1の円筒部材241の外周部に形成された凹凸部244に係合している。この係合と隔壁8および9による固定により、中空糸膜層3Bが円筒状ハウジング本体21Aに確実に固定され、よって、人工肺10の使用中に中空糸膜層3Bの位置ズレが生じるのを確実に防止することができる。また、凹凸部244は、中空糸膜層3B全体に血液Bを巡らせるための流路としても機能する。
【0038】
なお、
図5に示すように、中空糸膜層3Aの最大外径φD1
maxは、20mm~200mmであるのが好ましく、40mm~150mmであるのがより好ましい。中空糸膜層3Bの最大外径φD2
maxは、10mm~150mmであるのが好ましく、20mm~100mmであるのがより好ましい。また、
図3に示すように、中空糸膜層3Aおよび3Bの中心軸方向に沿った長さLは、30mm~250mmであるのが好ましく、50mm~200mmであるのがより好ましい。このような条件を有することにより、中空糸膜層3Aは、ガス交換機能に優れたものとなり、中空糸膜層3Bは、熱交換機能に優れたものとなる。
【0039】
ハウジング2A内の隔壁8と隔壁9との間における各中空糸膜31の外側、すなわち、中空糸膜31同士の隙間には、血液Bが
図6中の上側から下側に向かって流れる血液流路33が形成されている。
【0040】
血液流路33の上流側には、血液流入ポート201から流入した血液Bの血液流入部として、血液流入ポート201に連通する血液流入側空間24Aが形成されている(
図3、
図5参照)。
【0041】
血液流入側空間24Aは、円筒状をなす第1の円筒部材241と、第1の円筒部材241の内側に配置され、その内周部の一部に対向して配置された板片242とで画成された空間である。そして、血液流入側空間24Aに流入した血液Bは、第1の円筒部材241に形成された複数の側孔243を介して、血液流路33全体にわたって流下することができる。
【0042】
また、第1の円筒部材241の内側には、当該第1の円筒部材241と同心的に配置された第2の円筒部材245が配置されている。そして、
図3に示すように、熱媒体流入ポート202から流入した例えば水等の熱媒体Hは、第1の円筒部材241の外周側にある中空糸膜層3Bの各中空糸膜31の流路(中空部)32、第2の円筒部材245の内側を順に通過して、熱媒体流出ポート203から排出される。また、熱媒体Hが各中空糸膜31の流路32を通過する際に、血液流路33内で、当該中空糸膜31に接する血液Bとの間で熱交換(加温または冷却)が行われる。
【0043】
血液流路33の下流側においては、血液流路33を流れる血液B中に存在する気泡を捕捉する機能を有するフィルタ部材41Aが配置されている。
【0044】
フィルタ部材41Aは、ほぼ長方形をなすシート状の部材(以下、単に「シート」とも言う)で構成され、そのシートを中空糸膜層3Aの外周に沿って巻回して形成したものである。フィルタ部材41Aも、両端部がそれぞれ隔壁8、9で固着されており、これにより、ハウジング2Aに対し固定されている(
図3参照)。なお、このフィルタ部材41Aは、その内周面が中空糸膜層3Aの外周面に接して設けられ、該外周面のほぼ全面を覆っているのが好ましい。
【0045】
また、フィルタ部材41Aは、血液流路33を流れる血液中に気泡が存在していたとしても、その気泡を捕捉することができる(
図6参照)。また、フィルタ部材41Aにより捕捉された気泡は、血流によって、フィルタ部材41A近傍の各中空糸膜31内に押し込まれて入り込み、その結果、血液流路33から除去される。
【0046】
また、フィルタ部材41Aの外周面と円筒状ハウジング本体21Aの内周面との間には、円筒状の隙間が形成され、この隙間は、血液流出側空間25Aを形成している。この血液流出側空間25Aと、血液流出側空間25Aに連通する血液流出ポート28とで、血液流出部が構成される。血液流出部は、血液流出側空間25Aを有することにより、フィルタ部材41Aを透過した血液Bが血液流出ポート28に向かって流れる空間が確保され、血液Bを円滑に排出することができる。
【0047】
図3に示すように、第1の蓋体22Aの内側には、円環状をなすリブ291が突出形成されている。そして、第1の蓋体22Aとリブ291と隔壁8により、第1の部屋221aが画成されている。この第1の部屋221aは、ガスGが流出するガス流出室である。中空糸膜層3Aの各中空糸膜31の左端開口は、第1の部屋221aに開放し、連通している。人工肺10では、ガス流出ポート27および第1の部屋221aによりガス流出部が構成される。一方、第2の蓋体23Aの内側にも、円環状をなすリブ292が突出形成されている。そして、第2の蓋体23Aとリブ292と隔壁9とにより、第2の部屋231aが画成されている。この第2の部屋231aは、ガスGが流入してくるガス流入室である。中空糸膜層3Aの各中空糸膜31の右端開口は、第2の部屋231aに開放し、連通している。人工肺10では、ガス流入ポート26および第2の部屋231aによりガス流入部が構成される。
【0048】
ここで、本実施形態の人工肺10における血液の流れについて説明する。
この人工肺10では、血液流入ポート201から流入した血液Bは、血液流入側空間24A、側孔243を順に通過して、熱交換部10Bに流れ込む。熱交換部10Bでは、血液Bは、血液流路33を下流方向に向かって流れつつ、熱交換部10Bの各中空糸膜31の表面と接触して熱交換(加温または冷却)がなされる。このようにして熱交換がなされた血液Bは、人工肺部10Aに流入する。
【0049】
そして、人工肺部10Aでは、血液Bは、血液流路33をさらに下流方向に向かって流れる。一方、ガス流入ポート26から供給されたガス(酸素を含む気体)は、第2の部屋231aから人工肺部10Aの各中空糸膜31の流路32に分配され、該流路32を流れた後、第1の部屋221aに集積され、ガス流出ポート27より排出される。血液流路33を流れる血液Bは、人工肺部10Aの各中空糸膜31の表面に接触し、流路32を流れるガスGとの間でガス交換、すなわち、酸素加、脱炭酸ガスがなされる。
【0050】
ガス交換がなされた血液B中に気泡が混入している場合、この気泡は、フィルタ部材41Aにより捕捉され、フィルタ部材41Aの下流側に流出するのが防止される。
【0051】
以上のようにして熱交換、ガス交換が順になされ、さらに気泡が除去された血液Bは、血液流出ポート28より流出する。
【0052】
前述したように、中空糸膜層3Aおよび3Bは、いずれも、複数本の中空糸膜31で構成されたものである。中空糸膜層3Aと中空糸膜層3Bとは、用途が異なること以外は、同じ中空糸膜31を有するため、以下、中空糸膜層3Aについて代表的に説明する。
【0053】
中空糸膜31の内径φd
1は、50μm以上、700μm以下であるのが好ましく、70μm以上、600μm以下であるのがより好ましい(
図6参照)。中空糸膜31の外径φd
2は、100μm以上、1000μm以下であるのが好ましく、120μm以上、800μm以下であるのがより好ましい(
図6参照)。さらに、内径φd
1と外径φd
2との比d
1/d
2は、0.5以上、0.9以下あるのが好ましく、0.6以上、0.8以下であるのがより好ましい。このような条件を有する各中空糸膜31では、自身の強度を保ちつつ、当該中空糸膜31の中空部である流路32にガスGを流すときの圧力損失を比較的小さくすることができるとともに、その他、中空糸膜31の巻回状態を維持するのに寄与する。例えば、内径φd
1が前記上限値よりも大きいと、中空糸膜31の厚さが薄くなり、他の条件によっては、強度が低下する。また、内径φd
1が前記下限値よりも小さいと、他の条件によっては、中空糸膜31にガスGを流すときの圧力損失が大きくなる。
【0054】
また、隣り合う中空糸膜31同士の距離は、φd2の1/10以上、1/1以下であるのが好ましい。
【0055】
このような中空糸膜31の製造方法は、特に限定されないが、例えば、押出成形を用いた方法や、その他、延伸法または固液相分離法を用いた方法が挙げられる。この方法により、所定の内径φd1および外径φd2を有する中空糸膜31を製造することができる。
【0056】
各中空糸膜31の構成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルペンテン等の疎水性高分子材料が用いられ、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂であり、より好ましくは、ポリプロピレンである。このような樹脂材料を選択することは、中空糸膜31の巻回状態を維持するのに寄与するともに、製造時の低コスト化にも寄与する。
【0057】
そして、中空糸膜層3Aは、このような複数本の中空糸膜31を、以下のように、円柱状の芯材に巻き付けて製造される。
【0058】
図7および
図8は、中空糸膜層を製造している状態を示す図であって、(a)が斜視図、(b)が展開図である。
【0059】
図7および
図8に示すように、中空糸膜31を第1の円筒部材241(円筒体)の中心軸O回りに巻回しつつ、中心軸O方向に往復動させる。その際、中空糸膜31は、中心軸O方向の左側の始点311から巻回が開始され、右側に向かう。右側では、中空糸膜31は、折り返し点(折り返し部)312で折り返される。その後、中空糸膜31は、再度左側に戻って終点313に至る。例えば
図7に示す巻回態様では、中空糸膜31は、矢印i→ii→iii→iv→vの順に巻回されていく。そして、この一往復の間に、
図7に示すように、中空糸膜31は、所定の周回数Xで巻回される。
図7に示す巻回態様では、X=1であり、中空糸膜31は、一往復する間に、中心軸O回りに1周する。また、
図8に示す巻回態様では、中空糸膜31は、矢印i→ii→iii→iv→v→vi→viiの順に巻回されていく。そして、この一往復の間に、
図8に示すように、中空糸膜31は、中心軸O回りに2周する。
【0060】
このように、中空糸膜層3Aは、中空糸膜31が、その中心軸に対して傾斜して、かつ、中心軸回りに巻回されてなるものである。
【0061】
図9に示すように、中空糸膜31は、バリア層5と熱伝導層6とを有し、これらが内側からこの順で積層された積層体で構成されている。
【0062】
バリア層5は、熱媒体中の過酸化水素がその外側に透過するのを防止する機能を有している。
【0063】
ここで、このような人工肺10において、中空糸膜層3Bでは、熱媒体H(以下、単に、「熱媒体」と言う)として過酸化水素水を含む液体が用いられる。これにより、中空糸膜31の内側の殺菌を行うことができる。しかしながら、中空糸膜31の構成材料によっては、熱媒体から過酸化水素を透過してしまい、結果的に血液中に過酸化水素が混入してしまう可能性が有る。本発明によれば、このような問題を解決することができる。以下、中空糸膜31の構成について、詳細に説明する。
【0064】
中空糸膜31全体で見たとき、中空糸膜31は、25℃における酸素透過係数が、6cc・cm/m2・24h/atm以下のものとしたとき、中空糸膜31の外側の血液に過酸化水素が混入するのを防止することができる。なお、本明細書中での「酸素透過係数」とは、中空糸膜31における酸素の単位面積当たりの透過量[cc・cm/m2]を24時間、1気圧に換算した数値である。
【0065】
また、中空糸膜31が、25℃における酸素透過係数が、3.8cc・cm/m2・24h/atm以下であった場合、上記効果をさらに確実に発揮することができるとともに、長期間にわたって、上記効果を発揮することができる。
【0066】
また、中空糸膜31は、25℃における酸素透過係数が、0.1cc・cm/m2・24h/atm以上のものであるのが好ましい。酸素透過係数が、0.1cc・cm/m2・24h/atmよりも小さかった場合、バリア層5の材料の選定が困難になる。
【0067】
なお、酸素透過係数が上記数値範囲を超えると、過酸化水素の透過量が多くなり、血液中の過酸化水素濃度が高まる可能性が有る。
【0068】
また、本発明者らは、酸素透過係数と過酸化水素透過係数との相関係数は、0.99であり、これらは、相関関係にあることを見出した。従って、過酸化水素透過係数と酸素透過係数とのうち、いずれの係数を基準として中空糸膜31を製造しても、他方の係数は、必然的に上記数値範囲となると言える。
【0069】
以下、詳細に説明する。
また、バリア層5の厚さT5は、1μm以上、60μm以下であるのが好ましく、30μm以上、50μm以下であるのがより好ましい。バリア層5が薄すぎたら、酸素透過係数が低くなる傾向を示す。バリア層5が厚すぎると、中空糸膜31の内径を十分に確保する場合、中空糸膜31の外径が増大する傾向を示し、その結果、血液充填量が多くなり、使用者への負担が大きくなる可能性が有る。
【0070】
このバリア層5は、結晶性樹脂材料を主材料とするものである。本明細書において、「結晶性樹脂材料」とは、分子鎖が規則正しく配列された結晶領域の量の比率が高い樹脂をいい、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)などを挙げることができ、これらの中でも、脂肪族ポリアミドであるのが好ましい。
【0071】
脂肪族ポリアミドとしては、脂肪族ポリアミドの分子中に含まれるアミド基の炭素数をNとし、メチレン基の炭素数をnとしたとき、n/Nが9以上の脂肪族ポリアミドであるのが好ましく、例えば、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド10-10およびポリアミド10-12のうちの少なくとも1種であるのが好ましい。これにより、酸素透過係数を十分に低くすることができる。また、n/Nが9以上の脂肪族ポリアミドを用いることにより、バリア層5の吸水率を2%以下とすることができる。よって、過酸化水素水を含む熱媒体に対して、高い疎水性を発揮することができる。過酸化水素は、水との親和性が比較的高いため、吸水率が比較的高いと過酸化水素を透過しやすくなるが、バリア層5の吸水率を2%以下とすることにより、過酸化水素の過剰な透過を防止することができる。
【0072】
ここで、酸素透過係数を低くするためには、バリア層5の厚さを厚くすることが考えられるが、バリア層5を厚くしすぎると、酸素透過係数を低くすることができるものの、熱伝導性が低下する。その結果、中空糸膜層3Bの熱交換器としての機能が低下することが懸念される。このような観点から、中空糸膜31では、バリア層5の外側には、バリア層5よりも熱伝導率が高い熱伝導層6が設けられている。バリア層5の厚さを十分に確保することができるとともに、熱伝導層6によって、熱伝導性を補うことができる。よって、高い過酸化水素透過係数を維持しつつ、熱伝導性が低下するのを防止することができる。
【0073】
熱伝導層6は、熱伝導率が0.2W/m・K以上、0.60W/m・K以下のものであるのが好ましく、0.3W/m・K以上、0.55W/m・K以下のものであるのがより好ましい。これにより、上記効果をより確実に発揮することができる。
【0074】
このような熱伝導層6の材料としては、上記効果を発揮するものであれば特に限定されず、例えば、ポリオレフィン、ナイロン66のようなポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレートのようなポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。これらの中でも、高密度ポリエチレンが好ましい。これにより、上記効果を確実に発揮することができる。
【0075】
熱伝導層6の厚さT6は、10μm以上、60μm以下であるのが好ましく、20μm以上、50μm以下であるのがより好ましい。これにより、中空糸膜31の熱伝導性を十分に高めることができる。
【0076】
以上、説明したように、本発明によれば、バリア層5の25℃における酸素透過係数が、6cc・cm/m2・24h/atm以下とすることにより、過酸化水素がバリア層5を透過するのを防止することができることができ、中空糸膜31の外側に流れる血液中の過酸化水素濃度が高まるのを防止することができる。
【0077】
<第2実施形態>
図11は、本発明の熱交換器(第2実施形態)が備える中空糸膜層となる以前の中空糸膜シートを示す平面図である。
図12は、
図11に示す中空糸膜シートを折りたたんで形成された中空糸膜層を示す斜視図である。
【0078】
以下、この図を参照して本発明の熱交換器の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0079】
本実施形態は、中空糸膜層の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
本実施形態での人工肺10における中空糸膜層3Cは、
図11に示す中空糸膜シート300で構成されている。
【0080】
中空糸膜シート300は、複数本の中空糸膜31で構成された縦糸31aと複数本の中空糸膜31で構成された横糸31bとを有し、これらが編み込まれたシートである。
【0081】
図12に示すように、この中空糸膜シート300をその面方向に交互に折り返すことで、外形形状が角柱状をなす中空糸膜層3Cが形成されている。
【0082】
このような中空糸膜層3Cによっても前記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0083】
<第3実施形態>
図13は、本発明の熱交換器(第3実施形態)が備える中空糸膜層を示す斜視図である。
【0084】
以下、この図を参照して本発明の熱交換器の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、中空糸膜層の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0085】
図13に示すように、中空糸膜層3Dは、
図11に示す中空糸膜シート300をロール状に複数回巻回し、円筒状に成形されたものである。
【0086】
このような本実施形態によっても、前記第1実施形態および前記第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0087】
以上、本発明の熱交換器および人工肺を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0088】
また、人工肺部の中空糸膜層を構成する各中空糸膜と、熱交換部の中空糸膜層を構成する各中空糸膜とは、前記実施形態では同じものであったが、これに限定されず、例えば、一方(前者)の中空糸膜が他方(後者)の中空糸膜よりも細くてもよいし、双方の中空糸膜が互いに異なる材料で構成されていてもよい。
【0089】
また、人工肺部と熱交換部とは、前記実施形態では熱交換部が内側に配置され、人工肺部が外側に配置されていたが、これに限定されず、人工肺部が内側に配置され、熱交換部が外側に配置されていてもよい。この場合、血液は、外側から内側に向かって流下する。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0091】
1.熱交換器の作製
(実施例1)
図1~
図5に示すような熱交換器を作製した。この熱交換器では、中空糸膜は、表1に示すような特性のPETで構成され、内径が480μm、外径が600μmである。
【0092】
(実施例2)
中空糸膜の構成材料を、表1に示すような特性のポリアミド12(ダイセルエボニック社製、「ダイアミド」)としたこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例2の熱交換器を得た。
【0093】
(比較例1)
中空糸膜の構成材料を、表1に示すような特性のポリウレタンとしたこと以外は、前記実施例1と同様にして比較例1の熱交換器を得た。
【0094】
(比較例2)
中空糸膜の構成材料を、表1に示すような特性のポリアミドエストラマー(東洋紡社製、「ペルプレン」)としたこと以外は、前記実施例1と同様にして比較例2の熱交換器を得た。
【0095】
2.評価
前記各実施例および前記各比較例を以下の方法で評価した。
【0096】
図10は、
図1に示す熱交換器が備える中空糸膜における過酸化水素透過係数を求めるための実験を行っている状態を示す概略図である。この
図10に示す循環システム100は、生食水供給ライン400と、熱媒体供給ライン500と、人工肺10とを有している。
【0097】
生食水供給ライン400は、その途中に設けられたポンプ401を有し、人工肺10の中空糸膜層3Bの中空糸膜31の外側に生食水を供給し、循環させるものである。本実施形態では、生食水を血液とみなして実験を行う。
【0098】
熱媒体供給ライン500は、その途中に設けられたポンプ501と、熱媒体の温度を調節する温度調節部502と、熱媒体貯留部503とを有している。熱媒体供給ライン500は、人工肺10の中空糸膜層3Bの中空糸膜31の内側に熱媒体を供給し、循環させるものである。
【0099】
循環システム100では、中空糸膜31の外側を循環している生食水に対して、中空糸膜31の内側を循環している熱媒体が、中空糸膜31を介して熱交換を行う。
【0100】
また、生食水供給ライン400では、生食水の濃度を0.9%[g/L]とし、29.5℃以上、30.5℃に保ち、4L/minの流量で流下させた。
【0101】
また、熱媒体供給ライン500では、熱媒体の過酸化水素濃度を0.033%[v/v]とし、29.5℃以上、30.5℃に保ち、10L/minの流量で流下させた。
【0102】
このような条件の下、さらに以下に示す条件での実験により生食水中の過酸化水素の透過量を測定した。
【0103】
<過酸化水素透過量1>
図10に示す循環システム100を用いて、熱媒体の過酸化水素濃度を0.033%[v/v]とし、29.5℃以上、30.5℃に保ち、10L/minの流量で3時間流下させた。
【0104】
<過酸化水素透過量2>
図10に示す循環システム100を用いて、熱媒体の過酸化水素濃度を0.033%[v/v]とし、29.5℃以上、30.5℃に保ち、10L/minの流量で6時間流下させた。
【0105】
<環境ストレスクラック>
高水準消毒薬過酸化水素水(6%含有)、中水準消毒薬(次亜塩素酸ナトリウム1%含有)および低水準消毒薬(ベンザルコニウム塩化物液0.2%含有)にそれぞれ24時間ずつ含浸し、顕微鏡にて中空糸膜の表面観察を行い、表面にひび割れ、液漏れが生じているか否かを観察して、以下の評価基準に基づいて評価を行った。
【0106】
○ :ひび割れ、液漏れが生じていない。
△ :液漏れは生じていないが、若干のひび割れが確認された。
× :ひび割れ、液漏れが生じていた。
これらの評価結果を表1に示す。
【0107】
【0108】
表1から明らかなように、実施例1、2の熱交換器は、比較例1、2の熱交換器よりも、酸素透過係数および過酸化水素透過量が少なく、血液中の過酸化水素濃度が高まるのを防止することができることが確認された。
【0109】
なお、本発明では、中空糸膜31の酸素透過係数を6cc・cm/m2・24h/atm以下とすることにより、現存する人工心肺用中空糸膜よりも、過酸化水素水のバリア性が優れた熱交換器が得られるということは確認されている。
【0110】
また、上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の熱交換器は、複数本の中空糸膜を有し、該複数本の中空糸膜が集積された中空糸膜層を備える熱交換器であって、前記中空糸膜は、過酸化水素バリア性を有するバリア層を有し、前記バリア層は、25℃における酸素透過係数が、6cc・cm/m2・24h/atm以下のものであることを特徴とする。本発明によれば、中空糸膜が備えるバリア層が、25℃における酸素透過係数が、6cc・cm/m2・24h/atm以下のものであるため、過酸化水素水を含む液体を熱媒体として用いた場合であっても、過酸化水素が中空糸膜を透過するのを防止することができる。よって、血液中の過酸化水素濃度が高まるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0112】
10 人工肺
10A 人工肺部
10B 熱交換部
2A ハウジング
3A 中空糸膜層
3B 中空糸膜層
3C 中空糸膜層
3D 中空糸膜層
4A 気泡除去手段
41A フィルタ部材
5 バリア層
6 熱伝導層
8 隔壁
9 隔壁
21A 円筒状ハウジング本体
22A 第1の蓋体
221a 第1の部屋
23A 第2の蓋体
231a 第2の部屋
24A 血液流入側空間
241 第1の円筒部材
242 板片
243 側孔
244 凹凸部
245 第2の円筒部材
25A 血液流出側空間
26 ガス流入ポート
27 ガス流出ポート
28 血液流出ポート
291 リブ
292 リブ
31 中空糸膜
31a 縦糸
31b 横糸
311 始点
312 折り返し点
313 終点
32 流路
33 血液流路
201 血液流入ポート
202 熱媒体流入ポート
203 熱媒体流出ポート
205 パージポート
100 循環システム
300 中空糸膜シート
400 生食水供給ライン
401 ポンプ
500 熱媒体供給ライン
501 ポンプ
502 温度調節部
503 熱媒体貯留部
B 血液
G ガス
H 熱媒体
O 中心軸
T5、T6 厚さ
φD1max 最大外径
φD2max 最大外径
φd1 内径
φd2 外径