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特許7061602(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミドの液体製剤
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  • 特許-(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミドの液体製剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミドの液体製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20220421BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220421BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220421BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220421BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220421BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220421BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220421BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20220421BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/26
A61K47/40
A61P35/00
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2019502549
(86)(22)【出願日】2017-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-25
(86)【国際出願番号】 US2017025939
(87)【国際公開番号】W WO2017176751
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】62/318,041
(32)【優先日】2016-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/323,452
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/329,561
(32)【優先日】2016-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516115430
【氏名又は名称】ロクソ オンコロジー, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Loxo Oncology, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】レイノルズ マーク
(72)【発明者】
【氏名】スミス スティーヴン エー.
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/039006(WO,A1)
【文献】特表2009-504746(JP,A)
【文献】特表2013-515062(JP,A)
【文献】特開2015-145382(JP,A)
【文献】Abstracts: AACR-NCI-EORTC International Conference: Molecular Targets and Cancer Therapeutics, Drug Resistance and Modifiers,Vol.14, Issue.12,2015年,Supple.2
【文献】Abstracts, ELCC 2016 - Tumour biology and pathology,2016年04月01日,Vol.11, Issue.4,Supplement,p.S67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/519
A61K 9/08
A61K 47/02
A61K 47/10
A61K 47/12
A61K 47/14
A61K 47/26
A61K 47/40
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ;
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン;
クエン酸ナトリウム;および
甘味料;
を含む、液体製剤であって、
約2.5~約5.5のpHを有し、
式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせが、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する、液体製剤。
【請求項2】
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが、約13重量%~約17重量%の量で存在する、請求項1に記載の液体製剤。
【請求項3】
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが、約15重量%の量で存在する、請求項1または2に記載の液体製剤。
【請求項4】
クエン酸ナトリウムが、クエン酸ナトリウム一水和物およびクエン酸ナトリウム二水和物の少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項5】
クエン酸ナトリウムがクエン酸ナトリウム二水和物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項6】
クエン酸ナトリウム二水和物が、約0.7重量%~約1.5重量%の量で存在する、請求項4または5に記載の液体製剤。
【請求項7】
クエン酸ナトリウム二水和物が、液体製剤中で、約1.1重量%の量で存在する、請求項4~6のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項8】
前記甘味料がショ糖、グリセリン、ソルビトール、および香味料を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項9】
前記甘味料が、クエン酸およびリン酸ナトリウムをさらに含む、請求項8に記載の液体製剤。
【請求項10】
前記甘味料が、メチルパラベンおよびソルビン酸カリウムをさらに含む、請求項9に記載の液体製剤。
【請求項11】
前記甘味料が、約45重量%~約55重量%の量で存在する、請求項8~10のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項12】
前記甘味料が、液体製剤中で、約50重量%の量で存在する、請求項8~11のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項13】
苦味マスキング剤をさらに含む、請求項8~12のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項14】
前記苦味マスキング剤が、約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在する、請求項13に記載の液体製剤。
【請求項15】
前記甘味料が、スクラロースを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項16】
香味料をさらに含む、請求項15に記載の液体製剤。
【請求項17】
前記香味料が、天然液果香味料を含む、請求項16に記載の液体製剤。
【請求項18】
前記香味料が、約0.01重量%~約0.1重量%の量で存在する、請求項16または17に記載の液体製剤。
【請求項19】
前記式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩から調製される、請求項1~18のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項20】
前記式(I)の化合物の硫酸水素塩から調製される、請求項1~19のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項21】
式(I):
【化2】
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ;
約13重量%~約17重量%の量で存在するヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン;
約0.7重量%~約1.5重量%の量で存在するクエン酸ナトリウム二水和物;
ショ糖、グリセリン、ソルビトール、および香味料を含み、クエン酸とリン酸ナトリウムで緩衝され、メチルパラベンとソルビン酸カリウムで保存されており、約45重量%~約55重量%の量で存在する甘味料;および
液体製剤中で、約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在する苦味マスキング剤;
を含む液体製剤であって、
約2.5~約5.5のpHを有し、
式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせが、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する、液体製剤。
【請求項22】
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが、液体製剤中で、約15重量%の量で存在する、請求項21に記載の液体製剤。
【請求項23】
クエン酸ナトリウム二水和物が、約1.1重量%の量で存在する、請求項21または22に記載の液体製剤。
【請求項24】
前記苦味マスキング剤が、液体製剤中で、約0.4重量%の量で存在する、請求項21~23のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項25】
式(I):
【化3】
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ;
約13重量%~約17重量%の量で存在するヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン;
約0.7重量%~約1.5重量%の量で存在するクエン酸ナトリウム二水和物;
スクラロースを含む甘味剤;および
約0.01重量%~約0.1重量%の量で存在する香味料;
を含む液体製剤であって、
約3~約4のpHを有し、
式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせが、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する、液体製剤。
【請求項26】
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが、約15重量%の量で存在する、請求項25に記載の液体製剤。
【請求項27】
クエン酸ナトリウム二水和物が、約1.1重量%の量で存在する、請求項25または26に記載の液体製剤。
【請求項28】
必要としている患者において癌を処置するための請求項1~27のいずれか一項に記載の液体製剤であって、
前記癌が、Trkキナーゼにより媒介される、液体製剤。
【請求項29】
前記癌が、Trkキナーゼの過剰発現、活性化、増幅、および変異のうちの1つまたは複数に関連する、請求項28に記載の液体製剤。
【請求項30】
前記癌が、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくはレベルの調節不全を有すると判定される、請求項28に記載の液体製剤。
【請求項31】
NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくはレベルの前記調節不全が、Trk融合タンパク質の翻訳をもたらす染色体転座である、請求項30に記載の液体製剤。
【請求項32】
前記Trk融合タンパク質が、TP53-TrkA、LMNA-TrkA、CD74-TrkA、TFG-TrkA、TPM3-TrkA、NFASC-TrkA、BCAN-TrkA、MPRIP-TrkA、TPR-TrkA、RFWD2-TrkA、IRF2BP2-TrkA、SQSTM1-TrkA、SSBP2-TrkA、RABGAP1L-TrkA、C18ORF8-TrkA、RNF213-TrkA、TBC1D22A-TrkA、C20ORF112-TrkA、DNER-TrkA、ARHGEF2-TrkA、CHTOP-TrkA、PPL-TrkA、PLEKHA6-TrkA、PEAR1-TrkA、MRPL24-TrkA、MDM4-TrkA、LRRC71-TrkA、GRIPAP1-TrkA、EPS15-TrkA、DYNC2H1-TrkA、CEL-TrkA、EPHB2-TrkA、TGF-TrkA、NACC2-TrkB、QKI-TrkB、AFAP1-TrkB、PAN3-TrkB、SQSTM1-TrkB、TRIM24-TrkB、VCL-TrkB、AGBL4-TrkB、DAB2IP-TrkB、ETV6-TrkC、BTBD1-TrkC、LYN-TrkC、RBPMS-TrkC、EML4-TrkC、HOMER2-TrkC、TFG-TrkC、FAT1-TrkC、およびTEL-TrkCからなる群から選択される、請求項31に記載の液体製剤。
【請求項33】
NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性の前記調節不全が、前記遺伝子の1つまたは複数の点変異である、請求項30に記載の液体製剤。
【請求項34】
前記NTRK1遺伝子の前記1つまたは複数の点変異が、アミノ酸置換:R33W、A336E、A337T、R324Q、R324W、V420M、R444Q、R444W、G517R、G517V、K538A、R649W、R649L、R682S、V683G、R702C、およびC1879Tのうちの1つまたは複数を有するTrkAタンパク質の翻訳をもたらす、請求項33に記載の液体製剤。
【請求項35】
前記NTRK遺伝子の前記1つまたは複数の点変異が、アミノ酸置換:A13T、E142K、R136H、V619M、F663L、G639R、G709C、G709S、およびG709Sのうちの1つまたは複数を有するTrkBタンパク質の翻訳をもたらす、請求項33に記載の液体製剤。
【請求項36】
前記NTRK遺伝子の前記1つまたは複数の点変異が、アミノ酸置換:V603M、F617L、G623R、G696C、G696A、およびG696Sのうちの1つまたは複数を有するTrkCタンパク質の翻訳をもたらす、請求項33に記載の液体製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年4月4日に出願された米国特許仮出願第62/318,041号;2016年4月15日に出願された同第62/323,452号;および2016年4月29日に出願された同第62/329,561号に対する優先権を主張する。これらの特許仮出願のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
1.発明の分野
本開示は、(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド(式I)、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせの液体製剤と、疼痛、炎症、癌、および特定の感染症の処置における該液体製剤の使用とに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
Trkは、ニューロトロフィン(NT)と呼ばれる可溶性成長因子群により活性化される高親和性受容体チロシンキナーゼである。Trk受容体ファミリーには、3種のメンバー、TrkA、TrkB、およびTrkCがある。ニューロトロフィンには、(i)TrkAを活性化する神経成長因子(NGF)、(ii)TrkBを活性化する脳由来神経栄養因子(BDNF)、およびNT-4/5、ならびに(iii)TrkCを活性化するNT3がある。Trkは神経組織中に広範囲に発現し、神経細胞の維持、シグナル伝達および生存に関与している(Patapoutian,A.et al.,Current Opinion in Neurobiology,2001,11,272-280)。
【0004】
最近の文献では、Trkの過剰発現、活性化、増幅、および/または変異が以下を含む多くの癌と関連していることが示されている:神経芽腫(Brodeur,G.M.,Nat.Rev.Cancer 2003,3,203-216)、卵巣癌(Davidson.,B.et al.,Clin.Cancer Res.2003,9,2248-2259)、乳癌(Kruettgen et al.,Brain Pathology 2006,16:304-310)、前立腺癌(Dionne et al.,Clin.Cancer Res.1998,4(8):1887-1898)、膵臓癌(Dang et al.,Journal of Gastroenterology and Hepatology 2006,21(5):850-858)、多発性骨髄腫(Hu et al.,Cancer Genetics and Cytogenetics 2007,178:1-10)、星状細胞腫および髄芽腫(Kruettgen et al.,Brain Pathology 2006,16:304-310)、神経膠腫(Hansen et al.,Journal of Neurochemistry 2007,103:259-275)、黒色腫(Nakagawara,A.(2001)Cancer Letters 169:107-114;Meyer,J.et al.(2007)Leukemia,1-10;Pierottia,M.A.and Greco A.,(2006)Cancer Letters 232:90-98;Eric Adriaenssens,E.et al.Cancer Res(2008)68:(2)346-351)、甲状腺癌(Brzezianska et al.,Neuroendocrinology Letters 2007,28(3),221-229)、肺腺癌(Perez-Pinera et al.,Molecular and Cellular Biochemistry 2007,295(1&2),19-26)、大細胞神経内分泌癌(Marchetti et al.,Human Mutation 2008,29(5),609-616)、および結腸直腸癌(Bardelli,A.,Science 2003,300,949)。癌の前臨床モデルでは、Trk阻害剤は、腫瘍増殖の抑制および腫瘍転移の阻止の両方で効果的である。特に、TrkA、TrkB、TrkCおよびTrk/Fcキメラの非選択的小分子阻害剤は、腫瘍増殖の抑制および腫瘍転移の阻止の両方で効果的である(Nakagawara,A.(2001)Cancer Letters 169:107-114;Meyer,J.et al.(2007)Leukemia,1-10;Pierottia,M.A.and Greco A.,(2006)Cancer Letters 232:90-98;Eric Adriaenssens,E.et al.Cancer Res(2008)68:(2)346-351)。 したがって、Trkファミリーのキナーゼの阻害剤は、癌の処置に有用であることが予測される。
【0005】
さらに、Trk/ニューロトロフィン経路の阻害剤は、多くの前臨床疼痛動物モデルで効果的であることが実証された。例えば、アンタゴニストNGFおよびTrkA抗体(例えば、RN-624)は、炎症性および神経障害性疼痛動物モデルおよびヒト臨床試験で効果的であることが示された(Woolf,C.J.et al.(1994)Neuroscience 62,327-331;Zahn,P.K.et al.(2004)J.Pain 5,157-163;McMahon,S.B.et al.,(1995)Nat.Med.1,774-780;Ma,Q.P.and Woolf,C.J.(1997)Neuroreport 8,807-810;Shelton,D.L.et al.(2005)Pain 116,8-16;Delafoy,L.et al.(2003)Pain 105,489-497;Lamb,K.et al.(2003)Neurogastroenterol.Motil.15,355-361;Jaggar,S.I.et al.(1999)Br.J.Anaesth.83,442-448)。さらに、最近の文献では、炎症後、BDNFレベルおよびTrkBシグナル伝達が後根神経節で増大することが示され(Cho,L.et al.Brain Research 1997,749,358)、いくつかの調査では、BDNF/TrkB経路を通るシグナル伝達の減少により神経過敏化および関連疼痛が抑制されることが示されている(Chang-Qi,L et al.Molecular Pain 2008,4:27)。
【0006】
腫瘍細胞により分泌されたNGFおよび腫瘍浸潤マクロファージが、末梢痛覚線維上に位置するTrkAを直接的に刺激することが示された。マウスとラットの両方で種々の腫瘍モデルを用いて、モノクローナル抗体を用いたNGFの中和により癌関連疼痛がモルヒネの最大耐量と同程度またはそれより高い程度まで抑制されることが示された。さらに、多数の調査で、BDNF/TrkB経路の活性化は、炎症性疼痛(Matayoshi,S.,J.Physiol.2005,569:685-95)、神経障害性疼痛(Thompson,S.W.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1999,96:7714-18)、および外科的疼痛(Li,C.-Q.et al.,Molecular Pain,2008,4(28),1-11)を含む様々な種類の疼痛のモジュレーターとして関連付けられてきた。TrkAおよびTrkBキナーゼは、NGF駆動生物学的応答のメディエーターとして機能し得るので、TrkAおよび/またはその他のTrkキナーゼの阻害剤は、慢性疼痛状態に対する効果的処置を提供する可能性がある。
【0007】
現在の疼痛状態に対する治療計画は、いくつかの種類の化合物を利用する。オピオイド(例えば、モルヒネ)は、嘔吐作用、便秘作用および弱い呼吸作用、ならびに嗜癖の可能性を含むいくつかの欠点を有する。非ステロイド抗炎症性鎮痛剤(NSAID、例えば、COX-1またはCOX-2型)もまた、激痛の処置での不十分な効力を含む欠点を有する。さらに、COX-1阻害剤は、粘膜の潰瘍を生じる場合がある。したがって、疼痛、特に慢性疼痛の軽減のための新規の、より効果的な処置に対する必要性が引き続き存在する。
【0008】
さらに、ニューロトロフィン/Trk経路の阻害は、炎症性疾患の前臨床モデルの処置に効果的であることが示された。例えば、ニューロトロフィン/Trk経路の阻害は、喘息を含む炎症性の肺疾患(Freund-Michel,V;Frossard,N.;Pharmacology & Therapeutics(2008),117(1),52-76)、間質性膀胱炎(Hu Vivian Y;et.al.The Journal of Urology(2005),173(3),1016-21)、潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む炎症性腸疾患(Di Mola,F.F,et.al.,Gut(2000),46(5),670-678)および炎症性皮膚疾患、例えば、アトピー性皮膚炎(Dou,Y.-C.;et.al.Archives of Dermatological Research(2006),298(1),31-37)、湿疹および乾癬(Raychaudhuri,S.P.;et.al.Journal of Investigative Dermatology(2004),122(3),812-819)の前臨床モデルに関連付けられてきた。
【0009】
ニューロトロフィン/Trk経路、特にBDNF/TrkB経路はまた、多発性硬化症、パーキンソン病およびアルツハイマー病を含む神経変性疾患の病因に関連付けられてきた(Sohrabji,Farida;Lewis,Danielle K.Frontiers in Neuroendocrinology(2006),27(4),404-414)。ニューロトロフィン(neutrophin)/Trk経路のモジュレーションは、これらの疾患および関連疾患の処置に有用である可能性がある。
【0010】
TrkA受容体はまた、ヒト宿主のトリパノソーマ・クルージの寄生虫感染症(シャーガス病)の感染における疾病過程に不可欠であると考えられている(de Melo-Jorge,M.et al.Cell Host & Microbe(2007),1(4),251-261)。したがって、TrkA阻害は、シャーガス病および関連原生動物感染の処置に有用であり得る。
【0011】
Trk阻害剤はまた、骨粗鬆症、関節リウマチ、および骨転移などの骨リモデリングの調節不均衡に関連する疾患の処置にも使用され得る。骨転移は、癌の高頻度合併症であり、進行型乳癌または前立腺癌の患者の最大70%で、および肺、結腸、胃、膀胱、子宮、直腸、甲状腺、または腎臓の癌の患者の約15~30%で発症する。骨融解性転移は、激痛、病的骨折、命に関わる高カルシウム血症、脊髄圧迫、およびその他の神経圧迫症候群を引き起こし得る。このような理由のために、骨転移は深刻で費用のかかる癌の合併症である。したがって、増殖性骨芽細胞のアポトーシスを誘導できる物質は極めて有益であろう。TrkAおよびTrkC受容体の発現が、骨折のマウスモデルの骨形成部位で観察された(K.Asaumi,et al.,Bone(2000)26(6)625-633)。さらに、ほとんど全ての骨形成細胞中でNGFの局在化が観察された(K.Asaumi,et al.)。最近、汎Trk阻害剤は、ヒトhFOB骨芽細胞中の3種全てのTrk受容体に結合したニューロトロフィンにより活性化されたチロシンシグナル伝達を阻害することが示された(J.Pinski,et al.,(2002)62,986-989)。これらのデータは、癌患者における骨転移などの骨リモデリング疾患の処置のためにTrk阻害剤を使用する根拠を裏付ける。
【0012】
疼痛または癌の処置に有用であるといわれているいくつかの種類のTrkキナーゼ小分子阻害剤が知られている(Expert Opin.Ther.Patents(2009)19(3))。
【0013】
国際公開第2006/115452号および同2006/087538号は、疼痛または癌の処置に有用である得るTrkキナーゼ阻害剤であるといわれているいくつかの種類の小分子について記載している。
【0014】
ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン化合物が知られている。例えば、国際公開第2008/037477号は、3位置にアルキル、アリールまたはヘテロ環基を有するピラゾロ[1,5-a]ピリミジン化合物を開示している。これらの化合物は、PI3Kおよび/またはmTOR脂質キナーゼ阻害剤であることが明らかになっている。
【0015】
PCT特許公報番号国際公開第2008/0058126号は、3位置にフェニル基を有するピラゾロ[1,5-a]ピリミジン化合物を開示している。これらの化合物は、Pimキナーゼ阻害剤であることが明らかになっている。
【0016】
米国特許出願公開第2006/0094699号は、グルココルチコイド受容体アゴニストとの併用療法で使用するために、3位置に-C(=O)NH-フェニル、-C(=O)(4-メチルピペリジニル)または-C(=O)NMe(CH-トリメチルピラゾリル)基を有するピラゾロ[1,5-a]ピリミジン化合物を開示している。
【0017】
PCT特許公報番号国際公開第2010/033941号、同2010/048314号、同2011/006074号、および同2011/146336号は、Trkファミリープロテインチロシンキナーゼ阻害を示す化合物を開示しており、これらは、疼痛、癌、炎症、神経変性疾患および特定の感染症の処置に有用である。
【0018】
国際公開第2010/048314号は、実施例14Aで、(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミドの硫酸水素塩を開示している。国際公開第2010/048314号は、その文献の実施例14Aの方法に従って調製した場合に、本明細書に記載の特定の形態の硫酸水素塩を開示していない。特に、国際公開第2010/048314号は、後述の結晶形(I-HS)を開示していない。
【0019】
本開示に引用されている科学論文、特許公報および出願、などの全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0020】
概要
本明細書で提供されるのは、可溶化剤および式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせを含む液体製剤である。
【0021】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、約0.5重量%~約7重量%の量で存在する。例えば、式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中に、約1.5重量%~約2.5重量%の量で存在し得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約5mg/mL~約50mg/mLの濃度を有する。例えば、式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約15mg/mL~約35mg/mLの濃度を有し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約20mg/mLの濃度を有する。
【0023】
可溶化剤は、シクロデキストリン、グリコール、グリセロール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択できる。いくつかの実施形態では、可溶化剤は、シクロデキストリンを含む。例えば、可溶化剤は、β-シクロデキストリン誘導体、γ-シクロデキストリン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択できる。いくつかの実施形態では、可溶化剤は、ヒドロキシアルキル-γ-シクロデキストリンを含む。可溶化剤は、ヒドロキシアルキル-β-シクロデキストリン、スルホアルキルエーテル-β-シクロデキストリン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるβ-シクロデキストリンを含み得る。いくつかの実施形態では、可溶化剤は、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、可溶化剤は、液体製剤中に、約5重量%~約35重量%の量で存在する。例えば、可溶化剤は、液体製剤中に、約13重量%~約17重量%の量で存在し得る。
【0025】
液体製剤は、緩衝液をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、緩衝液は、クエン酸塩緩衝液、乳酸塩緩衝液、リン酸緩衝液、マレイン酸塩緩衝液、酒石酸塩緩衝液、コハク酸塩緩衝液、または酢酸塩緩衝液のうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施形態では、緩衝液は、乳酸リチウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、マレイン酸リチウム、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸カリウム、マレイン酸カルシウム、酒石酸リチウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カルシウム、コハク酸リチウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸カルシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、または酢酸カルシウムのうちの少なくとも1種を含む。緩衝液は、クエン酸塩緩衝液であり得る。クエン酸塩緩衝液は、クエン酸リチウム一水和物、クエン酸ナトリウム一水和物、クエン酸カリウム一水和物、クエン酸カルシウム一水和物、クエン酸リチウム二水和物、クエン酸ナトリウム二水和物、クエン酸カリウム二水和物、クエン酸カルシウム二水和物、クエン酸リチウム三水和物、クエン酸ナトリウム三水和物、クエン酸カリウム三水和物、クエン酸カルシウム三水和物、クエン酸リチウム四水和物、クエン酸ナトリウム四水和物、クエン酸カリウム四水和物、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸リチウム五水和物、クエン酸ナトリウム五水和物、クエン酸カリウム五水和物、クエン酸カルシウム五水和物、クエン酸リチウム六水和物、クエン酸ナトリウム六水和物、クエン酸カリウム六水和物、クエン酸カルシウム六水和物、クエン酸リチウム七水和物、クエン酸ナトリウム七水和物、クエン酸カリウム七水和物、またはクエン酸カルシウム七水和物のうちの少なくとも1種を含み得る。いくつかの実施形態では、緩衝液は、クエン酸ナトリウム一水和物、クエン酸カリウム一水和物、クエン酸カルシウム一水和物、クエン酸ナトリウム二水和物、クエン酸カリウム二水和物、クエン酸カルシウム二水和物、クエン酸ナトリウム三水和物、クエン酸カリウム三水和物、クエン酸カルシウム三水和物、クエン酸ナトリウム四水和物、クエン酸カリウム四水和物、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸ナトリウム五水和物、クエン酸カリウム五水和物、クエン酸カルシウム五水和物、クエン酸ナトリウム六水和物、クエン酸カリウム六水和物、クエン酸カルシウム六水和物、クエン酸ナトリウム七水和物、クエン酸カリウム七水和物、またはクエン酸カルシウム七水和物のうちの少なくとも1種を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、緩衝液は、クエン酸ナトリウム二水和物を含む。
【0027】
緩衝液は、液体製剤中に、約0.1重量%~約5重量%の量で存在し得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、製剤は、約2~約7のpHを有する。例えば、製剤は、約3~約4のpHを有し得る。いくつかの実施形態では、製剤は、約3.5のpHを有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、液体製剤のpHは調節される。いくつかのこのような実施形態では、製剤は塩基を含む。例えば、塩基は、クエン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、炭酸塩、および水酸化物のうちの1種または複数を含み得る。いくつかの実施形態では、製剤は、乳酸リチウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、マレイン酸リチウム、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸カリウム、マレイン酸カルシウム、酒石酸リチウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カルシウム、コハク酸リチウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸カルシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施形態では、塩基は、クエン酸塩を含む。クエン酸塩は、クエン酸リチウム一水和物、クエン酸ナトリウム一水和物、クエン酸カリウム一水和物、クエン酸カルシウム一水和物、クエン酸リチウム二水和物、クエン酸ナトリウム二水和物、クエン酸カリウム二水和物、クエン酸カルシウム二水和物、クエン酸リチウム三水和物、クエン酸ナトリウム三水和物、クエン酸カリウム三水和物、クエン酸カルシウム三水和物、クエン酸リチウム四水和物、クエン酸ナトリウム四水和物、クエン酸カリウム四水和物、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸リチウム五水和物、クエン酸ナトリウム五水和物、クエン酸カリウム五水和物、クエン酸カルシウム五水和物、クエン酸リチウム六水和物、クエン酸ナトリウム六水和物、クエン酸カリウム六水和物、クエン酸カルシウム六水和物、クエン酸リチウム七水和物、クエン酸ナトリウム七水和物、クエン酸カリウム七水和物、またはクエン酸カルシウム七水和物のうちの少なくとも1種を含み得る。いくつかの実施形態では、液体製剤は、クエン酸ナトリウム一水和物、クエン酸カリウム一水和物、クエン酸カルシウム一水和物、クエン酸ナトリウム二水和物、クエン酸カリウム二水和物、クエン酸カルシウム二水和物、クエン酸ナトリウム三水和物、クエン酸カリウム三水和物、クエン酸カルシウム三水和物、クエン酸ナトリウム四水和物、クエン酸カリウム四水和物、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸ナトリウム五水和物、クエン酸カリウム五水和物、クエン酸カルシウム五水和物、クエン酸ナトリウム六水和物、クエン酸カリウム六水和物、クエン酸カルシウム六水和物、クエン酸ナトリウム七水和物、クエン酸カリウム七水和物、またはクエン酸カルシウム七水和物のうちの少なくとも1種を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、塩基は、クエン酸ナトリウム二水和物を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、製剤は、約0.1重量%~約5重量%のクエン酸塩などの塩基(例えば、クエン酸ナトリウム二水和物)を含む。
【0032】
液体製剤は、甘味料をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、甘味料は、糖を含む。糖はショ糖を含み得る。いくつかの実施形態では、甘味料は、高甘味度甘味料を含む。高甘味度甘味料は、スクラロースを含み得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、甘味料は、液体製剤中に、約30重量%~約70重量%の量で存在する。例えば、甘味料は、液体製剤中に、約45重量%~約55重量%の量で存在し得る。
【0034】
液体製剤は、苦味マスキング剤をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、苦味マスキング剤は、液体製剤中に、約0.01重量%~約2重量%の量で存在する。例えば、苦味マスキング剤は、液体製剤中に、約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在し得る。
【0035】
液体製剤は、香味料をさらに含むことができる。香味料は、天然香味料、天然果実香味料、人工香味料、人工果実香味料、またはフレーバー強化剤のうちの少なくとも1種を含み得る。いくつかの実施形態では、香味料は、液体製剤中に、約0.01重量%~約2重量%の量で存在する。例えば、香味料は、液体製剤中に、約0.01重量%~約0.1重量%の量で存在し得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、液体製剤は、着色料をさらに含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、液体製剤は、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩から調製される。例えば、液体製剤は、式(I)の化合物の硫酸水素塩から調製できる。
【0038】
いくつかの実施形態では、液体製剤は、式(I)の化合物の結晶形から調製される。いくつかの実施形態では、結晶形は、式(I-HS)を有する。
【0039】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせを含む液体製剤である。また、液体製剤は、可溶化剤および緩衝液を含む。液体製剤は、約2.5~約5.5のpHを有する。式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約15mg/mL~約35mg/mLの濃度を有する。
【0040】
いくつかの実施形態では、液体製剤は、約3~約4のpHを有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、緩衝液は、クエン酸ナトリウム二水和物を含む。
【0042】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせを含む液体製剤である。また、液体製剤は、可溶化剤および塩基を含む。液体製剤は、約2.5~約5.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、塩基は、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)を含む。式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約15mg/mL~約35mg/mLの濃度を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、液体製剤は、約3~約4のpHを有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、塩基は、クエン酸ナトリウム二水和物を含む。
【0045】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせを含む液体製剤である。また、液体製剤は、可溶化剤、緩衝液、甘味料、苦味マスキング剤、および香味料を含む。液体製剤は、約3~約4のpHを有する。式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約15mg/mL~約35mg/mLの濃度を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、緩衝液は、クエン酸ナトリウム二水和物を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、甘味料は、ショ糖を含む。
【0048】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせを含む液体製剤である。液体製剤は、可溶化剤、塩基、甘味料、苦味マスキング剤、および香味料を含む。液体製剤は、約3~約4のpHを有する。いくつかの実施形態では、塩基は、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)を含む。式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約15mg/mL~約35mg/mLの濃度を有する。
【0049】
いくつかの実施形態では、塩基は、クエン酸ナトリウム二水和物を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、甘味料は、ショ糖を含む。
【0051】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせを含む液体製剤である。液体製剤は、約5重量%~約35重量%の量で存在する可溶化剤および約0.1重量%~約5重量%の量で存在する緩衝液を含む。液体製剤は、約2.5~約5.5のpHを有する。式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する。
【0052】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせを含む液体製剤である。液体製剤は、約5重量%~約35重量%の量で存在する可溶化剤;約0.1重量%~約5重量%の量で存在する緩衝液;約30重量%~約70重量%の量で存在する甘味料;約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在する苦味マスキング剤;および約0.01重量%~約2重量%の量で存在する香味料を含む。液体製剤は、約2.5~約5.5のpHを有する。式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する。
【0053】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせを含む液体製剤である。液体製剤は、約5重量%~約35重量%の量で存在する可溶化剤;約0.1重量%~約5重量%の量で存在する塩基;約30重量%~約70重量%の量で存在する甘味料;約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在する苦味マスキング剤;および約0.01重量%~約2重量%の量で存在する香味料を含む。液体製剤は、約2.5~約5.5のpHを有する。式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する。
【0054】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせを含む液体製剤である。液体製剤は、約5重量%~約35重量%の量で存在する可溶化剤を含む。液体製剤は、約0.1重量%~約5重量%の量で存在するクエン酸ナトリウム二水和物を含む緩衝液も含む。液体製剤はまた、約30重量%~約70重量%の量で存在するショ糖を含む甘味料も含む。液体製剤はまた、約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在する苦味マスキング剤も含む。液体製剤はまた、約0.01重量%~約2重量%の量で存在する香味料も含む。液体製剤は、約3~約4のpHを有する。式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する。
【0055】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせを含む液体製剤である。液体製剤は、約5重量%~約35重量%の量で存在する可溶化剤を含む。液体製剤はまた、約0.1重量%~約5重量%の量で存在するクエン酸ナトリウム二水和物を含む塩基も含む。液体製剤はまた、約30重量%~約70重量%の量で存在するショ糖を含む甘味料も含む。液体製剤はまた、約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在する苦味マスキング剤も含む。液体製剤はまた、約0.01重量%~約2重量%の量で存在する香味料も含む。液体製剤は、約3~約4のpHを有する。式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する。
【0056】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせを含む液体製剤である。液体製剤は、約5重量%~約35重量%の量で存在する可溶化剤を含む。液体製剤はまた、約0.1重量%~約5重量%の量で存在するクエン酸ナトリウム二水和物も含む。液体製剤はまた、約30重量%~約70重量%の量で存在するショ糖を含む甘味料も含む。液体製剤はまた、約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在する苦味マスキング剤も含む。液体製剤はまた、約0.01重量%~約2重量%の量で存在する香味料も含む。液体製剤は、約3~約4のpHを有する。式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する。
【0057】
本明細書で提供される液体製剤は、式(I-HS):
を有する式(I)の化合物の結晶形から調製できる。
【0058】
いくつかの実施形態では、結晶形は、18.4±0.2、20.7±0.2、23.1±0.2、および24.0±0.2にXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とし得る。いくつかの実施形態では、結晶形は、10.7±0.2、18.4±0.2、20.7±0.2、23.1±0.2、および24.0±0.2にXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形は、10.7±0.2、18.4±0.2、19.2±0.2、20.2±0.2、20.7±0.2、21.5±0.2、23.1±0.2、および24.0±0.2にXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形は、10.7±0.2、15.3±0.2、16.5±0.2、18.4±0.2、19.2±0.2、19.9±0.2、20.2±0.2、20.7±0.2、21.5±0.2、22.1±0.2、23.1±0.2、24.0±0.2、24.4±0.2、25.6±0.2、26.5±0.2、27.6±0.2、28.2±0.2、28.7±0.2、30.8±0.2、および38.5±0.2にXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。
【0059】
また、本明細書で提供されるのは、処置を必要としている患者において癌を処置する方法である。方法は、嚥下障害を有し処置を必要としている患者を特定し、本明細書で提供される治療有効量の液体製剤を患者に投与することを含む。
【0060】
また、処置を必要としている患者において癌を処置するための方法が本明細書で提供され、該方法は、嚥下障害を有し処置を必要としている患者を特定すること、癌が、Trkキナーゼにより媒介されるかどうかを判定すること、および癌が、Trkキナーゼにより媒介されていると判定される場合、本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で患者に投与することを含む。また、処置を必要としている患者において癌を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、嚥下障害を有し処置を必要としている患者を特定すること、癌が、Trkキナーゼにより媒介されていることを特定すること、本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で患者に投与することを含む。
【0061】
また、処置を必要としている患者において癌を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で患者に投与することを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、癌は、頭頸部癌、喉頭癌、食道癌、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0063】
いくつかの実施形態では、患者は、乳幼児、子供、青年、または高齢患者である。
【0064】
また、本明細書で提供されるのは、処置を必要とする対象において癌を処置する方法である。方法は、癌が、Trkキナーゼの過剰発現、活性化、増幅および変異の1つまたは複数と関連するかどうかおよび/またはこれらを示すかどうかを判定すること、および癌が、Trkキナーゼの過剰発現、活性化、増幅および変異の1つまたは複数と関連するおよび/またはこれらを示すと判定される場合、本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で、対象に投与することを含む。また、本明細書で提供されるのは、処置を必要とする対象において癌を処置する方法である。方法は、癌が、Trkキナーゼの過剰発現、活性化、増幅および変異の1つまたは複数と関連していることおよび/またはこれらを示すことを特定すること、および本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で対象に投与することを含む。
【0065】
また、本明細書で提供されるのは、処置を必要としている対象において癌を処置する方法であり、該方法は、癌が、Trkキナーゼにより媒介されるかどうかを判定すること、および癌が、Trkキナーゼにより媒介されていると判定される場合、本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で対象に投与することを含む。また、本明細書で提供されるのは、処置を必要としている対象において癌を処置する方法であり、該方法は、癌が、Trkキナーゼにより媒介されていることを特定すること、および本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で対象に投与することを含む。
【0066】
また、本明細書で提供されるのは、対象を処置する方法である。方法は、対象から得た試料に対しアッセイを実施して、対象がNTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現またはレベルの調節不全を有するかどうかを判定することを含む。また、方法は、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有すると判定された対象に、本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で投与することを含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくはレベルの調節不全は、Trk融合タンパク質の翻訳をもたらす染色体翻訳である。Trk融合タンパク質は、下記からなる群から選択できる:TP53-TrkA、LMNA-TrkA、CD74-TrkA、TFG-TrkA、TPM3-TrkA、NFASC-TrkA、BCAN-TrkA、MPRIP-TrkA、TPR-TrkA、RFWD2-TrkA、IRF2BP2-TrkA、SQSTM1-TrkA、SSBP2-TrkA、RABGAP1L-TrkA、C18ORF8-TrkA、RNF213-TrkA、TBC1D22A-TrkA、C20ORF112-TrkA、DNER-TrkA、ARHGEF2-TrkA、CHTOP-TrkA、PPL-TrkA、PLEKHA6-TrkA、PEAR1-TrkA、MRPL24-TrkA、MDM4-TrkA、LRRC71-TrkA、GRIPAP1-TrkA、EPS15-TrkA、DYNC2H1-TrkA、CEL-TrkA、EPHB2-TrkA、TGF-TrkA、NACC2-TrkB、QKI-TrkB、AFAP1-TrkB、PAN3-TrkB、SQSTM1-TrkB、TRIM24-TrkB、VCL-TrkB、AGBL4-TrkB、DAB2IP-TrkB、ETV6-TrkC、BTBD1-TrkC、LYN-TrkC、RBPMS-TrkC、EML4-TrkC、HOMER2-TrkC、TFG-TrkC、FAT1-TrkC、およびTEL-TrkC。
【0068】
いくつかの実施形態では、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性の調節不全は、遺伝子の1つまたは複数の点変異である。NTRK遺伝子は、NTRK1遺伝子であり得、NTRK1遺伝子の1つまたは複数の点変異により、アミノ酸位置:33、336、337、324、420、444、517、538、649、682、683、702、および1879のうちの1つまたは複数において、置換を有するTrkAタンパク質の翻訳がもたらされ得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、NTRK1遺伝子の1つまたは複数の点変異により、アミノ酸置換:R33W、A336E、A337T、R324Q、R324W、V420M、R444Q、R444W、G517R、G517V、K538A、R649W、R649L、R682S、V683G、R702C、およびC1879Tのうちの1つまたは複数を有するTrkAタンパク質の翻訳がもたらされる。
【0070】
この発明の概要および下記の発明を実施するための形態に記載の特徴および利点は、包括的なものではない。本明細書の図、明細書および特許請求の範囲を考慮すれば、多くの追加の特徴および利点が当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1図1は、一実施形態において、実施例2に従って調製された結晶形(I-HS)のX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
図2図2は、一実施形態において、実施例2に従って調製された結晶形(I-HS)の同時熱重量/示差熱分析計(TG/DTA)プロファイルを示す。
図3図3は、一実施形態において、実施例2に従って調製された結晶形(I-HS)の示差走査熱量測定(DSC)プロファイルを示す。
図4図4Aおよび4Bは、いくつかの実施形態において、実施例2に従って調製された結晶形(I-HS)の(A)非偏光および(B)偏光下での偏光顕微鏡(PLM)画像を示す。
図5図5は、一実施形態において、実施例2に従って調製された結晶形(I-HS)の動的水蒸気吸着(DVS)等温プロファイルを示す。
図6図6は、一実施形態において、実施例2に従って調製された結晶形(I-HS)の赤外(IR)分光法プロファイルを示す。
図7図7は、一実施形態において、式Iの化合物の非晶質遊離塩基形態のXRPDパターンを示す。
図8図8は、結晶形(I-HS)のX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
図9図9は、結晶形(I-HS)のための小児溶液製剤の配合説明書のピクトグラムである。
図10図10は、乳児型線維肉腫と診断された患者の頸部脳を示す6枚のMR画像である。(A)および(B)は、外科的切除の5週後の、内耳構造の直ぐ前側および下側の、中頭蓋窩の頭蓋底を含む20mmx19mmx18mmの強調腫瘤を示す脳および頸部のMR画像である。(C)および(D)は、患者が(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミドの硫酸水素塩をBIDで投与された場合、サイクル1の終わり(28日目)に、ベースラインから90%を超える腫瘤のサイズおよび強調の有意な間隔減少を示す脳および頸部のMR画像である。(E)および(F)は、サイクル2の終わりに取得された脳および頸部のMR画像である。これにより、サイズ減少が確認され、また、強調の連続した低減が示され、部分応答が確証された。
図11図11は、代表的野生型TrkAポリペプチドの配列リストである(配列番号1)。
図12図12は、代表的野生型TrkAポリペプチドの配列リストである(配列番号2)。
図13図13は、代表的野生型TrkAポリペプチドの配列リストである(配列番号3)。
【発明を実施するための形態】
【0072】
詳細な説明
本開示は、(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせの液体製剤と、疼痛、炎症、癌、および特定の感染症の処置における該液体製剤の使用とに関する。
【0073】
本明細書で提供されるのは、可溶化剤および式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせを含む液体製剤である。
【0074】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中に、約0.5重量%~約7重量%、約1重量%~約3重量%、または約1.5重量%~約2.5重量%の量で存在し得る。例えば、式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中に、約0.5重量%、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、または約7重量%の量で存在し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中に、約2重量%の量で存在し得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約5mg/mL~約50mg/mL、約15mg/mL~約35mg/mL、または約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する。例えば、式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約5mg/mL、約10mg/mL、約15mg/mL、約20mg/mL、約25mg/mL、約30mg/mL、約35mg/mL、約40mg/mL、約45mg/mL、または約50mg/mLの濃度を有し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約20mg/mLの濃度で存在し得る。
【0076】
本明細書で提供される製剤は、式(I)の化合物、もしくは薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせの溶解度を高めるように機能する可溶化剤を含むことができる。可溶化剤は、1つまたは複数のヒドロキシル基を有する極性有機化合物である。可溶化剤はまた、可溶化剤のない場合の類似のpH範囲における式(I)の化合物の水相溶解に比べて、水溶液中の式(I)の化合物(例えば、遊離塩基)のより高い濃度を実現できる。可溶化剤には、例えば、シクロデキストリン、グリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、自己乳化型薬物送達システム(SEDDS)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン誘導体、δ-シクロデキストリン誘導体、γ-シクロデキストリン、またはこれらの誘導体の組み合わせを含むことができる。例えば、可溶化剤はシクロデキストリンを含むことができる。可溶化剤はβ-シクロデキストリン誘導体、γ-シクロデキストリン、またはこれらの混合物を含むことができる。例えば、可溶化剤はヒドロキシアルキル-γ-シクロデキストリンを含むことができる。いくつかの実施形態では、可溶化剤は、ヒドロキシアルキル-β-シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)またはスルホアルキルエーテル-β-シクロデキストリン(例えば、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン)のうちの少なくとも1種を含むβ-シクロデキストリンを含む。例えば、可溶化剤はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含むことができる。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、CAVASOL(登録商標)W7 HP(ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)である。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、KLEPTOSE(登録商標)HP(ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)である。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、CAVAMAX(登録商標)W7(β-シクロデキストリン)である。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、CAPTISOL(登録商標)(スルホアルキルエーテル-β-シクロデキストリン)である。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、CAVASOL(登録商標)W7 M(メチル-β-シクロデキストリン)である。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、CAVASOL(登録商標)W8 HP(ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン)である。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、CAVAMAX(登録商標)W8(γ-シクロデキストリン)である。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、CAVAMAX(登録商標)W6(α-シクロデキストリン)である。
【0078】
SEDDSは、油、界面活性剤、溶媒および共溶媒/界面活性剤の等方性混合物であり、高度に親油性の薬物化合物の経口吸収を向上させるために使用できる。例えば、Tarate,B.et al.,Recent Patents on Drug Delivery & Formulation(2014)Vol.8を参照されたい。
【0079】
いくつかの実施形態では、ポリ(エチレングリコール)分子は直鎖ポリマーである。直鎖PEGの分子量は、約1,000Da~約100,000Daであり得る。例えば、本明細書で使われる直鎖PEGは、約100,000Da、95,000Da、90,000Da、85,000Da、80,000Da、75,000Da、70,000Da、65,000Da、60,000Da、55,000Da、50,000Da、45,000Da、40,000Da、35,000Da、30,000Da、25,000Da、20,000Da、15,000Da、10,000Da、9,000Da、8,000Da、7,000Da、6,000Da、5,000Da、4,000Da、3,000Da、2,000Da、または1,000Daの分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、直鎖PEGの分子量は、約1,000Da~約50,000Daである。いくつかの実施形態では、直鎖PEGの分子量は、約1,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、直鎖PEGの分子量は、約5,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、直鎖PEGの分子量は、約5,000Da~約20,000Daである。
【0080】
いくつかの実施形態では、ポリ(エチレングリコール)分子は分枝ポリマーである。分枝鎖PEGの分子量は、約1,000Da~約100,000Daであり得る。例えば、本明細書で使われる分枝鎖PEGは、約100,000Da、95,000Da、90,000Da、85,000Da、80,000Da、75,000Da、70,000Da、65,000Da、60,000Da、55,000Da、50,000Da、45,000Da、40,000Da、35,000Da、30,000Da、25,000Da、20,000Da、15,000Da、10,000Da、9,000Da、8,000Da、7,000Da、6,000Da、5,000Da、4,000Da、3,000Da、2,000Da、または1,000Daの分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、分枝鎖PEGの分子量は、約1,000Da~約50,000Daである。いくつかの実施形態では、分枝鎖PEGの分子量は、約1,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、分枝鎖PEGの分子量は、約5,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、分枝鎖PEGの分子量は、約5,000Da~約20,000Daである。
【0081】
いくつかの実施形態では、可溶化剤は、液体製剤中で、約5重量%~約35重量%、約10重量%~約25重量%、約10重量%~約20重量%、または約13重量%~約17重量%の量で存在し得る。例えば、可溶化剤は、約5重量%、約7重量%、約10重量%、約13重量%、約15重量%、約17重量%、約20重量%、約23重量%、約26重量%、約30重量%、または約35重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、可溶化剤は、液体製剤中で、15重量%の量で存在する。
【0082】
緩衝液は、製剤のpHを目的のpHに調節するために液体製剤に添加できる。いくつかの実施形態では、緩衝液は、製剤のpHを、約2~約7、約2.5~約5.5、または約3~約4のpHに調節するための量で添加できる。例えば、緩衝液は、製剤のpHを、約2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、または約7.0のpHに調節するための量で添加できる。いくつかの実施形態では、緩衝液は、製剤のpHを、は約3.5のpHに調節するための量で添加できる。いくつかの実施形態では、緩衝液は、クエン酸塩緩衝液、乳酸塩緩衝液、リン酸緩衝液、マレイン酸塩緩衝液、酒石酸塩緩衝液、コハク酸塩緩衝液、または酢酸塩緩衝液、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、緩衝液は、乳酸リチウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、マレイン酸リチウム、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸カリウム、マレイン酸カルシウム、酒石酸リチウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カルシウム、コハク酸リチウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸カルシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、緩衝液は、クエン酸緩衝液を含む。例えば、クエン酸緩衝液は、クエン酸リチウム一水和物、クエン酸ナトリウム一水和物、クエン酸カリウム一水和物、クエン酸カルシウム一水和物、クエン酸リチウム二水和物、クエン酸ナトリウム二水和物、クエン酸カリウム二水和物、クエン酸カルシウム二水和物、クエン酸リチウム三水和物、クエン酸ナトリウム三水和物、クエン酸カリウム三水和物、クエン酸カルシウム三水和物、クエン酸リチウム四水和物、クエン酸ナトリウム四水和物、クエン酸カリウム四水和物、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸リチウム五水和物、クエン酸ナトリウム五水和物、クエン酸カリウム五水和物、クエン酸カルシウム五水和物、クエン酸リチウム六水和物、クエン酸ナトリウム六水和物、クエン酸カリウム六水和物、クエン酸カルシウム六水和物、クエン酸リチウム七水和物、クエン酸ナトリウム七水和物、クエン酸カリウム七水和物、クエン酸カルシウム七水和物、またはこれらの混合物のうちの少なくとも1種を含み得る。緩衝液は、クエン酸ナトリウム一水和物、クエン酸カリウム一水和物、クエン酸カルシウム一水和物、クエン酸ナトリウム二水和物、クエン酸カリウム二水和物、クエン酸カルシウム二水和物、クエン酸ナトリウム三水和物、クエン酸カリウム三水和物、クエン酸カルシウム三水和物、クエン酸ナトリウム四水和物、クエン酸カリウム四水和物、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸ナトリウム五水和物、クエン酸カリウム五水和物、クエン酸カルシウム五水和物、クエン酸ナトリウム六水和物、クエン酸カリウム六水和物、クエン酸カルシウム六水和物、クエン酸ナトリウム七水和物、クエン酸カリウム七水和物、またはクエン酸カルシウム七水和物を含み得る。いくつかの実施形態では、緩衝液は、クエン酸ナトリウム二水和物を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、緩衝液は、液体製剤中で、約0.1重量%~約5重量%、約0.3重量%~約4重量%、約0.5重量%~約3.5重量%、約0.6重量%~約3重量%、0.7重量%~約2.5重量%、約0.7重量%~約2.0重量%、または約0.7重量%~約1.5重量%の量で存在する。例えば、緩衝液は、液体製剤中で、約0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、0.7重量%、0.9重量%、1.1重量%、1.5重量%、2.0重量%、2.5重量%、3.0重量%、3.5重量%、4.0重量%、または約5重量%の量で存在し得る。いくつかの実施形態では、緩衝液は、液体製剤中に、約0.9重量%の量で存在する。
【0084】
液体製剤のpHは、目的のpHに調節できる。いくつかの実施形態では、製剤のpHは、約2~約7、約2.5~約5.5、または約3~約4のpHに調節できる。例えば、製剤のpHは、約2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、または約7.0のpHに調節できる。いくつかの実施形態では、製剤のpHは約3.5のpHに調節される。いくつかのこのような実施形態では、液体製剤のpHが目的のpHに調節される場合、液体製剤は塩基を含む。いくつかの実施形態では、塩基は、クエン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、炭酸塩、水酸化物、またはこれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、塩基は、乳酸リチウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、マレイン酸リチウム、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸カリウム、マレイン酸カルシウム、酒石酸リチウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カルシウム、コハク酸リチウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸カルシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、塩基は、クエン酸塩を含む。例えば、クエン酸塩は、クエン酸リチウム一水和物、クエン酸ナトリウム一水和物、クエン酸カリウム一水和物、クエン酸カルシウム一水和物、クエン酸リチウム二水和物、クエン酸ナトリウム二水和物、クエン酸カリウム二水和物、クエン酸カルシウム二水和物、クエン酸リチウム三水和物、クエン酸ナトリウム三水和物、クエン酸カリウム三水和物、クエン酸カルシウム三水和物、クエン酸リチウム四水和物、クエン酸ナトリウム四水和物、クエン酸カリウム四水和物、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸リチウム五水和物、クエン酸ナトリウム五水和物、クエン酸カリウム五水和物、クエン酸カルシウム五水和物、クエン酸リチウム六水和物、クエン酸ナトリウム六水和物、クエン酸カリウム六水和物、クエン酸カルシウム六水和物、クエン酸リチウム七水和物、クエン酸ナトリウム七水和物、クエン酸カリウム七水和物、クエン酸カルシウム七水和物、またはこれらの混合物のうちの少なくとも1種を含み得る。塩基は、クエン酸ナトリウム一水和物、クエン酸カリウム一水和物、クエン酸カルシウム一水和物、クエン酸ナトリウム二水和物、クエン酸カリウム二水和物、クエン酸カルシウム二水和物、クエン酸ナトリウム三水和物、クエン酸カリウム三水和物、クエン酸カルシウム三水和物、クエン酸ナトリウム四水和物、クエン酸カリウム四水和物、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸ナトリウム五水和物、クエン酸カリウム五水和物、クエン酸カルシウム五水和物、クエン酸ナトリウム六水和物、クエン酸カリウム六水和物、クエン酸カルシウム六水和物、クエン酸ナトリウム七水和物、クエン酸カリウム七水和物、またはクエン酸カルシウム七水和物を含み得る。いくつかの実施形態では、塩基は、クエン酸ナトリウム二水和物を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、塩基は、液体製剤中で、約0.1重量%~約5重量%、約0.3重量%~約4重量%、約0.5重量%~約3.5重量%、約0.6重量%~約3重量%、0.7重量%~約2.5重量%、約0.7重量%~約2.0重量%、または約0.7重量%~約1.5重量%の量で存在する。例えば、塩基は、液体製剤中で、約0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、0.7重量%、0.9重量%、1.1重量%、1.5重量%、2.0重量%、2.5重量%、3.0重量%、3.5重量%、4.0重量%、または約5重量%の量で存在し得る。いくつかの実施形態では、塩基は、液体製剤中で、約0.9重量%の量で存在する。例えば、クエン酸塩は、液体製剤中で、約0.1重量%~約5重量%、約0.3重量%~約4重量%、約0.5重量%~約3.5重量%、約0.6重量%~約3重量%、0.7重量%~約2.5重量%、約0.7重量%~約2.0重量%、または約0.7重量%~約1.5重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、クエン酸塩は、液体製剤中で、約0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、0.7重量%、0.9重量%、1.1重量%、1.5重量%、2.0重量%、2.5重量%、3.0重量%、3.5重量%、4.0重量%、または約5重量%の量で存在し得る。例えば、クエン酸塩は、液体製剤中で、約0.9重量%の量で存在する。
【0086】
液体製剤は、約2~約8、約2.5~約6、約3~約4、または約3~約4のpHを有し得る。例えば、液体製剤は、約2、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、または約5のpHを有し得る。いくつかの実施形態では、製剤は、約3.5のpHを有し得る。
【0087】
甘味料を液体製剤に添加して、苦味をより少なくする、または口当たりを良くする、またはこれら両方とすることができる。製剤中に含有するのに好適する甘味料には、天然および人工甘味料の両方が含まれる。いくつかの実施形態では、甘味料は人工甘味料であり、高甘味度甘味料または高強度甘味料を含めることができる。高甘味度甘味料は、食物に添加時に、糖よりも数倍甘味があるが、カロリーがほんのわずかか全くないので、糖代用品または糖代替物としてよく使用される。代表的高甘味度甘味料には、ソルビトール、ショ糖、ナトリウムサッカリンなどのサッカリン、シクラミン酸ナトリウムなどのシクラメート、アスパルテーム、スクラロース、タウマチン、およびアセスルファムKが含まれる。いくつかの実施形態では、甘味料は、天然糖である。例えば、単糖、二糖および多糖などの糖は、本明細書で提供される液体製剤中で使用できる。糖には、キシロース、リボース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、デキストロース、マルトース、部分水解デンプンまたはコーンシロップ、およびソルビトール、キシリトール、マンニトール、グリセリンなどの糖アルコール、およびこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、液体製剤は、甘味料をさらに含む。甘味料は、糖を含むことができる。例えば、甘味料は、ショ糖を含むことができる。例えば、甘味料は、精製水、ショ糖、グリセリン、ソルビトールを含む甘味料、および香味料を含み、クエン酸とリン酸ナトリウムで緩衝され、メチルパラベンとソルビン酸カリウムで保存されている、ORA-SWEET(登録商標)とすることができる。甘味料はまた、高甘味度甘味料を含み得る。高甘味度甘味料は、スクラロースを含み得る。例えば、甘味料は、精製水、グリセリン、ソルビトール、ナトリウムサッカリン、キサンタンガムを含む甘味料、および香味料を含み、クエン酸とリン酸ナトリウムで緩衝され、メチルパラベン(0.03%)、ソルビン酸カリウム(0.1%)、およびプロピルパラベン(0.008%)で保存されている糖不含甘味料である、ORA-SWEET SF(登録商標)とすることができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、甘味料は、ショ糖、グリセリン、ソルビトール、および香味料のうちの1種または複数を含む。いくつかのこのような実施形態では、甘味料はクエン酸およびリン酸ナトリウムをさらに含む。いくつかのこのような実施形態では、甘味料は、メチルパラベンおよびソルビン酸カリウムなどの保存剤を含み得る。例えば、甘味料は、ショ糖、グリセリン、ソルビトール、香味料、クエン酸、リン酸ナトリウム、メチルパラベン、およびソルビン酸カリウムを含む。いくつかの実施形態では、甘味料は、グリセリン、ソルビトール、ナトリウムサッカリン、キサンタンガム、および香味料のうちの1種または複数を含む。いくつかのこのような実施形態では、甘味料はクエン酸およびクエン酸ナトリウムをさらに含む。いくつかのこのような実施形態では、甘味料は、メチルパラベンおよびソルビン酸カリウムおよびプロピルパラベンなどの保存剤を含む。例えば、甘味料は、グリセリン、ソルビトール、ナトリウムサッカリン、キサンタンガム、香味料およびクエン酸ナトリウム、メチルパラベン(0.03%)、ソルビン酸カリウム(0.1%)、およびロピルパラベン(0.008%)を含み得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、甘味料は、液体製剤中に、約30重量%~約70重量%、約35重量%~約65重量%、約40重量%~約60重量%、または約45重量%~約55重量%の量で存在する。例えば、甘味料は、液体製剤中に、約30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、または約70重量%の量で存在し得る。いくつかの実施形態では、甘味料は、液体製剤中に、約50重量%の量で存在する。
【0090】
いくつかの実施形態では、液体製剤は、苦味マスキング剤をさらに含む。苦味マスキング剤には、231a12天然マスキングタイプ香味料(Abelei(登録商標))、231a39天然苦味マスキングタイプ香味料(Abelei(登録商標))、苦味マスキング香味料、nat(FONA(登録商標))、およびFINATECH味覚修飾香味料、Nat.を含み得る。
【0091】
苦味マスキング剤は、液体製剤中に、約0.01重量%~約2重量%、約0.1重量%~約1.0重量%、または約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在し得る。例えば、苦味マスキング剤は、液体製剤中に、約0.01重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.7重量%、1.0重量%、1.5重量%、または2.0重量%の量で存在し得る。いくつかの実施形態では、苦味マスキング剤は、液体製剤中に、約0.4重量%の量で存在する。
【0092】
最終的製剤が実質的に苦味がなく、口当たりの良い味覚になるように、香味料を液体製剤中に含め得る。香味料は、天然香味料、天然果実香味料、人工香味料、人工果実香味料、風味相乗剤、またはこれらの混合物のうちの少なくとも1種を含み得る。代表的香味剤は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるUS CFR 21§172.515(2015年、4月1日)で見つけることができる。例えば、桂皮、ラズベリー、オレンジ、カエデ、バタースコッチキャンディー、甘草(カンゾウ)シロップ、果実、液果、バニラ、アアカシアシロップ、コカ、チョコレートミント、セイヨウミザクラ、クルミ、エルバサンタ、風船ガム、グレープフルーツ、ライム、マシュマロ 、ガラナ、コーヒー、モモ、レモン、ウイキョウ、アンズ、蜂蜜、ミント、冬緑油、およびサクランボが挙げられる。いくつかの実施形態では、香味料には、FONATECH(登録商標)天然味覚修飾物質香味料を含み得る。香味料は、液体製剤中に、約0.01重量%~約2重量%、約0.01重量%~約0.1重量%、または約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在し得る。例えば、香味料は、約0.01重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.7重量%、1.0重量%、1.5重量%、または2.0重量%の量で存在し得る。いくつかの実施形態では、香味料は、液体製剤中に、約0.5重量%の量で存在し得る。
【0093】
液体製剤はまた、着色料も含み得る。
【0094】
本明細書で提供される液体製剤は、式(I)の化合物の結晶形から調製できる。結晶形は式(I-HS)を有し得る。
【0095】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ、可溶化剤および緩衝液を含む液体製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、約2.5~約5.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約15mg/mL~約35mg/mLの濃度を有する。いくつかの実施形態では、製剤は、約3~約4のpHを有し、式(I)の化合物、もしくは薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約15mg/mL~約35mg/mLの濃度で存在する。緩衝液は、クエン酸ナトリウム二水和物を含み得る。
【0096】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ、可溶化剤および塩基を含む液体製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、約2.5~約5.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約15mg/mL~約35mg/mLの濃度を有する。いくつかの実施形態では、製剤は、約3~約4のpHを有し、式(I)の化合物、もしくは薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約15mg/mL~約35mg/mLの濃度で存在する。塩基は、クエン酸ナトリウム二水和物を含み得る。
【0097】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ、可溶化剤、緩衝液、甘味料、苦味マスキング剤、および香味料を含む液体製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、約3~約4のpHを有し、式(I)の化合物、もしくは薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約15mg/mL~約35mg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、緩衝液は、クエン酸ナトリウム二水和物を含む。いくつかの実施形態では、甘味料は、ショ糖を含む。
【0098】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ、可溶化剤、塩基、甘味料、苦味マスキング剤、および香味料を含む液体製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、約3~約4のpHを有し、式(I)の化合物、もしくは薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせは、液体製剤中で、約15mg/mL~約35mg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、塩基は、クエン酸ナトリウム二水和物を含む。いくつかの実施形態では、甘味料は、ショ糖を含む。
【0099】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ、可溶化剤、緩衝液、甘味料、苦味マスキング剤、および香味料を含む液体製剤であり、製剤は約3~約4のpHを有する。
【0100】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ、可溶化剤、塩基、甘味料、苦味マスキング剤、および香味料を含む液体製剤であり、製剤は約3~約4のpHを有する。
【0101】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ、可溶化剤、緩衝液、甘味料、苦味マスキング剤、および香味料を含む液体製剤であり、式(I)の化合物は、液体製剤中で、約15mg/mL~約35mg/mLの濃度を有する。
【0102】
また、本明細書で提供されるのは、式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ、可溶化剤、塩基、甘味料、苦味マスキング剤、および香味料を含む液体製剤であり、式(I)の化合物は、液体製剤中で、約15mg/mL~約35mg/mLの濃度を有する。
【0103】
また、本明細書で提供されるのは、
(a)式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ;
(b)約5重量%~約35重量%の量で存在する可溶化剤;および
(c)約0.1重量%~約5重量%の量で存在する緩衝液
を含む液体製剤である。いくつかの実施形態では、緩衝液は、クエン酸ナトリウム脱水物を含む。いくつかの実施形態では、製剤はまた、約30重量%~約70重量%の量で存在する甘味料を含む。いくつかの実施形態では、甘味料は、ショ糖を含む。いくつかの実施形態では、製剤はまた、約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在する苦味マスキング剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤はまた、約0.01重量%~約2重量%の量で存在する香味料を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約3~約4のpHを有する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する。
【0104】
また、本明細書で提供されるのは、
(a)式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ;
(b)約5重量%~約35重量%の量で存在する可溶化剤;および
(c)約0.1重量%~約5重量%の量で存在する塩基
を含む液体製剤である。いくつかの実施形態では、塩基は、クエン酸ナトリウム脱水物を含む。いくつかの実施形態では、製剤はまた、約30重量%~約70重量%の量で存在する甘味料を含む。いくつかの実施形態では、甘味料は、ショ糖を含む。いくつかの実施形態では、製剤はまた、約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在する苦味マスキング剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤はまた、約0.01重量%~約2重量%の量で存在する香味料を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約3~約4のpHを有する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する。
【0105】
また、本明細書で提供されるのは、
(a)式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ;
(b)約5重量%~約35重量%の量で存在する可溶化剤(例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン);および
(c)約0.1重量%~約5重量%の量で存在する緩衝液(例えば、クエン酸ナトリウムなどのクエン酸緩衝液);
(d)約30重量%~約70重量%の量で存在する甘味料(例えば、ショ糖または高甘味度甘味料を含む甘味料);
(e)約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在する苦味マスキング剤;および
(f)約0.01重量%~約2重量%の量で存在する香味料
を含む液体製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、約3~約4のpHを有する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する。
【0106】
また、本明細書で提供されるのは、
(a)式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ;
(b)約5重量%~約35重量%の量で存在する可溶化剤(例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン);および
(c)約0.1重量%~約5重量%の量で存在する塩基(例えば、クエン酸ナトリウムなどのクエン酸塩);
(d)約30重量%~約70重量%の量で存在する甘味料(例えば、ショ糖または高甘味度甘味料を含む甘味料);
(e)約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在する苦味マスキング剤;および
(f)約0.01重量%~約2重量%の量で存在する香味料
を含む液体製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、約3~約4のpHを有する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する。
【0107】
また、本明細書で提供されるのは、
(a)式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ;
(b)約5重量%~約35重量%の量で存在するヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン;および
(c)約0.1重量%~約5重量%の量で存在するクエン酸ナトリウム;
(d)約30重量%~約70重量%の量で存在するショ糖または高甘味度甘味料;
(e)約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在する苦味マスキング剤;および
(f)約0.01重量%~約2重量%の量で存在する香味料
を含む液体製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、約3~約4のpHを有する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する。
【0108】
また、本明細書で提供されるのは、
(a)式(I):
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ;
(b)約5重量%~約35重量%の量で存在するヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン;および
(c)約0.1重量%~約5重量%の量で存在するクエン酸ナトリウム二水和物;
(d)約30重量%~約70重量%の量で存在するショ糖または高甘味度甘味料;
(e)約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在する苦味マスキング剤;および
(f)約0.01重量%~約2重量%の量で存在する香味料
を含む液体製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、約3~約4のpHを有する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する。
【0109】
いくつかの実施形態では、液体製剤は、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩から調製される。例えば、薬学的に許容可能な塩は、硫酸水素塩である。いくつかの実施形態では、液体製剤は、式(I)の化合物の結晶形から調製される。例えば、式(I)の化合物の結晶形は式(I-HS)を有し得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、18.4±0.2、20.7±0.2、23.1±0.2、および24.0±0.2におけるXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、10.7±0.2、18.4±0.2、20.7±0.2、23.1±0.2、および24.0±0.2におけるXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、10.7±0.2、18.4±0.2、19.2±0.2、20.2±0.2、20.7±0.2、21.5±0.2、23.1±0.2、および24.0±0.2におけるXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、10.7±0.2、15.3±0.2、16.5±0.2、18.4±0.2、19.2±0.2、19.9±0.2、20.2±0.2、20.7±0.2、21.5±0.2、22.1±0.2、23.1±0.2、24.0±0.2、24.4±0.2、25.6±0.2、26.5±0.2、27.6±0.2、28.2±0.2、28.7±0.2、30.8±0.2、および38.5±0.2におけるXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。
【0111】
いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、図1または図8に実質的に示されているXRPDパターンを有する。
【0112】
いくつかの実施形態では、結晶形は、示差走査熱量測定により測定すると、開始から約193~約205℃の最大値までを示す。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、示差走査熱量測定により測定すると、約2.415mWの融解熱を示す。
【0113】
また、本明細書で提供されるのは、処置を必要としている患者において癌を処置する方法である。方法は、本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で患者に投与することを含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、癌は、嚥下障害または嚥下困難を生じる。例えば、癌は、頭頸部癌、口腔癌、喉頭癌、または食道癌であり得る。いくつかの実施形態では、癌の患者は、咽頭、食道、または口の繊維化;口または食道の感染症(例えば、放射線療法または化学療法由来)、咽頭または食道の膨潤または狭小化(例えば、放射線療法または手術由来);手術に由来する口、顎部、咽頭、または食道に対する身体的変化;咽頭、食道、または口のヒリヒリ感、疼痛または炎症である、粘膜炎;通常ドライマウスと呼ばれる口内乾燥(例えば、放射線療法または化学療法由来)のうちの1種または複数に起因して嚥下困難を発症する。
【0115】
いくつかの実施形態では、患者は、乳幼児、子供、青年、または高齢患者である。
【0116】
いくつかの実施形態では、患者は嚥下障害がある。嚥下障害は、中咽頭嚥下障害であり得る。中咽頭嚥下障害は、癌(例えば、特定の癌およびいくつかの照射など癌処置は、嚥下困難を生じ得る)、神経障害(例えば、特定の障害、例えば、多発性硬化症、筋ジストロフィーおよびパーキンソン病は、嚥下障害を生じ得る)、神経損傷(例えば、嚥下能力に影響を与える、脳卒中または脳もしくは脊髄損傷由来などの突然の神経学的損傷)、および咽頭憩室に起因して起こり得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、患者は、神経障害(例えば、特定の障害、例えば、多発性硬化症、筋ジストロフィーおよびパーキンソン病は、嚥下障害を生じ得る)、神経損傷(例えば、嚥下能力に影響を与える、脳卒中または脳もしくは脊髄損傷由来などの突然の神経学的損傷)、および咽頭憩室を有する。
【0118】
また、本明細書で提供されるのは、処置を必要としている嚥下障害(例えば、嚥下困難)の患者において癌を処置する方法である。方法は、嚥下障害を有し処置を必要としている患者を特定することを含む。方法は、本明細書に記載の液体製剤を治療有効量で患者に投与することをさらに含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、嚥下障害は中咽頭嚥下障害である。
【0120】
また、本明細書で提供されるのは、処置を必要としている嚥下障害の患者において癌を処置する方法である。方法は、必要としている嚥下障害の患者を特定することを含む。方法は、癌がTrkキナーゼにより媒介されるかどうかを判定することをさらに含む。癌が、Trkキナーゼにより媒介されていると判定された場合、本明細書に記載の液体製剤を治療有効量で患者に投与することを含む。また、本明細書で提供されるのは、処置を必要としている嚥下障害の患者において癌を処置する方法である。方法は、必要としている嚥下障害の患者を特定することを含む。方法は、癌をTrkキナーゼにより媒介されていると特定すること、および本明細書に記載の液体製剤を治療有効量で患者に投与することをさらに含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、嚥下障害は中咽頭嚥下障害である。中咽頭嚥下障害は、癌(例えば、特定の癌およびいくつかの照射など癌処置は、嚥下困難を生じ得る)、神経障害(例えば、特定の障害、例えば、多発性硬化症、筋ジストロフィーおよびパーキンソン病は、嚥下障害を生じ得る)、神経損傷(例えば、嚥下能力に影響を与える、脳卒中または脳もしくは脊髄損傷由来などの突然の神経学的損傷)、および咽頭憩室に起因して起こり得る。
【0122】
式(I)の化合物の結晶形
本明細書で考察したように、液体製剤は、結晶形の(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド(式I)、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせから調製できる。いくつかの実施形態では、この結晶形は、結晶形(I-HS)である。
【0123】
いくつかの実施形態では、図1に示すように、結晶形(I-HS)は、そのX線粉末回折パターン(XRPD)により特徴付けることができる。XRPDは、Siemens製のCuKα1、0.1540562nmの波長の微小焦点密封管球線源を備えたD5000X線回折計で、試料を3~40°2シータ、ステップサイズ0.0200°2シータおよび1ステップあたり1秒の走査により実施した。有効走査速度は、機器電圧40kVおよび電流設定40mAで0.0200°/秒であった。試料を、反射モードでサイズ2mmの発散スリットを使用して、以下の実験条件で分析した。
【0124】
いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、表1に示す通りの、少なくとも20個の特徴的なピーク(2θ度±0.3)を有するXRPDパターンを有する。
【0125】
(表1)結晶形(I-HS)のXRPDピーク
【0126】
いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、表2に示されている通り、少なくとも8個の特徴的なピーク(2θ度±0.3)を有するXRPDパターンを有しており、このパターンは、約15%以上の相対強度を有するピークを含む。
【0127】
(表2)結晶形(I-HS)のXRPDピーク
【0128】
いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、表3に示されている通り、少なくとも5個の特徴的なピーク(2θ度±0.3)を有するXRPDパターンを有しており、このパターンは、約25%以上の相対強度を有するピークを含む。
【0129】
(表3)結晶形(I-HS)のXRPDピーク
【0130】
いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、表4に示されている通り、少なくとも4個の特徴的なピーク(2θ度±0.3)を有するXRPDパターンを有しており、このパターンは、約30%以上の相対強度を有するピークを含む。
【0131】
(表4)結晶形(I-HS)のXRPDピーク
【0132】
特定の実施形態では、結晶形(I-HS)は、図1に示されているものと実質的に同じXRPDパターンであるXRPDパターンを有する。
【0133】
いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、約18.4、20.6、23.0、および24.0にXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、約10.6、18.4、20.6、23.0、および24.0にXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、約10.6、18.4、19.1、20.2、20.6、21.5、23.0、および24.0にXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、約10.6、15.3、16.4、18.4、19.1、19.8、20.2、20.6、21.5、22.0、23.0、24.0、24.4、25.6、26.5、27.5、28.2、28.6、30.8、および38.5にXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。
【0134】
特定の実施形態では、結晶形(I-HS)は、図8に示されているものと実質的に同じXRPDパターンであるXRPDパターンを有する。
【0135】
いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、表5に示す通りの、少なくとも20個の特徴的なピーク(2θ度±0.3)を有するXRPDパターンを有する。
【0136】
(表5)結晶形(I-HS)のXRPDピーク
【0137】
いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、表6に示されている通り、少なくとも8個の特徴的なピーク(2θ度±0.3)を有するXRPDパターンを有しており、このパターンは、約15%以上の相対強度を有するピークを含む。
【0138】
(表6)結晶形(I-HS)のXRPDピーク
【0139】
いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、表7に示されている通り、少なくとも5個の特徴的なピーク(2θ度±0.3)を有するXRPDパターンを有しており、このパターンは、約25%以上の相対強度を有するピークを含む。
【0140】
(表7)結晶形(I-HS)のXRPDピーク
【0141】
いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、表8に示されている通り、少なくとも4個の特徴的なピーク(2θ度±0.3)を有するXRPDパターンを有しており、このパターンは、約30%以上の相対強度を有するピークを含む。
【0142】
(表8)結晶形(I-HS)のXRPDピーク
【0143】
いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、約18.5、20.7、23.2、および24.1にXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、約10.8、18.5、20.7、23.2、および24.1にXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、約10.8、18.5、19.2、20.3、20.7、21.6、23.2、および24.1にXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、約10.8、15.4、16.5、18.5、19.2、19.9、20.3、20.7、21.6、22.2、23.2、24.1、24.5、25.7、26.5、27.6、28.3、28.7、30.9、および38.6にXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。
【0144】
いくつかの実施形態では、図1および8に与えられているXRPDパターンを考慮すると、結晶形(I-HS)は、表9に示されているXRPDピーク(2θ度)を有することを特徴とする。
【0145】
(表9)結晶形(I-HS)のXRPDピーク
【0146】
いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、18.4±0.2、20.7±0.2、23.1±0.2、および24.0±0.2におけるXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、10.7±0.2、18.4±0.2、20.7±0.2、23.1±0.2、および24.0±0.2におけるXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、10.7±0.2、18.4±0.2、19.2±0.2、20.2±0.2、20.7±0.2、21.5±0.2、23.1±0.2、および24.0±0.2におけるXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、10.7±0.2、15.3±0.2、16.5±0.2、18.4±0.2、19.2±0.2、19.9±0.2、20.2±0.2、20.7±0.2、21.5±0.2、22.1±0.2、23.1±0.2、24.0±0.2、24.4±0.2、25.6±0.2、26.5±0.2、27.6±0.2、28.2±0.2、28.7±0.2、30.8±0.2、および38.5±0.2におけるXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする。
【0147】
結晶形(I-HS)のX線粉末回折パターンの2シータ値は、機器ごとに、また試料調製の変動およびバッチ間の変動に応じてわずかに変わる場合があり、したがって、引用された値は、絶対的なものと解釈されるべきではないことを理解されよう。ピークの相対的強度は、配向効果に応じて変わり得るので、本明細書に含まれるXRPDトレースに示されている強度は例示的であり、絶対比較で使用されるものではないことも理解されよう。したがって、「図1または図8に示されているものと実質的に同じXRPDパターン」という語句は、比較目的で、図1または図8に示されているピークの少なくとも90%が存在することを意味すると理解されたい。相対的ピーク位置は、図1または図8に示されているピーク位置から±0.3度変わり得ることを理解されたい。比較する場合、図1および図8に示されているものからの、ピーク強度の若干の変動が許容されることをさらに理解されたい。
【0148】
図2は、一実施形態による結晶形(I-HS)の同時熱重量/示差熱分析計(TG/DTA)プロファイルを示す。分析のために、結晶形(I-HS)約5mgを開口アルミニウム皿に秤取し、同時熱重量/示差熱分析計(TG/DTA)にロードし、室温で保持した。次に、試料を、10℃/分の速度で25℃から300℃まで加熱し、その間の試料重量の変化を、任意の示差熱イベントと共に記録した。窒素を、パージガスとして流量100cm/分で使用した。結晶形(I-HS)のTG/DATプロファイルは、27.4℃~182.4℃で0.8%の初期重量減少を示し、その後182.4℃~225.0℃でTG曲線の4.9%の重量減少を示したが、これはDTA曲線の吸熱としても示されている。これらの重量減少は、材料の分解であろう。
【0149】
図3は、一実施形態による結晶形(I-HS)の示差走査熱量測定(DSC)プロファイルを示す。試料のDSC分析を、Seiko DSC6200示差走査熱量計(冷却器を備えている)を使用して実施した。結晶形(I-HS)約5mgをアルミニウムDSC皿に秤取し、穿孔されたアルミニウムの蓋を用いて非密封状態で閉じた。次に、試料皿をSeiko DSC6200(冷却器を備えている)にロードし、冷却し、25℃で保持した。安定な熱流応答が得られると、試料および基準を、走査速度10℃/分で270℃まで加熱すると同時に、生じた熱流応答をモニターした。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、図3に実質的に示されている通りのDSCサーモグラムを有する。本明細書で使用される場合、「図3に実質的に示されている」とは、図3に示されている吸熱事象の温度が、約±5℃変わり得ることを意味する。
【0150】
図3に示されている通り、結晶形(I-HS)のDSCサーモグラムは、122.9℃~152.8℃のベースラインの小さい吸熱変化を示し、その後、融解開始温度190.8℃、ピーク融解温度197.9℃および融解熱2.415mWの結晶形(I-HS)の融解に相当するシャープな吸熱を示す。融解吸熱後の遷移は、融解結晶形(I-HS)の分解によって、引き起こされ得る。
【0151】
図4Aおよび4Bは、いくつかの実施形態による結晶形(I-HS)の、(A)非偏光および(B)偏光の下での偏光顕微鏡(PLM)画像を示す。結晶化度(複屈折)の存在を、Moticカメラおよび画像取込みソフトウェア(Motic Images Plus2.0)を備えたOlympus BX50偏光顕微鏡を使用して測定した。すべての画像を、20倍対物レンズを使用して記録した。結晶形(I-HS)は、偏光下で調査すると、明確な形態または凝集を示すことなく複屈折を示す。
【0152】
図5は、一実施形態による、結晶形(I-HS)の動的水蒸気吸着(DVS)等温プロファイルを示す。DVS測定のために、結晶形(I-HS)試料を、湿度条件を変えることにより繰り返し、その吸湿性を測定した。試料を、表面測定システムDVS-1の動的水蒸気吸着システムを使用して分析した。結晶形(I-HS)約10mgを、メッシュ蒸気吸着天秤皿(mesh vapor sorption balance pan)に入れ、表面測定システムの一部としての動的蒸気吸着天秤にロードした。データを1分間隔で収集した。窒素をキャリアガスとして使用した。試料採取した結晶形(I-HS)を、10%増分で20%~90%相対湿度(RH)の傾斜プロファイルに供し、安定重量に達するまで(99.5%でステップ完了)、各ステップで試料を維持した。吸着サイクルの完了後、試料を、0%RHまで乾燥させ、最後に20%RHの出発点に戻したことを除いて、同じ手順を使用して乾燥させた。吸着/脱着サイクル中の重量変化をプロットして、試料の吸湿性質の決定を可能にした。
【0153】
図5に示されているように、結晶形(I-HS)は、非吸湿性であるように見える。約1.7%の小さい質量増大が、吸着サイクル中、0%~90%RHで観察された。さらに、非常に小さいヒステリシスが、吸着サイクルと脱着サイクルの間で観察された。DVS分析後の結晶形(I-HS)のXRPDパターン(図示せず)は、図1または図29に示されているそのDVS前のXRPDパターンに類似しているが、このことは、結晶形(I-HS)の変化がDVS中に生じなかったことを示している。
【0154】
図6は、一実施形態による式Iの化合物の結晶形(I-HS)の赤外(IR)分光法プロファイルを示す。IR分光法を、Bruker ALPHA P分光計で実施した。十分な結晶形(I-HS)材料を、分光計プレートの中心上に置き、透過率スペクトルを、4cm-1の分解能、16回の走査のバックグラウンド走査時間、16回の走査の試料走査時間を使用し、4000cm-1~400cm-1のデータを収集した。観察された結晶形(I-HS)のIRスペクトルを、図6に示す。
【0155】
驚くべきことに、結晶形(I-HS)は、非晶質形の(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド硫酸水素塩(AM(HS))よりも優れたものにするいくつかの特性を有する。例えば、結晶形(I-HS)は、その製造性および商品の生産に寄与する特性を有する。実施例8に示されている通り、結晶形(I-HS)は、Carr指数およびHausner指数により証明されている通り、非晶質API(AM(HS))と比較してより良好な流動特性を有する。例えば、結晶形(I-HS)は、20%超のCarr指数値を有する。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、1.35未満のHausner比(例えば、約1.26~約1.34の値)を示す。流動特性の差異によって、固体経口剤形の開発が、結晶質APIに比べて非晶質APIの方がより困難になる可能性がある。
【0156】
結晶形(I-HS)はまた、LDPEバッグに入れて、40℃/75%RHで5週間実施した加速安定性調査において、より良好な安定性が証明された。AM(HS)も結晶形(I-HS)も、調査過程で化学的不純物レベルの著しい変化を示さなかったが、調査では、結晶形(I-HS)が安定な物理化学的特性を有することが実際に明らかになった。他方では、非晶質APIは、XRPD、DSC、TGA、KFおよび偏光顕微鏡によれば、結晶形(I-HS)に実質的に類似した結晶形に変換した。さらに、非晶質APIは、安定性試験過程において、凝集粉末に変化し、流動特性が低下した。保存時に、非晶質粉末から流動が低減された結晶質材料および/または凝集粉末への変化を含むこのような変化が化合物の物理的特性に生じると、非晶質化合物に基づいて、患者に使用するための固体経口剤形を製造することは、ほぼ不可能となるはずである。しかし、結晶形(I-HS)で観察された特性は、安定な物理的構造および化学的構造の両方を有することを含めて、商品にとって望ましい特性と一致している。
【0157】
結晶形(I-HS)は、前述の通り非吸湿性である。本明細書で使用される「非吸湿性」は、25℃および80%RHで24~48時間後に重量増加が2%未満の化合物を意味する(例えば、実施例10参照)。しかしAM(HS)化合物は、湿気に曝露されると潮解することが見出された。この傾向を考慮すると、AM(HS)化合物を使用するには、この形態変化が生じるのを防止するために、保存および製造中に著しい取扱い上の注意が必要となり得るが、結晶形(I-HS)では、APIの製造中にこのような注意は必要ない。この湿気に対する安定性は、結晶形(I-HS)を使用して調製した任意の固体経口投与生成物にも引き継がれると予測されよう。
【0158】
結晶形(例えば、I-HS)は、非晶質APIと比較して改善された不純物プロファイルを与えることができる。不純物プロファイルを制御する能力は、患者の安全性、繰り返し可能な製造方法の開発にとって重要であり得、またヒトにおける使用前に規制当局による要件を満たすのに重要であり得る。多型の追加の性質および特性は、米国特許出願番号第14/943,014号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)で見つけることができる。
【0159】
(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド(式I)を含む、本明細書で提供される液体製剤は、Trkファミリータンパク質チロシンキナーゼの阻害を示し、疼痛、炎症、癌、および特定の感染症の処置に使用できる。
【0160】
いくつかの実施形態は、TrkA、TrkBおよび/またはTrkCキナーゼを阻害することによって処置できる障害および疾患、例えばTrkA、TrkBおよび/またはTrkC媒介状態、例えば、Trk関連癌を含む本明細書に記載の1種または複数の状態を処置するための、本明細書で提供される液体製剤の使用を含む。いくつかの実施形態では、液体製剤は、慢性疼痛および急性疼痛を含む疼痛の処置に有用であり得る。いくつかの実施形態では、液体製剤は、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、外科的疼痛、ならびに癌、外科手術および骨折に関連する疼痛を含む複数のタイプの疼痛の処置に有用であり得る。さらに、液体製剤は、炎症、活性な慢性神経変性疾患、および特定の感染性疾患の処置に有用であり得る。
【0161】
TrkA、TrkBおよび/またはTrkC阻害剤として作用する式(I)の化合物、その薬学的に許容可能な塩型、または結晶形(I-HS)の能力は、参照によって本明細書に組み込まれる2013年8月20日公告の米国特許第8,513,263号に開示の実施例AおよびBに記載のアッセイにより実証され得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、Trk関連癌であると診断された患者を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、患者に本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で投与することを含む。ニューロトロフィン受容体のTrkファミリー、TrkA、TrkBおよびTrkC(それぞれNTRK1、NTRK2、およびNTRK3遺伝子によりコードされる)、ならびにそれらのニューロトロフィンリガンドは、ニューロンの増殖、分化および生存を調節する。NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全、例えばNTRKキナーゼドメインを伴う転座、TRKリガンド結合部位を伴う変異、NTRK遺伝子の増幅、Trk mRNAスプライスバリアント、およびTrk自己分泌/パラ分泌シグナル伝達は、多様な腫瘍型において記載されており、腫瘍発生の一因となり得る。近年、NTRK1融合体が、一部の肺腺癌の患者において記載された。構成的に活性なTrkA、TrkB、およびTrkC融合タンパク質の産生に繋がるNTRK1、NTRK2、およびNTRK3の転座は、発癌性であり、肺腺癌、甲状腺、頭頸部癌、膠芽腫、などを含む多様な腫瘍型によく見られる。
【0163】
いくつかの実施形態では、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全には、野生型TrkA、TrkB、またはTrkCの過剰発現(例えば、自己分泌活性化をもたらす)が含まれる。いくつかの実施形態では、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全には、NTRK1、NTRK2、またはNTKR3遺伝子、またはそれらの一部を含む染色体セグメントにおける過剰発現、活性化、増幅または変異が含まれる。いくつかの実施形態では、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全には、それぞれNTRK1、NTRK2、またはNTRK3遺伝子融合をもたらす1つまたは複数の染色体転座または逆位が含まれる。いくつかの実施形態では、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全は、発現されたタンパク質が、非TrkAパートナータンパク質およびTrkA、非TrkBパートナータンパク質およびTrkB、または非TrkCパートナータンパク質およびTrkCタンパク質由来の残基を含有した融合タンパク質であり、それぞれ最小限の機能的TrkA、TrkB、またはTrkCキナーゼドメインを含む遺伝的転座の結果である。
【0164】
いくつかの実施形態では、TrkA融合タンパク質は、表10に示されているTrkA融合タンパク質の1つである。
【0165】
(表10)代表的TrkA融合タンパク質および癌
Creancier et al.,Cancer Lett.365(1):107-111,2015.J
米国特許出願公開第2015/0315657号。
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【0166】
いくつかの実施形態では、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全には、TrkAタンパク質の1つまたは複数の欠失、挿入、または点変異が含まれる。いくつかの実施形態では、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全には、TrkAキナーゼドメインの構成的活性をもたらすTrkAタンパク質からの1つまたは複数の残基の欠失が含まれる。いくつかの実施形態では、欠失には、TrkAアイソフォーム2のアミノ酸303~377の欠失が含まれる。
【0167】
いくつかの実施形態では、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全には、野生型TrkAタンパク質と比較して、1つまたは複数のアミノ酸置換を有するTrkAタンパク質の生成をもたらすNTRK1遺伝子の少なくとも1つの点変異が含まれる(例えば、表11に列挙されている点変異を参照)。代表的野生型TrkAポリペプチドは配列番号1、代表的野生型TrkBポリペプチドは配列番号2、および代表的TrkCポリペプチドは配列番号3である。
【0168】
(表11)TrkA活性化点変異
基準TrkA配列は、UniProtKB/Swiss-Prot:P04629.4であり、URL:www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/94730402?report=genbank&log$=protalign&blast_rank=0&RID=0(配列番号1)で見つけることができる。
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Russo et al.,Cancer Discov.Jan;6(1):36-44,2016.
国際公開第2016/196141A1号。
www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/56118210?report=genbank&log$=protalign&blast_rank=3&RID=0
www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/59889558
【0169】
いくつかの実施形態では、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全には、TrkA mRNAのスプライス変異が含まれ、この変異によって、TrkAキナーゼドメインの構成的活性をもたらす少なくとも1つの残基が欠失した(野生型TrkAタンパク質と比較して)TrkAの代替スプライスバリアントである発現タンパク質がもたらされる。いくつかの実施形態では、構成的活性を有するTrkAの代替スプライス形態は、エクソン8、9、および11が欠失し、TrkAアイソフォーム2と比較して残基192~284および393~398が欠損している発現タンパク質をもたらすか、TrkAのエクソン10が欠失しているか、またはNTRK1遺伝子中に欠失を有し、これがコードするTrkAタンパク質は膜貫通ドメインの75個のアミノ酸が欠失している(Reuther et al.,Mol.Cell Biol.20:8655~8666、2000)。
【0170】
NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有するとして特定された癌(本明細書に引用されている参考文献、ならびにwww.cancer.govおよびwww.nccn.orgウェブサイト参照)には、以下が含まれる。
【0171】
(A)NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全が、TrkA融合タンパク質をもたらす1つまたは複数の染色体転座または逆位を含む癌、例えば下記の癌。
【0172】
(B)NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全が、TrkAタンパク質の1つまたは複数の欠失、挿入、または変異を含む癌、例えば下記の癌。
【0173】
(C)NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全が、野生型TrkAの過剰発現(自己分泌活性化)を含む癌、例えば下記の癌。
【0174】
いくつかの実施形態では、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全には、TrkB融合タンパク質、例えば表12に示されているTrkB融合タンパク質の1つの発現をもたらす転座が含まれる。
【0175】
(表12)代表的TrkB融合タンパク質および癌
米国特許出願公開第2015/183836A1号。
Drilon et al.,Ann Oncol.2016 May;27(5):920-6.
Yuzugullu et al.,Cell Discov.2:16030,2016.
Ni et al.,Neuro Oncol.2017 Jan;19(1):22-30.
Lin et al.,Neuro-Oncol,Vol.18,Supp.Supplement 3,pp.iii58,Abstract Number:HG-48;17th International Symposium on Pediatric Neuro-Oncology,ISPNO 2016.Liverpool,UK,12 Jun 2016- 15 Jun 2016.
【0176】
いくつかの実施形態では、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全には、野生型TrkBタンパク質と比較して1つまたは複数のアミノ酸置換を有するTrkBタンパク質の生成をもたらすNTRK1遺伝子の少なくとも1つの点変異が含まれる(例えば、表13に列挙されている点変異を参照)。
【0177】
(表13)TrkB活性化点変異
基準TrkB配列は、UniProtKB/Swiss-Prot:Q16620.1であり、URL:www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/2497560?report=genbank&log$=protalign&blast_rank=0&RID=0(配列番号2)で見つけることができる。
国際公開第2016/196141A1号。
Bonanno et al.,Journal of Thoracic Oncology,Vol.11,No.4,Supp.Suppl.1,pp S67.Abstract Number:28P;6th European Lung Cancer Conference,ELCC 2016,Geneva,Switzerland.
www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP_006171.2
【0178】
いくつかの実施形態では、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全には、TrkC融合タンパク質、例えば表14に示されているTrkC融合タンパク質の1つの発現をもたらす転座が含まれる。
【0179】
(表14)代表的TrkC融合タンパク質および癌
Tannenbaum et al.,Cold Spring Harb.Mol.Case Stud.1:a000471,2015.
米国特許出願公開第2015/0315657号。
Yeh et al.,J Pathol.240(3):282-90,2016.
Montalli et al.,J Oral Pathol Med.doi:10.1111/jop.12491,2016.
Alassiri et al.,Am J Surg Pathol.,Aug;40(8):1051-61,2016.
Nagasubramanian et al.,Pediatr Blood Cancer.,Aug;63(8):1468-70,2016.
Chintakuntlawar et al.,Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol.2016 May;121(5):542-549.e1.
米国特許第9,511,050B2号。
米国特許第9,447,135B2号。
Skalova et al.,Modern Pathology 30,S27-S43,2017.
Hyrcza et al.,Vol.469,Supp.Supplement 1,pp.S17.Abstract Number:OFP-1997-7;31st International Congress of the International Academy of Pathology and the 28th Congress of the European Society of Pathology,Cologne,Germany.25-29 September 2016.
Sims et al.,Journal of Immunotherapy of Cancer,Vol.4,Supp.Supplement 1;Abstract Number:P280;31st Annual Meeting and Associated Programs of the Society for Immunotherapy of Cancer,SITC 2016.National Harbor,MD;9-13 November 2016.
Roberts et al.,Blood,Vol.128,No.22.Abstract Number:278,58th Annual Meeting of the American Society of Hematology,ASH 2016.San Diego,CA,United States.03 Dec 2016-06 Dec 2016.
Pavlick et al.,Pediatr Blood Cancer,doi:10.1002/pbc.26433,2017.
【0180】
いくつかの実施形態では、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全には、野生型TrkCタンパク質と比較して1つまたは複数のアミノ酸置換を有するTrkCタンパク質の生成をもたらすNTRK1遺伝子の少なくとも1つの点変異が含まれる(例えば、表15に列挙されている点変異を参照)。
【0181】
(表15)TrkC活性化点変異
基準TrkC配列は、UniProtKB/Swiss-Prot:Q16288.2であり、URL:www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/134035335?report=genbank&log$=protalign&blast_rank=0&RID=0(配列番号3)で見つけることができる。
Drilon et al.,Ann Oncol.2016 May;27(5):920-6.doi:10.1093/annonc/mdw042.Epub 2016 Feb 15.
国際公開第2016/196141A1号。
www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP_001007157
【0182】
いくつかの実施形態では、TRK関連癌は、1つまたは複数のTRK阻害剤耐性変異を有する(これにより、TRK阻害剤に対する増大した耐性を生ずる)として特定されてきた。TRK阻害剤耐性変異の非限定的例を表17~19に示す。
【0183】
(表17)代表的TrkA耐性変異
Russo et al.,Acquired Resistance to the TRK Inhibitor Entrectinib in Colorectal Cancer,Cancer Discov.Jan;6(1):36-44,2016.
【0184】
(表18)代表的TrkB耐性変異
【0185】
(表19)代表的TrkC耐性変異
Drilon et al.,What hides behind the MASC:clinical response and acquired resistance to entrectinib after ETV6-NTRK3 identification in a mammary analogue secretory carcinoma(MASC),Ann Oncol.2016 May;27(5):920-6.doi:10.1093/annonc/mdw042.Epub 2016 Feb 15.
【0186】
いくつかの実施形態では、Trk関連癌であると診断された患者を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、患者に本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で投与することを含む。例えば、Trk関連癌は、非小細胞肺癌、甲状腺乳頭癌、多形神経膠芽腫、急性骨髄性白血病、結腸直腸癌、大細胞型神経内分泌癌、前立腺癌、神経芽細胞腫、膵臓癌、黒色腫、頭部および頸部の扁平上皮癌、胃癌、スピッツ癌、甲状腺乳頭癌、結腸癌、急性骨髄性白血病、消化管間質腫瘍(GIST)(例えば、KIT/PDGFR/BRAF/SDHの野生型に対するGIST試験)、肉腫、小児神経膠腫、肝内胆管細胞癌(cholangicarcinoma)、毛様細胞星状細胞腫、低悪性度神経膠腫、肺腺癌、唾液腺癌、分泌乳癌、線維肉腫、腎腫、ならびに乳癌の群より選択され得る。
【0187】
いくつかの実施形態では、Trk関連癌は、Spitzoid黒色腫、スピッツ腫瘍(例えば、転移性スピッツ腫瘍)、非小細胞肺癌(NSCLC)、甲状腺癌(例えば、甲状腺乳頭癌(PTC)、急性骨髄性白血病(AML)、肉腫(例えば、未分化肉腫または成人軟部組織肉腫)、小児神経膠腫、結腸直腸癌(CRC)、多形神経膠芽腫(GBM)、大細胞型神経内分泌癌(LCNEC)、甲状腺癌、肝内胆管細胞癌(ICC)、毛様細胞星状細胞腫、低悪性度神経膠腫、頭部および頸部の扁平上皮癌、腺癌(例えば、肺腺癌)、唾液腺癌、分泌性乳癌、乳癌、急性骨髄性白血病、線維肉腫、腎腫、黒色腫、気管支原性癌、B細胞癌、気管支癌、口腔または咽頭の癌、血液学的組織の癌、子宮頸癌、胃癌、腎臓癌、肝臓癌、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵臓癌、唾液腺癌、小腸または虫垂の癌、精巣癌、膀胱癌、子宮または子宮内膜(endrometrial)の癌、炎症性筋線維芽細胞腫瘍、消化管間質腫瘍、非ホジキンリンパ腫、神経芽細胞腫、小細胞肺癌、扁平上皮癌、食道-胃癌、皮膚癌、新生物(例えば、メラノサイト性(melanocystic)新生物)、スピッツ母斑、星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、大細胞型神経内分泌腫瘍、乳腺相似分泌癌、非耳下腺腺房細胞癌、骨癌、ならびに直腸癌を含むTRK関連癌の非限定的例の群より選択される。
【0188】
いくつかの実施形態では、線維肉腫は乳児型線維肉腫である。
【0189】
いくつかの実施形態では、Trk関連癌は、LMNAa-NTRK1融合体軟部組織肉腫またはEVT6-NTRK3融合体乳頭様甲状腺癌である。
【0190】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の液体製剤は、小児患者のTrk関連癌の処置に有用である。例えば、本明細書で提供される液体製剤は、乳児性肉腫、神経芽腫、先天性間葉芽腎腫、低悪性度の脳神経膠腫、および橋膠腫を処置するために使用できる。
【0191】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される液体製剤は、同じまたは異なる作用機序によって働く1種または複数の追加の治療薬または療法との組み合わせによるTrk関連癌の処置に有用である。
【0192】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、カボザンチニブ、クリゾチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、パゾパニブ、ペルツズマブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、およびトラスツズマブを含む受容体チロシンキナーゼ標的化治療薬の群より選択される。
【0193】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、例えば、Ras-Raf-MEK-ERK経路阻害剤(例えば、ソラフェニブ、トラメチニブ、またはベムラフェニブ)、PI3K-Akt-mTOR-S6K経路阻害剤(例えば、エベロリムス、ラパマイシン、ペリフォシン、またはテムシロリムス)およびアポトーシス経路のモジュレーター(例えば、オバトクラックス)を含むシグナル伝達経路阻害剤から選択される。
【0194】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、例えば、三酸化ヒ素、ブレオマイシン、カバジタキセル、カペシタビン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、イリノテカン、ロムスチン、メトトレキセート、マイトマイシンC、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テモゾロミド、およびビンクリスチンを含む細胞傷害性化学療法剤の群より選択される。
【0195】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、例えばアフリベルセプトおよびベバシツマブを含む血管新生標的療法薬の群より選択される。
【0196】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、例えばアルデスロイキン、イピリムマブ、ランブロリズマブ、ニボルマブ、およびシプロイセル-Tを含む免疫標的薬の群より選択される。
【0197】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、例えばNGF標的化生物学的製剤、例えばNGF抗体およびpanTrk阻害剤を含む、下流Trk経路に対して活性な薬剤から選択される。
【0198】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬または療法は、例えば放射性ヨウ素療法、外部照射、およびラジウム223療法を含む放射線療法である。
【0199】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬には、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有する癌の標準治療である、先に列挙した療法または治療薬のいずれか1種が含まれる。
【0200】
NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を検出する方法には、例えば蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)を使用する、例えばNTRK遺伝子転座の検出が含まれる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際出願第PCT/US2013/061211号および同第PCT/US2013/057495号に記載されている)。
【0201】
いくつかの実施形態では、患者の癌(例えば、Trk関連癌)を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、前記患者に、本明細書で提供される液体製剤を、少なくとも1種の追加の療法または治療薬と組み合わせて投与することを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の追加の療法または治療薬は、放射線療法(例えば、放射性ヨウ素療法、外部照射、またはラジウム223療法)、細胞傷害性化学療法剤(例えば、三酸化ヒ素、ブレオマイシン、カバジタキセル、カペシタビン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、イリノテカン、ロムスチン、メトトレキセート、マイトマイシンC、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テモゾロミド、またはビンクリスチン)、チロシンキナーゼ標的化治療薬(例えば、アファチニブ、カボザンチニブ、セツキシマブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、パゾパニブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、またはトラスツズマブ)、アポトーシスモジュレーターおよびシグナル伝達阻害剤(例えば、エベロリムス、ペリフォシン、ラパマイシン、ソラフェニブ、テムシロリムス、トラメチニブ、またはベムラフェニブ)、免疫標的化治療薬(例えば、アルデスロイキン、インターフェロンアルファ-2b、イピリムマブ、ランブロリズマブ、ニボルマブ、プレドニゾン、またはシプロイセル-T)ならびに血管新生標的化治療薬(例えば、アフリベルセプトまたはベバシツマブ)から選択され、ここで、本明細書で提供される液体製剤の量は、追加の療法または治療薬と組み合わせて癌を処置するのに効果的な量である。
【0202】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、異なるTrk阻害剤である。いくつかの実施形態では、受容体チロシンキナーゼ標的療法薬は、TRK阻害活性を示す多標的キナーゼ阻害剤(例えば、TRK標的治療阻害剤)である。いくつかの実施形態では、TRK標的治療阻害剤は、TRKキナーゼに対し選択的である。代表的TRKキナーゼ阻害剤は、本明細書に記載のアッセイで測定して、TRKキナーゼに対し、約1000nM未満、約500nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約50nM未満、約25nM未満、約10nM未満、または約1nM未満の阻害活性(IC50)を示し得る。いくつかの実施形態では、TRKキナーゼ阻害剤は、ある特定のアッセイで測定して、TRKキナーゼに対し、約25nM未満、約10nM未満、約5nM未満、または約1nM未満の阻害活性(IC50)を示し得る。例えば、TRK阻害剤アッセイは、米国特許第8,933,084号で提供されるいずれか(例えば、実施例AまたはB)のものであり得る。
【0203】
受容体チロシンキナーゼ(例えば、Trk)標的療法薬の非限定的例には、アファチニブ、カボザンチニブ、セツキシマブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、エントレクチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、パゾパニブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、スニチニブ、トラスツズマブ、1-((3S,4R)-4-(3-フルオロフェニル)-1-(2-メトキシエチル)ピロリジン-3-イル)-3-(4-メチル-3-(2-メチルピリミジン-5-イル)-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)尿素、AG879、AR-772、AR-786、AR-256、AR-618、AZ-23、AZ623、DS-6051、Go6976、GNF-5837、GTx-186、GW441756、LOXO-101、MGCD516、PLX7486、RXDX101、TPX-0005、およびTSR-011が含まれる。追加のTrk標的療法薬には、米国特許第8,450,322号;同第8,513,263号;同第8,933,084号;同第8,791,123号;同第8,946,226号;同第8,450,322号;同第8,299,057号;および同第8,912,194号;米国特許出願公開第2016/0137654号;同第2015/0166564号;同第2015/0051222号;同第2015/0283132号;および同第2015/0306086号;国際公開第2010/033941号;同第2010/048314号;同第2016/077841号;同第2011/146336号;同第2011/006074号;同第2010/033941号;同第2012/158413号;同第2014078454号;同第2014078417号;同第2014078408号;同第2014078378号;同第2014078372号;同第2014078331号;同第2014078328号;同第2014078325号;同第2014078323号;同第2014078322号;同第2015175788号;同第2009/013126号;同第2013/174876号;同第2015/124697号;同第2010/058006号;同第2015/017533号;同第2015/112806号;同第2013/183578号;および同第2013/074518号に記載のものが含まれる。これらのすべての特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0204】
Trk阻害剤のさらなる例は、米国特許第8,637,516号、国際公開第2012/034091号、米国特許第9,102,671号、国際公開第2012/116217号、米国特許出願公開第2010/0297115号、国際公開第2009/053442号、米国特許第8,642,035号、国際公開第2009/092049号、米国特許第8,691,221号、国際公開第2006/131952号、で見つけることができる。これら全ての特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。代表的Trk阻害剤には、Cancer Chemother.Pharmacol.75(1):131-141,2015に記載のGNF-4256;およびACS Med.Chem.Lett.3(2):140-145,2012に記載のGNF-5837(N-[3-[[2,3-ジヒドロ-2-オキソ-3-(1H-ピロール-2-イルメチレン)-1H-インドール-6-イル]アミノ]-4-メチルフェニル]-N’-[2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]-尿素)が含まれる。これらの文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0205】
Trk阻害剤の追加の例は、米国特許出願公開第2010/0152219号、米国特許第8,114,989号、および国際公開第2006/123113号で開示されているものが含まれる。これら全ての特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。代表的Trk阻害剤には、Cancer 117(6):1321-1391,2011に記載のAZ623;Cancer Biol.Ther.16(3):477-483,2015に記載のAZD6918;Cancer Chemother.Pharmacol.70:477-486,2012に記載のAZ64;Mol.Cancer Ther.8:1818-1827,2009に記載のAZ-23((S)-5-クロロ-N2-(1-(5-フルオロピリジン-2-イル)エチル)-N4-(5-イソプロポキシ-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-2,4-ジアミン);およびAZD7451、が含まれる。これらの文献のそれぞれは、その全体が参照により組み込まれる。
【0206】
Trk阻害剤は、米国特許第7,615,383号;同第7,384,632号;同第6,153,189号;同第6,027,927号;同第6,025,166号;同第5,910,574号;同第5,877,016号;および同第5,844,092号に記載のものを含み得る。これらの特許のそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0207】
Trk阻害剤のさらなる例としては、Int.J.Cancer 72:672-679,1997;CT327,described in Acta Derm.Venereol.95:542-548,2015に記載のCEP-751;国際公開第2012/034095号に記載の化合物;米国特許第8,673,347号および国際公開第2007/022999号に記載の化合物;米国特許第8,338,417号に記載の化合物;国際公開第2016/027754号に記載の化合物;米国特許第9,242,977号に記載の化合物;米国特許出願公開第2016/0000783号に記載の化合物;PLoS One 9:e95628,2014に記載のスニチニブ(N-(2-ジエチルアミノエチル)-5-[(Z)-(5-フルオロ-2-オキソ-1H-インドール-3-イリデン)メチル]-2,4-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミド);国際公開第2011/133637号に記載の化合物;米国特許第8,637,256号に記載の化合物;Expert.Opin.Ther.Pat.24(7):731-744,2014に記載の化合物;Expert.Opin.Ther.Pat.19(3):305-319,2009に記載の化合物;ACS Med.Chem.Lett.6(5):562-567,2015に記載の(R)-2-フェニルピロリジン置換イミダゾピリダジン、例えば、GNF-8625、(R)-1-(6-(6-(2-(3-フルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-イル)-[2,4’-ビピリジン]-2’-イル)ピペリジン-4-オール;PLoS One 8(12):e83380,2013に記載のGTx-186およびその他のもの;Mol.Cell Biochem.339(1-2):201-213,2010に記載のK252a((9S-(9α,10β,12α))-2,3,9,10,11,12-ヘキサヒドロ-10-ヒドロキシ-10-(メトキシカルボニル)-9-メチル-9,12-エポキシ-1H-ジインドロ[1,2,3-fg:3’,2’,1’-kl]ピロロ[3,4-i][1,6]ベンゾジアゾシン-1-オン);J.Med.Chem.51(15):4672-4684,2008に記載の4-アミノピラゾリルピリミジン、例えば、AZ-23(((S)-5-クロロ-N2-(1-(5-フルオロピリジン-2-イル)エチル)-N4-(5-イソプロポキシ-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-2,4-ジアミン));Mol.Cancer Ther.6:3158,2007に記載のPHA-739358(ダヌセルチブ);J.Neurochem.72:919-924,1999に記載のGo6976(5,6,7,13-テトラヒドロ-13-メチル-5-オキソ-12H-インドロ[2,3-a]ピロロ[3,4-c]カルバゾール-12-プロパンニトリル);IJAE 115:117,2010に記載のGW441756((3Z)-3-[(1-メチルインドール-3-イル)メチリデン]-1H-ピロロ[3,2-b]ピリジン-2-オン);J.Carcinog.12:22,2013に記載のミルシクリブ(milciclib)(PHA-848125AC);AG-879((2E)-3-[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-シアノ-2-プロペンチオアミド);アルチラチニブ((N-(4-((2-(シクロプロパンカルボキサミド)ピリジン-4-イル)オキシ)-2,5-ジフルオロフェニル)-N-(4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド);カボザンチニブ(N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-N’-(4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド);レスタウルチニブ((5S,6S,8R)-6-ヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)-5-メチル-7,8,14,15-テトラヒドロ-5H-16-オキサ-4b,8a,14-トリアザ-5,8-メタノジベンゾ[b,h]シクロオクタ[jkl]シクロペンタ[e]-as-インダセン-13(6H)-オン);ドビチニブ(4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル]キノリン-2(1H)-オン モノ 2-ヒドロキシプロパノエート水和物);シトラバチニブ(N-(3-フルオロ-4-((2-(5-(((2-メトキシエチル)アミノ)メチル)ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル)オキシ)フェニル)-N-(4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド);ONO-5390556;レゴラフェニブ(4-[4-({[4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイル}アミノ)-3-フルオロフェノキシ]-N-メチルピリジン-2-カルボキサミド水和物);およびVSR-902A、が挙げられる。上記全文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0208】
Trk阻害剤の、TrkA、TrkB、および/またはTrkC阻害剤として作用する能力を、米国特許第8,513,263号の実施例AおよびBに記載のアッセイを用いて試験し得る。この特許は参照により本明細書に組み込まれる。
【0209】
いくつかの実施形態では、シグナル伝達経路阻害剤には、Ras-Raf-MEK-ERK経路阻害剤(例えば、ビニメチニブ(binimetinib)、セルメチニブ、エンコラフィニブ(encorafinib)、ソラフェニブ、トラメチニブ、およびベムラフェニブ)、PI3K-Akt-mTOR-S6K経路阻害剤(例えば、エベロリムス、ラパマイシン、ペリフォシン、テムシロリムス)、およびその他のキナーゼ阻害剤、例えばバリシチニブ、ブリガチニブ(brigatinib)、カプマチニブ(capmatinib)、ダヌセルチブ(danusertib)、イブルチニブ、ミルシクリブ、ケルセチン、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、セマクサニブ(semaxanib)、AP32788、BLU285、BLU554、INCB39110、INCB40093、INCB50465、INCB52793、INCB54828、MGCD265、NMS-088、NMS-1286937、PF477736((R)-アミノ-N-[5,6-ジヒドロ-2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-6-オキソ-1H-ピロロ[4,3,2-ef][2,3]ベンゾジアゼピン-8-イル]-シクロヘキサンアセトアミド)、PLX3397、PLX7486、PLX8394、PLX9486、PRN1008、PRN1371、RXDX103、RXDX106、RXDX108、およびTG101209(N-tert-ブチル-3-(5-メチル-2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニルアミノ)ピリミジン-4-イルアミノ)ベンゼンスルホンアミド)が含まれる。
【0210】
チェックポイント阻害剤の非限定的例には、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルバム、ピディリズマブ、MPDL3208A、MEDI4736、MSB0010718C、BMS-936559、BMS-956559、BMS-935559(MDX-1105)、AMP-224、およびペムブロリズマブが含まれる。
【0211】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性化学療法剤は、三酸化ヒ素、ブレオマイシン、カバジタキセル、カペシタビン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、イリノテカン、ロムスチン、メトトレキセート、マイトマイシンC、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テモゾロミド、およびビンクリスチンから選択される。
【0212】
血管新生標的療法剤の非限定的例には、アフリベルセプトおよびベバシズマブが含まれる。
【0213】
いくつかの実施形態では、免疫標的薬は、アルデスロイキン、インターフェロンアルファ-2b、イピリムマブ、ラムブロリズマブ、ニボルバム、プレドニゾン、およびシプロイセル-Tから選択される。
【0214】
放射線療法の非限定的例には、放射性ヨウ素療法、体外照射療法、およびラジウム223療法が挙げられる。
【0215】
追加のキナーゼ阻害剤には、例えば、米国特許第7,514,446号;同第7,863,289号;同第8,026,247号;同第8,501,756号;同第8,552,002号;同第8,815,901号;同第8,912,204号;同第9,260,437号;同第9,273,051号;米国特許出願公開第2015/0018336号;国際公開第2007/002325号;同第2007/002433号;同第2008/080001号;同第2008/079906号;同第2008/079903号;同第2008/079909号;同第2008/080015号;同第2009/007748号;同第2009/012283号;同第2009/143018号;同第2009/143024号;同第2009/014637;2009/152083号;同第2010/111527号;同第2012/109075号;同第2014/194127号;同第2015/112806号;同第2007/110344号;同第2009/071480号;同第2009/118411号;同第2010/031816号;同第2010/145998号;同第2011/092120号;同第2012/101032号;同第2012/139930号;同第2012/143248号;同第2012/152763号;同第2013/014039号;同第2013/102059号;同第2013/050448号;同第2013/050446号;同第2014/019908号;同第2014/072220号;同第2014/184069号;および同第2016/075224号、に記載のものが含まれる。これらのすべての特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0216】
キナーゼ阻害剤のさらなる例には、例えば、国際公開第2016/081450号;同第2016/022569号;同第2016/011141号;同第2016/011144号;同第2016/011147号;同第2015/191667号;同第2012/101029号;同第2012/113774号;同第2015/191666号;同第2015/161277号;同第2015/161274号;同第2015/108992号;同第2015/061572号;同第2015/058129号;同第2015/057873号;同第2015/017528号;同第/2015/017533号;同第2014/160521号;および同第2014/011900号、に記載のものが含まれる。これらのそれぞれの特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0217】
さらに他の追加の治療薬には、RET阻害剤、例えば米国特許第8,299,057号、同第8,399,442号、同第8,937,071号、同第9,006,256号、および同第9,035,063号、米国特許出願公開第2014/0121239号、同第2011/0053934号、同第2011/0301157号、同第2010/0324065号、同第2009/0227556号、同第2009/0130229号、同第2009/0099167号、同第2005/0209195号、国際公開第2014/184069号、同第2014/072220号、同第2012/053606号、同第2009/017838号、同第2008/031551号、同第2007/136103号、同第2007/087245号、同第2007/057399号、同第2005/051366号、および同第2005/044835、ならびにJ.Med.Chem.2012年、55(10)、4872~4876頁に記載のものが含まれる。
【0218】
これらの追加の治療薬は、本明細書で提供される液体製剤と共に、同じまたは別々の剤形の一部として、同じまたは異なる投与経路を介して、当業者に既知の標準的な薬務に従って同じまたは異なる投与スケジュールで投与し得る。
【0219】
また本明細書では、(i)腫瘍疾患の処置のために同時、別個または逐次的に使用するための、(a)本明細書で提供される液体製剤、(b)追加の治療薬、および(c)必要に応じ、少なくとも1種の追加の添加剤を含む、それを必要とする患者の癌(例えば、Trk関連癌)を処置するための医薬的組み合わせ(本明細書で提供される液体製剤の量および追加の治療薬の量は、合わせて前記癌の処置に有効となる)、(ii)このような組み合わせを含む医薬組成物、(iii)癌(例えば、Trk関連癌)を処置する薬物を調製するためのこのような組み合わせの使用、ならびに(iv)このような組み合わせを同時、別個または逐次的に使用するために混合製剤として含む商業用パッケージまたは製品、ならびにそれを必要とする患者の癌(例えば、Trk関連癌)を処置する方法が提供される。
【0220】
また、Trk関連癌(例えば本明細書に記載されているか、または当技術分野で公知のTrk関連癌のいずれか)を有すると特定または診断された対象(例えば、対象または対象由来の生検試料におけるNTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を特定するための、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたキットを使用することにより、Trk関連癌を有すると特定または診断された対象)を処置する方法が提供され、該方法は、本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で対象に投与することを含む。また、Trk関連癌(例えば本明細書に記載されているか、または当技術分野で公知のTrk関連癌のいずれか)を有すると特定または診断された対象(例えば、対象または対象由来の生検試料におけるNTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を特定するための、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたキットを使用することにより、Trk関連癌を有すると特定または診断された対象)のTrk関連癌の処置に使用するための本明細書で提供される液体製剤も提供される。また、Trk関連癌(例えば本明細書に記載されているか、または当技術分野で公知のTrk関連癌のいずれか)を有すると特定または診断された対象(例えば、対象または対象由来の生検試料におけるNTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を特定するための、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたキットを使用することにより、Trk関連癌を有すると特定または診断された対象)のTrk関連癌を処置する薬物の製造のための本明細書で提供される液体製剤の使用も提供される。
【0221】
また、小児対象(例えば、Trk関連癌を有すると疑われる対象、Trk関連癌の1つもしくは複数の症状を呈している対象、またはTrk関連癌を発症する危険性が高い対象)を処置する方法であって、対象がNTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有するかどうかを決定するために、対象から得られた試料でアッセイ(例えば、次世代シークエンシング、免疫組織化学的検査、break apart FISHまたはdual-fusion FISH分析を用いるアッセイ)(例えば、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたキットを使用する)を実施し、本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有すると判定された小児対象に投与する(例えば、特異的にまたは選択的に投与する)ことを含む方法が提供される。これらの方法で使用され得る非限定的なアッセイである追加のアッセイを、本明細書で記載する。追加のアッセイはまた、当技術分野で既知である。また、対象が、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有しているかどうかを決定するために、対象から得られた試料でアッセイ(例えば、インビトロアッセイ)(例えば、次世代シークエンシング、免疫組織化学的検査、break apart FISH、またはdual-fusion FISH分析を用いるアッセイ)(例えば、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたキットを使用する)を実施するステップによって、Trk関連癌を有すると特定または診断された対象(NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全が存在すると、対象がTrk関連癌を有していると特定される)のTrk関連癌の処置に使用するための、本明細書で提供される液体製剤の使用も提供される。また、対象が、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有しているかどうかを決定するために、対象から得られた試料でアッセイ(例えば、インビトロアッセイ)(例えば、次世代シークエンシング、免疫組織化学的検査、break apart FISH、またはdual-fusion FISH分析を用いるアッセイ)(例えば、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたキットを使用する)を実施するステップによって、Trk関連癌を有すると特定または診断された対象(NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全が存在すると、対象がTrk関連癌を有していると特定される)のTrk関連癌を処置する薬物の製造のための、本明細書で提供される液体製剤の使用も提供される。本明細書に記載の方法または使用のいくつかの実施形態のいずれかは、アッセイの実施によって、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有していると判定された対象が、本明細書で提供される液体製剤を投与されるべきであることを対象の臨床記録(例えば、コンピューター可読媒体)に記録することをさらに含む。
【0222】
本明細書に記載の方法または使用のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を伴う癌を有すると特定または診断されている(例えば、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたアッセイまたはキットを使用して判定される)。本明細書に記載の方法または使用のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全に対して陽性である腫瘍を有している(例えば、規制当局に認可されたアッセイまたはキットを使用して判定される)。本明細書に記載の方法または使用のいくつかの実施形態のいずれかでは、対象は、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全に対して陽性である腫瘍を有する対象であり得る(例えば、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたアッセイまたはキットを使用して陽性であると特定される)。本明細書に記載の方法または使用のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、対象の腫瘍がNTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはそのレベルの調節不全を有している対象であり得る(例えば、腫瘍はそれ自体、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたキットまたはアッセイを使用して特定される)。本明細書に記載の方法または使用のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、Trk関連癌を有すると疑われる。本明細書に記載の方法または使用のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有する腫瘍を有していることを示す臨床記録を有している(および場合により、臨床記録は、対象が、本明細書で提供される組成物のいずれかで処置されるべきであることを示す)。
【0223】
また、対象を処置する方法であって、本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有していることを示す臨床記録を有する対象に投与することを含む方法が提供される。また、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有していることを示す臨床記録を有する対象のTrk関連癌を処置する薬物を製造するための、本明細書で提供される液体製剤の使用が提供される。また、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有していることを示す臨床記録を有する対象のTrk関連癌を処置する薬物を製造するための、本明細書で提供される液体製剤の使用が提供される。これらの方法および使用のいくつかの実施形態は、さらに、対象がNTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有しているかどうかを決定するために、対象から得られた試料でアッセイ(例えば、インビトロアッセイ)(例えば、次世代シークエンシング、免疫組織化学的検査、break apart FISH、またはdual-fusion FISH分析を利用するアッセイ)(例えば、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたキットを使用する)を実施し、対象の臨床ファイル(例えば、コンピューター可読媒体)に、対象がNTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有していると特定された情報を記録するステップを含むことができる。
【0224】
また、Trk関連癌(例えば本明細書に記載されているか、または当技術分野で公知のTrk関連癌のいずれか)を有すると特定または診断された対象(例えば、対象または対象由来の生検試料におけるNTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を特定するための、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたキットを使用することにより、Trk関連癌を有すると特定または診断された対象)に対し、本明細書で提供される液体製剤の治療有効量での投与を含む処置を選択することを含む、対象の処置を選択する方法(例えば、インビトロ法)が提供される。いくつかの実施形態はさらに、選択された処置を、Trk関連癌を有すると特定または診断された対象に投与することを含むことができる。いくつかの実施形態はさらに、対象がNTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有しているかどうかを決定するために、対象から得られた試料でアッセイ(例えば、インビトロアッセイ)(例えば、次世代シークエンシング、免疫組織化学的検査、break apart FISH、またはdual-fusion FISH分析を利用するアッセイ)(例えば、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたキットを使用する)を実施し、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有すると決定された対象を、Trk関連癌を有する対象として特定または診断するステップを含むことができる。
【0225】
また、本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で投与することを含む、対象のために処置を選択する方法が提供され、該方法は、対象がNTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有しているかどうかを決定するために、対象から得られた試料でアッセイ(例えば、インビトロアッセイ)(例えば、次世代シークエンシング、免疫組織化学的検査、break apart FISH、またはdual-fusion FISH分析を利用するアッセイ)(例えば、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたキットを使用して)を実施し、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有すると判定された対象を、Trk関連癌を有するとして特定または診断し、Trk関連癌を有すると特定または診断された対象のために、本明細書で提供される液体製剤の治療有効量での投与を含む治療処置を選択するステップを含む。いくつかの実施形態は、選択された処置を、Trk関連癌を有すると特定または診断された対象に投与することをさらに含む。
【0226】
また、本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で投与することを含む処置に関し対象を選択する方法が提供され、該方法は、Trk関連癌を有する対象を選択、特定または診断し、本明細書で提供される液体製剤の治療有効量での投与を含む処置に関し対象を選択することを含む。いくつかの実施形態は、対象をTrk関連癌を有するとして特定または診断することは、対象がNTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有しているかどうかを決定するために、小児対象から得られた試料でアッセイ(例えば、インビトロアッセイ)(例えば、次世代シークエンシング、免疫組織化学的検査、break apart FISH、またはdual-fusion FISHを利用するアッセイ)(例えば、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたキットを使用する)を実施し、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有すると決定された対象を、Trk関連癌を有するとして特定または診断するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、処置の選択は、Trk関連癌の様々な処置の投与を含む臨床研究の一部として使用できる。
【0227】
本明細書に記載の方法または使用のいずれかのいくつかの実施形態では、対象(例えば、Trk関連癌を有すると疑われる対象、Trk関連癌の1つもしくは複数の症状を有している対象、および/またはTrk関連癌を発症する危険性が高い対象)から得た試料(例えば、生物学的試料または生検試料(例えば、パラフィン包埋生検試料)を使用して、対象がNTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有しているかどうかを決定するために使用されるアッセイには、例えば、次世代シークエンシング、免疫組織化学的検査、蛍光顕微鏡法、break apart FISH分析、サザンブロッティング、ウェスタンブロッティング、FACS分析、ノーザンブロッティング、およびPCR系増幅(例えばRT-PCR)が含まれ得る。当技術分野で周知の通り、アッセイは、典型的に、例えば、少なくとも1種の標識核酸プローブまたは少なくとも1種の標識抗体またはその抗原結合フラグメントを用いて実施される。アッセイは、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を検出するための当技術分野で既知の他の検出方法を利用できる(例えば、本明細書に引用されている参考文献を参照)。
【0228】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される液体製剤は、癌、外科手術、および骨折と関連する疼痛を含む慢性および急性疼痛の処置に有用である。本明細書で提供される液体製剤は、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、ならびに癌、外科手術および骨折に関連する疼痛を含む複数のタイプの疼痛の処置に有用であり得る。本明細書で提供される液体製剤はまた、神経芽腫、卵巣癌、膵臓癌および結腸直腸癌を含む癌の処置に有用であり得る。本明細書で提供される液体製剤はまた、炎症および特定の感染症の治療に有用である。さらに、本明細書で提供される液体製剤はまた、間質性膀胱炎(IC)、有痛性膀胱症候群(PBS)、尿失禁、喘息、食欲不振、アトピー性皮膚炎、および乾癬を処置するために使用され得る。本明細書で提供される液体製剤はまた、Sp35-TrkA相互作用を妨害することにより、髄鞘形成、ニューロン生存、およびオリゴデンドロサイト分化を促進することにより、脱髄および髄鞘形成異常を処置するために使用され得る。本明細書で提供される液体製剤は、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、外科的疼痛ならびに癌関連疼痛を含む複数のタイプの疼痛の処置に有用であり得る。本明細書で提供される液体製剤は、骨関連疾患(骨吸収を伴う疾患など)の処置に有用であり得る。骨関連疾患の例として、転移性骨疾患、処置誘導性骨喪失、骨粗鬆症、関節リウマチ、強直性脊椎炎、パジェット病、および歯周病が挙げられる。骨粗鬆症は、(1)女性の閉経、(2)男性もしくは女性の加齢、(3)小児期および青年期におけるピーク骨質量に達しなかった最適以下の骨成長、ならびに/または(4)他の病状、摂食障害、医薬品および/もしくは医学的処置に続発する骨喪失に起因し得る。本明細書で提供される方法に従って処置され得る他の溶骨性疾患は、より局在的である。特定の例は、転移性腫瘍誘導性の骨溶解である。この状態において、骨癌または骨転移は、疼痛、骨脆弱性および骨折を引き起こす局在的な骨溶解を誘導する。また、このような局在的な骨溶解は、骨に腫瘍のための空間をより多く作り出し、骨基質から増殖因子を放出することによって、腫瘍をより大きく成長させてしまう。腫瘍誘導性の骨溶解を引き起こすことが現在知られている癌には、血液学的悪性疾患(例えば、骨髄腫およびリンパ腫)および固形腫瘍(例えば、乳房、前立腺、肺、腎臓および甲状腺癌)が含まれるが、すべて本開示による処置が企図される。本明細書で使用される処置という用語は、予防、および既存の状態の処置を含む。
【0229】
したがって本明細書では、処置を必要とする対象の疾患または病状を処置する方法が提供され、前記疾患または状態はTrkAおよび/またはTrkBで処置可能であり(例えば、Trk関連癌)、該方法は、対象に本明細書で提供される液体製剤を、前記障害を処置または防止するのに有用な量で投与することを含む。特定の一実施形態では、哺乳動物の疼痛、癌、炎症、神経変性疾患またはトリパノソーマ・クルージ感染症を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、前記哺乳動物に本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で投与することを含む。別の実施形態では、哺乳動物の溶骨性疾患を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、前記対象に本明細書で提供される液体製剤を治療有効量で投与することを含む。
【0230】
本明細書で提供される液体製剤は、同じまたは異なる作用機序によって機能する1種または複数の追加の薬物との組み合わせで使用できる。このような併用処置は、個々の処置成分を同時、逐次的または別々に投与することにより達成され得る。例としては、抗炎症性化合物、ステロイド(例えば、デキサメタゾン、コルチゾンおよびフルチカゾン)、鎮痛薬、例えばNSAID(例えば、アスピリン、イブプロフェン、インドメタシン、およびケトプロフェン)、およびオピオイド(例えばモルヒネ)、および化学療法剤が挙げられる。
【0231】
腫瘍内科学の分野では、癌を有する各患者を処置するために、異なる処置形態の組み合わせを使用することは通常の慣行である。腫瘍内科学では、本明細書で提供される組成物に加えて、このような併用処置のその他の構成要素は、例えば、外科手術、放射線療法、化学療法、シグナル伝達阻害剤および/またはモノクローナル抗体であってよい。したがって、式(I)の化合物はまた、癌治療に対するアジュバントとしも有用であり得、すなわち、それらは、1種または複数の治療法または治療薬、例えば、同じまたは異なる作用機序により機能する化学療法剤と組み合わせて使用できる。
【0232】
したがって、本明細書で提供される液体製剤は、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、アンチセンスDNAまたはRNA、挿入抗生物質、増殖因子阻害剤、シグナル伝達阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素阻害剤、レチノイド受容体モジュレーター、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、生物反応修飾物質、抗ホルモン剤、血管新生阻害剤、細胞分裂阻害剤、抗アンドロゲン剤、標的化抗体、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、およびプレニルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤から選択される1種または複数の薬剤と組み合わせて投与され得る。
【0233】
本明細書記載の方法のいくつかの実施形態では、本明細書で提供される液体製剤は、1種または複数の治療法または治療薬(例えば、化学療法剤)から選択される少なくとも1種の追加の治療薬と組み合わせて治療有効量で投与される。
【0234】
追加の治療薬の非限定的例には、その他の受容体チロシンキナーゼ標的療法薬(例えば、TRKキナーゼ阻害剤)、キナーゼ標的療法薬、シグナル伝達経路阻害剤、チェックポイント阻害剤、アポトーシス経路のモジュレーター(例えば、オバトクラックス);細胞傷害性化学療法剤、血管新生標的療法薬、免疫標的薬、および放射線療法が挙げられる。
【0235】
本明細書に記載の処置方法では、本明細書で提供される液体製剤は、嚥下障害(例えば、嚥下困難)の対象を処置するのに特に有用であり得る。例えば、本明細書で提供される液体製剤は、中咽頭嚥下障害の対象の癌を処置する方法に有用であり得る。
【0236】
本明細書に開示の化合物が、少なくとも1つのキラル中心を有する場合、それにより、化合物は、鏡像異性体として存在し得る。化合物が2つのキラル中心を有する場合、化合物はさらに、ジアステレオマーとして存在し得る。すなわち式Iの化合物は、命名法「(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド硫酸水素塩」(以下(S,R)異性体と呼ぶ)により指定される所望の立体配置を有することに加えて、異性体(R)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド硫酸水素塩(以下(R,R)異性体と呼ぶ)として微量で存在し得、および/または(S)-N-(5-((S)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド硫酸水素塩(以下(S,S)異性体と呼ぶ)として微量で存在し得、および/または異性体(R)-N-(5-((S)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド硫酸水素塩」(以下(R,S)異性体と呼ぶ)として微量で存在し得る。すべてのこのような異性体およびこれらの混合物は、本発明の範囲に包含されると理解されたい。好ましくは、化合物が(S,R)異性体として存在する場合、(S,R)異性体は、約80%以上の過剰量で、好ましくは約90%以上の過剰量で、さらにより好ましくは約95%以上の過剰量で、さらにより好ましくは約98%以上の過剰量で、より好ましくは約99%以上の過剰量で存在する。
【0237】
結晶形(I-HS)は、2つの不斉中心を含有し、したがって、ラセミもしくはジアステレオマー混合物などの異性体混合物でまたは鏡像異性的に純粋な形態で、調製および単離できることが理解されるであろう。立体化学が、ある特定の立体配置を表す太字くさび形または破線により指定される場合、その立体異性体は、そのように指定され、定義される。
【0238】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容可能な塩」は、当該化合物の所望の生物活性を保持し、最小限の望ましくない毒性作用を示す塩を意味する。これらの薬学的に許容可能な塩は、本発明の化合物の最終単離および精製中にインサイツで、または遊離酸または遊離塩基形態の精製化合物をそれぞれ好適な塩基または酸と別々に反応させることにより、調製可能である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能な塩は、それぞれの遊離塩基または遊離酸よりも好ましい。理由は、このような塩は、分子により大きな安定性または溶解度を付与し、それにより、剤形への処方を促進するためである。塩基性化合物は通常、好適な酸を用いた処理により、薬学的に許容可能な酸付加塩を形成できる。好適な酸には、薬学的に許容可能な無機酸および薬学的に許容可能な有機酸が含まれる。代表的薬学的に許容可能な薬学的に許容可能な酸付加塩には、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、メチル硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、スルファミン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ヒドロキシ酢酸塩、フェニル酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、イソ酪酸塩、吉草酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、アクリル酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、サリチル酸塩、p-アミノサリチル酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、ヘプタン酸塩、フタル酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、o-アセトキシ安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、ジメトキシ安息香酸塩、マンデル酸塩、タンニン酸塩、蟻酸塩、アスコルビン酸塩、パルミチン酸、オレイン酸塩、ピルビン酸塩、パモ酸塩、マロン酸塩、ラウリン酸塩、グルタル酸塩、グルタミン酸塩、エストル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、エタンスルホン酸塩(エシル酸塩)、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸)、p-アミノベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)、2-ナフタレンスルホン酸塩、エタンジスルホン酸塩、および2,5-ジヒドロキシ安息香酸塩が挙げられる。
【0239】
別段の注記がない限り、本明細書で使用される場合、用語「単離された形態」は、化合物が、別の化合物(複数可)を含む任意の固体混合物、溶媒系または生物学的環境から分離した形態で存在することを意味するものとする。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、単離された形態として存在する。
【0240】
別段の注記がない限り、本明細書で使用される場合、用語「実質的に純粋な形態」は、単離した化合物または結晶形態中の不純物のモルパーセントが、約5モルパーセント未満、好ましくは約2モルパーセント未満、より好ましくは約0.5モルパーセント未満、最も好ましくは約0.1モルパーセント未満であることを意味するものとする。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、実質的に純粋な形態として存在する。
【0241】
別段の注記がない限り、本明細書で使用される場合、用語「他の非晶質、多形または結晶形を実質的に含まない」は、結晶形(I-HS)を説明するために使用される場合、結晶形(I-HS)の単離された塩基の他の非晶質、多形または結晶形のモルパーセントが、約5モルパーセント未満、好ましくは約2モルパーセント未満、好ましくは約0.5モルパーセント未満、最も好ましくは約0.1モルパーセント未満であることを意味するものとする。いくつかの実施形態では、結晶形(I-HS)は、他の非晶質、多形または結晶形を実質的に含まない形態として存在する。
【0242】
用語「多形」および「多形形態」は、単一化合物の異なる結晶形を意味する。すなわち多形は、同じ分子式を共有する別個の固体であるが、各多形は、別個の固体状態の物理的特性を有することができる。したがって、単一化合物は、様々な多形形態を生じ得、ここで各形態は、異なる溶解度プロファイル、溶解速度、融点温度、流動性、および/または異なるX線回折ピークなどの異なる別個の固体状態の物理的特性を有する。物理的特性の差異は、保存安定性、圧縮性および密度(製剤および生成物の製造において、重要となり得る)、ならびに溶解速度(バイオアベイラビリティにおいて、重要な因子となり得る)などの医薬パラメーターに影響を及ぼし得る。多形形態を特徴付けるための技術には、X線粉末回折法(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、単結晶X線回折法(XRD)、振動分光法、例えば、赤外(IR)およびラマン分光法、固体および溶液核磁気共鳴(NMR)分光法、光学顕微鏡、ホットステージ光学顕微鏡、走査電子顕微鏡(SEM)、電子線結晶学および定量的分析、粒径分析(PSA)、表面積分析、溶解度測定、溶解測定、元素分析、ならびにカールフィッシャー分析が含まれるが、それらに限定されない。
【0243】
用語「非晶質」は、非結晶状態である固体状態の固体を意味する。非晶質固体は、分子の無秩序配置であり、したがって識別可能な結晶格子または単位格子を有しておらず、したがって定義できる長距離秩序を有していない。固体の固体状態の形態は、偏光顕微鏡、X線粉末回折(「XRPD」)、示差走査熱量測定(「DSC」)、または当業者に公知の他の標準技術により決定され得る。
【0244】
別段の注記がない限り、本明細書で使用される場合、用語「処置する」、「処置」等は、疾患、状態、または障害に対抗する目的で対象または患者(好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト)を管理および治療することを含むものとし、開示化合物を投与して、症状もしくは合併症を軽減し、または疾患、状態もしくは障害の進行速度を低減することを含む。
【0245】
別段の注記がない限り、本明細書で使用される場合、用語「防止」は、(a)1つもしくは複数の症状の頻度の低下、(b)1つもしくは複数の症状の重症度の低下、(c)追加の症状の発生の遅延もしくは回避、および/または(d)障害もしくは状態の発生の遅延もしくは回避を含むものとする。
【0246】
本明細書で使用される場合、用語「Trk関連癌」は、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全(例えば、本明細書に記載のいずれかのタイプのNTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全)と関連するまたはそれを有している癌を含むと定義するものとする。Trk関連癌の非限定的な例は、本明細書に記載されている。
【0247】
本明細書で使用される場合、用語「疼痛」は、糖尿病性神経障害を含む、急性、慢性、炎症性および神経障害性疼痛を含むと定義するものとする。さらに、疼痛は、中枢的に媒介され、末梢的に媒介され、構造的組織傷害によって引き起こされ、軟部組織傷害によって引き起こされ、または進行性疾患によって引き起こされ得る。中枢的に媒介され、末梢的に媒介され、構造的組織傷害、軟部組織傷害または進行性疾患と関連する任意の疼痛は、急性または慢性であり得る。
【0248】
別段の注記がない限り、本明細書で使用される疼痛には、炎症性疼痛、中枢媒介性疼痛、末梢媒介性疼痛、内臓痛、構造関連疼痛、癌疼痛、軟部組織傷害関連疼痛、進行性疾患関連疼痛、神経障害性疼痛、急性傷害由来の急性疼痛、外傷由来の急性疼痛、外科手術由来の急性疼痛、頭痛、歯痛、背部痛(好ましくは腰痛)、神経障害状態由来の慢性疼痛、および脳卒中後状態由来の慢性疼痛が含まれるものとする。
【0249】
いくつかの実施形態は、急性疼痛である疼痛を処置するための方法を含む。いくつかの実施形態は、慢性疼痛である疼痛を処置するための方法を含む。いくつかの実施形態は、糖尿病性神経障害を含む神経障害性疼痛である疼痛を処置するための方法を含む。いくつかの実施形態は、炎症性疼痛である疼痛を処置するための方法を含む。
【0250】
いくつかの実施形態では、疼痛は、変形性関節症、関節リウマチ、線維筋痛症、頭痛、歯痛、熱傷、日焼け、動物咬傷(例えばイヌ咬傷、ネコ咬傷、ヘビ咬傷、クモ咬傷、昆虫刺傷等)、神経因性膀胱、良性前立腺肥大、間質性膀胱炎、鼻炎、接触性皮膚炎/過敏症、そう痒、湿疹、咽頭炎、粘膜炎、腸炎、セルライト、カウザルギー、坐骨神経炎、顎関節神経痛、末梢性神経炎、多発性神経炎、断端痛、幻肢痛、術後イレウス、胆嚢炎、乳房切除後疼痛症候群、口腔神経障害性疼痛(oral neuropathic pain)、シャルコー疼痛、反射性交感神経性ジストロフィー、ギラン-バレー症候群、感覚異常性大腿神経痛、口内焼灼感症候群、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、末梢神経障害、両側末梢神経障害、糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、視神経炎、発熱後神経炎、遊走性神経炎(migrating neuritis)、分節性神経炎、ゴンボー(Gombault)神経炎、ニューロン炎、頸腕神経痛、頭蓋神経痛、膝神経痛、舌咽(glossopharyngial)神経痛、片頭痛神経痛(migrainous neuralgia)、特発性神経痛、肋間神経痛、乳房神経痛、モートン神経痛、鼻毛様体神経痛、後頭部神経痛、紅神経痛(red neuralgia)、スルーダー神経痛、翼口蓋(splenopalatine)神経痛、眼窩上神経痛、翼突管神経痛(vidian neuralgia)、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、分娩、出生、月経痛(menstrual cramp)、癌、背部痛、腰痛および手根管症候群疼痛からなる群より選択される。
【0251】
急性疼痛には、急性傷害、外傷、疾病または外科手術(例えば、開胸外科手術(心臓切開またはバイパス外科手術を含む)によって引き起こされた疼痛が含まれる。また急性疼痛には、頭痛、術後疼痛、腎結石疼痛、胆嚢疼痛、胆石疼痛、産婦人科系(obstetric)疼痛、リウマチ痛、歯痛、またはスポーツ医学的傷害、手根管症候群、熱傷、筋骨格捻挫および挫傷、筋皮(musculotendinous)挫傷、頸腕疼痛症候群、消化不良、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、月経困難症もしくは子宮内膜症によって引き起こされる疼痛が含まれるが、それらに限定されない。
【0252】
慢性疼痛には、炎症状態、変形性関節症、関節リウマチによって引き起こされた疼痛、または疾患、急性傷害もしくは外傷の後遺症としての疼痛が含まれる。また慢性疼痛には、頭痛、上背部痛もしくは腰痛(体系的、局所的または原発的な脊椎疾患(神経根障害から選択される)から生じた背部痛から選択される)、骨痛(変形性関節症、骨粗鬆症、骨転移または未知の理由に起因する骨痛から選択される)、骨盤痛、脊髄傷害関連疼痛、心臓性胸痛、非心臓性胸痛、中枢性脳卒中後疼痛、筋筋膜痛、癌疼痛、AIDS疼痛、鎌状赤血球疼痛、老人性疼痛、または頭痛、片頭痛、三叉神経痛、顎関節症候群、線維筋痛症候群、変形性関節症、関節リウマチ、痛風、結合組織炎もしくは胸郭出口症候群によって引き起こされた疼痛が含まれるが、それらに限定されない。
【0253】
神経障害性疼痛には、慢性のまたは消耗性の状態または障害から生じた疼痛が含まれる。神経障害性疼痛をもたらし得る慢性のまたは消耗性の状態または障害には、有痛性糖尿病性末梢神経障害、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、脳卒中後疼痛、多発性硬化症関連疼痛、特発性または外傷後神経障害および単発神経炎などにおける神経障害関連疼痛、HIV関連神経障害性疼痛、癌関連神経障害性疼痛、手根管関連神経障害性疼痛、脊髄傷害関連疼痛、複合性局所疼痛症候群、線維筋痛症関連神経障害性疼痛、腰椎および子宮頸部疼痛、反射性交感神経性ジストロフィー、幻肢症候群、ならびに他の慢性のおよび消耗性の状態と関連する疼痛症候群が含まれるが、それらに限定されない。
【0254】
「急性神経変性障害または疾患」には、脳血管不全、限局性脳外傷、びまん性脳損傷、および脊髄傷害、すなわち塞栓性閉塞および血栓閉塞を含む脳虚血または梗塞、急性虚血後の再灌流、周産期低酸素性虚血性傷害、心停止、ならびに任意のタイプの頭蓋内出血(硬膜外、硬膜下、くも膜下および脳内を含むが、それらに限定されない)、ならびに頭蓋内および脊椎内病変(挫傷、貫通、せん断、圧迫および裂傷を含むが、それらに限定されない)、ならびに乳幼児揺さぶられ症候群を含む、ニューロン死または損傷と関連する様々なタイプの急性神経変性障害が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、急性神経変性障害は、脳卒中、急性虚血性傷害、頭部損傷または脊髄性損傷の結果である。
【0255】
「慢性神経変性障害または疾患」には、アルツハイマー病、ピック病、びまん性レビー小体病、進行性核上性麻痺(スティールリチャードソン症候群)、多系統変性(シャイ-ドレーガー症候群)、神経変性と関連する慢性てんかん状態、筋萎縮性側索硬化症、退行性運動失調、皮質基底変性、ALS-パーキンソン-グアム認知症複合、亜急性硬化性全脳炎、ハンチントン病、パーキンソン病、シヌクレイン病(多系統萎縮症を含む)、原発性進行性失語症、線条体黒質系変性、マシャド-ジョセフ病/脊髄小脳失調症タイプ3およびオリーブ橋小脳変性症、ジル-ドゥ-ラ-トゥレット病、球麻痺および仮性球麻痺、脊髄性および脊髄延髄性筋萎縮(ケネディ病)、多発性硬化症、原発性側索硬化症、家族性痙性対麻痺、ウェルドニッヒ-ホフマン病、クーゲルベルク・ヴェランダー病、テイ-サックス病、サンドホフ病、家族性痙性疾患、ヴォールファルト-クーゲルベルク-ヴェランダー病、痙性対麻痺、進行性多巣性白質脳症、家族性自律神経障害(ライリー-デイ症候群)、ならびにプリオン病(クロイツフェルト-ヤコブ、ゲルストマン-シュトロイスラー-シャインカー病、クールー病および致命的な家族性不眠症を含むがそれに限定されない)を含む運動ニューロン疾患が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、慢性神経変性障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症または脳性麻痺から選択される。
【0256】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、処置、観察または実験に付されている動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。いくつかの実施形態では、対象は、処置および/または防止される疾患または状態の少なくとも1つの症状を経験しているおよび/または呈している。いくつかの実施形態では、患者は、生まれてから最初の28日まで、29日齢から2歳未満、2歳から12歳未満、12歳から21歳まで(22歳の誕生日までだが、それを含まない)、22歳から35歳まで、35歳から65歳まで、または65歳超である。いくつかの実施形態では、患者は、小児患者(すなわち診断または処置の時点で21歳未満の患者)である。「小児」という用語は、新生児(出生後から最初の28日目まで)、乳幼児(29日齢から2歳未満)、子供(2歳から12歳未満)、および青年(12歳から21歳(22歳の誕生日までだが、それを含まない))を含む様々な亜集団にさらに分けることができる。Berhman RE,Kliegman R,Arvin AM,Nelson WE.Nelson Textbook of Pediatrics,15th Ed.Philadelphia:W.B.Saunders Company,1996;Rudolph AM,et al.Rudolph’s Pediatrics,21st Ed.New York:McGraw-Hill,2002;およびAvery MD,First LR.Pediatric Medicine,2nd Ed.Baltimore:Williams & Wilkins;1994。いくつかの実施形態では、患者は、高齢患者(例えば、65歳超の患者)である。
【0257】
いくつかの実施形態では、対象は、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を伴う癌を有していると特定または診断されている(例えば、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたアッセイまたはキットを使用して判定される)。いくつかの実施形態では、対象は、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全に対して陽性である腫瘍を有している(例えば、規制当局に認可されたアッセイまたはキットを使用して判定される)。対象は、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全に対して陽性である腫瘍を有する対象であり得る(例えば、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたアッセイまたはキットを使用して陽性であると特定される)。対象は、対象の腫瘍がNTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはそのレベルの調節不全を有している対象であり得る(例えば、腫瘍はそれ自体、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたキットまたはアッセイを使用して特定される)。いくつかの実施形態では、対象は、Trk関連癌を有すると疑われる。いくつかの実施形態では、対象は、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全を有する腫瘍を有していることを示す臨床記録を有している(および場合により、臨床記録は、対象が、本明細書で提供される組成物のいずれかで処置されるべきであることを示す)。
【0258】
「Trk」または「Trkタンパク質」という用語は、本明細書に記載のTrkタンパク質のいずれか(例えば、TrkA、TrkB、またはTrkCタンパク質)を含む。
【0259】
「NTRK遺伝子」という用語は、本明細書に記載のNTRK遺伝子のいずれか(例えば、NTRK1、NTRK2、またはNTRK3遺伝子)を含む。
【0260】
「野生型(wildtype)」または「野生型(wild-type)」という用語は、Trk関連癌を有していない(および場合により、Trk関連癌もしくは状態を発症する高い危険性も有していない、および/またはTrk関連癌もしくは状態を有するとも疑われない)対象に見出される、またはTrk関連癌もしくは状態を有していない(および場合により、Trk関連癌もしくは状態を発症する高い危険性も有していない、および/またはTrk関連癌もしくは状態を有するとも疑われない)対象由来の細胞もしくは組織に見出される、核酸(例えば、NTRK遺伝子またはTrk mRNA)またはタンパク質(例えば、Trkタンパク質)を表す。
【0261】
「規制当局」という用語は、医薬品の医療用途を国により承認するための国の機関である。例えば、規制当局の非限定的な例は、米国食品医薬局(FDA)である。
【0262】
「NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全」という語句は、遺伝子変異(例えば、融合タンパク質の発現をもたらすNTRK遺伝子転座、野生型Trkタンパク質と比較して少なくとも1つのアミノ酸の欠失を含むTrkタンパク質の発現をもたらすNTRK遺伝子欠失、または1つもしくは複数の点変異を有するTrkタンパク質の発現をもたらすNTRK遺伝子変異、野生型Trkタンパク質と比較してTrkタンパク質の少なくとも1つのアミノ酸の欠失をもたらすTrkタンパク質をもたらすTrk mRNAの代替スプライスバージョン、またはTrkタンパク質の過剰発現をもたらすNTRK遺伝子重複)、または細胞においてTrkタンパク質のキナーゼドメイン(例えば、Trkタンパク質の構成的に活性なキナーゼドメイン)の活性の病原性増大をもたらす、細胞におけるNTRK遺伝子の過剰発現から生じた自己分泌活性である。例えば、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全は、NTRK1、NTRK2、またはNTRK3遺伝子の変異であり得、これは、構成的に活性であるか、または変異を含まないNTRK1、NTRK2もしくはNTRK3遺伝子によってコードされたタンパク質と比較して高い活性を有するTrkタンパク質をコードする。例えば、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全は、機能的キナーゼドメインを含むTrkA、TrkB、またはTrkCの第1の部分、およびパートナータンパク質(すなわち、TrkA、TrkB、またはTrkCではない)の第2の部分を含有する融合タンパク質の発現をもたらす遺伝子転座の結果であり得る。融合タンパク質をコードする遺伝子は、例えば野生型NTRK1遺伝子の以下のエクソン:エクソン10~19、エクソン12~19、エクソン12~19、エクソン13~19、エクソン14~19、またはエクソン15~19を含み得る。融合タンパク質をコードする遺伝子は、例えば野生型NTRK2遺伝子の以下のエクソン:エクソン12~21、エクソン13~21、エクソン15~21、エクソン16~21、またはエクソン17~21を含み得る。融合タンパク質をコードする遺伝子は、例えば野生型NTRK3遺伝子の以下のエクソン:エクソン17~22またはエクソン16~22を含み得る。NTRK遺伝子転座の結果である融合タンパク質の非限定的な例は、表1、3、および4に記載されている。
【0263】
NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全には、例えば、少なくとも1つ(例えば、2つ、3つ、4つ、または5つ)の点変異(例えば、表6に記載されている点変異の1つまたは複数)を含有するTrkA、TrkB、またはTrkCをもたらすNTRK1、NTRK2、またはNTRK3中の変異が含まれ得る。NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全には、例えば、V673Mの点変異を含むTrkBタンパク質をもたらすNTRK2遺伝子変異が含まれ得る。NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全には、例えば、H677Yの点変異を含むTrkCタンパク質をもたらすNTRK3遺伝子変異が含まれ得る。
【0264】
NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全は、TrkA、TrkB、またはTrkCタンパク質の1つまたは複数の隣接アミノ酸(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも120、少なくとも130、少なくとも140、少なくとも150、少なくとも160、少なくとも170、少なくとも180、少なくとも190、少なくとも200、少なくとも210、少なくとも220、少なくとも230、少なくとも240、少なくとも250、少なくとも260、少なくとも270、少なくとも280、少なくとも290、少なくとも300、少なくとも310、少なくとも320、少なくとも330、少なくとも340、少なくとも350、少なくとも360、少なくとも370、少なくとも380、少なくとも390、または少なくとも400個のアミノ酸)の欠失(キナーゼドメインの不活化をもたらすTrkA、TrkB、またはTrkCのキナーゼドメインのアミノ酸の欠失を除く)をもたらすNTRK1、NTRK2、またはNTRK3の変異であり得る。いくつかの実施形態では、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全には、NGF結合部位を欠失しているまたはNGF結合部位を含むエクソン10を欠失しているTrkAタンパク質をもたらすNTRK1遺伝子欠失が含まれ得、後者は急性骨髄性白血病と関連する。
【0265】
いくつかの例では、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全には、Trk mRNAの代替スプライス形態、例えばTrkAIIIスプライスバリアント、またはエクソン10によりコードされたアミノ酸を欠失しているTrkAタンパク質の産生をもたらすTrkA mRNAの代替スプライス形態が含まれ得る。いくつかの例では、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全には、例えば、細胞におけるNTRK遺伝子の自己分泌発現をもたらし得るNTRK遺伝子の増幅(例えば、NTRK遺伝子の1つ、2つ、3つ、または4つの追加のコピー)が含まれる。
【0266】
「Trk関連癌または腫瘍」という用語は、NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全と関連する癌(例えば、本明細書に記載のNTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性、またはレベルの調節不全の少なくとも1つの例(例えば、2つ、3つ、4つ、または5つの例)と関連する癌)である。
【0267】
本明細書で使用される場合、用語「哺乳動物」は、本明細書に記載の疾患を有している、またはその疾患を発症する危険性がある温血動物を指し、モルモット、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ハムスター、およびヒトを含む霊長類が含まれるが、それらに限定されない。
【0268】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」は、研究者、獣医師、医師または他の臨床医により求められている、処置されている疾患または障害の症状の緩和を含む組織系、動物またはヒト内で生物学的または医薬的反応を誘発する活性化合物または医薬品の量を意味する。特に、治療有効量は、このような処置を必要とする対象に投与される場合、(i)TrkAおよび/もしくはTrkBの阻害剤で処置され得る特定の疾患、状態もしくは障害を処置もしくは防止し、(ii)特定の疾患、状態もしくは障害の1つもしくは複数の症状を減弱、緩和させるかもしくは除去し、または(iii)本明細書に記載の特定の疾患、状態もしくは障害の1つもしくは複数の症状の発症を防止もしくは遅延させるのに十分な量である。このような治療有効量に相当する結晶形(I-HS)の量は、処置を必要とする哺乳動物の病状、およびその重症度、固有の性質(例えば体重)などの因子に応じて変わるが、当業者によって、定常的に決定され得る。
【0269】
本明細書で使用される場合、用語「組成物」は、特定の成分を特定の量で含む生成物、ならびに直接的または間接的に特定の成分の特定の量の組み合わせから生じる任意の生成物を包含することを意図している。
【0270】
より簡単に説明するために、本明細書に記載の定量的表現のいくつかは、「約」という用語により限定されない。用語「約」が明示的に使用されていても、されてなくても、本明細書で与える各量は、実際に与えられる値を指し、そのように与えられた値に関する実験的および/または測定条件による近似も含め、当該技術分野の通例の技術に基づき合理的に推定されるそのように与えられた値の近似を指すことも意味すると理解される。
【0271】
いくつかの実施形態では、「約」という用語は、本明細書では、約、その近く、おおよそ、その前後を意味するために使用される。この用語「約」が数値の範囲と組み合わせて使用される場合、これは、記載の数値の上下の境界を拡大することにより範囲を変更する。一般に、本明細書で使われる場合、用語の「約」は、数値を表示値の上下に10%だけ変更する。
【0272】
X線粉末回折パターンにおける1つまたは複数のピーク位置に先行する「約」という用語は、それが先行する群のピークのすべてが、角度位置(2シータ)に関して±0.3°の許容できる変動性を伴って報告されることを意味する。±0.3°の変動性は、2つの粉末X線回折パターンを比較する場合に使用されることを意図する。実際、あるパターンの回折パターンピークが、測定されたピーク位置±0.3°である範囲の角度位置(2シータ)に割り当てられ、ピーク位置の範囲が重複する場合、2つのピークは、同じ角度位置を有するとみなされる。例えば、あるパターンのピークが11.0°の位置を有すると決定される場合、比較目的のために、許容できる変動性によって、そのピークは10.7°~11.3°の範囲内の位置に割り当てることができる。
【0273】
摂氏として報告される、DSC、TGA、TG、またはDTAの値に先行する「約」という用語は、±5℃の許容できる変動性を有する。
【0274】
より簡単に説明するために、本明細書の定量的表現のいくつかは、約Xの量~約Yの量の範囲として記載される。ある範囲が記載される場合、その範囲は、記載された上限および下限に限定されず、約Xの量から約Yの量までの全範囲、またはそれに含まれる任意の範囲を含むと理解される。
【0275】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される液体製剤は、単一投与単位当たり、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約400mg、または約500mgの式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせを含有する。しかし、投与量は、患者の要件、処置を受ける状態の重症度、および用いられる化合物に応じて変わり得る。いくつかの実施形態では、投与量は、1日1回(QD)または1日2回(BID)投与される。
【0276】
本明細書に記載の液体製剤中の式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせの毎日の投与量は、成人ヒト当たり、1日当たり1.0~10,000mgの広い範囲、またはそれを超える範囲、またはその範囲に含まれる任意の範囲にわたり変更し得る。経口投与用としての組成物は、処置されるべき患者の用量の症状による調整のために、好ましくは0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、150、200、250および500ミリグラムの有効成分を含む錠剤形態で提供される。薬物の有効量は、通常、1日当たり約0.1mg/kg体重~約1,000mg/kg体重、またはその範囲内の任意の範囲の用量レベルで供給される。範囲は、体重1kg当たり1日約0.5~約500mgまたはそれに含まれる任意の範囲であり得る。範囲は、体重1kg当たり1日約1.0~約250mgまたはそれに含まれる任意の範囲であり得る。範囲は、体重1kg当たり1日約0.1~約100mgまたはそれに含まれる任意の範囲であり得る。一例では、範囲は、体重1kg当たり1日約0.1~約50.0mgまたはそれに含まれる任意の量もしくは範囲であり得る。別の例では、範囲は、体重1kg当たり1日約0.1~約15.0mgまたはそれに含まれる任意の範囲であり得る。さらに別の例では、範囲は、体重1kg当たり1日約0.5~約7.5mgまたはそれに含まれる任意の量もしくは範囲であり得る。本明細書で提供される液体製剤は、1日1~4回の投与計画で、または1日1回用量で投与され得る。
【0277】
投与する最適投薬量は、当業者により容易に決定することができ、投与方法、製剤の強さ、投与方法、および病状の進行で変化する。さらに、患者の年齢、体重、食事および投与時間を含む、処置を受ける特定の患者に関連する因子により、投与量を調整する必要が生じる。
【0278】
当業者は、一般に許容される適切な既知の細胞および/または動物モデルを使用するインビボ試験およびインビトロ試験の両方により、所与の障害を処置または防止する試験化合物の能力が予測されることを理解するであろう。
【0279】
当業者は、健康な患者および/または所与の障害に罹患している患者におけるファースト・イン・ヒューマン試験、用量範囲探索試験および有効性試験を含むヒト臨床試験を、臨床分野および医療分野で周知の方法に従って履行し得ることをさらに理解するであろう。例えば、小児患者に対する適切な投与量の決定は、既知の方法を使用して行うことができ、これらの方法には、体重、年齢、および患者年齢、式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせのクリアランス経路の個体発生学、および体表面積(BSA)を考慮した投与のための薬物動態学的手法を確立するために使用できるSimcyp(登録商標)Pediatric Simulation modeling(CERTARA,Princeton,New Jersey)などのモデルが含まれる。
【0280】
本明細書で提供される液体製剤は、経口投与、鼻腔内投与、および腸内供給または胃瘻管による投与を含む、いくつかの異なる経路を介して投与できる。
【0281】
本明細書に見出される頭字語は、以下の意味を有する。
【実施例
【0282】
以下の実施例は本発明を例示し、本発明の理解を助けるために示されるものであり、以下の特許請求の範囲で示される本発明を多少なりとも限定する意図はなく、また、そのように解釈されるべきではない。
【0283】
下記の実施例では、別段の指示がない限り、すべての温度は摂氏で記載されている。試薬は、Sigma-Aldrich Chemical Company、EMD、JT Baker、またはPharco-Aaperなどの市販の業者から購入し、別段の指示がない限り、さらなる精製なしに使用した。テトラヒドロフラン(THF)、ヘプタンおよび他の有機溶媒は、Sigma-Aldrich Chemical Company、ACROS、Alfa-Aesar、Lancaster、TCI、またはMaybridgeなどの市販の業者から購入し、そのまま使用した。
【0284】
当業者には、別に指定されない場合、反応ステップ(複数可)が、既知の方法に従って所望の生成物を得るのに適した条件下で実施されることを認識されよう。当業者にはまた、本明細書に開示の反応ステップが、様々な溶媒または溶媒系中で実施され得る場合、前記反応ステップは、適切な溶媒または溶媒系の混合物中でも実施され得ることも認識されよう。当業者には、本明細書に提示の明細書および特許請求の範囲において、試薬または試薬のクラス/タイプ(例えば、塩基、溶媒等)が、ある方法の2つ以上のステップに記載される場合、個々の試薬は、反応ステップごとに独立に選択され、互いに同じであっても異なっていてもよいことが認識されよう。例えば、ある方法の2つのステップに、有機または無機塩基が試薬として記述されている場合、第1のステップで選択される有機または無機塩基は、第2のステップの有機または無機塩基と同じあっても異なっていてもよい。
【0285】
下記の反応は、一般に「ACSグレード」の溶媒中、窒素陽圧下で行い(別に定める場合を除き)、反応フラスコには、典型的に、シリンジまたは添加漏斗を介して基質および試薬を導入するためのゴム栓を設けた。
【0286】
工程中のモニタリングおよび分析には、2つの逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムを使用し、アセトニトリルおよび水/トリフルオロ酢酸を移動相として使用した。1つの系は、Agilent Zorbax Extend C18カラムと264nm検出を用い、その他の系(以下、「TRK1PM1 HPLC」)では、Waters Xbridge Phenyl Columnと268nm検出を用いた。別段の指定がない限り、前者の系を使用した。両方の系のシリカを、化合物を入れたフラスコ中で撹拌し、次にポリプロピレン濾布で濾過した後、分析した。
【0287】
非晶質遊離塩基形態の式Iの化合物:
(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド約1グラムを、最小量の水に溶解し、約-26℃の温度に冷却した後、凍結乾燥機で24時間乾燥させる。凍結乾燥機から得られた非晶質材料約20mgをバイアルに入れて秤量し、それに5体積分割量の適切な溶媒系を添加した。混合物を、溶解について調べ、溶解が認められなかった場合には約40℃に加熱し、再び調べた。この手順を、溶解が観察されるまで、または100体積の溶媒が添加されるまで継続した。凍結乾燥実験から得られた非晶質材料のXRPDパターンを、図7に示す。
【0288】
式Iの化合物の非晶質硫酸水素塩を、国際公開第2010/048314号の実施例14Aに記載の通り調製した(実施例3参照)。この方法により調製した2つの異なるロットの非晶質材料のXRPDパターンを、図28に示す。
【0289】
また本明細書では、結晶形(I-HS)を調製する方法が提供される。いくつかの実施形態では、この方法は、スキーム1に示されるステップを含む。
【0290】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、結晶形(I-HS)の調製方法であり、該方法は、
(a)濃硫酸を、(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミドのEtOH中溶液に添加し、(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミドの硫酸水素塩を形成するステップと、
(b)ステップ(a)の溶液にヘプタンを添加して、スラリーを形成するステップと、
(c)スラリーを濾過して、(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド硫酸水素塩を単離するステップと、
(d)前記(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド硫酸水素塩を、水/2-ブタノンの5:95w/w溶液と混合するステップと、
(e)エタノールの重量パーセントが約0.5%になり、(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド硫酸水素塩の結晶形のスラリーを形成するまで、ステップ(d)由来の混合物を、撹拌しながら約65~70℃で加熱するステップと、
(f)結晶形の(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド硫酸水素塩を、濾過により単離するステップと
を含む。
【0291】
いくつかの実施形態では、上記方法はさらに、(b1)ステップ(a)由来の溶液に、(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド硫酸水素塩を室温でシード添加し、その溶液を、スラリーが形成されるまで撹拌するステップをさらに含む。
【0292】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、結晶形(I-HS)の調製方法であり、該方法は、
(a)5-クロロ-3-ニトロピラゾロ[1,5-a]ピリミジンを、塩基の存在下で(R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン(R)-2-ヒドロキシスクシネートと反応させて、(R)-5-(2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-3-ニトロピラゾロ[1,5-a]ピリミジンを形成するステップと、
(b)前記(R)-5-(2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-3-ニトロピラゾロ[1,5-a]ピリミジンを、Znおよび塩酸で処理して、(R)-5-(2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-アミンを形成するステップと、
(c)前記(R)-5-(2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-アミンを、塩基およびクロロギ酸フェニルで処理して、フェニル(R)-(5-(2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)カルバメートを形成するステップと、
(d)前記フェニル(R)-(5-(2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)カルバメートを、(S)-ピロリジン-3-オ-ルと反応させて、(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミドを形成するステップと、
(e)硫酸を、前記(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミドに添加して、(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド硫酸水素塩を形成するステップと、
(f)結晶形の(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド硫酸水素塩を単離するステップと
を含む。
【0293】
上記ステップ(a)のいくつかの実施形態では、塩基は、アミン塩基、例えばトリエチルアミンである。
【0294】
上記ステップ(c)のいくつかの実施形態では、塩基は、アルカリ金属塩基、例えば、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩である。
【0295】
調製A
5-クロロ-3-ニトロピラゾロ[1,5-a]ピリミジンの調製
ステップA.ナトリウムピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-オレエートの調製:
1H-ピラゾール-5-アミンおよび1,3-ジメチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(1.05当量)の溶液を、機械撹拌装置、蒸気ポット、還流冷却器、J-Kem温度プローブおよびN陽圧制御のためのNアダプターを備えた丸底フラスコに充填した。機械的撹拌下で、固形物を、窒素雰囲気下で4体積(4mL/g)の無水EtOHに懸濁させ、次に2.1当量のNaOEt(EtOH中21wt%溶液)を充填し、その後1体積(1mL/g)の無水EtOHでラインリンスを行った。スラリーを約75℃に温め、TRK1PM1 HPLCによって、1.5面積%未満の1H-ピラゾール-5-アミンが観察されるまで穏やかに還流させながら撹拌し、脱イオン水4mLで希釈した20μLのスラリーおよび5μLの注入用いて、220nmで反応の進行を追跡した。
【0296】
さらに1時間後、混合物に2.5体積(2.5mL/g)のヘプタンを充填し、次に70℃で1時間還流させた。その後、スラリーを室温で一晩冷却した。固形物を、卓上漏斗およびポリプロピレン濾布を用いた濾過によって、収集した。反応器をすすぎ、濾過ケーキの上に4体積(4mL/g)のヘプタンを充填し、ケーキを引き抜き、固体を、風袋を差し引いた乾燥トレイに移し、重量が一定になるまで、高真空下、45℃でオーブン乾燥させた。薄黄色固体のナトリウムピラゾロ[1,5-a]-ピリミジン-5-オレエートを、収率93~96%(補正済)で得、HPLCにより、99.5面積%超が観察された(脱イオン水で1mg/mLに希釈、TRK1PM1、220nm)。
【0297】
ステップB.3-ニトロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5(4H)-オンの調製:
風袋を差し引いた丸底フラスコにナトリウムピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-オレエートを加え、40~45℃で3.0体積(3.0mL/g)の脱イオン水に溶解した後、65℃の水浴中、高真空下のロータリーエバポレーターを用いて、出発材料の2.4倍の重量が観察されるまで濃縮した(1.4体積/1.4mL/g脱イオン水含量)。残留EtOH(MeOH約1mLに溶解した溶液30μL)をガスクロマトグラフィー(GC)で検出した結果、100ppm未満であることが示され、後でHNOを添加すると微量の硝酸エチル煙霧が下部で観察された。いくつかのケースでは、元の溶液に追加の1.5体積(1.5mL/g)の脱イオン水を加え、その後、65℃の水浴を用い、高真空下のロータリーエバポレーターで出発材料の2.4倍の重量が観察されるまで濃縮した(1.4体積/1.4mL/g脱イオン水含量)。残留EtOH(MeOH約1mLに溶解させた溶液30μL)をガスクロマトグラフで検出した結果、<<100ppmの残留EtOHが示され、後にHNOを添加しても下部で硝酸エチル煙霧は観察されなかった。
【0298】
機械撹拌装置、蒸気ポット、還流冷却器、J-Kem温度プローブおよびN陽圧制御のためのNアダプターを備えた丸底容器に、3体積(3mL/g、10当量)の90重量%を超える濃度のHNOを加え、窒素雰囲気下、外部氷水冷却浴を用いて約10℃に冷却した。均圧添加漏斗を使用し、HNO溶液に、35~40℃の内部温度を維持する速度で、1.75~1.95体積のナトリウムピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-オレエートの脱イオン水溶液(1.16~1.4mLの脱イオン水/gのナトリウムピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-オレエート)を冷却しながら加えた。硝酸エチル煙霧なしに、2種の共沸混合物が観察された。共沸混合物のフラスコ、移送ライン(適用できる場合)および添加漏斗を、2x0.1体積(2x0.1mL/g)の脱イオン水ですすぎ、反応混合物に添加した。添加が完了し、約3時間かけて温度を約45~50℃に徐々に上昇させると、HPLCは、ナトリウムピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-オレエートから3-ニトロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5(4H)-オンへの99.5面積%を超える変換を示した。
【0299】
ステップC.5-クロロ-3-ニトロピラゾロ[1,5-a]ピリミジンの調製:
3-ニトロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5(4H)-オンを、機械撹拌装置、加熱マントル、還流冷却器、J-Kem温度プローブおよびN陽圧制御のためのNアダプターを備えた丸底フラスコに加えた。機械的に撹拌しながら、固体を、8体積(8mL/g)のCHCNに懸濁させ、次に2,6-ルチジン(lutitine)(1.05当量)を加えた後、スラリーを約50℃に温めた。均圧添加漏斗を使用し、混合物に0.33当量のPOClを滴加した。この充填によって、粘度が高い三量体のベージュ色スラリーが得られ、それを、半流動性の密集体が観察されるまで、撹拌しながらホモジナイズした。温度を安定化させながら追加の1.67当量のPOClを混合物に加えた後、反応混合物を温めて、穏やかに還流させた(78℃)。混合物を温めるといくらか煙霧が観察されたが、後に粘度が高いスラリーが希薄になるにつれて消失した。
【0300】
反応混合物が、暗色溶液に完全に溶解し、HPLC(5mLのCHCNに希釈した20μL、TRK1PM1 HPLC、5μL注入、268nm)によって、三量体(RRT0.92)が存在しないことが確認されるまで還流させると、ルチジンに関する初期に溶出する任意の妨害ピークを面積積分から手動で除去することにより、0.5面積%未満の3-ニトロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5(4H)-オン(RRT0.79)が観察された。1.9kgスケールでは、19時間穏やかに還流させた後に、TRK1PM1 HPLCおよび268nmでの検出により、0面積%の三量体、0.25面積%の3-ニトロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5(4H)-オン、および99.5面積%の5-クロロ-3-ニトロピラゾロ[1,5-a]ピリミジンが観察された。
【0301】
調製B
(R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン(R)-2-ヒドロキシスクシネートの調製
ステップA.tert-ブチル(4-(2,5-ジフルオロフェニル)-4-オキソブチル)-カルバメートの調製:
2-ブロモ-1,4-ジフルオロベンゼン(1.5当量)を、4体積のTHF(tert-ブチル 2-オキソピロリジン-1-カルボキシレートの重量を基準にして)に溶解させ、約5℃に冷却した。2.0MのiPrMgClのTHF(1.4当量)中溶液を、反応温度を25℃未満に維持しながら2時間かけて混合物に添加した。その溶液を約5℃に冷却し、1時間撹拌した(GC分析によって、グリニャール形成が確認された)。tert-ブチル 2-オキソピロリジン-1-カルボキシレート(1.0当量)の1体積のTHF中の溶液を、反応温度を25℃未満に維持しながら約30分かけて添加した。反応物を約5℃で90分間撹拌した(tert-ブチル 2-オキソピロリジン-1-カルボキシレートは、HPLCによって、0.5面積%未満であることが確認された)。反応温度を45℃未満に維持しながら、5体積の2M HCl水溶液で反応をクエンチした。次に、反応物を分液漏斗に移し、10体積のヘプタンを添加し、水層を除去した。有機層を、4体積の飽和NaCl水溶液で洗浄した後、2x1体積の飽和NaCl水溶液を添加した。有機層では、約7体積の最小蒸留体積で添加される2x4体積のヘプタンのために、蒸留温度35~55℃および蒸留圧力100~200mmHgにおいて、溶媒をヘプタンに切り替えた(<1%wtのTHFがGCにより確認された)。次に混合物を、約55℃に加熱しながらヘプタンで10体積まで希釈し、混合物を室温で一晩冷却して、より粘度が高い固形物を得た。スラリーを5℃未満に冷却し、ポリプロピレン濾布で濾過した。湿潤ケーキを、2x2体積のヘプタンで洗浄した。重量が一定になるまで、固形物を55℃の真空下で乾燥させると、tert-ブチル(4-(2,5-ジフルオロフェニル)-4-オキソブチル)-カルバメートが白色固体として理論的収率約75%~85%で得られた。
【0302】
ステップB.5-(2,5-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロ-2H-ピロールの調製:
tert-ブチル(4-(2,5-ジフルオロフェニル)-4-オキソブチル)-カルバメートを、5体積のトルエンに溶解し、2.2当量の12M HClを添加すると穏やかな発熱およびガスの発生が観察された。反応物を65℃で12~24時間加熱し、HPLCによりモニターした。完了すると、反応物を氷/水浴で15℃未満に冷却した。pHを、3当量の2M NaOH水溶液(4.7体積)で約14に調整した。反応物を室温で1~2時間撹拌した。混合物を、トルエンと共に分液漏斗に移した。水層を除去し、有機層を3体積の飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を、油状物になるまで濃縮し、1.5体積のヘプタンに再溶解させた。得られた懸濁液を、GF/F濾紙で濾過し、濃縮して、5-(2,5-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロ-2H-ピロールの淡黄色油を理論的収率90%~100%で得た。
【0303】
ステップC.(R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジンの調製:
クロロ-1,5-シクロオクタジエンイリジウム二量体(0.2mol%)および(R)-2-(2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル)-4-イソプロピル-4,5-ジヒドロオキサゾール(0.4mol%)を、5体積のMTBE(5-(2,5-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロ-2H-ピロールを基準にして)に室温で懸濁させた。混合物を1時間撹拌すると、固体の大部分が溶解して、溶液が暗赤色に変化した。触媒の形成を、HPLC/PDA検出器を用いてモニターした。反応物を5℃未満に冷却し、5-(2,5-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロ-2H-ピロール(1.0当量)を、0.5体積のMTBEすすぎ液を用いて添加した。ジフェニルシラン(1.5当量)を、反応温度を10℃未満に維持しながら約20分かけて添加した。反応物を10℃未満で30分間撹拌した後、室温に温めた。反応物を室温で一晩撹拌した。HPLCにより反応の完了を確認した後、5℃未満に冷却した。温度を20℃未満に維持しながら、5体積の2M HCl水溶液で反応をクエンチした。10分後に氷/水浴を取り外し、2時間撹拌しながら反応温度を室温に上昇させた。混合物を、3体積のMTBEと共に分液漏斗に移した。水層を3.5体積のMTBEで洗浄した後、5体積のMTBEを水層に添加すると同時に、0.75体積の50%NaOH水溶液を添加することによりpHを約14に調整した。有機層を、5体積の飽和NaCl水溶液で洗浄した後、油状物になるまで濃縮し、3体積のMTBEで希釈した。溶液をポリプロピレン濾布で濾過し、1体積のMTBEですすいだ。濾液を濃縮して、(R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジンの油を理論的収率95%~100%および75~85%eeで得た。
【0304】
ステップD.(R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン(R)-2-ヒドロキシスクシネートの調製:
(R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン(1.0当量)を、15体積(効力について補正済)のEtOH(200プルーフ)を充填した丸底フラスコに移した。D-リンゴ酸(1.05当量)を添加し、混合物を65℃に加熱した。固形物のすべてが約64℃で溶解した。溶液をRTに冷却した。約55℃で、その溶液に(R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン(R)-2-ヒドロキシ-スクシネート(約50mg、>97%ee)をシード添加し、室温で一晩撹拌した。その後、懸濁液をポリプロピレン濾布で濾過し、2x1体積のEtOH(200プルーフ)で洗浄した。固形物を、真空下、55℃で乾燥させると、(R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン(R)-2-ヒドロキシ-スクシネートが理論的収率75%~90%および>96%eeで得られた。
【0305】
スキーム1を参照すると、適切な塩基には、トリエチルアミンなどの第三級アミン塩基、およびKCOが含まれる。適切な溶媒には、エタノール、ヘプタンおよびテトラヒドロフラン(THF)が含まれる。反応は、好都合にも、5℃~50℃の温度で実施される。反応の進行は通常、HPLC TRK1PM1によりモニターした。
【0306】
スキーム1
化合物II(5-クロロ-3-ニトロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン)およびIII((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン(R)-2-ヒドロキシスクシネート、1.05当量)を、機械撹拌装置、J-Kem温度プローブおよびN陽圧制御のためのNアダプターを備えた丸底フラスコに加えた。4:1のEtOH:THF(10mL/gの化合物II)溶液を添加し、その後トリエチルアミン(NEt、3.50当量)を添加漏斗を介して加えると、添加中に温度が約40℃に達した。添加が完了すると、反応混合物を50℃に加熱し、0.5~3時間撹拌して化合物IVを得た。
【0307】
機械撹拌装置、J-Kem温度プローブおよびN注入口を備えた丸底フラスコに、化合物IVを添加し、その後テトラヒドロフラン(10mL/gの化合物IV)を添加した。溶液を氷浴中で5℃未満に冷却し、Zn(9~10当量)を添加した。次に、温度を30℃未満に維持するような速度で、6MのHCl(9~10当量)を滴加した(1kgスケールでは、添加に約1.5時間を要した)。発熱が消失すると、反応物を室温に温め、化合物IVがHPLCにより検出されなくなるまで30~60分撹拌した。この時点で、炭酸カリウム(KCO、2.0当量)の水(5mL/gの化合物IV)中溶液を一度に添加し、その後クロロギ酸フェニル(PhOCOCl、1.2当量)を急速に滴加した。上記両方の添加中にガスの発生(CO)が観察され、クロロギ酸フェニルを添加した後、温度が約30℃に上昇した。カルバメート組成物を室温で30~90分間撹拌した。直後にHPLC分析を実施し、溶液中にアミンが1面積%未満存在し、化合物VIが高収率で存在することを確認した。
【0308】
上記溶液に、アミンVII((S)-ピロリジン-3-オール、化合物VIの理論的収率を基準にして1.1当量)およびEtOH(10mL/gの化合物VI)を添加した。化合物VIIを、EtOHの前にまたはEtOHと同時に添加して、エチルカルバメート不純物の形成を回避した。先のEtOH溶液を、バッチ濃縮器を使用して減圧下で最小体積(4~5mL/g)まで濃縮し(THFレベルは、GCによって、<5%になるはずである)、EtOH(10mL/gの化合物VI)を再び添加して、合計10mL/gにした。次に、反応物を、9~19時間、またはHPLCによって、化合物VIが0.5面積%未満になるまで50℃で加熱した。その後、反応物を室温に冷却し、硫酸(HSO、化合物VIに対して1.0当量)を添加漏斗で添加すると、化合物I-HSが得られ、通常発熱する温度は約30℃であった。
【0309】
実施例1
結晶形(I-HS)の調製(方法1)
(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド(0.500g、1.17mmol)をEtOH(2.5mL)に溶解させ、約5℃に冷却した。濃硫酸(0.0636mL、1.17mmol)を冷却溶液に添加し、室温に温めながら約10分間撹拌した。メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)(2mL)を、混合物にゆっくり添加すると、生成物がゴム状化した。次に、EtOH(2.5mL)を混合物に添加し、すべての固形物が溶解するまで、ほとんど還流状態で加熱した。室温に冷却し、約1時間撹拌すると、いくつかの固形物が形成された。約5℃に冷却した後、固形物を濾過し、MTBEで洗浄した。濾過し、約15分間風乾させた後、(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド硫酸水素塩を固体として単離した。
【0310】
実施例2
結晶形(I-HS)の調製(方法2)
濃硫酸(392mL)を、3031gの(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミドの18322mLのEtOH中溶液に添加し、硫酸水素塩を形成した。この溶液に、2gの(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド硫酸水素塩をシード添加し、この溶液を室温で少なくとも2時間撹拌し、硫酸水素塩のスラリーを形成した。ヘプタン(20888g)を添加し、スラリーを室温で少なくとも60分間撹拌した。スラリーを濾過し、濾過ケーキを1:1のヘプタン/EtOHで洗浄した。次に、固形物を真空下、周囲温度で乾燥させた(オーブン温度を15℃に設定)。
【0311】
乾燥させた硫酸水素塩(4つのロットを合わせた6389g)を、水/2-ブタノンの5:95w/w溶液に添加した(総重量41652g)。混合物を、エタノールの重量パーセントが約0.5%になるまで撹拌しながら約68℃で加熱し、その間にスラリーが形成された。スラリーを濾過し、濾過ケーキを水/2-ブタノンの5:95w/w溶液で洗浄した。その後、固形物を、真空下、周囲温度で乾燥させて(オーブン温度を15℃に設定)、(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド硫酸水素塩の結晶形が得られた。
【0312】
実施例3
非晶質形AM(HS)の調製
(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド(9.40g、21.94mmol)のMeOH(220mL)中溶液に、急速に撹拌しながら、硫酸(MeOH中0.1M、219.4mL、21.94mmol)を周囲温度でゆっくり添加した。30分後、最初に反応物をロータリーエバポレーターによって、乾燥状態近くまで濃縮し、次に高真空状態で48時間乾燥し、非晶質形の(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド硫酸塩を得た(11.37g、21.59mmol、収率98.43%)。LCMS(apci m/z 429.1、M+H)。
【0313】
実施例4
式Iの結晶質HCl塩の調製
EtOH(6mL、200プルーフ)中の(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド(0.554g、1.29mmol)およびMTBE(10mL)の混合物を、撹拌しながら50℃に加熱して溶液を得、その後、塩化水素(濃)(0.108mL、1.29mmol)を一度に添加した。その後、反応混合物を最初に周囲温度に冷却し、次に氷水浴中で撹拌しながら約5℃に冷却して、結晶化を誘導した。懸濁液を、氷水浴中で4時間撹拌した後、真空濾過し、濾過ケーキをMTBEですすぎ、真空下、55℃で一定重量まで乾燥させて、結晶質(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド塩酸塩(0.534g、収率89%)が得られた。LCMS(apci m/z 429.2、M+H)。
【0314】
式Iの結晶質HBr塩の調製
EtOH(6mL、200プルーフ)中の(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド(0.505g、1.18mmol)およびMTBE(10mL)の混合物を、撹拌しながら50℃に加熱して溶液を得、その後、臭化水素(33%水溶液)(0.213mL、1.18mmol)を一度に添加した。反応混合物を加熱還流させると、ほぼ透明な溶液が得られ、反応容器のガラス壁上に少量の油状残留物が認められた。周囲温度に冷却すると、沈殿が現れ、油状残留物が固化した。混合物を再び50℃に加熱した後、室温に冷却し、一晩撹拌した。懸濁液を真空濾過し、濾過ケーキをMTBEですすぎ、真空下、55℃で一定重量になるまで乾燥させ、結晶質(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド臭化水素酸塩(0.51g、収率85%)が得られた。LCMS(apci m/z 429.3、M+H)。
【0315】
式Iの結晶質メシル酸塩の調製
EtOH(2.7mL、200プルーフ)中(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド(0.532g、1.24mmol)およびMTBE(5.3mL)の混合物を、撹拌しながら50℃に加熱して溶液を得、その後、メタンスルホン酸(0.076mL、1.24mmol)を一度に添加した。反応混合物を加熱還流させて、ほとんど透明な溶液を少量の微粒子と共に得た。周囲温度に冷却すると、沈殿が、若干の油状残留物と共に現れた。追加のEtOH(0.5mL、200プルーフ)およびメタンスルホン酸(0.010mL)を添加して、溶液を得た。反応混合物を再び50℃に加熱した後、室温に冷却し、1時間撹拌した。懸濁液を真空濾過し、濾過ケーキをMTBEですすぎ、真空下、55℃で一定重量になるまで乾燥させ、結晶質(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミドメタンスルホン酸塩(0.51g、収率78%)が得られた。LCMS(apci m/z 429.4、M+H)。
【0316】
式Iの結晶質カンシル酸塩の調製
EtOH(3mL、200プルーフ)中の(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド(0.500g、1.17mmol)およびS-(+)-カンファースルホン酸(0.271g、1.17mmol)ならびにMTBE(5mL)の混合物を、撹拌しながら加熱還流させて、溶液を得た。周囲温度に冷却すると、沈殿が現れた。懸濁液を一晩室温で撹拌した後、真空濾過し、濾過ケーキをMTBEですすぎ、真空下、55℃で一定重量になるまで乾燥させ、結晶質(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド((1S,4R)-7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-イル)メタンスルホン酸塩が得られた。
【0317】
実施例5
(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミドの液体製剤による処置が成功したNTRK3-ETV6融合体を有する乳児型線維肉腫
材料および方法
進行性固形腫瘍または原発性CNS腫瘍の患者の多施設小児第1相用量漸増試験を、2015年12月に開始し(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT02637687)、化合物I-HS(すなわち、(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミドの硫酸水素塩)の安全性および耐容性を評価した。適格規準には、年齢1~21歳(既知のTRK変化の存在に関係なく)、ならびに既知のNTRK融合体を有し、乳児型線維肉腫または先天性間葉芽腎腫(congential mesoblastic nephroma)の診断を受けている生後1ヶ月またはそれを超える年齢の患者を含めた。カプセル剤を嚥下できない患者のために、化合物I-HSの経口液体製剤を開発した。Simcyp(登録商標)Pediatric Simulation modeling(CERTARA,Princeton,New Jersey)を、患者の年齢、化合物I-HSを排出するクリアランス経路の個体発生学、および体表面積(BSA)を考慮した投与のための薬物動態学的手法を確立するために用いた。最初のコホートに対して選択された小児投与量は、推奨されている第2相の成人の投与量である100mgのBID投与量を服用する成人患者で達成される曝露に等しくなることが想定された。サイクルは28日毎に増やす連続投与で測定した。適切な画像診断法による応答の評価が8週毎に実施されるようにスケジュールされる。患者に対し、疾患進行または耐えられない毒性まで治療が継続される。
【0318】
7.6gの化合物I-HS含有密閉型目盛付きアンバーボトル;51gのCAVASOL(登録商標)W7 HP Pharma含有密閉ボトル;500gのクエン酸三ナトリウム二水和物含有密閉ボトル;100mLの滅菌水含有密閉ボトル;ORA-Sweet(登録商標)SFの入ったパイント(約473mL)ボトル;漏斗;28mmの圧入ボトルアダプター;56単位の1回しか使えない1mLの投与シリンジを含むボックス;56単位の1回しか使えない5mLの投与シリンジを含むボックス;化合物I-HS(20mg/mL)の濃度を表示した製品ラベル;および配合説明書を含むキットが提供された。
【0319】
図9に示すようにして、溶液が調製された。最初に、CAVASOL(登録商標)W7 HP Pharmaの入っているボトルからシール(キャップ)を取り除いた。次に、漏斗を使って、100mLボトルの内容物の滅菌水をCAVASOL(登録商標)W7 HP Pharmaを含むボトルに加えた。その後、ボトルをキャップで閉じ、CAVASOL(登録商標)W7 HP Pharmaおよび滅菌水を含むボトルを、全部のCAVASOL(登録商標)W7 HPが溶解するまで震盪した。CAVASOL(登録商標)W7 HP Pharmaの完全な溶解に10分間を要してもよい。ボトルの底部と側面を検査し、全部のCAVASOL(登録商標)W7 HP Pharmaが溶解し、底部に凝集していないことまたは側面にへばりついていないことを確認した。次いで、約5分間、ボトルを撹拌せずに静置させて、溶解したCAVASOL(登録商標)W7 HP Pharmaから形成されたバブルを消散させた。その後、化合物I-HS含有目盛付きボトルからシール(キャップ)を取り外した。前と同じ漏斗を用いて、CAVASOL(登録商標)W7 HP Pharmaを化合物I-HS含有目盛付きボトルに加えた。ボトルにキャップを取り付け、溶解するまで手で振盪させた。バブルを表面に移動させ、透明の赤色溶液が得られた。前と同じ漏斗を用いて、用意されたORA-Sweet(登録商標)SFの適量を加えて300mLにした。目盛付きボトルにキャップを取り付け、10回静かに反転して、ORA-Sweet(登録商標)SFと化合物I-HS/CAVASOL(登録商標)W7 HP溶液を混合した。この際、あまりに多くのバブルを製剤に導入しないように注意した。次いで、用意されたクエン酸三ナトリウム二水和物容器から、3.5gのクエン酸三ナトリウム二水和物を秤量し、キット中の2つ目の漏斗を用いてこれを液体製剤に添加した後、ボトルにキャップを取り付け、ボトルを10回反転した。バブルを上端に浮上させて、ボトルの内容物を検査して、全てのクエン酸三ナトリウム二水和物が完全に溶解したことを確認した。溶解が完全でない場合は、ボトルをさらに10回反転した。その後、目盛付きボトルのキャップを取り外し、用意された28mm圧入ボトルアダプター(シリンジアダプター)をボトルに挿入した。次に、ボトルにキャップを確実にはめることにより、ボトルを閉止した。その後、患者の投与計画に応じて、1mLまたは5mLのシリンジを用いて、所望量の化合物I-HSを含む液体製剤を投与した。
【0320】
結果
他の部位は健康な、顔面まで伸びる大きな右側頸部血管腫瘤を有する女児が誕生した。この腫瘤は、最初は、急性退縮性先天性血管腫として診断、処置された。生後6ヶ月時に、腫瘤は急速に成長し、外科的切除/大部分の除去によりIFSが明らかになり、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)を用いて、ETV6転座によりIFSの診断が確証された。術後の最初の7日以内に、腫瘍が急速に進行し、口腔に侵入した。ビンクリスチン、アクチノマイシン-Dおよびシクロホスファミドを用いた化学療法が開始されたが、患者は1サイクル中に疾患進行を経験した。イホスファミドおよびドキソルビシン(ID)からなる新しい化学療法計画が、病変の大部分の除去手術と同時に開始され、口咽頭の障害物のために、気管開口術を実施した。2つの追加のコースのIDおよび4つのコースのイホスファミドおよびエトポシドは、腫瘍に対し、最小限の影響しか与えなかった。腫瘍は、頭蓋底、乳様突起および頸部脈管構造を含むまでに進行した。学際的外科医のチームにより、2015年10月に大規模外科的切除が実施されたが、無傷の外科的マージンは達成され得なかった。
【0321】
外科的切除の5週後、脳および頸部のMRは、内耳構造の直ぐ前側および下側の、中頭蓋窩の頭蓋底を含む20mmx19mmx18mmの強調腫瘤を示した(図10Aおよび図10B参照)。さらなる化学療法は、全ての標準的投与計画に対し応答がないことから、効果がないことが明らかになった。反復外科的切除は可能でないと思われた。治療的放射線療法は可能であったが、患者の年齢および疾患の部位を考慮すると、大被害を及ぼす長期後遺症を生ずることが予測された。
【0322】
生後16ヶ月時に、患者は、経口選択的TRK阻害剤化合物I-HSの第1相小児試験に登録された。両親は、サイクル1の全体を通して、改善された関わり合いおよび陽気さに気付いた。サイクル1の終わり(28日目)に、脳および頸部のMR画像は、ベースラインから90%を超える腫瘤のサイズおよび強調の有意な間隔減少を示した(図10Cおよび10D)。サイクル2の終わりの反復スキャンによりサイズの減少が確認され、また、強調の連続した低減が示され、部分応答が確証された(図10Eおよび図10F)。最初の2サイクルの間、患者は、発熱およびPCR確証インフルエンザA(関連性はないと考えられる)を経験したが、化合物I-HSに関連する有害事象はなかった。
【0323】
実施例6
(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミドの液体製剤
(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミドの液体製剤を表16に記載の成分を用いて調製した。
【0324】
(表16)(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミドの液体製剤
(1)API補正係数0.8137を含む。計算:遊離塩基分子量/塩式量=428.44/526.51。液体製剤の密度は1.2mg/mLである。
(2)ラベル表示=3,518.8gの塩型APIx0.8137/171,648g合計製剤*1.2g/mL密度*1,000mg/g。
(3)必要に応じ、pH調節のために製剤に加えられた追加の合計量の5%のクエン酸ナトリウムを含む。
【0325】
参考文献:
【表1】
【表2】
本発明は以下の態様を含みうる。
[1]可溶化剤と、式(I):
【化1-1】
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせとを含む、液体製剤。
[2]式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせが、約0.5重量%~約7重量%の量で存在する、上記[1]に記載の液体製剤。
[3]式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせが、約1.5重量%~約2.5重量%の量で存在する、上記[1]または[2]に記載の液体製剤。
[4]式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせが、前記液体製剤中で、約5mg/mL~約50mg/mLの濃度を有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の液体製剤。
[5]式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせが、前記液体製剤中で、約15mg/mL~約35mg/mLの濃度を有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の液体製剤。
[6]式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせが、前記液体製剤中で、約20mg/mLの濃度を有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の液体製剤。
[7]前記可溶化剤が、シクロデキストリン、グリコール、グリセロール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記[1]~[6]のいずれかに記載の液体製剤。
[8]前記可溶化剤が、シクロデキストリンを含む、上記[1]~[7]のいずれかに記載の液体製剤。
[9]前記可溶化剤が、β-シクロデキストリン誘導体、γ-シクロデキストリン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記[1]~[8]のいずれかに記載の液体製剤。
[10]前記可溶化剤が、ヒドロキシアルキル-γ-シクロデキストリンを含む、上記[1]~[9]のいずれかに記載の液体製剤。
[11]前記可溶化剤が、ヒドロキシアルキル-β-シクロデキストリン、スルホアルキルエーテル-β-シクロデキストリン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるβ-シクロデキストリンを含む、上記[1]~[10]のいずれかに記載の液体製剤。
[12]前記可溶化剤が、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む、上記[1]~[11]のいずれかに記載の液体製剤。
[13]前記可溶化剤が、約5重量%~約35重量%の量で存在する、上記[1]~[12]のいずれかに記載の液体製剤。
[14]前記可溶化剤が、約13重量%~約17重量%の量で存在する、上記[1]~[13]のいずれかに記載の液体製剤。
[15]塩基をさらに含む、上記[1]~[14]のいずれかに記載の液体製剤。
[16]前記塩基が、クエン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、炭酸塩、または水酸化物のうちの少なくとも1種を含む、上記[15]に記載の液体製剤。
[17]前記塩基が、乳酸リチウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、マレイン酸リチウム、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸カリウム、マレイン酸カルシウム、酒石酸リチウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カルシウム、コハク酸リチウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸カルシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化カルシウムのうちの少なくとも1種を含む、上記[15]に記載の液体製剤。
[18]前記塩基がクエン酸塩である、上記[15]に記載の液体製剤。
[19]前記クエン酸塩が、クエン酸リチウム一水和物、クエン酸ナトリウム一水和物、クエン酸カリウム一水和物、クエン酸カルシウム一水和物、クエン酸リチウム二水和物、クエン酸ナトリウム二水和物、クエン酸カリウム二水和物、クエン酸カルシウム二水和物、クエン酸リチウム三水和物、クエン酸ナトリウム三水和物、クエン酸カリウム三水和物、クエン酸カルシウム三水和物、クエン酸リチウム四水和物、クエン酸ナトリウム四水和物、クエン酸カリウム四水和物、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸リチウム五水和物、クエン酸ナトリウム五水和物、クエン酸カリウム五水和物、クエン酸カルシウム五水和物、クエン酸リチウム六水和物、クエン酸ナトリウム六水和物、クエン酸カリウム六水和物、クエン酸カルシウム六水和物、クエン酸リチウム七水和物、クエン酸ナトリウム七水和物、クエン酸カリウム七水和物、またはクエン酸カルシウム七水和物のうちの少なくとも1種を含む、上記[18]に記載の液体製剤。
[20]前記塩基が、クエン酸ナトリウム一水和物、クエン酸カリウム一水和物、クエン酸カルシウム一水和物、クエン酸ナトリウム二水和物、クエン酸カリウム二水和物、クエン酸カルシウム二水和物、クエン酸ナトリウム三水和物、クエン酸カリウム三水和物、クエン酸カルシウム三水和物、クエン酸ナトリウム四水和物、クエン酸カリウム四水和物、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸ナトリウム五水和物、クエン酸カリウム五水和物、クエン酸カルシウム五水和物、クエン酸ナトリウム六水和物、クエン酸カリウム六水和物、クエン酸カルシウム六水和物、クエン酸ナトリウム七水和物、クエン酸カリウム七水和物、またはクエン酸カルシウム七水和物のうちの少なくとも1種を含む、上記[18]に記載の液体製剤。
[21]前記塩基がクエン酸ナトリウム二水和物を含む、上記[15]に記載の液体製剤。
[22]前記塩基が、約0.1重量%~約5重量%の量で存在する、上記[15]~[21]のいずれかに記載の液体製剤。
[23]約2~約7のpHを有する、上記[1]~[22]のいずれかに記載の液体製剤。
[24]約3~約4のpHを有する、上記[1]~[23]のいずれかに記載の液体製剤。
[25]約3.5のpHを有する、上記[1]~[24]のいずれかに記載の液体製剤。
[26]甘味料をさらに含む、上記[1]~[25]のいずれかに記載の液体製剤。
[27]前記甘味料が糖を含む、上記[26]に記載の液体製剤。
[28]前記糖がショ糖を含む、上記[27]に記載の液体製剤。
[29]前記甘味料が高甘味度甘味料を含む、上記[26]に記載の液体製剤。
[30]前記高甘味度甘味料がスクラロースを含む、上記[29]に記載の液体製剤。
[31]前記甘味料が、約30重量%~約70重量%の量で存在する、上記[26]~[30]のいずれかに記載の液体製剤。
[32]前記甘味料が、約45重量%~約55重量%の量で存在する、上記[26]~[30]のいずれかに記載の液体製剤。
[33]苦味マスキング剤をさらに含む、上記[1]~[32]のいずれかに記載の液体製剤。
[34]前記苦味マスキング剤が、約0.01重量%~約2重量%の量で存在する、上記[33]に記載の液体製剤。
[35]前記苦味マスキング剤が、約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在する、上記[33]または[34]に記載の液体製剤。
[36]香味料をさらに含む、上記[1]~[35]のいずれかに記載の液体製剤。
[37]前記香味料が、天然香味料、天然果実香味料、人工香味料、人工果実香味料、またはフレーバー強化剤のうちの少なくとも1種を含む、上記[36]に記載の液体製剤。
[38]前記香味料が、約0.01重量%~約2重量%の量で存在する、上記[36]または[37]に記載の液体製剤。
[39]前記香味料が、約0.01重量%~約0.1重量%の量で存在する、上記[36]~[38]のいずれかに記載の液体製剤。
[40]着色料をさらに含む、上記[1]~[39]のいずれかに記載の液体製剤。
[41]前記式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩から調製される、上記[1]~[40]のいずれかに記載の液体製剤。
[42]前記式(I)の化合物の硫酸水素塩から調製される、上記[1]~[40]のいずれかに記載の液体製剤。
[43]式(I)の化合物の結晶形から調製される、上記[1]~[42]のいずれかに記載の液体製剤。
[44]前記結晶形が、下記式(I-HS):
【化1-2】
を有する、上記[43]に記載の液体製剤。
[45]式(I):
【化1-3】
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ、可溶化剤、および塩基を含む液体製剤であって、
約2.5~約5.5のpHを有し、
式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせが、液体製剤中で、約15mg/mL~約35mg/mLの濃度を有する、液体製剤。
[46]約3~約4のpHを有する、上記[45]に記載の液体製剤。
[47]前記塩基がクエン酸ナトリウム二水和物を含む、上記[45]または上記[46]に記載の液体製剤。
[48]式(I):
【化1-4】
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ;
可溶化剤;
塩基;
甘味剤;
苦味マスキング剤;および
香味料
を含む液体製剤であって、
約3~約4のpHを有し、
式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせが、液体製剤中で、約15mg/mL~約35mg/mLの濃度を有する、液体製剤。
[49]前記塩基が、クエン酸ナトリウム二水和物を含む、上記[48]に記載の液体製剤。
[50]前記甘味料が、ショ糖を含む、上記[48]または[49]に記載の液体製剤。
[51]式(I):
【化1-5】
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ;
約5重量%~約35重量%の量で存在する可溶化剤;
約0.1重量%~約5重量%の量で存在する塩基
を含む液体製剤であって、
約2.5~約5.5のpHを有し、
式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせが、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する、液体製剤。
[52]式(I):
【化1-6】
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ;
約5重量%~約35重量%の量で存在する可溶化剤;
約0.1重量%~約5重量%の量で存在する塩基;
約30重量%~約70重量%の量で存在する甘味料;
約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在する苦味マスキング剤;および
約0.01重量%~約2重量%の量で存在する香味料
を含む液体製剤であって、
約2.5~約5.5のpHを有し、
式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせが、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する、液体製剤。
[53]式(I):
【化1-7】
を有する(S)-N-(5-((R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-ピロリジン-1-イル)-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキサミド、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせ;
約5重量%~約35重量%の量で存在する可溶化剤;
約0.1重量%~約5重量%の量で存在するクエン酸ナトリウム二水和物を含む塩基;
約30重量%~約70重量%の量で存在するショ糖を含む甘味料;
約0.2重量%~約0.5重量%の量で存在する苦味マスキング剤;および
約0.01重量%~約2重量%の量で存在する香味料
を含む液体製剤であって、
約3~約4のpHを有し、
式(I)の化合物、薬学的に許容可能なその塩、またはこれらの組み合わせが、液体製剤中で、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度を有する、液体製剤。
[54]下記式(I-HS):
【化1-8】
を有する式(I)の化合物の結晶形から調製される、上記[51~53のいずれかに記載の液体製剤。
[55]前記結晶形が、18.4±0.2、20.7±0.2、23.1±0.2、および24.0±0.2の位置にXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする、上記[54]に記載の液体製剤。
[56]前記結晶形が、10.7±0.2、18.4±0.2、20.7±0.2、23.1±0.2、および24.0±0.2の位置にXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする、上記[54]に記載の液体製剤。
[57]前記結晶形が、10.7±0.2、18.4±0.2、19.2±0.2、20.2±0.2、20.7±0.2、21.5±0.2、23.1±0.2、および24.0±0.2の位置にXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする、上記[54]に記載の液体製剤。
[58]前記結晶形が、10.7±0.2、15.3±0.2、16.5±0.2、18.4±0.2、19.2±0.2、19.9±0.2、20.2±0.2、20.7±0.2、21.5±0.2、22.1±0.2、23.1±0.2、24.0±0.2、24.4±0.2、25.6±0.2、26.5±0.2、27.6±0.2、28.2±0.2、28.7±0.2、30.8±0.2、および38.5±0.2の位置にXRPD回折ピーク(2θ度)を有することを特徴とする、上記[54]に記載の液体製剤。
[59]必要としている患者において癌を処置する方法であって、
(a)処置を必要としている嚥下障害を有する患者を特定する工程;および
(b)上記[1]~[58]のいずれかに記載の液体製剤を治療有効量で前記患者に投与する工程
を含む、方法。
[60]必要としている患者において癌を処置する方法であって、
(a)処置を必要としている嚥下障害を有する患者を特定する工程;
(b)前記癌が、Trkキナーゼにより媒介されているかどうかを判定する工程;および
(c)前記癌が、Trkキナーゼにより媒介されていると判定される場合、上記[1~58のいずれかに記載の液体製剤を治療有効量で前記患者に投与する工程
を含む、方法。
[61]必要としている患者において癌を処置する方法であって、上記[1]~[58]のいずれかに記載の液体製剤を治療有効量で前記患者に投与する工程を含む、方法。
[62]前記癌が、頭頸部癌、喉頭癌、食道癌、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、上記[61]に記載の方法。
[63]前記患者が、乳幼児、子供、青年、または高齢患者である、上記[61]または[62]に記載の方法。
[64]必要としている対象において癌を処置するための方法であって、
(a)前記癌が、Trkキナーゼの過剰発現、活性化、増幅、および変異のうちの1つまたは複数に関連しているかどうかを判定する工程;ならびに
(b)前記癌が、Trkキナーゼの過剰発現、活性化、増幅および変異の1つまたは複数に関連すると判定される場合、上記[1]~[58]のいずれかに記載の液体製剤を治療有効量で前記対象に投与する工程
を含む、方法。
[65]必要としている対象において癌を処置するための方法であって、
(a)前記癌が、Trkキナーゼにより媒介されているかどうかを判定する工程;および
(b)前記癌が、Trkキナーゼにより媒介されていると判定される場合、上記[1]~[58]のいずれかに記載の液体製剤を治療有効量で前記対象に投与する工程
を含む、方法。
[66]対象を処置する方法であって、
(a)前記対象から得た試料でアッセイを実施し、前記対象がNTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくはレベルの調節不全を有するかどうかを判定する工程;および
(b)NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有すると判定された対象に、上記[1]~[58]のいずれかに記載の液体製剤を治療有効量で投与する工程
を含む、方法。
[67]NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくはレベルの前記調節不全が、Trk融合タンパク質の翻訳をもたらす染色体翻訳である、上記[66]に記載の方法。
[68]前記Trk融合タンパク質が、TP53-TrkA、LMNA-TrkA、CD74-TrkA、TFG-TrkA、TPM3-TrkA、NFASC-TrkA、BCAN-TrkA、MPRIP-TrkA、TPR-TrkA、RFWD2-TrkA、IRF2BP2-TrkA、SQSTM1-TrkA、SSBP2-TrkA、RABGAP1L-TrkA、C18ORF8-TrkA、RNF213-TrkA、TBC1D22A-TrkA、C20ORF112-TrkA、DNER-TrkA、ARHGEF2-TrkA、CHTOP-TrkA、PPL-TrkA、PLEKHA6-TrkA、PEAR1-TrkA、MRPL24-TrkA、MDM4-TrkA、LRRC71-TrkA、GRIPAP1-TrkA、EPS15-TrkA、DYNC2H1-TrkA、CEL-TrkA、EPHB2-TrkA、TGF-TrkA、NACC2-TrkB、QKI-TrkB、AFAP1-TrkB、PAN3-TrkB、SQSTM1-TrkB、TRIM24-TrkB、VCL-TrkB、AGBL4-TrkB、DAB2IP-TrkB、ETV6-TrkC、BTBD1-TrkC、LYN-TrkC、RBPMS-TrkC、EML4-TrkC、HOMER2-TrkC、TFG-TrkC、FAT1-TrkC、およびTEL-TrkCからなる群から選択される、上記[67]に記載の方法。
[69]NTRK遺伝子、Trkタンパク質、またはその発現もしくは活性の前記調節不全が、前記遺伝子の1つまたは複数の点変異である、上記[66]に記載の方法。
[70]前記NTRK遺伝子が、NTRK1遺伝子であり、前記NTRK1遺伝子の前記1つまたは複数の点変異が、アミノ酸位置:33、336、337、324、420、444、517、538、649、682、683、702、および1879のうちの1つまたは複数に置換を有するTrkAタンパク質の翻訳をもたらす、上記[69]に記載の方法。
[71]前記NTRK1遺伝子の前記1つまたは複数の点変異が、アミノ酸置換:R33W、A336E、A337T、R324Q、R324W、V420M、R444Q、R444W、G517R、G517V、K538A、R649W、R649L、R682S、V683G、R702C、およびC1879Tのうちの1つまたは複数を有するTrkAタンパク質の翻訳をもたらす、上記[69]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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