(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】ペプチドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/04 20060101AFI20220421BHJP
B01F 27/80 20220101ALI20220421BHJP
B01F 27/96 20220101ALI20220421BHJP
【FI】
C07K1/04
B01F7/16 Z
B01F7/32 Z
(21)【出願番号】P 2019510112
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2018013147
(87)【国際公開番号】W WO2018181679
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】P 2017072780
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236573
【氏名又は名称】浜理薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】住野 文俊
(72)【発明者】
【氏名】出口 綾香
(72)【発明者】
【氏名】小野 塁
(72)【発明者】
【氏名】廣山 裕太
(72)【発明者】
【氏名】神野 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】森脇 浩樹
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535810(JP,A)
【文献】特表平07-501261(JP,A)
【文献】特開2014-124540(JP,A)
【文献】特開2015-136682(JP,A)
【文献】特開2015-171695(JP,A)
【文献】国際公開第2014/046278(WO,A1)
【文献】特開2017-006897(JP,A)
【文献】国際公開第2010/150656(WO,A1)
【文献】特表2000-503892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/04
B01F 7/16
B01F 7/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根のない遠心式撹拌体の撹拌下に、ペプチドを固相合成することを特徴とするペプチドの製造方法
であって、
前記羽根のない遠心式撹拌体が、
回転軸を中心に回転する本体と、
前記本体の表面に設けられる吸入口と、
前記本体の表面に設けられる吐出口と、
前記吸入口と前記吐出口を繋ぐ流通路と、を備え、
前記吸入口は、前記吐出口よりも前記回転軸に近い位置に配置され、
前記吐出口は、前記吸入口よりも前記回転軸から遠心方向外側の位置に配置されることを特徴とする、撹拌用回転体である、製造方法。
【請求項2】
羽根のない遠心式撹拌体を搭載したペプチド固相合成
装置であって、
前記羽根のない遠心式撹拌体が、
回転軸を中心に回転する本体と、
前記本体の表面に設けられる吸入口と、
前記本体の表面に設けられる吐出口と、
前記吸入口と前記吐出口を繋ぐ流通路と、を備え、
前記吸入口は、前記吐出口よりも前記回転軸に近い位置に配置され、
前記吐出口は、前記吸入口よりも前記回転軸から遠心方向外側の位置に配置されることを特徴とする、撹拌用回転体である、ペプチド固相合成装置。
【請求項3】
グラスフィルターを備えた、請求項
2に記載のペプチド固相合成
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、固相合成法による長鎖ペプチドの大量合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長鎖ペプチドの固相合成法において通常用いられる撹拌の手段として、振とう撹拌、窒素バブリング撹拌、スターラー撹拌等が知られている。
一方、遠心式撹拌体は公知であり(特許文献1~4等)、リポソームの製造装置の部品として応用された例があるが(特許文献5)、遠心式撹拌体が有機合成の分野でのペプチド固相合成装置の部品として応用された例はこれまで報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2010/150656号パンフレット
【文献】特開2014-124540号公報
【文献】特開2015-171695号公報
【文献】特開2015-47540号公報
【文献】特開2016-117005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、大量のペプチドを合成する新規なペプチド固相合成法、純度の高い長鎖ペプチドを合成する新規なペプチド固相合成法、及び、副反応が少ない新規なペプチド固相合成法のうちいずれか1以上の固相合成法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、遠心式撹拌体をペプチド固相合成法に応用することによって、純度の高い長鎖ペプチドを大量合成できることを見出し、この知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の発明に関する。
[1]羽根のない遠心式撹拌体の撹拌下に、ペプチドを固相合成することを特徴とするペプチドの製造方法。
[2]羽根のない遠心式撹拌体が、
回転軸を中心に回転する本体と、
前記本体の表面に設けられる吸入口と、
前記本体の表面に設けられる吐出口と、
前記吸入口と前記吐出口を繋ぐ流通路と、を備え、
前記吸入口は、前記吐出口よりも前記回転軸に近い位置に配置され、
前記吐出口は、前記吸入口よりも前記回転軸から遠心方向外側の位置に配置されることを特徴とする、撹拌用回転体である、前記[1]に記載の製造方法。
[3]羽根のない遠心式撹拌体の固相法によるペプチド合成のための使用。
[4]羽根のない遠心式撹拌体を搭載したペプチド固相合成用反応容器。
[5]グラスフィルターを備えた、前記[4]に記載のペプチド固相合成用反応容器。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、大量のペプチドを合成する新規なペプチド固相合成法、純度の高い長鎖ペプチドを合成する新規なペプチド固相合成法、及び、副反応(例えば、フラグメントペプチドのレジンの切断反応における、最終カップリング反応前の好ましくない側鎖脱保護反応等)が少ない新規なペプチド固相合成法のうちいずれか1以上の固相合成法を提供することができる。
なお、固相合成法における反応にはカップリング反応前の保護基導入反応、カップリング反応前のペプチドのカップリング反応に関与するカルボキシル基又はアミノ基の活性化反応、カップリング反応、レジンの切断反応、カップリング反応及びレジンの切断反応後の脱保護反応等の反応が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】羽根のない遠心式撹拌体を搭載した容器の構成例である。
【
図2】(a)本発明の実施の形態に係る撹拌用回転体の平面図である。(b)撹拌用回転体の正面図である(特許第4418019号公報の
図1を引用)。
【
図3】(a)撹拌用回転体の作動を示した平面図である。(b)撹拌用回転体の作動を示した正面図である(特許第4418019号公報の
図2を引用)。
【
図4】撹拌機本体の一態様を示す斜視図である(特開2014-124540号公報の
図2を引用、一部変更あり)。
【
図5】撹拌機本体の一態様を示す斜視図である(特開2014-124540号公報の
図4を引用、一部変更あり)。
【
図6】撹拌機本体の一態様を示す斜視図である(特開2014-124540号公報の
図6を引用、一部変更あり)。
【
図7】撹拌装置の一態様を示す正面図(側面図)である(特開2015-171695号公報の
図1を引用、一部変更あり)。
【
図8】比較例1の生成物のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図9】比較例2の生成物のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図10】実験例3の生成物のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図11】実験例5の生成物のアセトニトリル溶液のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図12】比較例3の生成物のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図13】実験例6(5残基目カップリング工程以降にM-Revoを使用した合成品)の生成物のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図14】実験例6(振とう機合成品)の生成物のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図15】実験例7の生成物のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図16】実験例8の生成物のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図17】比較例4の生成物のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図18】比較例5の生成物のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図19】実験例9の生成物のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図20】比較例6の生成物のHPLCクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は羽根のない遠心式撹拌体の撹拌下に、ペプチドを固相合成することを特徴とするペプチドの製造方法を提供する。
【0010】
羽根のない遠心式撹拌体
羽根のない遠心式撹拌体とは、例えば、外観上撹拌体自体に羽根がなく、遠心力を利用して流体を撹拌する機能を有する撹拌体のことをいう。なお、流体は、レジン若しくは目的ペプチド構成アミノ酸、又はこれらの組み合わせを含有していることが好ましい。羽根のない遠心式撹拌体の構造は、例えば回転軸に近い吸入口と回転軸から遠い吐出口が繋がって流路を形成する回転体であってもよい。撹拌の原理は、例えば、撹拌体の回転により流路内に遠心力が作用し、横方向に流体が吐出し、縦流路が負圧になり、下方に負圧吸引流が発生することであってもよい。
【0011】
羽根のない遠心式撹拌体を搭載した容器の構成例を
図1に示す。羽根のない遠心式撹拌体を回転させると吐出口(a)に遠心力が発生、(a)から横方向に流体を吐出する。それに伴い、吸入口(b)に吸引力が生じ、竜巻状のうず流(c)が発生する。縦流路が負圧となって下方向に負圧吸引流が生じ、「プッシュ→プル」流が発生する。羽根のない遠心式撹拌体から撹拌流に脈動(パルス)が伝わり、撹拌流が全体に行き渡る。
羽根のない遠心式撹拌体としては、株式会社メデック製のM-Revo(登録商標)、E-REVO等を使用することができる。
【0012】
羽根のない遠心式撹拌体として、例えば、WO2010/150656号パンフレット、特許第4418019号公報、特開2014-124540号公報等に記載されている撹拌体を使用してもよい。
すなわち、羽根のない遠心式撹拌体は、
(1)回転軸を中心に回転する本体と、
前記本体の表面に設けられる吸入口と、
前記本体の表面に設けられる吐出口と、
前記吸入口と前記吐出口を繋ぐ流通路と、を備え、
前記吸入口は、前記吐出口よりも前記回転軸に近い位置に配置され、
前記吐出口は、前記吸入口よりも前記回転軸から遠心方向外側の位置に配置されることを特徴とする、撹拌用回転体(例えば
図2及び3をご参照)であってもよく、
(2)回転軸方向に垂直な断面が円形状に構成される本体と、
前記本体の表面に設けられる吸入口と、
前記本体の表面に設けられる吐出口と、
前記吸入口と前記吐出口を繋ぐ流通路と、を備え、
前記吸入口は、前記吐出口よりも前記回転軸に近い位置に配置され、
前記吐出口は、前記吸入口よりも前記回転軸から半径方向外側の位置に配置されることを特徴とする、撹拌用回転体(例えば
図2及び3をご参照)であってもよく、又は、
(3)上端が天板によって閉塞された円筒筐体でなる円筒回転部材を、上記天板に固着された回転駆動軸によって当該円筒筐体の中心軸線を中心として回転する撹拌機本体であって、
上記円筒回転部材は、
上記円筒筐体の周面に穿設された複数の放出開口と、
上記円筒筐体の内周面に内方に突出するように設けられた複数の押出突板部と、
上記円筒筐体の下端に設けられた吸込開口と
を有し、
上記円筒回転部材は、回転した時、上記押出突板部によって、内在する撹拌液を上記中心軸線の周りに循環させる内部循環流を生起させて当該内部循環流を形成する上記撹拌液の一部を遠心力によって上記放出開口から外部放出流として放出口から外部に放出させると共に、外部の撹拌液を上記吸込開口から吸込流として内部に取り込ませることを特徴とする撹拌機本体(例えば
図4~6をご参照)であってもよい。
【0013】
撹拌条件
撹拌装置として、上記撹拌体を搭載した容器等を用いることができる。「搭載」とは、装置の一部として組み込むこと等をいう。
また、撹拌装置として、
互いに隣接して配置される撹拌用回転体および流動抵抗体を備え、
前記撹拌用回転体は、
回転軸を中心に回転する本体と、
前記本体の表面に設けられる吸入口と、
前記本体の表面において前記吸入口よりも前記回転軸から遠心方向外側の位置に設けられる吐出口と、
前記吸入口と前記吐出口を繋ぐ流通路と、を備え、
前記流動抵抗体は、
抵抗体回転軸を中心に回転する抵抗体本体と、
前記抵抗体本体の表面に設けられる抵抗体吸入口と、
前記抵抗体本体の表面において前記抵抗体吸入口よりも前記抵抗体回転軸から遠心方向外側の位置に設けられる抵抗体吐出口と、
前記抵抗体吸入口と前記抵抗体吐出口を繋ぐ抵抗体流通路と、を備え、
前記抵抗体本体は、前記撹拌用回転体の前記本体とは異なる形状もしくは異なる大きさに構成される、または前記撹拌用回転体の前記本体とは異なる姿勢に配置されることを特徴とする、撹拌装置(例えば
図7をご参照)を用いてもよい(特開2015-171695号公報参照)。
上記した撹拌装置は、ペプチド固相合成用反応容器として有用である。
また、ペプチド固相合成用反応容器は、円柱状の容器及び羽根のない遠心式撹拌体を搭載していることが好ましい(例えば
図1をご参照)。円柱状の容器は、その底面及び側面がプラスチック又はガラスからなるものであってもよい。円柱状の容器は、上部にプラスチック又はガラス製の蓋があってもよくなくてもよい。ペプチド固相合成を当該容器内で行うことができれば、羽根のない遠心式撹拌体を、円柱状の容器のどの位置に配置してもよいが、円柱状の容器の中央下部に配置することが好ましい。反応物、反応液及び/又は洗浄液を円柱状の容器の上部から入れることができる。
また、ペプチド固相合成用反応容器は、さらに熱媒体ジャケット(被覆体)、熱媒体吸入口及び熱媒体吐出口を円柱状の容器の外側に搭載していることが好ましい(例えば
図1をご参照)。例えば約5~80℃程度の循環水を熱媒体吸入口から熱媒体ジャケットへ入れて、当該循環水を、循環水ジャケット経由で、熱媒体吐出口から排出してもよい。
ペプチド固相合成用反応容器はさらにグラスフィルターを搭載していることが好ましい。グラスフィルターは、例えばルツボ型であってもよく、ブフナロート型であってもよく、板状であってもよく、例えば市販品を購入することで入手可能である。グラスフィルターの板径は、特に限定されず適宜変更可能である。グラスフィルターの細孔の大きさは、固相合成に使用するレジン(固相担体)よりも小さく、レジンをフィルター上に保持した状態で液体をろ過できる大きさであればよい。グラスフィルターは、ペプチド固相合成用反応容器の底面よりも上に、及び/又は、羽根のない遠心式撹拌体よりも下に配置されていることが好ましい(例えば
図1をご参照)。グラスフィルターを搭載することにより、レジンと反応液や洗浄液等の液体の分離操作が簡便かつ迅速に実施でき、ペプチド固相合成の操作効率が向上し得る。
ペプチド固相合成用反応容器はコック(栓)を搭載していることが好ましく、例えば市販品を購入することで入手可能である。コック(栓)は、ペプチド固相合成用反応容器の底面及びグラスフィルターよりも下側に配置されていることが好ましい(例えば
図1をご参照)。コック(栓)を搭載することにより、ペプチド固相合成用反応容器内部の液体を随時所望量注ぎ出すことができることから、レジンと反応液や洗浄液等の液体の分離操作をより簡便に実施できる。
ペプチド固相合成用反応容器は、グラスフィルター及びコック(栓)を搭載していることがさらに好ましい。
【0014】
遠心式撹拌体のローターの寸法及び遠心力は、特に限定されず適宜変更可能である。
遠心式撹拌体は、円周部に複数(例えば、2~10個)の吐出口を有するものが好ましい。ローターの撹拌能力の指標となる、吐出量係数(吐出口の開口面積合計×円周長)は好ましくは60cm3~6000cm3であり、より好ましくは200cm3~2000cm3である。
【0015】
ペプチド
ペプチドは、例えばアミノ酸残基数が5~150のペプチドであってもよく、5~34のペプチドであってもよく、15~100のペプチドであってもよく、10~80のペプチドであってもよく、15~80のペプチドであってもよく、10~60のペプチドであってもよく、15~60のペプチドであってもよい。
ペプチドは、例えばアバレリクス(Abarelix)、インスリン(Insulin)及びそのアナローグ、エンドセリン(Endothelin)、β-エンドルフィン(β-Endorphin)オキシトシン(Oxytocin)、カルシトニン(Calcitonin)、カルペリチド(Carperitide)、グルカゴン(Glucagon)、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)、グレリン(Ghrelin)、ゴセレリン(Goserelin)、コレシストキニン(Cholecystokinin)、シナプルチド(Sinapultide)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、セクレチン(Secretin)、セトロレリクス(Cetrorelix)、ソマトスタチン(Somatostatin)、デガレリクス(Degarelix)、デスモプレシン(Desmopressin)、テドゥグルチド(Teduglutide)、テリパラチド(Teriparatide)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、バソプレシン(Vasopressin)、パラトルモン(Parathormone)、ブラジキニン(Bradykinin)、ペジネサチド(Peginesatide)、ランレオチド(Lanreotide)、β-リポトロピン(β-Lipotropin)、γ-リポトロピン(γ-Lipotropin)、リュープロレリン(Leuprorelin)、リナクロチド(Linaclotide)、若しくはリラグルチド(Liraglutide)等のペプチド又はその塩等であってもよい。塩は、薬学的に許容される塩であればよく、特に限定されない。例えば、薬学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩等が挙げられる。酸付加塩として、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;シュウ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、アスコルビン酸塩、p-トルエンスルホン酸等の有機酸塩が挙げられる。金属塩として、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。アンモニウム塩として、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩が挙げられる。有機アミン付加塩として、ピペリジン等の付加塩が挙げられる。中でも、酸付加塩、有機酸塩等が好ましく、酢酸塩がより好ましい。
【0016】
固相合成法
固相合成法のプロセス条件は従来十分に確立されているので、撹拌体として羽根のない遠心式撹拌体を用いること以外は特に制限されず、公知方法(例えば、メリフィールド固相合成法等)を採用することができる。固相合成法における反応はカップリング反応前の保護基導入反応、カップリング反応前のペプチドのカップリング反応に関与するカルボキシル基又はアミノ基の活性化反応、カップリング反応、レジンの切断反応、カップリング反応及びレジンの切断反応後の脱保護反応等の反応が含まれる。脱Fmoc基(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基)反応にはDMF/20%ピペリジンを用いてもよい。脱Boc基(ターシャリーブトキシカルボニル基)反応にはトリフルオロ酢酸を用いてもよい。また、カイザー(Kaiser)テスト等の方法によりニンヒドリン反応を利用して未反応のアミノ基の有無を確認してもよい。
固相合成法の例については、実施例の項を参照されたい。
【0017】
効果
本発明のペプチドの製造法によれば、例えば大量のペプチドを合成することができる。合成し得るペプチド量は、羽根のない遠心式撹拌体を用いないペプチドの製造法を用いて合成されるペプチド量よりも多いことが好ましく、例えば、1g以上であってもよく、10g以上であってもよく、100g以上であってもよく、200g以上であってもよく、また、300g以上であってもよい。
本発明のペプチドの製造法を用いて合成されるペプチドは、羽根のない遠心式撹拌体を用いないペプチドの製造法を用いて合成されるペプチドよりも純度が高いことが好ましい。好ましいHPLC純度は例えば60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上等である。
本発明のペプチドの製造法を用いて合成されるペプチドは、羽根のない遠心式撹拌体を用いないペプチドの製造法を用いて合成されるペプチドよりも脱トリチル体等の副反応生成物が少ないことが好ましい。脱トリチル体含有率は、例えば5%以下、3%以下、又は1%以下であることが好ましい。
【0018】
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた態様を含む。
【実施例】
【0019】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0020】
実施例において以下のHPLC条件で測定した。
カラム:Waters XBridge Shield18 3.5 μm 4.6×150 mm
移動相A:0.1% TFA水溶液
移動相B:0.08% TFAアセトニトリル溶液
流速:1 mL/min
検出器:UV 220 nm
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
本開示において、pseudo-proはシュードプロリンを、Trtはトリチル基を、HOBtは1-ヒドロキシ-1H-ベンゾトリアゾールモノハイドレートを、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを、DICはジイソプロピルカルボジイミドを、DIEAはジイソプロピルエチルアミンを、Oxymaはエチル(ヒドロキシイミノ)シアノアセタートを、TFAはトリフルオロ酢酸を、TISはトリ(イソプロピル)シランを、EDTはエタンジチオールを、Cleavage mixtureは酢酸/トリフルオロエタノール/ジクロロメタン(体積比10/10/80)を、IPEはイソプロピルエーテルを、TFEは2,2,2-トリフルオロエタノールを示す。
【0026】
34残基ペプチドの固相合成
〔実験例1〕A-フラグメント-レジン(Boc-Ser(tBu)-Val-Ser(pseudo-pro)-Glu(tBu)-Ile-Gln(Trt)-Leu-Met-His(Trt)-Asn(Trt)-Leu-Gly-O-Trt(2-Cl)-レジン)(側鎖保護型AFR-レジン)の合成(M-Revo(登録商標)を使用)
1.カップリング反応
(1)反応容器にH-Gly-O-Trt(2-Cl)-レジン(80.00 g)、Fmoc (9-Fluorenylmethoxycarbonyl)-アミノ酸(2.5 eq.)、活性化剤HOBt (22.42 g, 2.5 eq.)、反応溶媒DMF (800 mL)、DIC (25.70 mL)を添加した。
(2)M-Revo(登録商標)を使用して2時間以上遠心撹拌した。
(3)反応溶媒を除去し、M-Revo(登録商標)を使用してFmoc-アミノ酸導入レジンをDMF (800 mL)、ジクロロメタン(800 mL)、DMF (800 mL)で洗浄した。
(4)Fmoc-アミノ酸導入レジンを少量サンプリングし、カイザーテストを使用して樹脂が呈色しないことを確認した。もし、カイザーテストにより樹脂ビーズが呈色した場合は呈色しなくなるまで、操作(1)~(3)を繰り返した。
2.Fmoc基の脱保護
(5)得られたFmoc-アミノ酸導入レジンに20%ピペリジン/DMF (800 mL)を添加した。
(6)M-Revo(登録商標)を使用して20分間以上遠心撹拌した。
(7)反応溶媒を除去し、M-Revo(登録商標)を使用して(DMF 800 mL)、ジクロロメタン(800 mL)、DMF (800 mL)で洗浄した。
(8)カイザーテストにより樹脂ビーズが呈色することを確認した。
(9)操作(1)~(8)を以下の側鎖保護型AFR-レジン(230 g)が得られるまで実施した。ただし、セリン(シュードプロリン)残基は、N末端をFmoc基で保護したジペプチドであるFmoc-バリン-セリン(シュードプロリン)として導入した。
【0027】
【0028】
〔実験例2〕B-フラグメント-レジン(H-Lys(Boc)-His(Trt)-Leu-Asn(Trt)-Ser(tBu)-Met-Glu(tBu)-Arg(Pbf)-Val-Glu(tBu)-Trp(Boc)-Leu-Arg(Pbf)-Lys(Boc)-Lys(Boc)-Leu-Gln(Trt)-Asp(tBu)-Val-His(Trt)-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジン)(側鎖保護型BFR-レジン)の合成(M-Revo(登録商標)を使用)
1.レジンへのFmoc-アミノ酸の導入
(1)反応容器にアルゴンガス雰囲気下でCl-Trt(2-Cl)-レジン (40.00 g)、Fmoc-Phe-OH (56.17 g)を添加した。
(2)ジクロロエタン(400 mL)及びDIEA (25.25 mL)を添加した。
(3)M-Revo(登録商標)を使用して3時間以上遠心撹拌した。
(4)反応溶媒を除去し、DIEA (5.05 mL)、メタノール (40 mL)、及びジクロロエタンを全体が撹拌可能になる容量分添加した。
(5)アルゴンガス雰囲気下でM-Revo(登録商標)を使用して1時間遠心撹拌した。
(6)反応溶媒を除去し、M-Revo(登録商標)を使用してDMF (400 mL)、ジクロロメタン(400 mL)、DMF (400 mL)で洗浄した。
(7)Fmoc-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを少量サンプリングし、カイザーテストにより樹脂ビーズが呈色しないことを確認した。
2.Fmoc基の脱保護
(8)得られたFmoc-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンに20%ピペリジン/DMF (400 mL)を添加した。
(9)M-Revo(登録商標)を使用して20分間以上遠心撹拌した。
(10)反応溶媒を除去し、M-Revo(登録商標)を使用してDMF (400 mL)、ジクロロメタン(400 mL)、DMF (400 mL)で洗浄した。
(11)カイザーテストにより樹脂ビーズが呈色することを確認した。
(12)H-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0029】
3.カップリング反応
(13)反応容器に(12)で得たH-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジン、Fmoc-アミノ酸(2.5 eq.)、HOBt (19.59 g, 2.5 eq.)、DMF(10~20 v/w)、DIC (22.45 mL, 2.5 eq.)を添加した。
(14)M-Revo(登録商標)を使用して2時間以上遠心撹拌した。
(15)反応溶媒を除去し、M-Revo(登録商標)を使用してFmoc-アミノ酸導入レジンをDMF、ジクロロメタン、DMFで洗浄した。
(16)Fmoc-アミノ酸導入レジンを少量サンプリングし、カイザーテストにより樹脂ビーズが呈色しないことを確認した。もし、カイザーテストにより樹脂ビーズが呈色した場合は呈色しなくなるまで、操作(13)~(15)を繰り返した。
4.Fmoc基の脱保護
(17)得られたFmoc-アミノ酸導入レジンに20%ピペリジン/DMF (400 mL)を添加した。
(18)M-Revo(登録商標)を使用して20分間以上遠心撹拌した。
(19)反応溶媒を除去し、M-Revo(登録商標)を使用してDMF (400 mL)、ジクロロメタン(400 mL)、DMF (400 mL)で洗浄した。
(20)カイザーテストにより樹脂ビーズが呈色することを確認した。
(21)操作(13)~(20)を以下の側鎖保護型BFR-レジン(310 g)が得られるまで実施した。
【0030】
【0031】
〔実験例3〕側鎖保護型BFR-レジンからの保護ペプチドの切り出し(M-Revo(登録商標)を使用)
(1)側鎖保護型BFR-レジン(80 g)を添加した容器に脱気したCleavage mixture (800 mL)を添加した。
(2)M-Revo(登録商標)を使用して2時間遠心撹拌した。
(3)反応溶液をろ過し、Cleavage mixture (80 mL)で3回、さらにジクロロメタン(160 mL)で洗浄した。
(4)ろ過液を外温25℃で減圧濃縮した。
(5)濃縮残さにジクロロメタン (160 mL)を添加して結晶を溶解した。
(6)反応容器にIPE (4000 mL)を添加し、(5)の溶解液を滴下した。
(7)室温で1時間撹拌した後、結晶を減圧ろ過し、IPE (800 mL)を使用して洗浄した。
(8)室温で真空乾燥し、側鎖保護型B-フラグメント(67.95 g)を得た。
【0032】
【0033】
〔比較例1及び2〕
M-Revo(登録商標)の代わりにスターラーを用いた以外は実験例3と同様の固相合成法により側鎖保護型B-フラグメントを得た。
【0034】
〔HPLC分析(比較例1及び2並びに実験例3)〕
比較例1及び2並びに実験例3の生成物のアセトニトリル溶液のHPLC分析した結果を表5~7及び
図8~10に示した。表5、6及び7は、それぞれ、比較例1、比較例2及び実験例3の生成物のアセトニトリル溶液のHPLC分析における各生成物(脱トリチル体副生成物又はB-フラグメント)の保持時間及び含有率を示す。
図8、9及び10は、それぞれ、比較例1、比較例2及び実験例3の生成物のアセトニトリル溶液のHPLCクロマトグラム(グラジエントプログラムA)を示す。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
実験例3並びに比較例1及び2の結果を表8にまとめた。
【0039】
【0040】
以上の結果より、実験例3のB-フラグメントのHPLC純度は69.2%で、比較例1及び2のそれと同等であるのに対して、副生した脱トリチル体含有率は4.79%で、比較例1及び2のそれの2分の1以下であることが判明した。すなわち、M-Revo(登録商標)を用いる固相合成法により、スターラーを用いた固相合成法よりも、高純度の、すなわち、好ましくない脱トリチル体が少ないB-フラグメントが得られた。
【0041】
〔実験例4〕34残基ペプチドの製造
実験例1で得た側鎖保護型AFR-レジンを実験例3と同じ方法により処理してレジンから側鎖保護型A-フラグメントを切り出し、そのC末端カルボキシル基を活性化した後、側鎖保護型B-フラグメントを反応させて、34残基ペプチドの側鎖保護体を合成し、この側鎖保護基を脱保護して、目的ペプチドを得た。
【0042】
〔実験例5〕側鎖保護型A-フラグメント-レジン(Boc-Ser(tBu)-Val-Ser(pseudo-pro)-Glu(tBu)-Ile-Gln(Trt)-Leu-Met-His(Trt)-Asn(Trt)-Leu-Gly-O-Trt(2-Cl)-レジン)(側鎖保護型AFR-レジン)の合成(M-Revo(登録商標)を使用)
【0043】
1.レジンへのFmoc-アミノ酸の導入
(1)ナスフラスコにFmoc-Leu-OH (2.5 eq.)、DMF、HOBt (2.5 eq.)、DIC (2.5 eq.)を加えて30分撹拌した。H-Gly-O-Trt(2-Cl)-レジン (80.00 g) を加えた反応容器に、ナスフラスコ中の反応液を添加し、M-Revo(登録商標)を用いて2時間以上撹拌させた。反応溶媒を除去し、レジンをDMF、ジクロロメタン、DMFで洗浄し、Fmoc-Leu-Gly-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0044】
2.Fmoc基の脱保護
(2)Fmoc-Leu-Gly-O-Trt(2-Cl)-レジンに20%ピペリジン/DMF溶液 (10 v/w) を加えた。M-Revoを用いて20分撹拌後、反応溶媒を除去した。DMF (10 v/w×5回)、ジクロロメタン(10 v/w×5回)、DMF (10 v/w×5回) で洗浄し、H-Leu-Gly-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0045】
3.カップリング反応
(3)H-Leu-Gly-O-Trt(2-Cl)-レジンに、Fmoc-Asn(Trt)-OH (2.5 eq.)、HOBt (2.5 eq.)、DIC (2.5 eq.)、DMFを撹拌可能になる容量分 (約10 v/w) 加えた。M-Revo(登録商標)を用いて2時間以上撹拌後、反応溶媒を除去した。DMF、ジクロロメタン、DMFで洗浄し、Fmoc-Asn(Trt)-Leu-Gly-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
(4)Fmoc-Asn(Trt)-Leu-Gly-O-Trt(2-Cl)-レジンに20%ピペリジン/DMF溶液 (10 v/w) を加えた。M-Revo(登録商標)を用いて20分撹拌後、反応溶媒を除去した。DMF、ジクロロメタン、DMFで洗浄し、H-Asn(Trt)-Leu-Gly-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
(5)以降、各Fmoc-アミノ酸の導入とFmoc基の脱保護について、(1)と(2)の操作を繰り返した。なお、Fmoc-Met-OH 導入後は、撹拌開始前に10分間以上アルゴンバブリングを実施した。
(6)12残基目にBoc-Ser(tBu)-OH (2.5 eq.)を(2)と同様の方法でカップリングした後、反応溶媒を除去した。MeOHで洗浄し、減圧乾燥すると、側鎖保護型AFR-レジン(144.12 g)を得た。
【0046】
4.レジンからの保護ペプチドの切り出しと純度測定
(7)(6)の操作で得られた側鎖保護型AFR-レジン(一部採取したもの約20~50 mg)に酢酸/ジクロロメタン(体積比 酢酸/ジクロロメタン =1/9)を加えて1~2時間撹拌した。反応液をアセトニトリルで希釈後、HPLC分析した。
その結果、目的物であるA-フラグメントの純度は94.1% (t
R= 27.4)であるのに対して、副生した脱トリチル体含有率は0.55% (t
R= 21.5)であることが判明した(
図11及び表9をご参照、グラジエントプログラムB)。
【0047】
【0048】
〔比較例3〕側鎖保護型A-フラグメント-レジン(Boc-Ser(tBu)-Val-Ser(pseudo-pro)-Glu(tBu)-Ile-Gln(Trt)-Leu-Met-His(Trt)-Asn(Trt)-Leu-Gly-O-Trt(2-Cl)-レジン)(側鎖保護型AFR-レジン)の調製(全自動マイクロウェーブペプチド合成装置 (Biotage Japan社製Initiator+ Alstra)を使用)
【0049】
1.レジンへのFmoc-アミノ酸の導入
(1)反応容器にH-Gly-O-Trt(2-Cl)-レジン (122 mg)、DMF (4.5 mL) を加えて20分間膨潤させた。ろ過後、Fmoc-Leu-OH 0.5M DMF溶液 (0.8 mL, 0.4 mmol, 4 eq.)、DIC 0.5M DMF溶液 (0.8 mL)、HOBt 0.2M DMF溶液 (2.0 mL)を加えた。75℃で5分間マイクロウェーブ (MW) 照射して反応させた後、反応溶媒を除去した。DMF (18 mL) で洗浄し、Fmoc-Leu-Gly-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0050】
2.Fmoc基の脱保護
(2)Fmoc-Leu-Gly-O-Trt(2-Cl)-レジン に20%ピペリジン/DMF溶液 (4.5 mL) を加えた。3分撹拌後、反応溶媒を除去し、20%ピペリジン/DMF溶液 (4.5 mL) を加えた。10分撹拌後、反応溶媒を除去した。DMF (18 mL) で洗浄し、H-Leu-Gly-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
3.カップリング反応
(3)H-Leu-Gly- O-Trt(2-Cl)-レジンにFmoc-Asn(Trt)-OH 0.5M DMF溶液 (0.8 mL)、DIC 0.5M DMF溶液 (0.8 mL)、HOBt 0.2M DMF溶液 (2.0 mL) を加えた。75℃で5分間MW照射して反応させた後、反応溶媒を除去した。DMF (18 mL) で洗浄し、Fmoc-Asn(Trt)-Leu-Gly-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0051】
(4)以降、同様に(2)及び(3)の方法に従って脱保護とFmocアミノ酸のカップリングを繰り返した (Fmoc-His(Trt)-OHのカップリングは50℃で10分間反応させた)。最後の12残基目のBoc-Ser(tBu)-OH (4.0 eq.)を(1)と同様の方法でカップリングした後、反応溶媒を除去して、MeOH (13.5 mL) で洗浄し、減圧乾燥すると、側鎖保護型AFR-レジン(350 mg)を得た。
【0052】
4.レジンからの保護ペプチドの切り出しと純度測定
(5)側鎖保護型AFR-レジン(一部採取したもの約20~50 mg)に酢酸/TFE/ジクロロメタン(体積比 酢酸/TFE/ジクロロメタン =1/1/9)を加えて2時間撹拌した。反応液をアセトニトリルで希釈後、HPLC分析した。その結果、目的物であるA-フラグメントの純度は66.1% (t
R= 27.9)であるのに対して、副生した脱トリチル体含有率は7.5% (t
R= 22.1)であることが判明した(
図12及び表10をご参照、グラジエントプログラムB)。
【0053】
【0054】
〔実験例6〕15残基ペプチド-レジン(H-Arg(Pbf)-Val-Glu(tBu)-Trp(Boc)-Leu-Arg(Pbf)-Lys(Boc)-Lys(Boc)-Leu-Gln(Trt)-Asp(tBu)-Val-His(Trt)-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジン)の合成(1-4残基目の導入までは振とう機( EYELA社製高速振盪機(Cute Mixier)CM-1000型又はAs One社製高速振とう機ASCM-1)を用いて撹拌操作を行った。その後、5残基目の導入からはペプチド中間体レジンを2分割して、その半量をM-Revo(登録商標)を用いる撹拌操作により、また、もう半量を振とう機を用いる撹拌操作により合成を行った。)
【0055】
1.レジンへのFmoc-アミノ酸の導入
(1)アルゴン雰囲気下、反応容器にCl-Trt(2-Cl)-レジン (4.00 g)、Fmoc-Phe-OH (6.32 g)、DIEA (2.79 mL)、ジクロロエタン (28.0 mL) を加えた。室温にて3.5時間撹拌後、ジクロロエタン (28.0 mL)で5回洗浄した。
(2)洗浄したレジンにMeOH (4.00 mL)、DIEA (0.8mL)、ジクロロエタン (28.0 mL) を加えた。20分撹拌後、反応溶媒を除去した。DMF、ジクロロメタン、DMFで洗浄し、Fmoc-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0056】
2.Fmoc基の脱保護
(3)Fmoc-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンに20%ピペリジン/DMF溶液 (40.0 mL, 10 v/w) を加えて20分撹拌後、反応溶媒を除去した。DMF (28.0 mL, 7 v/w×5回)、ジクロロメタン(28.0 mL, 7 v/w×5回)、DMF (28.0 mL, 7 v/w×5回) で洗浄し、H-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0057】
3.カップリング反応
(4)フラスコにFmoc-Asn(Trt)-OH (9.73 g, 16.3 mmol)、HOBt (2.20 g)、DIC (2.52 mL)、DMF (40.0 mL) を加えて30分撹拌後、この溶液をH-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンに加えて、フラスコ内部をDMFで洗い込んで、全量を2時間撹拌後、反応溶媒を除去した。
(5)レジンをDMFで洗浄してFmoc-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0058】
4.Fmoc基の脱保護
(6)Fmoc-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンに20%ピペリジン/DMF溶液 (40.0 mL) を加えて20分撹拌後、反応溶媒を除去した。DMF、ジクロロメタン、DMFで洗浄し、H-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0059】
5.カップリング反応
(7)H-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンに、Fmoc-His(Trt)-OH (1.01 g)、HOBt (2.20 g)、DIC (2.52 mL)、およびDMF (撹拌可能になる容量分)を加えて2時間以上撹拌後、反応溶媒を除去した。
(8)レジンをDMF、ジクロロメタン、DMFで洗浄し、Fmoc-His(Trt)-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
(9)以後、(4)及び(5)と同様の方法に従って脱保護とカップリングを繰り返した。
(10)15残基目のFmoc-Arg(Pbf)-OHをカップリング後、(3)と同様の方法に従ってFmoc基を脱保護した後、レジンをジクロロメタン、MeOHで洗浄し、減圧乾燥すると、15残基ペプチド-レジン(10.7 g)を得た。
【0060】
6.レジンからの保護ペプチドの切り出しと純度測定
(11)15残基ペプチド-レジン(約20~50 mg)の一部を採取し、それに酢酸/ジクロロメタン(体積比 酢酸/ジクロロメタン =1/1)を加えて1~2時間撹拌した。反応液をアセトニトリルで希釈後、HPLC分析した。工程の一部(5残基目カップリング工程以降)にM-Revo(登録商標)を使用した合成品の結果を表11及び
図13(グラジエントプログラムA)に、振とう機合成品の結果を表12及び
図14(グラジエントプログラムA)に示した。その結果から明らかなように前者は後者よりも優れたHPLC純度を示した(HPLC純度:5残基目カップリング工程以降にM-Revo(登録商標)を使用した合成品93.1%、振とう機合成品89.4%)。
【0061】
【0062】
【0063】
〔実験例7〕16残基ペプチド-レジン(H-Glu(tBu)-Arg(Pbf)-Val-Glu(tBu)-Trp(Boc)-Leu-Arg(Pbf)-Lys(Boc)-Lys(Boc)-Leu-Gln(Trt)-Asp(tBu)-Val-His(Trt)-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジン)の合成(全自動マイクロウェーブペプチド合成装置 (Biotage Japan社製Initiator+ Alstra)を使用)
【0064】
1.レジンへのFmoc-アミノ酸の導入
(1)反応容器にH-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジン (179 mg)、DMF (4.5 mL) を加えて20分間膨潤させた。DMFを除去後、Fmoc-Asn(Trt)-OH 0.5M DMF溶液 (0.8 mL)、DIC 0.2M DMF溶液 (2.0 mL)、Oxyma 0.5M DMF溶液 (0.8 mL) を加えた。75℃で5分間マイクロウェーブ (MW) 照射して反応させた後、反応溶媒を除去した。DMF (18 mL) で洗浄し、Fmoc-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0065】
2.Fmoc基の脱保護
(2)Fmoc-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンに20%ピペリジン/DMF溶液 (4.5 mL) を加えた。3分撹拌後、反応溶媒を除去し、20%ピペリジン/DMF溶液 (4.5 mL) を加えた。10分撹拌後、反応溶媒を除去し、DMF (18 mL) で洗浄して、H-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0066】
3.カップリング反応
(3)H-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンに、Fmoc-His(Trt)-OH 0.5M DMF溶液 (0.8mL)、DIC 0.5M DMF溶液 (0.8 mL)、Oxyma 0.2M DMF溶液 (2.0 mL)を加えた。
(4)50℃で10分間MW照射して反応させた後、反応溶媒を除去した。レジンをDMF (4.5 mL×4回) で洗浄して、Fmoc-His(Trt)-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0067】
(5)以後、(2)~(4)と同様の操作に従って脱保護とFmocアミノ酸のカップリングを繰り返した。(Fmoc-His(Trt)-OH以外のカップリングは75℃で5分MW照射して反応を行った)。
(6)16残基目のFmoc-Glu(tBu)-OHをカップリングし、続いてFmoc基を脱保護した後、レジンをジクロロメタン、MeOHで洗浄し、減圧乾燥すると、16残基ペプチド-レジンを得た。
4.レジンからの脱保護ペプチドの切り出しと純度測定
(7)16残基ペプチド-レジン (一部採取したもの約20 mg) にTFA/TIS/H
2O/EDT(体積比 TFA/TIS/H
2O/EDT = 92.5/2.5/2.5/2.5)(2 mL)を加えて2時間撹拌した。ろ過し、TFAを留去した後、酢酸エチルと水を加えて分液した。水層を分取した後、酢酸エチルを加えて洗浄した (2回)。水層を精製水で希釈後、HPLC分析した(HPLC純度63.4%)(
図15及び表13をご参照、グラジエントプログラムC)。
【0068】
【0069】
〔実験例8〕B-フラグメント-レジン(H-Lys(Boc)-His(Trt)-Leu-Asn(Trt)-Ser(tBu)-Met-Glu(tBu)-Arg(Pbf)-Val-Glu(tBu)-Trp(Boc)-Leu-Arg(Pbf)-Lys(Boc)-Lys(Boc)-Leu-Gln(Trt)-Asp(tBu)-Val-His(Trt)-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジン)(側鎖保護型BFR-レジン)の合成(M-Revo(登録商標)を使用)
【0070】
1.レジンへのFmoc-アミノ酸の導入
(1)アルゴン雰囲気下、反応容器にCl-Trt(2-Cl)-レジン (10.0 g)、Fmoc-Phe-OH (15.0 g)、DIEA (6.75 mL)、ジクロロエタン (100 mL) を加えた。M-Revo(登録商標)を用いて3時間以上撹拌後、反応溶媒を除去した。DIEA (1.35 mL) 、MeOH (10 mL) 、ジクロロメタン (70.0 mL)を加えて、アルゴン雰囲気下、M-Revo(登録商標)を用いて20分撹拌した。DMF、ジクロロメタン、DMFで洗浄し、Fmoc-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0071】
2.Fmoc基の脱保護
(2)Fmoc-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンに20%ピペリジン/DMF溶液を撹拌可能になる容量分 (約10 v/w) 加えた。M-Revo(登録商標)を用いて20分撹拌後、反応溶媒を除去した。DMF、ジクロロメタン、DMFで洗浄し、H-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0072】
3.カップリング反応
(3)フラスコにFmoc-Asn(Trt)-OH (23.1 g)、HOBt (5.24 g)、DIC (6.00 mL)、DMF (70.0 mL) を加えてM-Revo(登録商標)を用いて30分以上撹拌した。
(4)(3)の溶液をH-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンに加えて、M-Revo(登録商標)を用いて2時間以上撹拌した。
(5)反応溶媒を除去し、レジンをDMF、ジクロロメタン、DMFで洗浄して、Fmoc-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
(6)以後、(2)~(5)と同様の方法に従って脱保護とカップリングを繰り返した。
10残基目(Fmoc-Arg(Pbf)-OH)、15残基目(Fmoc-Arg(Pbf)-OH)、17残基目(Fmoc-Met-OH)、21残基目(Fmoc-His(Trt)-OH) 、22残基目(Fmoc-Lys(Boc)-OH) はダブルカップリングを実施した。また、16残基目(Fmoc-Glu(tBu)-OH) はトリプルカップリング、19残基目(Fmoc-Arg(Pbf)-OH) は4回カップリングを行った。
(7)22残基目のFmoc-Lys(Boc)-OHのカップリング後、(2)と同様の方法に従ってFmoc基を脱保護した後、レジンをジクロロメタン、MeOHで洗浄し、減圧乾燥すると側鎖保護型BFR-レジン(78.48 g)を得た。
4.レジンからの保護ペプチドの切り出しと純度測定
(8)側鎖保護型BFR-レジン (一部採取したもの約20 mg)に酢酸/ジクロロメタン(体積比 酢酸/ジクロロメタン =1/9)を加えて2時間撹拌した。反応液を精製水/アセトニトリルで希釈後、HPLC分析した(HPLC純度92.0%)(
図16及び表14をご参照、グラジエントプログラムD)。
【0073】
【0074】
〔比較例4〕B-フラグメント-レジン(H-Lys(Boc)-His(Trt)-Leu-Asn(Trt)-Ser(tBu)-Met-Glu(tBu)-Arg(Pbf)-Val-Glu(tBu)-Trp(Boc)-Leu-Arg(Pbf)-Lys(Boc)-Lys(Boc)-Leu-Gln(Trt)-Asp(tBu)-Val-His(Trt)-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジン)(側鎖保護型BFR-レジン)の合成(振とう機を使用)
【0075】
1.レジンへのFmoc-アミノ酸の導入
(1)アルゴン雰囲気下、反応容器にCl-Trt(2-Cl)-レジン (2.00 g)、Fmoc-Phe-OH (2.5 eq.)、DIEA (2.5 eq.)、ジクロロエタン (約10v/w) を加えた。振とう機を用いて3時間以上撹拌後、反応溶媒を除去した。DIEA (0.5 eq.) 、MeOH (2.0 mL) 、ジクロロメタン (20 mL) を加えて、振とう機を用いて20分撹拌した。DMF (20mL)で洗浄し、Fmoc-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0076】
2.Fmoc基の脱保護
(2)Fmoc-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンに20%ピペリジン/DMF溶液 (14mL)を加えた。振とう機を用いて20分撹拌後、反応溶媒を除去した。DMF、ジクロロメタン、DMFで洗浄し、H-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0077】
3.カップリング反応
(3)フラスコにFmoc-Asn(Trt)-OH (2.5 eq.)、HOBt (2.5 eq.)、DIC (2.5 eq.)、DMF (18.0 mL) を加えて、振とう機を用いて30分以上撹拌した。
(4)(3)の溶液をH-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンに加えて、振とう機を用いて2時間以上撹拌し、反応溶媒を除去した。レジンをDMF (20.0 mL)で洗浄して、Fmoc-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
(5)以後、(2)~(4)と同様の操作に従って脱保護とFmoc-アミノ酸のカップリングを繰り返した。
(6)22残基目のFmoc-Lys(Boc)-OHのカップリング後、(2)と同様の方法に従ってFmoc基を脱保護した後、レジンをMeOH (20 mL) で洗浄し、減圧乾燥すると、側鎖保護型BFR-レジン(12.18 g)を得た。
【0078】
4.レジンからの保護ペプチドの切り出しと純度測定
(7)側鎖保護型BFR-レジン(7.59 g) に脱気したCleavage mixture (76 mL) を添加して、アルゴン雰囲気下、振とう機を用いて2時間撹拌した。
(8)レジンをさらにCleavage mixture (38 mL)、ジクロロメタン(76 mL) で洗浄した。
(9)反応液にヘキサン(760 mL) を添加して減圧濃縮した後、ジクロロメタン(15 mL) を添加して結晶を溶解した。この溶液にIPE (380 mL) を添加して結晶を晶析させた後、加圧ろ過により結晶をろ取した。
(10)結晶を減圧乾燥させた後、得られた側鎖保護型B-フラグメントの結晶を精製水/アセトニトリルで溶解後、HPLCで測定した(HPLC純度63.8 %)。その結果、目的物であるB-フラグメントの純度は63.8% (t
R= 28.4)であるのに対して、副生した脱トリチル体含有率は9.2% (t
R= 24.2)であることが判明した(
図17及び表15をご参照、グラジエントプログラムA)。
【0079】
【0080】
〔比較例5〕B-フラグメント-レジン(H-Lys(Boc)-His(Trt)-Leu-Asn(Trt)-Ser(tBu)-Met-Glu(tBu)-Arg(Pbf)-Val-Glu(tBu)-Trp(Boc)-Leu-Arg(Pbf)-Lys(Boc)-Lys(Boc)-Leu-Gln(Trt)-Asp(tBu)-Val-His(Trt)-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジン)(側鎖保護型BFR-レジン)の合成(全自動マイクロウェーブペプチド合成装置 (Biotage Japan社製Initiator+ Alstra)を使用)
【0081】
1.レジンへのFmoc-アミノ酸の導入
(1)反応容器にH-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジン (118 mg)、及びDMF (4.5 mL) を加えて20分間膨潤させた。DMFを除去後、Fmoc-Asn(Trt)-OH 0.5M DMF溶液 (0.8 mL)、DIC 0.5M DMF溶液 (0.8 mL)、HOBt 0.2M DMF溶液 (2.0 mL)を加えて75℃で5分間マイクロウェーブ (MW) 照射して反応させた後、反応溶媒を除去した。レジンをDMF (18 mL) で洗浄し、Fmoc-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0082】
2.Fmoc基の脱保護
(2)Fmoc-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンに20%ピペリジン/DMF溶液 (4.5 mL) を加えて3分撹拌後、反応溶媒を除去した。さらに、20%ピペリジン/DMF溶液 (4.5 mL) を加えて10分撹拌後、反応溶媒を除去した。レジンをDMF (18 mL) で洗浄し、H-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
【0083】
3.カップリング反応
(3)H-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンにFmoc-His(Trt)-OH 0.5M DMF溶液 (0.8 mL)、DIC 0.5M DMF溶液 (0.8 mL) 、HOBt 0.2M DMF溶液 (2.0 mL) を加えた。
(4)全量を50℃で10分間MW照射して反応させた後、反応溶媒を除去した。レジンをDMF (18 mL) で洗浄して、Fmoc-His(Trt)-Asn(Trt)-Phe-O-Trt(2-Cl)-レジンを得た。
(5)以後、(2)~(4)と同様の操作に従って脱保護とFmoc-アミノ酸のカップリングを繰り返した(Fmoc-His(Trt)-OH以外のカップリングは75℃で5分MW照射して反応を行った)。
(6)22残基目のFmoc-Lys(Boc)-OHのカップリング後、(2)と同様の方法に従ってFmoc基を脱保護した後、レジンをジクロロメタン、MeOHで洗浄し、減圧乾燥すると側鎖保護型BFR-レジンを得た。
4.レジンからの保護ペプチドの切り出しと純度測定
(7)側鎖保護型BFR-レジン (一部採取したもの約20 mg) にCleavage mixture (2 mL) を加えて2時間撹拌した。反応液をアセトニトリルで希釈後、HPLC分析した。その結果、目的物であるB-フラグメントの純度は75.5% (t
R= 20.4)であるのに対して、副生した脱トリチル体含有率は7.9% (t
R= 7.9)であることが判明した(
図18及び表16をご参照、グラジエントプログラムD)。
【0084】
【0085】
実験例5~8及び比較例3~5の結果を表17にまとめた。
【0086】
【0087】
上記結果から、本発明の製造方法により高純度の長鎖ペプチドが大量に得られたことが確認できた。また、本発明の製造方法により、ペプチド固相合成法における中間体フラグメント脱トリチル体の生成が低減されることが確認できた。すなわち、本発明の製造方法により、副反応が抑制され、純度の高い長鎖ペプチドが大量合成できることが確認された。
【0088】
〔実験例9〕ペンタアラニン(H-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-OH)の合成(M-Revo(登録商標)を使用)
1.レジンへのFmoc-アミノ酸の導入
(1)反応容器にWang レジン (パラメトキシベンジルアルコールレジン、5.0 g)、DMF (35 mL) を添加してレジンを膨潤させた。DMFを除去後、Fmoc-Ala-OH 2.41 g(2.5 eq.)、HOBt (1.05 g, 2.5 eq.)、DMF (35 mL)、DIC (1.2 mL, 2.5 eq.)を添加した。
(2)M-Revo(登録商標)を使用して、2時間以上遠心撹拌した。
(3)反応溶媒を除去し、M-Revo(登録商標)を使用して、Fmoc-Ala-OH導入レジンをDMF (35 mL)、ジクロロメタン (35 mL)、DMF (35 mL) で洗浄した。
2.Fmoc基の脱保護
(4)得られたFmoc-Ala-Wang-レジンに20%ピペリジン/ DMF (35 mL) を添加した。
(5)M-Revo(登録商標)を使用して、20分間以上遠心撹拌した。
(6)反応溶媒を除去し、M-Revo(登録商標)を使用して、DMF (35 mL)、ジクロロメタン (35 mL)、DMF (35 mL) で洗浄した。
(7)カイザーテストにより樹脂ビーズが呈色することを確認した。
(8)H-Ala-Wang-レジンを得た。
【0089】
3.カップリング反応
(9)(8)の反応容器にFmoc-Ala-OH (2.41 g, 2.5 eq.)、HOBt (1.05 g, 2.5 eq.)、DMF (35 mL)、DIC (1.2 mL, 2.5 eq.)を添加した。
(10)M-Revo(登録商標)を使用して、1時間以上遠心撹拌した。
(11)反応溶媒を除去し、M-Revo(登録商標)を使用して、Fmoc-Ala-OH導入レジンをDMF (35 mL)、ジクロロメタン(35 mL)、DMF (35 mL)で洗浄した。
(12)Fmoc-Ala-OH導入レジンを少量サンプリングし、カイザーテストにより樹脂ビーズが呈色しないことを確認した。もし、カイザーテストにより樹脂ビーズが呈色した場合は呈色しなくなるまで、操作(9)~(11)を繰り返した。
(13)操作(4)~(12)をBoc-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Wang-レジンが得られるまで実施した。ただし、N末端アミノ酸はBoc-Ala-OHを導入した。
(14)Boc-Ala-OHのカップリング後、ジクロロメタン(35 mL)、MeOH (35 mL)で洗浄し、減圧乾燥し、以下のBoc-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Wang-レジンを得た。
【0090】
【0091】
4.レジンからのペプチドの切り出し
(15)Boc-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Wang-レジンにTFA/TIS/H2O(体積比TFA/TIS/H2O=95/2.5/2.5)(35 mL)を加えて2時間振とうした。
(16)反応液を減圧濃縮し、IPE (250 mL)にて晶析させた。
(17)結晶を減圧ろ過した。
(18)室温で減圧乾燥し、以下のH-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-OH・TFA塩(604 mg)を得た。
【0092】
【0093】
〔比較例6〕ペンタアラニン(H-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-OH)の合成(振とう機を使用)
1.レジンへのFmoc-アミノ酸の導入
(1)反応容器にWang-レジン (0.50 g)、DMF (5 mL)を添加してレジンを膨潤させた。DMFを除去後、Fmoc-Ala-OH (775 mg, 6 eq.)、HOBt (337 mg, 6 eq.)、DMF (2.5 mL)、DIC (386 μL, 6 eq.)を添加した。
(2)振とう機を使用して、2時間以上振とうした。
(3)反応溶媒を除去し、振とう機を使用して、Fmoc-Ala-OH導入レジンをDMF (5 mL)、ジクロロメタン (5 mL)、DMF (5 mL)で洗浄した。
【0094】
2.Fmoc基の脱保護
(4)得られたFmoc-Ala-Wang-レジンに20%ピペリジン/ DMF (5.5 mL)を添加した。
(5)振とう機を使用して、20分間以上振とうした。
(6)反応溶媒を除去し、振とう機を使用して、DMF (5 mL)、ジクロロメタン (5 mL)、DMF (5 mL)で洗浄した。
(7)カイザーテストにより樹脂ビーズが呈色することを確認した。
(8)H-Ala-Wang-レジンを得た。
【0095】
3.カップリング反応
(9)(8)の反応容器にFmoc-Ala-OH (386 mg, 2.5 eq.)、HOBt (168 mg, 2.5 eq.)、DMF (5.5 mL)、DIC (206 μL, 2.5 eq.)を添加した。
(10)振とう機を使用して、1時間以上振とうした。
(11)反応溶媒を除去し、振とう機を使用して、Fmoc-Ala-OH導入レジンをDMF (5 mL)、ジクロロメタン (5 mL)、DMF (5 mL)で洗浄した。
(12)Fmoc-Ala-OH導入レジンを少量サンプリングし、カイザーテストにより樹脂ビーズが呈色しないことを確認した。もし、カイザーテストにより樹脂ビーズが呈色した場合は呈色しなくなるまで、操作(9)~(11)を繰り返した。
(13)操作(4)~(12)をBoc-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Wang-レジンが得られるまで実施した。ただし、最後のカップリング反応に使用する保護アミノ酸(N末端アミノ酸)にはBoc-Ala-OHを使用した。
(14)Boc-Ala-OHのカップリング後、ジクロロメタン (5 mL)、MeOH (5 mL)で洗浄し、減圧乾燥するとBoc-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Wang-レジン (0.68 g)を得た。
【0096】
4.レジンからの脱保護ペプチドの切り出し
(15)Boc-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Wang-レジンにTFA/TIS/ H2O(体積比 TFA/TIS/H2O =95/2.5/2.5)(5 mL)を加えて2時間振とうした。
(16)レジンをろ去後、反応液を減圧濃縮して、残渣にIPE (25 mL)を加えて晶析させた。
(17)結晶を減圧ろ過した。
(18)室温で減圧乾燥し、H-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-OH・TFA塩 (60.7 mg) を得た。
【0097】
〔HPLC分析(実験例9及び比較例6)〕
実験例9及び比較例6の生成物のアセトニトリル溶液のHPLC分析した結果を表17及び
図19及び20に示した。表17は、実験例9及び比較例6の生成物のアセトニトリル溶液のHPLC分析における生成物(ペンタアラニン)の保持時間及び含有率を示す。
図19及び20は、それぞれ、実験例9及び比較例6の生成物のアセトニトリル溶液のHPLCクロマトグラムを示す。尚、本HPLC分析は、下記のHPCL条件で分析を行った。
【0098】
HPLC条件
カラム:Waters X Bridge
移動相:0.1% TFA水溶液
分析時間:約10分
流速:1 mL/min
検出器:UV 220 nm
【0099】
【0100】
上記結果から、本発明の製造方法により高純度の長鎖ペプチドが大量に得られたことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の製造方法は、ペプチドの製造に有用である。特に、副反応を抑制して、長鎖ペプチドを大量合成するのに有用である。
【符号の説明】
【0102】
1 撹拌用回転体
5 撹拌機本体
10 本体
11 回転駆動軸
12 吸入口
13 円筒回転部材
13A 天板
13B 底板
14 吐出口
16 流通路
18 接続部
20 駆動軸
21 円筒筐体
22A~22D 放出開口
23 吸込筒部
24A~24D 押出突板部
25A~25D 吸込開口
30 連通孔
38 撹拌装置
40 撹拌用回転体
41 撹拌用回転体の本体
41a 撹拌用回転体の本体の略円形状の上面
41b 撹拌用回転体の本体の略円形状の底面
41c 撹拌用回転体の本体の外周面である側面
42 撹拌用回転体の吸入口
44 撹拌用回転体の吐出口
46 撹拌用回転体の流通路
48 接続部
50 流動抵抗体
51 流動抵抗体の本体
51a 流動抵抗体の本体の略円形状の上面
51b 流動抵抗体の本体の略円形状の底面
51c 流動抵抗体の本体の外周面である側面
52 流動抵抗体の吸入口
54 流動抵抗体の吐出口
56 流動抵抗体の流通路
60 駆動軸
a 回転駆動軸の回転方向
b 円筒回転部材の回転方向
d1、d4 外部放出流
e1~e3 吸込流
g1~g4、h1~h4 吸込流
C、L 中心軸線