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特許7061620テラヘルツレーザー源及びテラヘルツ放射を放出するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】テラヘルツレーザー源及びテラヘルツ放射を放出するための方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/37 20060101AFI20220421BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20220421BHJP
   H01S 3/137 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
G02F1/37
H01S3/00 A
H01S3/137
H01S3/00 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019555721
(86)(22)【出願日】2017-12-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017084308
(87)【国際公開番号】W WO2018115399
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】1663145
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】518170446
【氏名又は名称】ソルボンヌ ウニベルシテ
(73)【特許権者】
【識別番号】519226263
【氏名又は名称】オブセルバトワール・ドゥ・パリ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アセフ,ムハンド・ウアリ
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-517041(JP,A)
【文献】特開2010-066381(JP,A)
【文献】特開2010-117690(JP,A)
【文献】国際公開第2005/073795(WO,A1)
【文献】米国特許第07054339(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第101324734(CN,A)
【文献】Sasaki et al.,Continuous Wave Terahertz Signal Generator based on Difference Frequency Generation in Gallium Phosphide Crystal and its Applications for Spectroscopy,2016 IEEE 11th Annual International Conference on Nano/Micro Engineered and Molecular Systems (NEMS),IEEE,2016年04月17日,pp. 1-4,DOI: 10.1109/NEMS.2016.7758323
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
THzレーザー源(10)であって、
- 周波数w=nwである少なくとも1つの第1の光放射(i)及び周波数w=mwである1つの第2の光放射(ii)を放出するのに適した第1の発生器(1)であって、n及びmは1以上の整数であり、wは第1の基準周波数である、第1の発生器(1)と、
- 周波数w=lwである少なくとも1つの第1の光放射(iii)及び周波数w=pwである1つの第2の光放射(iv)を放出するのに適した第2の発生器(2)であって、l及びpは1以上の整数であり、wは前記第1の基準周波数wとは異なる第2の基準周波数である、第2の発生器(2)と、
- 前記第1及び前記第2の発生器の各々によって放出される前記第1の光放射から、差周波発生によって生成される、w=nw-lwに等しく、かつ0.3THz~10THzの間に含まれる周波数のTHz光放射(v)を形成するのに適した非線形結晶(3)と、
- 前記第1及び前記第2の発生器のうちの一方によって放出される前記第2の放射のうちの一方の前記周波数をある1つの原子遷移に安定化させることを可能にする、少なくとも1つの第1の周波数安定化モジュールと、
を含み、
第1及び第2の周波数安定化モジュールを含み、その各々は、前記第1及び前記第2の発生器の各々によって放出される前記第2の光放射の前記周波数を、それぞれある1つの原子遷移に安定化させることを可能にし、
- 前記第1の発生器(1)は、周波数w =qw である少なくとも1つの第3の光放射(vi)を放出するのに適しており、ここでqは1以上の整数であり、
- 前記第2の発生器(2)は、周波数w =rw である少なくとも1つの第3の光放射(vii)を放出するのに適しており、ここでrは1以上の整数であり、qw a- rw はnw -lw の倍数又は約数であり、
前記第1及び前記第2の発生器の各々によって放出される前記第3の放射と、所与の周波数(f )の基準信号(S )とを受け取るのに適している周波数比較器(7)を更に含み、これにより、無線周波数の結果として得られる信号(S )を伝達し、前記信号(S )の周波数により、前記第3の放射間の周波数差を決定することが可能になる、THzレーザー源(10)。
【請求項2】
前記第1及び前記第2の発生器のうちの少なくとも一方の前記周波数は、光学遷移の線幅よりも広い周波数範囲内で調節可能であり、周波数可変THz源を形成することを可能にする、請求項に記載のTHzレーザー源。
【請求項3】
- 前記発生器のうちの第1の発生器によって放出される前記第2の放射(ii)の前記周波数をある1つの原子遷移に安定化させることを可能にする、第1の周波数安定化モジュール(5)と、
- 前記第1の発生器に対して前記第2の発生器をサーボ制御するためのモジュール(14)と、
を含む、請求項1に記載のTHzレーザー源。
【請求項4】
- 前記第1の発生器は、周波数w=qwである少なくとも1つの第3の光放射(vi)を放出するのに適しており、ここでqは1以上の整数であり、
- 前記サーボ制御モジュールは、
- 第1の無線周波数信号(S)を伝達するために、前記第1の発生器によって放出された前記第3の放射(vi)及び前記第2の発生器によって放出された前記第2の放射、並びに所与の周波数(f)の第1の基準信号(S)を受け取るのに適した第1の周波数比較器(7)と、
- 前記第1の無線周波数信号(S)の周波数と無線周波数第2基準信号(S)の周波数との間の周波数差に特徴的な制御信号を伝達するために、前記第1の無線周波数信号(S)、及び所与の周波数(f)の前記無線周波数第2基準信号(S)を受け取るのに適した第2の周波数比較器(11)と、
- 前記制御信号に応じて、前記第2の発生器を制御するためのモジュール(13)と、を含む、
請求項に記載のTHzレーザー源。
【請求項5】
周波数可変THz源を形成するために、前記第2の発生器は周波数可変であり、前記無線周波数第2基準信号(S)の前記周波数は可変である、請求項に記載のTHzレーザー源。
【請求項6】
前記第1及び前記第2の発生器のうちの少なくとも1つは、可視及び/又は赤外域における異なる周波数の少なくとも3つの光放射を生成するのに適した「トライデント」タイプの発生器であり、前記少なくとも3つの光放射は、互いに固定の位相関係を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のTHzレーザー源。
【請求項7】
前記原子遷移はヨウ素の原子遷移である、請求項1~のいずれか一項に記載のTHzレーザー源。
【請求項8】
THz光放射を放出するための方法であって、
- 第1の発生器(1)を用いて周波数w=nwである第1の光放射(i)及び周波数w=mwである第2の光放射(ii)を生成するステップであって、n及びmは1以上の整数であり、wは第1の基準周波数である、ステップと、
- 第2の発生器(2)を用いて周波数w=lwである第1の光放射(iii)及び周波数w=pwである第2の光放射(iv)を生成するステップであって、pは1以上の整数であり、wはwとは異なる第2の基準周波数である、ステップと、
- 前記第1及び前記第2の発生器によって放出される前記第1の放射から、差周波発生によって生成される、w=nw-lwに等しく、かつ0.3THz~10THzの間に含まれる周波数のTHz光放射(v)を形成するステップと、
- 前記第1及び前記第2の発生器によって放出される前記第2の光放射のうちの少なくとも1つの光放射の前記周波数を安定化させるステップと、
を含み、
- 前記第1の発生器(1)を用いて周波数w =qw である少なくとも1つの第3の光放射(vi)を生成するステップであって、qは1以上の整数である、ステップと、
- 前記第2の発生器(2)を用いて周波数w =rw である少なくとも1つの第3の光放射(vii)を生成するステップであって、rは1以上の整数であり、qw a- rw はnw -lw の倍数又は約数である、ステップと、
- qw a- rw を、前記生成されたTHz放射の前記周波数をそこから導き出すために、測定するステップと、
を更に含む、THz光放射を放出するための方法。
【請求項9】
- 前記第1及び前記第2の基準周波数のうちの少なくとも1つ(w及び/又はw)を変えるステップと、
- 前記第1及び前記第2の発生器によって放出される前記第1の光放射のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの第2の原子遷移に安定化させるステップと、
を更に含む、請求項に記載のTHzレーザー放射を放出するための方法。
【請求項10】
- 前記発生器のうちの第1の発生器によって放出される前記第2の放射の前記周波数を、ある1つの原子遷移に安定化させるステップと、
- 前記第1の発生器に対して前記第2の発生器をサーボ制御するステップと、
を含む、請求項に記載のTHzレーザー放射を放出するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書はテラヘルツ(THz)レーザー源及びテラヘルツ放射を放出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ放射(THz)は、一般的に0.3THz~10THzの間にある周波数帯域で定義される。例えば、汚染物質及び危険物質の検出、監視撮像、医療用撮像、THz通信などのテラヘルツ放射が可能にする多くの用途を考慮すると、テラヘルツ放射の生成及び検出は、大きな関心事である。
【0003】
THz放射の放出は、放射源、例えば、「carcinotrons(商標)」としても知られる後進波発振器(BWO)、分子レーザー、又は量子カスケードレーザーなどの特定の固体レーザーなどを使用して、直接的に得ることができる。
【0004】
無線周波数、マイクロ波周波数、可視周波数、又は赤外周波数などのよりアクセスしやすい周波数の放射の、非線形結晶における非線形変換を使用して、間接的にTHz放射を得ることも可能である。実施されるプロセスは、例えば、周波数逓倍、光整流、又は更にはヘテロダイン混合などである。
【0005】
従って、Sasakiらによる論文「Frequency Stabilized GaP Continous-Wave Terahertz Signal Generator for High-Resolution Spectroscopy」(Optics and Photonics Journal、2014、4、8-13)では、近赤外域の2つの周波数可変レーザー源の使用に基づく間接的なTHz源を提示している。2つのレーザー源から出力されたビームは、プレート・ビームスプリッタを使用して空間的に重ね合わされ、THz放射を生成するために、リン化ガリウム(GaP)の非線形結晶を照射し、このTHz放射の周波数は、2つの入射レーザービームの周波数間の周波数差に相当する。結果として得られるTHz周波数は、2つの周波数可変レーザー源のうちの一方の周波数を変えることにより、調節することができる。この技術は、室温で周波数可変THz放射を生成することを可能にする。
【0006】
本明細書はまた、前述の論文と同様に、差周波発生に基づき、かつ、既知のデバイスと比べて優れた周波数安定性及び非常に正確な周波数のTHz放射を有する、間接的なTHzレーザー源を提示する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】“Frequency Stabilized GaP Continous-Wave Terahertz Signal Generator for High-Resolution Spectroscopy” by Sasaki et al(Optics and Photonics Journal,2014,4,8-13)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、本明細書は、以下を含むTHzレーザー源に関する。
- 周波数w=nwである少なくとも1つの第1の光放射及び周波数w=mwである1つの第2の光放射を放出するのに適した第1の発生器であって、n及びmは1以上の整数であり、wは第1の基準周波数である、第1の発生器。
- 周波数w=lwである少なくとも1つの第1の光放射及び周波数w=pwである1つの第2の光放射を放出するのに適した第2の発生器であって、l及びpは1以上の整数であり、wは第1の基準周波数wとは異なる第2の基準周波数である、第2の発生器。
- 第1及び第2の発生器の各々によって放出される上記の第1の光放射から、差周波発生によって生成される、w=nw-lwに等しく、かつ0.3THz~10THzの間に含まれる周波数のTHz光放射を形成するのに適した非線形結晶。
- 第1及び第2の発生器のうちの一方によって放出される上記の第2の放射のうちの一方の周波数をある1つの原子遷移に安定化させることを可能にする、少なくとも1つの第1の周波数安定化モジュール。
【0009】
従って、このように説明したTHzレーザー源の周波数は、ある1つの原子遷移に安定化され、これにより、優れた周波数安定性が得られるだけでなく、非常に正確な周波数のTHz放射が可能になる。そのようなTHzレーザー源はまた、小型であり、実験室の外での使用に対応しているという利点がある。
【0010】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、発生器によって放出される第1及び第2の放射は、同じ周波数の放射であり得る(例えば、n=m及び/又はl=p)。例えば、これは、同じ放射から得られた光放射が分割素子によって2つの放射に分割されるという問題であり得る。或いは、とりわけ、一方では安定化のために、他方では差周波発生によるTHz放射の生成のために、使用される放射の周波数の選択に関してより広い許容範囲を可能にするために、第1及び第2の光放射は、和周波発生、周波数逓倍、又は差周波発生によって得られることがある。この場合には、発生器によって放出される第1及び第2の光放射の周波数は、互いに倍数であり、等しくはない。いずれにせよ、発生器によって放出される全ての光放射は、互いにコヒーレントであり得る、即ち、固定した位相関係を有することがあり、その結果、発生器によって放出される1つの光放射の周波数安定化は、この発生器によって放出される他の光放射の周波数安定化につながる。
【0011】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、原子遷移はヨウ素の原子遷移であり、これは、完全に較正される周波数遷移を有するという利点と、電磁スペクトルの可視範囲(500nm~700nm)において非常に高い品質係数を持つという利点とを有する。他の原子遷移、例えば、赤外域における、アセチレン(C)、水蒸気(HO)、酸素(O)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、又は、可視若しくは近赤外域におけるアルカリ原子(例えば、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、カリウム(K)など)の原子遷移を使用することができる。
【0012】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、第1及び第2の発生器の各々によって放出される上記の第2の放射の周波数は、互いに独立して、ある1つの原子遷移に安定化される。このとき、THzレーザー源は第1及び第2の周波数安定化モジュールを含み、その各々は、第1及び第2の発生器の各々によって放出される第2の光放射の周波数をそれぞれある1つの原子遷移に安定化させることを可能にする。これらの発生器の各々によって放出される2つの光放射の周波数安定化は、独立して、差周波発生によって生成されたTHz放射の周波数を安定化させる。
【0013】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、第1及び第2の発生器のうちの少なくとも一方の周波数は、光学遷移の線幅よりも広い周波数範囲内で調節可能であり、周波数可変THz源を形成することを可能にする。具体的には、安定化に使用される原子が、一連の特定された別々の原子遷移を有する場合、一方の及び/又は他方の発生器が安定化される原子遷移を変更することが可能であり、従って、THz周波数を変更することが可能になる。
【0014】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、第1の発生器は、周波数w=qwである少なくとも1つの第3の光放射を放出するのに適しており、ここでqは1以上の整数であり、また第2の発生器は、周波数w=rwである少なくとも1つの第3の光放射を放出するのに適しており、ここでrは1以上の整数であり、qwa-rwは、nw-lwの倍数又は約数である。従って、例えば無線周波数領域又はマイクロ波領域においてqwa-rwを測定することによって、完全に、THz周波数(nw-lw)を知ることが可能になる。
【0015】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、レーザー源は更に、一方では第1及び第2の発生器の各々によってそれぞれ放出された第3の放射を、他方では所与の周波数の基準信号を、受け取るのに適した、周波数ミキサとも呼ばれる周波数比較器を含み、これは、結果として得られる信号、例えば無線周波数信号を伝達するためであり、その結果として得られる信号の周波数の測定により、上記の第3の放射間の周波数差を決定することが可能になる。周波数比較器は、例えばショットキー型のフォトミキサであり得る。基準放射の周波数は、例えば無線周波数又はマイクロ波周波数である。従って、第1及び第2の発生器の各々によって放出される第3の放射間の周波数差を正確に知ることが可能になり、ひいては、生成されるTHz周波数を知る精度を高めることが可能になる。
【0016】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、THzレーザー源は、第1の周波数安定化モジュールを含み、この第1の周波数安定化モジュールは、上記の発生器のうちの第1の発生器によって放出される上記の第2の放射の周波数をある1つの原子遷移に安定化させることを可能にし、またこのTHzレーザー源は、第1の発生器に対して第2の発生器をサーボ制御するためのモジュールを含む。この実施形態では、第2の発生器によって放出される第1の光放射は、ある1つの原子遷移に間接的に安定化される。これにより、生成されたTHz放射の安定性を保つことが可能になり、また、THz生成の際の連続的な波長可変性を導入することが可能になる。
【0017】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、第1の発生器は、周波数w=qwである少なくとも1つの第3の光放射を放出するのに適しており、ここでqは1以上の整数である。サーボ制御モジュールは、一方では、第1の発生器によって放出された第3の放射及び第2の発生器によって放出された第2の放射を、他方では所与の周波数の第1の基準信号を、受け取るのに適した第1の周波数比較器を、第1の無線周波数信号を伝達するために含む。サーボ制御モジュールは更に、上記の第1の無線周波数信号及び所与の周波数の無線周波数第2基準信号を受け取るのに適した第2の周波数比較器を含み、これは、第1の無線周波数信号の周波数と無線周波数第2基準信号の周波数との間の周波数差に特徴的な制御信号を伝達するためである。またこのサーボ制御モジュールは、上記の制御信号に応じて第2の発生器を制御するためのモジュールを含む。
【0018】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、第1及び第2の発生器のうちの少なくとも1つは、可視及び/又は赤外域における異なる周波数の少なくとも3つの光放射を生成するのに適した「トライデント(三叉)」タイプの発生器であり、この少なくとも3つの光放射は、互いに固定の位相関係を有する。異なる周波数の3つの放射を同相で放出させることができるそのような発生器は、例えば、仏国特許第3004820号明細書に記載されるような可視及び赤外のコヒーレント・レーザー・ビームの発生器である。
【0019】
第2の態様によれば、本明細書は以下のステップを含む、THzレーザー放射を放出するための方法に関する。
- 第1の発生器を用いて周波数w=nwである第1の光放射及び周波数w=mwである第2の光放射を生成するステップであって、n及びmは1以上の整数であり、wは第1の基準周波数である、ステップ。
- 第2の発生器を用いて周波数w=lwである第1の光放射及び周波数w=pwである第2の光放射を生成するステップであって、pは1以上の整数であり、wはwとは異なる第2の基準周波数である、ステップ。
- 第1及び第2の発生器によって放出される上記の第1の放射から、差周波発生によって生成される、w=nw-lwに等しく、かつ0.3THz~10THzの間に含まれる周波数のTHz光放射を形成するステップ。
- 第1及び第2の発生器によって放出される第2の光放射のうちの少なくとも1つの周波数を安定化させるステップ。
【0020】
第2の実施形態の1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、THzレーザー放射を放出するための方法は更に、以下のステップを含む。
- 第1の発生器を用いて周波数w=qwである少なくとも1つの第3の光放射を生成するステップであって、qは1以上の整数である、ステップ。
- 第2の発生器を用いて周波数w=rwである少なくとも1つの第3の光放射を生成するステップであって、rは1以上の整数であり、qwa-rwはnw-lwの倍数又は約数である、ステップ。
- qwa-rwを、生成されたTHz放射の周波数をそこから導き出すために、測定するステップ。
【0021】
第2の実施形態の1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、THzレーザー放射を放出するための方法は更に、以下のステップを含む。
- 第1及び第2の基準周波数のうちの少なくとも1つ(w及び/又はw)を変えるステップ。
- 第1及び第2の発生器によって放出される第1の光放射のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの第2の原子遷移に安定化させるステップ。
【0022】
従って、第2及び/又は第4の放射が安定化される原子の線を変えることにより、THz周波数が変わる。これにより、周波数が非常に安定した離散的で高密度スペクトルのTHz放射を生成することが可能になる。
【0023】
第2の実施形態の1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、THzレーザー放射を放出するための方法は、以下のステップを含む。
- 上記の発生器のうちの第1の発生器によって放出される上記の第2の放射の周波数を、ある1つの原子遷移に安定化させるステップ。
- 第1の発生器に対して第2の発生器をサーボ制御するステップ。
【0024】
本明細書の主題の他の利点及び特徴が、以降の図によって示される説明を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本明細書の第1の例によるTHzレーザー源を示す概略図であり、各発生器は光放射を放出し、その光放射の周波数は、独立して、ある1つの原子遷移に安定化される。
図2】生成されたTHz放射の周波数を測定するための手段を更に備えた、図1に示したタイプのTHzレーザー源を示す概略図である。
図3】本明細書の第2の例によるTHzレーザー源を示す概略図であり、第1の発生器によって放出された光放射の周波数は、ある1つの原子遷移に安定化され、第2の発生器によって放出された光放射の周波数は、第1の発生器によって放出された光放射に安定化される。
図4A】様々な精密さで示された、ヨウ素の吸収スペクトルを抜粋した図である。
図4B】様々な精密さで示された、ヨウ素の吸収スペクトルを抜粋した図である。
図4C】様々な精密さで示された、ヨウ素の吸収スペクトルを抜粋した図である。
図4D】様々な精密さで示された、ヨウ素の吸収スペクトルを抜粋した図である。
図5】可視及び/又は赤外域で、互いにコヒーレントである複数の光放射を放出するのに適した、「トライデント」タイプの発生器を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図では、同一の要素は同一の参照符号で参照される。
【0027】
図1は、本明細書によるTHzレーザー源10の第1の例を示す。このTHzレーザー源10は、第1の発生器1、第2の発生器2、差周波発生に適した非線形結晶3、原子蒸気を含むセル4、及び発生器1、2によって放出された光放射の周波数をセル4の原子の別々の原子遷移に安定化させるためのモジュール、を含む。安定化モジュールは、モジュール5、6によって図中に概略的に示され、以下でより詳細に説明される。
【0028】
より正確には、図1で示した例では、第1の発生器1は、少なくとも1つの第1及び1つの第2の光放射((i)及び(ii)で参照される)を放出するのに適しており、これらの光放射の周波数は、wで表わされる第1の基準周波数の倍数である。従って、第1の発生器によって放出された第1及び第2の光放射の周波数w及びwを、それぞれw=nw及びw=mwによって定義することができ、ここで、n及びmは1以上の整数である。同様に、第2の発生器2は、少なくとも1つの第1及び1つの第2の光放射(図1では(iii)及び(iv)で参照される)を放出するのに適しており、これらの光放射の周波数は、第1の基準周波数wとは異なる、wで表わされる第2の基準周波数の倍数である。従って、第2の発生器によって放出された第1及び第2の光放射の周波数w及びwを、それぞれw=lw及びw=pwによって定義することができ、ここで、l及びpは1以上の整数である。
【0029】
本明細書によれば、非線形結晶3は、第1及び第2の発生器の各々によって放出される上記の第1の光放射から、差周波発生によって生成される、0.3THz~10THzの間に含まれる周波数のTHz光放射(v)を形成するのに適している。従って、生成されたTHz光放射(v)の周波数wは、w=nw-lwによって定義される。第1及び第2の発生器1、2によって放出された第1の放射(i)及び(iii)は、例えば、レンズを用いて非線形結晶3に注入されるか、又は、放射(i)及び(ii)が光ファイバーによって伝達されるファイバーベースの光学装置の場合には、適切なコリメータを介して注入される。
【0030】
図1の例では、THzレーザー源は、第1の発生器1によって放出された第2の放射(ii)の周波数をある1つの原子遷移に安定化させるために、5で参照される第1の周波数安定化モジュールを含み、かつ、第2の発生器2によって放出された第2の光放射(iv)の周波数をある1つの原子遷移に安定化させるために、第2の周波数安定化モジュール6を含む。図1の例では、第1及び第2の発生器についての周波数安定化は、同一の原子の別々の原子遷移へのものであるが、また、異なる原子種類の原子遷移へのものでもあり得る。
【0031】
従って、第1及び第2の発生器からそれぞれ到来する2つの光放射は、非線形結晶における差周波発生により、THz放射を生成することを可能にし、第1及び第2の発生器からそれぞれ到来する他の2つの光放射は、THz放射を生成することを意図した光放射の周波数を安定化させることを可能にし、これにより、生成されたTHz放射の周波数が非常に高い精度で安定化されるだけでなく、原子遷移が非常によく分かっているので、生成されたTHz周波数を完全に知ることも可能になる。
【0032】
周波数安定化に使用される原子は、例えば、可視又は近赤外域におけるヨウ化物原子又はアルカリ原子(例えば、セシウムCs、ルビジウムRb、カリウムK)である。安定化はまた、赤外域での、分子、例えばアセチレン(C)、水蒸気(HO)、酸素(O)、一酸化炭素(CO)、及びメタン(CH)などの原子遷移へのものであり得る。
【0033】
ヨウ素分子の原子遷移は、特に、完全に較正された遷移であり、かつ、安定化させようとしている放射の周波数を非常に正確に知ることができる遷移である。更に、ヨウ素は500nm~700nmの間で吸収するので、ヨウ素の使用により、周波数3倍のErドープ光源、周波数2倍のYAG光源、又は周波数2倍のYbドープ光源を機能させることが可能になり、これらの光源は、以下でより詳細に説明するように、強力で小型である。
【0034】
図4A~4Dは、例として、500~700nmの間のヨウ素の吸収線(図4A)、約514.5nmにおける約0.2nm(200GHz)のより狭いスペクトル帯域での吸収線(図4B)、約1GHzの帯域での約514.5nmにおける吸収線(図4C)、及び約300kHzの帯域での514.581nmにおける吸収線(図4D)を示す。ヨウ素の超微細線の狭さは、約500nmである分子の解離限界が近づくにつれて、増加する。しかしながら、この値の周りでは、線の強度はより低くなる。従って、線の品質係数と、利用可能なレーザー源の性質及び固有の品質との間の最良の妥協点が求められる。従って、図4Bは、緑色域でのヨウ素分子の吸収スペクトルの一部を示し、これは、ヨウ素分子の線の品質係数(515nmにおいてQは約2×10)と、利用可能なレーザー源の性質及び固有の品質との間の良好な妥協点が達成されるのを可能にする。図4Bに示す各線は、約1GHzに渡って延びる超微細クラスターから構成されており、その例が図4Cに示されている。図4Dは、514.581nmにおけるヨウ素の狭い遷移を示す。従って、ヨウ素分子は、510nm~521nm範囲において10,000を超える識別された飽和吸収線を有し、また、本明細書によるTHz放射を生成するための方法のおかげで、THzレーザー源の周波数を間接的に安定化させるために使用することができる、超安定周波数の幅広いくしを形成する。
【0035】
図1に概略的に示される第1及び第2の安定化モジュール5、6はそれぞれ、原子遷移を調査するためのモジュール、及び発生器の周波数を制御するための周波数サーボ制御装置を含む。調査モジュールは、例えば、「飽和吸収」として知られ、かつ、例えばP.H.Leeらによる論文(“Saturated Neon absorption inside a 6328 A laser”,Appl.Phys.Lett.,Vol.10,No.11,June 1,1967)に記載されている技術を利用する。この技術は、高い計測品質の周波数弁別手段を製造することを目指して、2つの反対方向に伝搬するビームを用いて、セル4内に含まれている原子の蒸気を調査する中で使われる。従って、幅の狭い半端な対称性の誤差信号が生成される。誤差信号は、レーザーに特有の要素に対して作用するのに適した周波数サーボ制御装置に送られ、その機能は、放射された周波数を設定することである(例えば、圧電セラミック、ダイオード電流、温度、等)。従って、発生器の外部要素(例えば、キャビティ長の変動)又は内部要素(例えば、発生器の温度の変動、ダイオードの場合には注入電流の変動、等)に対して作用することが可能である。従って、サーボ制御モジュールは、発生器を安定化させるために、電気ビートによって生成された信号の周波数を一定に保つことを可能にする。
【0036】
安定化のために使用される放射の周波数及びTHz放射の生成のために使用される放射の周波数を独立して選択できるようにするために、発生器1、2の各々が、互いに異なる周波数の第1及び第2の光放射を放出することが、有利であることがある。従って、上記で説明したように、ヨウ素分子に対する安定化は、有利にも、約400THz~約600THzの間に含まれる周波数を用いて緑色域で行われる。THz放射を生成するために、例えば、赤外域又は可視域での放射を使用して、差周波発生が行われることがある。可視域(約700~800nm)での放射を使用して行われる差周波発生が好ましい、というのも、例えばGaAsをベースとする非線形結晶は、この波長範囲でより敏感であり、従って、これにより、より効果的なTHz放射の生成が可能になるからである。
【0037】
いずれにせよ、THz放射の生成のために、第2の放射の周波数安定化が第1の放射の周波数安定化を確実にもたらすようにするために、上記の第1及び第2の光放射の放射機構がコヒーレントな同相放射、すなわち固定の位相関係を有する放射を確実に放出できるようにすることが求められる。これらの放射機構とは、例えば、周波数逓倍、和周波発生、又は差周波発生である。
【0038】
従って、各発生器は、1つの例示的な実施形態では、波長可変の基準周波数を有するレーザー放射源(例えば、エルビウムドープ・ファイバー・レーザー又はレーザーダイオード)と、基準周波数の高調波を生成するのに適した1つ又は複数の非線形結晶と、を含むことがある。エルビウムドープ・ファイバー・レーザーは一般的に、レーザーダイオード(約50pm)よりも大きな波長可変性(約1000pmの波長可変性)を有する。レーザーダイオードは小型であるという利点を有し、注入電流を介してサーボ制御が可能である。非線形結晶は、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO)で出来ている結晶である。他の結晶、例えば、周期的に分極したチタンリン酸カリウム(即ちPPKTP)の結晶を、本来知られているように使用することができる。
【0039】
同じ周波数の第1及び第2の放射で動作することが可能である場合には、発生器は、波長可変レーザー放射源、例えば、エルビウムドープ・ファイバー・レーザー又はレーザーダイオードと、2つの光放射を形成するための分割素子とを含むことがある。
【0040】
図2は、本明細書によるTHzレーザー源の1つの例示的な実施形態を示しており、各発生器は、第1及び第2の光放射に加えて、第3の光放射を放出する。この例では、図1の例と同様に、各発生器の周波数は別々の原子遷移に安定化される。
【0041】
従って、第1の発生器1は、周波数w=qwである少なくとも1つの第3の光放射(vi)を放出するのに適しており、ここでqは1以上の整数であり、また第2の発生器2は、周波数w=rwである少なくとも1つの第3の光放射(vii)を放出するのに適しており、ここでrは1以上の整数である。上記の通り、発生器によって放出された放射の周波数は同一であることがあり、その場合にはこれらの放射は、1つ又は複数の分割素子によって得られる。或いは、発生器によって放出された光放射の周波数は、基準周波数の倍数であるが等しくはないことがある。この場合には、光放射の生成機構により、コヒーレントな同相の光放射を確実に得ることが可能になる。
【0042】
1つの例示的な実施形態では、各発生器は第3の光放射を放出し、これらの光放射は、図2に示すように、生成されたTHz周波数を測定するために使用される。これを行うために、qw rwは、nw-lwの倍数又は約数であることが確実にされる。従って、qw rwについての知識から、THz放射(v)の周波数の値を得ることが可能になる。
【0043】
1つの例示的な実施形態によれば、周波数差qw rwの測定値は、第1及び第2の発生器の各々によって放出された第3の放射(vi)及び(vii)を受け取るのに適した周波数比較器7、例えばショットキータイプのフォトミキサによって得られる。ミキサ7は、信号源8によって放出された、所与の周波数f、例えばマイクロ波周波数の基準信号Sも受け取る。これは、信号S、例えば無線周波数信号をもたらし、その周波数は周波数差Δ=[qw-rw]-k×fに等しく、ここで、kは整数であり、fは基準周波数である。周波数読取器9は、例えば、結果として得られる信号Sの周波数を決定することを可能にする。
【0044】
生成された周波数差の測定は、周波数が正確に分かっている周波数可変THzレーザー源を形成することが求められている場合に、特に有用である。具体的には、発生器1、2の一方及び/又は他方に対して、光学遷移の線幅よりも広い周波数範囲内で周波数を調節可能である放射源を選択することができる。この場合、THz放射の生成に使用される光放射の周波数を、複数の原子線のうちの1つ、例えば、ヨウ素分子の複数の線のうちの1つに安定化させることが可能である。次いで、周波数差qwa-rwの測定により、THz生成の周波数を正確に知ることができる。このようにして形成されたTHz源は、周波数可変であり、周波数が非常に安定した離散的で高密度スペクトルのTHz放射を生成することができる。
【0045】
図3は、本発明によるTHzレーザー源の別の例を示す。
【0046】
この例では、2つの発生器のうちの一方のみの周波数が、ある1つの原子遷移に直接的に安定化される。図3の例では、これは、例えば1で参照される発生器である(しかしこれは同様に、2で参照される他方の発生器でもあり得る)。従って、上記の通り、THz源は第1の周波数安定化モジュール5を含み、この第1の周波数安定化モジュール5は、第1の発生器によって放出された第2の放射(ii)の周波数を、セル4内に含まれた原子のある1つの原子遷移に安定化させることを可能にする。第2の発生器は、その部分については、サーボ制御モジュール14によって第1の発生器に対してサーボ制御される。サーボ制御モジュール14の例示的な実施形態については以下で説明する。
【0047】
図3に示すように、第1の発生器は、この例では、周波数w=qwである少なくとも1つの第3の光放射(vi)を放出するのに適しており、ここでqは1以上の整数である。上記の通り、第1の発生器によって放出される光放射は、同一の周波数であるか、又は位相がコヒーレントであるかのいずれかである。
【0048】
サーボ制御モジュール14は、この例では、信号S、例えば無線周波数信号を伝達するために、一方では第1の発生器によって放出された第3の放射(vi)及び第2の発生器によって放出された第2の放射(vii)を受け取り、他方では所与の周波数f、例えば無線周波数又はマイクロ波周波数の、信号源8によって放出された第1の基準信号(S)を受け取るのに適した、第1の周波数比較器7を含む。サーボ制御モジュールは更に、第1の無線周波数信号Sの周波数と無線周波数第2基準信号Sの周波数との間の周波数差に特徴的な制御信号(典型的には制御電圧)を伝達するために、上記の第1の無線周波数信号Sと、所与の周波数fの、信号源12によって放出される無線周波数第2基準信号Sとを受け取るのに適した第2の周波数比較器11を含み、より正確には、この制御信号の周波数はΔ=([qw-rw]-k×f)-fと書くことができ、ここでkはゼロ以外の整数である。サーボ制御モジュールはまた、第2の発生器を制御するためのモジュール13、例えば電圧比較器も含み、上記の制御信号に応じて、第2の発生器の放射周波数を制御することを可能にする。
【0049】
従って、この例では、THz源の周波数安定化はまた、ある1つの原子遷移への安定化によって、しかし発生器のうちの1つに対しては間接的に、非常に安定的に得られる。
【0050】
この例は、特に、連続的に周波数可変のTHz放射を形成することを可能にする。具体的には、無線周波数第2基準信号Sの周波数fが変動し、かつサーボ制御モジュールが閉ループ(Δ=0)で動作する場合、周波数rwは、条件Δ=0を維持するために、第2基準信号の周波数fと同じ割合で変動する。従って、THz周波数は連続的かつ制御可能に変えられる。更に、THz周波数は既知であり、THz周波数を構成する放射の安定性と同じ安定性を有することになる、というのも、閉領域では、w=qw-k×f-fであるからである。
【0051】
同じ基準周波数の倍数であるが異なる周波数の3つの光放射を生成することが求められている場合には、図5に示され、公開されている仏国特許第3004820B号明細書に記載されているような、「トライデント」タイプの発生器が場合によっては使用される。具体的には、この発生器は、例えば可視域及び/又は赤外域での3つのコヒーレントな同相の光放射を生成することが可能である。
【0052】
より正確には、図5に示すコヒーレント・レーザー・ビームの発生器20は、連続波レーザー源21、例えば赤外線源、光増幅器23、SHG(第2高調波生成用)結晶25、及びSFG(和周波生成用)結晶27を含む。光増幅器、例えばエルビウムドープ・ファイバー増幅器は、レーザー源の放射出力が不十分である場合に、必要な光パワーを供給することを可能にする。増幅器は、光源に一体化されていてもよい。光源の放射光パワーが十分である場合には、光増幅器を使用しないことも可能である。赤外レーザー源11によって放出され、光増幅器23によって増幅されたレーザービーム111は、2つのビーム113及び114に分割され、これらのチャネルの各々に対する光パワーの割合は、発生器の下流で必要とされる出力に応じて最適化できる。第1のビーム114は、例えば772nmの波長の、第1のビーム114の赤色域での第2高調波であるレーザービーム115を生成するために、第1の非線形結晶25に直接的に結合される。第1の非線形結晶25を通過しないIRの第2のビーム113は、予め赤色域で生成されたビーム115と重ね合わされ、2つのビーム113及び115は、赤色及び赤外(IR)の周波数を足し合わせるために、第2の非線形結晶27に結合され、これにより、例えば515nmの可視波長のビーム118がもたらされる。第2の非線形結晶27から出力された他のビーム116及び117は、それぞれ赤外域及び赤色域での残りのビームである。有利にも、制御モジュール26は、第2の非線形結晶27への結合を見越して、IRの第2のビーム113の結合パラメータを制御することを可能にし、これらのパラメータとはおそらくは、幾何学関連の、偏光関連の、及び/又は出力関連のパラメータである。これらの非線形結晶の温度もまた、これらの結晶の動作が確実に最適化されるようにするために、サーボ制御されることがある。制御モジュールは特に、SFG非線形結晶27の入力においてIRビームの光パワーを制御するための手段を含むことがあり、上記の手段は、緑色域で出力された光パワー(ビーム118)に対してサーボ制御される。このように説明した発生器により、(同じ赤外レーザービームから生成されているので)コヒーレントで同相である3つの光放射を、可視スペクトルの緑色帯域に加えてIR及び赤色帯域で、放出することが可能になる。発生器20は、ビームの伝搬が自由空間を介して又はファイバーを介しているモードで動作することがある。
【0053】
従って、例えば図2の例では、「トライデント」タイプの2つの発生器が使用される場合、おそらくは以下の選択が行われる。
第1の発生器から出力される第1の光放射(i)について、w=2w
第1の発生器から出力される第2の光放射(ii)について、w=3w
第1の発生器から出力される第3の光放射(vi)について、w=w
第2の発生器から出力される第1の光放射(iii)について、w=2w
第2の発生器から出力される第2の光放射(ii)について、w=3w
第2の発生器から出力される第3の光放射(vi)について、w=w
ここで、w及びwはそれぞれ第1及び第2の発生器の異なる基準周波数である。
【0054】
従って、w及びwが例えば赤外周波数である場合には、緑色域での光放射への発生器の周波数安定化、及び赤色域での放射によるTHz放射(v)の生成、が得られる。
【0055】
幾つかの詳細な例示的実施形態を通じて説明したが、本明細書による方法及びTHzレーザー源は、当業者には明らかである様々な変形例、修正例、及び改良例を含む。それらの様々な変形例、修正例、及び改良例は、以降の特許請求の範囲によって定義されるような本明細書の主題の範囲内に含まれることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5